説明

X線タルボ干渉計用回折格子及びその製造方法、並びにX線タルボ干渉計

【課題】 露光マスクを必要とせず、溝のアスペクト比の高い回折格子を容易かつ高精度で製造することができるX線タルボ干渉計用回折格子及びその製造方法、並びにX線タルボ干渉計を提供する。
【解決手段】紫外線透過性の基板22上に、金属製のX線吸収部10b、20bが一方向に沿って所定間隔で畝状に複数形成され、隣接するX線吸収部の間の溝部に紫外線硬化したフォトレジスト壁26が介装され、X線吸収部は、基板上の金属膜2bxを切削して形成され、溝部の側壁の表面粗さがJIS B0601で規定された算術平均高さRaで0.1μm以下である切削金属層2bと、該切削金属層上にフォトレジスト壁を鋳型とする電鋳によって積層される1層以上の電鋳層4b、6bとを備えているX線タルボ干渉計用回折格子10、20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線タルボ干渉計用回折格子及びその製造方法、並びにX線タルボ干渉計に関する。
【背景技術】
【0002】
回折格子を用い、空間的に可干渉な光源からの光を透過させると、回折格子から特定の距離において、回折格子の自己像を形成するタルボ効果が知られている。近年、このタルボ効果を用い、透過X線の位相シフトを検出するX線タルボ干渉計が開発されている。タルボ効果を利用し、X線の位相シフトにより得られる画像は、従来の透過X線の吸収の大小によって得られる画像に比べ、特に原子番号の小さな物質でコントラストが高いという利点がある。
このようなX線タルボ干渉計1000として、図9に示すように、第1の回折格子1010および第2の回折格子1020と、X線画像検出器30とを備えた構成が知られている(特許文献1参照)。第1の回折格子1010および第2の回折格子1020は、図10に示すように、金属板の一方向に所定の周期で溝1010a、1020aを形成し、溝からX線を透過させる一方、隣接する溝の間の畝部1010bではX線の位相をπ/2だけシフトして透過させ、畝部1020bでX線を遮蔽(吸収)するようになっている。回折格子の材料としては、通常、X線吸収能の高い金(Au)を用いている。
【0003】
このX線タルボ干渉計において、X線源から試料を介して第1の回折格子にX線を照射すると、溝部1010aを透過したX線と畝部1010bを透過回折したX線とが互いに干渉する。そして、第一の回折格子1010のタルボ距離d/2λ(dは回折格子の周期、λはX線の波長)の整数倍の位置には、第一の回折格子1010の自己像が現れる(タルボ効果)。この自己像には試料4による歪みが生じ、この歪みは試料の情報を持っている。第二の回折格子1020は第一の回折格子1010の自己像が現れる位置に配置される。そして第二の回折格子1020を透過するX線の分布には、第一の回折格子の自己像が重なってモアレ縞が生じている。従って、このX線の分布をX線画像検出器で検出して、画像解析を行って試料4の像を得る。画像コントラストを向上させるには、第2の回折格子1020の溝部1020aのX線透過率が高く、畝部1020bのX線透過率が低いと良い。そのため、第2の回折格子1020は第1の回折格子1010より厚い振幅型回折格子であることが好ましい。
【0004】
ここで、タルボ効果を生じさせるため、回折格子の畝部(X線吸収部)をX線の可干渉性を確保した周期にする必要がある。そのため畝部の周期を10μm以下程度としなければならない。さらに、位相型回折格子においては、位相シフト量がπ/2になるときに自己像のコントラストが最も高くなることから、これを実現するには、畝部の厚さ(溝の深さ)を1〜10μm程度とする必要があり、微細な加工や製造技術が要求される。
一方、振幅型回折格子として機能するためには、回折格子の溝部1020aのX線透過率が高く、畝部1020bのX線透過率が低いと良い。このため、金を用いても溝の深さを10〜100μm程度に深掘りすることが要求される。従って、回折格子の(溝の深さ)/(溝の幅)で表されるアスペクト比が非常に大きくなり、回折格子の製造が困難となる。
【0005】
このようなことから、X線マスクによるX線リソグラフィによって樹脂に深い溝を形成し、この溝に電鋳法によってX線吸収部を形成させ、X線タルボ干渉計用の回折格子を製造する技術が開示されている(特許文献2参照)。
又、シリコン又はガラス基板にX線感光性樹脂を形成し、X線マスクを用いてこの樹脂を露光して畝状の樹脂壁を形成し、樹脂壁の間に電鋳法でX線吸収金属部を形成する技術が開示されている(特許文献3参照)。さらに、この技術には、X線吸収金属部を覆ってレジストを形成した後、基板の裏面からX線を入射させ、X線吸収金属部をX線マスクとしてX線露光された部分の樹脂を硬化させ、樹脂壁(つまり、そこに電鋳されるX線吸収金属部)を基板の垂直方向に順次積層形成させることも開示されている。このようにすると、X線吸収金属部のアスペクト比の高い回折格子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/58070号
【特許文献2】特開2006−259264号公報
【特許文献3】特開2009−169098号公報(図13(c))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2記載の技術の場合、微細な溝(スリット)内に電鋳を行うため、溝のアスペクト比が高くなるほど、電鋳を確実に行うことが難しくなる。又、レジスト樹脂を用いてアスペクト比の高い溝を形成しようとすると、樹脂が柔らかく絶縁物であるために変形して隣接する畝部が接触し(スティッキング)、精度の高い回折格子の製造が難しいという問題がある。さらに、アスペクト比の高い溝を作製するためには、シンクロトロン放射による放射光を用い、直線性の高いX線で露光する必要があり、製造コストが大幅に上昇する。
【0008】
一方、特許文献3記載の技術の場合、樹脂壁(そこに電鋳されるX線吸収金属部)を基板の垂直方向に順次積層形成させるため、1回のレジスト形成毎の樹脂壁のアスペクト比を比較的低くすることができ、電鋳を確実に行うことができ、スティッキングも低減される。しかしながら、この技術も1段目のレジスト形成についてはX線リソグラフィを行っているため、やはり樹脂壁の寸法精度(側壁や角部の形状)が高いとはいえず、そこに電鋳される1段目のX線吸収金属部の形状精度も劣る。
又、この技術の場合、1段目のレジスト形成にマスクが必要なため、X線タルボ干渉計に必要な2枚の回折格子毎のマスクを用意しなければならず、X線源の種類や運転条件が変わった場合も格子間距離が変化するのでマスクを変更しなければならないという問題がある。例えば、X線源にX線管球を使った位相イメージングは球面波であるため、第1の回折格子と第2の回折格子では格子パターンの周期が異なる。さらに、測定試料に応じてX線管球の管電圧の最適値が変わり、それに伴ってタルボ効果が生じる自己像の位置、すなわち格子間距離も変わるので、マスクの変更が必要となる。
【0009】
従って、本発明の目的は、露光マスクを必要とせず、溝のアスペクト比の高い回折格子を容易かつ高精度で製造することができるX線タルボ干渉計用回折格子及びその製造方法、並びにX線タルボ干渉計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のX線タルボ干渉計用回折格子は、紫外線透過性の基板上に、金属製のX線吸収部が一方向に沿って所定間隔で畝状に複数形成され、隣接するX線吸収部の間の溝部に紫外線硬化したフォトレジスト壁が介装され、
前記X線吸収部は、前記基板上の金属膜を切削して形成され、前記溝部の側壁の表面粗さがJIS B0601で規定された算術平均高さRaで0.1μm以下である切削金属層と、該切削金属層上に前記フォトレジスト壁を鋳型とする電鋳によって積層される1層以上の電鋳層とを備えている。
【0011】
このような構成とすると、切削刃具で金属膜に溝部を彫って最も基板側に切削金属層を形成するため、レジスト樹脂を用いて形成した微細な溝(スリット)内に電鋳を行って回折格子を製造する従来技術に比べ、切削金属層の側壁、ひいてはX線吸収部の側壁の寸法精度が高い回折格子が得られる。
さらに、(溝部の深さ)/(溝部の幅)で表されるアスペクト比を高くした溝部を、一回の切削で製造するには、細長い切削刃具を用いることが必要となり、切削加工時に切削刃具が折れたりビビリが生じることにより、溝部の側壁の形状の精度が低下する場合がある。そこで、切削で形成される溝部の深さをそれほど深くせず(アスペクト比を高くせず)、得られた切削金属層をマスクとするセルフアラインメントによりフォトレジストを露光してフォトレジスト壁を形成し、フォトレジスト壁を鋳型として電鋳層を順次電鋳して切削金属層に積層する。これにより、最終的に得られるX線吸収部(溝部)のアスペクト比を高くし、かつ切削刃具の破損が低減される。なお、フォトレジスト壁は、側壁の表面粗さがJIS B0601で規定された算術平均高さRaで0.1μm以下である切削金属層をマスクとしてフォトリソグラフィにより形成されるので、フォトレジスト壁自身の側壁の寸法精度が高くなる。
又、フォトレジスト壁がX線吸収部を保持し、X線吸収部が倒れたり変形するのを防止する。
【0012】
前記基板と前記切削金属層との間に、紫外線透過性を有すると共に前記基板より硬度が低く、かつ前記切削金属層より有効原子番号が小さい中間層が形成されていると好ましい。
一般に基板は金属膜より硬いので、基板を削ると切削刃具を消耗するが、金属膜と基板の間に中間層を形成することにより、金属膜厚分を確実に切削して深い溝部を形成できると共に、基板より柔らかい中間層の一部を切削することで、切削刃具の消耗を防止する。
また中間層の有効原子番号が切削金属層の有効原子番号より小さいと、中間層によるX線の位相変化や吸収の影響を小さくすることができる。
【0013】
本発明のX線タルボ干渉計用回折格子の製造方法は、紫外線透過性の基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記金属膜を一方向に沿って一定の周期で切削して複数の溝部を彫り、隣接する前記溝部の間に畝状の切削金属層を形成する切削工程と、前記溝部を含む前記切削金属層の表面に所定厚みで紫外線硬化性のフォトレジスト層を被覆するフォトレジスト層被覆工程と、前記切削金属層と反対側の前記基板側から紫外線を照射して前記フォトレジスト層を露光する露光工程と、非露光の前記フォトレジスト層を除去し、前記切削金属層をマスクとして紫外線硬化した単位フォトレジスト壁を形成するフォトレジスト層現像工程と、前記単位フォトレジスト壁の間の前記切削金属層の上面に、前記単位フォトレジスト壁を鋳型とする電鋳によって電鋳層を形成する電鋳層形成工程とを有する。
【0014】
このような構成とすると、切削刃具で金属膜に溝部を彫って最も基板側に切削金属層を形成するため、レジスト樹脂を用いて形成した微細な溝(スリット)内に電鋳を行って回折格子を製造する従来技術に比べ、切削金属層の側壁、ひいてはX線吸収部の側壁の寸法精度の高い回折格子が得られる。
さらに、(溝部の深さ)/(溝部の幅)で表されるアスペクト比を高くした溝部を、一回の切削で製造するには、細長い切削刃具を用いることが必要となり、切削刃具が折れやすく、溝部の側壁の形状の精度が低下する場合がある。そこで、切削で形成される溝部の深さをそれほど深くせず(アスペクト比を高くせず)、得られた切削金属層をマスクとするセルフアラインメントによりフォトレジストを露光して単位フォトレジスト壁を形成し、単位フォトレジスト壁を鋳型として電鋳層を順次電鋳して切削金属層に積層する。これにより、最終的に得られるX線吸収部(溝部)のアスペクト比を高くし、かつ切削刃具の破損が低減される。なお、単位フォトレジスト壁は、溝部の側壁の表面粗さがJIS B0601で規定された算術平均高さRaで0.1μm以下である切削金属層をマスクとしてフォトリソグラフィにより形成されるので、単位フォトレジスト壁自身の側壁の寸法精度が高くなる。
又、単位フォトレジスト壁がX線吸収部を保持し、X線吸収部が倒れたり変形するのを防止する。
【0015】
さらに、前記単位フォトレジスト壁及び前記電鋳層の表面に所定厚みで前記紫外線硬化性のフォトレジスト層を被覆する第2フォトレジスト層被覆工程と、前記切削金属層と反対側の前記基板側から紫外線を照射して前記フォトレジスト層を露光する第2露光工程と、非露光の前記フォトレジスト層を除去し、前記切削金属層をマスクとして紫外線硬化した単位フォトレジスト壁を形成する第2フォトレジスト層現像工程と、前記単位フォトレジスト壁の間の前記切削金属層の上面に、前記単位フォトレジスト壁を鋳型とする電鋳によって電鋳層を形成する第2電鋳層形成工程とを有し、前記第2フォトレジスト層被覆工程、前記第2露光工程、前記第2フォトレジスト層現像工程、及び前記第2電鋳層形成工程をこの順で少なくとも1回繰り返してもよい。
このようにすると、切削金属層の上面に電鋳層を2層以上積層することができ、より高アスペクト比のX線吸収部を形成することができる。
【0016】
前記基板と前記金属膜との間には、紫外線透過性を有すると共に前記基板より硬度が低く、かつ前記切削金属層より有効原子番号が小さい中間層を形成する中間層形成工程をさらに有すると好ましい。
このような中間層を有することにより、前記切削金属層と反対側の前記基板側から紫外線を照射して前記フォトレジスト層を露光する露光工程で、前記中間層を通して前記フォトレジストを感光させることができる。
また、前記中間層の他の効果として、前述したように金属膜厚分の確実な切削と切削刃具の摩耗防止ならびにX線の位相変化および吸収の影響を低減できる。
【0017】
本発明のX線タルボ干渉計は、前記X線タルボ干渉計用回折格子を用いたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、露光マスクを必要とせず、溝のアスペクト比の高いX線タルボ干渉計用回折格子を容易かつ高精度で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るX線タルボ干渉計の概略構成を示す図である。
【図2】第1の回折格子および第2の回折格子のx方向に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るX線タルボ干渉計用回折格子の構成を示す斜視図である。
【図4】単結晶ダイヤモンド切削刃具を取り付けた工具本体を示す斜視図である。
【図5】単結晶ダイヤモンド切削刃具を示す斜視図である。
【図6】単結晶ダイヤモンド切削刃具を用い、各切削金属層を形成する方法を示す図である。
【図7】X線タルボ干渉計用回折格子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図8】図7に続く工程図である。
【図9】従来のX線タルボ干渉計の概略構成を示す図である。
【図10】従来のX線タルボ干渉計の第1の回折格子および第2の回折格子の、x方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るX線タルボ干渉計100の概略構成を示す図である。X線タルボ干渉計100は、X線源2と、第1の回折格子10および第2の回折格子20と、X線画像検出器30とを備えている。第1の回折格子10および第2の回折格子20はz方向に所定距離だけ離間して平行に配置され、第1の回折格子10にz方向に沿って対向してX線源2が配置されている。又、第2の回折格子20にz方向に沿って対向してX線画像検出器30が配置されている。そして、観察対象となる試料4がz方向に沿って第1の回折格子10とX線源2の間に配置されている。
第1の回折格子10および第2の回折格子20は、その平面に平行な一方向(図1ではy方向)に沿って延びつつ、互いに所定周期で離間する複数の溝部10a、20aが形成され(図2の溝部の断面図参照)、溝部10a、20aからX線を透過させる一方、隣接する溝部10aの間の短冊状の畝部10bでX線の位相をπ/2だけシフトして透過させ、畝部20bでX線を遮蔽(吸収)するようになっている。各溝部10a、20a及び畝部10b、20bは、図1のY方向に延びている。回折格子の材料としては、X線吸収能の高い金を用いると好ましい。なお、この実施形態では、畝部10bの幅(間隔)と溝部10aの幅(間隔)が等しく、畝部20bの幅(間隔)と溝部20aの幅(間隔)が等しい。
【0021】
X線タルボ干渉計100において、X線源2から試料4を介して第1の回折格子10にX線を照射すると、溝部10aを透過したX線と畝部10bを透過回折したX線とが互いに干渉する。そして、タルボ距離だけ離れた位置で第1の回折格子の自己像が形成される。つまり、第1の回折格子10は、照射X線に位相変調を与える位相型回折格子を構成する。ここで、タルボ効果を生じさせるため、第1の回折格子10の畝部の周期d(図2(a)参照)を、X線源2から照射されるX線の可干渉性を確保するよう調整する必要がある。
又、第1の回折格子10の後方(自己像の位置)に配置された第2の回折格子20は、第1の回折格子10により回折されたX線を回折して画像コントラストを形成し、第2の回折格子20の後方のX線画像検出器30で回折X線を検出する。画像コントラストを向上させるには、第2の回折格子20の溝部20aのX線透過率が高く、畝部20bのX線透過率が低いと良い。そのため、第2の回折格子20は第1の回折格子10より厚い振幅型回折格子であることが好ましい。
【0022】
ここで、第1の回折格子10の前方に試料4が配置され、照射X線は試料4内部による位相差によって自己像に歪みが生じる。そして自己像の位置に第2の回折格子20を重ねると、タルボ干渉像(画像コントラスト)にモアレ縞が生じ、X線画像検出器30で検出される。生成されたモアレ縞が試料4によって受ける変調量は、試料4により照射X線が曲げられた角度に比例するため、モアレ縞を解析することで試料4とその内部構造を測定することができる。
なお、モアレ縞の解析法の一つである縞走査法では、第1の回折格子10および第2の回折格子20をX方向に相対的にずらすことで、モアレ縞の位相が変化することに着目している。すなわちモアレ縞の位相を変化させて複数のタルボ干渉像を得た後、これを積分処理等して合成することにより、位相像(試料4とその内部構造)を得ることができる。
又、試料4を回転させて多数の投影方向から像を取得し、これらを合成して試料4の断層像(CT像)を得ることも可能である。
【0023】
なお、本発明のX線タルボ干渉計100は、X線源2と試料4との間にマルチスリットを配置したタルボ・ロー干渉計も含む。マルチスリットを用いない場合、X線源2としては微小焦点X線源を用いる必要があるが、タルボ・ロー干渉計の場合は通常X線源を用いることができる。
【0024】
ところでX線は波長が短いので、可干渉性を確保するためには、第1の回折格子10および第2の回折格子20の畝部の周期を10μm以下程度としなければならない。さらに、位相型回折格子においては、位相シフト量がπ/2になるときに自己像のコントラストが最も高くなることから、これを実現するには、畝部の厚さ(溝の深さ)を1〜10μm程度とする必要があり、微細な加工や製造技術が要求される。例えば、各回折格子の畝部を金で形成する場合、畝部の厚さを1〜3μm程度、銅で形成する場合、畝部の厚さを3〜10μm程度とする必要がある。
一方、振幅型回折格子として機能するためには、回折格子の溝部のX線透過率を高くし、畝部のX線透過率を低くする必要がある。このため、金を用いても畝部の厚さ(溝の深さ)を10〜100μm程度に深くすることが要求される。従って、回折格子の(溝の深さ)/(溝の幅)で表されるアスペクト比が3以上(場合によっては10以上)と非常に大きくなる。
【0025】
このようなことから、X線吸収部(畝部)を微細に形成すると共に、その側壁の形状をシャープに(溝の側壁の凹凸や側壁と底面の切削隅部の曲率半径を微細に)形成する必要がある。そして、本発明者らは、例えば、硬度が高く精密な溝加工が可能な単結晶ダイヤモンド切削刃具を用いて金属膜を切削することで、微細で側壁の形状がシャープなX線吸収部(溝部)を形成できることを見出した。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係るX線タルボ干渉計用回折格子20の構成を示す。X線タルボ干渉計用回折格子20は、上記した図1に示す第2の回折格子(振幅型回折格子)20であり、(溝の深さ)/(溝の幅)で表されるアスペクト比が好ましくは3以上である。なお、本発明は、位相型回折格子である第1の回折格子10にも適用可能であるが、上記アスペクト比が高い振幅型回折格子に適用するとより好ましい。各単位金属層(切削金属層2bおよび電鋳層4b、6b)の境界は、断面観察によって各単位金属層の溝部の側壁の表面粗さの状態や、各単位金属層の位置ずれを観察し、区別(測定)することができる。
【0027】
X線タルボ干渉計用回折格子20は、基板22と、基板上22に所定間隔で一方向に沿って複数形成された畝状で金属製のX線吸収部20bと、隣接するX線吸収部の間の溝部20aに介装されたフォトレジスト壁26とを有している。X線吸収部20bは、金属膜を切削して形成された切削金属層2bと、切削金属層2b上の1以上(図3では2つ)の電鋳層4b、6bを基板22の表面に垂直に積層してなり、切削金属層2bが基板22側に形成されている。そして、切削金属層2bの側壁2sの表面粗さがJIS B0601で規定された算術平均高さRaで0.1μm以下である。フォトレジスト壁26は、後述する単位フォトレジスト壁26a、26bを基板22に垂直な方向に積層してなり、電鋳層4b、6bは、フォトレジスト壁26(単位フォトレジスト壁26a、26b)を鋳型とする電鋳によって積層して形成されている。
又、切削金属層2bと基板22との間には、中間層24が介装されている。
【0028】
基板22は、X線透過率を高くするため、例えば炭素、ケイ素及びアルミニウムの群から選ばれる少なくとも1つを主成分とする材料からなることが好ましい。基板22の組成の具体例としては、例えば、アモルファスカーボン若しくはシリコンのウェーハ、又は窒化シリコン若しくは炭化シリコンのメンブレン、又は3000系のアルミニウム板やアルミマグネシウム合金板などが挙げられる。
基板22として上記材料を用いることでX線透過率を高くすることができ、良好な回折特性が得られる。またX線の吸収や位相シフトの量は金属膜の厚さに依存しているため、溝部の底に金属膜の削り残しが存在しないことが好ましい。ところで多数の溝加工を行う場合の切削加工機の動きは、1回の溝彫りでは刃具を溝に沿った方向に動かすのみで、溝の深さ方向を一定にすることにより高速の加工を行えるようにしている。この場合、金属膜を削り残さないためには金属膜と中間層を含めた基板が平坦であることが好ましいが、各々の膜の膜厚、及び基板を切削加工機に装着したときのうねりは、それぞれ数ミクロン以下のばらつきがある。そこで金属膜と中間層を含めた基板の平坦度を好ましくは10μm以下にしながら、中間層をその平坦度以上の厚さに形成することにより、金属膜を削り残さず、刃具が基板を削って消耗することを防ぐことができる。
【0029】
中間層24は、基板より硬度(ビッカース硬度)が低く、紫外線透過性を有しており、かつ金属膜(切削金属層2b及び電鋳層4b、6b(X線吸収部20b)となる各単位金属層)より有効原子番号が小さいことが必要である。中間層は例えば、樹脂またはITO(酸化インジウム・スズ)膜が適当である。
【0030】
上記した中間層24は、基板22上の金属膜を切削して切削金属層2bを形成する際、深く切削し過ぎて切削刃具が基板22を削ることを防止する。一般に、基板22は金属膜より硬いので、基板22を削ると切削刃具を消耗するが、金属膜と基板22の間に中間層24を形成することにより、金属膜厚分を確実に切削して深い溝部を形成できると共に、基板22より柔らかい中間層24の一部を切削することで、切削刃具の消耗を防止する。また中間層24が紫外線透過性を有していると、第2露光工程以降の露光工程で紫外線が中間層24を通してフォトレジスト露光することが可能になる。なお、中間層自身はX線の吸収や位相変化が小さいので、X線吸収部20bを形成する際に中間層24の一部を切削しても差し支えない。但し、いずれのタイプの中間層24も必須の構成ではない。
【0031】
X線吸収部20b(切削金属層2b及び電鋳層4b、6b)は金を主成分とした金属膜、例えば純金めっき膜、又は金ニッケル合金めっき、金ニッケルタングステン合金めっきであって金の重量割合が90%以上の膜を切削することで形成でき、X線を効率的に吸収して回折格子の特性が向上する。なお、上記したように、金属膜は純金属だけでなく、合金も含む。
【0032】
フォトレジスト壁26は紫外線硬化性であり、例えばエポキシ系ネガレジストであるSU−8(マイクロケム社)等の公知の紫外線硬化樹脂を用いることができる。フォトレジスト壁26は、後述するように切削金属層2bをマスクとするセルフアライメントにより形成された単位フォトレジスト壁26a、26bを積層してなり、この単位フォトレジスト壁26a、26bを鋳型として、それぞれ電鋳層4b、6bが形成(電気めっき)される。又、フォトレジスト壁26は、切削金属層2bや電鋳層4b、6bを保持し、これらの層が倒れたり変形するのを防止する。
【0033】
次に、図4〜図6を参照し、金属膜を切削して切削金属層を形成するのに好適な、単結晶ダイヤモンドからなる切れ刃を有する切削工具について説明する。単結晶ダイヤモンドは硬度が高く、精密な溝加工が可能である。
図4は、単結晶ダイヤモンド切削刃具200を取り付けた工具本体(バイト)400を示す。単結晶ダイヤモンド切削刃具200は、略台形の台金300の先端に取り付けられて工具本体400を構成し、台金300の先端から単結晶ダイヤモンド切削刃具200の切れ刃(図5参照)が突出している。工具本体400は、図示しない切削加工機のホルダに固定され、後述するように、単結晶ダイヤモンド切削刃具200により被切削物に溝を彫ることができるようになっている。
【0034】
図5に示すように、単結晶ダイヤモンド切削刃具200は、すくい面201と、すくい面201にそれぞれ隣接する側面となる2つの第1逃げ面203、204と、すくい面201に隣接し、被削物500の切削面S(図6参照)に対向する前逃げ面205と、すくい面201と前逃げ面205との境界部に形成される前切れ刃210と、すくい面201と第一逃げ面203、204との境界部に形成される2つの第1切れ刃213、214とを備えている。前逃げ面205及びすくい面201の形状は限定されず、平面であってもよく、曲面であってもよい。すくい面201は所定のすくい角0度又はすくい角がわずかに正方向に傾いていて、切削くずをすくい取るようになっている。
第一逃げ面203、204及び前逃げ面205は、集束イオンビーム(FIB)のエッチングにより形成されている。FIBのエッチングは、複雑な形状の加工ができると共に、結晶面を選ばずに加工ができるという利点がある。従って、ダイヤモンドの一番固い結晶面である(111)面をも容易に加工ができる。これに対し、例えば砥石による研磨では、ダイヤモンドの(111)面の研磨ができない。
前切れ刃210の幅Wを4μm以下とすると、X線タルボ干渉計用の回折格子に適した微小な溝部を彫ることができるので好ましい。
【0035】
以上述べた本発明の単結晶ダイヤモンド切削刃具200(工具本体400)を切削加工機に取り付け、図6に示すようにして切削金属層2b(溝部20a)を形成することができる。ここで、切削で形成される溝部の周期や深さは超精密ナノ加工機の分解能に依存しているため、切削加工機として分解能がnmレベルの超精密ナノ加工機を用いることが好ましい。超精密ナノ加工機としては、例えばファナック株式会社製の製品名「FANUC ROBONANO α-0iB 」が市販されている。この超精密ナノ加工機は、リニアモータと同期ビルトインサーボモータを制御することにより、同時5軸を高精度にダイレクト駆動し、直線軸で1nmの分解能を有する。
【0036】
このような加工機を用い、図5に示すように単結晶ダイヤモンド切削刃具200により、金属膜20xの一方向(図6の矢印方向)に沿い、かつ該一方向に垂直な方向に所定幅Wの畝を残した引き切り加工を行う。これにより、金属膜20xが切削されて溝部20aが形成され、隣接する溝部20aの間に畝状の切削金属層2bを形成することができる。なお、W=Wとするとよい。
【0037】
ここで、単結晶ダイヤモンド切削刃具200で金属膜20xに溝部20aを彫るため、溝部の側面の凹凸、及び溝部の側面と底面との切削隅部の曲率半径がそれぞれ0.1μm以下の良好な加工が可能になり、レジスト樹脂を用いて形成した微細な溝(スリット)内に電鋳を行って回折格子を製造する従来技術に比べ、寸法精度の高い回折格子が得られる。具体的には、上記側壁のシャープさは、切削加工機の移動機構の精度に依存し、上記「FANUC ROBONANO α-0iB 」を用いた場合には、真直度で0.2μm/150mmが得られる。又、レジスト樹脂を用いて回折格子を製造する技術と異なり、露光マスクを必要としない。
【0038】
又、溝部20aの幅は前切れ刃210の幅Wと同値となり、溝部20aの深さLは第1逃げ面203、204の縦方向長さまで彫ることができる。この場合、図1に示す第2の回折格子(振幅型回折格子)を製造しようとすると、(溝の深さ)/(溝の幅)で表されるアスペクト比を高く(例えば3以上)する必要がある。従って、一回の切削でこの回折格子を製造するには、L/Wが3以上の細長い単結晶ダイヤモンド切削刃具を用いることが必要となる。しかしながら、L/Wを3以上とすると、切削刃具が折れやすくなる。
【0039】
そこで、本発明においては、切削で形成される溝部20aの深さをそれほど深くせず(アスペクト比を高くせず)、得られた切削金属層2bをマスクとするセルフアラインメントによりフォトレジストを露光して単位フォトレジスト壁26a、26bをそれぞれ形成し、単位フォトレジスト壁26a、26bを鋳型として各電鋳層4b、6bを順次電鋳して積層する。これにより、最終的に得られるX線吸収部20bのアスペクト比を高くし、かつ切削刃具の破損が低減される。例えば、L/Wが1の単結晶ダイヤモンド切削刃具を用いた場合、切削金属層2bのアスペクト比は1であるが、以下に述べるように2層の電鋳層(それぞれアスペクト比が1)を積層することで、溝部のアスペクト比が3以上の回折格子が得られる。
又、単位フォトレジスト壁26a、26bは、切削によって形成され自身の側壁の表面粗さがJIS B0601で規定された算術平均高さRaで0.1μm以下である切削金属層2bをマスクとしてフォトリソグラフィにより形成されるので、単位フォトレジスト壁26a、26b自身の側壁の寸法精度が高くなる。
【0040】
次に、図7、図8を参照し、X線タルボ干渉計用回折格子20の製造方法の一例について説明する。
まず、紫外線透過性の基板22である石英ガラス上に必要に応じて中間層24を形成した後、中間層24の上に金属膜2bxを形成する(図7(a);金属膜形成工程)。中間層24はITO膜を真空蒸着法により成膜する。金属膜2bxは金を電気めっきにより形成する。金属膜2bxの密着性を確保するために、中間層24の表面に金を薄く蒸着してから金を電気めっきしても良い。
次に、上記した単結晶ダイヤモンド切削刃具200を用い、金属膜2bxを一方向(図7の紙面に垂直な方向)に沿って所定間隔で切削して複数の溝部20aを彫り、隣接する溝部20aの間に畝状の切削金属層2bを形成する(図7(b);切削工程)。
【0041】
そして、溝部20aを含む切削金属層2bの表面に所定厚みで紫外線硬化性のフォトレジスト層26axを被覆する(図7(c);フォトレジスト層被覆工程)。ここで、フォトレジスト層26axは溝部20aを完全に埋めている。フォトレジスト層26aには、例えばマイクロケム社のエポキシ系ネガレジストであるSU−8が挙げられる。
なお、切削金属層2bをマスクとしたとき、非露光のフォトレジスト層が重合せずに現像で除去されるよう、フォトレジスト層26ax(及び後述のフォトレジスト層26bx)に用いるレジストはネガ型とする。
【0042】
次に、切削金属層2bと反対側の基板22側から紫外線UVを照射してフォトレジスト層26axを露光する(図7(d);露光工程)。切削金属層2bをマスクとするセルフアライメントにより、切削金属層2bの間の溝部20aに埋められたフォトレジスト層26axが露光されて重合硬化する一方で、切削金属層2bの影になったフォトレジスト層26axは露光されず、重合されない。
そして、フォトレジスト層26axを現像液に浸し、非露光のフォトレジスト層26axを除去し、切削金属層2bをマスクとして紫外線硬化した単位フォトレジスト壁26aを形成する(図7(e);フォトレジスト層現像工程)。単位フォトレジスト壁26aは、溝部20aを埋めると共に、フォトレジスト層26axの成膜厚み分だけ切削金属層2bより突出している。現像液としては、例えばマイクロケム社の1−メトキシ−2−プロピルアセテートを主成分とするSU−8−Developerが挙げられる。
【0043】
次に、基板22全体を電気めっき浴に浸漬し、切削金属層2bをカソードとして電気めっきし、単位フォトレジスト壁26aを鋳型として電鋳層4bを形成する(図8(f);電鋳層形成工程)。電鋳層4bは、単位フォトレジスト壁26a間の切削金属層2bの上面に積層され、単位フォトレジスト壁26aの上面とほぼ同じ高さまで形成される。
電鋳層4bを金から構成する場合、電気めっき浴としては、フォトレジストを侵食しない非シアン系の電気金めっき浴が好ましい。
【0044】
このように、金属膜形成工程(図7(a))、切削工程(図7(b))、フォトレジスト層被覆工程(図7(c))、露光工程(図7(d))、フォトレジスト層現像工程(図7(e))、電鋳層形成工程(図8(f))をこの順で行うことで、切削金属層と電鋳層とが積層されたX線吸収部を備えたX線タルボ干渉計用回折格子を製造することができる。
なお、図3に示すX線タルボ干渉計用回折格子20の場合、電鋳層形成工程(図8(f))の後で、さらに後述する第2フォトレジスト層被覆工程(図8(g))、第2露光工程(図8(h))、第2フォトレジスト層現像工程(図8(i))、及び第2電鋳層形成工程(図8(j))、をこの順で少なくとも1回繰り返すことで、切削金属層と2以上の電鋳層とが積層されたX線吸収部を備えたX線タルボ干渉計用回折格子を製造することができる。
【0045】
具体的には、第2フォトレジスト層被覆工程(図8(g))で、単位フォトレジスト壁26a及び電鋳層4bの表面に、所定厚みで紫外線硬化性のフォトレジスト層26bxを被覆する。フォトレジスト層26bxに用いるレジストは、フォトレジスト層26axと同様にネガ型とする。
第2露光工程(図8(h))で、露光工程(図7(d))と同様に、切削金属層2bと反対側の基板22側から紫外線UVを照射してフォトレジスト層26bxを露光する。切削金属層2bをマスクとするセルフアライメントにより、切削金属層2bの間のフォトレジスト壁26a(溝部20aの位置)の表面に被覆されたフォトレジスト層26bxが露光されて重合硬化する一方で、電鋳層4b(切削金属層2bの位置)の影になったフォトレジスト層26bxは露光されず、重合されない。
【0046】
そして、第2フォトレジスト層現像工程(図8(i))で、フォトレジスト層26bxを現像液に浸し、非露光のフォトレジスト層26bxを除去し、切削金属層2b(及び電鋳層4b)をマスクとして紫外線硬化した単位フォトレジスト壁26bを形成する。単位フォトレジスト壁26bは、単位フォトレジスト壁26aの上面に積層されると共に、フォトレジスト層26bxの成膜厚み分だけ電鋳層4bより突出している。現像液は露光工程(図7(d))と同様なものを使用することができる。
第2電鋳層形成工程(図8(j))で、基板22全体を電気めっき浴に浸漬し、電鋳層4bをカソードとして電気めっきし、単位フォトレジスト壁26bを鋳型として電鋳層6bを形成する。電鋳層6bは、単位フォトレジスト壁26b間の電鋳層4bの上面に積層され、単位フォトレジスト壁26bの上面とほぼ同じ高さまで形成される。電気めっき浴としては、電鋳層形成工程(図8(f))と同様なものを使用することができる。
【0047】
なお、第2フォトレジスト層被覆工程(図8(g))、第2露光工程(図8(h))、第2フォトレジスト層現像工程(図8(i))、及び第2電鋳層形成工程(図8(j))、をこの順で2回以上繰り返すと、切削金属層の表面に3以上の電鋳層を積層することができる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
2b 切削金属層
2s 切削金属層の側壁
2bx 金属膜
4b、6b 電鋳層
10、20 X線タルボ干渉計用回折格子
10a、20a 溝部
10b、20b X線吸収部(畝部)
22 基板
24 中間層
26 フォトレジスト壁
26a、26b 単位フォトレジスト壁
26ax、26bx フォトレジスト層
100 X線タルボ干渉計
200 単結晶ダイヤモンド切削刃具
210 前切れ刃
213、214 第1切れ刃
UV 紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過性の基板上に、金属製のX線吸収部が一方向に沿って所定間隔で畝状に複数形成され、隣接するX線吸収部の間の溝部に紫外線硬化したフォトレジスト壁が介装され、
前記X線吸収部は、前記基板上の金属膜を切削して形成され、前記溝部の側壁の表面粗さがJIS B0601で規定された算術平均高さRaで0.1μm以下である切削金属層と、該切削金属層上に前記フォトレジスト壁を鋳型とする電鋳によって積層される1層以上の電鋳層とを備えているX線タルボ干渉計用回折格子。
【請求項2】
前記基板と前記切削金属層との間に、紫外線透過性を有すると共に前記基板より硬度が低く、かつ前記切削金属層より有効原子番号が小さい中間層が形成されている請求項1記載のX線タルボ干渉計用回折格子。
【請求項3】
紫外線透過性の基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜を一方向に沿って所定間隔で切削して複数の溝部を彫り、隣接する前記溝部の間に畝状の切削金属層を形成する切削工程と、
前記溝部を含む前記切削金属層の表面に所定厚みで紫外線硬化性のフォトレジスト層を被覆するフォトレジスト層被覆工程と、
前記切削金属層と反対側の前記基板側から紫外線を照射して前記フォトレジスト層を露光する露光工程と、
非露光の前記フォトレジスト層を除去し、前記切削金属層をマスクとして紫外線硬化した単位フォトレジスト壁を形成するフォトレジスト層現像工程と、
前記単位フォトレジスト壁の間の前記切削金属層の上面に、前記単位フォトレジスト壁を鋳型とする電鋳によって電鋳層を形成する電鋳層形成工程と
を有するX線タルボ干渉計用回折格子の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記単位フォトレジスト壁及び前記電鋳層の表面に所定厚みで前記紫外線硬化性のフォトレジスト層を被覆する第2フォトレジスト層被覆工程と、
前記切削金属層と反対側の前記基板側から紫外線を照射して前記フォトレジスト層を露光する第2露光工程と、
非露光の前記フォトレジスト層を除去し、前記切削金属層をマスクとして紫外線硬化した単位フォトレジスト壁を形成する第2フォトレジスト層現像工程と、
前記単位フォトレジスト壁の間の前記切削金属層の上面に、前記単位フォトレジスト壁を鋳型とする電鋳によって電鋳層を形成する第2電鋳層形成工程と
を有し、前記第2フォトレジスト層被覆工程、前記第2露光工程、前記第2フォトレジスト層現像工程、及び前記第2電鋳層形成工程をこの順で少なくとも1回繰り返す請求項3に記載のX線タルボ干渉計用回折格子の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のX線タルボ干渉計用回折格子を用いたX線タルボ干渉計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−225659(P2012−225659A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90608(P2011−90608)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】