説明

X線検出器

【課題】外来電磁ノイズ(N)が真空断熱容器(2)の内部に侵入することを防止する。
【解決手段】真空断熱容器(2)の開口(2a)を着脱可能に塞ぐ蓋板(3)と真空断熱容器(2)の間に挟まって真空断熱容器(2)の内部を気密に封止する真空封止用リング(4)を設けると共に、真空断熱容器(2)と蓋板(3)の間に挟まって外来電磁ノイズが真空断熱容器(2)の内部に侵入するのを防止する外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)を設ける。
【効果】外来電磁ノイズが真空断熱容器(2)の内部に侵入して正常なX線検出が妨げられることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検出器に関し、さらに詳しくは、外来電磁ノイズが真空断熱容器の内部に侵入して正常なX線検出が妨げられることを防止したX線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱容器の内部にX線センサおよび前置増幅器を収容したX線検出器が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
図5は、従来のX線検出器50の構成説明図である。
このX線検出器50は、X線発生源20からX線21を照射された試料Sが発生する蛍光X線Fを検出するX線センサ1aと、X線センサ1aの出力信号を増幅する前置増幅器1bと、X線センサ1aおよび前置増幅器1bを含むX線検出部1を内部に収容する真空断熱容器2と、真空断熱容器2の開口2aを着脱可能に塞ぐ蓋板3と、真空断熱容器2と蓋板3の間に挟まって真空断熱容器2の内部を気密に封止する真空封止用リング4と、X線検出部1を冷却するための液体窒素5および伝熱部材6とを具備してなる。
【0004】
試料Sを置く試料室TおよびX線発生源20を置くX線室Rは、放射線シールドおよび電磁シールドされている。
【0005】
真空断熱容器2および蓋板3は、アルミまたはSUS製である。
真空断熱容器2の窓8は、ベリリウム製である。
真空封止用リング4は、樹脂製Oリングである。
【0006】
図6は、蓋板3およびその周辺部分を示す外観図である。
蓋板3は、真空断熱容器2にネジ止めされている。
【0007】
図7は、蓋板3を透明にした状態での蓋板3の周辺部分を示す外観図である。
真空断熱容器2の開口2aの周囲を真空封止用リング4が取り巻き、気密に封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−186403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の真空封止用リング4に用いられている樹脂製Oリングは、電磁シールド作用を有していないため、電磁波に対しては「開口2aの周長×真空封止用リング4の厚さ」の面積の隙間が開口2aの周りに開いているのと同じであった。このため、図7に示すように、外来電磁ノイズNが開口2aから真空断熱容器2の内部に侵入していた。
しかし、外来電磁ノイズNが真空断熱容器2の内部に侵入すると、正常なX線検出が妨げられる問題点がある。
そこで、本発明の目的は、外来電磁ノイズが真空断熱容器の内部に侵入して正常なX線検出が妨げられることを防止したX線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点では、本発明は、X線センサ(1a)と、前記X線センサ(1a)の出力信号を増幅する前置増幅器(1b)と、前記X線センサ(1a)および前置増幅器(1b)を内部に収容する真空断熱容器(2)と、前記真空断熱容器(2)の開口(2a)を着脱可能に塞ぐ蓋板(3)と、前記真空断熱容器(2)と蓋板(3)の間に挟まって真空断熱容器(2)の内部を気密に封止する真空封止用リング(4)と、前記真空断熱容器(2)と蓋板(3)の間に挟まって外来電磁ノイズ(N)が真空断熱容器(2)の内部に侵入するのを防止する外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)とを具備したことを特徴とするX線検出器(10)を提供する。
上記第1の観点によるX線検出器(10)では、真空断熱容器(2)と蓋板(3)の間に外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)を挟む構成としたため、電磁波に対する隙間が開口(2a)の周りにほとんど開いていない状態となる。このため、外来電磁ノイズ(N)が開口(2a)から真空断熱容器(2)の内部に侵入しなくなる。よって、外来電磁ノイズ(N)が真空断熱容器(2)の内部に侵入して正常なX線検出が妨げられることを防止できる。
【0011】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、スポンジ状物の外周を導電性箔または導電性網で被覆した構造の線材からなることを特徴とするX線検出器(10)を提供する。
上記第2の観点によるX線検出器(10)では、外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)がスポンジ状物の弾性による形状復元性を持つため、保守作業のために蓋板(3)の着脱を繰り返しても、再使用することが出来る。
【0012】
第3の観点では、本発明は、前記第1の観点によるX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、導電性粒子を混入したエラストマーの線材からなることを特徴とするX線検出器(10)を提供する。
上記第3の観点によるX線検出器(10)では、外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)がエラストマーの弾性による形状復元性を持つため、保守作業のために蓋板(3)の着脱を繰り返しても、再使用することが出来る。
【0013】
第4の観点では、本発明は、前記第1の観点によるX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、電線を埋め込んだエラストマーの線材からなることを特徴とするX線検出器(10)を提供する。
上記第4の観点によるX線検出器(10)では、外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)がエラストマーの弾性による形状復元性を持つため、保守作業のために蓋板(3)の着脱を繰り返しても、再使用することが出来る。
【0014】
第5の観点では、本発明は、前記第1の観点によるX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、金属網を筒状にした線材からなることを特徴とするX線検出器(10)を提供する。
上記第5の観点によるX線検出器(10)では、外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)が金属網の筒状構造の弾性による形状復元性を持つため、保守作業のために蓋板(3)の着脱を繰り返しても、再使用することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明のX線検出器によれば、外来電磁ノイズが真空断熱容器の開口から真空断熱容器の内部に侵入しなくなるので、正常なX線検出が妨げられることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1に係るX線検出器を示す構成説明図である。
【図2】外来電磁ノイズ遮蔽用リング用の各種線材を示す斜視図である。
【図3】蓋板およびその周辺部分を示す外観図である。
【図4】蓋板を透明にした状態での蓋板の周辺部分を示す外観図である。
【図5】実施例1に係るX線検出器を示す構成説明図である。
【図6】蓋板およびその周辺部分を示す外観図である。
【図7】蓋板を透明にした状態での蓋板の周辺部分を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0018】
−実施例1−
図1は、実施例1に係るX線検出器10の構成説明図である。
このX線検出器10は、X線発生源20からX線21を照射された試料Sが発生する蛍光X線Fを検出するX線センサ1aと、X線センサ1aの出力信号を増幅する前置増幅器1bと、X線センサ1aおよび前置増幅器1bを含むX線検出部1を内部に収容する真空断熱容器2と、真空断熱容器2の開口2aを着脱可能に塞ぐ蓋板3と、真空断熱容器2と蓋板3の間に挟まって真空断熱容器2の内部を気密に封止する真空封止用リング4と、真空断熱容器2と蓋板3の間に挟まって外来電磁ノイズが真空断熱容器2の内部に侵入するのを防止する外来電磁ノイズ遮蔽用リング7と、X線検出部1を冷却するための液体窒素5および伝熱部材6とを具備してなる。
【0019】
試料Sを置く試料室TおよびX線発生源20を置くX線室Rは、放射線シールドおよび電磁シールドされている。
【0020】
X線センサ1aは、例えばPINダイオードや、シリコンドリフトデテクタや、高純度シリコン検出素子や、シリコンにリチウムをドリフトしたSi(Li)放射線検出素子である。
【0021】
真空断熱容器2および蓋板3は、アルミまたはSUS製である。
真空断熱容器2の窓8は、ベリリウム製である。
真空封止用リング4は、樹脂製Oリングである。
【0022】
図2の(a)に示すように、外来電磁ノイズ遮蔽用リング7は、スポンジ状物71の外周を導電性箔72または導電性網72で被覆した構造の線材をリング状にしたものを用いることが出来る。被覆は、テープ状物を巻き付けてもよい。
また、図2の(b)に示すように、導電性粒子を混入したエラストマーの線材73をリング状にしたものを用いることが出来る。
また、図2の(c)に示すように、外来電磁ノイズ遮蔽用リング7は、電線74を埋め込んだエラストマー75の線材をリング状にしたものを用いることが出来る。
また、図2の(d)に示すように、外来電磁ノイズ遮蔽用リング7は、金属網を筒状にした線材77をリング状にしたものを用いることが出来る。
【0023】
外来電磁ノイズ遮蔽用リング7の選定基準は次の2点である。
(1)蓋板3による最大圧縮時に、外来電磁ノイズ遮蔽用リング7の厚みが、真空封止用リング4の厚みよりも小さくなりうるもの。
(2)圧縮しない時の外来電磁ノイズ遮蔽用リング7の厚みが、蓋板3による最大圧縮時の真空封止用リング4の厚みよりも大きいもの。
【0024】
ただし、上記選定基準を満たさない場合でも、真空断熱容器2の開口2aの周りに設ける真空封止用リング4が嵌る溝の深さと外来電磁ノイズ遮蔽用リング7が嵌る溝の深さの深浅を調整すれば、使用可能である。
【0025】
図3は、蓋板3およびその周辺部分を示す外観図である。
蓋板3は、真空断熱容器2にネジ止めされている。
【0026】
図4は、蓋板3を透明にした状態での蓋板3の周辺部分を示す外観図である。
真空断熱容器2の開口2aの周囲を真空封止用リング4が取り巻き、気密に封止している。また、真空封止用リング4の周囲を外来電磁ノイズ遮蔽用リング7が取り巻き、電磁シールドしている。
開口2aは、例えば直径5cmである。
真空封止用リング4は、例えば線径5mmである。
外来電磁ノイズ遮蔽用リング7は、例えば線径5mmである。
【0027】
実施例1のX線検出器10では、真空断熱容器2と蓋板3の間に外来電磁ノイズ遮蔽用リング7を挟む構成としたため、電磁波に対する隙間が開口2aの周りにほとんど開いていない状態となる。このため、図4に示すように、外来電磁ノイズNが開口2aから真空断熱容器2の内部に侵入しなくなる。よって、外来電磁ノイズNが真空断熱容器2の内部に侵入して正常なX線検出が妨げられることを防止できる。
【0028】
また、外来電磁ノイズ遮蔽用リング7が弾性による形状復元性を持つため、保守作業のために蓋板3の着脱を繰り返しても、外来電磁ノイズ遮蔽用リング7を再使用することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のX線検出器は、例えば蛍光X線分析に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 X線検出部
1a X線センサ
1b 前置増幅器
2 真空断熱容器
3 蓋板
4 真空封止用リング
5 液体窒素
6 伝熱部材
7 外来電磁ノイズ遮蔽用リング
10 X線検出器
20 X線発生源
21 X線
F 蛍光X線
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線センサ(1a)と、前記X線センサ(1a)の出力信号を増幅する前置増幅器(1b)と、前記X線センサ(1a)および前置増幅器(1b)を内部に収容する真空断熱容器(2)と、前記真空断熱容器(2)の開口(2a)を着脱可能に塞ぐ蓋板(3)と、前記真空断熱容器(2)と蓋板(3)の間に挟まって真空断熱容器(2)の内部を気密に封止する真空封止用リング(4)と、前記真空断熱容器(2)と蓋板(3)の間に挟まって外来電磁ノイズ(N)が真空断熱容器(2)の内部に侵入するのを防止する外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)とを具備したことを特徴とするX線検出器(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、スポンジ状物の外周を導電性箔または導電性網で被覆した構造の線材からなることを特徴とするX線検出器(10)。
【請求項3】
請求項1に記載のX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、導電性粒子を混入したエラストマーの線材からなることを特徴とするX線検出器(10)。
【請求項4】
請求項1に記載のX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、電線を埋め込んだエラストマーの線材からなることを特徴とするX線検出器(10)。
【請求項5】
請求項1に記載のX線検出器(10)において、前記外来電磁ノイズ遮蔽用リング(7)は、金属網を筒状にした線材からなることを特徴とするX線検出器(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−149711(P2011−149711A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8828(P2010−8828)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】