説明

VoIP通話無線アクセスポイント用端末

【課題】簡便にVoIP通話のためのアクセスポイントを設置できるようにすること。
【解決手段】インターネット網への接続サービス機関(ISP)に常時接続された常時接続通信端末3とのデータ通信を行う常時接続通信端末通信手段24と、VoIP通話機能を備える携帯端末1との間において、VoIPパケットデータを無線データ通信により送受する無線データ通信手段23と、携帯端末1から受信したVoIPパケットデータを前記常時接続通信端末通信手段24並びに前記常時接続通信端末3を介して、接続サービス機関(ISP)に中継するとともに、該接続サービス機関(ISP)介して通信先から前記常時接続通信端末通信手段24並びに前記常時接続通信端末3を介して送信されてくるVoIPパケットデータを、前記無線データ通信手段24を介して前記携帯端末1に中継するVOIPパケット中継手段21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VoIP通話機能を有する携帯無線端末との間において、無線データ通信を実施することにより、該携帯無線端末におけるVoIP通話を可能とするアクセスポイントを簡便に形成することのできるVoIP通話無線アクセスポイント用端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるブロードバンド化によるデータ通信の高速通信化により、インターネット等のIPネットワークへの接続速度が常時化及び高速化してきたことにより、これら高速の常時接続環境を通じて、デジタル音声データを送受することで、これらIPネットワークを通じて通話を実施するVoIP技術が普及してきている。
【0003】
そして、これらVoIPによる通話は、常時接続された定額制の接続環境を経由して通話を行うため、通常の電話回線や携帯電話回線を使用する場合に比較して、低料金の通話を実現できることから、通話料金が比較的高い携帯電話等において、これらVoIPを利用できるようにするための技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−135324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、利用者が特定の企業の社員等の限られた利用者である場合には、当該企業内には適宜にアクセスポイントが設置されているので、良好なVoIP通話を実施できるのに対して、不特定多数の一般の利用者がVoIP通話機能を有する携帯端末を市街地において利用する場合には、そのアクセスポイントが、無線LANのアクセスポイントが設置されている駅や地下街等の駅周辺、並びに著名な施設等に限られており、一般の住宅街等の市街地においては、これらVoIP通話機能を利用することができず、通常の電話回線による通話を実施する必要があり、利用者にとって不便であることから、これらVoIP通話用のアクセスポイントを、一般の住宅街等の市街地に多数設置することが求められているが、これらVoIP通話用のアクセスポイントを簡便に設置できる端末装置が存在せず、これらVoIP通話用のアクセスポイントを簡便に設置できる端末装置が切望されていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、一般の住宅街等においても、簡便にアクセスポイントを設置することのできるVoIP通話無線アクセスポイント用端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末は、
VoIPパケットデータをVoIP通話機能を有する携帯端末(携帯電話機1)と送受することで、該携帯端末をVoIP接続するためのVoIP通話無線アクセスポイント用端末(AP用端末2)であって、
インターネット網8への接続サービス機関(ISP;10a)に常時接続された常時接続通信端末(ADSLモデムルータ3)とのデータ通信を行う常時接続通信端末通信手段(通信部24)と、
前記携帯端末との間において、前記VoIPパケットデータを無線データ通信により送受する無線データ通信手段(無線LANモジュール23)と、
前記無線データ通信手段にて前記携帯端末から受信したVoIPパケットデータを前記常時接続通信端末通信手段、前記常時接続通信端末並びに前記接続サービス機関(ISP)を介して通信先(携帯電話機1(相手側))に中継するとともに、該通信先から前記接続サービス機関(ISP)、前記常時接続通信端末並びに前記常時接続通信端末通信手段を介して送信されてくるVoIPパケットデータを、前記無線データ通信手段を介して前記携帯端末に中継するVoIPパケット中継手段(制御部21;VoIPパケット中継処理)と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、一般の住宅等に既に設置されている常時接続通信端末に、該VoIP通話無線アクセスポイント用端末を接続することで、簡便にアクセスポイントを設置することができ、よって、携帯端末の利用者がVoIP通話を利用できる機会を著しく増加させることが可能となり、これら利用者の利便性を向上することができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末は、請求項1に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末であって、
前記VoIPパケットデータの送信に先立って前記携帯端末(携帯電話機1)から送信されてくる、該携帯端末を識別可能な端末識別情報(携帯端末ID)を含む発呼パケットデータを受信したときに、該発呼パケットデータに含まれる端末識別情報に基づいて該携帯端末のVoIP通話接続の可否を判定する接続可否判定手段(制御部21;端末ID認証処理)と、
前記接続可否判定手段によって接続可と判定されることを条件に、前記受信した発呼パケットデータを、前記接続サービス機関(ISP)に設けられた所定アドレスの呼制御サーバに対して送信する発呼パケットデータ中継手段(制御部21;発呼パケット送信処理)と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、予め接続が許可された所定の端末識別情報を有する携帯端末のみがVoIP通話接続が許可されるようになるので、これらVoIP通話無線アクセスポイント用端末が、不正に接続されて利用されることを防止できる。
【0009】
本発明の請求項3に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末は、請求項2に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末であって、
前記接続可否判定手段(制御部21;端末ID認証処理)によって接続可と判定されることを条件に、少なくとも前記発呼パケットデータに含まれる端末識別情報(携帯端末ID)を含む接続情報を、前記接続サービス機関(ISP)に設けられた所定アドレスの接続管理サーバ(接続制御サーバ13)に対して送信する接続情報送信手段(制御部21;接続情報送信処理)を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、接続管理サーバにおいて端末識別情報を含む接続情報を管理できるので、例えば、これら接続情報を利用して、利用回数等に応じた料金等も算出することができる。
【0010】
本発明の請求項4に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末は、請求項2または3に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末であって、
前記常時接続通信端末(ADSLモデムルータ3)から常時接続回線(ADSL回線)のトラヒック状態を特定可能なトラヒック情報を取得するトラヒック情報取得手段(制御部21;トラヒック情報取得処理)と、
前記トラヒック情報取得手段にて取得したトラヒック情報から特定されるトラヒック状態が、所定のデータ通信量以上のトラヒック状態であるか否かを判定する判定手段(制御部21;S7のステップ)と、
を備え、
前記発呼パケットデータ中継手段(制御部21)は、前記判定手段による判定結果が、所定のデータ通信量以上のトラヒック状態であるとの判定結果でないときには前記発呼パケットデータを送信する一方、所定のデータ通信量以上のトラヒック状態であるとの判定結果であるときには、前記発呼パケットデータを送信しないことを特徴としている。
この特徴によれば、常時接続回線におけるトラヒック状態が所定のデータ通信量以上となっているときに、発呼パケットデータが送信されることによるVoIP通話が開始されることでトラヒックの逼迫状況が発生し、これらVoIP通話以外のデータ通信に悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【0011】
本発明の請求項5に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末は、請求項4に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末であって、
前記常時接続通信端末(ADSLモデムルータ3)が設置されている設置場所の管理者並びに該管理者の関係者が携行する管理者携帯端末の端末識別情報(管理者携帯端末ID)を登録する管理者端末識別情報登録手段(記憶部22)を備え、
前記発呼パケットデータ中継手段(制御部21)は、前記携帯端末(携帯電話機1)から受信した発呼パケットデータに含まれる端末識別情報(携帯端末ID)が、前記管理者端末識別情報登録手段に記憶されている端末識別情報に一致するときには(S3のステップでYes)、前記判定手段における判定結果に拘わらず、前記発呼パケットデータを常に送信することを特徴としている。
この特徴によれば、管理者携帯端末の端末識別情報を登録することで、常時接続回線におけるトラヒック状態に係わらず、常にVoIP通話を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明のVoIP通話無線アクセスポイント用端末(以下AP用端末と略称する)2が適用された、本実施例のVoIP通話システムの構成を示す図である。
【0014】
本実施例のVoIP通話システムは、図1に示すように、VoIP通話機能を有する携帯端末となる携帯電話機1と、インターネット網8への常時接続サービスを提供する接続サービス機関(インターネットサービスプロバイダ;ISP)10a,10b…に設置された各種のサーバコンピュータ11〜13と、接続サービス機関に常時接続サービスを申し込んだ人(管理者)の自宅a,b・・に設置されたコンピュータ4、5を、インターネット網8に常時接続するための常時接続通信端末となるADSLモデムルータ3、並びに該ADSLモデムルータ3に接続されて、携帯電話機1との間において、VoIPパケットデータを無線により送受信するAP用端末2とから、主に構成されている。
【0015】
各ISP10a,10b…を利用する人(管理者)の自宅等には、比較的、高速のデータ通信方式あって、常時接続が可能とされたADSL(非対称デジタル加入者線)通信方式による通信を行うADSLモデム並びにルータ機能部とを備えるADSLモデムルータ3が、ISP10a,10b…から貸与または販売されて設置されており、該ADSLモデムルータ3に、各自宅のコンピュータ4、5を接続し、所定の設定を実施することで、各コンピュータ4、5からインターネット網8上の各種のサーバにアクセスできるようになる。
【0016】
また、各ISP10a,10b…には、図1に示すように、駅やその周辺の地下街等に設置されたアクセスポイント9a,9b…が接続されており、これらアクセスポイント9a,9b…を通じて、VoIP通話機能を有する携帯電話機1が、これらアクセスポイント9a,9b…が設置された駅やその周辺においてVoIP通話を実施できるようになっている。
【0017】
そして、各ISP10a,10b…には、図1に示すように、各自宅等に設置されたADSLモデムルータ3とのデータ通信を行うための通信装置14に加えて、主として各ISP10a,10b…への接続を制御する接続制御サーバ13や、携帯電話機1からのVoIP発呼に関する制御処理を行う呼制御サーバ11や、公衆回線網6への接続管理を行うゲートウェイサーバ12が設けられており、これら各サーバコンピュータ11、12、13が各ISP10a,10b…内において比較的高速のデータ通信が可能に接続されている。
【0018】
この本実施例に用いた接続制御サーバ13には、常時接続可能なADSLモデムルータ3に固有に付与されたモデムID等が記憶され、利用登録されたモデムIDのADSLモデムルータ3のみのISPへの接続を許諾するように制御しているとともに、VoIP通話を許諾する携帯電話機1に固有に付与された端末識別情報である携帯端末IDが記憶されており、後述するように、ADSLモデムルータ3に接続されたAP用端末2から、携帯電話機1から受信した発呼パケットデータに含まれる携帯端末IDを含む認証要求を受信した際に、該携帯端末IDが登録されているか否かを認証し、該認証結果をAP用端末2に返信することで、予め利用登録された携帯電話機1のみが、VoIP通話を利用できるように制御する。
【0019】
また、本実施例に用いたゲートウェイサーバ12は、VoIPパケットが送受されるIP通信網と、携帯電話機1が接続される携帯電話回線網や一般電話機7が接続される一般回線網から成る公衆回線網6とを相互接続するためのゲートウェイ機能を有しており、公衆回線網6から、携帯電話機1に付与されたVoIP電話番号による該携帯電話機1への通話を接続したり、携帯電話機1から公衆回線網6に接続されている一般電話機7や他の携帯電話機1への携帯電話回線網を介しての通話を接続する。
【0020】
次に、本実施例に用いた呼制御サーバ11について簡潔に説明すると、該呼制御サーバ11は、携帯電話機1等からの呼び出しに応じて、呼び出し制御を行うためのサーバであって、AP用端末2やアクセスポイント9a,9b…から発呼パケットを受信すると、該発呼パケットに含まれる通話相手先の電話番号(VoIP電話番号)に対応するグローバルIPアドレスを特定し、該特定したグローバルIPアドレスに呼出要求を中継することでVoIP通話を開始させるための処理を実施するとともに、通話終了に応じてVoIP通話を終了させるための処理を実施する。
【0021】
ここで、本実施例のAP用端末2について以下に説明すると、本実施例のAP用端末2は、図2に示すように、四角箱状の外観を有しており、その側面上部位置からは、上端面に向けて、回動可能に軸支されて設けられたアンテナ29を有するとともに、その前面には、各種のステートメントメッセージ等が表示される液晶パネル(LCD)25と、本発明における管理者端末となる該AP用端末2が設置される自宅の管理者(つまり、ISPの利用者)が所持する携帯電話機1の携帯端末IDを登録する際に操作される登録ボタン28と、動作状況を点灯態様により報知するための各種LEDを有するLEDモジュール27が設けられている。
【0022】
そして、該AP用端末2の構成は、図3に示すようになっており、前述した液晶パネル(LCD)25や、LEDモジュール27や、登録ボタン28に加えて、本発明における常時接続通信端末通信手段となるADSLモデムルータ3とのデータ通信を実施するための通信部24と、携帯電話機1に内蔵されている無線LANモジュールとの間において無線データ通信を行う本発明における無線データ通信手段となる無線LANモジュール23、後述する制御部21が実施する図4に示す処理等の各種処理内容が記述された制御プログラムをはじめとする各種のデータを記憶する記憶部22や、該記憶部22や前記無線LANモジュール23や通信部24等に接続されて前記制御プログラムに基づいてAP用端末2の動作を制御する制御部21と、これらAP用端末2を構成する各部に動作電力を供給する電源部26とが設けられている。
【0023】
また、記憶部22には、前述の制御プログラムに加えて図3に示すように、登録ボタン28の操作により登録された該AP用端末2が設置される自宅等の管理者やその関係者(家族)等が所持する携帯電話機1の携帯端末IDが記憶されているとともに、該AP用端末2に固有に付与されたAP端末IDが記憶されている。つまり、記憶部22には、本発明における設置場所(自宅等)の管理者が携行する管理者携帯端末である携帯電話機1の携帯端末ID(端末識別情報)が登録(記憶)されており、該記憶部22によって、本発明における管理者端末識別情報登録手段が形成されている。
【0024】
尚、本実施例では、これら管理者携帯端末として、最大4つの携帯端末IDを登録できるようになっており、管理者の携帯電話機1のみでなく、該管理者の関係者である、例えば家族等の携帯電話機1の携帯端末IDも、管理者携帯端末として登録できるようになっている。
【0025】
また、本実施例のAP用端末2における通信部24は、コンピュータ4、5をADSLモデムルータ3に接続する通信方式と同一の通信方式、例えば、IEEE802.3u規格の通信方式にてADSLモデムルータ3とデータ通信を有線にて行うものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら通信部24とADSLモデムルータ3との間の通信方式は、VoIPパケットの送受を行える十分な通信速度を得られるものであれば良く、これら十分な通信速度を得られるものであれば無線や赤外線による非接触通信を用いても良い。
【0026】
これら、管理者携帯端末として携帯端末IDを登録する場合には、登録したい携帯電話機1をAP用端末2の近傍に配置した状態で、登録ボタン28を操作すれば良く、該登録ボタン28を操作により、既に4つの携帯端末IDが記憶部22に登録(記憶)されていない場合には、該携帯電話機1の携帯端末IDがAP用端末2にて無線データ通信により取得されて液晶パネル(LCD)25に表示されるとともに、該液晶パネル(LCD)25に表示された携帯端末IDの携帯電話機1に対して、AP用端末2から着信要求が擬似的に送信されることで、該携帯電話機1にて着信報知が実施されるので、該着信報知が実施されている携帯電話機が、間違いなく登録したい携帯電話機1である場合において、再度、登録ボタン28を操作することにより、その時点において液晶パネル(LCD)25に表示された携帯端末IDが、記憶部22に記憶(登録)される。
【0027】
尚、本実施例のAP用端末2に用いた無線LANモジュール23は、ISMバンドである2.4GHz帯におけるスペクトラム拡散通信方式にて携帯電話機1とデータ通信を行う部位であり、これら無線LANモジュール23としては、無線LAN規格であるIEEE802.11bや、IEEE802.11gに準拠したものを好適に使用することができる。
【0028】
また、本実施例のAP用端末2に用いた制御部21は、前記無線LANモジュール23を介して携帯電話機1の無線LANモジュール23との間においてVoIPパケット等の各種のデータの送受を行うことでVoIP通話を可能とするためのものであり、制御マイコン(MPU)にて構成されている。
【0029】
以下、本実施例のVoIP通話システムにおけるAP用端末2の動作内容を、図4のフロー図に基づいて、以下に説明する。尚、接続制御サーバ13には、ADSLモデムルータ3のモデムIDが予め登録されて、ADSLモデムルータ3が各ISP10a,10b…に常時接続されているとともに、各AP用端末2には、予め、前述の登録操作を実施することにより、管理者携帯端末の携帯端末IDが登録されているものとする。
【0030】
まず、AP用端末2の制御部21は、図4のフロー図に示すように、無線LANモジュール23の通信可能範囲(セル)内に位置する、つまり圏内中の携帯電話機1からの発呼パケットデータの受信待ち状態で待機している。
【0031】
この状態において、携帯電話機1からの発呼パケットデータの送信があった場合には、該送信された発呼パケットデータの受信がS1のステップにて検知されてS2のステップに進み、管理者端末ID照合処理を実施する。
【0032】
この管理者端末ID照合処理においては、まず、受信した発呼パケットデータに含まれる当該携帯電話機1の携帯端末IDが、記憶部22に登録(記憶)されている管理者携帯端末の携帯端末IDに一致するか否かを照合する。
【0033】
そして、該照合において携帯端末IDが一致する、つまり、発呼パケットデータの送信元の携帯電話機1が管理者携帯端末である場合には、S4〜S7のステップを実施することなく、S8のステップに進むことで、通常の携帯端末IDの認証処理やトラヒック情報に基づく通話可否の判定を実施することなく発呼パケット送信処理を実施する一方、S2のステップにおける照合結果が携帯端末IDが一致しない、つまり、発呼パケットデータの送信元の携帯電話機1が管理者携帯端末でない場合には、S4のステップに進み、端末ID認証処理を実施する。
【0034】
具体的に、本実施例のS4のステップにおける端末ID認証処理においては、所定のIPアドレスが付与された接続制御サーバ13に対して、携帯電話機1から受信した発呼パケットデータに含まれる携帯端末IDと、該AP用端末2のAP端末IDと含む認証要求を送信する。
【0035】
そして、この認証要求の受信に応じて接続制御サーバ13は、前述したように、該受信した認証要求に含まれる携帯端末IDが、通話を許諾する携帯電話機1として登録されている携帯電話機1の携帯端末IDであるか否か、つまり、該携帯端末IDの登録が有るか否かを検索し、存在する場合には「認証OK」の認証結果を返信し、存在しない場合には「認証NG」の認証結果を返信する。
【0036】
このようにして接続制御サーバ13から返信される認証結果の受信に応じて制御部21は、該受信した認証結果が「認証NG」である場合には、S5のステップにて「No」と判定して、当該処理を終了してS1に戻ることにより、受信した発呼パケットデータに基づくS8の発呼パケット送信処理を実施しないことで、VoIP通話を許諾しない一方、該受信した認証結果が「認証OK」である場合には、S5のステップにて「Yes」と判定してS6のステップに進んで、ADSLモデムルータ3から、その時点におけるADSL回線のトラヒックの状況を示すトラヒック情報を取得するトラヒック情報取得処理を実施する。
【0037】
具体的に該トラヒック情報取得処理において制御部21は、接続されているADSLモデムルータ3に対してトラヒック情報出力要求を送信する。
【0038】
このトラヒック情報出力要求に応じてADSLモデムルータ3は、その時点におけるADSL回線のトラヒック情報を、トラヒック情報出力要求の送信元のAP用端末2に返信する。
【0039】
そして、このトラヒック情報の返信に応じて制御部21は、該返信されてきたトラヒック情報から特定されるADSL回線のトラヒックの状況が、所定のデータ量以上のトラヒックの状況であるか否かをS7のステップにおいて判定する。
【0040】
そして、該S7のステップにおける判定において、ADSL回線のトラヒックの状況が、所定のデータ量以上のトラヒックの状況であるとの判定結果である場合、つまり、S7のステップにて「Yes」と判定した場合には、当該処理を終了してS1に戻ることにより、受信した発呼パケットデータに基づくS8の発呼パケット送信処理を実施しないことで、VoIP通話を許諾しない一方、ADSL回線のトラヒックの状況が、所定のデータ量以上のトラヒックの状況でないとの判定結果である場合、つまり、S7のステップにて「No」と判定した場合には、S8のステップに進んで発呼パケット送信処理を実施する。
【0041】
この発呼パケット送信処理においては、携帯電話機1から受信した発呼パケットデータを、所定のIPアドレスが付与された呼制御サーバ11に対して送信(中継)した後、S9のステップに進んで、該発呼パケットの送信に伴う接続パケットを中継する接続パケット中継処理に移行する(S9)。
【0042】
そして、S8のステップにおける発呼パケット送信処理において中継された発呼パケットデータの受信に応じて呼制御サーバ11は、該受信した発呼パケットに含まれる通話相手先の電話番号(VoIP電話番号)に対応するグローバルIPアドレスを特定し、該特定したグローバルIPアドレスに呼出要求を中継する。尚、本実施例では、これら発呼制御にSIP(Session Initiation Protocol)を使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら発呼制御に使用するプロトコルは、適宜に選択されば良い。
【0043】
尚、グローバルIPアドレスの特定が不能である場合には、例えば、発呼先の電話番号が登録されていない場合には、呼制御サーバ11は、呼出エラー(接続パケット)を返信して当該処理を終了してS1に戻る。
【0044】
この呼出要求の送信に応じて、相手先の電話、例えば、携帯電話機1においては、呼び出し音やバイブレータにより、着信の報知が実施される。そして、該呼出中である携帯電話機1(相手側)において、利用者が着呼操作、例えば、通話ボタンを操作すると、該携帯電話機1(相手側)からは、呼出が成功した旨を示す応答が呼制御サーバ11に送信され、この応答に応じて呼制御サーバ11は、通話先である携帯電話機1(相手側)のグローバルIPアドレスを含む該成功応答(接続パケット)を、発呼元の携帯電話機1に対して返信する。
【0045】
この成功応答(接続パケット)や呼出エラー(接続パケット)は、S9の接続パケット中継処理にて携帯電話機1(発呼元)に中継されるとともに、その接続パケットの内容により、接続が確立したか否かがS10のステップにおいて判定される。
【0046】
中継された接続パケットが呼出エラーである場合にはS10のステップにおいて「No」と判定されて当該処理を終了してS1に戻ることにより、VoIP通話が開始されない一方、中継された接続パケットが成功応答である場合にはS10のステップにおいて「Yes」と判定されて、互いの携帯電話機1から送信されるVoIPパケットデータを中継するS11のステップのVoIPパケット中継処理に進むことで、VoIP通話が開始される。
【0047】
そして、このVoIPパケット中継処理に基づくVoIP通話が終了した場合、具体的には、通話終了を示す特定の通話終了パケットデータの呼制御サーバ11への送信があった場合には、該通話終了パケットデータの送信による接続終了がS12のステップにて検知されてS13のステップに進み、これらVoIP通話がなされた携帯電話機1の携帯端末IDと、AP端末IDと、VoIP通話の開始時間と終了時間とを含む接続情報を、接続制御サーバ13に対して送信する接続情報送信処理を実施して、一連の処理を終了して、再度S1のステップに戻る。
【0048】
以上、本実施例のようにすれば、一般の住宅等に既に設置されている常時接続通信端末となるADSLモデムルータ3に、AP用端末2を接続することで、簡便にアクセスポイントを設置することができ、よって、携帯電話機1(携帯端末)の利用者がVoIP通話を利用できる機会を著しく増加させることができ、これら利用者の利便性を向上することができる。
【0049】
また、本実施例によれば、予め接続が許可された所定の携帯端末ID(端末識別情報)を有する携帯端末、すなわち、VoIP接続サービスに加入することで接続制御サーバ13に携帯端末IDが登録されている全ての携帯端末がVoIP通話接続が許可されるようになるので、これらAP用端末2(VoIP通話無線アクセスポイント用端末)が、不正に接続されて利用されることを防止できる。
【0050】
また、本実施例によれば、接続制御サーバ13(接続管理サーバ)において携帯端末ID(端末識別情報)を含む接続情報を管理できるので、例えば、これら接続情報を利用して、利用回数等に応じた料金等も算出することができる。
【0051】
また、本実施例によれば、ADSL回線(常時接続回線)におけるトラヒック状態が所定のデータ通信量以上となっているときに、発呼パケットデータが送信されることによるVoIP通話が開始されることでトラヒックの逼迫状況が発生し、これらVoIP通話以外のデータ通信、つまりパソコン4、5のデータ通信に、データ待ち等によ処理の低下等の悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【0052】
また、本実施例によれば、管理者または管理者の関係者は、管理者携帯端末ID(管理者携帯端末の端末識別情報)を登録することで、ADSL回線(常時接続回線)におけるトラヒック状態に係わらず、常にVoIP通話を実施できる。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0054】
例えば、前記実施例では、VoIP通話機能を有する携帯端末として携帯電話機1を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらVoIP通話機能を有する携帯端末としては、携行可能なPDA端末やポケットコンピュータ等であっても良いし、無線LAN機能を備えるノートパソコンに、VoIP通話機能を付加するためのソフトウエアを搭載したものであっても良い。
【0055】
また、前記実施例では、AP用端末2を、四角箱状としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの形状等は、適宜に選択すれば良い。
【0056】
また、前記実施例では、AP用端末2を設置することによる該設置場所の管理者の商業的なメリットについて記述していないが、これらAP用端末2を設置した管理者に対しては、所定の設置料を接続サービス機関(ISP)が支払うようにしたり、或いは、ADSL接続サービスのサービス料金を割り引いたりするようにして、商業的なメリットを得られるようにしても良いし、更には、接続制御サーバ13に対して接続情報を送信するようにしているので、これら接続情報に基づくAP用端末2の利用状況に応じた費用を、設置場所の管理者に対して支払うようにしても良い。
【0057】
また、前記実施例では、トラヒック情報を取得してトラヒックの状態に応じては、発呼パケットを中継しないようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらトラヒックの状態に応じた制御を実施しない構成としても良い。
【0058】
また、前記実施例では、管理者の携帯電話機1と、管理者端末以外の携帯電話機1とで異なる制御を実施するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら管理者の携帯電話機1の特別な制御を実施しない構成としても良い。
【0059】
また、前記実施例では、接続制御サーバ13に対して接続情報を送信するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら接続情報を送信しない構成としても良い。
【0060】
また、前記実施例では、AP用端末2が接続される常時接続通信端末を、ADSLモデムルータ3としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら常時接続通信端末としては、例えば、ケーブルテレビ会社により提供されるブロードバンドモデム端末であっても良いし、更には、光通信サービス(FTTH)により常時接続された光モデム端末であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例おけるVoIP通話システムの構成を示すシステム図である。
【図2】本発明の実施例に用いたVoIP通話無線アクセスポイント用端末の全体像を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例に用いたVoIP通話無線アクセスポイント用端末の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例に用いたVoIP通話無線アクセスポイント用端末の制御部21が実施する処理内容を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0062】
1 携帯電話機
2 VoIP通話無線アクセスポイント用端末
3 モデムルータ
6 公衆回線網
7 一般電話機
8 インターネット網
9a アクセスポイント
9b アクセスポイント
10a インターネットサービスプロバイダ;ISP
10b インターネットサービスプロバイダ;ISP
21 制御部
22 記憶部
23 無線LANモジュール
24 通信部
26 電源部
27 LEDモジュール
28 登録ボタン
29 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VoIPパケットデータをVoIP通話機能を有する携帯端末と送受することで、該携帯端末をVoIP接続するためのVoIP通話無線アクセスポイント用端末であって、
インターネット網への接続サービス機関(ISP)に常時接続された常時接続通信端末とのデータ通信を行う常時接続通信端末通信手段と、
前記携帯端末との間において、前記VoIPパケットデータを無線データ通信により送受する無線データ通信手段と、
前記無線データ通信手段にて前記携帯端末から受信したVoIPパケットデータを前記常時接続通信端末通信手段、前記常時接続通信端末並びに前記接続サービス機関(ISP)を介して通信先に中継するとともに、該通信先から前記接続サービス機関(ISP)、前記常時接続通信端末並びに前記常時接続通信端末通信手段を介して送信されてくるVoIPパケットデータを、前記無線データ通信手段を介して前記携帯端末に中継するVoIPパケット中継手段と、
を備えることを特徴とするVoIP通話無線アクセスポイント用端末。
【請求項2】
前記VoIPパケットデータの送信に先立って前記携帯端末から送信されてくる、該携帯端末を識別可能な端末識別情報を含む発呼パケットデータを受信したときに、該発呼パケットデータに含まれる端末識別情報に基づいて該携帯端末のVoIP通話接続の可否を判定する接続可否判定手段と、
前記接続可否判定手段によって接続可と判定されることを条件に、前記受信した発呼パケットデータを、前記接続サービス機関(ISP)に設けられた所定アドレスの呼制御サーバに対して送信する発呼パケットデータ中継手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末。
【請求項3】
前記接続可否判定手段によって接続可と判定されることを条件に、少なくとも前記発呼パケットデータに含まれる端末識別情報を含む接続情報を、前記接続サービス機関(ISP)に設けられた所定アドレスの接続管理サーバに対して送信する接続情報送信手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末。
【請求項4】
前記常時接続通信端末から常時接続回線のトラヒック状態を特定可能なトラヒック情報を取得するトラヒック情報取得手段と、
前記トラヒック情報取得手段にて取得したトラヒック情報から特定されるトラヒック状態が、所定のデータ通信量以上のトラヒック状態であるか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記発呼パケットデータ中継手段は、前記判定手段による判定結果が、所定のデータ通信量以上のトラヒック状態であるとの判定結果でないときには前記発呼パケットデータを送信する一方、所定のデータ通信量以上のトラヒック状態であるとの判定結果であるときには、前記発呼パケットデータを送信しないことを特徴とする請求項2または3に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末。
【請求項5】
前記常時接続通信端末が設置されている設置場所の管理者並びに該管理者の関係者が携行する管理者携帯端末の端末識別情報を登録する管理者端末識別情報登録手段を備え、
前記発呼パケットデータ中継手段は、前記携帯端末から受信した発呼パケットデータに含まれる端末識別情報が、前記管理者端末識別情報登録手段に記憶されている端末識別情報に一致するときには、前記判定手段における判定結果に拘わらず、前記発呼パケットデータを常に送信することを特徴とする請求項4に記載のVoIP通話無線アクセスポイント用端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−113213(P2008−113213A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294708(P2006−294708)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(500327636)株式会社ブレインズ (11)
【Fターム(参考)】