説明

X線スキャナ及びX線スキャナ用X線源

電子源と陽極を有するX線スキャナであって、陽極は走査方向に互いに離間した複数の材料領域が形成されたターゲット面を有し、複数の材料領域は互いに異なる材料で形成され、電子源は所定の順番で該ターゲット面の一連のターゲット領域に電子を向けるように構成されて互いに異なるエネルギスペクトルを有するX線ビームを生成するX線スキャナである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線スキャナに関し、特に、対象(検体)の撮像や解析のためX線の異なるエネルギを用いるために構成されたスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
新世代の多焦点X線管は、検査中の対象を早く移動させようとする撮像システムの問題に取り組むべく、設計が行われている。対象の動きが再生像におけるアーチファクトが容認できないほどに高いレベルにあるような断層撮像システムにおいて、かかる設計は特に重要となる。この問題に取り組むために多焦点X線源が提案されており、この提案では何百本もの独立した電子銃が円形に並べられ、それぞれの電子銃は順次オンに切り替えられて、電子銃の半径と同じ半径の円形の陽極の個々の地点に発射される。このことにより集合体の物理的な動きを必要とすることなく回転するX線源を提供し、きわめて高速な断面撮像の機会を提供できる。
【0003】
このような断面撮像X線システムにおいては、断層画像の再生グレーレベルを用いて行われる物質識別能力に、公知の参照基準のセット(例えば空気や水やアルミニウム)に立ち返ったキャリブレーションを与えることが好ましい。
X線ビームのエネルギスペクトルが考慮された場合にさらなる物質識別能力が得られることがわかっている。というのは投射するX線ビームのそれぞれのスペクトル成分は検査中の対象内のそれぞれの成分によって異なる量に減衰するからである。原子番号が低い材料は、低エネルギX線の少量の減衰を示すが、原子番号が高い材料は低エネルギX線の著しい減衰を示す。対象によるフィルタリング後のX線スペクトル分析によって、X線スペクトルが単純に統合された場合と比較して更なる物質識別能力を得ることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際のX線システムにおいては、検出器に到達したそれぞれの単一のX線光子のエネルギを測定するのは費用がかかる。これはそれぞれの検出器素子への光子の到達率が比較的高く(光子の到達率は多くの場合1MHzを超える)、検出機器の複雑さや関連する消費電力は重要な問題となるからである。
ひとつの撮像チャンネルにつき安価な2台以上の統合検出器を使用することが単純化する手段のひとつであるが、検出器間にフィルタを設置する必要がある。対象を通過するX線ビームのうち高いエネルギ成分を測定するのはフィルタを使用した検出器は一般に厚くなる。フィルタを使用しない検出器は厚さが薄いが、通過したX線ビームの低エネルギ成分に対して優先的に感応する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は電子源と陽極を有するX線スキャナを提供し、陽極は走査方向に互いに離間した複数の材料領域が形成されたターゲット面を有し、複数の材料領域は互いに異なる材料で形成される。電子源は所定の順番でターゲット面の一連のターゲット領域に電子を向けるように構成されて互いに異なるエネルギスペクトルを有するX線ビームを生成する。
それぞれの材料領域は一様な材料によって形成されており、それは単一の要素であり、例えば金属や混合物である。材料領域は走査方向と直交する方向に延びる帯状体によって構成される。または、材料領域は走査方向に対して斜めに延びる帯状体によって構成される。
【0006】
材料領域はターゲット金属により薄いフィルム状に形成されていてもよい。
【0007】
それぞれのターゲット領域は電子ビームの焦点領域によって規定され、それぞれの材料領域内にある。または、それぞれのターゲット領域は少なくとも2つの材料領域の一部を占めている。
【0008】
スキャナは、複数のX線を検出するための複数の検出器が更に設けられている。複数の検出器のそれぞれは実質的に同じ検出器である。検出器は、少なくとも1つのエネルギの複数のX線に対して又は所定のエネルギ範囲のX線に対して互いに別々の応答性を備えた2セットの検出器を含んでいる。2セットのうち1セットの検出器はフィルタ材料と検出素子を有している。これら検出器は統合された複数の検出器である。
【0009】
スキャナは、検出器からの信号を受信して信号を処理して出力する処理手段を更に備えている。この出力は像を生成するための撮像データセットである。
【0010】
本発明は更に、電子源と陽極を有するX線スキャナを提供し、陽極は複数の異なる材料にて形成されたターゲット面を有する。電子源は、ターゲット面に電子ビームを向けてターゲット面の2つの材料から互いに異なる2つのエネルギスペクトルのX線を同時に発生させるように構成される。スキャナは更に2つの検出器列を備え、それらは互いに異なる応答特性を具備している。例えば、2セットの検出器列のうちの1セットは残りの1セットよりも、特定のエネルギスペクトルを有するX線についてより応答性が高く、残りの1セットは最初の1セットよりも別のエネルギスペクトルを有するX線についてより応答性が高い。
【0011】
一方の検出器列の検出器はフィルタ材料と検出素子を有する。それぞれの2つの材料は、それぞれの蛍光エネルギのピーク強度を有するX線を発生するように構成される。フィルタ材料は互いに異なる2つの蛍光エネルギの減衰を示すように構成されている。フィルタ材料は該2つの蛍光エネルギの間の周波数で吸収エッジを有する。
ターゲット面は複数の材料領域を有し、それぞれの材料領域はそれぞれの材料によって形成され、電子源はターゲットのターゲット領域に電子ビームを照射するように構成され、ターゲット領域は少なくとも2つの材料領域の一部を有する。
【0012】
電子源はターゲットに沿って互いに離間して配置された複数のターゲット領域に電子を照射するように構成されている。材料領域は互いに平行な帯状体をなし、それぞれの帯状体は複数のターゲット領域内に延びている。ターゲット面は複数の材料の混合物によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のスキャナシステムを示す概略図。
【図2a】陽極からのX線エネルギスペクトルを示すグラフ。
【図2b】図2aとは異なる陽極からのX線エネルギスペクトルを示すグラフ。
【図3】本発明の実施の形態によるスキャナシステムを示す概略図。
【図4】図3のスキャナシステムの一部となるX線源を示す概略図。
【図5】図4のシステムの一部である陽極を示す正面図。
【図6】図4のシステムの動作を示す概略図。
【図7】代表的なフィルタ材料のエネルギ関数としてのX線吸収を示すグラフ。
【図8】本発明の第2の実施の形態によるターゲットを示す正面図。
【図9】図8のターゲットから生成されたX線のエネルギスペクトルを示すグラフ。
【図10】図8のターゲットと共に用いられる検出器列の一部を示す概略図。
【図11】図8のターゲットと共に用いられる別の検出器列の一部を示す概略図。
【図12】図10や図11のフィルタと図8のターゲットとがマッチングしたグラフ。
【図13】本発明の第3の実施の形態によるターゲットを示す正面図。
【図14】本発明の第4の実施の形態によるターゲットを示す正面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について添付の図面を参照しつつ以下に説明する。
【0015】
図1のX線スキャナは、円環状に並んだ複数のX線検出器12に対して軸方向でずれている円環状に並んだ複数のX線源10を有する。それぞれのX線源10は順番に駆動され、それぞれのX線源について複数の検出器12からの複数の信号が記憶され解析される。それぞれの検出器は積み重ねられた態様のセンサであり、薄い前方検出素子14と厚い後方検出素子16と両検出素子14、16間に配置されたフィルタ18を有する。前方検出素子14は低エネルギのX線を検出し、後方検出素子16は高エネルギX線を検出するように構成され、フィルタ18は前方検出素子14で吸収されなかった低エネルギX線を除去するように構成されている。
【0016】
全ての検出器はスキャナのX軸にそって整列されX軸に面しているので、X線ビームの中央部では、前方検出素子14とフィルタ18と後方検出素子16が全て入射するX線ビームの方向に並んでいるように重なり合った検出器12aは十分に作動していることがわかる。これに対して、ビームの中心部から遠い端の部分の検出器12bについては、前方検出素子14とフィルタ18と後方検出素子16はビームの方向には並んでおらず、後方検出素子16への低エネルギ漏れが大きくなる。同様に、X線ビームに伝えたれた比較的大きい材料厚さは、前方検出素子14によって測定された信号中に高エネルギ信号の漏れを引き起こす。検出素子間の信号の漏れによってX線システムの物質識別の能力を低下させる。
【0017】
図2a、図2bにおいて本発明の実施の形態ではX線源における互いに異なるターゲット材料を用いることによってエネルギ弁別を提供しており、そのことにより主X線ビームのスペクトル成分を変調している。図2は同様な管電圧(最大X線エネルギEp以内での)で動作しているX線管からの理想的なX線スペクトルを示しているが、図2aは銀のような低い原子番号(Z)の陽極の場合であり、図2bはタングステンのような高い原子番号の場合である。制動放射線スペクトル成分はそれぞれの場合で類似しているが、エネルギスペクトルにおいて高い強度のピークを形成する蛍光線の特性は、エネルギの観点では大きく異なっている。蛍光放射線の相対位置により、タングステンターゲットの場合には銀ターゲットと比較してきわめて高い平均スペクトルエネルギを示す。複雑な対象による減衰後の通過したX線信号を積分するとき、銀陽極のX線ビームは高原子番号材料によって大きく減衰するが、一方タングステンスペクトルはさほど大きく減衰しない。銀陽極に対するタングステン陽極の比を勘案して、X線データは、2台の検出器セットを用いたときに得られるような等価なデータセットを提供する。
【0018】
図3において、本発明の実施の形態によるX線スキャナは、X線源110の列と、X線源からは軸方向でずれた位置にあるX線検出器112の列を有する。何れの列も、スキャナの軸の周りに軸と離間して配置されている。それぞれのX線源は、電子ビームをスキャナの軸に向けるように構成される。それぞれの検出器もスキャナの軸に向いている。いずれの列も円環状の列であるが、X線源の列か検出器の列のいずれかは、部分的な円環状をなすか、その他の形状の列をなしてもよい。ただし、X線源又はX線ビームが生成されるソース内のX線源位置は、スキャナ軸に垂直な共通の面にあるのが望ましい。同様に、検出器は一つ又はそれ以上の列となっており、それぞれの列はスキャナ軸に対して垂直な面にある。制御システム114がソース110を制御するように構成され、それぞれのX線源は互いに独立して駆動されてスキャナ内の対象をスキャンする。ソース110は、順番に駆動されるが、本実施の形態の場合にはソース110は互いに異なるエネルギスペクトルのX線を生成しており、検出器は積層形式ではなく単一の素子である。複数の検出器は全て同様であり同様な応答性を示す。即ちあるエネルギ範囲に亘りX線に応答した同様の出力を生成する。本実施の形態では、複数の検出器は統合された検出器であり、あるエネルギ範囲のX線を検出する。この範囲でのX線強度の累計に応じて変化する出力を生成する。検出器112間の信号の漏れは除かれる。駆動しているビームの端部分における隣り合った検出器によって少量のフィルタリングが直接的な較正係数によって考慮されるからである。
【0019】
図4において、X線源の環状体は多数のX線管により構成され、それぞれの管は電子ビーム202を生成する電子源200と陽極204を有する。電子源200は陽極204に沿って長手方向に電子ビーム202を走査させるように公知の方法で制御可能であり、X線206が陽極204に沿ったソース位置から生成される。
【0020】
図5において、陽極204は2個の互いに異なるターゲット材料AとBよりなる薄いフィルム領域で塗布される。ここでターゲット材料Aは陽極204上において長方形の領域又はブロック206の形状にてパターン化されており、それぞれのブロックはそれぞれの領域において均一な組成をなし、単一の素子であって、入射する電子ビームの焦点領域よりも大きい。ターゲットとなる材料Aよりなるブロック206間には、Aとは異なる材料Bのターゲットブロック208が介在している。そのためターゲットブロック206と208は直線状の列をなし、スキャナの周囲に円環状に配置され、材料Aと材料Bが交互に並んでいる。
【0021】
図6において、2本の電子ビームが被検体の周りを通過するようにスキャナは制御可能であり、2本のビームは互いに180度プラスAタイプとBタイプのターゲットブロックの角度変位分ずれているのが好ましい。本実施の形態では、切り替え可能な電子源を用いた走査が行われる。
この電子源は複数のターゲット領域のうちの一つに向けた電子ビームをオン、次にそれを再度オフにし、次に他のそれぞれのターゲット位置に向いている複数の電子ビームをオン、オフに順番に切り替え、その結果ビームは順次ターゲット位置を通り抜ける。そのことにより、A材料のひとつのブロックとB材料のひとつのブロックは同時にターゲットとなり、2個のアクティブなターゲット領域はほとんど互いに反対であり、その結果検出器の列112のうちの半分がX線の検出に用いることができ、検出器の列の残りの半分が同時に別のX線の検出に用いられる。A材料のブロックとB材料のブロックとの間隔は、両方の軌道の角度サンプリングレートがナイキストサンプリング基準を満たすように選択される。
【0022】
検出器112からのデータは独立した断層画像を再生するために用いることができ、A材料又はB材料ブロックからのそれぞれのデータは他方から一方を差し引くことができ、またはデータは像再生に続いて解析される。別の方法として、投影データは逆投影に先立って結合され、修正された投影データセットを形成する。
【0023】
図7は第1の実施の形態と類似する別の実施の形態を示す。別の実施の形態では、更なるエネルギ弁別を提供するために、X線エネルギの関数としての応答性の大きさである検出器の応答特性を変化させるために検出器に関連するフィルタが用いられている。エネルギ弁別のためには、応答特性はエネルギによって変化するような異なる形状である必要があり、単に尺度が異なるのではない。図7は、X線エネルギの関数としての代表的なフィルタ材料の吸収係数「μ」を示している。吸収材料は特性エネルギEaにおいて吸収エッジを示している。この特性エネルギはK殻電子の加入が可能となるエネルギと同等である。このことにより特性エネルギEaよりも低いエネルギでは吸収が低く、特性エネルギEaよりも高いエネルギでは高い吸収となる。よって、フィルタ材料はあるX線エネルギを遮断しまた他のX線エネルギを通過させるように用いられる。異なる蛍光ピークに整合するターゲット材料を注意深く選択し適切なフィルタ材を選択することにより、統合した検出器の選択的なエネルギ応答性を更に向上させることが可能となる。例えば、適切なフィルタリングによって、検出器の第1のセットでは、別のセットよりも一つのターゲット材料の蛍光ピークにおけるまたはこのピークを含む第1のエネルギ範囲に亘るX線に対する応答性を高くでき、また、別のセットの検出器では、第1のセットよりも別のターゲット材料の蛍光ピークにおけるまたはこのピークピークを含む第2のエネルギ範囲に亘るX線に対する応答性を高くできる。一般的には、2つの蛍光ピークエネルギにおける複数の検出器列のうちの一つの列のX線に対する応答率は、他の列の応答率とは異なる。同様に、複数の検出器列のうちの一つの列の2つ材料の2つのエネルギスペクトルを有するX線に対する応答率は、他の列のこのようなスペクトルを有するX線に対する応答率とは異なる。例えば、タンタル製のフィルタはタングステン特性のX線を十分に吸収するが、モリブデン特性のX線は比較的通過させる。
【0024】
第2の実施の形態が図8に示されており、それは図7と同様な検出器の構成を含み、陽極304のターゲット領域は、互いに平行なターゲット金属AとBよりなる帯状体306が陽極上に形成され、これら帯状体は電子ビームが走査される方向Sに延びている。この電子ビームはターゲット金属AとBとを同時に照射するに十分な大きさである。この実施の形態では4本の帯状体があり金属Aと金属Bの帯状体がそれぞれ2本ずつであるが、本数は4本に限定されない。図9に示されるようなエネルギスペクトルを有する複合X線スペクトルが生成される。図9は2つの材料AとBのスペクトルの合計を示し、2つの材料は2つのピークを具備し、それぞれのピークはそれぞれのターゲット材料A、Bによって生成される。図7に示されるようにいくつかの検出器に適切なフィルタ材料を設置することによって、互いに異なる検出器において異なるエネルギに依存した異なる応答性を発揮することが可能となる。
【0025】
図10は第1環状体412aと第2環状体412bを有する2個の環状の検出器列を示しており、それぞれの環状体において個々の金属フィルタ418は検出器のひとつおきに配置されている。図11に示される例では、2個の環状の検出器列512の一方の環状体512aにはその全体にわたって帯状のフィルタ材料518が設置されているが、他方の環状体512bにはフィルタは配置されていない。多数の環状体検出器システムにおいても同様なフィルタの配列が可能である。これら検出器の構成において図5又は図8に示されるターゲットを用いても良い。
【0026】
図12においていずれの検出器の構成においても、複合X線スペクトルの2つのピークの間のエネルギに吸収エッジEaがあるようにフィルタ材料が選択される。上述したように、モリブデンやタングステンが2つのターゲット材料として用いられる場合は、タンタルがフィルタ材料として適切である。
【0027】
2つのターゲット材料と互いに異なるピークの互いに異なるX線エネルギスペクトルを組合せ、適切なフィルタ材料を選択することによって、より改善され正確な材料分析のための疑似単体エネルギ撮像が提供でき、走査される対象の吸収スペクトルに高く依存した2つのセットの検出器からの出力をより高度に区別することができ、例えば互いに異なる物質の対象相互の区別を良好に行うことができる。
【0028】
スパッタコーティングを用いることにより複雑なターゲットを形成できる。多数のスパッタターゲットと陰影又はマスキング技術を用いることにより、いかなるターゲット形状でもパターン化できる。ターゲット材料A、Bとセグメント化された基体金属の陽極との接着性を確保するために、ターゲット金属を陽極に合金化させるか拡散させる。高温(例えば500度〜1000度C)で真空の又は水素で満たされた炉の中で合金化又は拡散が行われる。選択された工程の条件に応じて、薄いインターフェース層を形成しても良く、又は全てのターゲット金属をベース金属と合金化させてもよい。
【0029】
この方法を更に洗練したものとするために、多層のターゲットを形成してもよい。それは例えば、10〜100オングストロームの厚さのタングステンやウラン等の様々な異なる塗布金属である薄いフィルムを積み重ねたスパッタコーティングを用いて形成できる。電子照射中に無理なく複雑なX線スペクトルを生成するようなターゲットを形成するために、多層ターゲットは、次に基体金属に共に合金化されるか拡散される。
【0030】
図13は更に別の実施の形態を示すものであり、2つの互いに異なる現時番号Zを有する互いに異なるターゲット材料AとBは陽極604に沿って帯状体606、608で交互にならんでいる。ただし、帯状体は、電子ビームの走査方向Sに対して45度斜めになっている。帯状体604、608は、電子ビームの走査方向Sにおいて、それぞれの上端と下端との間のズレは少なくとも帯状体の幅wと同等である程度に十分に幅が狭くかつ傾いている。これは、電子ビーム610がターゲット領域の全幅に実質的に跨るくらいに十分におおきく、かつ帯状体の幅と走査方向Sで同等の幅を有していることにより、2つのターゲット材料の領域とほぼ同等のターゲット領域をカバーすることになることを意味する。そのことにより、図10や図11の検出器列と同様な検出器列を用いることができる。
【0031】
図14は更に別の実施の形態を示しており、陽極704のターゲット領域は互いに異なる原子番号のターゲット材料AとBとの混合体708で覆われている。そのことにより、電子ビーム710がターゲットにぶつかると、発生したX線ビームがその中に2つのピークを備えたスペクトルを有することになる。例えば図11又は図12の検出器構成を用いることによって検出のためにスペクトルはフィルタリングによって分離される。
【0032】
2つのターゲット材料を用いた実施の形態においては、いくつかの環境下においては3個又はそれ以上のターゲット材料を用いて更なるエネルギ弁別を得るようにすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
110 X線源
112 X線検出器
114 制御システム
200 電子源
202 電子ビーム
204、304、604、704 陽極
206 ターゲットブロック
208 ターゲットブロック
306 帯状体
412a 第1環状体
412b 第2環状体
418 金属フィルタ
512a 環状体
518 フィルタ材料
606,608 帯状体
610、710 電子ビーム
708 混合体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源と陽極を有するX線スキャナであって、該陽極は走査方向に互いに離間した複数の材料領域が形成されたターゲット面を有し、該複数の材料領域は互いに異なる材料で形成され、該電子源は所定の順番で該ターゲット面の一連のターゲット領域に電子を向けるように構成されて互いに異なるエネルギスペクトルを有するX線ビームを生成することを特徴とするX線スキャナ。
【請求項2】
それぞれの材料領域は一様な材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線スキャナ。
【請求項3】
該材料領域は走査方向と直交する方向に延びる帯状体によって構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線スキャナ。
【請求項4】
該材料領域は走査方向に対して斜めに延びる帯状体によって構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線スキャナ。
【請求項5】
該材料領域はターゲット金属により薄いフィルム状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のX線スキャナ。
【請求項6】
それぞれの該ターゲット領域はそれぞれの該材料領域内にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のX線スキャナ。
【請求項7】
それぞれの該ターゲット領域は少なくとも2つの該材料領域の一部を覆っていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載のX線スキャナ。
【請求項8】
複数のX線を検出するための複数の検出器が更に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のX線スキャナ。
【請求項9】
該複数の検出器のそれぞれは実質的に同じ検出器であることを特徴とする請求項8に記載のX線スキャナ。
【請求項10】
該検出器は、少なくとも1つのエネルギの複数のX線に対して互いに別々の応答性を備えた2セットの検出器を含んでいることを特徴とする請求項8に記載のX線スキャナ。
【請求項11】
該2セットの検出器のうちの1セットは残りの1セットよりも第1のエネルギ範囲のX線についてより応答性が高く、該残りの1セットは最初の1セットよりも第2のエネルギ範囲のX線についてより応答性が高いことを特徴とする請求項9又は10に記載のX線スキャナ。
【請求項12】
該1セットの検出器はフィルタ材料と検出素子を有することを特徴とする請求項10又は11に記載のX線スキャナ。
【請求項13】
該検出器からの信号を受信して該信号を処理して出力する処理手段を更に備えたことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一に記載のX線スキャナ。
【請求項14】
該出力は像を生成するための撮像データセットであることを特徴とする請求項13に記載のX線スキャナ。
【請求項15】
電子源と、陽極と、2つの検出器列とを有し、該陽極は複数の異なる材料にて形成されたターゲット面を有し、該電子源は該ターゲット面に電子ビームを向けて該ターゲット面の2つの材料から互いに異なる2つのエネルギスペクトルのX線を同時に発生させるように構成され、該2つの検出器列は互いに異なる応答特性を具備していることを特徴とするX線スキャナ。
【請求項16】
該2つの材料からの2つのエネルギスペクトルを有するX線に対する一方の検出器列の応答率は、該2つの材料からの2つのエネルギスペクトルを有するX線に対する他方の検出器列の応答率とは異なっていることを特徴とする請求項15に記載のX線スキャナ。
【請求項17】
該一方の検出器列の検出器はフィルタ材料と検出素子を有することを特徴とする請求項15又は16に記載のX線スキャナ。
【請求項18】
それぞれの該2つの材料は、それぞれの蛍光エネルギのピーク強度を有するX線を発生するように構成され、該フィルタ材料は互いに異なる2つの蛍光エネルギの減衰を示すように構成されていることを特徴とする請求項17に記載のX線スキャナ。
【請求項19】
該フィルタ材料は該2つの蛍光エネルギの間の周波数で吸収エッジを有することを特徴とする請求項18に記載のX線スキャナ。
【請求項20】
両方の該検出器列の検出器は同一の検出素子を有することを特徴とする請求項17乃至19のいずれか一に記載のX線スキャナ。
【請求項21】
該ターゲット面は複数の材料領域を有し、それぞれの材料領域はそれぞれの材料によって形成され、該電子源は該ターゲットの該ターゲット領域に電子ビームを向けるように構成され、該ターゲット領域は少なくとも2つの材料領域の一部を有することを特徴とする請求項15乃至20のいずれか一に記載のX線スキャナ。
【請求項22】
該電子源は該ターゲットに沿って互いに離間して配置された複数のターゲット領域に電子を照射するように構成されていることを特徴とする請求項21に記載のX線スキャナ。
【請求項23】
該材料領域は互いに平行な帯状体をなし、それぞれの帯状体は複数のターゲット領域内に延びていることを特徴とする請求項22に記載のX線スキャナ。
【請求項24】
該ターゲット面は該複数の材料の混合物によって形成されていることを特徴とする請求項15乃至20のいずれか一に記載のX線スキャナ。


【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−520543(P2012−520543A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553531(P2011−553531)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050438
【国際公開番号】WO2010/103331
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(505396110)シーエックスアール リミテッド (16)
【Fターム(参考)】