説明

VLMW重合体の持続放出性製剤

本発明は、末端キャップされたオリゴマーと活性物質とを含む非経口持続及び制御放出性半固体製剤であって、いかなる追加の粘度低下剤又は賦形剤も有しないものに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端キャップされたオリゴマーと活性物質とを含む非経口持続及び制御放出性半固体製剤であって、いかなる追加の粘度低下剤又は賦形剤も有しないものに関するものである。
【0002】
本発明は、当該半固体を水性の生理学的環境に置いたときに少なくとも1週間にわたって当該活性物質を連続的に放出することを提供する。
【0003】
さらに特定すると、本発明は、少なくとも1種の末端キャップされた超低分子量生分解性重合体と少なくとも1種の活性物質とを含む半固体状の医薬組成物に関するものである。この医薬組成物は、皮下注射や筋肉内注射といった非経口的方法により使用され、水性の生理学的環境で投与されたときに移植/デポー組成物を形成するであろう。
【背景技術】
【0004】
活性物質を持続放出性組成物の形態で投与することに意義があることは、長い間知られていた。
【0005】
活性物質の放出速度を制御するために様々な手法が検討されてきた。このような戦略のうち、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のような生分解性重合体を含む移植又は微粒子製剤であって、その中に活性物質を取り込んだものを開発するために、2つの異なる手法が見出されている。
【0006】
さらなる手法は、生分解性重合体と、水性の体液に非常に可溶又は比較的可溶な溶媒/可塑剤とを含む注射用デポー組成物を開発することであった。溶媒/可塑剤の拡散により、当該重合体が移植部位で急速に凝固するのが促進され、それによって当該薬剤の緩やかな放出が誘導される場合がある。
【0007】
欧州特許第1126822号には、熱可塑性重合体又は熱可塑性共重合体と、有機溶媒と、活性物質と、高分子制御放出性添加剤、例えばポリ(ラクチド−コ−グリコリド)/ポリエチレングリコール(PLGA/PEG)ブロック共重合体とを組み合わせて、当該活性物質の放出速度を制御することができたことが示されている。当該有機溶媒は、体液又は組織液といった水性環境と接触したときに、体液に散逸又は分散することが想定され、そして、実質的に不溶性の熱可塑性ベース重合体は、沈殿して固体マトリックス又は移植物を形成する。
【0008】
たとえ国際公開第2004/012703号パンフレットに記載されたようなデポー組成物を患者の体内の所望の部位に注射して移植物を形成できるにしても、このような注射用デポー組成物は、薬剤及び重合体の他に、ベンジルアルコール又は安息香酸ベンジルのような有機溶媒と、エタノールのようなチキソトロープ剤とを使用することが必要である。それでも、デポー組成物に取り込まれたこれらの添加剤は、それによって当該物質の生体適合性を低下させたり、又は活性剤の取り込み能力を低下させたりする可能性がある。
【0009】
さらに、重合体の製造中に通常使用される又は移植物自体の操作態様において伴う有機溶媒残留物が検出されるのは望ましくない。
【0010】
しかしながら、有機溶媒のような粘度低下剤を添加しなければ、組成物は、注射できる程度には十分に流動しないか、又は注射をするのを困難なものにし、非常に太い針のシリンジ装置が必要となるため、かなりの痛みを伴うことになる。
【0011】
別の手法は、注射によって投与され、そして持続放出性ゲル製剤を自動的に形成する医薬組成物により達成され得る。このような製剤は、国際公開第96/07398号パンフレットで報告されている。当該パンフレットに開示されているように、これらの化合物は、生分解性重合体やペプチドの放出特性を制御するための他の担体マトリックスを添加することなく、非経口持続放出性ゲル製剤として処方された。
【0012】
VLMW(超低分子量)重合体を使用するという枠組みの中では、50/50の比を有するPLGA(すなわち、乳酸とグリコール酸との共重合体であって、50%の乳酸と50%のグリコール酸の単位とを含むもの)であって、約2,300ダルトンの分子量を有し、カルボン酸基を末端基とするものを使用する従来のアッセイは、この予期される結果を開示していない。図3及び例12に示されるように、水性の生理学的環境で投与されたときに当該重合体の迅速な分解が観察された。さらに、このような製剤が遭遇する大きな困難さの一つには、粘度の問題がある。つまり、製造プロセスの間で、なおかつ注射の前に、成分を約50〜60℃で加熱することが必要である。
【0013】
驚くべきことに、様々な方法によって製造され、かつ、カルボン酸末端にキャッピング部分を有する変性超低分子量重合体、すなわち、ポリラクチド又はPLA、PLGA若しくはそれらの混合物といった共重合体から作られた半固体移植物は、注射前又は注射後にいかなる添加剤も追加することなく、水性の生理学的環境に置かれたときに皮下/筋肉内デポー移植物を形成することができることが分かった。水性の生理学的環境で投与されたときに、活性物質が少なくとも1週間、さらには1ヶ月にわたって放出されることが観察された。さらに、このような重合体/製剤のそれらの乾燥状態での予期せぬ流動性により、非経口投与用のシリンジ型のような慣用の装置を使用することが可能になる。本発明の別の有益な利点は、薬剤充填済みのもの(例えば、薬剤充填済み注射器)又は製剤を使用する準備ができているものとして使用できる組成物を提供することである。
【0014】
重合体鎖の末端キャップにより、それらの流動性が増大するため、半固体製剤の製造が容易になると共に、シリンジ型のような従来の装置により当該製剤を注射することが可能になる。投与装置は、16ゲージを有する針及びそれよりも細い針や19ゲージ以上の針の付いた0.3〜1mlのプラスチック注射器であることができるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1126822号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/012703号パンフレット
【特許文献3】国際公開第96/07398号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、特に、持続放出性製剤として使用できる半固体医薬組成物であって、該半固体製剤が水性の生理学的環境に投与されたときに、その活性成分を少なくとも1週間にわたって、さらには1ヶ月を超えて放出するものを提供することである。
【0017】
また、本発明は、超低分子量の連続マトリックス中における固体活性物質(粉末)の特定の安定な懸濁物であるとみなすこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、生体内試験及び試験管内試験の手段により本発明において特許請求した方法を用いて達成された。
【0019】
特に示さない限り、次の定義は、本明細書において本発明を説明するために用いた様々な用語の意味及び範囲を示しかつ定義するために説明するものである。
【0020】
用語「超低分子量」及び「変性超低分子量」とは、500〜5,000ダルトン、好ましくは700〜3,000ダルトン、さらに好ましくは800〜2,000ダルトンの重量平均分子量を有する末端キャップされた重合体又は共重合体をいう。
【0021】
用語「末端キャップされた又はキャップ部分」とは、重合体鎖の末端部に非反応性化学基をグラフトし、それによって当該重合体に分解剤に対する良好な安定性を付与すること(もの)をいう。
【0022】
本明細書において、単独で使用する又は他の基と組み合わせて使用する用語である「アルキル」とは、直鎖状、分岐状、環状、非置換又は置換のアルキルなどの飽和炭化水素基をいう。
【0023】
用語「ヘテロアルキル」とは、少なくとも1個の炭素がヘテロ原子で置換されたアルキルをいう。
【0024】
用語「アルコキシ」とは、アルキル基に酸素が結合したものをいう。
【0025】
用語「アリール」とは、1個の芳香族環、又は、互いに縮合した、共有結合した若しくはエチレン部分やメチレン部分などの共有の基に結合した複数の芳香族環を含有する芳香族置換基をいう。
【0026】
用語「置換アリール」とは、1個以上の置換基で置換されたアリール部分をいう。
【0027】
用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1個の炭素がヘテロ原子で置換されたアリール基をいう。
【0028】
用語「アラルキル」とは、アルキル基がアリール基で置換されたものをいう。
【0029】
用語「ヘテロアラルキル」とは、アルキル基がヘテロアリール基で置換されたものをいう。
【0030】
好ましい末端基は、直鎖状、分岐状、環状、非置換及び置換誘導体を含むアルキル基である。
【0031】
2成分半固体医薬組成物とは、好ましくは乾燥した状態の少なくとも1種の活性物質又はそれらの混合物の他に、製薬上許容される生分解性重合体又はそれらの混合物であると解される。
【0032】
この有用な生分解性でかつ製薬上許容される重合体は、通常、ヒドロキシカルボン酸誘導体オリゴマーである。特に、乳酸及び/又はグリコール酸、ラクチド−グリコリド誘導体又はそれらの混合物である。
【0033】
本明細書において、用語「製薬上許容される」とは、哺乳動物又はヒトによって生理学的に十分に許容されることを意味する。
【0034】
用語「重量平均分子量(MW)」及び「多分散度(lp)」などの重合体の「分子量分布(MW)」とは、当業者に周知の任意の基準法により、例えばゲル透過クロマトグラフィー(GPC)とも呼ばれるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により実施された測定値をいう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、例9で得られるような末端キャップされたPLAで調製されたVLMW処方物からのGLP−1アナログ(BIM51077)の試験管内放出特性を示している。
【図2】図2は、例10で得られるような末端キャップされたPLGA80/20で調製されたVLMW処方物からのトリプトレリン(BIM21003)の試験管内放出特性を示している。
【図3】図3は、例12で得られるような末端キャップされていないPLGA50/50で調製されたVLMW処方物からのトリプトレリン(BIM21003)の生体内放出特性を示している。
【図4】図4は、例13で得られるような末端キャップされたPLAで調製されたVLMW処方物からのソマトスタチンアナログ(BIM23190)の生体内放出特性を示している。
【図5】図5は、例13で得られるような末端キャップされたPLAで調製されたVLMW処方物からのGLP−1アナログ(BIM51077)の生体内放出特性を示している。
【図6】図6は、例13で得られるような末端キャップされたPLAで調製された複数のVLMW処方物からのトリプトレリン(BIM21003)の生体内放出特性を示している。
【図7】図7は、例14で得られるようなスプラーグドーリーラットに投与されたVLMW処方物からの組換えヒト成長ホルモン(rhGH)の生体内放出特性を示している。
【図8】図8は、例15で得られるような無胸腺ラットに投与されたVLMW処方物からの組換えヒト成長ホルモン(rhGH)の生体内放出特性を示している。
【図9】図9は、例16で得られるようなrhGH/VLMW処方物で処理された低酸素ラットの体重増加を示している。
【図10】図10は、例16で得られるようなrhGH/VLMW処方物の投与後8日目における低酸素ラットのIGF−1レベルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
したがって、本発明は、次のものを包含する持続及び制御放出性半固体製剤/デポー移植物である:
持続及び制御放出半固体製剤であって、
a)500〜5000ダルトンの重量平均分子量を有する、末端キャップされた変性超低分子量生分解性末端キャップ重合体若しくは共重合体又はそれらの混合物と、
b)少なくとも1種の活性物質又はそれらの混合物と
を含み、その製造が追加の希釈剤、可塑剤、溶媒又は賦形剤を添加することなく実施された、持続及び制御放出性半固体製剤/デポー移植物に関するものである。
【0037】
この組成物は、本発明において開示される処方物に使用でき、かつ、次の物質:ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリウレタン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖類、ポリ(プロピレンフマレート)並びにそれらの共重合体、三元共重合体及び混合物(ただし、これらに限定されない)から選択される、適当な生分解性の製薬上許容される低分子量重合体をさらに含むことができる。
【0038】
当該組成物の好ましい形態は、適当な生分解性の製薬上許容される低分子量重合体、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)又はそれらの混合物を含む。
【0039】
本発明において開示される処方物に添加できる好適な活性物質は、次のもの:蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、ペプチド、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局所麻酔薬、抗生物質製剤、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症薬、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗精神病薬、中枢神経系(CNS)薬、抗凝血剤、線維素溶解薬、成長因子、抗体、抗原、眼薬、ヒト成長ホルモン、メチオニン−ヒト成長ホルモン、D−フェニルアラニンヒト成長ホルモン、グルカゴン、カルシトニン、インスリン、ヘパリン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、Viol因子、第IX因子、黄体形成ホルモン、リラキシン、グレリン、卵胞刺激ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、フィルグラスチム上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、線線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF)、インターロイキン(IL)、コロニー刺激因子(CSF、MCF、GCSF、GMCSF)、インターフェロン(IFN)、上皮成長因子(VEGF、EGF)、エリトロポエチン(EPO)、アンギオポエチン(ANG)、胎盤由来成長因子(PIGF)、ボツリヌス毒素のような毒素及び低酸素誘導転写調節因子(HIF)並びにこれらの化合物の製薬上許容される塩又はそれらのアナログ、断片若しくは誘導体から選択されるが、これらに限定されない。
【0040】
好ましくは、当該組成物の活性物質は、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、例えば、黄体形成ホルモン(LHRH)若しくはLHRHアナログ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、インスリン、ソマトスタチンのアナログ及び誘導体、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出ペプチド、カルシトニン並びにこれらの化合物の製薬上許容される塩又はそれらのアナログ、断片若しくは誘導体であることができる。
【0041】
本発明によれば、当該組成物のさらに好ましい活性物質は、ペプチド、ペプチド誘導体、ポリペプチド又は蛋白質、例えば、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、インスリン様成長因子(IGF)、例えばIGF−1、GLP−1アナログ、黄体形成ホルモン(LHRH)又はLHRHアナログ及びソマトスタチンアナログである。
【0042】
本発明に従う組成物のために使用できる活性物質の製薬上の塩は、有機酸及び無機酸との酸付加塩により製造される。化合物の酸付加塩の例は、無機酸との塩、例えば、塩酸、臭化水素及び沃化水素のようなハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸などとの塩、有機スルホン酸との塩、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのようなアルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸との塩、並びに有機カルボン酸との塩、例えば、酢酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、フマル酸、蓚酸、ステアリン酸、サリチル酸、アスコルビン酸との塩又はパモイン酸などのような不溶性塩である。
【0043】
また、活性物質がカルボキシル基を有するかどうかで、塩基により製薬上許容される塩が形成される。このような塩の例は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム及びカリウム塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、例えば、ジイソプロピルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ピペラジン、N−エチルピペリジン、N−メチル−D−グルカミン及びプロカインのようなアミンとの塩又はアルギニン及びリシンなどのアミノ酸との塩である。
【0044】
好ましいペプチド塩は、有機酸により形成された塩である。
【0045】
好ましい形態では、本発明は、500〜5000ダルトンの分子量を有する乳酸及び/又はグリコール酸の単位を含む変性超低分子量重合体又は共重合体に関するものである。
【0046】
超低分子量重合体の好ましい分子量は、700〜3000ダルトンであり、特に好ましくは、800〜2000ダルトンである。
【0047】
本発明によれば、当該重合体は、100/0〜50/50、好ましくは100/0〜80/20の乳酸/グリコール酸又はラクチド/グリコリド単量体比を有することができる。
【0048】
好ましくは、本発明において開示する超低分子量重合体は、分解剤に対する安定性を良好にするために、また物理的流動性を増加させることで製造方法及び注入方法を容易にするために、末端キャップされる。好適な末端基の例は、アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルその他の置換基である。好ましい末端基は、アルキル基(直鎖状、分岐状、環状、非置換及び置換誘導体を含む)である。
【0049】
さらに好ましい末端基は、直鎖状アルキル基である。
【0050】
本発明は、カルボン酸末端の代わりにC5〜C18アルキル部分で末端キャップされた超低分子量生分解性重合体と活性物質とを少なくとも含む半固体医薬組成物/デポー移植物をさらに包含し、当該医薬組成物は、当該医薬組成物が水性の生理学的環境中に投与されたときに少なくとも1週間にわたり活性物質を連続的に放出する15〜50℃の温度でのデポー/移植物の形成に好適である。
【0051】
本発明によれば、好ましい重合体末端基はアルキル基であり、これらのうち、特に、5〜18個の炭素原子を有するアルキル基、さらに好ましくは5〜12個の炭素原子を有するアルキル基を挙げることができる。
【0052】
さらに、ここで説明する半固体医薬組成物/デポー移植物の非経口的適用に好ましい温度は、25〜40℃である。本願発明によれば、低分子量重合体処方物に配合される活性物質の量は、生物学的効果を発揮するのに必要な活性物質の濃度と、当該物質が放出されるべき時間の長さとに関連する所望の放出特性に依存する。
【0053】
さらに、本発明は、少なくとも1種の活性物質と混合された超低分子量生分解性重合体を含む、非経口適用のための2成分半固体医薬組成物/デポー移植物の製造方法に関するものである。
【0054】
本発明に従う半固体製剤/デポー移植物混合物の第1の製造方法は、次のとおりに実施できる:
(a)活性物質及び重合体を2個の異なるシリンジに導入し、ピストンを装着し、
(b)これら2個の充填シリンジと、3個の円錐体を備えるステンレスコネクターとを連結し、
(c)該活性物質が充填されたシリンジから真空下で空気を除去し、
(d)これら2個のシリンジ間での混練プロセスにより該2種成分を随意に5℃〜60℃の制御温度下、好ましくは室温で混合させる。
【0055】
本発明によれば、医薬処方物は、以下のように好適に製造される:
・適切な量の変性超低分子量重合体と、1種の活性物質又は活性物質の混合物(その生理学的に安全な塩を含む)とを混合させ、ここで、該混合物は、複数のシリンジの手段により作製することができることを特徴とし、
・該活性物質は、随意に乾燥粉末(液体であることもできる)として選択されるが、ここで、乾燥粉末又は粉末形態が好ましく、
・その後、これらの充填シリンジをピストンで閉じ、
・その後、これらの充填シリンジをコネクターにより連結し、
・当業者に周知の好適な方法、例えば真空、超音波処理又はマイクロ波処理によって当該装置から空気を除去し、この方法は、適宜、好ましくは真空下で実施され、
・その後、これら2種の成分をコネクターを介して混合させることによってブレンドし、
・随意に、シリンジをそれ自体周知の態様で加熱することによって該混合物を流動化させる。
【0056】
さらに、本発明は、ここで説明した半固体製剤/デポー移植物を提供するための第2方法に関するものでもある。
【0057】
半固体製剤/デポー移植物の製造に好適な本発明の第2方法は、次の工程を含む:
(a)重合体をブレンダー内で混合させる工程、
(b)活性物質を添加する工程、
(c)これらの成分を室温で、随意に5℃〜60℃の制御温度下で混合させる工程、
(d)該方法の最後の工程を真空下で実施して気泡を除去することができる。
【0058】
本発明に従って、医薬処方物が好適に製造される:
・成分のブレンドを特定の装置により制御された速度で開始し、ここで、この例示方法においてブレンドに使用される代表的な装置は、例えばシリンダー型の装置を備えることを特徴とする。
・活性物質は、随意に乾燥粉末として選択されるが、ただし、液体であってもよい。乾燥粉末の形態又は粉末の形態が好ましい。
・該医薬処方物の成分の混合は、制御された温度下で実施することができ、該ブレンドは、好ましくは室温で実施される。
【0059】
さらに、本発明は、ここで説明した半固体製剤/デポー移植物を好適に製造するための第3方法に関するものでもある。
【0060】
半固体製剤/デポー移植物の製造に好適な第3方法は、次のとおりに実施できる:
(a)超低分子量重合体を少量の塩化メチレンに溶解させる。
(b)該重合体溶液に活性物質を添加する。
(c)重合体及び活性物質の溶液/懸濁液を撹拌しながら、適当量のヘプタンを添加する。
(d)該方法の最後の工程は、バルクから溶媒を除去するために所定温度及び真空下で実施されるであろう。
【0061】
本発明に従って、医薬処方物は、好適に製造される:
・変性超低分子量重合体を好適な溶媒に溶解させ、或いは合成及び/又は精製のために使用される溶媒に溶解された該重合体を維持する。
・該重合体溶液に適切な量の1種の活性物質又活性物質の混合物を添加する(その生理学的に安全な塩を含む)。
・活性物質は、随意に乾燥粉末として選択されるが、ただし、液体であってもよい。乾燥粉末の形態又は粉末の形態が好ましい。
・その後、該混合物に該超低分子量重合体の非溶剤を添加し、その沈殿及び活性物質の部分的な取り込みを誘導する。
・該医薬処方物の成分のブレンドは、制御された温度で実施でき、このブレンドは、好ましくは室温で実施される。
・バルクから溶媒を当業者に周知の好適な方法、例えば真空下での加熱によって直接除去する又は沈殿後に除去する。
【0062】
さらに、この製造法全体は、温度、圧力、加熱時間及び冷却時間に関して当業者には一般的な器具により制御できる。
【0063】
活性物質は、0.001〜70%(w/w)の量、好ましくは0.1〜30%(w/w)の量、より好ましくは2〜30%(w/w)の量で含有できる。
【0064】
当該活性物質は、半固体製剤内に懸濁、分散又溶解できる。
【0065】
本発明のさらなる実施形態では、活性物質は、凍結乾燥、乾燥、磨砕、顆粒化、押出、マイクロカプセル化、錯化又は当業者に知られている任意の好適な方法により、組成物の製造前に予め処理できる。
【0066】
さらに、組成物の粘度を減少させる又は組成物の注射性を改善させるためには使用されず、かつ、重合体には作用しない任意の賦形剤を随意に使用することができる。例えば、安定剤及び界面活性剤のような、注射用組成物に使用される伝統的なあらゆる賦形剤を添加することができる。
【0067】
放射線滅菌、オートクレーブ滅菌又は滅菌ろ過といった、当業者に知られている任意の技術を本発明において開示した半固体製剤/デポー移植物に使用して滅菌製剤を得ることができる。
【0068】
また、本発明には、当該半固体製剤の製造が無菌条件下で実行できることも包含される。
【0069】
半固体製剤の製造は、予備充填した2個のシリンジ間での混練方法によって即席で、すなわち注射前に実行できる。
【0070】
さらなる実施形態として、本発明の半固体製剤は、すぐに使用できるように準備されたものとして予備充填シリンジ中で状態調整できる。
【0071】
本発明の特定の実施形態として、半固体製剤は、慢性的な疾患又は病気の治療及び/又は予防のためのものであることができる。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、持続及び制御放出性製剤は注射用である。
【実施例】
【0073】
次の実施例は、本発明の例示として役立つものであり、本発明を限定するものではない。
例1
ゲル透過クロマトグラフィーによる重合体の重量平均分子量の決定
40℃のStyragel HR1カラム(Waters)を用い、溶離剤としてテトラヒドロフラン(HPLC等級)を0.2mL/分の流れで使用したゲル透過クロマトグラフィーにより測定を実行した。382〜4,920g/molの分子量範囲を有する様々なポリスチレン基準物(ポリマー・ラボラトリーズ社)を検量線作成のために使用した。これらの重合体溶液をテトラヒドロフラン中0.4mg/mLで調製した。これらの分析を蒸発光散乱検出器(PL−ELS 1000,ポリマー・ラボラトリーズ社)を備えたWaters Alliance 2695クロマトグラフィーシステムにより実施した。
結果を表1にまとめる。
【0074】
【表1】

【0075】
例2
示差走査熱量測定法による重合体のガラス転移温度の測定
ガラス転移温度を、熱分析調節器(TAC7/DX,パーキン・エルマー・インストルメンツ社)及び冷却付属品(インタークーラー2,パーキン・エルマー・インストルメンツ社)を備えた示差走査熱量測定装置(DSC7,パーキン・エルマー・インストルメンツ社)を使用して測定した。計器温度及びエンタルピーを、基準物として使用したインジウム及びn−オクタンで検量した。5〜10mgの重合体をアルミニウム皿に導入し、その後、孔の開いたカバーで封止した。全ての場合において、空の皿を基準として使用し、窒素をパージガスとして使用した。
試料を周囲温度から−70℃までの冷却−加熱プログラムに付し、10分間にわたり−70℃で保持し、その後、5℃/分の速度で20℃にまで加熱した。冷却−加熱プログラムを繰り返した。ガラス転移温度を、第1加熱工程及び第2加熱工程から測定された転移の開始温度として得た。
結果を表1にまとめる。
【0076】
例3
BIM23190C /VLMW処方物(バッチN174055)の製造
ソマトスタチンアナログBIM23190C(酢酸塩)0.6gをシリンジに導入し、6gの半固体PLA(FB341バッチ,表1参照)を第2シリンジに導入した。これら2個のシリンジを3円錐体ステンレスコネクターと連結させた。第1シリンジに真空を適用して活性物質から空気を除去した。BIM23190Cと重合体賦形剤との混合を2個のシリンジ間での押し−引き混練方法によって達成した。この系を50〜60℃まで暖めて混合プロセスを容易にした。
この混合物(バルク生成物)を1個のシリンジに集め、その後19×0.8mm針付き0.3mLの単回投与シリンジに分配し、そして個々のアルミニウム密閉バッグに詰めた。充填された生成物の滅菌をドライアイス中において25kGyのγ線照射により実行した。最終生成物を−22℃で保存した。
活性物質の含有量及び純度を逆相液体クロマトグラフィーによって管理した。これらの処方物をアセトニトリル及び酢酸溶液0.1%(20/80v/v)中に共に溶解させた。測定を、アセトニトリル/トリフルオル酢酸溶液(0.1%)による溶離勾配を使用して対称C18カラム(ウォーターズ社)により40℃で実行した。これらの分析を、ウォーターズポンプコントロールモジュールと、ウォーターズ717プラスオートサンプラーと、スパークミストラルオーブンと、ウォーターズ486チューナブルアブソーバンスデテクターとを備えたHPLCポンプ(ウォーターズ515)により280nmで実施した。
この最終生成物中におけるBIM23190の含有量は約7.7%(w/w)であると決定され、BIM23190ピークの面積は、全面積の97.1%に相当した。
結果を表2にまとめる。
【0077】
【表2】

【0078】
例4
BIM51077C /VLMW処方物(バッチN182054)の製造
7.0gの半固体PLA(MG02.013バッチ,表1参照)をブレンダー(AR400,エルウェカ)の2個のシリンダー間に設置した。この重合体をこの装置でゆっくりと混合すると同時に、0.70mgのGLP−1アナログBIM51077C(酢酸塩)を漏斗を介してゆっくりと導入した。この装置でゆっくりと2時間混合した後に室温で均質な組成物を得た。この混合物(バルク生成物)を10mLプラスチックシリンジに集めた後に、このバルクを真空下に30分間置いて当該混合プロセス中に導入された気泡を除去した。
その後、バルク生成物を19×1.2mm針付きの0.3mL単回投与シリンジに分配し、そして個々のアルミニウム密閉バッグに詰めた。充填生成物の滅菌をドライアイス中において25kGyのγ線照射により実行した。最終生成物を−22℃で保存した。
活性物質の含有量と純度を逆相液体クロマトグラフィーによって管理した。これらの処方物をアセトニトリル及び酢酸溶液0.1M(20/80v/v)中に共に溶解させた。これらの測定を、トリエチルアミンホスフェート緩衝液(pH2.3)/アセトニトリルによる溶離勾配を使用して対称C18カラム(ウォーターズ)により50℃で実行した。分析を、ウォーターズ2487デュアルλアブソーバンスデテクターを備えたウォーターズアライアンス2695クロマトグラフィーシステムにより220nmで実施した。
最終生成物中におけるBIM51077の含有量は約8.9%(w/w)であると決定され、BIM51077のピーク面積は、全面積の95.1%に相当した。
また、別の10%BIM51077半固体製剤(N174088バッチ)もVLMWPLA(FB341バッチ)により上記のとおりに製造した。
結果を表2にまとめる。
【0079】
例5
BIM21003C /VLMW処方物(バッチN182045)の製造
3.8gの半固体PLGA80/20(FB342バッチ,表1参照)をブレンダー(AR400,エルウェカ)の2個のシリンダー間に設置した。この重合体をこの装置でゆっくりと混合すると同時に、0.42mgのトリプトレリンBIM21003C(酢酸塩)を漏斗を介してゆっくりと導入した。この装置でゆっくりと2時間混合した後に室温で均質な組成物を得た。この混合物(バルク生成物)を10mLプラスチック注射器に集め、その後、19×1.2mm針付きの0.3mL単回投与シリンジに分配し、そして個々のアルミニウム密閉バッグに詰めた。充填された生成物の滅菌をドライアイス中において25kGyのγ線照射により実行した。最終生成物を−22℃で保存した。
活性物質の含有量と純度を逆相液体クロマトグラフィーによって管理した。これらの処方物をアセトニトリル及び酢酸溶液0.1%(20/80v/v)中に共に溶解させた。これらの測定をアセトニトリル/トリフルオル酢酸溶液(0.1%)による溶離勾配を使用して対称C18カラム(ウォーターズ)により40℃で実行した。分析を、ウォーターズポンプコントロールモジュールと、ウォーターズ717プラスオートサンプラーと、スパークミストラルオーブンと、ウォーターズ486チューナブルアブソーバンスデテクターとを備えたHPLCポンプ(ウォーターズ515)により280nmで実施した。
最終生成物中におけるBIM21003は、約9.1%(w/w)であると決定され、BIM21003のピーク面積は、全面積の98.8%に相当した。
結果を表2にまとめる。
【0080】
例6
BIM21003C /VLMW処方物(バッチN193075)の製造
0.55gのトリプトレリンBIM21003C(酢酸塩)をシリンジに導入し、5.0gの半固体PLA(MG03.035バッチ,表1参照)を第2シリンジに導入した。これらのシリンジを連結した後に、BIM21003Cと重合体賦形剤との混合を、これら2個のシリンジ間での押し−引き混練方法により約55℃で達成した。
この混合物(バルク生成物)を1個のシリンジに集め、その後19×1.2mm針付きの0.3mL単回投与シリンジに分配し、そして個々のアルミニウム密閉バッグに詰めた。充填された生成物の滅菌をドライアイス中において25kGyのγ線照射により実行した。最終生成物を−22℃で保存した。
活性物質の含有量と純度を例5で説明したとおりに逆相液体クロマトグラフィーにより管理した。
最終生成物中におけるBIM21003の含有量は、約10.7%(w/w)であると決定され、BIM21003のピーク面積は、全面積の98.7%に相当した。
結果を表2にまとめる。
【0081】
例7
BIM21003C /VLMW処方物の製造
0.19gのトリプトレリンBIM21003C(酢酸塩)をシリンジに導入し、7.8gの半固体PLA(MG04.110バッチ,表1参照)を第2シリンジに導入した。これらのシリンジを連結した後に、BIM21003Cと重合体賦形剤との混合を2個のシリンジ間での押し−引き混練方法により室温で達成した。
この混合物(バルク生成物)を1個のシリンジに集め、その後19×1.2mm針付きの0.3mL単回投与シリンジに分配し、そして個々のアルミニウム密閉バッグに詰めた。充填された生成物の滅菌をドライアイス中において25kGyのγ線照射により実行した。最終生成物を−22℃で保存した。
活性物質の含有量と純度を例5で説明したとおりに逆相液体クロマトグラフィーにより管理した。
最終生成物中におけるBIM21003の含有量は、約2.0%(w/w)であると決定され、BIM21003のピーク面積は、全面積の98.7%に相当した。
結果を表2にまとめる。
【0082】
例8
粘度の間接推定法による注射性の評価
処方物の注射可能相対粘度を、セルフォース(NLC 100N,リオイド・インストルメンツ)を備えたDinamometer(L1000R,リオイド・インストルメンツ)により決定した。19×1.2mm針付きの0.3mL単回投与シリンジに充填された最終組成物を測定前に室温で2時間保持した。
予備充填されたシリンジに100mm/分のピストン圧縮を施すと同時に、注入力を記録した。この注入力の最大値を、ニュートンで表す最大シリンジ注入力(SIFmax)として記録した。
結果を表2にまとめる。
【0083】
例9
BIM51077C /VLMW処方物(バッチN174088)での試験管内放出アッセイ
試験管内アッセイをC5アルキル基を末端基とするPLAを使用した10%BIM51077の半固体製剤により実行した。この組成物の製造、その状態調整、滅菌及び分析管理については、例4に記載している。
試験管内静的放出アッセイをリン酸緩衝溶液pH7.4(欧州薬局方)中37℃で透析装置により実行した。およそ140mgの最終生成物を円筒形の透析膜(直径3.5mm,M.W.C.O 25kD,Spectra Por)に導入し、その後、この透析装置を37℃でリン酸緩衝液20mL中に置いた。インキュベーション媒体をこのアッセイ中に分析のために集め、そして37℃の緩衝液20mLで置き換えた。その後、このインキュベーション媒体をRP−HPLCで分析して(例4で説明したとおり)活性物質の放出量を決定した。各実験は、独立に3回行った。
BIM51077の試験管内放出特性を図1に示している。
【0084】
例10
BIM21003C /VLMW処方物(バッチN182045)での試験管内放出アッセイ
試験管内アッセイを、C5アルキル基を末端基とするPLGA80/20を使用して9%BIM21003の半固体製剤により実行した。この組成物の製造、その状態調整、滅菌及び分析管理については、例5に記載している。
試験管内静的放出アッセイをリン酸緩衝液pH7.4(欧州薬局方)中37℃で透析装置により実行した。およそ130mgの最終生成物を円筒形の透析膜(直径3.5mm,M.W.C.O 25kD,Spectra Por)に導入し、そして透析装置を37℃の緩衝液20mL中に置いた。インキュベーション媒体をこのアッセイ中に分析のために集め、そして37℃の緩衝液20mLで置き換えた。その後、インキュベーション媒体をUV−可視分光光度法により280nmで分析して活性物質の放出量を決定した。各実験は、独立に3回行った。
BIM21003の試験管内放出特性を図2に示している。
【0085】
例11
沈殿により製造されたBIM21003C/VLMW処方物
この組成物において使用したVLMW重合体は、C5アルキル末端基及び約1,140ダルトンの重量平均分子量Mwを有する変性PLAであった。およそ180mgのトリプトレリンBIM21003C(酢酸塩)を、0.5mLの塩化メチレン中に溶解された1.0gのVLMW重合体に添加した。BIM21003Cの懸濁液を撹拌すると同時に、7.5mLのヘプタンを添加してこの重合体を沈殿させた。その後、この懸濁液を濾過し、そして沈殿した混合物を真空下50℃で乾燥させた。
【0086】
活性物質の含有量と純度を例5で説明したとおりに逆相液体クロマトグラフィーにより管理した。バルク生成物中におけるBIM21003の含有量は、約7.2%(w/w)であると決定され、BIM21003のピーク面積は、全面積の98.7%に相当した。
試験管内静的アッセイを例10で説明したとおりに2回実行した。
【0087】
例12
末端キャップされていないVLMW重合体によるビーグル犬での生体内放出アッセイ
生体内アッセイを、カルボン酸基を末端基とするPLGA50/50を使用した10%BIM21003の半固体製剤により実行した(J001/3000013バッチ,表1参照)。この処方物の製造は、例6で説明したとおりに2個のシリンジによる約50℃での押し−引き混練方法により行った。この混合物(バルク生成物)を20×1.4mm針付きの0.3mL単回投与シリンジ内で状態調整し、その後、個々のアルミニウム密封バッグに詰め、そしてドライアイス中で25kGyでのガンマ線照射により滅菌した。
活性物質の含有量及び純度を例5で説明したとおりに逆相液体クロマトグラフィーにより管理した。最終生成物中におけるBIM21003の含有量は、約11.2%(w/w)であると決定され、BIM21003のピーク面積は、全面積の95.9%に相当した。
6匹の雄のビーグル犬に、その流動性を改善しかつその注射を容易にするために予め50℃で3分間加熱した単回投与シリンジにより筋肉内に投与した。投与の前後にシリンジを秤量し、BIM21003の注射量は、動物1頭あたり約3.6mgであったと算出した。
4mLの血液試料を投与後特定の時間間隔で橈側皮静脈から得た。これらの血液試料を抗凝血剤(15%EDTA・K3水溶液)及び保存料(Trasylol(商標))を含有する管中に置いた。遠心分離後に、血漿を除去し、そして試料をRIA分析まで−20℃未満で保存した。得られたBIM21003の血漿レベルを図3に示している。
投与3日後に、BIM−21003の血漿レベルは、定量限界未満であった。すなわち、相対的に迅速な薬剤吸収が観察された。これらの結果は、生理学的水性媒体中において37℃で実行された試験管内実験で観察されたように、重合体が迅速に分解したためであると考えられる。
【0088】
例13
数種のペプチドの処方物によるスプラーグドーリーラットでの生体内放出アッセイ
数種の生体内アッセイを、次のペプチド:BIM23190C、BIM51077C又はBIM21003C(酢酸塩)を含有する半固体製剤で実行した。これらの組成物の製造、それらの状態調整、滅菌、分析管理及び試験管内アッセイについては、先の例で説明している。それらの特徴を表2にまとめる。
12匹の雄のスプラーグドーリーラットに単回投与シリンジで皮下投与した。これらのシリンジを投与の前後で秤量して半固体製剤の全投与量をチェックした。1.5mLの血液試料を、イソフルラン麻酔動物(ラット1匹当たり4サンプリング時間)から、投与後特定の時間間隔でパスツールマイクロピペットにより後方眼窩洞から得た。血液試料を、抗凝血剤(15%EDTA・K3水溶液)及び保存料(Trasylol(商標))を含有する管中に置いた。遠心分離後に、血漿を除去し、そして試料をRIA又はSPE−HPLC−MS/MS分析(治療剤に応じた分析方法)まで−20℃未満で保存した。
N174055処方物から放出されたBIM23190により得られた血漿レベルを図4に示している。3.3mg量の投与後に、少なくとも21日まで持続放出性が観察された。
N182054処方物から放出されたBIM51077により得られた血漿レベルを図5に示している。4.6mgのBIM51077を投与した場合には、少なくとも28日まで持続放出性が観察された。
N193075及びD009099処方物から放出されたBIM21003により得られた血漿レベルを図6に示している。N193075処方物の場合には、BIM21003の含有量は、当該処方物中で約10.7%(w/w)であり、3.1mg量の放出が投与後14日にわたり観察された。D009099処方物の場合には、BIM21003の含有量は、当該処方物中で約2.0%(w/w)であり、2.8mg量の放出が投与後21日にわたり観察された。
【0089】
例14
成長ホルモン処方物によるスプラーグドーリーラットでの生体内放出アッセイ
数種の半固体組成物をrhGH(組換えヒト成長ホルモン)で製造した。使用した成長ホルモンは、これを安定にするために炭酸水素ナトリウム、スクロース及びポリソルベート20を含有した。高、中及び低の異なる粘度を有する超低分子量PLAの3バッチを使用した。これらの重合体の特徴を表1にまとめる。
半固体重合体をドライアイス中で25kGyでのガンマ線照射により予め滅菌した。無菌条件下で、適当量のrhGH(凍結乾燥)及び半固体PLAを2個の異なるシリンジに導入した。これらのシリンジを連結した後に、均質な混合物を2個のシリンジ間での押し−引き混練方法によって達成した。この混合物(バルク生成物)を1個のシリンジに集め、その後針付きの0.3mL単回投与シリンジに分配した。最終生成物を5℃で保存した。
これらの処方物の組成、それらの状態調整及び投与量を表3にまとめる。
【0090】
【表3】

【0091】
6匹の雄のスプラーグドーリーラットに単回投与シリンジで皮下投与した。これらのシリンジを投与の前後で秤量して半固体製剤の全投与量をチェックした。0.4mLの血液試料を、イソフルラン麻酔動物から投与後7日まで特定の時間間隔でパスツールマイクロピペットにより後方眼窩洞から得た。血液試料を管中に置き、そして遠心分離した。その後、この血清試料をデカントし、それらをELISA法により分析するまで−80℃の冷凍庫で即座に保持した。
成長ホルモンで得られた血清濃度を図7に示している。
少なくとも7日まで持続放出性が観察されたが、その際に、rhGH血清濃度は、投与後2から7日までほぼ一定であった。
【0092】
例15
成長ホルモン処方物による無胸腺ラットでの生体内放出アッセイ
VLMW処方物投与7日後の成長ホルモンの放出特性を評価するために、生体内アッセイを、先天的に胸腺を欠く無胸腺ラットで実行した。
別の成長ホルモン組成物を例14で説明したとおり(N203069バッチ)中粘度のPLAで製造した。その組成、状態調整及び投与量を表3にまとめる。
10匹の雌の無胸腺ラットに単回投与シリンジで皮下投与した。これらのシリンジを投与の前後で秤量して半固体製剤の全投与量をチェックした(表3参照)。
成長ホルモンで得られた血清濃度を図8に示している。
投与後21日まで持続放出性が観察された。
【0093】
例16
成長ホルモン処方物による低酸素ラットでの生体内放出アッセイ
VLMW処方物から放出された成長ホルモンの有効性を評価するために、N203069組成物(表3及び例15参照)を下垂体を切除した(低酸素)スプラーグドーリーラットにも投与した。
5匹の雌の低酸素ラットに単回投与シリンジで皮下投与した。これらのシリンジを投与の前後で秤量して半固体製剤の全投与量をチェックした(表3参照)。
体重増加を図9に示しており、また、IGF−1濃度を図10に示している。結果を偽薬の投与後に得られた値「コントロール(−)」及び2mg/kg/日のrhGH水溶液を毎日投与した後に得られた値「コントロール(+)」と比較する。
投与後8日目では、体重プロフィール及びVLMW処方物から放出された成長ホルモンで得られたIGF−1レベルは、コントロール(+)値に近い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続及び制御放出性半固体製剤であって、
(a)500〜5000ダルトンの重量平均分子量を有する、末端キャップされた超低分子量生分解性重合体若しくは超低分子量生分解性共重合体又はそれらの混合物と、
(b)少なくとも1種の活性物質又はそれらの混合物と
を含み、その製造が追加の希釈剤、可塑剤、溶媒又は賦形剤を添加することなく実施された、持続及び制御放出性半固体製剤。
【請求項2】
そのカルボン酸末端のかわりにアルキル部分を有する超低分子量生分解性重合体又は超低分子量生分解性共重合体をさらに含む、請求項1に記載の持続放出性半固体製剤。
【請求項3】
前記アルキル部分が5〜18個の炭素原子を含有するアルキル基である、請求項2に記載の持続放出性半固体製剤。
【請求項4】
前記アルキル部分が5〜12個の炭素原子を含有するアルキル基である、請求項2又は3に記載の持続放出性半固体製剤/デポー移植物。
【請求項5】
前記アルキル部分が5個の炭素原子を含有するアルキル基である、請求項2〜4のいずれかに記載の持続放出性半固体製剤/デポー移植物。
【請求項6】
前記半固体製剤/デポー移植物を形成するための適用/注射に好適な温度が15℃〜50℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の持続放出性半固体製剤。
【請求項7】
前記半固体製剤/デポー移植物を形成するための適用/注射に好適な温度が25℃〜40℃である、請求項6に記載の持続放出性半固体製剤。
【請求項8】
前記分子量が700〜3,000ダルトン、好ましくは800〜2,000ダルトンである、請求項1に記載の持続放出性半固体製剤。
【請求項9】
前記生分解性超低分子量重合体がポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルエステル、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリウレタン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖類、ポリ(プロピレンフマレート)、並びにそれらの共重合体、三元共重合体及び混合物よりなる群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記生分解性超低分子量重合体がポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)及びそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物の活性物質が蛋白質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、ペプチド、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局所麻酔薬、抗生物質製剤、化学療法剤、免疫抑制剤、抗炎症薬、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、血管形成剤、抗精神病薬、中枢神経系(CNS)剤、抗凝血剤、線維素溶解薬、成長因子、抗体、抗原、眼薬、ヒト成長ホルモン、メチオニン−ヒト成長ホルモン;D−フェニルアラニンヒト成長ホルモン、グルカゴン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、Viol因子、第IX因子、黄体形成ホルモン、リラキシン、グレリン、卵胞刺激ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、フィルグラスチム上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、線線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF)、インターロイキン(IL)、コロニー刺激因子(CSF、MCF、GCSF、GMCSF)、インターフェロン(IFN)、上皮成長因子(VEGF,EGF)、エリトロポエチン(EPO)、アンギオポエチン(ANG)、胎盤由来成長因子(PIGF)、ボツリヌス毒素のような毒素及び低酸素誘導転写調節因子(HIF)並びにこれらの化合物の製薬上許容される塩又はそれらのアナログ、断片若しくは誘導体よりなる群から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物の活性物質がペプチド、ポリペプチド、蛋白質、例えば、黄体形成ホルモン(LHRH)又はLHRHアナログ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、インスリン、ソマトスタチンのアナログ及び誘導体、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出ペプチド、カルシトニン及びこれらの化合物の製薬上許容される塩又はそれらのアナログ、断片若しくは誘導体よりなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物の活性物質が組換えヒト成長ホルモン(rhGH)又は成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、インスリン様成長因子(IGF)、例えばIGF−1、GLP−1アナログ、黄体形成ホルモン(LHRH)又はLHRHアナログ及びソマトスタチンアナログである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物の活性物質が組換えヒト成長ホルモン(rhGH)又は成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物の活性物質がIGF−1及びその製薬上許容される塩である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物の活性物質がGLP−1アナログ及びその製薬上許容される塩である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物の活性物質が黄体形成ホルモン(LHRH)又はLHRHアナログ及びその製薬上許容される塩である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物の活性物質がソマトスタチンアナログ及びその製薬上許容される塩である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物が0.001%〜70%(w/w)、好ましくは0.1%〜30%(w/w)、より好ましくは2〜30%(w/w)の範囲の量の前記活性物質を含む、請求項1〜18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
次の工程:
(a)活性物質及び重合体を2個の異なるシリンジに導入し、そしてピストンを装着し、
(b)これら2個の充填シリンジと、3個の円錐体を備えるステンレスコネクターとを連結し、
(c)該活性物質が充填されたシリンジから真空下で空気を除去し、
(d)これら2個のシリンジ間での混練プロセスにより該2種成分を混合させること
を含む、半固体医薬組成物の製造方法。
【請求項21】
随意に5℃〜60℃の制御温度下で、好ましくは室温で実施することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
次の工程:
(a)重合体をブレンダー内で混合させ、
(b)活性物質を添加し、
(c)これらの成分を室温で、随意に5℃〜60℃の制御温度下で混合させること
を含む、請求項1に記載の半固体医薬組成物の製造方法。
【請求項23】
前記活性物質が粉末状であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の方法によって得られた医薬組成物。
【請求項25】
明細書において規定した発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−507612(P2010−507612A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533740(P2009−533740)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009318
【国際公開番号】WO2008/049631
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509120469)イプセン・ファルマ・ソシエテ・パ・アクシオンス・シンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】