説明

X線吸収端近傍構造解析を実行するためのXANES解析システム及びその方法

サンプルを高エネルギー放射線に露光させるための、例えば、X線吸収端近傍解析(XANES)を実施するためにサンプルをX線に露光させるためのコンパクトで電力消費が少ないシステム及び方法である。このシステム及び方法は、X線管のような電力消費量が少ない放射源と、解析中にサンプルに放射エネルギーを向けて照射し、これを変化させるための同調可能な1つ以上の結晶光学系と、サンプルによって放射された放射線を検出するために、X線検出器のような放射線検出デバイスとを備えている。同調可能な1つ以上の結晶光学系は二重湾曲光学系でよい。システムの構成部品は同一直線上に配置してもよい。開示されるシステム及び方法は、特に例えば、生物学的工程におけるクロム又はその他の遷移金属の化学的状態のXANES解析のようなXANES解析に利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線吸収端近傍構造解析を実行するためのXANES(X−ray absorption near−edge structure)解析システム及びその方法に関し、より詳細には、サンプルの化学組成を判定するためのサンプルのX線解析に使用される装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる以下の特許出願の主題に関連する主題を含んでいる。その特許出願は、Chenによる2002年8月2日出願の米国特許出願公開第60/400,809号(整理番号第0444,048P号、"An optical Device for Directing X-rays having a Plurality of Optical Crystals"である。
【0003】
X線吸収分光は、化学解析、例えば、化学酸化状態の解析のための魅力的な技術である。例えば、参照により本明細書み組み込まれる非特許文献1及び非特許文献2を参照されたい。X線吸収分光の1つの特定の形態は、一般に頭辞語で「XANES」解析と呼ばれるX線吸収端近傍構造解析である。XANES解析は、元素の化学状態を検査するための、例えば、元素の酸化状態を検査するための強力な非破壊技術である。特に、XANES解析は、吸収端の限界の近傍の光子エネルギーの関数としてサンプルのX線吸収係数が測定されるX線吸収分光技術である。
【0004】
XANES測定では、X線吸収端の位置は1s電子のレベルを連続体に引き上げる(promote 1s electron to the continuum)ために必要なエネルギーの変化によって、酸化状態と共に変化させる。加えて、吸収元素の化学構造の詳細を測定するために、吸収端の前後の双方の微細構造を利用することが可能である。少量の成分、又は微量成分について、吸収端の領域内の励起X線ビームのエネルギーの関数として、その元素の特性X線蛍光信号の強度を測定することによって吸収端の詳細を判定可能である。
【0005】
プリエッジ領域(pre−edge region)、すなわち、吸収端の真下の領域は有用な結合情報を含み、端位置は吸収体上の電荷に関する情報を含んでいる。XANESによって判定可能な1つの吸収特性はその酸化状態である。例えば、吸収体の酸化状態はX線吸収端及びプリエッジ特徴(pre−edge features)の精密なエネルギーから判定可能である。
【0006】
XANES解析は、元素の酸化状態、例えば、クロムの酸化状態を判定する効果的な方法を実現する。例えば、[CrO4]のK−端XANESスペクトルは強いプリエッジピークを特徴としている(参照により本明細書に組み込まれる非特許文献3を参照)。Bajt等はシンクロトロン放射源を使用したXANES技術でトレースレベルCr(VI)の定量分析を達成することが可能であることを実証した。最近の研究は(参照により本明細書に組み込まれる非特許文献4を参照)、シンクロトロン放射源で実施されるXANES技術も、動物の肺細胞内のCr酸化状態を判定可能であることを示している。
【0007】
XANES解析には2つのモード、すなわち、透過モードと蛍光モードとが存在する。透過モードでは、入射X線、すなわち、X線陽子のエネルギーの関数として、サンプルを透過したX線の強度を測定することによってXANESスペクトルが得られる。蛍光モードでは、入射ビームのエネルギーの関数として吸収体の蛍光信号が測定される。例えば、希釈生物系の場合、蛍光方式はその他の成分による「背景」吸収を除去することによって、感度を数桁向上させる。
【0008】
XANES技術の適用の主な制約は、必要な強度と帯域幅のX線ビームを利用できるシンクロトロン設備でしかこのような測定を実施できなかったことにある。多くの用途では、異質なサンプルにとってはできるだけスケールが小さいスポット解析が極めて重要なので、良好な空間分解能を有することも望ましい。一般的には、XANES技術には強力な単色X線ビームが必要である。加えて、物質の吸収スペクトルの吸収端の近傍の所望のX線エネルギーを得るためには、XANESシステムで使用されるX線ビームは同調可能であることも好ましい。すなわち、ビームのエネルギーは可変的、かつ制御可能であることが好ましい。同調可能(tunable)な単色X線陽子を得るには、一般にX線モノクロメータと結合された白色X線放射源が必要である。従来の実験室X線放射源は連続X線の発生のための変換効率が極めて低い。すなわち、単純に言えば従来の実験室のX線放射源は強度が充分ではない。また、従来の実験室X線放射源は、発散性であり、一般に、逆2乗の法則によって強いられる強度損失がある。実験室放射源は強度が低く、発散する性質があるので、XANESの多くの重要な応用例は強力な偏光白色X線ビームを供給するシンクロトロン放射源を使用して実施しなければならない。しかし、シンクロトロン放射源のコストが高く、使用時間が制約され、一般に遠隔地にあるという性質により、これは通常の実験室解析用には適していない。したがって、この分野では、リアルタイムの化学解析、例えば、リアルタイムの酸化状態の判定を行うための手頃な価格のコンパクトなXANES解析システムを提供する必要がある。
【0009】
二重湾曲結晶製造技術の最近の革新によって、結晶面の精密な二次元湾曲が可能になっている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許文献1を参照)。二重湾曲結晶(doubly−curved crystal)は、発散するX線放射源から大きな立体角のX線陽子を収集し、これらを狭いエネルギー帯域幅で比較的小さいスポットに集束する。高性能の二重湾曲結晶は強力な単色マイクロX線ビームを供給することができる(参照により本明細書に組み込まれる非特許文献5を参照)。ビームのエネルギーは結晶光学系を走査することによってある範囲内で同調可能である。結晶光学系は高い強度利得及び狭いエネルギー帯域幅をもたらし、ひいてはXANES解析で使用するのに最適である。例えば、本発明の一実施態様は、XANES解析システムでX線をある方向に向けて照射し、集束するための結晶光学系、例えば、二重湾曲トロイダル結晶光学系を使用する。
【0010】
X線結晶光学には基本的に2種類の集束形状、すなわち、ヨハン型形状とヨハンソン型形状がある。放射源−像のラインを中心にヨハン型又はヨハンソン型形状を回転させることによって、三次元のポイント・ポイント集束形状(point−to−point focusing geometry)が得られる。ヨハンソン型のポイント集束形状には幾何学的収差はなく、ヨハン型よりも大きい立体集束角が得られる。しかし、ヨハンソン型形状は実際に達成することが極めて困難である。
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,285,506号明細書
【非特許文献1】McBreen et al. "In situ time-resolved x-ray absorption near edge structure study of the nickel oxide electrode", J. Phys. Chem. 93, 6308 (1989)
【非特許文献2】Shimizugawa, et al., "X-ray absorption fine structure of samarium-doped borate glasses", J. Appl. Phys. 81, 6657 (1997)
【非特許文献3】Bajt, et al. "Synchrotron X-ray Microprobe Determination of Chromate Content Using X-ray Absorption Near-Edge Structure" Anal. Chem. 65, 1800-1804 (1993)
【非特許文献4】Dillon, et al. "Microprobe X-ray Absorption Spectroscopic Determination of the Oxidation state of V79 Chinese Hamster Lung Cells to Genotoxic Chromium Complexes", Chem, Res. Toxicol 10, 533-535 (1997)
【非特許文献5】Chen, et al., "Microprobe X-ray Fluorescence with the Use of Point-focusing Diffractors", Applied Physics Letters, 71 (13), 1884 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
XANES測定を実施するためのコンパクトで、高感度、低電力及び低コストの卓上型機器によって、医学、科学及び産業上の広範な用途での化学的種分化(chemical speciation)及び特性研究が可能になる。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来技術の方法及び装置の制約の多くに対処可能な、X線吸収端近傍構造解析を実行するためのXANES解析システム及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施態様は、X線吸収端近傍構造解析を実行するためのXANES解析システムであり、このXANES解析システムは、第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射する手段と、サンプルがX線に露光されたとき、サンプルによって放射される第2エネルギーを有するX線を検出する手段と、サンプルによって放射される前記X線の第2エネルギーがそれに応答して変化するとともに、サンプルのX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報を、検出されたX線の第2エネルギーの変化の一部の解析によって得ることができるように、サンプルに向けて照射されたX線の前記第1エネルギーを変化させる手段とを備えている。また、X線を向けて照射する手段はX線光学系を備えている。例えば、トロイダル結晶光学系のような結晶X線光学系で高い強度利得と狭いエネルギー帯域幅を達成可能であるので、使用されるX線光学系は結晶X線光学系である。また、本発明は、X線光学系は同調可能なX線光学系を備えており、サンプルに向けて照射されるX線の第1エネルギーを変化させる手段は、同調可能なX線光学系、例えば、θ−2θ同調、x−x同調、又はx−2x同調のための手段を備えている。
【0015】
また、本発明は、X線吸収端近傍構造解析を行うためのXANES解析方法を含んでおり、このXANES解析方法は、第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射するステップと、サンプルがX線に露光されたとき、サンプルによって放射される第2エネルギーを有するX線を検出するステップと、サンプルに向けて照射されるX線の第1エネルギーを変化させ、サンプルによって放射されるX線の第2エネルギーがそれに応答して変化するステップと、サンプルのX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報を提供するために、検出されたX線の第2エネルギーの変化を解析するステップとを有している。第1エネルギーを有するX線を照射するステップは、同調可能なX線光学系でX線を回折するステップを有し、X線の第1エネルギーを変化させるステップは、前記X線光学系を、例えば、θ−2θ同調、x−x同調、又はx−2x同調によって同調するステップを有している。例えば、同調可能なX線光学系は軸を有し、X線光学系を同調するステップは、同調可能なX線光学系を、軸を支点に回転させるステップを有している。
【0016】
また、本発明は、X線をサンプルに向けて照射するためのデバイスである。このデバイスは、約90°より大の方位角を有するX線光学系を備えている。X線光学系の方位角は、約120°より大きく、例えば、約360°である。X線光学系は、少なくとも1つの2重湾曲結晶光学系を備えている。さらに、2重湾曲結晶光学系は複数の二重湾曲光学結晶を備えている。
【0017】
また、本発明は、所定の集束エネルギーを有するX線を集束するための二重湾曲結晶光学系であり、この結晶光学系は311の回折面を有するシリコン結晶を備えている。このシリコン結晶は、約220mmの大曲げ直径(2R)、約90mmの小曲げ半径(r)、約140mmの焦点距離、約40°のブラッグ角(θ)を含んでいる。所定の集束エネルギーは約6.0キロ電子ボルトである。
【0018】
また、本発明は、サンプル中の元素の発がん性を判定する方法であり、この方法は、第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射するステップと、サンプルがX線に露光されたとき、元素によって放射される第2エネルギーを有するX線を検出するステップと、サンプルに向けて照射されるX線の第1エネルギーを変化させ、元素によって放射されるX線の第2エネルギーがそれに応答して変化するステップと、元素のX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報を提供するために、検出されたX線の第2エネルギーの変化を解析し、元素の酸化状態の判定を可能にするステップと、元素の発がん性を判定するために、元素の酸化状態と元素の既知の酸化状態とを比較するステップとを有している。
【0019】
また、本発明は、X線吸収端近傍解析で細胞サンプル中の元素の酸化の変化を監視するXANES解析方法であり、このXANES解析方法は、第1エネルギーを有するX線をサンプル中の元素に向けて照射するステップと、元素がX線に露光されたとき、元素によって放射される第2エネルギーを有するX線を検出するステップと、サンプルに向けて照射されるX線の第1エネルギーを変化させ、元素によって放射されるX線の第2エネルギーがそれに応答して変化するステップと、元素のX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報を提供するために、検出されたX線の第2エネルギーの変化を解析し、元素の酸化状態の判定を可能にするステップとを有している。
【0020】
また、本発明は、X線吸収端近傍解析でサンプル中の元素の化学的状態を解析するためのデバイスであり、このデバイスは、第1エネルギーを有するX線をサンプル中の元素に向けて照射する手段と、元素がX線に露光されたとき、元素によって放射される第2エネルギーを有するX線を検出する手段と、サンプルに向けて照射されるX線の第1エネルギーを変化させ、元素によって放射されるX線の第2エネルギーがそれに応答して変化するようにし、かつ、検出されたX線の第2エネルギーの変化の一部の解析によって、元素のX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報を得ることを可能にする手段と、端近傍構造に関する情報から元素の化学的状態を判定するための手段とを備えている。このデバイスは、医学的解析、生物学的解析、環境解析、環境の監視、産業工程の管理、又は材料科学解析用に使用される。例えば、医学的解析は、細胞間解析、遷移金属吸着解析(transition metal uptake analysis)、酸化工程解析、又は遺伝毒性金属(metallic genotoxins)の酸化状態の解析である。
【0021】
本発明の様々な実施態様は、これまでは実用的ではなかった、例えば、小規模な研究又は科学実験、及び産業上の用途に実用的ではなかったXANES解析を実施する方法及び装置を提供する。従来、例えばシンクロトロンを使用したシステムのようなXANES解析を行うために必要であった一般的なX線放射源は利用可能性が制約され、またコストが高すぎたことで、より小規模の実験室、現場での使用、又は産業上の用途でのXANES解析の実用性が制約されていた。加えて、従来のXANES解析はX線エネルギーの変化を繰り返し調整することが面倒であり、したがって時間がかかる調整や部品交換が必要であった。これに対して、本発明の幾つかの実施態様は、X線エネルギーの調整又は変化を容易にし、ひいては解析工程を促進する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の上述した実施態様、ならびに本発明のその他の実施態様及び先行技術に対する改良及び利点は、添付図面、以下の説明、及び添付の特許請求の範囲を参照することによって明らかになろう。
【0023】
本発明と見なされる主題は明細書の結論部で特に指摘され、明確に特許請求されている。しかし、本発明は構成及び実施方法の双方に関して、さらに他の目的及び利点と共に、好適な実施形態(単数又は複数)の以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより最も明確に理解されよう。
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、代表的な端近傍X線吸収スペクトルの概略図で、本発明の1つの実施態様を使用して生成可能な一般的なXANESスペクトルを示す図である。図1に示された縦座標7は、サンプルからの蛍光X線の強度を表している。図1の横座標9は、解析中のサンプルへの対応するX線のエネルギーをeV単位で示している。Eは吸収端のエネルギーである。図1に示すように、一般的なXANESスペクトルは、吸収端のエネルギーより約30eV低い値から吸収端のエネルギーより約30eV高い値までのエネルギー範囲にわたっている。
【0025】
図2は、ヨハン型形状を利用した従来技術の結晶光学系の形状を示す概略図で、二重湾曲結晶(DCC)光学系Cと、X線放射源位置Sと、好適にはX線画像が生成されるX線ターゲット位置又は写像位置Iとを有する先行技術のX線集束構造11の一般的な斜視図である。
【0026】
点放射源Sから分散し、結晶の許容回折強度曲線(acceptance rocking curve)幅内の入射角で結晶Cの表面に当たるX線は、ターゲット位置Iに効率よく反射される。図2及び本発明の以下の実施態様では、X線放射源の位置Sはどのような種類のX線用の点放射源位置をも表す。例えば、放射源位置Sはシンクロトロン、X線管、又はその他のX線放射源の点放射源でもよい。同様に、図2及び本明細書のどの箇所でも、ターゲット位置IはX線が照射される(direct)どのターゲットでもよい。例えば、ターゲット位置Iは、特に、X線分光にかけられる化学種、放射線処置を受ける人体組織、又は表面解析がなされる半導体チップの位置でよい。加えて、ターゲット位置Iは、ターゲットによって放射される二次X線を検出するためのX線検出器(図示せず)を含んでいてもよい。
【0027】
図2に示されるように、光学結晶Cは、光学系中心点13とX線放射源位置Sとを有し、光学系中心点13とX線ターゲット位置Iとは、この分野でローランド円又は焦点円として知られる円15を構成している。ローランド円15は、この分野でローランド半径又は焦点半径として定義される半径Rを有している。結晶Cは幅Wと高さHとを有している。X線放射源の位置SとX線ターゲット位置Iとは線17で結ばれ、これはこの分野では「放射源と像の接続線」と呼ばれる。図2に示した構成の座標系は0地点に基点がある。
【0028】
図2に示した結晶Cの表面は、基点0から測定した半径2Rを有している。結晶Cは、一般的には線19で表される1つ以上の結晶格子面を含んでいる。この一般的な従来の光学系では、光子面19は基本的に結晶Cの表面と平行である。従来の光学系は、ヨハン型又はヨハンソン型形状で設計してよいが、図2の構成は、結晶Cの表面の曲率半径Rがローランド半径Rの2倍、すなわち、R=2Rであるヨハン型形状を有している。
【0029】
図2に最も明確に示されているように、従来の結晶Cは、一般的には二重湾曲結晶(DCC)である。すなわち、円15の平面(すなわちローランド面)内の曲率半径Rを有している他、結晶Cは円15の平面に対して垂直な平面に曲率半径rをも有している。湾曲rの方向は、この分野では一般的には結晶Cのトロイダル方向と呼ばれ、rは「トロイダル回転半径」と呼ばれている。このトロイダル方向は、図2では角度Φによって示されている。基本的にポイント・ポイント集束を行うために、DCC Cは一般的には、結晶の中心点13と、放射源と像の接続線17との垂直距離に等しいトロイダル回転半径rを有している。
【0030】
図2に示される角度θは、この分野では「ブラッグ角」、すなわち、ほとんどの放射線がターゲット位置Iの方向に回折される、放射源位置Sから結晶Cの表面へのX線放射の臨界入射角として知られている。ブラッグ角よりも大きい角度、又は小さい入射角度では、ターゲットに回折される入射放射線は少なくなる。システムにとってブラッグ角は、特に、使用される結晶及び使用されるX線放射の周波数の関数である。図2に示された一般的な従来のシステムでは、システム11は、線21で示されるように、結晶Cの表面の中心13上のX線の、線17に対する入射角がそのシステム用のブラッグ角に等しくなるように設計される。ブラッグ角に関しては、最適なトロイダル曲率rは、数式2Rsinθによって得られる。図2に示された形状を構成するために用いられるこれらの用語と寸法は、本発明を記載するために有用である。
【0031】
放射源の有限のサイズ、結晶の品質、及び幾何学的収差はヨハンのポイント集束結晶の集束特性に影響を及ぼす。幾何学的収差は、狭い回折強度曲線の幅、又は小さい焦点円半径について小さいものとして示されており、ブラッグ角が大きくなると縮小する。ブラッグ角が23°でR=250mmである場合は、幾何学的収差は約1mである。一般的な市販の微小焦点X線管の放射源サイズは、5mmから100mmの範囲にあるので、像点における拡張に主に影響するのはX線放射源のサイズであろう。
【0032】
図3は、本発明の一実施態様によるXANES解析システムの概略図である。このXANES解析システム10は、X線放射源12と結晶光学系14とサンプル台又はサンプル保持器16とX線検出器18とを備えている。矢印20及び22は、放射源12によって放射され、光学系14の表面に当たる発散放射線を表している。矢印24及び26は、光学系14によって回折され、サンプル保持器16内の解析中のサンプルに向けて照射される集束放射線を表している。図3に示したXANES解析システム10は、一般的には、図2に示され、これに関連して記載されたローランド円の形状に適合している。
【0033】
X線放射源12はどのような放射源でもよいが、信頼性のあるXANESスペクトルを得るために、好適には極めて安定したものであり、又は監視される。シンクロトロンのビームラインでは、信頼性がある測定のためにX線ビームの強度が監視されなければならない。しかし、密閉されたX線微小焦点放射源が本発明に使用されると、高い安定性で連続動作がなされ、ひいては入射ビームの強度を監視する必要がなくなり、システムが簡略化されるという利点がある。本発明によれば、X線放射源12は、他の種類のターゲットを使用してもよいが、例えば、タングステンのターゲットのような重元素ターゲットを有する、例えば、密封された微小焦点X線放射源のような密封された微小X線放射源からなっている。本発明のX線放射源は、オックスフォード・インスツルメンツから市販されているウルトラブライト・マイクロフォーカスX線管であってよい。このような管の最大電力は約80ワットであり、放射源のスポットサイズは約50ミクロンである。また、この管の直径はわずか約4.5インチ(約24cm)、長さは約17インチ(約43cm)、重さはわずか約9ポンド(約40.8kg)である。このX線放射源のサイズが比較的小さいことによって、従来のシステムと比較して本発明を比較的小型でコンパクトにすることが可能になる。また、本発明のX線放射源12は、50ワットのタングステン微小焦点放射源、又は15ワットのTrufocus製モリブデン放射源であってよい。また、本発明のX線放射源12は、4.5ワットの微小焦点X線管でもよい。
【0034】
本発明によれば、光学結晶14は放射源12からの制御放射スペクトルから放射される狭帯域のX線を捕らえ、X線をサンプル保持器16内のサンプル上の小スポットに集束する。光学結晶14は1つ以上の湾曲結晶、例えば、1つ以上の単湾曲光学結晶、又は二重湾曲光学結晶、例えば、1つ以上のトロイダル二重湾曲光学結晶である。光学結晶14は、組み込まれた上記の米国仮出願"An optical Device for Directing X-rays having a Plurality of Optical Crystals"に記載の光学系の1つを含んでいる。結晶14によって生成されるサンプル上のX線スポットのサイズは極めて小さい。本発明の一実施態様で達成可能なサンプル上の小さいスポットサイズは、例えば、異質なサンプル中の個々の種を検査する場合に有利である。
【0035】
本発明のシステム10の光学結晶14は、311の回折面を有する二重湾曲シリコン結晶を含んでいる。シリコン結晶は可撓性があり、例えば、二重湾曲のように湾曲し易く、厚さ50ミクロン未満に容易に薄くできるので、例えば、ゲルマニウム結晶のような他の結晶よりも好適である。特に、好適なシリコン結晶光学系は大曲げ直径(2R)が約220mm、小曲げ半径(r)が約90mm、焦点距離(f)が約140mm、及びブラッグ角(θ)が約40°である。この結晶光学系は、一般的には約6.0キロ電子ボルトの所定集束エネルギーと、約10電子ボルト未満のエネルギー帯域幅分解能とを有し、約5電子ボルト未満のエネルギー帯域幅分解能を有することが可能である。例えば、Mo TruFocus 9050放射源からのX線ビームがこのシリコン結晶に向けて照射されると、結晶はビームフラックスが1x10陽子/秒、ビームスポットのサイズが87ミクロン、またエネルギー帯域幅が3.5eVである5.99keVのビームエネルギーを発生した。この結晶は、例えば、クロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、又はカドミウム(Cd)のような遷移金属のK端に対応するエネルギーで異なるX線を回折するように設計可能である。この結晶はトロイダルの形状でよく、約100ミクロン以下、又は約85ミクロン以下の焦点さえも生成する。
【0036】
サンプル保持器又はサンプル台16はサンプルがその上で、又はその内部でX線に露光することが可能などのような種類の保持器又は台でもよい。固形又は準固形サンプルの場合は、サンプル保持器又は台16は、単にサンプルを上に載せることができる面であってもよい。例えば、周期表のSi以上の元素の場合、サンプルは空気に曝すことができ、周期表のSi以下の元素の場合、解析には少なくともある程度の真空、又は例えばヘリウム環境のような不活性ガスの環境が必要になることがある。液体又は気体サンプルの場合は、サンプル保持器16は開放型又は閉鎖型の箱、又は容器、例えば、薄いプロピレンの窓付きのプラスチック皿でよい。解析されるサンプルは同質のものでも異質のものでもよい。箱は、例えば、ガラス窓又はマイラー窓のようなX線を透過する窓を含んでいてもよい。例えば、液体又は気体のような移動性流体の連続的、又は断続的な解析用には、サンプル保持器16は流体サンプルを誘導し、除去するための入口と出口を備えていてもよい。入口と出口は適宜の導管と流量制御手段、例えば、バルブ及び例えば自動コントローラのようなバルブコントローラを備えていてもよい。後述するように、サンプル保持器16は直線方向に、又は二重矢印30で示されるように角方向に移動可能、又は平行移動可能である。
【0037】
X線検出器18は、サンプルから蛍光信号を検出するために使用可能などの種類のX線検出器でもよいが、X線検出器18は、ソリッドステートのエネルギー分散型検出器である。本発明によれば、コンパクトなシステムが提供されるので、ソリッドステートのエネルギー分散型検出器は好適には極めて小型である。X線検出器18は、検出領域が25平方mmのAmptek社製の熱電気冷却式Si PIN型検出器であるが、他の同類のX線検出器を使用してもよい。このAmptekのX線検出器はサイズがわずか約1.2インチ(約3.04cm)×約2インチ(約5.08cm)(約5.08cm)×約3インチ(約7.62cm)のボデーを有している。
【0038】
湾曲結晶、例えば、二重湾曲トロイダル結晶の集束形状は、それに当たるX線の特定の波長用に一意的な形状である。しかし、陽子エネルギーの狭い窓内で、トロイダル結晶の集束及び反射特性は結晶の配向がわずかに変化してもそれほど変化しない。したがって、図3に示すように、焦点面に対して垂直な軸を中心に結晶を傾倒させ、光学系の前表面の中心を通過させることによって、X線エネルギーをある範囲(一般的には〜100eV)にわたって同調することが可能である。X線放射源12が固定され、結晶14をθだけ回転させると、集束されたビームは2θ回転する。集束されたビームをサンプル上の同じ位置に保つために、サンプル台16及び蛍光検出器18は角度2θだけ回転される。
【0039】
本発明によれば、結晶光学系14は同調可能であり、例えば、サンプル保持器16上のサンプルの方向に向けて送られるX線のエネルギーを変化させるために、X線ビーム24、26のエネルギーを変化させることで同調可能である。結晶光学系14を同調する手段の1つは、例えば、焦点円の面に対して垂直な軸28を中心に光学系14を回転させ、光学系の中心を通過させることによって、結晶光学系14を走査することによるものである。例えば、図3に示すように、結晶光学系14を角回転θで示されるように、軸28を中心に回転させてもよい。X線放射源12が固定され、軸28を支点にθだけ回転させると、入射X線20、22の入射角が変化し、その結果、回折されたX線24、26のエネルギーは変化する。この配向の変化を補償し、集束されたビームをサンプル保持器16内のサンプル上の同じ位置に保つため、結晶光学系14のθ回転には矢印30で示されるように、軸28を支点にしたサンプル保持器16の2θ回転が付随される。検出器18をサンプルからの2次X線放射を検出する位置に保つために、結晶光学系14が角度θだけ回転されると、サンプル保持器16及びX線検出器18は角度2θだけ回転される。このθ−2θ走査(もしくは同調)機構はX線回折測定の分野では公知であるが、それをXANES技術に応用することは先行技術では見られない。
【0040】
本発明によって、軸28を支点にした結晶光学14の回転、及びこれに対応する軸28を支点にしたサンプル保持器16の回転は、サンプルに向けて照射されるX線24、26のエネルギーを効果的に変化させる。その結果、θ−2θ回転によってサンプル保持器16内のサンプルにXANES解析を行うための所望のエネルギー変化をもたらす。
【0041】
システム10の動作と動きを1つ以上の適宜のアクチュエータ及び例えばコントローラ32のようなコントローラによって自動化してもよい。コントローラ及びアクチュエータは、Newport Controlsから市販されているものでよい。コントローラ32は、コンピュータ、プログラム可能論理コントローラ、又は分散型制御システムなどでよい。コントローラ32は、多重の電子制御信号34、36、38、及び42を供給してもよい。これらの制御信号はIEEE−488(GPIB)インターフェースバス又はこれと等価のバスを介して伝送されてもよい。コントローラ32は、X線放射源12を動作、平行移動、又は回転させる信号34と、結晶14を平行移動又は回転させる制御信号36と、X線検出器18の動作、平行移動又は回転を制御するためにアクチュエータ40を動作させる制御信号38と、サンプル保持器16の動作、平行移動又は回転を制御するためのアクチュエータ44への制御信号42とを供給する。X線検出器18がサンプルと適切に位置合わせされることを確実にするために、サンプル保持器16とX線検出器18とは連係して移動される。したがって、アクチュエータ40及び44は単一のアクチュエータでもよい。アクチュエータ40は、X線検出器18によって検出されるX線蛍光信号の1つ以上の特徴を記録するためにデータ収集システムをさらに備えていてもよい。データ収集システムは、Tennelec PCAマルチポート・マルチチャネルアナライザ、又はこれと同等のものでよい。コントローラ32からの制御信号38は、さらにデータ収集システム40の動作を制御してもよい。また、システム10内の構成部品の動作、制御及び移動が手動的に行われてもよい。
【0042】
図3に示されたシステム10と同類のコンパクトな実験室システムを使用して、本発明による実験が行われた。実験システムでは、X線放射源12は固定式のTruFocus モリブデンX線放射源からなり、結晶14は前述のような(311)の結晶回折面を有する二重湾曲シリコン結晶光学系からなり、X線検出器18は、AmptekのPIN型検出器からなるものであった。Amptek検出器は25mmの有効領域を有し、サンプル保持器16上のサンプルから約5mm離して配置された。実験システムでは、結晶14、サンプル保持器16、及びX線検出器18はコンパクトなθ−2θテーブル上に載置され、結晶14が軸28を支点にある角度だけ回転されると、X線検出器18及びサンプル保持器16は軸28を支点に角度2θだけ回転される。
【0043】
実験システムを使用して3つの標準サンプルが比較用に解析された。(1)純クロム(Cr)粉末、(2)Cr3+イオン()を含有する溶液、及びCr6+イオン(NaCrO)を含有する溶液。Cr3+イオンとCr6+イオンの双方とも濃度は1000ppm(すなわち、0.1%)の水溶液であった。Cr粉末は接着性のベース上に塗布され、垂直に置かれた。Cr3+とCr6+溶液は薄いマイラー窓を有するプラスチック容器内に封入され、これも垂直に置かれた。Cr蛍光信号を検出するためにAmptek検出器18が使用された。
【0044】
図3を参照すると、放射源から入射するX線陽子が結晶14の表面、すなわち、二重湾曲Si(311)結晶の表面に当たる角度が、サンプル保持器16内のサンプル上の主ビーム24、26のエネルギーを決定する。本発明によれば、X線陽子が結晶14の表面に当たる角度を走査し、又は変化させることによって、サンプルに向かうビームのエネルギーは、CrのK吸収端のエネルギーに近いエネルギー、すなわち、約6.00keVに同調することが可能である。実験手順では、結晶14に当たるビーム20、22の入射角を変更しつつ、3つのサンプルについてCr Kaの蛍光信号対入射ビームのエネルギーを測定することによって、XANESスペクトルが得られた。サンプルに当たるビームエネルギーの変更は、軸28を支点に結晶14を繰り返し回転させ、その結果、サンプル保持器16とX線検出器18とをθ−2θテーブルによって連続回転させることによって行われた。次に、サンプルを結晶14から生ずるX線に露光させ、X線検出器18を使用してサンプルから生じた蛍光X線を検出し、例えば、データ収集システム40によって入射X線と蛍光X線のエネルギーを記録し、後続のθ−2θ回転及びエネルギーについて上記の工程を繰り返し行なわれる。
【0045】
Cr粉末の実験については、各データポイントでの測定時間は約3秒間であり、走査全体に約3分を要した。Crイオン溶液の場合の各データポイントでの測定時間は約180秒であり、走査全体では約3時間を要した。測定は全て放射源を18keV及び0.25mA、すなわち、約4.5ワットに設定して行われた。このTruFocus放射源の最大電力の設定は、約50kV 0.3mA、すなわち、約15ワットであった。これらの実験では使用されなかったが、放射源の電圧設定がより高い場合に発生することがあるX線散乱の作用を最小限にするためにX線の経路をシールドで遮蔽してもよい。
【0046】
図4は、本発明の一実施態様を使用して得た、異なる酸化状態のクロムの3つの代表的な端近傍X線吸収スペクトルの比較図で、6070eVのX線エネルギー強度に基準化された、この実験で検査された3つのサンプルのXANESスペクトルが示されている。図4ではプロット50の縦座標52は、X線検出器18によって検出された蛍光X線の強度である。プロット50の横座標52は、サンプル保持器16内のサンプル上の結晶14によって向けて照射される、対応するX線のeV単位のエネルギーである。図4の曲線56はCr粉末のXANESスペクトルを表し、曲線58はCr3+溶液のXANESスペクトルを表し、また曲線60はCr6+溶液のXANESスペクトルを表している。Cr6+及びCr3+スペクトルはシンクロトロンを使用したCrO及びCrOのXANES測定とよく一致する。蛍光測定では、10ppmのCr濃度について10以上である信号−ノイズ比(S/N)に対応して極めて低い背景吸収が観察された。本発明によれば、図4に示されているようなスペクトルを標準スペクトルで較正することが可能であり、又は酸化状態の混合を測定するためにスペクトルのデコンボリュ−ション(deconvolution)を用いることが可能である。加えて、検出可能性及び微小スケールの空間分解能の追跡レベルでの酸化状態の変化を判定することが可能である。
【0047】
本発明によるXANES解析によって、XANES解析のために優れたエネルギー分解能が得られる。本発明によって生成された図4に示すスペクトルは、解析された3つの種で明らかに異なっている。例えば、第1に、異なる酸化状態での吸収端の位置移動が明確に観察された。Cr6+のプリエッジ特性も認めることができる。第2に、溶液中の希釈されたCr種はわずか45ワットで動作するX線放射源でさえも識別可能であった。
【0048】
本発明によるこのXANESシステムの感度及び速度が、最適なX線放射源12及び最適な二重湾曲結晶14の設計を使用することによって数桁も向上し得ることが当業者には明らかであろう。例えば、X線放射源12用にモリブデン(Mo)の陽極を使用する代わりにタングステン(W)の陽極を使用してもよく、それによって1.78倍の強度利得を達成できる。加えて、放射源の電力装荷を、これらの実験で用いられている4.5ワットではなく50ワットまで高めることも可能である。さらに、光学系の設計を最適化することで、集束角度及び反射効率も高めることができる。例えば、上述した組み込まれた特許文献1に開示されている大口径の二重湾曲結晶の1つを使用して、大口径の二重湾曲結晶で9倍の向上達成を実現可能である。本発明の他の実施態様によれば、それらのさらに他の改良により、本発明によるXANES解析の感度を、特に元素濃度が100万分の1(ppm)の範囲まで低い、又は10億分の1(ppb)までさえも低いサンプルを効果的に検出し、解析可能になるまで充分に高めることができる。
【0049】
Crイオン溶液の全測定時間は約3時間であったが、XANES端位置の移動を識別するために、本発明を使用して大幅に短い測定時間を達成できることが当業者には明らかであろう。例えば、細胞中のこれらのイオンの変化を調査する場合、例えば、Cr6+からCr3+への変化を監視するために30eVから40eVのエネルギー範囲しか必要ないので、実験の全測定時間は3時間よりも大幅に短くてもよく、例えば、わずか1時間、又はさらにわずか30分又はそれ未満しか必要ない可能性もある。加えて、強度がより高いX線ビームを使用して走査時間をさらに短縮してもよい。本発明によれば、XANES解析のための測定時間、例えば、細胞中のCr6+からCr3+への変化を監視するためのXANES解析のための測定時間を10分又はそれ未満、1分又は逸れ未満、又はさらに1秒又はそれ未満に短縮してもよく、検出感度を低いppm濃度レベルに低減させてもよい。
【0050】
上述した実験はクロム(Cr)についてのXANESスペクトルを調査したが、本発明の方法及び装置を使用して、特徴的な端近傍吸収スペクトルを有する他のどの元素のXANESスペクトルをも得られることが当業者には明らかであろう。例えば、本発明の方法及び装置を、例えば、特に銅(Cu)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、チタン(Ti)、バナジウム(Va)、マンガン(Mn)、テルリウム(Te)、レニウム(Re)のような、どの遷移元素のXANESスペクトルを判定するために使用してもよい。
【0051】
図5は、本発明の他の実施態様によるコンパクトなXANES解析システムの概略図で、放射源スポット64を有するX線放射源62と、X線光学系66(断面で示す)と、ターゲットスポット70が上に生成されるサンプル保持器68と、X線検出器72とを備えたXANES解析システム60を示している。線63、65は光学系66の表面に当たる、放射源62によって放射されるX線円錐の端を構成し、線67、69は光学系66によってサンプル保持器68内のサンプルに向けて照射されるX線ビームの円錐の端を構成している。本発明によれば、光学系66はX線放射源62から放射される制御放射スペクトルから狭帯域X線を捕らえ、X線をサンプル保持器68内のサンプル上の小スポットに向けて照射し、例えば、X線をそこに集束する。システム60の光軸、すなわち、放射源スポット64の中心とターゲットの焦点70とを結ぶ線が線74によって示されている。
【0052】
図6は、図5の6−6線からみた光学系の断面図である。本発明によれば、X線光学系66は大口径のX線光学系を備えている。一般的には方位角Φ(図2を参照)が約30°から約40°、例えば36°である、図3に示され、これに関連して記載された光学系14とは異なり、図6に示すように、大口径の光学系66は約45°より大の方位角を有していてもよい。光学系66はローランド円面内に、ローランド円の半径Rの2倍の曲率半径を有している。本発明の一態様では、光学系66の方位角は約90°より大であり、約180°より大であってもよい。例えば、図5に示された実施形態では、光学系66は約360°の方位角Φを備えていてもよく、すなわち、光学系66は完全な円形でもよい。図6に示されるように、光学系66のトロイダル半径rは2Rsin(θ)に等しい。また、本発明は、光学系60は上記に組み込まれた「An optical Device for Directing X-rays having a Plurality of Optical Crystals」という名称の米国特許仮出願に記載の光学系の1つを含んでいる。
【0053】
結晶光学系の方位角を増大すると、ターゲット70に向けて照射されるX線の最大ビーム強度が高まる。例えば、図3の光学系14の方位角を約36°から約180°まで増大させると、強度を約5倍だけ高めることが可能であり、一方、方位角を約360°に増大させると、強度を約10倍に高めることが可能である。上記の係属仮出願第60/400,809号[代理人整理番号第0444.048P]に開示されているように、約45°より大きい方位角を有する単一光学結晶、又は45°より大きい方位角を有する、例えば、約180°又は360°の方位角を有するモザイク状又はマトリクス状、又は複数の光学結晶を製造可能である。本発明によれば、約360°の方位角を有する単体の結晶光学系を使用可能であるが、本発明の他の実施態様では、各々が360°未満の方位角を有する、例えば、トロイダル光学結晶を含む2つ以上の光学系を使用してもよい。例えば、各光学系は約45°、又は約90°、又は約120°、又は約180°の方位角、又はその他のいずれかの方位角を有していてもよく、また、光学アセンブリ用の所望の方位角を備えるために、すなわち、最適なX線ビームの捕獲角を有する光学アセンブリを得るために1つ以上の光学系を組み立ててもよい。
【0054】
X線放射源62はどのようなX線放射源でもよく、例えば、図3に示されたX線放射源12と同様のものでもよい。しかし、本発明によれば、X線放射源62は密封されたマイクロX線放射源、例えば、ユタ州のソルトレーク市のVarian Medical Systemsによって開発されたタングステン(W)のターゲットを有するコンパクトなマイクロフォーカス管を備えている。Varianによって提供されている一般的なX線管は直径が約4インチ(約10.2cm)、長さ約6インチ(約15.24cm)、重さがわずか2ポンド(約0.98kg)であることが可能である。本発明によれば、X線放射源12は最大電力が約50ワットで、放射源スポットのサイズが約100ミクロンのX線管を含んでいる。大口径の光学系66が使用される本発明の他の実施態様によれば、X線放射源62は従来のX線放射源の円錐角よりも大きいX線円錐角を備えている。例えば、X線放射源62の円錐角は、約30°より大であり、約60°より大でもよく、さらに約90°より大でもよい。本発明によれば、X線放射源62の円錐角は、システム60で使用される光学系66のブラッグ角よりも大きく、例えば、大口径の光学系66のブラッグ角の約2倍である。例えば、光学系66は、6keVのエネルギーを有し、約360°の方位角を有するX線ビームを生成するために、約39°のブラッグ角を有する前述のSi(311)二重湾曲トロイダル結晶を含んでいる。X線放射源62は、360°の光学系の回折能力を完全に活用するため、39°の約2倍、すなわち、約78°の円錐角を有することが好適であろう。また、光学系66のブラッグ角の2倍未満の円錐角を有するX線放射源62を使用してもよい。しかし、このようなX線放射源は、光学系66の潜在能力を完全には活用しないであろう。X線放射源のスポットサイズは100ミクロン未満のスポットサイズであり、50ミクロン未満であってもよい。
【0055】
本発明によれば、X線放射源62はカリフォルニア州のスコッツバレーのOxford Instruments製のTruFocusブランドの市販シリーズ、モデル番号8050、定格電力が約15ワットのX線管である。本発明の他の実施態様によれば、放射源62は、約50ワットで動作可能であり、放射源のスポットサイズが約100ミクロン、円錐角が約26°のOxford 5011シリーズのX線管を備えている。
【0056】
サンプル保持器68は、解析用のサンプルを保持する従来のどのような手段でもよく、例えば、図3に示され、これに関連して記述した保持器16でよい。
【0057】
X線検出器72もサンプルから放射される蛍光X線を検出可能などのような種類の適宜の検出器、例えば、図3に図示し、これに関連して記述したX線検出器18と同類の検出器でよい。本発明によれば、X線検出器72は小型のエネルギー分散型検出器、例えば、ソリッドステートのエネルギー分散型検出器である。本発明によれば、X線検出器72は、例えば、Amptek又はMoxtek製のコンパクトな熱電気冷却式Si PIN型検出器である。この検出器は、一般的には、サイズがわずか約1.2インチ(約3.04cm)×約2インチ(約5.08cm)×約3インチ(約7.62cm)のボデーを有している。これらの検出器は、一般的には約300eV又はそれ未満のエネルギー分解能を有し、検出器の有効領域は約25平方mm又はそれ未満である。
【0058】
本発明は、X線検出器72によって検出された信号は適宜のデータ収集システム、例えば、図3に図示し、これに関連して記述したシステム10用に使用されるシステム40と同類のデータ収集システムによって転送、記憶、及び解析される。
【0059】
図5に示したシステム60の構成部品は、垂直に配置されて図示されているが、本発明はシステム60のこのような垂直の向きに限定されるものではない。システム60の構成部品は、これらが所望の通り相互作用可能であるならば、水平を含め、適合するどのような向きで配置してもよい。
【0060】
図3に示したシステム10と同様に、本発明によれば、光学系66によって図5のサンプル保持器68内に保持されているサンプルに向けて照射されるX線ビームのエネルギーは、例えば、XANES解析を行うための可変X線エネルギーを供給するために可変的である。さらに、図3のシステム10と同様に、サンプルに当たるエネルギーの所望の変更は光学系を「同調(tuning)」させることによって、すなわち、二重湾曲結晶光学系66へのX線の入射角を変化させることによって行われる。しかし、図5に示したシステム60の構成部品が直線的な配向により、及び光学系66の大口径を完全に活用したいことにより、図3に示したシステム10のθ−2θ同調は、図5のシステム60には適用されない。その代わり、システム60の同調は、システム60内の1つ以上の構成部品の直線的な平行移動によって行われる。
【0061】
図7A乃至図7Cは、本発明の一実施態様によるXANES解析システム用の同調の選択肢の概略図である。システム60の同調は、図7A、図7B及び図7Cに要約されている。図7Aは、例えば、図5に示されている放射源62と光学系66とターゲット68とX線検出器72の基本線又は原位置を示している。図7Bは、光学系66の位置が固定され、放射源62サンプル保持器68とX線検出器72の位置が変更される、本発明の一実施態様を示している。説明を簡略にするため、サンプル保持器68及びX線検出器72は単一部品として一体に移動するものと想定してある。図7Aに示された本発明の一実施態様では、システム60は、放射源62によって光学系66に放射されるX線の入射角を変化させることによって同調される。この同調は光軸74に沿って放射源62を距離xだけ平行移動することによって行われる。一般的には、回折されたX線を光学系66からサンプル保持器68内のサンプルに確実に集束させるため、サンプル保持器68及びX線検出器72も同じ軸74に沿ってほぼ同じ距離xだけ移動されるが、その方向は逆である。例えば、光学系66を定位置に保持して、X線がサンプル保持器68内のサンプルに適切に向けて照射されることを確実にするため、放射源62を距離xだけ光学系66から離れるように移動するには(それによって光学系66上のX線の入射角が縮小する)、サンプル保持器68を光学系66からほぼxに等しい距離だけ移動することが必要である。本発明の他の実施態様によれば、放射源62が結晶66の方向に距離xだけ移動し、それによって光学系66へのX線の入射角が増大すると、所望の集束形状を保つために、サンプル保持器68は好適には同期的に光学系66の方向にxにほぼ等しい距離だけ移動される。これは「x−x同調」と呼ばれる。すなわち、放射源62を距離「x」だけ平行移動させるには、対応して、しかし、放射源62の平行移動とは逆方向にサンプル保持器68を距離「x」だけ移動させる必要がある。
【0062】
図7Cに示された本発明の他の実施態様では、サンプル保持器68とX線検出器72とは(図7Aのそれぞれの位置に)固定状態に保たれ、光学系66へのX線の入射角の所望の変更は、光学系66を光軸74に沿って距離xだけサンプル保持器68の方向、又はこれから離れる方向に平行移動することによって行われる。サンプル保持器68内のサンプルへの適切な集束を保つために、放射源62は軸74に沿った光学系66の平行移動と同じ方向に距離2xだけ平行移動される。この平行移動は「x−2x同調」と呼ばれる。図3のシステム10に関連して記述したように、図7A、図7B、及び図7Cのシステム60の平行移動及び同調は自動式のアクチュエータ及びコントローラによって行ってもよい。
【0063】
図8は、本発明の他の実施態様によるコンパクトなXANES解析システムの概略図である。この実施態様では、集束システム80は同じ直線的関係の、例えば、図5、図7A、図7B及び図7Cに示されているように光軸74と同一線上に位置する放射源62と、光学系66及びサンプル保持器68とを備えている。しかし、本発明のこれまでの実施態様とは異なり、システム80はサンプル保持器68内のサンプルの真上に配置されたX線検出器172を有し、矢印171によって示されているように、サンプルからの蛍光X線を受光する。X線検出器172は図5に示され、これに関連して記述したX線検出器72と同様のものでよい。また、X線検出器172は光軸74上に位置している。また、本発明の他の実施態様では、X線検出器172は軸74から逸れて、しかし、光学系66の内径の内側に配置されている。図8に示されている本発明の実施態様によって、集束システムのサイズ又は全体的な外周容器をさらに縮小する可能性が得られる。本発明によれば、1つ以上の構成部品の平行移動により容易に同調可能で、例えば、実験室規模の解析に使用可能なコンパクトで、低電力のXANES解析システムが備えられる。
【0064】
本発明の様々な実施態様は、XANES解析を実施するための方法及び装置を提供する。本発明による方法及び装置は先行技術のXANESシステムと比較して、特にコンパクトで安価、かつエネルギー消費が少ない。本発明の一実施態様による方法及び装置はこれまで実行可能であった実験室規模の解析、又は現場での解析に最適である。本発明の幾つかの実施態様による方法及び装置は、特に解析、調査、工程管理のために生物科学、医療科学、環境科学、鉱物学、材料科学及び産業上の用途で利用するための化学種の迅速な解析及びオンライン解析も可能になる。
【0065】
本発明を好適な実施形態を参照して特に図示し、説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲から離れることなく、本発明の形態及び細部の様々な変更をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】代表的な端近傍X線吸収スペクトルの概略図である。
【図2】ヨハン型形状を利用した従来技術の結晶光学系の形状を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施態様によるXANES解析システムの概略図である。
【図4】本発明の一実施態様を使用して得た、異なる酸化状態のクロムの3つの代表的な端近傍X線吸収スペクトルの比較図である。
【図5】本発明の他の実施態様によるコンパクトなXANES解析システムの概略図である。
【図6】図5の6−6線の断面図である。
【図7】本発明の一実施態様によるXANES解析システム用の同調の選択肢の概略図である。
【図8】本発明の他の実施態様によるコンパクトなXANES解析システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線吸収端近傍構造解析を実行するためのXANES解析システムであって、
第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射する手段と、
前記サンプルがX線に露光されたとき、前記サンプルによって放射される第2エネルギーを有するX線を検出する手段と、
前記サンプルによって放射される前記X線の前記第2エネルギーがそれに応答して変化するとともに、前記サンプルのX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報が、前記検出されたX線の前記第2エネルギーの変化の一部の解析によって得られるように、前記サンプルに向けて照射された前記X線の前記第1エネルギーを変化させる手段と
を備えていることを特徴とするXANES解析システム。
【請求項2】
前記X線をサンプルに向けて照射する手段は、X線光学系を備えていることを特徴とする請求項1に記載のXANES解析システム。
【請求項3】
前記X線光学系は、同調可能なX線光学系を備え、前記サンプルに向けて照射される前記X線の前記第1エネルギーを変化させる手段は、前記同調可能なX線光学系を同調する手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載のXANES解析システム。
【請求項4】
前記X線光学系の同調は、θ−2θ同調、x−x同調、又はx−2x同調を含んでいることを特徴とする請求項3に記載のXANES解析システム。
【請求項5】
前記同調可能なX線光学系は軸を有し、前記X線光学系を同調することは、前記軸を支点に前記同調可能なX線光学系を回転させる手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載のXANES解析システム。
【請求項6】
前記同調可能なX線光学系は、二重湾曲X線結晶光学系を備えていることを特徴とする請求項3に記載のXANES解析システム。
【請求項7】
前記同調可能な二重湾曲結晶X線光学系によって前記サンプルに向けて照射される前記X線の前記第1エネルギーは、所定の回折エネルギー帯域幅を有することを特徴とする請求項6に記載のXANES解析システム。
【請求項8】
前記所定の回折エネルギー帯域幅は、約10電子ボルト未満の分解能を有することを特徴とする請求項7に記載のXANES解析システム。
【請求項9】
前記X線光学系は、311の回折面を有する二重湾曲X線シリコン結晶光学系を備え、
前記シリコン結晶は、
約220mmの大曲げ直径(2R)、
約90mmの小曲げ半径(r)、
約140mmの焦点距離(f)、
約40°のブラッグ角(θ
を有していることを特徴とする請求項2に記載のXANES解析システム。
【請求項10】
前記二重湾曲シリコン結晶光学系は、約6.0キロ電子ボルトの所定の集束エネルギーを前記サンプルに向けて照射することを特徴とする請求項9に記載のXANES解析システム。
【請求項11】
前記二重湾曲シリコン結晶光学系は、前記サンプル上に約100ミクロン未満の最大寸法を有する焦点を生成することを特徴とする請求項10に記載のXANES解析システム。
【請求項12】
前記X線をサンプルに向けて照射する手段は、消費電力が約50ワット未満のX線放射源を備えていることを特徴とする請求項1に記載のXANES解析システム。
【請求項13】
前記X線をサンプルに向けて照射する手段は、消費電力が約25ワット未満のX線放射源を備えていることを特徴とする請求項12に記載のXANES解析システム。
【請求項14】
前記第1エネルギーと前記第2エネルギーとが変化したとき、前記サンプルに向けて照射される前記X線の前記第1エネルギーの関数として、前記X線を検出する手段によって検出された前記X線の前記第2エネルギーを供給する手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のXANES解析システム。
【請求項15】
前記サンプルは元素を含み、X線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報は、前記元素のX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のXANES解析システム。
【請求項16】
前記元素は、遷移元素であることを特徴とする請求項15に記載のXANES解析システム。
【請求項17】
前記遷移元素は、クロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及びカドミウムのいずれかであることを特徴とする請求項16に記載のXANES解析システム。
【請求項18】
前記第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射する手段は、約90°より大きい方位角を有するX線光学系を備えていることを特徴とする請求項1に記載のXANES解析システム。
【請求項19】
前記X線光学系は、約360°の方位角を有することを特徴とする請求項18に記載のXANES解析システム。
【請求項20】
前記第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射する手段は、X線放射源を備え、前記X線の前記第1エネルギーを変化させる手段は、前記X線光学系の位置に対して前記X線放射源の位置を変化させるための手段を備えていることを特徴とする請求項18に記載のXANES解析システム。
【請求項21】
前記システムは光軸を含み、前記X線光学系の位置に対して前記X線放射源の位置を変化させる手段は、前記X線放射源を前記光軸に沿って平行移動させる手段を備えていることを特徴とする請求項20に記載のXANES解析システム。
【請求項22】
X線吸収端近傍構造解析を実行するためのXANES解析方法であって、
第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射するステップと、
前記サンプルがX線に露光されたとき、前記サンプルによって放射される第2エネルギーを有するX線を検出するステップと、
前記サンプルに向けて照射される前記X線の前記第1エネルギーを変化させ、前記サンプルによって放射される前記X線の前記第2エネルギーがそれに応答して変化するステップと、
前記サンプルのX線吸収スペクトルの端近傍構造に関する情報を提供するために、前記検出されたX線の前記第2エネルギーの変化を解析するステップと
を有することを特徴とするXANES解析方法。
【請求項23】
第1エネルギーを有するX線を向けて照射するステップは、同調可能なX線光学系でX線を回折するステップを有し、前記X線の前記第1エネルギーを変化させるステップは、前記X線光学系を同調するステップを有することを特徴とする請求項22に記載のXANES解析方法。
【請求項24】
前記X線光学系を同調するステップは、θ−2θ同調、x−x同調、又はx−2x同調を含むことを特徴とする請求項23に記載のXANES解析方法。
【請求項25】
前記同調可能なX線光学系は軸を有し、前記X線光学系を同調するステップは、前記軸を支点に前記同調可能なX線光学系を回転させるステップを有することを特徴とする請求項23に記載のXANES解析方法。
【請求項26】
前記第1エネルギーを有するX線をサンプルに向けて照射するステップは、X線放射源を備え、かつX線を回折するためのX線光学系を備えるステップを有し、前記X線の前記第1エネルギーを変化させるステップは、前記X線光学系に対して前記X線放射源の位置を変化させるステップを有することを特徴とする請求項22に記載のXANES解析方法。
【請求項27】
前記X線放射源及び前記X線光学系は光軸を含み、前記X線光学系に対して前記X線放射源の位置を変化させるステップは、前記X線放射源を前記光軸に沿って平行移動させるステップを有することを特徴とする請求項26に記載のXANES解析方法。
【請求項28】
前記X線をサンプルに向けて照射するステップは、消費電力が約50ワット未満のX線放射源を備えるステップを有することを特徴とする請求項22に記載のXANES解析方法。
【請求項29】
前記X線をサンプルに向けて照射するステップは、消費電力が約25ワット未満のX線放射源を備えるステップを有することを特徴とする請求項28に記載のXANES解析方法。
【請求項30】
前記各ステップは、約1時間未満で実行されることを特徴とする請求項22に記載のXANES解析方法。
【請求項31】
前記各ステップが、約30分未満で実行されることを特徴とする請求項30に記載のXANES解析方法。
【請求項32】
X線をサンプルに向けて照射するためのデバイスであって、約90°より大きい方位角を有するX線光学系を備えていることを特徴とするデバイス。
【請求項33】
前記X線光学系の前記方位角は、約120°より大きいことを特徴とする請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
前記X線光学系の前記方位角は、約360°であることを特徴とする請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記X線光学系は、少なくとも1つの2重湾曲結晶光学系を備えていることを特徴とする請求項32に記載のデバイス。
【請求項36】
前記2重湾曲結晶光学系は、複数の2重湾曲光学結晶を備えていることを特徴とする請求項35に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−526789(P2006−526789A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515119(P2006−515119)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/017454
【国際公開番号】WO2004/111624
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500577987)エックス−レイ オプティカル システムズ インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】