説明

X線撮影装置

【課題】表示部に表示されるX線画像の角度を、手術等に適した角度に自動的に変更することが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】制御部60は、第1デジタルコンパス101により測定したC型アームが向く方位、すなわち、イメージインテンシファイアによるX線画像の撮影領域が向く方位と、第2デジタルコンパス102により測定したベットが向く方位、すなわち、患者の体軸方向の方位とを比較する角度比較部61と、この角度比較部61による比較結果に基づいてコリメータ23やカメラ33の回転角度を演算する回転角度演算部62とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線管とX線検出部とを支持するC型アームを備えたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、外科において手術を行うときには、外科用X線装置と呼称されるX線撮影装置が使用されている。このX線撮影装置は、オペレータがC型アームを移動させて、手術中の患部の透視像を撮影するものである。
【0003】
このようなX線撮影装置においては、被検者の体軸とC型アームとがなす角度、すなわち、被検者の体軸とX線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方向とがなす角度が変化すると、表示部に表示される手術中の患部の画像の角度もそれに伴って変化する。患部の画像の角度が手術中の患部の方向と一致しない状態では、医師が患部の画像を確認しにくいことになる。このため、このような場合には、オペレータが医師の指示を受けて操作パネル等を操作することにより、画像を回転させている。
【0004】
なお、特許文献1には、ポジショニングにより回転した表示画像を回転補正するため、テスト透視を行ない、透視画像を画像メモリに記憶し、記憶画像をサブモニタに表示するとともに、画像回転スイッチを操作してサブモニタの表示画像が正像になるように画像回転回路で画像を回転させ、画像回転スイッチによる画像回転角度を回転角度決定回路で検出し、その検出信号をカメラ回転制御回路に入力してモータを制御し、イメージインテンシファイアに回転可能に取り付けられたTVカメラを回転駆動するX線撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−298687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手術の状況によっては、患者に対する医師の手術位置や手術姿勢が変化することから、手術中にC型アームを何度も移動させる必要がある。このため、このC型アームの移動に伴って、上述したマニュアルによる画像の回転操作を頻繁に実行する必要が生じ、その操作は極めて煩雑なものとなる。これは、特許文献1に記載されたように、テスト透視等の作業を実行する場合も同様である。また、画像の回転は、医師の指示により行われるが、医師がオペレータに口頭で角度の指示を行っても、その意思がスムースに伝達されない場合がある。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、表示部に表示されるX線画像の角度を、手術等に適した角度に自動的に変更することが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、X線管と、前記X線管から照射されるX線の照射領域を制限してX線照射野を形成するコリメータと、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、円弧状の形状を有し、前記X線管と前記X線検出部とを支持するC型アームと、前記X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示する表示部と、を備えたX線撮影装置において、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する方位測定器と、前記方位測定器により測定した前記X線画像の撮影領域が向く方位に基づいて、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更する角度変更手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記方位測定器は前記C型アームと連結されており、前記C型アームが向く方位を測定することにより、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記方位測定器は、デジタルコンパスである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線の検出角度と前記コリメータの角度とを変更することにより、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記角度変更手段は、前記表示部に入力される画像情報を画像処理することにより、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、前記被検者の体軸方向の方位を測定する第2の方位測定器をさらに備え、前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する方位測定器により測定した方位と、前記被検者の体軸方向の方位を測定する第2の方位測定器により測定した方位とに基づいて、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する方位測定器により測定した方位と、前記被検者の体軸方向の方位を測定する第2の方位測定器により測定した方位との交差角度だけ、前記表示部に表示するX線画像を回転させる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記第2の方位測定器は前記被検者を載置するベッドと連結されており、前記ベッドが向く方位を測定することにより、前記被検者の体軸方向の方位を測定する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位が最適な角度となるときの方位情報を記憶する記憶手段を備え、前記角度変更手段は、前記記憶手段に記憶した方位情報を利用して、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更する。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位が最適な角度となるときの前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位と、X線撮影時の前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位との交差角度だけ、前記表示部に表示するX線画像を回転させる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、方位測定器により測定した前記X線画像の撮影領域が向く方位に基づいて表示部に表示するX線画像の角度を変更することから、表示部に表示されるX線画像の角度を手術等に適した角度に自動的に変更することが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、C型アームが向く方位を測定することにより、X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を容易に検出することが可能となる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、市販のデジタルコンパスを利用して、X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を容易に測定することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、X線検出部によるX線の検出角度とコリメータの角度とを変更することにより、画像処理を行うことなく表示部に表示するX線画像の角度を変更することが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、表示部に入力される画像情報を画像処理することにより、X線検出部等を移動させることなく表示部に表示するX線画像の角度を変更することが可能となる。
【0023】
請求項6および請求項7に記載の発明によれば、X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する方位測定器により測定した方位と、被検者の体軸方向の方位を測定する第2の方位測定器により測定した方位とに基づいて、X線検出部の配置や被検者の配置にかかわらず、表示部に表示するX線画像の角度を適正な位置に変更することが可能となる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、ベッドが向く方位をもとに、表示部に表示するX線画像の角度を容易に適正な位置に変更することが可能となる。
【0025】
請求項9および請求項10に記載の発明によれば、単一の方位測定器を使用した場合にも、X線検出部の配置や被検者の配置にかかわらず、表示部に表示するX線画像の角度を適正な位置に変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の概要図である。
【図2】コリメータ23の要部をX線管21とともに示す斜視図である。
【図3】患者41に対して手術を行うときに、この発明に係るX線撮影装置により透視を行う様子を示す説明図である。
【図4】患者41に対して手術を行うときに、この発明に係るX線撮影装置により透視を行う様子を示す説明図である。
【図5】表示部17に表示される透視画像を示す概要図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【図8】この発明の第3実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の概要図である。
【0028】
このX線撮影装置は、外科において手術を行うときに透視を実行するためのものであり、車輪12により移動可能な装置本体11を備える。また、このX線撮影装置は、X線管21と、このX線管21から照射されるX線の照射領域を制限してX線照射野を形成するコリメータ23とを有するX線照射部と、X線管21から照射され被検体である患者を通過したX線を検出して映像化するイメージインテンシファイア(I.I.)32と、イメージインテンシファイア32で映像化された画像を撮影するカメラ33からなるX線検出部と、これらのX線照射部とX線検出部を支持するC型アーム13を備える。
【0029】
C型アーム13は、円弧状の形状を有し、X線照射部とX線検出部とを、X線管21からイメージインテンシファイア32に至るX線の軸線が上記円弧の直径と一致する状態で支持している。このC型アーム13は、アーム支持部14に対してスライド可能に支持されている。また、アーム支持部14は、装置本体11に対して水平方向および上下方向に移動可能に支持されている。このC型アームの移動は、オペレータが図示を省略したハンドルを把持して移動させることにより実行される。
【0030】
コリメータ23は、後述するコリメータ回転モータ82の駆動により、C型アーム13に対して、X線管21からイメージインテンシファイア32に至るX線の軸線を中心に回転する。また、カメラ33も、後述するカメラ回転モータ83の駆動により、C型アーム13に対して、X線管21からイメージインテンシファイア32に至るX線の軸線を中心に回転する。
【0031】
また、このX線撮影装置は、X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示するLCD等の表示部17と、収納式のキーボード等から成る入力部16とを備えたモニター部15を備える。このモニター部15は、車輪18の作用により移動可能となっている。
【0032】
さらに、このX線撮影装置におけるC型アーム13を支持するアーム支持部14の上端には、第1デジタルコンパス101が配設されている。この第1デジタルコンパス101は、C型アーム13が向く方位を測定することにより、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定するためのものである。また、後述するように、患者41を載置するベッド19には、第2デジタルコンパス102が配設されている。この第2デジタルコンパス102は、ベッド19が向く方位を測定することにより、患者41の体軸方向の方位を測定するためのものである。これらの第1、第2デジタルコンパス101、102は、電子的なセンサーによって地磁気を検知して方位を測定する方位測定器として機能するものである。
【0033】
図2は、コリメータ23の要部をX線管21とともに示す斜視図である。
【0034】
このコリメータ23は、各々、独立して往復移動可能な4枚のコリメータリーフ24を備える。これらのコリメータリーフ24の位置に基づいて、コリメータ23の開き量が決定され、これらのコリメータリーフ24の作用により、X線管21から患者に照射されるX線の領域である視野Eが規定される。
【0035】
図3および図4は、患者41に対して手術を行うときに、この発明に係るX線撮影装置により透視を行う様子を示す説明図である。この実施形態においては、患者41の膝に対して手術を行う場合を示している。
【0036】
手術に伴って透視を行う場合には、患者41はベッド19上で仰臥位となる。医師42は手術対象の患者41の膝に最も近い位置で手術を行う。ベッド19における医師42とは逆側の位置には、補助者43が配置される。X線撮影装置の装置本体11およびC型アーム13は、医師42および補助者43の邪魔にならない位置に配置される。そして、オペレータ44も、医師42および補助者43の邪魔にならない位置で、X線撮影装置の操作を行う。
【0037】
図3および図4に示すように、手術の状況によっては、患者41に対して医師42と補助者43の位置が逆となり、これに対応してX線撮影装置の配置も逆となる場合がある。このときには、オペレータ44の装置本体11に対する操作位置が逆となる。このため、装置本体11には、一対の操作パネル51、54が配設されており、これら一対の操作パネル51、54は、C型アーム13に対して装置本体11の両側となる位置に配設されている。そして、操作パネル51には一対のメモリーキー52、53が、また、操作パネル54には一対のメモリーキー55、56が配設されている。
【0038】
図5は、表示部17に表示される透視画像を示す概要図である。
【0039】
X線撮影装置が図3または図4に示す状態で配置された場合には、X線透視画像は図5(a)に示すように傾斜している。この状態では、医師42が患部の画像を確認しにくいことから、図5(b)に示すように、画像を回転させることが好ましい。このため、このX線撮影装置においては、後述する第1、第2デジタルコンパス101、102を利用して、画像を回転させるようにしている。なお、図5(a)に示す状態においては、患部以外の領域も表示されているが、不要な領域はX線照視野を調整することにより削除される。このときには、後述するコリメータ回転モータ82の駆動によりコリメータ23全体が回転するとともに、後述するカメラ回転モータ83の駆動によりカメラ33が回転する。また、コリメータ23におけるコリメータリーフ24が移動する。
【0040】
図6は、この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【0041】
このX線撮影装置は、装置全体を制御する制御部60を備える。この制御部60は、第1デジタルコンパス101により測定したC型アーム13が向く方位、すなわち、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と、第2デジタルコンパス102により測定したベッド19が向く方位、すなわち、患者41の体軸方向の方位とを比較する角度比較部61と、この角度比較部61による比較結果に基づいてコリメータ23やカメラ33の回転角度を演算する回転角度演算部62とを備える。
【0042】
また、この制御部60は、インターフェース81を介して、上述したX線管21と、入力部16と、表示部17と、コリメータ23と、カメラ33とに接続されている。また、この制御部60は、インターフェース81を介して、コリメータ23をX線管21からイメージインテンシファイア32に至るX線の軸線を中心にC型アーム13に対して回転させるためのコリメータ回転モータ82と接続されている。また、この制御部60は、インターフェース81を介して、カメラ33をX線管21からイメージインテンシファイア32に至るX線の軸線を中心にC型アーム13に対して回転させるためのカメラ回転モータ83と接続されている。さらに、この制御部60は、インターフェース81を介して、第1、第2デジタルコンパス101、102とも接続されている。なお、制御部60と第2デジタルコンパス102とは、無線通信により接続されている。
【0043】
以上のような構成を有するX線撮影装置を使用して、手術時に透視を行う場合には、第1デジタルコンパス101は、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位を常に測定するとともに、第2デジタルコンパス102が患者41の体軸方向の方位を常に測定している。そして、制御部60における角度比較部61が、第1デジタルコンパス101により測定したイメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と、第2デジタルコンパス102により測定した患者41の体軸方向(ベッドの長手方向)の方位とを比較するとともに、制御部60における回転角度演算部62が、角度比較部61による比較結果に基づいて、X線画像の撮影領域、すなわち、表示部17に表示される画像が、医師42による手術に最適な角度となるようなコリメータ23やカメラ33の回転角度を演算する。
【0044】
ここで、医師42による手術に最適な角度とは、医師42が直接患者41の患部を見たときの患部の方向と、表示部17に表示される画像における患部の方向とが一致するような角度である。例えば、図3に示すように、医師42が患者41の患部である脚部の側方から脚部を横方向に見ながら手術を行う場合には、図5(b)に示すように、表示部17に脚部の画像が横方向に配置される角度、すなわち、ベッド19の長手方向が横方向に配置される角度が最適な角度となる。
【0045】
ここで、例えば、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と第2デジタルコンパス102により測定したベッド19の長手方向の方位とが一致したときに、ベッド19の長手方向が表示部17に横方向に表示される設定となっていた場合においては、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と第2デジタルコンパス102により測定したベッド19の長手方向の方位とに角度差が生じた場合には、その角度だけ画像が傾斜することになる。従って、ベッド19の長手方向を常に表示部17に横方向に表示するためには、この角度だけ画像を回転させる必要がある。このため、制御部60における回転角度演算部62は、第1デジタルコンパス101により測定したイメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と、第2デジタルコンパス102により測定したベッド19の長手方向の方位との交差角度を演算する。
【0046】
この演算結果は、制御部60からインターフェース81を介してコリメータ回転モータ82およびカメラ回転モータ83に送信される。そして、コリメータ回転モータ82の駆動によりコリメータ23全体が回転するとともに、カメラ回転モータ83の駆動によりカメラ33が回転する。このときの回転角度は、上述したように、第1デジタルコンパス101により測定したイメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と、第2デジタルコンパス102により測定したベッド19の長手方向の方位との交差角度に相当する角度となる。これにより、X線画像の撮影領域、すなわち、表示部17に表示される画像が、自動的に、医師42による手術に最適な角度となる。このため、従来のように、C型アーム13の角度を変更するたびに、オペレータが医師の指示を受けて操作パネル等を操作して画像を回転させるという煩雑な作業は不要となる。
【0047】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図7は、この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【0048】
上述した第1実施形態においては、コリメータ23とカメラ33を回転させることにより、X線画像の撮影領域、すなわち、表示部17に表示される画像を回転させている。これに対して、この第2実施形態に係るX線撮影装置においては、制御部60における画像処理部64において、表示部17に入力される画像情報を画像処理することにより、表示部17に表示するX線画像の角度を変更する構成となっている。
【0049】
すなわち、この第2実施形態に係るX線撮影装置においては、角度比較部61が、第1デジタルコンパス101により測定したイメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と、第2デジタルコンパス102により測定した患者41の体軸方向の方位とを比較するとともに、回転角度演算部62が角度比較部61による比較結果に基づいて、表示部17に表示される画像が医師42による手術に最適な角度となるようなコリメータ23やカメラ33の回転角度を演算する。そして、制御部60における画像処理部64が回転角度演算部62による演算結果に基づいて、カメラ33による撮影画像を画像処理により回転させた後に、表示部17に送信する。
【0050】
この第2実施形態に係るX線撮影装置においては、第1実施形態に係るX線撮影装置のコリメータ回転モータ82やカメラ回転モータ83を省略した場合においても、表示部17に表示するX線画像の角度を変更することが可能となる。
【0051】
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。図8は、この発明の第3実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【0052】
上述した第1、第2実施形態に係るX線撮影装置においては、X線画像の撮影領域が向く方位を測定するための第1デジタルコンパス101と、患者41の体軸方向の方位を測定するための第2デジタルコンパス102とを使用しているのに対し、この第3実施形態においては、X線画像の撮影領域が向く方位を測定するための第1デジタルコンパス101のみを使用している。そして、この第3実施形態に係るX線撮影装置の制御部60には、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位が最適な角度となるときの方位情報を記憶する最適角度記憶部63が配設されている。
【0053】
この第3実施形態に係るX線撮影装置においては、透視を実行する前に患者41の患部を透視して、表示部17に表示される画像を手術に最適な角度まで回転させる。そして、このときのイメージインテンシファイア32の方位、すなわち、C型アーム13の方位を、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位が最適な角度となるときの方位情報として、最適角度記憶部63に記憶する。
【0054】
透視を実行するときには、制御部60における回転角度演算部62が、第1デジタルコンパス101により測定したイメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位と、最適角度記憶部63に記憶した方位情報とに基づいて、X線画像の撮影領域、すなわち、表示部17に表示される画像が、医師42による手術に最適な角度となるようなコリメータ23やカメラ33の回転角度を演算する。この演算結果は、第1実施形態の場合と同様、制御部60からインターフェース81を介してコリメータ回転モータ82およびカメラ回転モータ83に送信される。そして、コリメータ回転モータ82の駆動によりコリメータ23全体が回転するとともに、カメラ回転モータ83の駆動によりカメラ33が回転する。このときの回転角度は、予め最適角度記憶部63に方位情報とした記憶したC型アーム13の方位と、現在透視を実行しているときのC型アーム13の方位とがなす角度である。これにより、X線画像の撮影領域、すなわち、表示部17に表示される画像が、自動的に、医師42による手術に最適な角度となる。
【0055】
この第3実施形態においては、X線画像の撮影領域が向く方位が最適な角度となるときの方位情報を最適角度記憶部63に記憶することにより、ベッド19が移動しない限りは、単一のデジタルコンパスのみにより、表示部17に表示される画像を、自動的に、医師42による手術に最適な角度とすることが可能となる。
【0056】
なお、上述した実施形態においては、いずれも、X線を検出して映像化するイメージインテンシファイア32と、イメージインテンシファイア32で映像化された画像を撮影するカメラ33からなるX線検出部を使用しているが、X線検出部としてフラットパネルディテクタを使用してもよい。この場合においては、カメラ33を回転させるかわりに、フラットパネルディテクタ全体を回転させることになる。
【0057】
また、上述した実施形態においては、第1デジタルコンパス101をC型アームに連結するアーム支持部14に付設しているが、第1デジタルコンパス101は、イメージインテンシファイア32によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定し得る位置であれば、その他の位置に配設してもよい。
【0058】
また、複数のベッド19に対して各々第2デジタルコンパス102を配設し、単一のこの発明に係るX線撮影装置により、各ベッドにおいて透視撮影を実行できるようにしてもよく、さらには、第2デジタルコンパス102を、ベッド19に対して着脱自在とすることにより、任意のベッドに対してこの発明に係るX線撮影装置を使用し得るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 装置本体
13 C型アーム
14 アーム支持部
15 モニター部
16 入力部
17 表示部
19 ベッド
21 X線管
23 コリメータ
24 コリメータリーフ
32 イメージインテンシファイア
33 カメラ
41 患者
42 医師
43 補助者
44 オペレータ
60 制御部
61 角度比較部
62 回転角度計算部
63 最適角度記憶部
64 画像処理部
82 コリメータ回転モータ
83 カメラ回転モータ
101 第1デジタルコンパス
102 第2デジタルコンパス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と、前記X線管から照射されるX線の照射領域を制限してX線照射野を形成するコリメータと、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、円弧状の形状を有し、前記X線管と前記X線検出部とを支持するC型アームと、前記X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示する表示部と、を備えたX線撮影装置において、
前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する方位測定器と、
前記方位測定器により測定した前記X線画像の撮影領域が向く方位に基づいて、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更する角度変更手段と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記方位測定器は前記C型アームと連結されており、前記C型アームが向く方位を測定することにより、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定するX線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記方位測定器は、デジタルコンパスであるX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線の検出角度と前記コリメータの角度とを変更することにより、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更するX線撮影装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記角度変更手段は、前記表示部に入力される画像情報を画像処理することにより、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更するX線撮影装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記被検者の体軸方向の方位を測定する第2の方位測定器をさらに備え、
前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する方位測定器により測定した方位と、前記被検者の体軸方向の方位を測定する第2の方位測定器により測定した方位とに基づいて、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更するX線撮影装置。
【請求項7】
請求項6に記載のX線撮影装置において、
前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位を測定する方位測定器により測定した方位と、前記被検者の体軸方向の方位を測定する第2の方位測定器により測定した方位との交差角度だけ、前記表示部に表示するX線画像を回転させるX線撮影装置。
【請求項8】
請求項6に記載のX線撮影装置において、
前記第2の方位測定器は前記被検者を載置するベッドと連結されており、前記ベッドが向く方位を測定することにより、前記被検者の体軸方向の方位を測定するX線撮影装置。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位が最適な角度となるときの方位情報を記憶する記憶手段を備え、
前記角度変更手段は、前記記憶手段に記憶した方位情報を利用して、前記表示部に表示するX線画像の角度を変更するX線撮影装置。
【請求項10】
請求項9に記載のX線撮影装置において、
前記角度変更手段は、前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位が最適な角度となるときの前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位と、X線撮影時の前記X線検出部によるX線画像の撮影領域が向く方位との交差角度だけ、前記表示部に表示するX線画像を回転させるX線撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−17569(P2013−17569A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151635(P2011−151635)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】