説明

VEGFを阻害する安定かつ可溶性の抗体

本発明は、ウサギモノクローナル抗体からのCDRを含む、可溶性で安定な抗VEGFイムノバインダーに関する。前記抗体は、VEGF媒介性障害の診断および/または処置のためにデザインされている。本発明の組換え抗体を発現するためのハイブリドーマ、核酸、ベクター、および宿主細胞、これらを単離するための方法、ならびに医薬における前記抗体の使用も開示する。一態様において、本発明は、VEGFに結合し、したがってインビボでVEGFの機能をブロックするのに適するイムノバインダーを提供する。これらイムノバインダーのCDRは、ヒトVEGFおよび/またはそのフラグメント(配列番号1)で免疫化したウサギから得たウサギ抗VEGFモノクローナル抗体に由来する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2008年6月25日に出願されたUS61/133,212、2008年6月25日に出願されたUS61/075,697、2009年2月24日に出願されたUS61/155,041、および、2008年6月25日に出願されたUS61/075,692への優先権を主張する。
【0002】
本明細書を通して引用される、あらゆる特許、特許出願、および参考文献の内容は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
新脈管形成は、固形腫瘍、増殖性網膜症または加齢黄斑変性(AMD)などの眼内の新生血管形成症候群、慢性関節リウマチ、および乾癬を含めた様々な障害の病原に関係づけられる(非特許文献1;非特許文献2;および「Pathobiology of ocular disease. A dynamic approach.」Garner A、Klintworth G K編集、第2版、Marcel Dekker、NY、1625〜1710頁(1994)におけるGarner A、Vascular diseases)。固形腫瘍では、新脈管形成および新しい脈管構造の増殖が腫瘍を生存させ、腫瘍切片における微小血管の密度と、乳がんおよび他のがんにおける患者の生存との間に相関が実証されている(非特許文献3;非特許文献4;および非特許文献5)。
【0004】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、公知の新脈管形成および新生血管形成の制御因子であり、腫瘍および眼内の障害に付随する新生血管形成の主要なメディエータであることが示されている(非特許文献6)。VEGFのmRNAはヒトの腫瘍の多くにおいて過剰発現され、眼の流体におけるVEGFの濃度は、糖尿病患者および他の虚血関連の網膜症患者における血管の能動的増殖の存在に高度に相関する(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;およびDvorakら、Am J. Pathol.、146巻、1029〜1039頁(1995年);Aielloら、N. Engl. J. Med.、331巻、1480〜1487頁(1994年))。さらに、最近の研究は、AMDに罹患している患者の脈絡膜新生血管膜における局在性VEGFの存在を示している(Lopezら、Invest. Ophtalmo. Vis. Sci.、37巻、855〜868頁(1996年))。抗VEGF中和抗体を用いて、ヌードマウスにおける様々なヒト腫瘍細胞系の増殖を抑制すること、また、虚血性網膜障害のモデルにおける眼内の新脈管形成を阻害することもできる(Kimら、Nature、362巻、841〜844頁(1993年);Warrenら、J. Clin. Invest、95巻、1789〜1797頁(1995年); Borgstromら、Cancer Res.、56巻、4032〜4039頁(1996年);およびMelnykら、Cancer Res.、56巻、921〜924頁(1996年))(Adamisら、Arch. Opthalmol.、114巻、66〜71頁(1996年))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Folkmanら、J. Biol. Chem.、1992年、267巻、10931〜10934頁
【非特許文献2】Klagsbrunら、Annu. Rev. Physiol.、1991年、53巻、217〜239頁
【非特許文献3】Weidnerら、N Engl J Med、1991年、324巻、1〜6頁
【非特許文献4】Horakら、Lancet、1992年、340巻、1120〜1124頁
【非特許文献5】Macchiariniら、Lancet、1992年、340巻、145〜146頁
【非特許文献6】Ferraraら、Endocr. Rev.、1997年、18巻、4〜25頁
【非特許文献7】Berkmanら、J Clin Invest、1993年、91巻、153〜159頁
【非特許文献8】Brownら、Human Pathol.、1995年、26巻、86〜91頁
【非特許文献9】Brownら、Cancer Res.、1993年、53巻、4727〜4735頁
【非特許文献10】Matternら、Brit. J. Cancer.、1996年、73巻、931〜934頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、固形腫瘍および様々な新生血管形成性の眼内疾患を処置するのに用いることができる抗VEGFモノクローナル抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、ウサギモノクローナル抗体からのCDRを含む、可溶性で安定な抗VEGFイムノバインダーを提供する。前記抗体は、VEGF媒介性障害の診断および/または処置のためにデザインされている。本発明の組換え抗体を発現するためのハイブリドーマ、核酸、ベクター、および宿主細胞、これらを単離するための方法、ならびに医薬における前記抗体の使用も開示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1a】図1は、Biacore(hVEGF165)を用いて、hVEGF165と選択されたscFvとの結合動態を示すグラフである。図1aは、511maxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):6.59E+05;SE(ka):1.10E+03;kd(1/s):4.40E−05;SE(kd):6.30E−07;KD(M):6.67E−11を示す。図1bは、578maxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。
【図1b】図1は、Biacore(hVEGF165)を用いて、hVEGF165と選択されたscFvとの結合動態を示すグラフである。図1aは、511maxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):6.59E+05;SE(ka):1.10E+03;kd(1/s):4.40E−05;SE(kd):6.30E−07;KD(M):6.67E−11を示す。図1bは、578maxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。
【図2a】図2は、ヒト、マウスおよびラットVEGFに対する578maxの結合動態を示すことにより種特異性を示すグラフである。図2aは、ヒトVEGF165に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図2bは、マウスVEGF164に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):1.03E+06;SE(ka):2.30E+03;kd(1/s):4.40E−04;SE(kd):9.40E−07;KD(M):4.29E−10を示す。図2cは、ラットVEGF164に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.83E+05;SE(ka):2.50E+03;kd(1/s):5.28E−04;SE(kd):1.20E−06;KD(M):5.98E−10を示す。
【図2b】図2は、ヒト、マウスおよびラットVEGFに対する578maxの結合動態を示すことにより種特異性を示すグラフである。図2aは、ヒトVEGF165に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図2bは、マウスVEGF164に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):1.03E+06;SE(ka):2.30E+03;kd(1/s):4.40E−04;SE(kd):9.40E−07;KD(M):4.29E−10を示す。図2cは、ラットVEGF164に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.83E+05;SE(ka):2.50E+03;kd(1/s):5.28E−04;SE(kd):1.20E−06;KD(M):5.98E−10を示す。
【図2c】図2は、ヒト、マウスおよびラットVEGFに対する578maxの結合動態を示すことにより種特異性を示すグラフである。図2aは、ヒトVEGF165に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図2bは、マウスVEGF164に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):1.03E+06;SE(ka):2.30E+03;kd(1/s):4.40E−04;SE(kd):9.40E−07;KD(M):4.29E−10を示す。図2cは、ラットVEGF164に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.83E+05;SE(ka):2.50E+03;kd(1/s):5.28E−04;SE(kd):1.20E−06;KD(M):5.98E−10を示す。
【図3a】図3は、VEGFアイソフォーム(hVEGF121およびhVEGF110)に対する578maxの結合動態を示すグラフである。図3aは、ヒトVEGF165に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.4E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図3bは、ヒトVEGF121に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):5.87E+05;SE(ka):1.20E+03;kd(1/s):5.58E−04;SE(kd):9.60E−07;KD(M):9.50E−11を示す。図3cは、ヒトVEGF110に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):5.23E+05;SE(ka):1.30E+03;kd(1/s):7.22E−04;SE(kd):8.10E−07;KD(M):1.38E−09を示す。
【図3b】図3は、VEGFアイソフォーム(hVEGF121およびhVEGF110)に対する578maxの結合動態を示すグラフである。図3aは、ヒトVEGF165に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.4E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図3bは、ヒトVEGF121に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):5.87E+05;SE(ka):1.20E+03;kd(1/s):5.58E−04;SE(kd):9.60E−07;KD(M):9.50E−11を示す。図3cは、ヒトVEGF110に関して得られたデータ:Ka(1/Ms):5.23E+05;SE(ka):1.30E+03;kd(1/s):7.22E−04;SE(kd):8.10E−07;KD(M):1.38E−09を示す。
【図4a】図4は、hVEGF165に対する578max、578minmaxおよび578wtの結合動態を表すグラフである。図4aは、578maxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図4bは、578minmaxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.06E+05;SE(ka):2.10E+03;kd(1/s):5.04E−04;SE(kd):1.10E−06;KD(M):6.25E−10を示す。図4cは、578wt−Hisに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.45E+05;SE(ka):1.60E+03;kd(1/s):1.69E−04;SE(kd):7.60E−07;KD(M):2.00E−10を示す。
【図4b】図4は、hVEGF165に対する578max、578minmaxおよび578wtの結合動態を表すグラフである。図4aは、578maxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図4bは、578minmaxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.06E+05;SE(ka):2.10E+03;kd(1/s):5.04E−04;SE(kd):1.10E−06;KD(M):6.25E−10を示す。図4cは、578wt−Hisに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.45E+05;SE(ka):1.60E+03;kd(1/s):1.69E−04;SE(kd):7.60E−07;KD(M):2.00E−10を示す。
【図4c】図4は、hVEGF165に対する578max、578minmaxおよび578wtの結合動態を表すグラフである。図4aは、578maxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):7.00E+05;SE(ka):1.40E+03;kd(1/s):3.07E−04;SE(kd):8.50E−07;KD(M):4.39E−10を示す。図4bは、578minmaxに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.06E+05;SE(ka):2.10E+03;kd(1/s):5.04E−04;SE(kd):1.10E−06;KD(M):6.25E−10を示す。図4cは、578wt−Hisに関して得られたデータ:Ka(1/Ms):8.45E+05;SE(ka):1.60E+03;kd(1/s):1.69E−04;SE(kd):7.60E−07;KD(M):2.00E−10を示す。
【図5】図5は、578max、578minmaxおよび578minmax_DHPの熱安定性を示すグラフである(FT−IRによって測定されるアンフォールディング)。図5a:578minmax(ESBA903):Tm=71.1℃;図5b:578minmax_DHP(♯961):Tm=70.2°C;図5c:578max(♯821):Tm=70.4℃。
【図6−1】図6は、30分間の熱ストレス(図6a:50℃、図6b:60℃、図6c:70℃)後の578誘導体の変性および沈殿を示すグラフである。
【図6−2】図6は、30分間の熱ストレス(図6a:50℃、図6b:60℃、図6c:70℃)後の578誘導体の変性および沈殿を示すグラフである。
【図7−1】図7は、578max、578minmaxおよび578minmax_DHPの溶解性を示すグラフである(硫酸アンモニウム沈殿により決定される)。図7a:578max(♯821)。V50は27.24%であった。図7b:578minmax(ESBA903)。V50は、28.13であった。図7c:578minmax_DHP(♯961)。V50は32.36%であった。
【図7−2】図7は、578max、578minmaxおよび578minmax_DHPの溶解性を示すグラフである(硫酸アンモニウム沈殿により決定される)。図7a:578max(♯821)。V50は27.24%であった。図7b:578minmax(ESBA903)。V50は、28.13であった。図7c:578minmax_DHP(♯961)。V50は32.36%であった。
【図8−1】図8は、能力を測定する方法として、HUVECアッセイと対比させてVEGFR2競合ELISAを示すグラフである。図8a:VEGFR2競合ELISAにおけるルセンティス(Lucentis)と511max(♯802)との比較。ルセンティスのR:0.9417;ESBA802のR:0.9700。ルセンティスのEC50:7.137nM;♯802のEC50:0.8221nM。図8b:VEGFR2競合ELISAにおけるルセンティスと578max(♯821)との比較。図8c:HUVECアッセイにおけるルセンティスと511maxC−hisと534maxとの比較。ルセンティスのR:0.9399;EP511maxC−hisのR:0.9313、EP534maxのR:0.7391。ルセンティスのEC50:0.08825nM、511maxC−hisのEC50:0.7646nM、534maxのEC50:63.49nM。図8d:HUVECアッセイにおけるルセンティスと578minと578maxとの比較。ルセンティスのR:0.9419、EP578minのR:0.8886、EP578maxのR:0.9274。ルセンティスのEC50:0.1529nM、578minのEC50:1.528nM、578maxのEC50:0.1031nM。
【図8−2】図8は、能力を測定する方法として、HUVECアッセイと対比させてVEGFR2競合ELISAを示すグラフである。図8a:VEGFR2競合ELISAにおけるルセンティス(Lucentis)と511max(♯802)との比較。ルセンティスのR:0.9417;ESBA802のR:0.9700。ルセンティスのEC50:7.137nM;♯802のEC50:0.8221nM。図8b:VEGFR2競合ELISAにおけるルセンティスと578max(♯821)との比較。図8c:HUVECアッセイにおけるルセンティスと511maxC−hisと534maxとの比較。ルセンティスのR:0.9399;EP511maxC−hisのR:0.9313、EP534maxのR:0.7391。ルセンティスのEC50:0.08825nM、511maxC−hisのEC50:0.7646nM、534maxのEC50:63.49nM。図8d:HUVECアッセイにおけるルセンティスと578minと578maxとの比較。ルセンティスのR:0.9419、EP578minのR:0.8886、EP578maxのR:0.9274。ルセンティスのEC50:0.1529nM、578minのEC50:1.528nM、578maxのEC50:0.1031nM。
【図9】図9は、hVEGF165によって誘導されるHUVEC増殖に対する578minmaxの効果を示すグラフである。アッセイのパラメータは、hVEGF165濃度:0.08nM(3ng/ml);VEGFおよび試験アイテムを用いるインキュベーション:96hであった。EC50は、ルセンティスに関して0.08959nM、578minmaxに関して0.05516nMであり、Rはルセンティスに関して0.9066、578minmaxに関して0.9622であった。
【図10】図10は、マウスVEGF164およびラットVEGF164によって誘導されるHUVEC増殖に対する578minmaxの効果を示すグラフである。アッセイのパラメータは、マウスVEGF164濃度:0.08nM(3ng/ml);ラットVEGF164濃度:0.3nM(11.3ng/ml)であった。両濃度は、VEGF誘導型HUVEC増殖に関するEC90で選択された;VEGFおよび試験アイテムを用いるインキュベーション:96h。図10aは、マウスVEGFに関して得られたデータを示す。EC50は、V1253に関して0.1196nM、578minmaxに関して0.06309nMであり、Rは、ルセンティスに関して0.02744、V1253に関して0.9348、およびEP578minmaxに関して0.9767であった。ルセンティスは、マウスVEGFによって誘導されるHUVEC増殖を阻害しなかった。図10bは、ラットVEGFに関して得られたデータを示す。EC50は、V1253に関して1.597nM、578minmaxに関して0.06974nMであり、Rは、V1253に関して00.7664、578minmaxに関して0.6635であった。
【図11】図11は、ヌードモルモットにおいてMilesアッセイを用いた効能試験を示す図である(パートI)。色素アラマーブルー(almar blue)1を、ヌードモルモットに静脈内投与した。色素注射して1時間後、hVEGF(2.61nM)およびルセンティス、ESBA903または♯802の前混合物2を、それぞれ動物3の皮膚に注射した。溶液を注射して1時間後、動物3を安楽死させ、裸皮を採取し、浄化し、入射および透過光を用いてデジタル撮影した。注射部位に溢出したエバンスブルー色素の面積を、ImageJを用いて評価し、用量−面積の保持をプロットした。
【図12a】図12は、ヌードモルモットにおいてMilesアッセイを用いた効能試験を示すグラフである(パートII)。図12aは、♯803(511max)に関して得られた結果を示す。EC50は5.990nMであり、2.060〜17.41nMの間の統計的な広がりを有し、Rは0.5800であった。図12bは、ESBA903(578minmax)に関して得られた結果を示す。EC50は3.989であり、1.456〜10.93nMの間の統計的な広がりを有し、Rは0.3920であった。図12cは、ルセンティスに関する色素漏出の面積を示す。EC50は、曲線とあまりフィットしなかったため、ルセンティスに関して計算できなかった。
【図12b】図12は、ヌードモルモットにおいてMilesアッセイを用いた効能試験を示すグラフである(パートII)。図12aは、♯803(511max)に関して得られた結果を示す。EC50は5.990nMであり、2.060〜17.41nMの間の統計的な広がりを有し、Rは0.5800であった。図12bは、ESBA903(578minmax)に関して得られた結果を示す。EC50は3.989であり、1.456〜10.93nMの間の統計的な広がりを有し、Rは0.3920であった。図12cは、ルセンティスに関する色素漏出の面積を示す。EC50は、曲線とあまりフィットしなかったため、ルセンティスに関して計算できなかった。
【図12c】図12は、ヌードモルモットにおいてMilesアッセイを用いた効能試験を示すグラフである(パートII)。図12aは、♯803(511max)に関して得られた結果を示す。EC50は5.990nMであり、2.060〜17.41nMの間の統計的な広がりを有し、Rは0.5800であった。図12bは、ESBA903(578minmax)に関して得られた結果を示す。EC50は3.989であり、1.456〜10.93nMの間の統計的な広がりを有し、Rは0.3920であった。図12cは、ルセンティスに関する色素漏出の面積を示す。EC50は、曲線とあまりフィットしなかったため、ルセンティスに関して計算できなかった。
【図13a】図13は、ラットにおいて修正したmilesアッセイを用いた効能試験を示すグラフである(hVEGF165および578minmax(ESBA903)を前混合した)。図13aは、ラットにおけるVEGF誘導型網膜血管性漏出に対するアバスチン(Avastin)の抗透過性の効能−用量応答を示す。アバスチンは、hVEGF誘導型網膜血管性透過性を阻害する。注射の前に前混合した。およそ等モル、3倍または10倍の過剰。*p<0.05(VEGF対BSA)、**p<0.05(アバスチン処置対VEGF)。図13bは、ラットにおけるVEGF誘導型網膜血管性漏出に対するESBA903の抗透過性の効能を示す。用量応答(前混合した、ivt)。ESBA903によるhVEGF誘導型網膜血管性透過性の完全な阻害。注射の前に前混合した。およそ等モル、3倍または10倍の過剰。*p<0.05(VEGF対BSA)、**p<0.05(ESBA903処置対VEGF)。
【図13b】図13は、ラットにおいて修正したmilesアッセイを用いた効能試験を示すグラフである(hVEGF165および578minmax(ESBA903)を前混合した)。図13aは、ラットにおけるVEGF誘導型網膜血管性漏出に対するアバスチン(Avastin)の抗透過性の効能−用量応答を示す。アバスチンは、hVEGF誘導型網膜血管性透過性を阻害する。注射の前に前混合した。およそ等モル、3倍または10倍の過剰。*p<0.05(VEGF対BSA)、**p<0.05(アバスチン処置対VEGF)。図13bは、ラットにおけるVEGF誘導型網膜血管性漏出に対するESBA903の抗透過性の効能を示す。用量応答(前混合した、ivt)。ESBA903によるhVEGF誘導型網膜血管性透過性の完全な阻害。注射の前に前混合した。およそ等モル、3倍または10倍の過剰。*p<0.05(VEGF対BSA)、**p<0.05(ESBA903処置対VEGF)。
【図14】図14は、ラットにおいて修正したmilesアッセイを用いた効能試験を示すグラフである(578minmax(ESBA903)の局所投与)。ラットにおけるVEGF誘導型網膜血管性漏出に対するAL−51287(ESBA903)の抗透過性の効能を、局所投与で試験した。5日間の前処置、ESBA903処方物10ng/mlを4液滴/日。*p<0.05(VEGF対BSA)、**p<0.05(VEGF対AL−51287)、***p=0.060(AL−51287対AL−52667)、****(VEGF対AL−39324);p<0.05(AL−39324対ビヒクル参照対照)。AL−51287:ESBA903;AL−52657:局所的なビヒクル参照対照;AL−39324:低分子RTKインヒビター。
【図15】図15は、本明細書で使用されるようなVHのCDR1の定義を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳細な説明)
本発明は、ウサギモノクローナル抗体からのCDRを含む、可溶性で安定な抗VEGFイムノバインダーを提供する。前記イムノバインダーは、VEGF媒介性障害の診断および/または処置のためにデザインされている。本発明の組換え抗体を発現するためのハイブリドーマ、核酸、ベクター、および宿主細胞、これらを単離するための方法、ならびに医薬における前記抗体の使用も開示する。
【0010】
(定義)
本発明がより容易に理解され得るために、ある種の用語を以下の通りに定義する。さらなる定義を、詳細な説明を通して記載する。
【0011】
「VEGF」という用語は、Leungら、Science、246巻、1306頁(1989年)、およびHouckら、Mol. Endocrin.、5巻、1806頁(1991年)によって記載されている通り、アミノ酸165個の血管内皮細胞増殖因子、ならびに関連の、アミノ酸121個、189個、および206個の血管内皮細胞増殖因子を、これら増殖因子の天然に存在している対立形質および加工型と併せて意味する。
【0012】
「VEGF受容体」または「VEGFr」という用語は、VEGFに対する細胞の受容体、通常、血管内皮細胞上に見られる細胞表面受容体、およびhVEGFに結合する能力を保持しているその改変体を意味する。VEGF受容体の一例は、チロシンキナーゼファミリーにおける膜貫通型受容体であるfms様チロシンキナーゼ(flt)である。DeVriesら、Science、255巻、989頁(1992年);Shibuyaら、Oncogene、5巻、519頁(1990年)。flt受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼ活性を有する細胞内ドメインを含んでいる。細胞外ドメインはVEGFの結合に関与し、一方、細胞内ドメインはシグナル伝達に関与している。VEGF受容体の別の一例はflk−1受容体(KDRとも呼ばれる)である。Matthewsら、Proc. Nat. Acad. Sci.、88巻、9026頁(1991年);Termanら、Oncogene、6巻、1677頁(1991年);Termanら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、187巻、1579頁(1992年)。VEGFがflt受容体に結合すると、205,000ダルトンおよび300,000ダルトンの見かけの分子量を有する、少なくとも2つの高分子量複合体の形成がもたらされる。300,000ダルトンの複合体は、VEGFの単一分子が結合した受容体分子を2個含むダイマーであると考えられている。
【0013】
本明細書で用いられる「ウサギ」という用語は、leporidae科に属する動物を意味する。
【0014】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は「免疫グロブリン」の同義語である。本発明による抗体は、免疫グロブリン全体、または、単一可変ドメインであるFv(Skerra A.およびPluckthun, A.(1988年)Science、240巻、1038〜41頁)、scFv(Bird, R. E.ら(1988年)Science、242巻423〜26頁;Huston, J. S.ら(1988年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻、5879〜83頁)、Fab、(Fab’)2、もしくは当業者には周知の他のフラグメントなどの、免疫グロブリンの可変ドメインを少なくとも1つ含む免疫グロブリンのフラグメントであってよい。
【0015】
「CDR」という用語は、抗原の結合に主に寄与する抗体の可変ドメイン内の6つの超可変領域の1つを意味する。6つのCDRに対して最も一般的に用いられる定義の1つは、Kabat E.A.ら、(1991年)Sequences of proteins of immunological interest.、NIH Publication、91〜3242頁によって提供されたものである。本明細書で用いられるように、CDRのKabatの定義は、軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3(CDR L1、CDR L2、CDR L3、またはL1、L2、L3)ならびに重鎖可変ドメインのCDR2およびCDR3(CDR H2、CDR H3、またはH2、H3)に対してのみあてはまる。しかし、本明細書で用いられる場合、重鎖可変ドメインのCDR1(CDR H1またはH1)は以下の残基によって定義される(Kabatナンバリング):位置26で始まり位置36の前で終了する残基。これは、基本的には、KabatおよびChotiaにより異なって定義されるCDR H1の融合物である(説明のために図15も参照されたい)。
【0016】
本明細書で用いられる「抗体フレームワーク」またはあるときには「フレームワーク」のみという用語は、この可変ドメインの抗原結合性ループ(CDR)に対する骨格として働く、VLまたはVHいずれかの可変ドメインの部分を意味する。本質的に、これはCDRのない可変ドメインである。
【0017】
「単鎖抗体」、「単鎖Fv」、または「scFv」という用語は、リンカーによって連結されている抗体重鎖可変ドメイン(または領域;V)および抗体軽鎖可変ドメイン(または領域;V)を含む分子を意味するものとされる。このようなscFv分子は、一般構造:NH−V−リンカー−V−COOHまたはNH−V−リンカー−V−COOHを有することができる。
【0018】
本明細書で用いられる「同一性」は、2つのポリペプチド間、分子間、または2つの核酸間でマッチする配列を意味する。比較された2つの配列の両方における位置が同じ塩基、または同じアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合(例えば、各々の2つのDNA分子におけるある位置がアデニンによって占められている場合、または各々の2つのポリペプチドにおけるある位置がリジンによって占められている場合)、それぞれの分子はその位置で同一である。2つの配列間の「パーセント同一性」は、2つの配列が共有するマッチする位置(matching position)数を、比較する位置数によって除して100をかけた関数である。例えば、2つの配列における10個の位置のうち6個がマッチした場合、この2つの配列は60%の同一性を有する。一例として、DNA配列CTGACTとCAGGTTとは50%の同一性を共有する(全部で6個の位置のうち3個がマッチしている)。一般的に、2つの配列を、最大の同一性をもたらすように整列させた場合に比較が行われる。このようなアラインメントは、例えば、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)などのコンピュータプログラムによって便利に実行される、Needlemanら、(1970年)J. Mol. Biol.、48巻、443〜453頁の方法を用いて提供され得る。2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、PAM120ウェイト残基表、ギャップレングスペナルティ12、およびギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み入れられたE. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci.、4巻11〜17頁(1988年))を用いてやはり決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、およびギャップウェイト16、14、12、10、8、6、または4、およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)においてGAPプログラム中に組み入れられた、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol.、48巻、444〜453頁(1970年))のアルゴリズムを用いて決定され得る。
【0019】
「類似の」配列は、整列した場合に、同一および類似のアミノ酸残基を共有する配列であり、この場合、類似の残基は、整列した参照配列における対応するアミノ酸残基に対する保存的置換である。この点において、参照配列における残基の「保存的置換」は、対応する参照の残基に物理的または機能的に類似する残基、例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合を形成する能力などを含む)を有する残基による置換である。したがって、「保存的置換改変」配列は、1つまたは複数の保存的置換が存在する点で、参照配列または野生型の配列とは異なるものである。2つの配列間の「パーセント類似性」は、2つの配列が共有するマッチする残基または保存的置換を含む位置の数を、比較する位置の数によって除して100をかけた関数である。例えば、2つの配列における10個の位置のうち6個がマッチし、10個の位置のうち2個が保存的置換を含んでいる場合、この2つの配列は80%ポジティブな類似性を有する。
【0020】
本明細書で用いられる「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合性の特徴にネガティブな影響を及ぼさず、またはそれを変更しないアミノ酸の改変を意味するものとされる。このような保存的配列改変には、ヌクレオチドおよびアミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。例えば、改変は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介性の変異誘発など、当該分野で公知の標準技術によって導入されてよい。アミノ酸の保存的置換には、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものが含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、無極性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝した側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、ヒト抗VEGF抗体における予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同一の側鎖のファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。抗原結合性を除去しない、ヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を同定する方法は当該分野において周知である(例えば、Brummellら、Biochem.、32巻、1180〜1187頁(1993年);Kobayashiら、Protein Eng.、12巻(10):879〜884頁(1999年);およびBurksら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94巻、412〜417頁(1997年)を参照されたい)。
【0021】
本明細書で用いられる「アミノ酸コンセンサス配列」は、少なくとも2つ、好ましくはそれを超える整列しているアミノ酸配列のマトリックスを用い、各位置の最も高頻度のアミノ酸残基を決定することが可能であるように、アラインメントにおけるギャップを可能にすることで産生することができるアミノ酸配列を意味する。コンセンサス配列は、各位置で最も高頻度に現れるアミノ酸を含む配列である。2つまたはそれを超えるアミノ酸が単一の位置で等しく現れる場合は、コンセンサス配列にはこれらのアミノ酸の両方または全てが含まれる。
【0022】
タンパク質のアミノ酸配列は、様々なレベルで分析することができる。例えば、保存または変動性は、単一残基レベルで、複数残基レベルで、ギャップを有する複数の残基などで表されてよい。残基は、同一の残基の保存を示すことがあり、またはクラスレベルで保存されることがある。アミノ酸のクラスの例としては、極性無電荷R群(セリン、スレオニン、アスパラギン、およびグルタミン)、正電荷R群(リジン、アルギニン、およびヒスチジン)、負電荷R群(グルタミン酸、およびアスパラギン酸)、疎水性R群(アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、バリン、およびチロシン)、ならびに特別なアミノ酸(システイン、グリシン、およびプロリン)が挙げられる。他のクラスは当業者には公知であり、構造決定または置換可能性を評価するための他のデータを用いて定義し得る。この意味において、置換可能なアミノ酸は、その位置で、置換され得、機能的保存を維持し得る、任意のアミノ酸を意味し得る。
【0023】
しかし、同じクラスのアミノ酸は、その生物物理学的特性によってある程度変動することがあることが理解される。例えば、ある種の疎水性R群(例えば、アラニン、セリン、またはスレオニン)は、他の疎水性R群(例えば、バリンまたはロイシン)よりも親水性である(すなわち、親水性が高いか、または疎水性が低い)ことが理解される。相対的な親水性または疎水性は、当該分野で認められている方法を用いて決定することができる(例えば、Roseら、Science、229巻、834〜838頁(1985年)、およびCornetteら、J. Mol. Biol.、195巻、659〜685頁(1987年)を参照されたい)。
【0024】
本明細書で用いられる通り、1つのアミノ酸配列(例えば、最初のVまたはVの配列)が1つまたは複数のさらなるアミノ酸配列(例えば、データベースにおける1つまたは複数のVHまたはVLの配列)と整列する場合、1つの配列(例えば、最初のVまたはVの配列)におけるアミノ酸の位置は、上記の1つまたは複数のさらなるアミノ酸配列における「対応する位置」と比較されてよい。本明細書で用いられる「対応する位置」は、配列を最適に整列した場合の、すなわち、最高のパーセント同一性またはパーセント類似性を達成するように配列を整列した場合の、比較される(1つまたは複数の)配列における等しい位置を意味する。
【0025】
本明細書で用いられる「抗体データベース」という用語は、2つまたはそれを超える抗体のアミノ酸配列のコレクション(「多様な」配列)を意味し、典型的には、数十、数百、またはさらには数千の抗体のアミノ酸配列のコレクションを意味する。抗体データベースは、抗体のV領域、抗体のV領域、もしくはその両方のコレクションなどのアミノ酸配列を蓄えることができ、またはV領域およびV領域からなるscFv配列のコレクションを蓄えることができる。データベースを、検索可能なコンピュータプログラム内のコンピュータ上などの、検索可能な固定媒体中に蓄えるのが好ましい。一実施形態において、抗体データベースは、生殖系列の抗体配列を含むか、またはそれからなるデータベースである。別の一実施形態において、抗体データベースは、成熟(すなわち、発現された)抗体配列を含むか、またはそれからなるデータベースである(例えば、成熟抗体配列のKabatのデータベース、例えば、KBDデータベース)。さらに別の一実施形態において、抗体データベースは、機能的に選択された配列(例えば、QCアッセイから選択された配列)を含むか、またはそれからなる。
【0026】
「イムノバインダー」という用語は、抗体の抗原結合部位の全てまたは一部分(例えば、重鎖および/または軽鎖の可変ドメインの全てまたは一部分)を含む分子を意味し、そのためイムノバインダーは、標的の抗原を特異的に認識する。イムノバインダーの非限定的な例としては、全長の免疫グロブリン分子およびscFv、および、これらに限定されないが、(i)V、V、C、およびC1ドメインからなる1価のフラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結されている2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメントであるF(ab’)フラグメント、(iii)本質的に、ヒンジ領域の部分を有するFabである、Fab’フラグメント(Fundamental Immunology(Paul編集、第3版、1993年)を参照されたい)、(iv)VおよびC1ドメインからなるFdフラグメント、(v)抗体の単腕のVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(vi)VもしくはVドメインからなるDabフラグメント(Wardら、(1989年)Nature、341巻、544〜546頁)、Camelid抗体(Hamers−Castermanら、Nature、363巻、446〜448頁(1993年)およびDumoulinら、Protein Science、11巻、500〜515頁(2002年)を参照されたい)またはShark抗体(例えば、shark Ig−NARs Nanobodies(登録商標))などの単一ドメイン抗体、ならびに(vii)可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖領域であるナノボディ、を含む抗体フラグメントが挙げられる。
【0027】
本明細書で用いられる「機能特性」という用語は、例えば、ポリペプチドの製造上の特性または治療の効能を改善するために、改善(例えば、従来のポリペプチドに比べて)が望ましく、かつ/または当業者にとって有利であるポリペプチド(例えば、イムノバインダー)の特性である。一実施形態において、機能特性は安定性(例えば、熱安定性)である。別の一実施形態において、機能特性は溶解性(例えば、細胞性条件下の)である。さらに別の一実施形態において、機能特性は非凝集性である。なお別の一実施形態において、機能特性はタンパク質の発現(例えば、原核細胞における)である。さらに別の一実施形態において、機能特性は、対応する精製プロセスにおいて封入体を可溶化した後のリフォールディング効率である。ある実施形態において、抗原結合親和性は、改善に望ましい機能特性ではない。
【0028】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の(例えば、VEGF上の)部位を意味する。エピトープは、典型的には、独特の空間的コンフォメーションにおける、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続または非連続のアミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、66巻、G. E. Morris編集(1996年)を参照されたい。
【0029】
「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」、および「特異的に結合する」という用語は、抗体が所定の抗原上のエピトープに結合することを意味する。典型的には、抗体は、約10−8M、約10−9M、もしくは約10−10M未満、またはそれよりさらに低いなどの、約10−7M未満の親和性(K)で結合する。
【0030】
「K」または「K」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数を意味する。典型的には、本発明の抗体は、例えば、BIACORE機器において表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いて決定するとき、約10−8M、約10−9M、もしくは約10−10M未満、またはそれよりさらに低いなどの、約10−7M未満の解離平衡定数(K)でVEGFに結合する。
【0031】
「VEGFを中和する」、「VEGFを阻害する」、および「VEGFをブロックする」という用語は交換可能に用いられ、VEGFがVEGFR−1および/またはVEGFR−2などの1つまたは複数のVEGF受容体と相互作用するのを防ぎ、例えば、シグナル伝達の誘発を防ぐ、本発明の抗体の能力を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる「組換えイムノバインダー」は、組換えDNAからの発現によって生成されるイムノバインダーを意味する。
【0033】
本明細書で用いられる「キメラの」イムノバインダーは、特定の種に由来するか、または特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一かまたは相同である、重鎖および/または軽鎖の部分を有し、一方(1つもしくは複数の)鎖の残りは、別の種に由来するか、または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体およびそのような抗体のフラグメントにおける対応する配列に同一かまたは相同である。本明細書で用いられるヒト化抗体は、キメラ抗体のサブセットである。
【0034】
本明細書で用いられる「ヒト化抗体」は、外来の抗原に対する免疫応答を回避するために組換えDNA技術を用いて合成されたイムノバインダーである。ヒト化は、外因性供給源のモノクローナル抗体の免疫原性を低減するために十分に確立されている技術である。これは、アクセプターフレームワーク、好ましくはヒトアクセプターフレームワークの選択、アクセプターフレームワーク中に挿入されるドナーのイムノバインダーからのCDRの程度、およびドナーのフレームワークからの残基のアクセプターフレームワーク中への置換に関連する。CDRをヒトアクセプターフレームワーク中に融合させるための一般的方法は、その全容が参照によって本明細書に援用されるWinterの米国特許第5,225,539号によって開示されている。その教示が参照によってその全容において援用される米国特許第6,407,213号は、ドナーのイムノバインダーからの置換が好ましいフレームワークの数々のアミノ酸位置を開示している。
【0035】
「核酸分子」という用語は、DNA分子およびRNA分子を意味する。核酸分子は一本鎖でも、または二本鎖でもよいが、二本鎖DNAが好ましい。核酸は、別の核酸配列と機能的関係において配置された場合、「作動可能に連結して」いる。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、その配列に作動可能に連結している。
【0036】
「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を運搬することができる核酸分子を意味する。ベクターの1タイプが「プラスミド」であり、これはその中にさらなるDNAセグメントをライゲーション(ligate)することができる環状の二本鎖DNAのループを意味する。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲーションすることができる。ある種のベクターは、導入される宿主細胞において、自律的に複製することできる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)を、宿主細胞中への導入に際し宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによって、それらのベクターは宿主のゲノムと一緒に複製される。
【0037】
「宿主細胞」という用語は、その中に発現ベクターが導入されている細胞を意味する。宿主細胞としては、細菌細胞、微生物細胞、植物細胞、または動物細胞が挙げられ得る。形質転換を受けやすい細菌としては、Escherichia coliまたはサルモネラ属の菌株などの腸内細菌科のメンバー、Bacillus subtilisなどのバチルス属、肺炎球菌、連鎖球菌およびHaemophilus influenzaeが挙げられる。適切な微生物としては、Saccharomyces cerevisiaeおよびPichia pastorisが挙げられる。適切な動物宿主細胞系としては、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞系)およびNS0細胞が挙げられる。
【0038】
「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、および「処置(treatment)」という用語は、本明細書に記載する治療的手段または予防的手段を意味する。「処置(treatment)」の方法は、障害または再発性の障害の1つまたは複数の症状を予防、治癒、遅延、症状の重症度の低減、または回復させるために、あるいは処置の非存在下で予想されるものを上回って被験体の生存を延長するために、処置を必要とする被験体、例えば、VEGF媒介性障害を有する被験体またはそのような障害を最終的に得る可能性がある被験体に対する本発明の抗体の投与を使用する。
【0039】
「VEGF媒介性障害」という用語は、症状もしくは疾患状態の発症、進行、または持続がVEGFの関与を必要とする任意の障害を意味する。例示的VEGF媒介性障害としては、それだけには限定されないが、加齢黄斑変性、新生血管形成緑内障、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、水晶体後線維増殖症、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、直腸結腸癌、肝臓癌、卵巣癌、昏睡、卵巣男性胚細胞腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭部および頸部のがん、鼻咽腔癌、喉頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、メラノーマ、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽細胞腫、膵臓癌、網膜芽細胞腫、星細胞腫、膠芽腫、神経鞘腫、乏突起膠腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症に付随する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に付随するものなど)、メグズ症候群、慢性関節リウマチ、乾癬、ならびにアテローム性動脈硬化症が挙げられる。
【0040】
「有効用量(dose)」、または「有効投与量(dosage)」という用語は、所望の効果を達成するのに、または少なくとも部分的に達成するのに十分な量を意味する。「治療有効用量」という用語は、すでに疾患に罹患している患者における疾患およびその合併症を治すか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量と定義される。この使用に有効な量は、処置する障害の重症度、および患者自身の免疫系の全体的状態による。
【0041】
「被験体」という用語は、任意のヒトまたは非ヒトの動物を意味する。例えば、本発明の方法および組成物を、VEGF媒介性障害を有する被験体を処置するのに用いることができる。
【0042】
本明細書で用いられる「Min−graft」または「min」という用語は、ウサギの可変ドメインからのウサギCDRを、天然に存在するヒトアクセプターフレームワーク(FW1.4、配列番号172)中に融合させることによって産生されたヒト化可変ドメインを意味する。フレームワーク領域における変更はなされない。フレームワーク自体は、望ましい機能特性(溶解性および安定性)について予め選択されたものである。
【0043】
本明細書で用いられる「Max−graft」または「max」という用語は、ウサギの可変ドメインからのウサギCDRを、「ウサギ化」、ヒトアクセプターフレームワークである「RabTor」中に(rFW1.4、配列番号173)、またはrFW1.4(v2)(配列番号174)と呼ばれるその誘導体中に融合させることによって産生されたヒト化可変ドメインを意味する。「RabTor」フレームワークは、推定可能前駆体配列において異なっている位置(例えば、体細胞の過剰変異中に変化し、したがって抗原の結合におそらく寄与する位置)以外のドナーのフレームワーク残基を融合させる必要なしに、実質的にあらゆるセットのウサギCDRを受け入れる普遍的に適用可能なフレームワークを産生する目的で、ウサギ可変ドメインの構造および安定性に概ね関与するフレームワーク位置に、保存されているウサギの残基を組み入れることによって(そうでなければ、他の種においてかなり可変である)調製されたものである。推定可能前駆体配列は、最も近いウサギの生殖系列の対応物と定義され、最も近い生殖系列の対応物が確立できなかった場合は、ウサギのサブグループのコンセンサス配列または高パーセント値の類似性を有するウサギ配列のコンセンサス配列であると定義される。
【0044】
本明細書で用いられる「Min−Max」または「minmax」という用語は、「Max−graft」の可変重鎖と組み合わされた「Min−graft」の可変軽鎖を含むヒト化可変ドメインを意味する。
【0045】
本明細書で用いられる「Max−Min」または「maxmin」という用語は、「Min−graft」の可変重鎖と組み合わされた「Max−graft」の可変軽鎖を含むヒト化可変ドメインを意味する。
【0046】
産生したイムノバインダーに対して様々な用語体系を用いた。これらは、数字(例えば、♯578)によって通常同定される。EPまたはEPiなどの接頭辞を用いた場合は(例えば、Epi578と同一であるEP578)、それによって、同じイムノバインダーを示す。イムノバインダーに、接頭辞「ESBA」により識別される第2の名称を与えることがある。例えば、ESBA903は、578minmax、またはEP578minmax、またはEpi578minmaxと同じイムノバインダーを指す。
【0047】
別段の定義がなければ、本明細書で用いる技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明を実施または試験する上で、本明細書に記載したものと類似または等価の方法および材料を用いることができるが、適切な方法および材料を下に記載する。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0048】
本発明の様々な態様を、以下のサブセクションにおいてさらに詳しく記載する。様々な実施形態、選択、および範囲を任意に組み合わせることができることが理解される。さらに、特定の実施形態によっては、選択された定義、実施形態、または範囲を適用しなくてもよい。
【0049】
(抗VEGFイムノバインダー)
一態様において、本発明は、VEGFに結合し、したがってインビボでVEGFの機能をブロックするのに適するイムノバインダーを提供する。これらイムノバインダーのCDRは、ヒトVEGFおよび/またはそのフラグメント(配列番号1)で免疫化したウサギから得たウサギ抗VEGFモノクローナル抗体に由来する。本発明者らの知る限りでは、モノクローナル抗VEGF抗体をウサギから得、詳しく特徴付けたのはこれが初めてである。驚くべきことに、親和性(Kd)が並はずれて高いことが見出された。
【0050】
ある実施形態において、本発明はCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、またはCDRL3のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、VEGFに特異的に結合するイムノバインダーを提供する。本発明のイムノバインダーにおいて用いるための例示的CDRアミノ酸配列を、配列番号2〜72(表1〜6)、
【0051】
【表1】

【0052】
【表2−1】

【0053】
【表2−2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4−1】

【0056】
【表4−2】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

に記載する。
【0059】
一実施形態において、本発明は、配列番号14、配列番号26、配列番号37、配列番号49、配列番号60、および配列番号71からなる群のコンセンサス配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号14、配列番号26、および配列番号37からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号49、配列番号60、および配列番号71からなる群のCDRを含む。好ましくは、CDRは、配列番号2から配列番号13、配列番号15から配列番号25、配列番号27から配列番号36、配列番号38から配列番号48、配列番号50から配列番号59、および配列番号61から配列番号70からなる群より選択される。
【0060】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号2、配列番号3、配列番号15、配列番号27、配列番号38、配列番号50、および配列番号61からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号2、配列番号15、および配列番号27からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号38、配列番号50、および配列番号61からなる群のCDRを含む。別の好ましい一実施形態において、前記イムノバインダーのVHは、配列番号3、配列番号15、および配列番号27からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号38、配列番号50、および配列番号61からなる群のCDRを含む。
【0061】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号4、配列番号16、配列番号28、配列番号39、配列番号51、および配列番号62からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号4、配列番号16、配列番号28からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号39、配列番号51、および配列番号62からなる群のCDRを含む。
【0062】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号5、配列番号17、配列番号29、配列番号40、配列番号52、および配列番号63からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号5、配列番号17、配列番号29からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号40、配列番号52、および配列番号63からなる群のCDRを含む。
【0063】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号6、配列番号18、配列番号30、配列番号41、配列番号53、および配列番号64からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号6、配列番号18、および配列番号30からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号41、配列番号53、および配列番号64からなる群のCDRを含む。
【0064】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号7、配列番号19、配列番号31、配列番号42、配列番号54、および配列番号65からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号7、配列番号19、および配列番号31からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号42、配列番号54、および配列番号65からなる群のCDRを含む。
【0065】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号8、配列番号20、配列番号32、配列番号43、配列番号55、および配列番号66からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号8、配列番号20、および配列番号32からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号43、配列番号55、および配列番号66からなる群のCDRを含む。
【0066】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号9、配列番号21、配列番号33、配列番号44、配列番号56、および配列番号67からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号9、配列番号21、および配列番号33からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号44、配列番号56、および配列番号67からなる群のCDRを含む。
【0067】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号10、配列番号22、配列番号34、配列番号45、配列番号57、および配列番号68からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号10、配列番号22、および配列番号34からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号45、配列番号57、および配列番号68からなる群のCDRを含む。
【0068】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号11、配列番号13、配列番号23、配列番号25、配列番号35、配列番号46、配列番号58、および配列番号69からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号11、配列番号23、および配列番号35からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号46、配列番号58、および配列番号69からなる群のCDRを含む。あるいは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号13、配列番号25、および配列番号35からなる群のCDRを含み、かつ/または前記イムノバインダーのVLのCDRは、配列番号46、配列番号58、および配列番号69からなる群のCDRを含む。
【0069】
別の一実施形態において、本発明は、配列番号12、配列番号24、配列番号36、配列番号47、配列番号48、配列番号59、および配列番号70からなる群の配列に、少なくとも75%の類似性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有するCDRを少なくとも1つ含むイムノバインダーを提供する。好ましくは、前記イムノバインダーのVHは、配列番号12、配列番号24、および配列番号36からなる群のCDRを含む。さらに、またはあるいは、前記イムノバインダーのVLは、配列番号47、配列番号48、配列番号59、および配列番号70からなる群の、例えば、配列番号47、配列番号59、および配列番号70;または配列番号48、配列番号59、および配列番号70のCDRを含む。
【0070】
非常に好ましい一実施形態において、本明細書に開示するイムノバインダーはヒトVEGFを中和し、ラット/マウスのVEGFまたはその部分と交差反応性である。
【0071】
イムノバインダーは、CDRを収容することができる抗体または任意の代替の結合性骨格を含むことができる。配列番号2〜72に記載するCDRは、当該分野で認められている任意の方法を用いて、任意の適切な結合性骨格上に融合させることができる(例えば、Riechmann, L.ら、(1998年)Nature、332巻、323〜327頁;Jones, P.ら(1986年)Nature、321巻、522〜525;Queen, C.ら(1989年)Proc. Natl. Acad. See. U.S.A.、86巻、10029〜10033頁;Winterへの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらへの米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号を参照されたい)。しかし、本明細書に開示するイムノバインダーは、ヒト化され、したがって治療的適用に適することが好ましい。
【0072】
抗体の場合、配列番号2〜72に記載したウサギCDRを、任意の種からの任意の抗体のフレームワーク領域中に融合させてもよい。しかし、いわゆる「品質管理」スクリーニング(WO0148017)において同定されるフレームワークを含む抗体または抗体の誘導体は、一般的に高い安定性および/または溶解性を特徴としており、したがってヒトVEGFの中和など細胞外の適用の状況においても有用であり得ることが以前に見出されている。さらに、これらVL(可変軽鎖)およびVH(可変重鎖)の可溶かつ安定なフレームワークの1つの特定の組合せが、ウサギCDRを収容するのにとりわけ適することもさらに見出された。したがって、一実施形態において、配列番号2〜72に記載するCDRを、EP1479694に開示される「品質管理」スクリーニングに由来するヒト抗体フレームワーク中に融合させる。本発明において用いるための例示的フレームワークのアミノ酸配列を、配列番号172から174に記載する。驚くべきことに、前記フレームワークまたはその誘導体中に融合させる際に、多様なウサギCDRのループコンフォメーションが、ドナーのフレームワークの配列とほとんど独立に、完全に維持され得ることが見出された。さらに、前記フレームワークまたは様々なウサギCDRを含むその誘導体は、ウサギの野生型単鎖とは反対に良好に発現され、かつ生成され、そして、依然としてオリジナルのドナーのウサギ抗体の親和性をほとんど完全に保持する。
【0073】
したがって、好ましい一実施形態において、本明細書に開示するCDRおよび/またはCDRモチーフは、配列番号169の配列に少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有する重鎖可変領域フレームワーク配列において存在する。好ましい一実施形態において、重鎖可変領域フレームワーク配列は、配列番号170または配列番号171を含む。
【0074】
好ましい一実施形態において、本明細書に開示するCDRおよび/またはCDRモチーフは、配列番号167の配列に少なくとも85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%、95%、さらにより好ましくは100%の同一性を有する軽鎖可変領域フレームワーク配列において存在し、軽鎖可変領域フレームワーク配列は、より好ましくは配列番号167または配列番号168を含む。
【0075】
ウサギ抗体において、CDRは、抗体フレームワークにおけるシステイン残基にジスルフィド連結するシステイン残基を含むことがある。したがって、上記のことは、システイン残基を含むウサギCDRを非ウサギのフレームワーク領域中に融合させて、例えば、ジスルフィド連結によりウサギCDRの安定化を促進するための変異誘発によって非ウサギのフレームワーク中にシステイン残基を導入する場合に、必要であり得る。
【0076】
他の実施形態において、本発明は、VLまたはVHのアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、VEGFに特異的に結合するイムノバインダーを提供する。本発明のイムノバインダーにおいて用いるための例示的VHまたはVLのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号72〜106および配列番号107〜166に記載する。
【0077】
好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号107、配列番号108、配列番号118、配列番号119、配列番号130、および配列番号131(それぞれVH60−11−4、VH60−11−6、VH60−11−4min、VH60−11−6min、VH60−11−4max、およびVH60−11−6max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号72、配列番号82、および配列番号93(それぞれVL60、VL60min、VL60max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0078】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号109、配列番号120、および配列番号132(それぞれVH435、VH435min、およびVH435max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号73、配列番号83、および配列番号94(それぞれVL435、VL435min、およびVL435max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0079】
好ましくは、前記イムノバインダーは、配列番号175(435max)に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有する。
【0080】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号110、配列番号121、および配列番号133(それぞれVH453、VH453min、およびVH453max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号74、配列番号84、および配列番号95(それぞれVL453、VL453min、およびVL453max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0081】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号111、配列番号122、および配列番号134(それぞれVH375、VH375min、およびVH375max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号75、配列番号85、および配列番号96(それぞれVL375、VL375min、およびVL375max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0082】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号112、配列番号123、および配列番号135(それぞれVH610、VH610min、およびVH610max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号76、配列番号86、および配列番号97(それぞれVL610、VL610min、およびVL610max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0083】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号113、配列番号124、配列番号129、配列番号136、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号164、配列番号165、および配列番号166(VH578およびその改変体)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号77、配列番号87、配列番号92、配列番号98、配列番号103、配列番号104、および配列番号105(VL578およびその改変体)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0084】
好ましくは、前記イムノバインダーは、配列番号178(578min)、配列番号179(578max)、または配列番号180(578minmax)に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有する。
【0085】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号114、配列番号125、および配列番号137(それぞれVH534、VH534min、およびVH534max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号78、配列番号88、および配列番号99(それぞれVL534、VL534min、およびVL534max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0086】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号115、配列番号126、配列番号138、および配列番号143(それぞれVH567、VH567min、およびVH567max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号79、配列番号89、および配列番号100(それぞれVL567、VL567min、およびVL567max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0087】
好ましくは、前記イムノバインダーは、配列番号177(567min)に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有する。
【0088】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号116、配列番号127、配列番号139、および配列番号140(それぞれVH509、VH509min、VH509max、およびVH509maxII)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号80、配列番号90、および配列番号101(それぞれVL509、VL509min、およびVL509max)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0089】
別の好ましい一実施形態において、本発明は、配列番号117、配列番号128、配列番号141、および配列番号145(それぞれVH511、VH511min、VH511max、およびVH511maxDHP)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVH、
ならびに/または配列番号81、配列番号91、配列番号102、および配列番号106(それぞれVL511、VL511min、VL511max、およびVL511minC41L)からなる群より選択される配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有するVLを含むイムノバインダーを提供する。
【0090】
好ましくは、前記イムノバインダーは、配列番号176(511_max)に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、最も好ましくは100%の同一性を有する。
【0091】
ある実施形態において、本発明は、配列番号2〜166、および配列番号175〜180に記載するアミノ酸配列に実質的な類似性を有するアミノ酸配列を含む、VEGFに特異的に結合するイムノバインダーをさらに提供し、イムノバインダーは、本発明の抗VEGFイムノバインダーの所望の機能特性を本質的に保持、または改善する。好ましい類似性パーセント値としては、それだけには限定されないが、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性が挙げられる。
【0092】
ある実施形態において、本発明は、配列番号2〜166、および配列番号175〜180に記載するアミノ酸配列に実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、VEGFに特異的に結合するイムノバインダーをさらに提供し、イムノバインダーは、本発明の抗VEGFイムノバインダーの所望の機能特性を保持、または改善する。好ましい同一性パーセント値としては、それだけには限定されないが、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性が挙げられる。
【0093】
ある実施形態において、本発明は、配列番号2〜166、および配列番号175〜180に記載するアミノ酸配列に対して保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、VEGFに特異的に結合するイムノバインダーをさらに提供し、イムノバインダーは、本発明の抗VEGFイムノバインダーの所望の機能特性を保持、または改善する。
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明は、ヒトVEGFに特異的に結合し、他の種のVEGF分子、例えば、マウスVEGF、ラットVEGF、ウサギVEGF、またはモルモットVEGFと交差反応するイムノバインダーを提供する。特定の一実施形態において、抗VEGFイムノバインダーは、ヒトおよびラット/マウスのVEGFに特異的に結合することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明は、ヒトVEGFに特異的に結合し、他の種のVEGF分子、例えば、マウスVEGF、ラットVEGF、ウサギVEGF、またはモルモットVEGFと交差反応しないイムノバインダーを提供する。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明は、ヒトVEGFに特異的に結合するイムノバインダーを提供し、イムノバインダーはアフィニティ成熟している。
【0097】
一実施形態において、本発明の抗体および抗体フラグメントは、単鎖抗体(scFv)またはFabフラグメントである。scFv抗体の場合、選択されたVLドメインは、柔軟なリンカーによっていずれかの配向において選択されたVHドメインに連結することができる。適切な最先端のリンカーはGGGGSの繰返しアミノ酸配列またはその改変体からなる。本発明の好ましい一実施形態において、配列番号181に記載するアミノ酸配列の(GGGGS)リンカーは、繰返し1〜3回の改変体以外は、やはり可能である(Holligerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻、6444〜6448頁)。本発明に用いることができる他のリンカーは、Alfthanら(1995年)、Protein Eng.、8巻、725〜731頁、Choiら(2001年)、Eur. J. lmmunol.、31巻、94〜106頁、Huら(1996年)、Cancer Res.、56巻、3055〜3061、Kipriyanovら(1999年)、J. Mol. Biol.、293巻、41〜56頁、およびRooversら(2001年)、Cancer Immunol. lmmunother.、50巻、51〜59頁によって記載されている。配置は、VL−リンカー−VHまたはVH−リンカー−VLのいずれかであってよく、前者の配向が好ましいものである。しかし、VHまたはVLの単一のドメインの抗体も企図される。Fabフラグメントの場合、選択される軽鎖可変ドメインVLがヒトIgκ鎖の定常領域に融合しており、一方、適切な重鎖可変ドメインVHがヒトIgGの最初の(N末端の)定常ドメインCH1に融合している。定常ドメインのC末端に、または可変ドメインもしくは定常ドメインの他の部位に、鎖間ジスルフィド架橋が形成することがある。あるいは、2本の鎖が柔軟なリンカーによってやはり連結され、単鎖Fab抗体を生じることもある。
【0098】
本発明の抗体または抗体誘導体は、10−14Mから10−5Mの範囲の解離定数KでヒトVEGFに対する親和性を有することができる。本発明の好ましい一実施形態において、Kは≦1nMである。抗原に対する抗体の親和性は、適切な方法(Fundamental Immunology、Paul, W.E.編集、Raven Press、New York、NY(1992)におけるBerzofskyら、「Antibody−Antigen Interactions」;Kuby, J. Immunology、W.H. Freeman and Company、New York、NY)およびそこに記載される方法を用いて実験的に決定することができる。
【0099】
Epitomics社は、ウサギモノクローナル抗体である抗VEGF抗体を販売している(VEGF(C末端)Rabbit Antibody、カタログ番号1909−1)。前記抗体は、ヒトVEGFのC末端上の残基に対するものであり、したがってVEGFを中和することができない。それゆえ、前記抗体は治療的適用に適さない。さらに、前記モノクローナルIgGはヒト化抗体ではなく、全長の天然ウサギ免疫グロブリンである。さらに、この抗体は天然型のVEGFを認識しないことが示された。
【0100】
(VEGF上の同じエピトープに結合するイムノバインダー)
別の一態様において、本発明は、配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つを含む抗体によって認識されるVEGF上のエピトープに結合する抗体を提供する。このような抗体は、それだけには限定されないがELISAを含む標準のVEGF結合アッセイにおいて、配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含む抗体と交差競合(cross−compete)するその能力に基づいて同定され得る。試験抗体が、配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含む抗体のヒトVEGFに対する結合を阻害する能力は、試験抗体が交差競合することができ、したがって配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含む抗体としてヒトVEGF上の重複するエピトープと相互作用することを実証している。
【0101】
さらに、またはあるいは、このような抗体は、これらが同じペプチドの免疫原に結合するか否かを決定するための標準のエピトープマッピング技術を用いて同定することもできる。それだけには限定されないが、NMR、X線結晶学、コンピュータベースのモデリング、またはタンパク質断層撮影法を含めた構造モデリング技術をやはり用いて、抗体/VEGF相互作用に対する正確な分子の決定基をさらに定義してもよい(Banyayら、2004、ASSAY and Drug Development Technologies (2)、5巻、516〜567頁)。実際、VEGFの結晶構造は解明されており、VEGFr結合に関与する表面のアミノ酸残基は公知である(Fuhら、2006年、J. Biol. Chem.、281巻、6625〜6631頁)。したがって、当該分野において入手できるペプチド免疫原のアミノ酸配列およびVEGFの構造上の知識を考慮すると、配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含む抗体によって認識されるVEGF上のエピトープに結合する抗体を同定することは、十分に当該分野の技術範囲内である。
【0102】
いくつかの実施形態において、配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含む抗体によって認識されるVEGF上のエピトープに結合する抗体は、少なくとも10−1、例えば、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも1012−1、または少なくとも1013−1の親和性でVEGFに結合する。
【0103】
いくつかの実施形態において、配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含む抗体によって認識されるVEGF上のエピトープに結合する抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合し、他の種のVEGF分子、例えば、マウスVEGF、ラットVGEF、ウサギVEGF、またはモルモットVEGFと交差反応しない。
【0104】
いくつかの実施形態において、配列番号2〜211に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含む抗体によって認識されるVEGF上のエピトープに結合する抗体は、他の種のVEGF分子、例えば、マウスVEGF、ラットVEGF、またはウサギVEGFと交差反応する。
【0105】
(最適化された改変体)
本発明の抗体を、機能特性の増強に対して、例えば、溶解性および/または安定性の増強に対してさらに最適化してよい。
【0106】
ある実施形態において、本発明の抗体を、本明細書に参照によって援用される、「Sequence Based Engineering and Optimization of Single Chain Antibodies」という名称の、2008年3月12日出願のPCT出願PCT/EP2008/001958に開示されている「機能的コンセンサス」方法論に従って最適化する。例えば、本発明のVEGFイムノバインダーを、機能的に選択されたscFvのデータベースと比較してVEGFイムノバインダーにおける対応する(1つまたは複数の)位置よりも変動性への耐性が大きいかまたは小さいアミノ酸残基の位置を同定することができ、それによって、このように同定された残基の(1つまたは複数の)位置が、安定性および/または溶解性などの機能性を改善するように操作するのに適することがあることを指摘している。
【0107】
置換のための例示的フレームワーク位置は、「Methods of Modifying Antibodies,and Modified Antibodies with Improved Functional Properties」という名称の、2008年6月25日出願の、PCT出願PCT/CH2008/000285、および「Sequence Based Engineering and Optimization of Single Chain Antibodies」という名称の、2008年6月25日出願のPCT出願PCT/CH2008/000284に記載されている。例えば、以下の置換の1つまたは複数を、本発明のイムノバインダーの重鎖可変領域におけるアミノ酸の位置に導入することができる(以下に列挙する各アミノ酸位置に対してAHoナンバリングが参照される):
(a)アミノ酸位置1のQまたはE;
(b)アミノ酸位置6のQまたはE;
(c)アミノ酸位置7の、T、S、またはA、より好ましくはTまたはA、さらにより好ましくはT;
(d)アミノ酸位置10の、A、T、P、V、またはD、より好ましくはT、P、V、またはD、
(e)アミノ酸位置12の、LまたはV、より好ましくはL、
(f)アミノ酸位置13の、V、R、Q、M、またはK、より好ましくはV、R、Q、またはM;
(g)アミノ酸位置14の、R、M、E、Q、またはK、より好ましくはR、M、EまたはQ、さらにより好ましくはRまたはE;
(h)アミノ酸位置19の、LまたはV、より好ましくはL;
(i)アミノ酸位置20の、R、T、K、またはN、より好ましくはR、T、またはN、さらにより好ましくはN;
(j)アミノ酸位置21の、I、F、L、またはV、より好ましくはI、F、またはL、さらにより好ましくはIまたはL;
(k)アミノ酸位置45の、RまたはK、より好ましくはK;
(l)アミノ酸位置47の、T、P、V、AまたはR、より好ましくはT、P、V、またはR、さらにより好ましくはR;
(m)アミノ酸位置50の、K、Q、H、またはE、より好ましくはK、H、またはE、さらにより好ましくはK;
(n)アミノ酸位置55の、MまたはI、より好ましくはI;
(o)アミノ酸位置77の、KまたはR、より好ましくはK;
(p)アミノ酸位置78の、A、V、L、またはI、より好ましくはA、L、またはI、さらにより好ましくはA;
(q)アミノ酸位置82の、E、R、T、またはA、より好ましくはE、T、またはA、さらにより好ましくはE;
(r)アミノ酸位置86の、T、S、I、またはL、より好ましくはT、S、またはL、さらにより好ましくはT;
(s)アミノ酸位置87の、D、S、N、またはG、より好ましくはD、N、またはG、さらにより好ましくはN;
(t)アミノ酸位置89の、A、V、L、またはF、より好ましくはA、V、またはF、さらにより好ましくはV;
(u)アミノ酸位置90の、F、S、H、D、またはY、より好ましくはF、S、H、またはD;
(v)アミノ酸位置92の、D、Q、またはE、より好ましくはDまたはQ、さらにより好ましくはD;
(w)アミノ酸位置95の、G、N、T、またはS、より好ましくはG、N、またはT、さらにより好ましくはG;
(x)アミノ酸位置98の、T、A、P、F、またはS、より好ましくはT、A、P、またはF、さらにより好ましくはF;
(y)アミノ酸位置103の、R、Q、V、I、M、F、またはL、より好ましくはR、Q、I、M、F、またはL、さらにより好ましくはY、さらにより好ましくはL;および
(z)アミノ酸位置107の、N、S、またはA、より好ましくはNまたはS、さらにより好ましくはN。
【0108】
さらに、またはあるいは、以下の置換の1つまたは複数を、本発明のイムノバインダーの軽鎖可変領域中に導入することができる:
(aa)アミノ酸位置1の、Q、D、L、E、S、またはI、より好ましくはL、E、S、またはI、さらにより好ましくはLまたはE;
(bb)アミノ酸位置2の、S、A、Y、I、P、またはT、より好ましくはA、Y、I、P、またはT、さらにより好ましくはPまたはT;
(cc)アミノ酸位置3の、Q、V、T、またはI、より好ましくはV、T、またはI、さらにより好ましくはVまたはT;
(dd)アミノ酸位置4の、V、L、I、またはM、より好ましくはVまたはL;
(ee)アミノ酸位置7の、S、E、またはP、より好ましくはSまたはE、さらにより好ましくはS;
(ff)アミノ酸位置10の、TまたはI、より好ましくはI;
(gg)アミノ酸位置11の、AまたはV、より好ましくはA;
(hh)アミノ酸位置12の、SまたはY、より好ましくはY;
(ii)アミノ酸位置14の、T、S、またはA、より好ましくはTまたはS、さらにより好ましくはT;
(jj)アミノ酸位置18の、SまたはR、より好ましくはS;
(kk)アミノ酸位置20の、TまたはR、より好ましくはR;
(ll)アミノ酸位置24の、RまたはQ、より好ましくはQ;
(mm)アミノ酸位置46の、HまたはQ、より好ましくはH;
(nn)アミノ酸位置47の、K、R、またはI、より好ましくはRまたはI、さらにより好ましくはR;
(oo)アミノ酸位置50の、R、Q、K、E、T、またはM、より好ましくはQ、K、E、TまたはM;
(pp)アミノ酸位置53の、K、T、S、N、Q、またはP、より好ましくはT、S、N、Q、またはP;
(qq)アミノ酸位置56の、IまたはM、より好ましくはM;
(rr)アミノ酸位置57の、H、S、F、またはY、より好ましくはH、S、またはF;
(ss)アミノ酸位置74の、I、V、またはT、より好ましくはVまたはT、R、さらにより好ましくはT;
(tt)アミノ酸位置82の、R、Q、またはK、より好ましくはRまたはQ、さらにより好ましくはR;
(uu)アミノ酸位置91の、LまたはF、より好ましくはF;
(vv)アミノ酸位置92の、G、D、T、またはA、より好ましくはG、D、またはT、さらにより好ましくはT;
(xx)アミノ酸位置94の、SまたはN、より好ましくはN;
(yy)アミノ酸位置101の、F、Y、またはS、より好ましくはYまたはS、さらにより好ましくはS;および
(zz)アミノ酸位置103の、D、F、H、E、L、A、T、V、S、G、またはI、より好ましくはH、E、L、A、T、V、S、G、またはI、さらにより好ましくはAまたはV。
【0109】
AHoナンバリングシステムは、Honegger, A.およびPluckthun, A.、(2001年)J. Mol. Biol.、309巻、657〜670頁にさらに記載されている。あるいは、Kabatら(Kabat, E. A.ら(1991)、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication、第91〜3242)にさらに記載されているKabatナンバリングシステムを用いてもよい。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域におけるアミノ酸残基の位置を同定するのに用いられる2つの異なるナンバリングシステムのための変換表は、A. Honegger、J.Mol.Biol.、309巻(2001年)657〜670頁に提供されている。
【0110】
他の実施形態において、本発明のイムノバインダーは、「Solubility Optimization of Immunobinders」という名称の、2008年6月25日出願の、米国仮出願第61/075,692号に記載されている、溶解性および/または安定性を増強する変異を1つまたは複数含んでいる。ある好ましい実施形態において、イムノバインダーは、12、103、および144(AHoナンバリング慣例)からなる重鎖アミノ酸位置の群より選択されるアミノ酸位置に溶解性を増強する変異を含んでいる。好ましい一実施形態において、イムノバインダーは、(a)重鎖アミノ酸位置12のセリン(S);(b)重鎖アミノ酸位置103のセリン(S)またはスレオニン(T);および(c)重鎖アミノ酸位置144のセリン(S)またはスレオニン(T)からなる群より選択される置換を1つまたは複数含んでいる。別の一実施形態において、イムノバインダーは、以下の置換:(a)重鎖アミノ酸位置12のセリン(S);(b)重鎖アミノ酸位置103のセリン(S)またはスレオニン(T);および(c)重鎖アミノ酸位置144のセリン(S)またはスレオニン(T)を含んでいる。
【0111】
(ウサギ抗VEGF抗体を発現するハイブリドーマ)
別の一態様において、本発明は、配列番号72〜81、および配列番号107〜117に記載するアミノ酸配列の任意の1つまたは複数を含むモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを提供する。ウサギB細胞からハイブリドーマを産生するための方法は当該分野では周知であり、例えば、米国特許出願第2005/0033031号に開示されている。
【0112】
(抗VEGFイムノバインダーの生成)
本発明の抗体または抗体誘導体を、組換え遺伝学の技術分野における日常的な技術を用いて産生してもよい。ポリペプチドの配列を知り、それをコードするcDNAを遺伝子合成によって産生することができる(www.genscript.com)。これらのcDNAを適切なベクタープラスミド中にクローニングすることができる。VLドメインおよび/またはVHドメインをコードするDNAを得た後は、例えば、変異誘発プライマーを用いたPCRにより、部位特異的変異誘発を行って様々な誘導体を得ることができる。最良の「開始」配列を、VLおよび/またはVH配列における所望の変化の数に応じて選択することができる。
【0113】
CDRをフレームワーク領域中に組み入れるかまたは融合させるための方法は、例えばRiechmann, L.ら、(1998年)Nature、332巻、323〜327;Jones, P.ら(1986年)Nature、321巻、522〜525頁;Queen, C.ら(1989年)Proc. Natl. Acad. See. U.S.A.、86巻、10029〜10033頁;Winterへの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらへの米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号に記載されているもの、ならびに「Humanization of Rabbit Antibodies Using Universal Antibody Frameworks」という名称の、2008年6月25日出願の、米国仮出願第61/075,697号に開示されているものを含む。
【0114】
当業者には周知の標準のクローニング技術および変異誘発技術を用いて、Fabフラグメントを生成するために、リンカーを付着し、ドメインをシャッフルし、または融合物を構築してよい。本発明の一般的方法を開示する基本的プロトコールは、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Sambrook & Russell、第3版、2001年)、およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubelら、1999年)に記載されている。
【0115】
scFvポリペプチドをコードする遺伝子を内部に持つDNA配列、またはFabフラグメントの場合はVL−CκおよびVH−CH1融合物に対する2つの遺伝子を含む2つの別々の遺伝子またはバイシストロン性オペロンのいずれかをコードするDNA配列が、適切な発現ベクターに、好ましくは誘導プロモーターを伴なう発現ベクターにクローニングされる。各遺伝子の前には翻訳を確実にする好適なリボゾーム結合部位が存在するよう、注意を払わなければならない。本発明の抗体は、開示した配列からなるのではなく、開示した配列を含むことが理解される。例えば、クローニングの戦略は、構築物が、N末端に1つまたは少数のさらなる残基を有する抗体から作られることを必要とし得る。具体的には、開始コドンに由来するメチオニンが翻訳後に切断されなかった場合、最終のタンパク質中に存在することがある。scFv抗体についてのほとんどの構築物は、N末端にさらなるアラニンを生じる。本発明の好ましい一実施形態において、E.coliにおけるペリプラズムの発現についての発現ベクターが選択される(Krebber、1997年)。前記ベクターは、切断可能なシグナル配列の前にプロモーターを含む。次いで、抗体ペプチドについてのコード配列を、インフレーム(in frame)で切断可能なシグナル配列に融合する。これにより、シグナル配列が切断される細菌のペリプラズムへの、発現されたポリペプチドのターゲティングが可能になる。次いで、抗体はフォールディングされる。Fabフラグメントの場合は、VL−CκおよびVH−CH1融合物のペプチドの両方が移行シグナルに連結していなければならない。ペプチドがペリプラズムに到達した後、C末端のシステインでS−S共有結合が形成される。抗体の細胞質内発現が好ましい場合、前記抗体は通常、封入体から高収率で得ることができ、封入体は他の細胞フラグメントおよびタンパク質から容易に分離され得る。この場合、封入体は、例えば塩酸グアニジン(GndHCl)などの変性剤中に可溶化され、次いで当業者には周知の復元手順によってリフォールディングされる。
【0116】
scFvまたはFabポリペプチドを発現するプラスミドを、適切な宿主、好ましくは細菌、酵母、または哺乳動物の細胞、最も好ましくは適切なE.coli菌株(例えば、ペリプラズムの発現についてJM83、または封入体中の発現についてBL21)の中に導入する。ポリペプチドを、ペリプラズムまたは封入体のいずれかから収集し、当業者には公知の、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、および/またはゲルろ過などの標準技術を用いて精製してよい。
【0117】
本発明の抗体または抗体誘導体を、収率、溶解性、およびインビトロの安定性に関して特徴付けることができる。VEGFに対する、好ましくはヒトVEGFに対する結合能を、WO9729131に記載されている通り、組換えヒトVEGFを用いて、インビトロでELISAまたは表面プラズモン共鳴法(BIACore)によって試験することができ、表面プラズモン共鳴法はまた、Koff速度定数の決定を可能にし、これは好ましくは10−3−1未満であるべきである。≦10nMのK値が好ましい。
【0118】
ヒトVEGFに対する強力な結合親和性を有する抗体の他に、治療上の観点からの他の有益な特性を有する抗VEGF抗体を選択することも望ましい。例えば、抗体は、VEGFに応答したHUVEC細胞の増殖を阻害するものであってもよい(実施例3を参照されたい)。一実施形態において、抗体は、ほぼ最大の有効濃度のVEGF(0.08nM)に応答したHUVEC細胞の増殖を阻害することができ得る。好ましくは、抗体は、この「内皮細胞増殖アッセイ」における内皮細胞のVEGF誘導型増殖を阻害するのに約5nM以下、好ましくは約1nM以下、好ましくは約1nM以下、好ましくは約0.5nM以下、最も好ましくは約0.06nM以下の有効用量50(ED50)値を有し、すなわち、これらの濃度で抗体は、インビトロでVEGF誘導型内皮細胞の増殖を、例えば50%以上阻害することができる。
【0119】
(二重特異性分子)
別の一態様において、本発明は、本発明の抗VEGF抗体またはそのフラグメントを含む二重特異性分子を特徴としている。本発明の抗体、またはその抗原結合部分を、誘導体化し、または別のペプチドまたはタンパク質などの別の機能性分子(例えば、別の抗体もしくは受容体に対するリガンド)に連結して、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を産生することができる。本発明の抗体を、誘導体化するか、または2つ以上の他の機能性分子に連結して、3つ以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異的分子を産生することができ、このような多重特異的分子は、本明細書で用いられる「二重特異性分子」という用語によって包含されることも意図される。本発明の二重特異性分子を作り出すには、本発明の抗体を、別の抗体、抗体フラグメント、腫瘍特異的もしくは病原体特異的な抗原、ペプチド、または結合性模倣物(binding mimetic)などの1つまたは複数の他の結合性分子に、二重特異性分子が生じるように、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有性の会合、またはその他によって)機能的に連結してよい。したがって、本発明は、VEGFに対する特異性を有する少なくとも1つの第1の結合性分子、および1つまたは複数のさらなる標的エピトープに対する特異性を有する第2の結合性分子を含む二重特異性分子を含む。
【0120】
一実施形態において、本発明の二重特異性分子は、少なくとも1つの抗体、またはその抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、または単鎖Fvを含む)に対する結合特異性を含む。抗体は、その内容が参照によって明示的に援用されるLadnerら、米国特許第4,946,778号に記載されているように、軽鎖または重鎖のダイマー、またはそれらの任意の最小のフラグメント(Fvもしくは単鎖の構築物など)であってもよい。
【0121】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本発明の二重特異性分子に用いることができる他の抗体は、マウス、キメラ、およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0122】
本発明の二重特異性分子を、当該分野では公知の方法を用いて、構成成分の結合特異性を結合体化することによって調製することができる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性を別々に産生し、次いで相互に結合体化してよい。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、様々なカップリング剤またはクロスリンク剤を共有性の結合体化に用いることができる。クロスリンク剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DNTB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovskyら、(1984年)J. Exp. Med.、160巻、1686頁;Liu, MAら(1985年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻、8648頁を参照されたい)。他の方法としては、Paulus(1985年)Behring Ins. Mitt.、78巻、118〜132号;Brennanら(1985年)Science、229巻、81〜83頁、およびGlennieら(1987年)J. Immunol.、139巻、2367〜2375頁に記載されているものが挙げられる。好ましい結合体化剤(conjugating agent)はSATAおよびスルホ−SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(Rockford、IL)から入手できる。
【0123】
結合特異性が抗体である場合、これらは、例えば、2本の重鎖のC末端ヒンジ領域または他の部位によって(天然に存在しているものであれ、人工的に導入されたものであれ)、スルフヒドリル結合を介して結合体化されてよい。とりわけ好ましい一実施形態において、ヒンジ領域を、奇数個、好ましくは1個のスルフヒドリル残基を含むように修飾した後、結合体化する。
【0124】
あるいは、両方の結合特異性を同じベクター中にコードさせ、同じ宿主細胞中で発現、会合させてもよい。この方法は、二重特異性分子が、mAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合にとりわけ有用である。本発明の二重特異性分子は、1つの単鎖抗体および結合決定基を含む単鎖分子、または2つの結合決定基を含む単鎖の二重特異性分子であってよい。二重特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含んでいてよい。さらに、二重特異性分子は、第1の標的に特異的に結合するscFvであってよく、この場合、前記scFvのVHおよびVLは、第2の標的に対して特異的結合をもたらすドメインを含む柔軟なリンカーで連結されている。適切なリンカーは、米国仮出願第60/937,820号に記載されている。二重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,455,030号、米国特許第4,881,175号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,476,786号、米国特許第5,013,653号、米国特許第5,258,498号、および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0125】
二重特異性分子の、それらの特異的な標的に対する結合は、例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、生物検定(例えば、増殖阻害)または免疫ブロットアッセイによって確認することができる。これらの各アッセイは、一般的に、目的の複合体に特異的な標識した試薬(例えば、抗体)を用いることによって、特に目的とするタンパク質−抗体複合体の存在を検出するものである。例えば、VEGF−抗体複合体を、例えば、抗体−VEGF複合体を認識し、特異的に結合する、酵素が連結した抗体または抗体フラグメントを用いて検出することができる。あるいは、複合体を、様々な他の任意のイムノアッセイを用いて検出することができる。例えば、抗体は、放射性標識されていてよく、ラジオイムノアッセイ(RIA)において用いられてよい(例えば、参照によって本明細書に援用される、Weintraub, B.、Principles of Radioimmunoassays、Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society、1986年3月を参照されたい)。放射性同位元素を、γ線計数器、もしくはシンチレーションカウンターの使用などの手段によって、またはオートラジオグラフィーによって検出することができる。
【0126】
(イムノコンジュゲート)
別の一態様において、本発明は、細胞毒、薬物(例えば、免疫抑制薬)、または放射性毒などの治療用部分に結合体化している、抗VEGF抗体、またはそのフラグメントを特色としている。このような結合体を、本明細書において「イムノコンジュゲート」と呼ぶ。1つまたは複数の細胞毒を含むイムノコンジュゲートを「免疫毒素」と呼ぶ。細胞毒または細胞毒性剤には、細胞にとって有害な(例えば、死滅させる)あらゆる薬剤が含まれる。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにこれらの類似体または同族体が挙げられる。治療剤としては、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ダカルバジン(decarbazine))、アルキル化薬(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)がやはり挙げられる。
【0127】
本発明の抗体に結合体化することができる治療用細胞毒の他の好ましい例としては、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイタンシン、およびオーリスタチン、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。カリケアマイシン抗体結合体の一例は市販されている(MylotargTM、Wyeth−Ayerst)。
【0128】
細胞毒を、当該分野で利用可能なリンカー技術を用いて、本発明の抗体に結合体化することができる。細胞毒を抗体に結合体化するのに用いられているリンカーのタイプの例としては、それだけには限定されないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、およびペプチド含有のリンカーが含まれる。リンカーは、例えば、リソソーム区画内の低pHによる切断を受けやすいもの、またはカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)など、腫瘍組織において優先的に発現されるプロテアーゼなどの、プロテアーゼによる切断を受けやすいものが選択され得る。
【0129】
細胞毒、リンカーのタイプ、および治療剤を抗体に結合体化するための方法のさらなる考察に関して、Saito, G.ら、(2003年)Adv. Drug Deliv. Rev.、55巻、199〜215頁;Trail, P. A.ら、(2003年)Cancer lmmunol. Immunother.、52巻、328〜337頁;Payne, G.(2003年)Cancer Cell、3巻、207〜212頁;Allen, T. M.(2002年)Nat. Rev. Cancer 2巻、750〜763頁;Pastan, I. およびKreitman, R. J.、(2002年)Curr. Opin. Investig. Drugs、3巻、1089〜1091頁;Senter, P.D.およびSpringer, C.J. (2001年)Adv. Drug Deliv. Rev.、53巻、247〜264頁も参照されたい。
【0130】
本発明の抗体は、また、放射性同位元素に結合体化して、ラジオイムノコンジュゲート(radioimmunoconjugate)とも呼ばれる、細胞毒性の放射性医薬品を産生することもできる。診断に、または治療に用いるための抗体に結合体化することができる放射性同位元素の例としては、それだけには限定されないが、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90、およびルテチウム177が挙げられる。ラジオイムノコンジュゲートを調製するための方法は、当該分野において確立されている。ラジオイムノコンジュゲートの例はZevalinTM(IDEC Pharmaceuticals)およびBexxarTM(Corixa Pharmaceuticals)を含めて市販されており、本発明の抗体を用いてラジオイムノコンジュゲートを調製するのに同様の方法を用いることができる。
【0131】
本発明の抗体結合体を用いて、所与の生物学的応答を調節することができ、薬物部分は古典的な化学療法剤に限定されると解釈してはならない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってよい。このようなタンパク質としては、例えば、酵素的に活性な毒素、またはその活性なフラグメント、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスの体外毒素、もしくはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロン−γなどのタンパク質;または生物学的応答調節物質、例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、もしくは他の成長因子が挙げられ得る。
【0132】
このような治療部分を抗体に結合体化するための技術は周知であり、例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編集)、243〜56頁、(Alan R. Liss, Inc. 1985)における、Arnon ら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」;Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson ら(編集)、623〜53頁(Marcel Dekker, Inc.、1987年)における、Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」;Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編集)、475〜506頁(1985年)における、Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」;Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編集)、303〜16頁(Academic Press 1985年)における、「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol. Rev.、62巻、119〜58頁(1982年)を参照されたい。
【0133】
(抗VEGF抗体の使用)
治療的適用のために、本発明の抗VEGF抗体は、哺乳動物、好ましくはヒトに、局所的、眼内、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、鞘内、経口または吸入経路によって、ボーラスとしてかまたはある期間にわたる持続的注入によって、ヒトに静脈内投与できる形態を含む、本明細書で議論される形態などの、薬学的に許容される投薬形態で投与する。抗体はまた、腫瘍内、腫瘍周囲(peritumoral)、病巣内または病変周囲(perilesional)の経路によって適切に投与され、局所性および全身性治療効果をもたらす。腹腔内経路は、例えば卵巣腫瘍の処置において、特に有用であると期待される。
【0134】
疾患を予防または処置するための、抗体の適切な投与量は、上で定義したように、処置する疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体を予防または治療のどちらの目的で投与するか、以前の治療、患者の病歴および抗体への応答、ならびに主治医の自由裁量に依存する。抗体は、1回でまたは一連の処置にわたって適切に患者に投与する。
【0135】
抗VEGF抗体は、本明細書で記載されるようなVEGF媒介性疾患の処置に有用である。例えば、加齢黄斑変性(AMD)は、高齢者集団における深刻な視力喪失の主な原因である。AMDの滲出性形態は、脈絡膜新生血管形成および網膜色素上皮細胞剥離を特徴とする。脈絡膜新生血管形成は、予後の劇的な悪化に関連するため、本発明のVEGF抗体は、AMDの重症度の低下に特に有用である。この治療の進行は、検眼鏡検査(opthalmoscopy)、眼底顕微鏡および眼のコンピュータ断層撮影法を含む従来の技法によって、容易にモニターされる。
【0136】
FDAが認可した、ルセンティスを用いる使用に適する全ての用量およびレジメンを考慮している。他の用量およびレジメンは、2008年6月25日に出願された、名称「Improved Immunobinder Formulations And Methods For Adminstration」の米国仮出願第61/075,641号および米国仮出願第61/058,504号に記載され、本明細書に明示的に援用される。
【0137】
本発明の別の実施形態により、疾患の予防または処置における抗体の有効性は、抗体を連続的に投与することによって、またはそれらの目的に有効である別の薬剤、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、酸性もしくは塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF)または肝細胞増殖因子(HGF)の新脈管形成活性を阻害または中和できる抗体、組織因子、プロテインCまたはプロテインSの血液凝固活性を阻害または中和できる抗体(1991年2月21日に公開された、EsmonらのPCT特許出願WO91/01753を参照されたい)、HER2受容体に結合できる抗体(1989年7月27日に公開された、HudziakらのPCT特許出願WO89/06692を参照されたい)、または例えばアルキル化剤、光血液凝固剤(ベルテポルフィンなど)、葉酸拮抗剤、核酸代謝の代謝拮抗薬、抗生物質、ピリミジン類似体、5−フルオロウラシル、シスプラチン、プリンヌクレオシド、アミン、アミノ酸、トリアゾールヌクレオシドもしくはコルチコステロイドなどの1つまたは複数の従来の治療剤などと抗体とを組み合わせて投与することによって改善することができる。かかる他の薬剤は、投与する組成物中に存在し得、または別々に投与することができる。また、放射性物質の照射または投与を含んだとしても、抗体は、連続的または放射線学的処置と組み合わせて適切に投与される。
【0138】
本発明の抗体は、親和性精製剤として使用することができる。このプロセスにおいて、抗体は、当該分野で周知の方法を用いて、セファデックス樹脂または濾紙のような固相上に固定化する。固定化した抗体を、VEGFタンパク質(またはそのフラグメント)を含む試料と接触させて精製し、その後、担体を適切な溶媒で洗浄し、これにより固定化した抗体に結合するVEGFタンパク質以外の、試料中の実質的に全ての物質が除去される。最後に、担体をpH5.0のグリシン緩衝液などの別の適切な溶媒で洗浄し、これにより抗体からVEGFタンパク質が放出される。
【0139】
抗VEGF抗体はまた、VEGFタンパク質の診断アッセイ、例えば特定の細胞、組織または血清中でのその発現を検出するのにも有用な場合がある。かかる診断方法は、がんの診断に有用な場合がある。
【0140】
診断的適用のために、抗体は、一般的に検出可能な部分により標識される。非常に多くの標識が利用でき、それらは概して次のカテゴリーに分類することができる:
(a)111In、99Tc、14C、131I、125I、H、32Pまたは35Sなどの放射性同位元素。抗体は、例えばCurrent Protocols in Immunology、1および2巻、Coligenら編、Wiley−Interscience、New York、N.Y.、Pubs.(1991年)に記載の技法を用いて、放射性同位元素により標識でき、放射活性は、シンチレーション計数器を用いて測定することができる。
【0141】
(b)希土類キレート(ユーロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリンおよびテキサスレッドなどの蛍光標識を利用することができる。蛍光標識は、例えば上記のCurrent Protocols in Immunologyに開示されている技法を用いて、抗体と結合体化することができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
【0142】
(c)様々な酵素−基質標識を利用でき、米国特許第4,275,149号ではこれらのいくつかの概説が提供されている。酵素は、一般的に、様々な技法を用いて測定できる、色素形成基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光光度的に測定できる、基質における色の変化を触媒することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変えることができる。蛍光における変化を定量化するための技法は、上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起状態になり、次いで(例えば、ケミルミノメーター(chemiluminometer)を用いて)測定できる光を放射し得、または蛍光アクセプターにエネルギーを供与する。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類酸化酵素(例えば、グルコース酸化酵素、ガラクトース酸化酵素およびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環酸化酵素(ウリカーゼおよびキサンチン酸化酵素など)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。酵素を抗体に結合体化するための技法は、O’Sullivanら、Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay、Methods in Enzym.(J. Langone & H. Van Vunakis編)、Academic press、New York、73巻:147〜166頁(1981年)に記載されている。酵素−基質の組合せの例としては、例えば:
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての水素ペルオキシダーゼであり、水素ペルオキシダーゼが、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化、
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、色素形成基質としてのパラ−ニトロフェニルホスフェート、および
(iii)ベータ−D−ガラクトシダーゼ(ベータ−D−Gal)と色素形成基質(例えば、P−ニトロフェニル−ベータ−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル−ベータ−D−ガラクトシダーゼ、が挙げられる。
【0143】
本発明の別の実施形態では、抗VEGF抗体を標識する必要はなく、その存在は、VEGF抗体に結合する標識抗体を使用して検出することができる。
【0144】
本発明の抗体には、競合的結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイなどの任意の公知のアッセイ方法も採用することができる。Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147〜158頁(CRC Press、Inc. 1987年)。
【0145】
競合的結合アッセイは、制限された量の抗体と結合するために試験試料分析物と競合する、標識した標準物質の能力に依存する。試験試料中のVEGFタンパク質の量は、抗体と結合状態になる標準物質の量に反比例する。結合状態になる標準物質の量の決定を容易にするために、抗体を、一般的に競合の前または後に不溶化し、抗体に結合する標準物質および分析物を、結合しないままの標準物質および分析物から都合良く分離できるようにする。
【0146】
サンドイッチアッセイは、検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープにそれぞれが結合できる2つの抗体の使用を含む。サンドイッチアッセイでは、試験試料分析物は、固体担体上に固定化する第1抗体によって結合され、その後、第2抗体が分析物に結合し、したがって不溶性の3部分の複合体が形成される。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。第2抗体は、それ自体、検出可能な部分で標識でき(直接的サンドイッチアッセイ)、検出可能な部分で標識される抗免疫グロブリン抗体を使用して測定することもできる(間接的サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1種にELISAアッセイがあり、これは検出可能な部分が酵素の場合である。
【0147】
免疫組織化学に関しては、腫瘍試料は新鮮または凍結であってよく、例えば、パラフィン中に包埋し、例えばホルマリンなどの保存剤で固定してもよい。
【0148】
抗体は、インビボの診断アッセイに使用することもできる。一般的に、抗体は、放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125I、H、32Pまたは35Sなど)で標識し、免疫シンチグラフィ(immunoscintiography)を使用して腫瘍の場所を突き止められるようにする。
【0149】
本発明の抗体は、キット、すなわち診断アッセイを行うための説明書と所定量の試薬をパッケージした組合せで提供され得る。抗体が酵素で標識される場合、キットには酵素に必要な基質および補因子が含まれる(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアをもたらす基質前駆体)。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液または溶解緩衝液)などの他の添加剤を含むことができる。様々な試薬の相対量は、幅広く変えることができ、アッセイの感度を実質的に最適にする、溶液中の試薬の濃度を可能にする。特に試薬は、通常、凍結乾燥した乾燥粉末として提供でき、溶解状態で適切な濃度を有する試薬溶液をもたらす賦形剤を含む。
【0150】
(薬学的調製物)
1つの態様では、本発明は、VEGF媒介性疾患の処置のための抗VEGF抗体を含む薬学的処方物を提供する。用語「薬学的処方物」とは、明白に有効である抗体または抗体誘導体の生物活性を可能にするような形態であり、処方物を投与した被験体に毒性のある追加の成分を含まない調製物をいう。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)とは、被験体である哺乳動物に合理的に投与し、採用する活性成分の有効用量を実現できるものである。
【0151】
「安定的な」処方物とは、処方物中の抗体または抗体誘導体が、保存に際しその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物活性を本質的に保持するものである。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技法は、当該分野で入手でき、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery、247〜301頁、Vincent Lee編、Marcel Dekker, Inc.、New York、N.Y.、Pubs.(1991年)、およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev.10巻:29〜90頁(1993年)に概説されている。安定性は、選択した期間の間、選択した温度で測定することができる。好ましくは、処方物は、少なくとも1週間、室温(約30℃)または40℃で安定、および/または少なくとも3カ月から2年間、約2〜8℃で安定である。その上、処方物は、好ましくは、処方物の凍結(例えば−70℃まで)および解凍の後も安定である。
【0152】
色および/または透明さの視覚的検査で、あるいはUV光散乱またはサイズ排除クロマトグラフィー、または当該分野で承認されている他の適切な方法によって測定したときに、凝集、分解、沈殿および/または変性に対する、定義された公開の水準を満たす場合、抗体または抗体誘導体は、薬学的処方物において「その物理的安定性を保持する」。
【0153】
抗体または抗体誘導体は、所与の時間での化学的安定性が、タンパク質が以下に定義されるようなその生物活性をなおも保持すると考えられるほどであれば、薬学的処方物において「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、化学変化したタンパク質の形態を検出および定量化することによって評価することができる。化学変化は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS−PAGEおよび/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を用いて評価できる、サイズ修正(例えばクリッピング(clipping))に関わり得る。他のタイプの化学変化には、例えばイオン交換クロマトグラフィーによって評価できる電荷変化(例えば、脱アミドに起因して起こる)が挙げられる。
【0154】
抗体または抗体誘導体は、所与の時間での抗体の生物活性が、例えば、薬学的処方物が抗原結合アッセイで決定されるように調製したときに示される生物活性の、約10%以内(アッセイのエラー内)であれば、薬学的処方物において「その生物活性を保持する」。抗体に関する他の「生物活性」アッセイは、本明細書で以下に詳しく述べる。
【0155】
「等張」とは、目的の処方物が、本質的にヒト血液と同じ浸透圧を有することを意味する。等張処方物は、一般的に約250から350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧またはアイスフリージング型浸透圧計を用いて測定することができる。
【0156】
「ポリオール」は、複数のヒドロキシル基を有する物質であり、糖(還元および非還元糖)、糖アルコールおよび糖酸が挙げられる。本明細書における好ましいポリオールは、約600kD未満(例えば、約120から約400kDの範囲)の分子量を有する。「還元糖」とは、金属イオンを還元できる、またはタンパク質中のリジンおよび他のアミノ基と共有結合的に反応できるヘミアセタール基を含むものであり、「非還元糖」とは、還元糖のこれらの特性をもたないものである。還元糖の例は、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトースおよびグルコースである。非還元糖には、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトースおよびラフィノースが挙げられる。マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトールおよびグリセロールは、糖アルコールの例である。糖酸について、これには、L−グルコネートおよびその金属塩が挙げられる。処方物が凍結−解凍に対して安定であることが望まれる場合、ポリオールは、好ましくは処方物中の抗体が不安定になるような凍結温度(例えば−20℃)での結晶化をしないものである。スクロースおよびトレハロースなどの非還元糖は、本明細書において好ましいポリオールであり、トレハロースの優れた溶液安定性の理由から、スクロースよりトレハロースが好ましい。
【0157】
本明細書で使用するとき、「緩衝液」とは、酸−塩基の結合体化成分の作用によるpHの変化に耐える緩衝溶液をいう。本発明の緩衝液は、約4.5から約8.0、好ましくは約5.5から約7の範囲のpHを有する。この範囲でpHを制御する緩衝液の例には、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸の緩衝液が挙げられる。凍結−解凍に対して安定的な処方物が望まれる場合、緩衝液は、好ましくはホスフェートではない。
【0158】
薬理学的な意味において、本発明に関連して、抗体または抗体誘導体の「治療有効量」とは、抗体または抗体誘導体が有効である処置に関して、障害の予防または処置に有効な量をいう。「疾患/障害」とは、抗体または抗体誘導体を用いた処置により利益を得る任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の障害にかからせる病理学的状態を含む、慢性および急性の障害または疾患が含まれる。
【0159】
「保存剤」とは、処方物中に含まれ得、本質的にそこで細菌の作用を減少できる化合物であり、したがって、例えばマルチユーズ(multi−use)の処方物の製造を容易にすることができる。可能性のある保存剤の例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド(アルキル基が長鎖の化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)、およびベンゼトニウムクロリドが挙げられる。保存剤の他のタイプには、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノールならびにm−クレゾールが挙げられる。本明細書における最も好ましい保存剤は、ベンジルアルコールである。
【0160】
本発明はまた、生理学的に許容される少なくとも1つの担体または賦形剤と一緒に、1つまたは複数の抗体または抗体誘導体化合物を含む薬学的組成物も提供する。薬学的組成物は、例えば、1つまたは複数の水、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはホスフェート緩衝生理食塩水)、エタノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチド、またはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAもしくはグルタチオンなどのキレート剤、および/または保存剤を含むことができる。上述のように、他の活性成分を、(必ずしも必要ではないが)本明細書で提供される薬学的組成物中に含めることができる。
【0161】
担体は、しばしば化合物の安定性または生物学的利用能を制御する目的のため、患者に投与する前に、抗体または抗体誘導体に関連し得る物質である。かかる処方物内部で使用するための担体は、一般的に生体適合性を有し、生分解性も有し得る。担体には、例えば、血清アルブミン(例えばヒトまたはウシ)、卵アルブミン、ペプチド、ポリリジンなどの一価または多価分子、およびアミノデキストランなどの多糖類およびポリアミドアミンが挙げられる。担体はまた、例えば、ポリラクテート、ポリグリコレート、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロースまたはデキストランを含む、ビーズおよびミクロ粒子(microparticle)などの固体担体物質も含む。担体は、共有結合(直接的またはリンカー基を介してのいずれか)、非共有結合の相互作用または混合を含む、様々な方法において化合物を有し得る。
【0162】
薬学的組成物は、例えば、局所、眼内、経口、経鼻、直腸または非経口投与を含む、任意の適切な投与方式に関して処方することができる。ある種の実施形態では、例えば点眼薬としての局所使用に適切な形態の組成物が好ましい。他の形態には、例えば、丸剤、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁物、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬もしくは軟カプセル、またはシロップもしくはエリキシル剤が挙げられる。さらなる他の実施形態内では、本明細書で提供される組成物は、凍結乾燥物として処方することができる。本明細書で使用されるような非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば静脈内)、筋肉内、脊髄、頭骸内、くも膜下腔内および腹腔内注射、ならびに任意の類似の注射または注入技法を含む。
【0163】
薬学的組成物は、使用するビヒクルおよび濃度に依存して、モジュレータがビヒクル中に懸濁または溶解されている、無菌注射可能な水性または油性懸濁物として調製することができる。かかる組成物は、適切な分散剤、加湿剤および/または上述のものなどの懸濁剤を使用する公知の技術に従って処方することができる。採用できる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、1,3−ブタンジオール、リンゲル液および等張食塩水がある。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁ビヒクルとして採用することができる。この目的のために、合成のモノまたはジグリセリドを含む、刺激の少ない任意の固定油を採用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を、注射可能な組成物の調製に使用でき、局所麻酔剤などのアジュバント、保存剤および/または緩衝剤を、ビヒクル中に溶解することができる。
【0164】
薬学的組成物は、持続放出処方物(すなわち、投与後にモジュレータの徐放をもたらすカプセルなどの処方物)として処方することができる。かかる処方物は、一般的に周知の技術を用いて調製でき、例えば、経口、直腸もしくは皮下移植によって、または所望の標的部位に移植することによって投与することができる。かかる処方物内で使用するための担体は、生体適合性を有し、生分解性も有し得て、好ましくは、処方物が比較的一定レベルのモジュレータ放出を可能にする。持続放出処方物内に含まれる抗体または抗体誘導体の量は、例えば、移植の部位、放出の速度および期待される持続期間、ならびに処置または予防する疾患/障害の特性によって決まる。
【0165】
本明細書で提供される抗体または抗体誘導体は、一般的に、検出可能な程度にVEGFに結合し、VEGF媒介性疾患/障害を予防または阻害するのに十分な、体液(例えば、血液、血漿、血清、CSF、滑液、リンパ、細胞間質液、涙または尿)中の濃度に達する量で投与する。用量は、本明細書に記載のような認識できる患者の利益をもたらすとき、有効であると考えられる。好ましい全身の用量は、1日につき、体重1キログラムにつき約0.1mgから約140mg(1日につき患者1人につき約0.5mgから約7g)の範囲であり、経口での用量は、一般的に静脈内での用量より約5〜20倍多い。担体物質と組み合わせて単回投薬形態を産出できる抗体または抗体誘導体の量は、処置される受容者(host)および特定の投与様式によって変化する。投薬単位形態には、一般的に約1mgから約500mgの間の活性成分が含まれる。
【0166】
薬学的組成物は、VEGFに向けられる抗体または抗体誘導体に応答する状態を処置するためにパッケージすることができる。パッケージされた薬学的組成物は、本明細書に記載のような少なくとも1つの抗体または抗体誘導体の有効量を保持する容器、および患者への投与後に、1つの抗体または抗体誘導体に応答する疾患/障害を処置するために含有組成物を使用することを示す説明書(例えばラベル)を含むことができる。
【0167】
本発明の抗体または抗体誘導体は、化学的に修飾することもできる。好ましい修飾基は、例えば、場合によって置換した直鎖もしくは分岐鎖ポリアルケン、ポリアルケニレンもしくはポリオキシアルキレンポリマー、または分岐したかもしくは分岐していない多糖類などのポリマーである。かかるエフェクター基は、インビボでの抗体の半減期を長くすることができる。合成ポリマーの特定の例には、場合によって置換した直鎖または分岐鎖ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)またはその誘導体が挙げられる。天然に存在する特定のポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコゲンまたはその誘導体が挙げられる。ポリマーのサイズは、所望のように変化できるが、一般的に平均分子量は500Daから50000Daの範囲である。局所適用のために、抗体を組織に浸透するようにデザインする場合、ポリマーの好ましい分子量は、約5000Daである。ポリマー分子は、抗体、特に、WO0194585に記載のように、共有結合的に連結するヒンジペプチドを介して、Fabフラグメントの重鎖のC末端部に付着することができる。PEG部分の付着に関しては、「Poly(ethyleneglycol)Chemistry, Biotechnological and Biomedical Applications」、1992年、J. Milton Harris(編)、Plenum Press、New York、および「Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences」、1998年、M. Aslam and A. Dent、Grove Publishers、New Yorkを参照されたい。
【0168】
上記のように目的の抗体または抗体誘導体を調製した後、それを含む薬学的処方物を調製する。処方される抗体は、事前の凍結乾燥に供さず、本明細書で目的の処方物は、水性処方物である。好ましくは、処方物中の抗体または抗体誘導体は、scFvなどの抗体フラグメントである。処方物中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量体積および投与様式(複数可)を考慮に入れて決定する。約0.1mg/mlから約50mg/ml、好ましくは約0.5mg/mlから約40mg/ml、および最も好ましくは約10mg/mlから約20mg/mlが、処方物中の典型的な抗体濃度である。
【0169】
水性処方物は、pH緩衝溶液中の抗体または抗体誘導体を含めて調製する。本発明の緩衝液は、約4.5から約8.0、好ましくは約5.5から約7の範囲のpHを有する。この範囲内でpHを制御する緩衝液の例には、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸の緩衝液が挙げられる。緩衝液の濃度は、約1mMから約50mM、好ましくは約5mMから約30mMであってよく、例えば緩衝液および処方物の所望の等張性によって決めることができる。
【0170】
トニシファイアー(tonicifier)として働き、抗体を安定化できるポリオールは、処方物中に含まれる。好ましい実施形態では、抗体または抗体誘導体の沈殿を引き起こし得て、および/または低pHで酸化を引き起こし得るため、処方物は塩化ナトリウムなどの塩をトニシファイ量(tonicifying amount)で含まない。好ましい実施形態では、ポリオールは、スクロースまたはトレハロースなどの非還元糖である。ポリオールは、処方物の所望の等張性に対して変化できる量で処方物中に添加する。好ましくは、水性処方物は等張であり、この場合、処方物中の適切なポリオール濃度は、例えば、約1%から約15%w/vの範囲、好ましくは約2%から約10%w/vの範囲である。しかし、高張性または低張性処方物も適切であり得る。添加するポリオールの量も、ポリオールの分子量に対して変えることができる。例えば、二糖(トレハロースなど)と比較して、より少量の単糖(例えばマンニトール)を添加することができる。
【0171】
界面活性剤も、抗体または抗体誘導体処方物に添加する。典型的な界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80など)またはポロキサマー(例えばポロキサマー188)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。添加する界面活性剤の量は、処方した抗体/抗体誘導体の凝集を減少させ、および/または処方物中の粒子の形成を最小化し、および/または吸着を低下させるほどの量である。例えば、界面活性剤は、約0.001%から約0.5%、好ましくは約0.005%から約0.2%、および最も好ましくは約0.01%から約0.1%の量で処方物中に存在し得る。
【0172】
1つの実施形態では、処方物は、上記で同定した薬剤(すなわち、抗体または抗体誘導体、緩衝液、ポリオールおよび界面活性剤)を含み、本質的に、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノールおよび塩化ベンゼトニウムなどの1つまたは複数の保存剤を含まない。別の実施形態では、特に処方物が複数用量の処方物である場合、保存剤を処方物中に含むことができる。保存剤の濃度は、約0.1%から約2%、最も好ましくは約0.5%から約1%の範囲であってよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences 第21版、Osol, A.編(2006年)に記載のものなどの、1つまたは複数の他の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を、それらが処方物の所望の特徴に悪影響を及ぼさないという条件で、処方物中に含めることができる。許容される担体、賦形剤または安定剤は、採用する投与量および濃度でレシピエントに毒性がなく、追加の緩衝剤、共溶媒、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤、金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体)、ポリエステルなどの生分解性ポリマー、ならびに/またはナトリウムなどの塩形成対イオンを含む。
【0173】
インビボの投与に使用する処方物は、無菌でなければならない。これは、処方物を調製する前または後に、無菌ろ過膜を通すろ過によって容易に成し遂げられる。
【0174】
処方物は、抗体を用いる処置が必要な哺乳動物、好ましくはヒトに、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内、鞘内、経口、局所または吸入経路による、ボーラスとしてかまたはある期間にわたる持続的注入による静脈内投与などの公知の方法に従って投与する。好ましい実施形態では、処方物は、眼表面への点眼薬の局所適用によって、哺乳動物に投与する。かかる目的のために、処方物は、例えば点眼薬アプリケーターを用いて適用することができる。
【0175】
抗体の適切な投与量(「治療有効量」)は、例えば、処置する病状、病状の重症度および経過、抗体を予防または治療のどちらの目的で投与するか、以前の治療、患者の病歴および抗体への応答、使用する抗体のタイプ、ならびに主治医の自由裁量によって決まる。抗体または抗体誘導体は、1回または1連の処置にわたって患者に適切に投与し、診断以降の任意の時間に患者に投与することができる。抗体または抗体誘導体は、単独の処置としてか、または問題とする病状の処置に有用な他の薬物もしくは治療と併せて投与することができる。
【0176】
一般的な提案として、投与する抗体または抗体誘導体の治療有効量は、1回投与かまたは複数回投与かは別にして、患者の体重に対して約0.1から約50mg/kgの範囲となり、使用する抗体の典型的な範囲は、例えば、毎日の投与で約0.3から約20mg/kg、より好ましくは約0.3から約15mg/kgとなる。しかし、他の投薬レジメンも有用であり得る。この治療の進行は、従来の技法によって容易にモニターされる。
【0177】
FDAが認可した、ルセンティスを用いる使用に適する用量およびレジメンを考慮している。
【0178】
他の用量およびレジメンは、2008年6月25日に出願された、名称「Improved Immunobinder Formulations And Methods For Adminstration」の米国仮出願第61/075,641号に記載され、本明細書に明示的に援用される。
【0179】
(製造品)
本発明の別の実施形態では、本発明の水性薬学的処方物を保持する容器を含む、製造品が提供され、その使用に関する説明書が場合によって提供される。適切な容器には、例えば、ボトル、小瓶、点眼薬アプリケーターおよび注射器が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。典型的な容器は、3〜20ccの単回使用のガラスまたはプラスチックの小瓶である。あるいは、複数用量処方物用に、容器は3〜100ccのガラス小瓶であってよい。容器は処方物を保持し、容器上のラベルにより、または容器に付随したラベルにより、使用に関する指示を示すことができる。製造品は、商業および使用者の視点から望まれる他の物質をさらに含むことができ、これには、他の緩衝液、希釈液、フィルタ、針、注射器、および使用に関する説明のついた添付文書が挙げられる。
【実施例】
【0180】
(例示)
本開示を、さらに限定するものと解釈すべきではない以下の実施例によってさらに説明する。全ての図ならびにこの出願全体にわたって引用される全ての文献、特許および公開された特許出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に援用される。
【0181】
実施例全体にわたり、特に明記しない限り、以下の材料および方法を使用した。
【0182】
(一般的な材料および方法)
一般的に、本発明の実施では、特に示さない限り、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば抗体技術)の従来技法、およびポリペプチド調製の標準技法を採用する。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年);Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology)、510、Paul, S.、Humana Pr(1996年);Antibody Engineering: A Practical Approach(Practical Approach Series、169)、McCafferty編、Irl Pr(1996年);Antibodies: A Laboratory Manual、Harlowら、C.S.H.L. Press, Pub.(1999年);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons(1992年)を参照されたい。
【0183】
(熱安定性の測定)
減衰全反射フーリエ変換IR(FTIR−ATR)スペクトルを、Tensor BrukerにおけるFT−IR Bio−ATRセルを使用して、様々な単鎖および誘導体分子に関して入手した。分子を、3mg/mlまで濃縮し、PBS(pH6.5)に対して4℃で一晩中透析し、緩衝液のフロースルー(flow through)をブランクとして採取した。変性プロファイルを、5℃ステップ(25から95℃)の広範な温度で分子を熱チャレンジ(challenge)することによって入手した。全てのスペクトルの操作は、OPUSソフトウェアを用いて行った。主な緩衝液および一過性の雰囲気(COおよびHO)のバックグラウンドは、タンパク質スペクトルから差し引いた。結果のタンパク質スペクトルを、次いでベースライン補正し、タンパク質アミドIスペクトルを、期待される領域における最大幅の分解可能なピークの幅から決定した。第2の誘導体スペクトルを、平滑関数による3次多項式関数を用いて、アミドIバンドスペクトルに関して入手した。タンパク質構造における変化を、3つの低度測定に関して0%の変性、および3つの高度測定に関して100%変性と仮定する、初期カーブフィット(curve−fit)計算についての直線検定曲線を用いて、アミドIの第2誘導体分析によって、推定した。変性プロファイルを、ボルツマンシグモイドモデル(Boltzmann sigmoidal model)に適用する変量毎の熱アンフォールディング転移(TM)の中間点を概算するのに使用した。
【0184】
(溶解性の測定)
様々なscFv分子の相対的な溶解性を、硫酸アンモニウムの存在下でタンパク質の凝集および沈殿を増強させた後、測定した。硫酸アンモニウムを水溶液中のタンパク質に添加し、塩−タンパク質の最終混合物における飽和を5%増加させた。動的な範囲における沈殿を実験的に決定し、飽和間隔は、最終混合物において2.5%の飽和間隔までこの範囲で減少した。硫酸アンモニウムの添加後、試料を静かに混合し、6000rpmで30分遠心分離した。上清中に残ったタンパク質を、硫酸アンモニウムの飽和のパーセント毎に回収した。溶解曲線を、NanoDropTM1000 Spectrophotometerを使用するUV−VIS測定により、上清中のタンパク質濃度を測定することによって決定した。上清中に残った可溶性タンパク質の測定を正規化し、ボルツマンシグモイドモデルに適用する変量毎の相対的な溶解性の中間点を推定するのに使用した。
【0185】
(短期間の安定性試験)
scFv分子を、可溶性凝集物および分解産物の存在に関して、40℃で2週間インキュベートした後、調べた。10mg/mlの濃度のタンパク質を、広範なpH(3.5、4.5、5.5、6.5、7.0、7.5および8.5)のPBSに対して4℃で一晩中透析した。標準緩衝液PBS(pH6.5)中の同じ濃度の対照分子を、2週間の間−80℃で保管した。SDS−PAGEによる分解のバンドの決定は、t=0およびt=14d時点で行い、可溶性凝集物をSEC−HPLCにおいて評価した。40℃で2週間後、残った活性の決定を、Biacoreを使用して行った。
【0186】
(実施例1)
(抗VEGF抗体を産生するための免疫化戦略)
この実施例では、新規の抗原性VEGF由来のペプチドを使用し、ヒト、マウスおよびウサギVEGFAを認識できる抗体を産生させた免疫化戦略を記載する。
【0187】
Genentechで行ったアラニンスキャニング変異誘発試験から、VEGFrとの高親和性の相互作用に重要なVEGFAの残基が公知である(Fuh, G.ら、(2006年)J. Biol. Chem.281巻、6625〜6631頁)。受容体結合部位は、おそらくコンフォメーションエピトープを表すが、ほとんどの重要な残基は、成熟VEGFAの最初の10個のアミノ酸上のアルファへリックス上にある。
【0188】
ウサギVEGFAは、ヒトの配列と比較したときに、アルファへリックス中に3つのアミノ酸変化を含み、対照的にマウスVEGFAは、この領域においてヒトと同一である。したがって、マウス−ヒト交差反応性抗体の産出のために、ウサギは、免疫化のための適切な種を示す。さらに、ウサギの免疫化は、マウスの免疫化より高い親和性を有するAbを導くことができる。
【0189】
上記の概要のように、VEGFAのN末端アルファへリックス上の残基との相互作用は、VEGFR1との結合に最も重大のようである。したがって、このアミノ酸10個の長さの範囲は、免疫化のためのエピトープとして使用することができる。あるいは、全長VEGFAを注射できるが、VEGFA上の他のペプチド範囲はより免疫原性が高く、したがって、中和抗体を引き起こす見込みが少なくなる。この仮説は、両方ともVEGFAのC末端の近くに位置する2つの異なるペプチドが、JohnsonおよびWolfの方法により予測されるように潜在的に免疫原性があるという事実によって支持される。この方法は、N末端のアルファへリックスに関してごくわずかな免疫原性潜在力を予測する。したがって、アルファへリックスのみを構成するペプチドを用いる免疫化は、全長VEGFAを用いる免疫化より直接的であり得る。強い免疫応答を引き出す可能性は、ペプチドとキーホールリンペットヘモシアニン(Keyhole Limpet Hemocyanin(KLH))との融合または化学的カップリングによってさらに高めることができる。
【0190】
4つの免疫化戦略を以下のように行った。
A.コンフォメーションバインダーを得る可能性を高めるための、全長ヒトVEGFA165を用いるウサギのプレ免疫化(pre−immunization)。aa長16−FMRS−28(下線:受容体相互作用、二重下線、ウサギにおける不一致、Cysは結晶構造によるジスルフィド結合に関与する)由来のペプチドでの第2追加免疫。ペプチド配列中に含まれるCysは、KLHとのカップリングに使用できるので、したがって、遊離Cysとして露出しない。最終ペプチドは、KFMDVYQRSY−Cys−KLHと思われる。
B.コンフォメーションバインダーを得る可能性を高めるための、全長VEGFA165を用いるマウスのプレ免疫化。aa長16−FMRS−28(Cysは、結晶構造によるジスルフィド結合に関与する)由来のペプチドでの第2追加免疫。ペプチド配列中に含まれるCysは、KLHとのカップリングに使用できるので、したがって、遊離Cysとして露出しない。最終ペプチドは、以下と思われる:KFMDVYQRSY−Cys−KLH。
C.aa長16−FMRS−28(最終ペプチド:KFMDVYQRSY−Cys−KLH)由来のペプチドを用いるウサギ/マウスのプレ免疫化。コンフォメーションバインダーを得る可能性を高めるための、全長VEGFA165を用いる第2追加免疫。
D.ウサギにおける全長VEGFA165を用いる免疫化。
【0191】
(実施例2)
(CDR融合およびモノクローナルウサギ抗VEGF抗体の機能的ヒト化)
(ウサギCDRの融合)
ヒトではないドナーの抗体と最大の配列相同性を共有するヒト抗体アクセプターのフレームワークを採用する、伝統的なヒト化方法とは異なり、ウサギCDRを、フレームワークFW1.4(配列番号172)に融合させてMin−graftをもたらしたか、または「ウサギ化」フレームワークrFW1.4(配列番号173)もしくはその改変体rFW1.4(v2)(配列番号174)に融合させてMax−graftをもたらした。両フレームワークは、所望の機能特性(溶解性および安定性)、多種多様なウサギCDRを収容する構造適合性、およびウサギの可変ドメインのコンセンサス配列との妥当な相同性に関して、第一に選択した。フレームワークrFW1.4は、FW1.4の誘導体であり、ウサギCDRの実質的に任意のセットに対して、普遍的なアクセプターのフレームワークとして役立てる狙いでさらに操作した。安定かつ可溶性フレームワーク配列FW1.4は、ウサギ抗体と高い相同性を示すが、利用できる最も相同性の高い配列ではない。
【0192】
(結合に潜在的に関係する残基の同定)
ウサギの各可変ドメイン配列に関して、最も近いウサギの生殖系列対応物を同定した。最も近い生殖系列が確立できなかった場合、配列は、サブグループのコンセンサスまたは高いパーセント値の類似性を有するウサギの配列のコンセンサスに対して比較した。稀なフレームワークの残基は、起こり得る体細胞過剰変異の結果であって、したがって抗原の結合に関与すると考えた。結果として、かかる残基は、アセプターフレームワークrFW1.4またはrFW1.4(v2)上に融合させて、Max−graftをもたらすためのものと考えた。特に、抗原の直接的な接触に潜在的に関係するか、またはVLおよびVHの配置に影響する残基を融合させた。さらにCDR構造に影響すると記載された残基を、必要であれば置換した。CDRをFW1.4(Min−graft)上に融合させたとき、フレームワークは置換しなかった。例えば、578minmaxを産出するために、rFW1.4の残基VH94(H94)を、ドナー配列中の対応する残基に変異させた。ウサギ抗体578は、H94にGlyを含み、一方、最も相同性の高い生殖系列およびウサギのコンセンサスの両方は、位置H94にArgを含む。Glyは、他のアミノ酸には見られない並外れた柔軟性(正のphi角度)を有する。これは、主鎖のねじれ角度における役割、および活性に関連するループコンフォメーションの強い影響の可能性を示唆する。本明細書で開示されるようなMax−graftを得るために融合させたフレームワークの位置のさらなる例は、rFW1.4、rFW1.4(v2)および本明細書で提供される目的のscFv配列のフレームワーク領域の配列をアラインメントすることによって同定することができる。当該分野で公知のウェブツールを、例えば前記目的のために使用することができる(例えば、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlで2009年6月23日に利用できるようなClustalW、またはhttp://bioinfo.genotoul.fr/multalinで2009年6月23日に利用できるようなMultiAlin)。rFW1.4およびrFW1.4(v2)が同じ残基を含み、目的のscFvが異なる残基を明らかにする、全てのフレームワークの位置は、Max−graftを得るために融合させたフレームワークの位置である。
【0193】
(ドメインのシャッフル)
Min−graftの可変軽鎖を、Max−graftの可変重鎖と組み合わせて、生物物理学的特性(溶解性および安定性)および活性に関して最適な組合せを同定した。
【0194】
(scFvのクローニングおよび発現)
本明細書で記載および特徴付けされるscFvを、以下のように産生した。ヒト化VL配列(配列番号82〜106)を、配列番号181のリンカーを介して、ヒト化VH配列(配列番号118〜166)に連結させ、以下の配向のscFv:NH−VL−リンカー−VH−COOHを産出した。多くの場合、様々なscFvをコードするDNA配列を、サービス会社Entelechon GmbH(www.entelechon.com)で新規に合成した。結果のDNA挿入物を、scFvのDNA配列の5’および3’末端にそれぞれ導入したNcoIおよびHindIIIの制限酵素認識部位を介して、細菌発現ベクターpGMP002にクローニングした。VLドメインのDNA配列とVHドメインのDNA配列との間に、BamHI制限酵素認識部位が位置する。いくつかの場合、scFvをコードするDNAを新規に合成せず、scFv発現構築物を、ドメインシャッフルによってクローニングした。したがって、NcoIおよびBamHI制限酵素認識部位を介して、VLドメインを切り出して新しい構築物に導入し、BamHIおよびHindIII制限酵素認識部位を介して、VHドメインを切り出して新しい構築物に導入した。他の場合、点変異を、先端技術のアッセンブルPCR(assembling PCR)方法を用いて、VHおよび/またはVLドメインに導入した。GMP002のクローニングは、WO2008006235の実施例1に記載されている。scFvの産生は、WO2008006235の実施例1に記載のESBA105に関して類似的に行った。
【0195】
(実施例3)
(抗VEGF scFvのBiacore結合分析)
この実施例では、scFvのBiacore結合能を試験し、結合親和性を、BIAcoreTM−T100による、典型的な表面プラズモン共鳴法を用いて測定した。この実施例および後の実施例において、これらのscFv候補による結合を試験したVEGFタンパク質には、精製したEscherichia coli発現の組換えヒトVEGF165(PeproTech EC Ltd.)、組換えヒトVEGF121(PeproTech EC Ltd.)、組換えヒトVEGF110(ESBATech AG)、組換えマウスVEGF164(PeproTech EC Ltd.)、組換えラットVEGF164(Biovision)、組換えウサギVEGF110(ESBATech AG)、および組換えヒトPLGF(PeproTech EC Ltd.)が含まれる。表面プラズモン共鳴実験のために、カルボキシメチル化デキストランのバイオセンサーチップ(CM4、GE Healthcare)を、供給業者の説明書に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリドおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性化した。上記に例示された6つの異なる各VEGF形態を、標準的なアミンカップリング手順を用いて、CM4センサーチップ上の4つの異なるフローセルのうちの1つにカップリングさせた。カップリングおよびブロッキングの後、これらの固定化したVEGF分子により得られた応答の範囲は、hVEGF165に関しては約250〜500応答単位(RU)、hVEGF110、hVEGF121、マウスVEGF164、ラットVEGF164およびウサギVEGF110に関しては約200RU、ならびにPLGFに関しては約400RUであった。タンパク質をブロッキングの前に固定化しなかったことを除き、各チップの第4のフローセルを同様に処理し、フローセルをインラインの参照として使用した。HBS−EP緩衝液(0.01MのHEPES、 pH7.4または5、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%界面活性剤P20)中の抗VEGF scFvの様々な濃度(例えば、90nM、30nM、10nM、3.33nM、1.11nM、0.37nM、0.12nMおよび0.04nM)を、5分間、30μl/分の流速でフローセルに注入した。CM4チップ上のVEGFからの抗VEGF scFvの解離を、25℃で10分間進行させた。インライン参照のセル補正に続いて緩衝液試料を差し引いた後、センサーグラム(sensorgram)を各抗VEGF scFv試料に関して作成した。見かけの解離速度定数(k)、見かけの会合速度定数(k)、および見かけの解離平衡定数(K)を、BIAcoreT100評価ソフトウェアバージョン1.1を用いて、1対1のLangmuir結合モデル(one−to−one Langmuir binding model)を使用して計算した。
【0196】
1つの典型的な結果として、いくつかの主要な抗VEGF scFv候補を表7に列挙し、hVEGF165とのそれらの結合親和性を示す。VEGFR競合ELISAおよび/またはHUVECアッセイを使用して測定し、後の実施例に記載される、VEGFインヒビターとしてのそれらの能力も、表7に示す。いくつかの典型的な主要候補、例えば、511maxおよび578maxのhVEGF165への結合に関する動態曲線を図1に図示する。それらの親和性定数(k、kおよびK)も決定した。いくつかの主要な候補は、異なる供給源の様々なVEGFタンパク質への結合における種特異性も示す。例えば、結合相手としてマウスおよびラットVEGF164を用いて、pH5で測定したいくつかの親和性データを表8aおよびbに示す。典型的な主要scFv候補である578minmaxは、マウスおよびラットVEGF164との結合において、pH5で5.76E−10Mおよび7.48E−10MのKをそれぞれ有し(表8aおよびb)、pH7.4で2.73E−11および2.19E−11を有する(データは示していない)。この種特異性は、578minmaxとヒト、マウスまたはラットVEGFタンパク質との間の結合に関する動態曲線および親和性データにおいて、図4にさらに図示する。
【0197】
異なる生物由来のVEGFとの結合における種特異性に加えて、多くの主要なscFv候補はまた、様々なVEGFアイソフォームに対しても区別される結合親和性を示す。例えば、ヒトVEGF165、VEGF121およびVEGF110とのいくつかのscFv候補の結合に関して、pH5.0で測定した親和性データを表9で比較する。いくつかの実験では、PIGFタンパク質も、これらのscFv候補との結合能をもたない負の対照として使用した。また、例として、578MaxとVEGFアイソフォームとの間の結合に関して、区別される動態曲線および親和性データを図3に図示する。
【0198】
本発明は、上述の主要な抗VEGF scFv候補に由来する誘導体も開示する。表10に列挙するような候補578および511のいくつかの主要な誘導体を、それらの親和性および能力に関して例示する(pH5.0で測定した)。この実験では、Biacore測定を、hVEGF165に対するこれらの誘導体の親和性に関して使用し、一方でhVEGFR2競合ELISAおよび/またはHUVECアッセイを、VEGFを阻害するそれらの能力を定義にするために使用した(表10)。3つの誘導体、578max、578minmaxおよび578wt−Hisを、hVEGF165との結合に関するそれらの動態曲線および親和性データにおいて図4にさらに例示する。
【0199】
主要な候補の誘導体に関して、それらの生物物理学的特徴を決定し、図5〜7および表11に例示した。これらの特徴には、表11に例示のように、FTIRによって決定されるT、60℃で30分間インキュベーションした後のβシートまたはタンパク質損失パーセント、硫酸アンモニウム沈殿によって決定される溶解性、産生プロセス中のリフォールディング収率、およびE.coliでの発現レベルが含まれる。3つの誘導体、578max、578minmaxおよび578minmax_DHPを、FT−IRによって測定された、異なる温度に対するそれらのアンフォールディング曲線におけるそれらの熱安定性に関して、特徴付けした(図5)。
【0200】
【表7−1】

【0201】
【表7−2】

【0202】
【表8−1】

【0203】
【表8−2】

【0204】
【表9−1】

【0205】
【表9−2】

【0206】
【表10−1】

【0207】
【表10−2】

【0208】
【表11−1】

【0209】
【表11−2】

【0210】
【表11−3】

いくつかの誘導体を、図6に掲載のように、30分間の熱ストレス(例えば、50℃、60℃または70℃下)後のそれらの変性および沈殿に関して比較した。
【0211】
【表12−1】

【0212】
【表12−2】

578max、578minmaxおよび578minmax_DHPを、硫酸アンモニウム沈殿によって決定された、それらの溶解性に関してさらに例示した。図7のように、硫酸アンモニウムの様々な濃度下におけるこれらの誘導体の可溶性タンパク質のパーセントを比較した。
【0213】
(実施例4)
(VEGF受容体ブロッキングアッセイ)
本発明で開示される抗VEGF scFv候補またはそれらの誘導体に関して、実施例3におけるVEGFへのそれらの結合親和性に加えて、VEGFインヒビターとしてのそれらの能力も測定した。それらの能力を測定するための方法には、例えば、この実施例で例示されるようなVEGFR競合ELISA、およびHUVECアッセイが挙げられる(図8)。
【0214】
VEGFR競合ELISAアッセイには、例えば、VEGFR2受容体ブロッキングアッセイおよびVEGFR1受容体ブロッキングアッセイが挙げられる。VEGFR2受容体ブロッキングアッセイのために、ヒトVEGF165を、PBS中に0.05μg/mlで、96穴Maxisorp ELISAプレート(Nunc)上にコートし、0.1%BSAおよび0.2%Tween20(PBST)を含むPBSを用いてブロッキングした。ヒトIgGの6×ヒスチジンタグ付Fcと融合したヒトVEGFR2の細胞外ドメインのアミノ酸残基1〜764個からなる、組換えヒトVEGFR2/Fcキメラ(R&D Systems Inc.)500ng/mlを、PBST中で3倍で連続希釈した抗VEGF scFvと、まずインキュベートした。室温で30〜60分インキュベーションした後、混合物を、ヒトVEGF165を固定化したプレートに移し、90分間インキュベートした。VEGFR2/Fcキメラと固定化したVEGF165との結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼにカップリングさせたヤギ(Fab)抗ヒトIgG Fcγ(Jackson ImmunoResearch)に続いて基質(BM Blue POD基質、Roche Diagnostics)を用いて検出した。450nmでの光学密度(OD 450nm)を、Sunriseマイクロプレートリーダー(Tecan)を用いて測定した。データを、4パラメータロジティックカーブフィットを用いて分析し、EC50値を、scFvの用量−応答曲線から計算した。VEGFR2受容体ブロッキングアッセイによって測定された、主要な候補またはそれらの誘導体の典型的な能力を、表7および9に列挙する。
【0215】
VEGFR1受容体ブロッキングアッセイのために、ヒトVEGF165を、PBS中に0.0125μg/mlで、96穴Maxisorp ELISAプレート(Nunc)上にコートし、0.4%BSAおよび0.1%Tween20を含むPBSを用いてブロッキングした。ヒトIgGの6×ヒスチジンタグ付Fcと融合したヒトVEGFR1の細胞外ドメインのアミノ酸残基1〜687個からなる、組換えヒトVEGFR1/Fcキメラ(R&D Systems Inc.)100ng/mlを、PBST中で3倍で連続希釈した抗VEGF scFvと、まずインキュベートした。室温で30〜60分インキュベーションした後、混合物を、ヒトVEGF165が固定化されたプレートに移し、90分間インキュベートした。VEGFR1/Fcキメラと固定化したVEGF165との結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼにカップリングさせたヤギ(Fab)抗ヒトIgG Fcγ(Jackson ImmunoResearch)に続いて基質(BM Blue POD基質、Roche Diagnostics)を用いて検出した。450nmでの光学密度(OD 450nm)を、Sunriseマイクロプレートリーダー(Tecan)を用いて測定した。データを上記のように分析し、EC50値を、scFvの用量−応答曲線から計算した。VEGFR1受容体ブロッキングアッセイによって測定された、主要な候補の典型的な能力を、表7に列挙する。
【0216】
(実施例5)
(VEGF阻害のHUVECアッセイ)
この実施例では、開示された、VEGFインヒビターとしての抗VEGF scFv候補またはそれらの誘導体の能力を測定する別の方法として、HUVECアッセイを例示する。
【0217】
数人のドナーからプールしたヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)(Promocell)を、2継代から14継代で使用した。細胞を、0.4%ECGS/H、2%ウシ胎仔血清、0.1ng/mlの上皮増殖因子、1μg/mlのヒドロコルチゾン、1ng/mlの塩基性線維芽細胞因子および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含む、50μlの完全内皮細胞増殖培地(ECGM)(Promocell)中で、1000個/穴で細胞を播種した。7から8時間後、50μlの飢餓培地(熱不活性化した0.5%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むサプリメントなしのECGM)を細胞に添加し、細胞を15から16時間、飢餓状態にさせた。3倍で連続希釈した抗VEGF scFv(0.023〜150nM)、および組換えヒトVEGF165(0.08nM)、組換えマウスVEGF164(0.08nM)または組換えラットVEGF164(0.3nM)の1つを飢餓培地中に調製し、室温で30〜60分間プレインキュベートした。異なる濃度のVEGFを、それらの異なる相対的な生物活性を補うために使用した。準最大(submaximal)のVEGF誘導型増殖を刺激する濃度(EC90)を使用した。混合物100μlを、HUVEC懸濁物を含む96穴組織培養プレートに添加し、37℃/5%COの加湿した(humified)インキュベータ中で4日間インキュベートした。20μl/穴のWST−1細胞増殖試薬(Roche)を添加した後、Sunriseマイクロプレートリーダー(Tecan)を用いて、HUVECの増殖を450nm(参照波長として620nmを使用した)での吸光度を測定することによって評価した。データを、4パラメータロジティックカーブフィットを用いて分析し、50%のHUVEC増殖を阻害するのに必要な抗VEGF scFvの濃度(EC50)を、阻害曲線から導き出した。
【0218】
HUVECアッセイによって測定された、主要な候補またはそれらの誘導体の典型的な能力を、表7に列挙する。さらに、主要な候補の1つの誘導体、578minmaxによるhVEGF165誘導型HUVEC増殖の阻害を、図9に例示する。hVEGF165誘導型細胞増殖を阻害するための578minmaxのEC50は、0.06nMと決定される(図9)。VEGFインヒビターとしての578minmaxの能力は、ルセンティスと比較して約1.6倍優れている。578minmaxによる、マウスまたはラットVEGF164誘導型HUVEC増殖の阻害も、図10に例示する。マウスおよびラットVEGF164誘導型細胞増殖を阻害するための578minmaxのEC50は、それぞれ0.06nMおよび0.07nMである(図10)。したがって、マウスおよびラットVEGFは、典型的な誘導体(578minmax)による阻害に関して、ヒトVEGFと等力である。また、この実験では、ルセンティスは、齧歯動物のVEGFにより誘導される増殖を阻害しない。
【0219】
(実施例6)
(無毛モルモットにおけるhVEGF165誘導型血管性透過への抗VEGF scFvの効果)
この実施例では、ヒトVEGF165誘導型血管性透過への抗VEGF scFvの効果を、Milesアッセイを用いてモルモットにおいて評価した。1匹の動物につき30箇所の適用部位を、耐久性マーカーを用いて雄性の無毛モルモットの背側上にマークした。処置日に、全身麻酔の下、1%エバンスブルー色素溶液1mlを、各動物に静脈内投与した。色素注射して1時間後、2.61nMの組換えヒトVEGF165(PeproTech EC Ltd.)および様々な濃度の抗VEGF scFv(0nM、0.085nM、0.256nM、0.767nM、2.3nM、6.9nM、20.7nM、62.1nM;試験アイテムにつきn=7の動物)を含む試験溶液0.1mlを、背側上のマークに3連で注射した(試験アイテムの濃度につき3注射)。PBSの注射を、全動物における負の対照として供給した。追加の対照として、6.9nMのルセンティス(Novartis)を全動物において注射した。
【0220】
試験溶液を注射して1時間後、動物を安楽死させ、裸皮を採取し、浄化し、入射および透過光を用いてデジタル撮影した。注射部位に溢出したエバンスブルー色素の面積を、ImageJを用いて評価した。各動物に関して、色素漏出の面積に対する抗VEGF scFv濃度を、4パラメータロジスティックカーブフィットを用いて分析した。50%血管性漏出を阻害するのに必要な抗VEGF scFvの濃度(EC50)を、阻害曲線から導き出した。
【0221】
実験プロトコールを図11に例示する。また、hVEGFの阻害におけるscFv候補、ESBA903(578minmax)および802(511max)の効能を図11に図示し、血管系から皮膚に漏出したエバンスブルー色素を含む面積の種々のサイズによって表した。903および802に関する効能データを図12に示す。6.9nMで、903および802は、試験した全動物において、ルセンティスと比較して、VEGFの誘導による皮膚への血管性漏出に対してより強い阻害を示した(図12)。
【0222】
(実施例7)
(ラットにおけるhVEGF165誘導型網膜血管性漏出に対する局所的抗VEGF scFv処置の効果)
この実験では、578minmaxの局所的効能を、修正したMilesアッセイを用いて実証する。これらの修正には、例えば、scFvの硝子体内注射および局所適用を用いる前混合試験が含まれる。
【0223】
前混合した異なる濃度の抗VEGF scFv(VEGFより10、3および1倍のモル過剰)とVEGF(500ng)とを、単回硝子体内注射により適用した。アバスチン(Roche)(VEGFより10、3および1倍のモル過剰)を、正の対照として使用した。578minmax用のビヒクル(クエン酸緩衝液、クエン酸ナトリウム20mM、NaCl125mM、pH7)を、負の対照として使用した。図13に図示されるように、hVEGF165との前混合は、578minmax(ESBA903)を促進させ、hVEGF誘導型網膜血管性透過を完全に阻害した。この実験では、578minmax(ESBA903)の阻害効果は、アバスチンと比較して、より顕著であった。
【0224】
局所適用のために、VEGF刺激の5日前に、成体のSprague−Dawleyラットに、1日4回(4液滴/日)両側局所投薬により、578minmax(1%=10mg/ml)を与えた(灌流の日(6日目)まで)。578minmax用のビヒクル(局所投薬)およびAlcon RTKi(10mg/kg/d、経口強制栄養)を、負および正の対照として使用した。5日目に、ラットを麻酔し、それらの瞳孔を散大させる。全動物に、両眼中に、hrVEGF500ng(10μl)の硝子体内注射を与える。VEGFを注射して24時間後、3%エバンスブルー色素の静脈内注入を、全身麻酔中に全動物において行う。色素を90分間循環させた後、ラットを安楽死させる。血液試料を取り、次いでラットを無菌生理食塩水で灌流し、次いで各ラットの両眼をすぐに摘出し、手術用顕微鏡を用いて網膜を収集する。網膜および血漿試料に関して、60μlの上清を、620/740nmで分光光度計を用いてエバンスブルー色素の吸光度(ABS)を測定するために使用する。色素吸光度によって測定されるような、血液/網膜のバリアの崩壊およびその後の網膜血管性透過を、正味のABS/湿重量/血漿ABSの平均±s.e.m.として計算する。P≦0.05が有意と考えられる一元配置ANOVAを、処置手段の間の全体的な差を決定するのに使用する。図14に例示されるように、578minmax(903)の局所投与(5日間の前処置、1日につき4液滴)により、hVEGF誘導型網膜血管性透過が有意に阻害された。これは、眼内疾患の処置に有用な、局所的に有効な抗体を実証する最初のものである。
【0225】
(等価物)
前述の記載を考慮して、本発明の多くの修正および代替の実施形態が、当業者に明らかである。したがって、この記載は、単なる例示として解釈すべきであり、本発明を実施するのに最良の様式を当業者に教示するためのものである。構造の詳細は、本発明の精神から逸脱することなく実質的に変えることができ、添付の特許請求の範囲内となる全ての修正の独占的使用権を保有する。本発明は、添付の特許請求の範囲および法律の適用可能な規則によって要求される程度にのみ制限されるものであると意図する。
【0226】
特許、特許出願、文献、書籍、論文、論述、ウェブページ、図および/または添付書類を含む、この出願に引用された全文献および類似物は、かかる文献および類似物の書式に関わらず、参照によりそれらの全体が明示的に援用される。援用された文献および類似物の1つまたは複数が、定義された用語、用語の使用法、記載された技法または同様のものを含む本明細書と異なるか相反する場合には、本明細書が優先される。
【0227】
本明細書で使用される節の見出しは、単に組織化のためのものであり、記載された主題を限定するものと決して解釈すべきではない。
【0228】
本発明は、様々な実施形態および実施例と併せて記載されているが、本教示がかかる実施形態または実施例に限定されるという意図はない。それどころか、当業者に理解されるように、本発明は、様々な代替、修正および等価物を包含する。
【0229】
特許請求の範囲は、その趣旨を述べない限り、記載された順番または要素に限定されると読むべきではない。形態および詳細の様々な変更は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、行うことができると理解すべきである。したがって、以下の特許請求の範囲およびその等価物の範囲および精神内となる全実施形態が特許請求される。
【0230】
(配列表)
【0231】
【数1】

【0232】
【数2】

【0233】
【数3】

【0234】
【数4】

【0235】
【数5】

【0236】
【数6】

【0237】
【数7】

【0238】
【数8】

【0239】
【数9】

【0240】
【数10】

【0241】
【数11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変重鎖(VH)および/または可変軽鎖(VL)を含む組換えイムノバインダーであって、該イムノバインダーがヒトVEGFを中和しウサギCDRを含む、イムノバインダー。
【請求項2】
キメラのイムノバインダーである、請求項1に記載のイムノバインダー。
【請求項3】
ヒト化されている、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項4】
配列番号14、配列番号26、配列番号37、配列番号49、配列番号60、および配列番号71からなる群のコンセンサス配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項5】
配列番号2、配列番号3、配列番号15、配列番号27、配列番号38、配列番号50、および配列番号61からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項6】
前記VHが配列番号2、配列番号15、および配列番号27からなる群のCDRを含み、および/または前記VLが配列番号38、配列番号50、および配列番号61からなる群のCDRを含む、請求項5に記載のイムノバインダー。
【請求項7】
前記VHが配列番号3、配列番号15、および配列番号27からなる群のCDRを含み、および/または前記VLが配列番号38、配列番号50、および配列番号61からなる群のCDRを含む、請求項5に記載のイムノバインダー。
【請求項8】
配列番号4、配列番号16、配列番号28、配列番号39、配列番号51、および配列番号62からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項9】
前記VHが配列番号4、配列番号16、配列番号28からなる群のCDRを含み、および/または前記VLが配列番号39、配列番号51、および配列番号62からなる群のCDRを含む、請求項8に記載のイムノバインダー。
【請求項10】
配列番号5、配列番号17、配列番号29、配列番号40、配列番号52、および配列番号63からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項11】
前記VHが配列番号5、配列番号17、配列番号29からなる群のCDRを含み、および/または前記VLが配列番号40、配列番号52、および配列番号63からなる群のCDRを含む、請求項10に記載のイムノバインダー。
【請求項12】
配列番号6、配列番号18、配列番号30、配列番号41、配列番号53、および配列番号64からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項13】
前記VHが配列番号6、配列番号18、および配列番号30からなる群のCDRを含み、および/または前記VLが配列番号41、配列番号53、および配列番号64からなる群のCDRを含む、請求項12に記載のイムノバインダー。
【請求項14】
配列番号7、配列番号19、配列番号31、配列番号42、配列番号54、および配列番号65からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項15】
前記VHが配列番号7、配列番号19、および配列番号31からなる群のCDRを含み、および/または前記VLが配列番号42、配列番号54、および配列番号65からなる群のCDRを含む、請求項14に記載のイムノバインダー。
【請求項16】
配列番号8、配列番号20、配列番号32、配列番号43、配列番号55、および配列番号66からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項17】
前記VHが配列番号8、配列番号20、および配列番号32からなる群のCDRを含み、および/または前記VLが配列番号43、配列番号55、および配列番号66からなる群のCDRを含む、請求項16に記載のイムノバインダー。
【請求項18】
配列番号9、配列番号21、配列番号33、配列番号44、配列番号56、および配列番号67からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項19】
前記VHが配列番号9、配列番号21、および配列番号33からなる群のCDRを含み、かつ/または前記VLが配列番号44、配列番号56、および配列番号67からなる群のCDRを含む、請求項18に記載のイムノバインダー。
【請求項20】
配列番号10、配列番号22、配列番号34、配列番号45、配列番号57、および配列番号68からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項21】
前記VHが配列番号10、配列番号22、および配列番号34からなる群のCDRを含み、かつ/または前記VLが配列番号45、配列番号57、および配列番号68からなる群のCDRを含む、請求項20に記載のイムノバインダー。
【請求項22】
配列番号11、配列番号13、配列番号23、配列番号25、配列番号35、配列番号46、配列番号58、および配列番号69からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項23】
前記VHが、(i)配列番号11、配列番号23、および配列番号35からなる群、(ii)配列番号11、配列番号25、および配列番号35からなる群、(iii)配列番号13、配列番号23、および配列番号35からなる群、または(iv)配列番号13、配列番号25、および配列番号35からなる群のCDRを含む、請求項22に記載のイムノバインダー。
【請求項24】
前記VLが、配列番号46、配列番号58、および配列番号69からなる群のCDRを含む、請求項23に記載のイムノバインダー。
【請求項25】
配列番号12、配列番号24、配列番号36、配列番号47、配列番号48、配列番号59、および配列番号70からなる群の配列に少なくとも80%の類似性を有するCDRを少なくとも1つ含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項26】
前記VHが、配列番号12、配列番号24、および配列番号36からなる群のCDRを含み、かつ/または前記VLが、(i)配列番号47、配列番号59、および配列番号70からなる群のCDR、もしくは(ii)配列番号48、配列番号59、および配列番号70からなる群のCDRを含む、請求項25に記載のイムノバインダー。
【請求項27】
配列番号169の配列に少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域可変領域フレームワーク配列を含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項28】
前記重鎖可変領域フレームワークが配列番号170または配列番号171である、請求項27に記載のイムノバインダー。
【請求項29】
AHoナンバリングシステムによる、前記重鎖可変領域の位置1、83、または87に欠失を有する、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項30】
AHoナンバリングシステムによる、前記重鎖可変領域における位置2、12、24、25、46、54、55、83、84、87、89、103、105、108、または144の少なくとも1つに置換を有する、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項31】
前記置換が、
(a)位置2のグルタミン、
(b)位置12のセリン、
(c)位置24のスレオニン、
(d)位置25のバリン、
(e)位置46のロイシン、
(f)位置54のチロシン、
(g)位置55のイソロイシン、
(h)位置83のアラニン、
(i)位置84のアスパラギン、
(j)位置87のアラニンまたはロイシン、
(k)位置89のアラニンまたはロイシン、
(l)位置103のセリンまたはスレオニン、
(m)位置105のフェニルアラニン、
(n)位置108のアルギニン、および
(o)位置144のセリンまたはスレオニン
からなる群より選択される、請求項30に記載のイムノバインダー。
【請求項32】
配列番号167の配列に少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖可変領域フレームワーク配列を含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項33】
前記軽鎖可変領域フレームワークが配列番号167または配列番号168である、請求項30に記載のイムノバインダー。
【請求項34】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域の位置1、2、または15の少なくとも1つに置換を有する、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項35】
前記置換が、
(a)位置1のアスパラギン酸、
(b)位置2のバリン、
(c)位置15のスレオニン
からなる群より選択される、請求項34に記載のイムノバインダー。
【請求項36】
配列番号107に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号72に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項5から7、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項37】
配列番号109に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号73に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項8から9、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項38】
配列番号110に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号74に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項10から11、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項39】
配列番号111に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号75に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項12から13、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項40】
配列番号112に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号76に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項14から15、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項41】
配列番号113に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号77に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項16から17、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項42】
配列番号178、配列番号179、または配列番号180に少なくとも80%の同一性を有する、請求項41に記載のイムノバインダー。
【請求項43】
配列番号114に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号78に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項18から19、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項44】
配列番号115に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号79に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項20から21、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項45】
配列番号177に少なくとも80%の同一性を有する、請求項44に記載のイムノバインダー。
【請求項46】
配列番号116に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号80に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項22から24、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項47】
配列番号117に少なくとも80%類似であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号81に少なくとも80%類似である軽鎖可変領域を含む、請求項25から26、または27から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項48】
配列番号176に少なくとも80%の同一性を有する、請求項47に記載のイムノバインダー。
【請求項49】
前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダーと、ヒトVEGFに対する結合を競合するイムノバインダー。
【請求項50】
前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダーによって認識されるヒトVEGF上のエピトープに対して、少なくとも10−1の親和性で結合するイムノバインダー。
【請求項51】
ヒトおよびラット/マウスVEGFに特異的に結合する、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項52】
抗体、scFv、Fab、またはDabである、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項53】
前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー、および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項54】
前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダーをコードしている、単離された核酸分子。
【請求項55】
請求項54に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項56】
請求項55に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項57】
被験体がVEGF媒介性疾患について処置されるように、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダーを前記被験体に投与することを含む、被験体におけるヒトVEGF媒介性疾患を処置または予防する方法。
【請求項58】
前記イムノバインダーを局所的に投与する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記VEGF媒介性疾患が、加齢黄斑変性、新生血管形成緑内障、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、水晶体後線維増殖症、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、直腸結腸癌、肝臓癌、卵巣癌、昏睡、卵巣男性胚細胞腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭部および頸部のがん、上咽頭癌、鼻咽腔癌、肝芽腫、カポジ肉腫、メラノーマ、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽細胞腫、膵臓癌、網膜芽細胞腫、星細胞腫、膠芽腫、神経鞘腫、乏突起膠腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症に付随する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に付随するものなど)、メグズ症候群、慢性関節リウマチ、乾癬、ならびにアテローム性動脈硬化症からなる群より選択される、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
配列番号60〜166、および配列番号175〜180に記載するアミノ酸配列の任意の1つを含む抗体を生成するハイブリドーマ。
【請求項61】
ラット/マウスおよびヒトのVEGF、またはその部分と交差反応性であるイムノバインダーを産生、または同定するのに適する免疫原。
【請求項62】
配列番号1を有する、請求項61に記載の免疫原。
【請求項63】
ラット/マウスおよびヒトのVEGFと交差反応性であるイムノバインダーを作製する方法であって、請求項61に記載の免疫原を使用する、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−525359(P2011−525359A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515049(P2011−515049)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000220
【国際公開番号】WO2009/155724
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(502233344)エスバテック、アン アルコン バイオメディカル リサーチ ユニット、エルエルシー (19)
【氏名又は名称原語表記】ESBATech, an Alcon Biomedical Research Unit, LLC
【Fターム(参考)】