X線分析装置
【課題】標準物質を使用せず、装置の設置場所や測定者の如何にかかわらず、各測定点の測定値のランクを視覚的に容易に判別することができるX線分析装置を提供する。
【解決手段】本発明のX線分析装置は、試料Sに1次X線2を照射するX線源1と、1次X線2が照射された試料Sから発生する2次X線6の強度を検出する検出手段9と、試料Sを測定位置に移動させる試料移動手段8と、試料Sを移動させ、試料Sの所定の測定点に1次X線2を照射させて検出された2次X線6の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段10と、測定手段10による各測定点の測定終了毎に、測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、ランクによって大きさおよび色が異なるマークを決定する処理手段11と、処理手段11によって決定されたマークを試料Sの各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段12とを備える。
【解決手段】本発明のX線分析装置は、試料Sに1次X線2を照射するX線源1と、1次X線2が照射された試料Sから発生する2次X線6の強度を検出する検出手段9と、試料Sを測定位置に移動させる試料移動手段8と、試料Sを移動させ、試料Sの所定の測定点に1次X線2を照射させて検出された2次X線6の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段10と、測定手段10による各測定点の測定終了毎に、測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、ランクによって大きさおよび色が異なるマークを決定する処理手段11と、処理手段11によって決定されたマークを試料Sの各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段12とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の複数の測定点の測定値をランク分けして、各ランクに対応したマークを各測定点に対応した位置に画像表示するX線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の生産工程において、例えばウエーハ、ガラス基板、電子回路基板などの試料表面のマッピング検査に蛍光X線分析装置などのX線分析装置が使用されている。
【0003】
既知の標準物質のX線強度を基準にして、測定したX線強度に応じて色又は明度を変えたコントラスト強度を決定してマッピング表示するX線分析装置がある(特許文献1)。このX線分析装置は一つの照射ポイント(測定点)を一つの画素として、検出したX線強度に応じて色又は明度を変えた強度コントラストを決定し、ディスプレイにおいて照射ポイントに対応した位置に画像として二次元的に表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−32485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のX線分析装置では、標準物質を基準として色や明度のコントラスト強度を決定しているため、標準物質がなければ実施することが困難である。また、色と明度のコントラスト強度のみで表示されているために、装置の設置場所によっては色や明度のコントラスト強度の識別が困難であり、色弱など色の判別が困難な測定者では測定が困難となる。さらに、1つの測定点を1つの画素として表示するため、各測定点の情報を視覚的に容易に認識することができない。
【0006】
そこで、本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、標準物質を使用せず、装置の設置場所や測定者の如何にかかわらず、各測定点の測定値のランクを視覚的に容易に判別することができるX線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のX線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、試料を測定位置に移動させる試料移動手段と、前記試料移動手段を制御して試料を移動させ、試料の所定の測定点に前記X線源から1次X線を照射させて前記検出手段によって検出された2次X線の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段と、前記測定手段による各測定点の測定終了毎に、測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、ランクによって大きさおよび色が異なるマークを決定する処理手段と、前記処理手段によって決定されたマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段とを備える。
【0008】
本発明のX線分析装置によれば、標準物質を使用せず、各測定点の測定終了毎に、各測定点の測定値のランクに対応した大きさと色のマークが各測定点に対応した位置に画像表示されるので、装置の設置場所や測定者の如何にかかわらず、各測定点の測定値のランクを視覚的に容易に判別することができる。
【0009】
本発明のX線分析装置は、さらに、ランク数毎にランク数と同数の、ランクによって大きさおよび色が異なるマークの表示形態を記憶しているマーク記憶手段を備え、前記処理手段が、前記ランク分けしたランク数と同数のマークの表示形態を前記マーク記憶手段から読出して、各ランクに適用して前記表示手段に各ランクのマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示させるのが好ましい。この場合には、ランク数によってマークの表示形態を記憶しているマーク記憶手段を備えているので、測定点数が定まっている日常管理分析などにおいて、迅速に各測定点に対応した位置にマークを表示することができる。
【0010】
本発明のX線分析装置においては、前記処理手段が、前記測定手段によって測定された最大測定値と最小測定値との差を前記測定手段に設定された測定値の最小有効値で除算した数値に数値1を加算し、この演算された数値と測定点数とのうち小さい方の数値を前記マークの前記ランク数とし、最大測定値と最小測定値の差を前記ランク数で除算した数値をランク幅として決定し、それぞれの測定値の差が前記ランク幅以内の測定値を同一ランクとしてランク分けすることが好ましい。この場合には、測定値の所定の最小有効値に基づいてランク数を適切に決定することができる。
【0011】
本発明のX線分析装置においては、前記処理手段が、前記測定手段に入力され設定されている分析管理値の範囲を超える測定値および/または前記測定手段において測定値を求める際の演算エラーを異常値として、前記表示手段に異常値マークをその測定点に対応した位置に画像表示させることが好ましい。この場合には、分析管理値の範囲を超える測定値および/または測定手段において測定値を求める際の演算エラーを異常値として異常値マークを表示することによって、視覚的に容易に異常測定値を判別することができる。演算エラーとは、例えば蛍光X線分析のFP法(ファンダメンタル・パラメータ法)における未収束の演算結果のように、検出したX線強度に基づいて分析値を定量する際の演算において生じたエラーをいう。
【0012】
本発明のX線分析装置においては、前記表示手段が表示する前記マークの形状は、円形または多角形の相似形状であることが好ましい。これらの形状であれば、大きさおよび色の異なるマークが視覚的に容易に判別することができる。
【0013】
本発明のX線分析装置においては、前記表示手段が前記マークに測定順を表す記号を表示することが好ましい。この場合には、マークに測定順を表す記号が表示されるので、各測定点の測定順が容易に視覚的に判別することができる。
【0014】
本発明のX線分析装置においては、前記表示手段が、試料の各測定点に対応した位置に前記マークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とを同一画面に表示することが好ましい。この場合には、マークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とが同一画面に表示されるので、各測定点の測定値のランクを容易に視覚的に判別できるとともに、各測定点の測定値そのものを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2A】同実施形態における1点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2B】同実施形態における2点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2C】同実施形態における3点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2D】同実施形態における4点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2E】同実施形態における5点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2F】同実施形態における6点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2G】同実施形態における7点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2H】同実施形態における8点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2I】同実施形態における9点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図3】同実施形態におけるマーク記憶手段に記憶されているマーク表示形態の図である。
【図4】同実施形態における9点測定の測定値リストである。
【図5】同実施形態における測定値の異常値マークの画像を示す図である。
【図6】同実施形態における測定点のマーク画像と測定値リストとを同一画面で表示した図である。
【図7】同実施形態におけるマークの測定値を示す画像を示す図である。
【図8】ドーナツ形状試料の測定点のマークの画像を示す図である。
【図9】四角形試料の測定点のマークの画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態のX線分析装置について説明する。まず、X線分析装置の構成について、図1にしたがって説明する。この装置は、試料を測定位置に移動させる試料ステージなどの試料移動手段8に載置されたシリコンウエーハなどの試料Sに、X線管などのX線源1から1次X線2を照射して、発生する2次X線(蛍光X線)4の強度を検出手段9で検出する蛍光X線分析装置などのX線分析装置であり、試料移動手段8を制御して試料Sを移動させ、試料Sの所定の測定点にX線源1から1次X線2を照射させて検出手段9によって検出された2次X線6の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段10と、測定手段10による各測定点の測定終了毎に、それまでに測定済のすべての測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、各ランクによって大きさと色ともに異なるマークを決定する処理手段11と、処理手段11によって決定されたマークを各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段12とを備える。測定値はX線強度そのものであっても、X線強度に基づいて定量された分析値のいずれであってもよい。
【0017】
この装置は、マーク記憶手段13を備える。マーク記憶手段13は、ランク数毎にランク数と同数の、ランクによって大きさと色ともに異なるマークの表示形態を記憶している。処理手段11は、各測定点の測定終了毎に、ランク分けしたランク数とマーク記憶手段13に記憶されている同数のランク数のマーク表示形態をマーク記憶手段13から読出して、ランク分けした各ランクに適用して表示手段12に各ランクのマークを各測定点に対応した位置に画像表示させ、併せて、測定手段10に設定されている分析管理値の範囲を超える測定値および/または測定手段10において測定値を求める際の演算エラーを異常値として、表示手段12に異常値マークをその測定点に対応した位置に画像表示させる。分析管理値は日常分析において製品の品質などを管理するために定められた測定値の上限および/または下限である。
【0018】
検出手段9は、試料Sから発生した2次X線4が入射されて測定対象の2次X線6を回折する分光素子5と、その回折された2次X線6の強度を検出する検出器7とを含む。分光素子5と検出器7とは、図示しないゴニオメータにより、分光素子5で分光される2次X線6の波長を変えながらその2次X線6が検出器7に入射するように、一定の角度関係を保って回動される。
【0019】
実施形態のX線分析装置の動作について説明する。図1に示すように、試料ステージなどの試料移動手段8にシリコンウエーハなどの試料Sを載置し、測定条件、測定値の最小有効値、試料の形状とともに試料Sの所定の複数の測定点を測定手段10に入力し、設定する。例えば、設定される測定値の最小有効値は0.1kcpsである。測定を開始する旨が測定手段10に入力されると、測定手段10が、試料移動手段8を制御して試料Sを移動させ設定された測定点に、例えばロジウム、タングステン、モリブデンなどのX線管であるX線源1から1次X線2を照射させて、試料Sから発生する特定元素の蛍光X線6の強度を検出器7にて検出する。このようにして測定手段10によって設定された複数の測定点が測定される。
【0020】
各測定点の測定終了毎に、処理手段11によって測定値が処理され、表示手段12によって図2A〜Iに示すような画像が表示される。図2A〜Iに示すように、各測定点の測定終了毎に、処理手段11が測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして各ランクによって大きさと色ともに異なるマークを決定し、表示手段12が決定されたマークを各測定点に対応した位置に画像表示する。図2A〜Iはウエーハなどの円形試料を最初の1点目から順に9点目まで測定したときの各測定点の測定終了時のマークとともに試料の形状の画像を示している。図2A〜Iの内円は試料Sを示し、外円は試料移動手段8の試料保持部を示している。
【0021】
各測定点の測定値が如何にランク分けされ、どのようにしてマークが表示されるかについて、上記の図2Iの9点測定を例にとり以下に詳細に説明する。マーク記憶手段13は、例えば図3に示すランク数1〜10のランク数毎のマークの表示形態を記憶している。この表示形態は、1〜10の各ランク数において、ランク数と同数であって大きさと色ともに異なる円形のマークである。ランク数10の表示形態では、最小測定値のランクである第1ランクは紫色1号円、第2ランクは紺色2号円、第3ランクは青色3号円、第4ランクは水色4号円、第5ランクは緑色5号円、第6ランクは黄緑色6号円、第7ランクは黄色7号円、第8ランクは橙色8号円、第9ランクは赤色9号円、最大測定値のランクである第10ランクは茶色10号円である。つまり、各ランクで色が異なるとともに、円の大きさも異なっており、1号円から順に円の半径は大きくなり、10号円で最大半径となる。小さい測定値から大きい測定値になるにしたがって順にランクの等級が大きくなる。
【0022】
さらに、最初に表示されるランク数1のマークは10ランクの中間ランクである第6ランクの黄緑色6号円を表示し、ランク数2は第5ランクの緑色5号円、第6ランクの黄緑色6号円で、ランク数3は第5ランクの緑色5号円、第6ランクの黄緑色6号円、第7ランクの黄色7号円で表示され、ランク数が増加するにしたがって第6ランクの黄緑色6号円の両側の色の号円が追加される表示形態になっている。
【0023】
図2Iに示す測定点のマーク表示は各測定点の測定終了毎に測定値に基づいてリアルタイムで表示されるが、説明をし易くするために、前もって9点の測定点の測定値を図4に示す。前記のように測定が開始され、測定手段10によって測定された1点目の測定点No.1の測定値は、368.9kcpsである。測定点は1点であり、ランク数は1であるので、マーク記憶手段13からランク数1の表示形態が読みだされ、測定点No.1に対応する位置に黄緑色6号円が適用されて図2Aの画像が表示手段12に表示される。このとき、黄緑色6号円の中心が測定点No.1に対応しており、この円内に測定点の測定順を表すアラビア数字1が記号として表示される。以下の測定点においても同様に円形マークの中心が測定点であり、その円内に測定順を表すアラビア数字が表示される。なお、測定点の測定順を表す記号はアラビア数字だけでなく、ローマ数字、アルファベット、片仮名などであってもよい。
【0024】
同様にして2点目の測定点の測定値は368.9kcpsである。この測定値は1点目と同じ数値であるので、1点目と同様に黄緑色6号円が適用されて図2Bの画像が表示手段12に表示される。
【0025】
同様にして3点目の測定点について測定値368.8kcpsが求められる。処理手段11が、3測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値368.8kcpsとの差0.1kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値2と測定点数の数値3とを比較して小さい方の数値である2をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値368.8kcpsとの差0.1kcpsをランク数の数値2で除算した数値0.05をランク幅と決定する。次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcpsであることに基づいて、1点目と2点目は同一ランク、3点目は1点目よりも1ランク小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数2の表示形態を読出して、測定点No.1とNo.2に黄緑色6号円を、測定点No.3に緑色5号円を適用して図2Cの画像を表示手段12に表示させる。このように、測定値の所定の最小有効値に基づいてランク数を適切に決定することができる。
【0026】
同様にして4点目の測定点について測定値366.6kcpsが求められる。処理手段11は、4測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値366.6kcpsとの差2.3kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値24と測定点数の数値4とを比較して小さい方の数値である4をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値366.6kcpsとの差2.3kcpsをランク数の数値4で除算した数値0.57をランク幅と決定する。次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcps、1点目と4点目との差は2.3kcpsであることに基づいて、3点目は1点目から1(0.1/0.57≦1)ランク幅以内のランクであって1点目〜3点目は同一ランク、4点目は1点目よりも4.03(2.3/0.57≒4.03)ランク幅だけ小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数4の表示形態を読出して、測定点No.1〜3に黄色7号円を、測定点No.4に水色4号円を適用して図2Dの画像を表示手段12に表示させる。
【0027】
同様にして5点目の測定点について測定値365.6kcpsが求められる。処理手段11は、5測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値365.6kcpsとの差3.3kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値34と測定点数の数値5とを比較して小さい方の数値である5をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値365.6kcpsとの差3.3kcpsをランク数の数値5で除算した数値0.66をランク幅と決定する。次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcps、1点目と4点目との差は2.3kcpsであり、1点目と5点目との差は3.3kcpsであることに基づいて、3点目は1点目から1(0.1/0.66≦1)ランク幅以内のランクであって1点目〜3点目は同一ランク、4点目は1点目よりも3.48(2.3/0.66≒3.48)ランク幅だけ小さいランク、5点目は1点目よりも5.00(3.3/0.66=5.00)ランク幅だけ小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数5の表示形態を読出して、測定点No.1〜3に橙色8号円を、測定点No.4に緑色5号円を、測定点No.5に水色4号円を適用して図2Dの画像を表示手段12に表示させる。
【0028】
同様にして、測定手段10が6〜8点目の測定点を測定し、処理手段11がそれぞれの測定値を処理して、各測定点数に対応した図2E〜2Hの画像を表示手段12に表示させる。
【0029】
同様にして9点目の測定点について測定値359.4kcpsが求められる。処理手段11は、9測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値359.4kcpsとの差9.5kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値96と測定点数の数値9とを比較して小さい方の数値である9をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値359.4kcpsとの差9.5kcpsをランク数の数値9で除算した数値1.06をランク幅と決定する。
【0030】
次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcps、1点目と4点目との差は2.3kcps、1点目と5点目との差は3.3kcps、1点目と6点目との差は5.4kcps、1点目と7点目との差は3.4kcps、1点目と8点目との差は8.1kcps、1点目と9点目との差は9.5kcpsであることに基づいて、3点目は1点目から1(0.1/1.06≦1)ランク幅以内のランクであって、1点目〜3点目は同一ランク、4点目は1点目よりも2.17(2.3/1.06≒2.17)ランク幅だけ小さいランク、5点目は1点目よりも3.11(3.3/1.06≒3.11)ランク幅だけ小さいランク、6点目は1点目よりも5.09(5.4/1.06≒5.09)ランク幅だけ小さいランク、7点目は1点目よりも3.20(3.4/1.06≒3.20)ランク幅だけ小さいランク、8点目は1点目よりも7.64(8.1/1.06≒7.64)ランク幅だけ小さいランク、9点目は1点目よりも8.96(9.5/1.06≒8.96)ランク幅だけ小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数9の表示形態を読出して、測定点No.1〜3に茶色10号円を、測定点No.4に橙色8号円を、測定点No.5とNo.7に黄色7号円を、測定点No.6に緑色5号円を、測定点No.8に青色3号円を、測定点No.9に紺色2号円を適用して図2Iの画像を表示手段12に表示させる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、標準物質を使用せず、各測定点の測定終了毎に、各測定点の測定値のランクに対応した大きさと色のマークが各測定点に対応した位置に画像表示されるので、装置の設置場所や測定者の如何にかかわらず、各測定点の測定値のランクを視覚的に容易に判別することができる。
【0032】
次に、図4に示した測定値の試料と異なる試料の測定において、上限と下限の分析管理値が測定手段10に入力され、設定されて測定されたマークの画像表示を図5に示す。処理手段11が、測定点No.8とNo.9の測定値は上限を超え、測定点No.1の測定値は下限未満であり、いずれも異常値であるとし、表示手段12に測定点No.8は赤色9号円、測定点No.9は茶色10号円、測定点No.1は紺色2号円で表示させ、それぞれのマークの全体に赤色の×印を付けて表示させている。併せて、例えばFP法の演算が収束しない測定点No.10の場合には、処理手段11が演算エラーと判断して異常値マークを表示手段12に表示させる。演算エラーの異常値マークは図5に示すように、灰色1号円に赤色の×印を付けて表示させている。
【0033】
このように、分析管理値の範囲内でない測定値や演算エラーの測定値に異常値マークが、その測定点に対応する位置に表示されるので、視覚的に容易に異常値の測定点を判別することができる。
【0034】
表示手段12が、試料の各測定点に対応した位置にマークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とを同一画面に表示するのが好ましい。例えば、図6に示すように、表示手段12が、左画面に測定値リストを表示し、右下画面において試料の各測定点に対応した位置にマークを表示する画像を表示する。測定者がこの右下画面のマークをマウスでクリックすると、そのマークに対応する測定値リストの測定点の測定値がハイライト表示される。また逆に、測定値リストの測定値をマウスでクリックすると、その測定値に対応する右下画面のマークがハイライト表示される。
【0035】
この場合には、試料の各測定点に対応した位置にマークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とが同一画面に表示されるので、各測定点の測定値のランクを容易に視覚的に判別できるとともに、各測定点の測定値そのものを判別することができる。
【0036】
図7に示すように、測定者が表示手段12のマウス(図示なし)のマウスポインタを画像のマークに位置させると、表示手段12によってそのマークが表示されている測定点の測定値がポップヒントとして表示されるのが好ましい。このポップヒントによって測定値そのものをマーク表示画面より直接読み取ることができる。本実施形態における円形マークの1号円の半径は試料Sのシリコンウエーハの半径の1/15、10号円の半径はシリコンウエーハの半径の1/5の比率でシリコンウエーハの円形状とともに表示されるのが好ましい。測定点が近接しマークが重なるときは小さいマークが前面(手前)に表示されるのが好ましく、複数のマークが重なって表示される場合にも視覚的に容易に判別できる。
【0037】
マークの形状は円形に限らず三角形、四角形、五角形以上の多角形であってもよく、これらの相似形のマークの大小によって測定値の大小が表示される。これらの形状のマークを使用した場合も円形マークと同様に、マークの中心(重心)が測定点であり、そのマーク内に測定順を表す記号が表示され、異常値には×印が表示される。
【0038】
本実施形態では測定点は9点であったが、それよりも多い点数であってもよく、例えば図9に17点の測定点のマーク表示画像を示している。また、ランク数10の実施形態について説明したが、ランク数10を超えて表示してもよく、マークを大きさとともに色の3要素の色相、彩度、明度を変化させて表示すればよい。
【0039】
本実施形態では試料としてシリコンウエーハの円形試料について説明したが、ドーナツ形試料、四角形試料などの試料形状を測定手段10に入力することによって、図8や図9に示すようにドーナツ形試料、四角形試料などについても本実施形態と同様のマーク表示をすることができる。
【0040】
本実施形態の装置では、ゴニオメータを走査(スキャン)する走査型の波長分散蛍光X線分析装置について説明したが、測定元素毎に独立のゴニオメータを配して同時に多元素を分析する多元素同時型の波長分散蛍光X線分析装置でもよく、エネルギー分散型の蛍光X線分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 X線源
2 1次X線
4、6 2次X線
8 試料移動手段
9 検出手段
10 測定手段
11 処理手段
12 表示手段
13 マーク記憶手段
S 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の複数の測定点の測定値をランク分けして、各ランクに対応したマークを各測定点に対応した位置に画像表示するX線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の生産工程において、例えばウエーハ、ガラス基板、電子回路基板などの試料表面のマッピング検査に蛍光X線分析装置などのX線分析装置が使用されている。
【0003】
既知の標準物質のX線強度を基準にして、測定したX線強度に応じて色又は明度を変えたコントラスト強度を決定してマッピング表示するX線分析装置がある(特許文献1)。このX線分析装置は一つの照射ポイント(測定点)を一つの画素として、検出したX線強度に応じて色又は明度を変えた強度コントラストを決定し、ディスプレイにおいて照射ポイントに対応した位置に画像として二次元的に表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−32485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のX線分析装置では、標準物質を基準として色や明度のコントラスト強度を決定しているため、標準物質がなければ実施することが困難である。また、色と明度のコントラスト強度のみで表示されているために、装置の設置場所によっては色や明度のコントラスト強度の識別が困難であり、色弱など色の判別が困難な測定者では測定が困難となる。さらに、1つの測定点を1つの画素として表示するため、各測定点の情報を視覚的に容易に認識することができない。
【0006】
そこで、本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、標準物質を使用せず、装置の設置場所や測定者の如何にかかわらず、各測定点の測定値のランクを視覚的に容易に判別することができるX線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のX線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、試料を測定位置に移動させる試料移動手段と、前記試料移動手段を制御して試料を移動させ、試料の所定の測定点に前記X線源から1次X線を照射させて前記検出手段によって検出された2次X線の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段と、前記測定手段による各測定点の測定終了毎に、測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、ランクによって大きさおよび色が異なるマークを決定する処理手段と、前記処理手段によって決定されたマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段とを備える。
【0008】
本発明のX線分析装置によれば、標準物質を使用せず、各測定点の測定終了毎に、各測定点の測定値のランクに対応した大きさと色のマークが各測定点に対応した位置に画像表示されるので、装置の設置場所や測定者の如何にかかわらず、各測定点の測定値のランクを視覚的に容易に判別することができる。
【0009】
本発明のX線分析装置は、さらに、ランク数毎にランク数と同数の、ランクによって大きさおよび色が異なるマークの表示形態を記憶しているマーク記憶手段を備え、前記処理手段が、前記ランク分けしたランク数と同数のマークの表示形態を前記マーク記憶手段から読出して、各ランクに適用して前記表示手段に各ランクのマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示させるのが好ましい。この場合には、ランク数によってマークの表示形態を記憶しているマーク記憶手段を備えているので、測定点数が定まっている日常管理分析などにおいて、迅速に各測定点に対応した位置にマークを表示することができる。
【0010】
本発明のX線分析装置においては、前記処理手段が、前記測定手段によって測定された最大測定値と最小測定値との差を前記測定手段に設定された測定値の最小有効値で除算した数値に数値1を加算し、この演算された数値と測定点数とのうち小さい方の数値を前記マークの前記ランク数とし、最大測定値と最小測定値の差を前記ランク数で除算した数値をランク幅として決定し、それぞれの測定値の差が前記ランク幅以内の測定値を同一ランクとしてランク分けすることが好ましい。この場合には、測定値の所定の最小有効値に基づいてランク数を適切に決定することができる。
【0011】
本発明のX線分析装置においては、前記処理手段が、前記測定手段に入力され設定されている分析管理値の範囲を超える測定値および/または前記測定手段において測定値を求める際の演算エラーを異常値として、前記表示手段に異常値マークをその測定点に対応した位置に画像表示させることが好ましい。この場合には、分析管理値の範囲を超える測定値および/または測定手段において測定値を求める際の演算エラーを異常値として異常値マークを表示することによって、視覚的に容易に異常測定値を判別することができる。演算エラーとは、例えば蛍光X線分析のFP法(ファンダメンタル・パラメータ法)における未収束の演算結果のように、検出したX線強度に基づいて分析値を定量する際の演算において生じたエラーをいう。
【0012】
本発明のX線分析装置においては、前記表示手段が表示する前記マークの形状は、円形または多角形の相似形状であることが好ましい。これらの形状であれば、大きさおよび色の異なるマークが視覚的に容易に判別することができる。
【0013】
本発明のX線分析装置においては、前記表示手段が前記マークに測定順を表す記号を表示することが好ましい。この場合には、マークに測定順を表す記号が表示されるので、各測定点の測定順が容易に視覚的に判別することができる。
【0014】
本発明のX線分析装置においては、前記表示手段が、試料の各測定点に対応した位置に前記マークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とを同一画面に表示することが好ましい。この場合には、マークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とが同一画面に表示されるので、各測定点の測定値のランクを容易に視覚的に判別できるとともに、各測定点の測定値そのものを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2A】同実施形態における1点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2B】同実施形態における2点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2C】同実施形態における3点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2D】同実施形態における4点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2E】同実施形態における5点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2F】同実施形態における6点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2G】同実施形態における7点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2H】同実施形態における8点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図2I】同実施形態における9点目測定完了時のマークの画像を示す図である。
【図3】同実施形態におけるマーク記憶手段に記憶されているマーク表示形態の図である。
【図4】同実施形態における9点測定の測定値リストである。
【図5】同実施形態における測定値の異常値マークの画像を示す図である。
【図6】同実施形態における測定点のマーク画像と測定値リストとを同一画面で表示した図である。
【図7】同実施形態におけるマークの測定値を示す画像を示す図である。
【図8】ドーナツ形状試料の測定点のマークの画像を示す図である。
【図9】四角形試料の測定点のマークの画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態のX線分析装置について説明する。まず、X線分析装置の構成について、図1にしたがって説明する。この装置は、試料を測定位置に移動させる試料ステージなどの試料移動手段8に載置されたシリコンウエーハなどの試料Sに、X線管などのX線源1から1次X線2を照射して、発生する2次X線(蛍光X線)4の強度を検出手段9で検出する蛍光X線分析装置などのX線分析装置であり、試料移動手段8を制御して試料Sを移動させ、試料Sの所定の測定点にX線源1から1次X線2を照射させて検出手段9によって検出された2次X線6の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段10と、測定手段10による各測定点の測定終了毎に、それまでに測定済のすべての測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、各ランクによって大きさと色ともに異なるマークを決定する処理手段11と、処理手段11によって決定されたマークを各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段12とを備える。測定値はX線強度そのものであっても、X線強度に基づいて定量された分析値のいずれであってもよい。
【0017】
この装置は、マーク記憶手段13を備える。マーク記憶手段13は、ランク数毎にランク数と同数の、ランクによって大きさと色ともに異なるマークの表示形態を記憶している。処理手段11は、各測定点の測定終了毎に、ランク分けしたランク数とマーク記憶手段13に記憶されている同数のランク数のマーク表示形態をマーク記憶手段13から読出して、ランク分けした各ランクに適用して表示手段12に各ランクのマークを各測定点に対応した位置に画像表示させ、併せて、測定手段10に設定されている分析管理値の範囲を超える測定値および/または測定手段10において測定値を求める際の演算エラーを異常値として、表示手段12に異常値マークをその測定点に対応した位置に画像表示させる。分析管理値は日常分析において製品の品質などを管理するために定められた測定値の上限および/または下限である。
【0018】
検出手段9は、試料Sから発生した2次X線4が入射されて測定対象の2次X線6を回折する分光素子5と、その回折された2次X線6の強度を検出する検出器7とを含む。分光素子5と検出器7とは、図示しないゴニオメータにより、分光素子5で分光される2次X線6の波長を変えながらその2次X線6が検出器7に入射するように、一定の角度関係を保って回動される。
【0019】
実施形態のX線分析装置の動作について説明する。図1に示すように、試料ステージなどの試料移動手段8にシリコンウエーハなどの試料Sを載置し、測定条件、測定値の最小有効値、試料の形状とともに試料Sの所定の複数の測定点を測定手段10に入力し、設定する。例えば、設定される測定値の最小有効値は0.1kcpsである。測定を開始する旨が測定手段10に入力されると、測定手段10が、試料移動手段8を制御して試料Sを移動させ設定された測定点に、例えばロジウム、タングステン、モリブデンなどのX線管であるX線源1から1次X線2を照射させて、試料Sから発生する特定元素の蛍光X線6の強度を検出器7にて検出する。このようにして測定手段10によって設定された複数の測定点が測定される。
【0020】
各測定点の測定終了毎に、処理手段11によって測定値が処理され、表示手段12によって図2A〜Iに示すような画像が表示される。図2A〜Iに示すように、各測定点の測定終了毎に、処理手段11が測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして各ランクによって大きさと色ともに異なるマークを決定し、表示手段12が決定されたマークを各測定点に対応した位置に画像表示する。図2A〜Iはウエーハなどの円形試料を最初の1点目から順に9点目まで測定したときの各測定点の測定終了時のマークとともに試料の形状の画像を示している。図2A〜Iの内円は試料Sを示し、外円は試料移動手段8の試料保持部を示している。
【0021】
各測定点の測定値が如何にランク分けされ、どのようにしてマークが表示されるかについて、上記の図2Iの9点測定を例にとり以下に詳細に説明する。マーク記憶手段13は、例えば図3に示すランク数1〜10のランク数毎のマークの表示形態を記憶している。この表示形態は、1〜10の各ランク数において、ランク数と同数であって大きさと色ともに異なる円形のマークである。ランク数10の表示形態では、最小測定値のランクである第1ランクは紫色1号円、第2ランクは紺色2号円、第3ランクは青色3号円、第4ランクは水色4号円、第5ランクは緑色5号円、第6ランクは黄緑色6号円、第7ランクは黄色7号円、第8ランクは橙色8号円、第9ランクは赤色9号円、最大測定値のランクである第10ランクは茶色10号円である。つまり、各ランクで色が異なるとともに、円の大きさも異なっており、1号円から順に円の半径は大きくなり、10号円で最大半径となる。小さい測定値から大きい測定値になるにしたがって順にランクの等級が大きくなる。
【0022】
さらに、最初に表示されるランク数1のマークは10ランクの中間ランクである第6ランクの黄緑色6号円を表示し、ランク数2は第5ランクの緑色5号円、第6ランクの黄緑色6号円で、ランク数3は第5ランクの緑色5号円、第6ランクの黄緑色6号円、第7ランクの黄色7号円で表示され、ランク数が増加するにしたがって第6ランクの黄緑色6号円の両側の色の号円が追加される表示形態になっている。
【0023】
図2Iに示す測定点のマーク表示は各測定点の測定終了毎に測定値に基づいてリアルタイムで表示されるが、説明をし易くするために、前もって9点の測定点の測定値を図4に示す。前記のように測定が開始され、測定手段10によって測定された1点目の測定点No.1の測定値は、368.9kcpsである。測定点は1点であり、ランク数は1であるので、マーク記憶手段13からランク数1の表示形態が読みだされ、測定点No.1に対応する位置に黄緑色6号円が適用されて図2Aの画像が表示手段12に表示される。このとき、黄緑色6号円の中心が測定点No.1に対応しており、この円内に測定点の測定順を表すアラビア数字1が記号として表示される。以下の測定点においても同様に円形マークの中心が測定点であり、その円内に測定順を表すアラビア数字が表示される。なお、測定点の測定順を表す記号はアラビア数字だけでなく、ローマ数字、アルファベット、片仮名などであってもよい。
【0024】
同様にして2点目の測定点の測定値は368.9kcpsである。この測定値は1点目と同じ数値であるので、1点目と同様に黄緑色6号円が適用されて図2Bの画像が表示手段12に表示される。
【0025】
同様にして3点目の測定点について測定値368.8kcpsが求められる。処理手段11が、3測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値368.8kcpsとの差0.1kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値2と測定点数の数値3とを比較して小さい方の数値である2をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値368.8kcpsとの差0.1kcpsをランク数の数値2で除算した数値0.05をランク幅と決定する。次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcpsであることに基づいて、1点目と2点目は同一ランク、3点目は1点目よりも1ランク小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数2の表示形態を読出して、測定点No.1とNo.2に黄緑色6号円を、測定点No.3に緑色5号円を適用して図2Cの画像を表示手段12に表示させる。このように、測定値の所定の最小有効値に基づいてランク数を適切に決定することができる。
【0026】
同様にして4点目の測定点について測定値366.6kcpsが求められる。処理手段11は、4測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値366.6kcpsとの差2.3kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値24と測定点数の数値4とを比較して小さい方の数値である4をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値366.6kcpsとの差2.3kcpsをランク数の数値4で除算した数値0.57をランク幅と決定する。次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcps、1点目と4点目との差は2.3kcpsであることに基づいて、3点目は1点目から1(0.1/0.57≦1)ランク幅以内のランクであって1点目〜3点目は同一ランク、4点目は1点目よりも4.03(2.3/0.57≒4.03)ランク幅だけ小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数4の表示形態を読出して、測定点No.1〜3に黄色7号円を、測定点No.4に水色4号円を適用して図2Dの画像を表示手段12に表示させる。
【0027】
同様にして5点目の測定点について測定値365.6kcpsが求められる。処理手段11は、5測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値365.6kcpsとの差3.3kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値34と測定点数の数値5とを比較して小さい方の数値である5をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値365.6kcpsとの差3.3kcpsをランク数の数値5で除算した数値0.66をランク幅と決定する。次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcps、1点目と4点目との差は2.3kcpsであり、1点目と5点目との差は3.3kcpsであることに基づいて、3点目は1点目から1(0.1/0.66≦1)ランク幅以内のランクであって1点目〜3点目は同一ランク、4点目は1点目よりも3.48(2.3/0.66≒3.48)ランク幅だけ小さいランク、5点目は1点目よりも5.00(3.3/0.66=5.00)ランク幅だけ小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数5の表示形態を読出して、測定点No.1〜3に橙色8号円を、測定点No.4に緑色5号円を、測定点No.5に水色4号円を適用して図2Dの画像を表示手段12に表示させる。
【0028】
同様にして、測定手段10が6〜8点目の測定点を測定し、処理手段11がそれぞれの測定値を処理して、各測定点数に対応した図2E〜2Hの画像を表示手段12に表示させる。
【0029】
同様にして9点目の測定点について測定値359.4kcpsが求められる。処理手段11は、9測定点の最大測定値368.9kcpsと最小測定値359.4kcpsとの差9.5kcpsを、測定手段10に設定された測定値の最小有効値0.1kcpsで除算し、その数値に数値1を加算して求めた演算値の数値96と測定点数の数値9とを比較して小さい方の数値である9をランク数と定め、最大測定値368.9kcpsと最小測定値359.4kcpsとの差9.5kcpsをランク数の数値9で除算した数値1.06をランク幅と決定する。
【0030】
次に、処理手段11は、1点目と2点目の測定値の差はなく、3点目と1点目との差は0.1kcps、1点目と4点目との差は2.3kcps、1点目と5点目との差は3.3kcps、1点目と6点目との差は5.4kcps、1点目と7点目との差は3.4kcps、1点目と8点目との差は8.1kcps、1点目と9点目との差は9.5kcpsであることに基づいて、3点目は1点目から1(0.1/1.06≦1)ランク幅以内のランクであって、1点目〜3点目は同一ランク、4点目は1点目よりも2.17(2.3/1.06≒2.17)ランク幅だけ小さいランク、5点目は1点目よりも3.11(3.3/1.06≒3.11)ランク幅だけ小さいランク、6点目は1点目よりも5.09(5.4/1.06≒5.09)ランク幅だけ小さいランク、7点目は1点目よりも3.20(3.4/1.06≒3.20)ランク幅だけ小さいランク、8点目は1点目よりも7.64(8.1/1.06≒7.64)ランク幅だけ小さいランク、9点目は1点目よりも8.96(9.5/1.06≒8.96)ランク幅だけ小さいランクとしてランク分けし、マーク記憶手段13からランク数9の表示形態を読出して、測定点No.1〜3に茶色10号円を、測定点No.4に橙色8号円を、測定点No.5とNo.7に黄色7号円を、測定点No.6に緑色5号円を、測定点No.8に青色3号円を、測定点No.9に紺色2号円を適用して図2Iの画像を表示手段12に表示させる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、標準物質を使用せず、各測定点の測定終了毎に、各測定点の測定値のランクに対応した大きさと色のマークが各測定点に対応した位置に画像表示されるので、装置の設置場所や測定者の如何にかかわらず、各測定点の測定値のランクを視覚的に容易に判別することができる。
【0032】
次に、図4に示した測定値の試料と異なる試料の測定において、上限と下限の分析管理値が測定手段10に入力され、設定されて測定されたマークの画像表示を図5に示す。処理手段11が、測定点No.8とNo.9の測定値は上限を超え、測定点No.1の測定値は下限未満であり、いずれも異常値であるとし、表示手段12に測定点No.8は赤色9号円、測定点No.9は茶色10号円、測定点No.1は紺色2号円で表示させ、それぞれのマークの全体に赤色の×印を付けて表示させている。併せて、例えばFP法の演算が収束しない測定点No.10の場合には、処理手段11が演算エラーと判断して異常値マークを表示手段12に表示させる。演算エラーの異常値マークは図5に示すように、灰色1号円に赤色の×印を付けて表示させている。
【0033】
このように、分析管理値の範囲内でない測定値や演算エラーの測定値に異常値マークが、その測定点に対応する位置に表示されるので、視覚的に容易に異常値の測定点を判別することができる。
【0034】
表示手段12が、試料の各測定点に対応した位置にマークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とを同一画面に表示するのが好ましい。例えば、図6に示すように、表示手段12が、左画面に測定値リストを表示し、右下画面において試料の各測定点に対応した位置にマークを表示する画像を表示する。測定者がこの右下画面のマークをマウスでクリックすると、そのマークに対応する測定値リストの測定点の測定値がハイライト表示される。また逆に、測定値リストの測定値をマウスでクリックすると、その測定値に対応する右下画面のマークがハイライト表示される。
【0035】
この場合には、試料の各測定点に対応した位置にマークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とが同一画面に表示されるので、各測定点の測定値のランクを容易に視覚的に判別できるとともに、各測定点の測定値そのものを判別することができる。
【0036】
図7に示すように、測定者が表示手段12のマウス(図示なし)のマウスポインタを画像のマークに位置させると、表示手段12によってそのマークが表示されている測定点の測定値がポップヒントとして表示されるのが好ましい。このポップヒントによって測定値そのものをマーク表示画面より直接読み取ることができる。本実施形態における円形マークの1号円の半径は試料Sのシリコンウエーハの半径の1/15、10号円の半径はシリコンウエーハの半径の1/5の比率でシリコンウエーハの円形状とともに表示されるのが好ましい。測定点が近接しマークが重なるときは小さいマークが前面(手前)に表示されるのが好ましく、複数のマークが重なって表示される場合にも視覚的に容易に判別できる。
【0037】
マークの形状は円形に限らず三角形、四角形、五角形以上の多角形であってもよく、これらの相似形のマークの大小によって測定値の大小が表示される。これらの形状のマークを使用した場合も円形マークと同様に、マークの中心(重心)が測定点であり、そのマーク内に測定順を表す記号が表示され、異常値には×印が表示される。
【0038】
本実施形態では測定点は9点であったが、それよりも多い点数であってもよく、例えば図9に17点の測定点のマーク表示画像を示している。また、ランク数10の実施形態について説明したが、ランク数10を超えて表示してもよく、マークを大きさとともに色の3要素の色相、彩度、明度を変化させて表示すればよい。
【0039】
本実施形態では試料としてシリコンウエーハの円形試料について説明したが、ドーナツ形試料、四角形試料などの試料形状を測定手段10に入力することによって、図8や図9に示すようにドーナツ形試料、四角形試料などについても本実施形態と同様のマーク表示をすることができる。
【0040】
本実施形態の装置では、ゴニオメータを走査(スキャン)する走査型の波長分散蛍光X線分析装置について説明したが、測定元素毎に独立のゴニオメータを配して同時に多元素を分析する多元素同時型の波長分散蛍光X線分析装置でもよく、エネルギー分散型の蛍光X線分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 X線源
2 1次X線
4、6 2次X線
8 試料移動手段
9 検出手段
10 測定手段
11 処理手段
12 表示手段
13 マーク記憶手段
S 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に1次X線を照射するX線源と、
前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、
試料を測定位置に移動させる試料移動手段と、
前記試料移動手段を制御して試料を移動させ、試料の所定の測定点に前記X線源から1次X線を照射させて前記検出手段によって検出された2次X線の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段と、
前記測定手段による各測定点の測定終了毎に、測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、ランクによって大きさおよび色が異なるマークを決定する処理手段と、
前記処理手段によって決定されたマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段と、
を備えるX線分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、ランク数毎にランク数と同数の、ランクによって大きさおよび色が異なるマークの表示形態を記憶しているマーク記憶手段を備え、
前記処理手段が、前記ランク分けしたランク数と同数のマークの表示形態を前記マーク記憶手段から読出して、各ランクに適用して前記表示手段に各ランクのマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示させるX線分析装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記処理手段が、前記測定手段によって測定された最大測定値と最小測定値との差を前記測定手段に設定された測定値の最小有効値で除算した数値に数値1を加算し、この演算された数値と測定点数とのうち小さい方の数値を前記マークの前記ランク数とし、最大測定値と最小測定値の差を前記ランク数で除算した数値をランク幅として決定し、それぞれの測定値の差が前記ランク幅以内の測定値を同一ランクとしてランク分けするX線分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記処理手段が、前記測定手段に入力され設定されている分析管理値の範囲を超える測定値および/または前記測定手段において測定値を求める際の演算エラーを異常値として、前記表示手段に異常値マークをその測定点に対応した位置に画像表示させるX線分析装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、
前記表示手段が表示する前記マークの形状は、円形または多角形の相似形状であるX線分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、
前記表示手段が前記マークに測定順を表す記号を表示するX線分析装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、
前記表示手段が、試料の各測定点に対応した位置に前記マークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とを同一画面に表示するX線分析装置。
【請求項1】
試料に1次X線を照射するX線源と、
前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、
試料を測定位置に移動させる試料移動手段と、
前記試料移動手段を制御して試料を移動させ、試料の所定の測定点に前記X線源から1次X線を照射させて前記検出手段によって検出された2次X線の強度に基づいて複数の測定点について測定値を求める測定手段と、
前記測定手段による各測定点の測定終了毎に、測定済の測定点を所定の測定値範囲毎にランク分けして、ランクによって大きさおよび色が異なるマークを決定する処理手段と、
前記処理手段によって決定されたマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示する表示手段と、
を備えるX線分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、ランク数毎にランク数と同数の、ランクによって大きさおよび色が異なるマークの表示形態を記憶しているマーク記憶手段を備え、
前記処理手段が、前記ランク分けしたランク数と同数のマークの表示形態を前記マーク記憶手段から読出して、各ランクに適用して前記表示手段に各ランクのマークを試料の各測定点に対応した位置に画像表示させるX線分析装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記処理手段が、前記測定手段によって測定された最大測定値と最小測定値との差を前記測定手段に設定された測定値の最小有効値で除算した数値に数値1を加算し、この演算された数値と測定点数とのうち小さい方の数値を前記マークの前記ランク数とし、最大測定値と最小測定値の差を前記ランク数で除算した数値をランク幅として決定し、それぞれの測定値の差が前記ランク幅以内の測定値を同一ランクとしてランク分けするX線分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記処理手段が、前記測定手段に入力され設定されている分析管理値の範囲を超える測定値および/または前記測定手段において測定値を求める際の演算エラーを異常値として、前記表示手段に異常値マークをその測定点に対応した位置に画像表示させるX線分析装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、
前記表示手段が表示する前記マークの形状は、円形または多角形の相似形状であるX線分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、
前記表示手段が前記マークに測定順を表す記号を表示するX線分析装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、
前記表示手段が、試料の各測定点に対応した位置に前記マークを表示する画像と、各測定点の測定値のリスト画像とを同一画面に表示するX線分析装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図4】
【図6】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図4】
【図6】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−247740(P2011−247740A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121034(P2010−121034)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
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