説明

X線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラム

【課題】X線検査装置の検査精度を向上することが望まれていた。
【解決手段】X線によって検査対象を検査するにあたり、X線を検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得し、上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得し、上記取得した3次元画像に基づいて良否の特徴が現れる特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて良否判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検査対象品にX線を照射し、得られた透過像を分析することによって当該検査対象品の良否判定等が行われていた(例えば、特許文献1参照。)。この文献においては、X線発生器と検出器とを上下に対向し、その中間に配置した基板上の半田を撮影したX線画像に基づいて検査対象品の透過像を生成し、この透過像に基づいて良否を判定している。
【特許文献1】特開2001−284789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のX線検査装置より、さらに検査精度を向上することが望まれていた。
すなわち、上記従来のX線検査装置においては、検査対象品の2次元透過画像の輝度値を半田の厚みに変換した半田厚み画像によって良否判定を行っていたために実際の半田の形状が再現されず、半田不足のように差異が大きい良否しか判定することができなかった。しかし、BGA(Ball Grid Array)のバンプなどは形状が異なる不良品が多種出現し、高精度に判定を行うためには上記従来の2次元透過画像から変換した半田厚み画像では情報が足りなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、高精度に良否を判定可能なX線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明では、複数の方向から検査対象品を撮影して複数のX線画像を取得し、検査対象品の3次元画像を取得する。また、この3次元画像に基づいて良否の特徴が現れる特徴量を算出して良否を判定する。従って、2次元画像を取得して解析を行う場合と比較して、非常に多くの情報に基づいて解析を行うことができ、さらに、2次元画像では得られない特徴量に基づいて解析を行うことができるために、高精度に良否を判定することができる。
【0005】
X線画像取得手段においては、X線の出力範囲内に検査対象品を配置し、透過したX線を検出器によって撮影したX線画像を取得する。ここで、X線画像を取得するためには、X線源からのX線を検査対象品に対して照射することができればよい。X線検査装置の構造を簡易な構造とし、可動部を少なくして検査の高速化を図るためには、所定の立体角の範囲にX線を出力することができるX線源を採用するのが好ましい。
【0006】
この構成においては、X線の出力範囲に検出面が含まれるようにX線の検出器を配置すればよい。すなわち、照射範囲に制約のあるX線管を使用するのではなく、広い範囲にX線が照射されるX線管を使用することによって、X線画像の撮影に際してX線源の角度変更や移動を伴わずに複数のX線画像を取得可能である。なお、このようなX線源としては、例えば、透過型開放管を採用すればよい。すなわち、透過型開放管においては、薄いターゲットに衝突した電子によってX線が発生し、X線が当該ターゲットを透過して外部に出力される際にほぼ全方位(立体角2π)が出力範囲になる。
【0007】
むろん、ほとんどの場合、検査対象について撮像するための照射範囲として立体角2πは必要なく、少なくとも複数の撮影位置に配設された検出面を含む立体角でX線を照射するX線源を採用すればよい。上述の構成は、複数の撮影位置に配設された検出面によってX線画像を撮影するので、検査対象品を回転させる機構を利用しなくても複数の方向から検査対象品を撮影することができる。すなわち、検査対象品を平面上に配置する構成と複数の位置に配設された検出器との組み合わせによって上記X線画像取得手段を構成することができる。
【0008】
なお、本発明において、複数の位置に配設された検出器によって複数のX線画像を撮影するためには、複数の検出器を備える構成を採用してもよいし、単一あるいは複数の位置に配設された検出器を回転させることによって複数のX線画像を撮影してもよい。検出器としては、2次元的に配置したCCDによってX線の強度を計測するセンサ等を採用可能である。また、上記透過型開放管を利用した構成であればX線検査装置の構造を簡易な構造にすることができるが、むろん、3次元画像を取得するための構成は以上の構成に限定されない。例えば、x−y平面に垂直なz方向に移動可能なステージやx軸,y軸,z軸を中心に回転可能なステージによって、検出器を固定しながら複数の方向から検査対象品を撮影してもよい。
【0009】
3次元画像取得手段においては、複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行することができればよく、例えば、フィルタ補正逆投影法などを採用可能である。良否判定手段においては、3次元画像に基づいて特徴量を算出して良否判定を行うことができればよい。従って、特徴量は検査対象品が良品であることの特徴あるいは不良品であることの特徴が現れる量であればよい。
【0010】
良品であることの特徴が現れる特徴量を算出すれば、算出された特徴量が良品での特徴量に近いか否かによって良品であるか否かを判別することができ、不良品であることの特徴が現れる特徴量を算出すれば、算出された特徴量が不良での特徴量に近いか否かによって不良品であるか否かを判別することができる。
【0011】
従って、この良否判定においては、請求項2のように、良品あるいは不良品を基準の検査対象品とし、当該基準の検査対象品における特徴量と実測した3次元画像に基づく特徴量とを比較することによって良否判定を行ってもよい。むろん、基準の検査対象品における特徴量を算出することなく、良品あるいは不良品である場合の特徴量が決定できるのであれば、基準の検査対象品における特徴量と実測した3次元画像における特徴量とを比較することなく、実測した3次元画像における特徴量に基づいて良否判定を行えばよい。
【0012】
特徴量としては、種々の量を採用可能であり、例えば、検査対象品の物理的形状を示す量を特徴量とすることができる。その一例として、請求項3のように、接合位置における断面積に関する情報(接合面積情報)を特徴量として良否判定を行う構成を採用可能である。すなわち、良品の検査対象品の断面積と不良品の検査対象品の断面積で顕著に差が生じる場合は、当該断面積に基づいて良否を判定することが可能である。なお、上記接合位置としては、良否の特徴が断面積に現れやすい基板側の所定位置とすればよい。また、断面積に関する情報としては断面積と等価な接合位置の大きさに係る特徴量であればよく、所定の位置における半径や直径をもって表現することもできれば、対象エリアに含まれる画素数や対象エリアを形成する外周距離によって代用することもできる。
【0013】
より具体的には、検査対象品がバンプの場合であって一定量の半田を含む半導体チップ側のボール状のバンプと基板側に形成されたパッドに印刷されたクリーム半田とを接続する場合、バンプが適正に溶融し、その後適正に接続された良品であれば、半田の表面張力によって所定位置の断面積は略一定の大きさになる。一方、バンプとクリーム半田とが適正に溶融せず、または適正に接続されない不良品であれば、当該接合位置の断面積は上記良品の断面積と異なる値になる。従って、断面積に関する情報に基づいて良否を判定することが可能である。
【0014】
さらに、請求項4のように、所定位置における断面の歪みを特徴量として良否判定を行ってもよい。すなわち、良品の検査対象と不良品の検査対象とで断面の歪みに顕著な差が生じる場合は、当該断面の歪みに基づいて良否を判定することが可能である。なお、上記所定位置としては、良否の特徴が断面の歪みとして現れやすい位置とすればよい。ここで、断面の歪みは断面の形状が円形と異なる形状であるほど歪みの程度が大きいとすることができ、種々の定義が可能である。例えば、断面上に2つの径を定義し、この径の比によって歪みを定義してもよいし、断面内に内接する円を考え、その円より外側に存在する画素の数によって歪みを定義してもよく、他にも種々の定義が可能である。
【0015】
より具体的には、検査対象品がバンプの場合であって一定量の半田を含む半導体チップ側のバンプとパッドに印刷されたクリーム半田とを接続する場合、バンプが適正に溶融し、その後適正に接続された良品であれば、半田の表面張力によって断面は円に近くなる。一方、バンプが適正に溶融せず、または適正に接続されない不良品であれば、未溶融のバンプ形状の影響を受けて断面は円と異なる形状になる。従って、断面の歪みに基づいて良否を判定することが可能である。
【0016】
さらに、請求項5のように、複数の位置における断面積の比を特徴量として良否判定を行ってもよい。すなわち、良品の検査対象と不良品の検査対象とで断面積の変化に顕著な差が生じる場合は、当該断面積の比に基づいて良否を判定することが可能である。なお、上記複数の位置としては、良否の特徴が断面積の変化として現れやすい位置とすればよい。
【0017】
より具体的には、検査対象品がバンプの場合であって一定量の半田を含むバンプとパッドに印刷されたクリーム半田とを接続する場合、バンプが適正に溶融し、その後適正に接続された良品であれば、半田の表面張力によって断面積の変化は緩やかになる。一方、バンプが適正に溶融せず、または適正に接続されない不良品であれば、未溶融のバンプ形状の影響を受けて断面積の変化は急激になる。従って、断面積の変化に基づいて良否を判定することが可能である。
【0018】
さらに、請求項6のように、重心を特徴量として良否判定を行ってもよい。すなわち、良品の検査対象と不良品の検査対象とで形状に顕著な差が生じる場合はその重心に顕著な差が生じており、当該重心に基づいて良否を判定することが可能である。ここで、重心は、3次元画像から算出される位置毎の量を位置によって重み付けして加え合わせることで算出すればよく、位置毎の量としては、断面積や体積等、種々の量を採用可能である。
【0019】
より具体的には、検査対象品がバンプの場合であって一定量の半田を含むバンプとパッドに印刷されたクリーム半田とを接続する場合、バンプが適正に溶融し、その後適正に接続された良品であれば、半田の表面張力によって接続後のバンプは位置毎の歪みを低減するように広がり、バンプの中央付近に重心が存在するはずである。一方、バンプが適正に溶融せず、または適正に接続されない不良品であれば、良品よりバンプの広がりの程度が小さくなり、重心の位置が偏ることになる。従って、重心に基づいて良否を判定することが可能である。
【0020】
さらに、請求項7のように、外形の変化を特徴量として良否判定を行ってもよい。すなわち、良品の検査対象と不良品の検査対象とで外形の変化に顕著な差が生じる場合は、当該外形の変化に基づいて良否を判定することが可能である。ここで、外形の変化としては、3次元画像から得られる検査対象品の表面の形状に関する変化であればよく、例えば、断面積の変化が検査対象品の括れなど外形の変化を表していると考えることができるし、検査対象品の曲率の変化を外形の変化としてもよく種々の外形の変化を特徴量として採用可能である。
【0021】
より具体的には、検査対象品がバンプの場合であって一定量の半田を含むバンプとパッドに印刷されたクリーム半田とを接続する場合、バンプが適正に溶融し、その後適正に接続された良品であれば、半田の表面張力によって接続後のバンプに括れは生じない。一方、バンプが適正に溶融せず、または適正に接続されない不良品であれば、括れが生じる。従って、断面積を位置毎に算出し、その微分値や変曲点の有無、数、極小値の有無や、表面の曲率等を算出すれば、上記括れを反映した外形の変化を抽出することができ、良否を判定することが可能である。
【0022】
さらに、請求項8のように、断面の対称性を特徴量として良否判定を行ってもよい。すなわち、良品の検査対象と不良品の検査対象とで断面の対称性に顕著な差が生じる場合は、当該断面の対称性に基づいて良否を判定することが可能である。ここで、断面の対称性としては、断面に垂直な軸に対する回転対称性であればよく、例えば、断面の面積重心を中心とし、重心からバンプの輪郭までの距離を複数の回転角について比較する指標を特徴量として採用可能である。
【0023】
より具体的には、検査対象品がバンプの場合であって一定量の半田を含むバンプとパッドに印刷されたクリーム半田とを接続する場合、バンプが適正に溶融し、その後適正に接続された良品であれば、半田の表面張力によってバンプの断面の対称性は高くなる。一方、バンプが適正に溶融せず、または適正に接続されない不良品であれば、バンプの対称性は低くなる。従って、断面の対称性を算出すれば、良否を判定することが可能である。
【0024】
なお、本発明において上記特徴量の算出に利用する画像は3次元画像である。従って、2次元画像と比較して非常に高い精度で検査対象品の断面積に基づく良否判定を実施可能である。すなわち、2次元画像においては検査対象品の厚さをある方向に積算した情報しか得られず、2次元画像の積算した輝度情報から変換した半田厚み画像では検査対象品の所定位置に括れなどの形状の変化が生じている場合であってもその形状の変化を再現することはできない。しかし、3次元再構成画像であれば、バンプの実際の形状を再現し位置の形状を把握することができるので、不良であることに起因して生じる形状の変化に基づいてより正確に良否判定を行うことが可能である。
【0025】
さらに、請求項9のように、接合位置の大きさに係る特徴量と表面張力によって生じる形状の均一性に係る特徴量の複数の特徴量に基づいて良否判定を行う構成を採用可能である。すなわち、一般に、バンプ接続の良否の現す特徴量は2種類に大別される。第1の特徴量は基板側のクリーム半田とバンプとの接合部に現れる特徴量で、接合位置における半田の接合面積が十分あれば、必要な接合強度があると考えられる。第2は表面張力により生じる形状の均一性に係る特徴量である。すなわち、バンプとパッドに印刷されたクリーム半田が適正に溶融し、その後適正に接続された良品であれば、バンプの表面積は表面張力により最小となる性質を持つ。検査対象品が不良品となる原因は様々であり、ある特徴量に基づいて良品と判定された場合であっても他の特徴量に基づいて判定を行ったときに不良品となることもある。従って、上記の2種類の特徴量を含む複数の特徴量に基づいて良否判定を行うことによって確実に検査対象品の良否判定を行うことが可能である。
【0026】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法においても本発明を適用可能である。その一例として、請求項10にかかる発明は、請求項1に対応した方法を実現する構成としてある。むろん、その実質的な動作については上述した装置の場合と同様である。また、請求項2〜請求項9に対応した方法も構成可能である。以上のようなX線検査装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
【0027】
発明の思想の具現化例として上記方法を制御するためのソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアあるいはソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用される。その一例として、請求項11にかかる発明は、請求項1に対応した機能をソフトウェアで実現する構成としてある。むろん、請求項2〜請求項9に対応したソフトウェアも構成可能である。
【0028】
また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)X線検査処理:
(2−1)良否判定処理:
(3)他の実施形態:
【0030】
(1)本発明の構成:
図1は本発明にかかるX線検査装置10の概略ブロック図である。同図において、このX線検査装置10は、X線発生器11とX−Yステージ12とX線検出器13aと搬送装置14とを備えており、各部をCPU25によって制御する。すなわち、X線検査装置10はCPU25を含む制御系としてX線制御機構21とステージ制御機構22と画像取得機構23と搬送機構24とCPU25と入力部26と出力部27とメモリ28とを備えている。この構成において、CPU25は、メモリ28に記録された図示しないプログラムを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
【0031】
メモリ28はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、予め検査位置データ28aと撮像条件データ28bとが記録されている。検査位置データ28aは、検査対象品の位置を示すデータであり、本実施形態においては、基板上に配設された検査対象のバンプをX線検出器13aの視野に配設するためのデータである。すなわち、本実施形態においては、基板上に規則的に並べられたバンプを検査対象品としている。撮像条件データ28bは、X線発生器11にてX線を発生させる際の条件を示すデータであり、X線管に対する印加電圧,撮像時間等を含む。
【0032】
また、メモリ28には、CPU25の処理過程で生成される各種データを記憶することが可能である。例えば、上記X線検出器13aによって取得したX線画像を示すX線画像データ28cや、当該X線画像データ28cに基づいて再構成演算を行った3次元画像データ28dを記憶することができる。なお、メモリ28はデータを蓄積可能であればよく、RAMやHDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
【0033】
X線制御機構21は、上記撮像条件データ28bを参照し、X線発生器11を制御して所定のX線を発生させることができる。X線発生器11は、いわゆる透過型開放管であり、X線の出力位置である焦点Fからほぼ全方位、すなわち、立体角2πの範囲にX線を出力する。
【0034】
ステージ制御機構22はX−Yステージ12と接続されており、上記検査位置データ28aに基づいて同X−Yステージ12を制御する。また、搬送機構24は、搬送装置14を制御して基板12aをX−Yステージ12に搬送する。すなわち、搬送装置14によって一方向に基板12aを搬送し、X−Yステージ12において基板12a上のバンプを検査し、搬送装置14にて検査後の基板12aを搬送する処理を連続的に実施できるように構成されている。
【0035】
本実施形態において、検査対象品はバンプであり、バンプが配設された基板をX−Yステージ12上に載置して良否判定を行う。なお、上述のように検査位置データ28aは検査対象のバンプをX線検出器13aの視野に配設するためのデータであり、ステージ制御機構22は、バンプの検査に際してバンプがX線検出器13aの視野に含まれるようにX−Yステージ12を制御する。
【0036】
画像取得機構23はX線検出器13aに接続されており、同X線検出器13aが出力する検出値によって検査対象品のX線画像を取得する。取得したX線画像は、X線画像データ28cとしてメモリ28に記憶される。本実施形態におけるX線検出器13aは、2次元的に分布したセンサを備えており、検出したX線からX線の2次元分布を示すX線画像データを生成することができる。
【0037】
X線検出器13aはアームを介して回転機構13bに接続されており、X線検出器13aは、X線発生器11の焦点Fから鉛直上方に延ばした軸Aを中心に半径Rの円周上を回転可能である。この回転機構13bは、画像取得機構23のθ制御部23aによって制御される。また、X線発生器11の焦点FからX線検出器13aにおける検出面の中心に対して延ばした直線と、当該検出面とが直交するように検出面が配向されている。
【0038】
出力部27は上記X線画像等を表示するディスプレイであり、入力部26は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。すなわち、利用者は入力部26を介して種々の入力を実行可能であるし、CPU25の処理によって得られる種々の演算結果やX線画像データ、検査対象品の良否判定結果等を出力部27に表示することができる。
【0039】
CPU25は、メモリ28に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、検査対象品の検査を行うために、図1に示す搬送制御部25aとX線制御部25bとステージ制御部25cと画像取得部25dと良否判定部25eとにおける演算を実行する。搬送制御部25aは、搬送機構24を制御して、適切なタイミングで基板12aをX−Yステージ12に供給し、また、適切なタイミングで搬送装置14を駆動して検査済みの基板12aをX−Yステージ12から取り除く。
【0040】
X線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、上記X線制御機構21を制御して所定のX線をX線発生器11から出力させる。ステージ制御部25cは、上記検査位置データ28aを取得し、バンプを逐次X線検出器13aの視野内に配置するための座標値を算出し、ステージ制御機構22に供給する。この結果、ステージ制御機構22は、この座標値がX線検出器13aのいずれかの視野に含まれるようにX−Yステージ12を移動させる。
【0041】
画像取得部25dは、画像取得機構23のθ制御部23aに指示を行い、X線検出器13aを回転させる。また、画像取得機構23が取得するX線画像データ28cをメモリ28に記録する。上記X線画像データ28cは、複数の角度によってバンプを撮影して得られるデータである。なお、画像取得部25dにおいては、上記複数の角度のピッチを適宜調整可能であり、高精度の良否判定に十分な撮影回数となるようにピッチを狭くしてもよいし、代表的な複数の角度で撮影し、間の角度におけるX線画像は補間で取得してもよい。良否判定部25eは、当該X線画像データ28cに基づいて所定の演算処理を行い、検査対象品が良品であるか、不良品であるかを判定する。
【0042】
(2)X線検査処理:
本実施形態においては、上述の構成において図2に示すフローチャートに従って検査対象品の良否判定を行う。本実施形態においては、多数の基板12aを搬送装置14によって搬送し、逐次X−Yステージ12上で基板12a上のバンプを検査する。このため、検査に際しては、まずステップS100にて搬送制御部25aが搬送機構24に指示を出し、搬送装置14によって検査対象の基板12aをX−Yステージ12上に搬送する。
【0043】
次に、検査対象となるバンプをX線検出器13aの視野内に移動させてX線画像を取得するため、変数nを"0"に初期化する(ステップS105)。続いて、画像取得部25dはθ制御部23aに指示を行い、回転機構13bを駆動して予め決められた回転位置にX線検出器13aを移動させる(ステップS110)。本実施形態においては、回転角θをθ=(n/N)×360°と定義しており、θ=0°におけるX線検出器13aの配置は予め決めてある。
【0044】
また、上記変数nは最大値をNとする整数である。従って、X線検出器13aは360°/Nずつ回転することになる。N+1は、X線画像を撮影する回転位置の数であり、要求される検査速度と検査精度および検査対象品の外形(軸対称性)から決定すればよい。例えば、バンプのように軸対称の外形を有する検査対象品については、N=3程度(90°ピッチ、4カ所で撮影)でも充分であり、N=3程度にすることによって検査を非常に高速に実施可能である。
【0045】
X線検出器13aの回転動作を行うと、当該回転後の検出器の視野内に検査対象であるバンプが含まれるようにX−Yステージ12を移動させる(ステップS115)。このとき、ステージ制御部25cは上記検査位置データ28aを参照し、座標(xi,yi)がX線検出器13aの視野中心となるようにステージ制御機構22に指示する。この結果、ステージ制御機構22はX−Yステージ12を移動させ、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野中心に配置する。
【0046】
すなわち、座標(xi,yi)は、バンプをX線検出器13aの視野内に移動させるために予め基板12a上に設定された座標であり、X線検出器13aが上記回転角θに配設されているときの視野中心は、X線検出器13aとX線発生器11の焦点Fとの相対関係から取得することができる。そこで、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野内に移動させることで、バンプの透過像がX線検出器13aで取得されるように基板12aの位置を制御することができる。
【0047】
図3,図4は、この例を説明するための図であり、座標系およびX線検出器13a、X線発生器11の位置関係を示す図である。これらの図においては、X−Yステージ12による移動平面をx−y平面とし、この平面に垂直な方向をz方向としている。図3は、z−x平面を眺めた図であり、図4はx−y平面を眺めた図である。
【0048】
図3に示すように、X線検出器13aの検出面は、その中心と焦点Fとを結ぶ直線lに対して垂直になるように配向されている。すなわち、軸Aに対して傾斜され、x−y平面と検出面とに対して所定の角度(傾斜角)αが与えられている。上記直線lは、X線検出器13aの視野中心に相当するので、X線検出器13aの回転角θから図4に示すように視野領域FOVを特定することができる。
【0049】
すなわち、上記直線lと上記x−y平面との交点を含む所定の領域がX線検出器13aの視野領域FOVとなるので、図4に示す例のように変数nが0〜3であることを想定すれば、図4に破線の矩形で示すように、視野領域FOVを特定することができる。そこで、上記ステージ制御機構22は図4の各矩形における中心と座標(xi,yi)とが一致するように、X−Yステージ12を移動させることになる。
【0050】
なお、図4においては、中心Oから−y方向に延ばした直線をθ=0とし、時計回りの回転角がθであり、θ=0°,90°,180°,270°の視野領域をそれぞれFOV1〜FOV4としている。むろん、ステップS115においては、X線検出器13aの視野内に検査対象となるバンプを配設することができる限りにおいて種々の制御手法を採用可能である。
【0051】
ステップS115にて、座標(xi,yi)をX線検出器13aの視野中心に配置したら、X線制御部25bおよび画像取得部25dの制御により、X線検出器13aにて回転角θのX線画像Pθnを撮影する(ステップS120)。すなわち、X線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、当該撮像条件データ28bに示される条件でX線を出力するようにX線制御機構21に対して指示を行う。この結果、X線発生器11が立体角2πの範囲でX線を出力するので、画像取得部25dはX線検出器13aが検出したX線画像を取得する。
【0052】
ステップS120にて回転角θのX線画像Pθnを撮影すると、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS125)、最大値Nに達していると判別されなければ変数nをインクリメントして(ステップS130)、ステップS110以降の処理を繰り返す。ステップS125にて変数nが最大値Nに達していると判別されたときには必要な回数の撮影が終了しているので、良否判定部25eは良否判定に使用する画像データを生成する。すなわち、X線画像Pθ0〜PθNを用いて3次元画像の再構成演算を行い(ステップS135)、3次元画像データ28dとしてメモリ28に記録する。
【0053】
再構成演算は、バンプの3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においては、まず、X線画像Pθ0〜PθNのいずれかに対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。なお、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
【0054】
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、X線検出器13aの検出面におけるある位置の像に対応する軌跡は、X線発生器11の焦点Fとこの位置とを結ぶ直線であるので、この直線上に上記画像を逆投影する。以上の逆投影をX線画像Pθ0〜PθNの全てについて行うと、3次元空間上でバンプが存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、バンプの3次元形状を示す3次元画像データ28dが得られる。そこで、良否判定部25eは、3次元画像データ28dを参照し、良否判定を行う(ステップS140)。
【0055】
(2−1)良否判定処理:
次に、上記ステップS140における良否判定処理の詳細な例を説明する。図5は、当該良否判定処理のフローチャートを示している。本実施形態においては、3次元画像データ28dから良否の特徴が現れる特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて良否判定を行っており、まず、特徴量を算出するためにバンプの接合位置における断面積S(i)を算出する(ステップS200)。
【0056】
図6は、特徴量の算出を説明するための説明図であり、同図6の上部左側には、良品のバンプ、上部右側には不良品のバンプの3次元構造を模式的に示している。すなわち、BGAのバンプは当該バンプと基板側に形成されたパッドに印刷されたクリーム半田とを接続するためにBGA側に予め形成されており、溶融前はボール状である。
【0057】
半田が適正に溶融されたときには、半導体チップ側の端子と基板側の端子との間に半田が表面張力で広がり、適正に固化した後には図6の上部左側に示すように樽型の3次元構造となる。すなわち、良品の典型な3次元構造は同図に示す樽型である。一方、図6の上部右側には典型的な不良品の3次元構造を示している。この例においては、ボールおよびクリーム半田が適正に溶融せず、基板側のクリーム半田と一体化しなかった場合について示しており、ボール状のバンプとクリーム半田とが未溶融の形状をほぼ保ちながら上下に分離している。
【0058】
本実施形態においては、上記z方向に平行な方向に座標軸iを設定し、基板の上面をi=0に設定した座標系を定義し、この座標系で上述の断面積S(i)を取得する。すなわち、断面積S(i)は、上記3次元画像データ28dに基づいて取得される実際の形状を示すバンプの像をx−y平面に平行な面で切断したときの断面積であり、任意の位置iについて取得することができる。そこで、ステップS200では、所定のピッチ毎にS(i)を取得する。
【0059】
断面積S(i)を取得したら、予め決められた位置i1の断面積S(i1)と予め決められた閾値Th1とを比較し、断面積S(i1)が閾値Th1より小さいか否かを判別する(ステップS205)。ここで、閾値Th1は、良品の断面積S0(i1)に基づいて決定されている。すなわち、典型的な良品について得られる典型的な断面積S0(i1)は、図6の上部右側に示す不良バンプの断面積より大きいので、閾値Th1を断面積S0(i1)とほぼ同値あるいは所定のマージンを設けて断面積S0(i1)より小さな値と定義する。
【0060】
この結果、断面積S(i1)が閾値Th1より小さいか否かを判別することで、位置i1の断面積が典型的な不良品であるか否かを判別することができる。そこで、断面積S(i1)が閾値Th1より小さい場合に不良であるとし、ステップS260において不良判定を行う。すなわち、ステップS205においては、断面積S(i1)を特徴量として良否判定を行っていることになる。
【0061】
次に、本実施形態においては、予め決められた位置i1の断面における2つの径D1,D2の比D1/D2を算出し(ステップS210)、この比が予め決められた閾値Thより大きいか否かを判別する(ステップS215)。ここで、閾値Thは、良品の断面における径の比に基づいて決定されている。すなわち、図7の上部左側に示す典型的な良品について得られる典型的な断面S0は図7の下部左側に示すように略円形であり、径の比は略1である。そこで、1に対して所定のマージンを設けて閾値Thを定義すれば、上記比D1/D2が当該閾値Thより大きい場合に不良品であると判別することができ、この場合にはステップS225において不良判定を行う。
【0062】
より具体的には、図7の上部右側に示す典型的な不良品(バンプとクリーム半田が一部で接続しているが接続が不十分である状態)において、図7の下部右側に示すように所定の位置i1の断面Sは歪んでいる。従って、この断面Sにおいて略最大の径と略最小の径を上記2つの径D1,D2とすれば、両者の比は1より大きくなる。従って、2つの径の比D1/D2に基づいて上述のように不良であるか否かを判別することができる。
【0063】
なお、断面Sにおいて略最大の径D1と略最小の径D2を算出する手法は特に限定されず、例えば、3次元画像の水平断面を2値化し、バンプの輪郭を算出するとともに、任意の輪郭画素から他の輪郭画素への距離を算出し、最大の距離となる線分を略最大の径D1とすることができる。また、上記2値化した画像においてバンプの重心G(全ての輪郭画素との距離の和が最小になる点)を通る直線と輪郭とが交わる2つの点同士の距離が最小となる線分を略最小の径D2とすることができる。
【0064】
むろん、上述の例以外にも種々の手法を用いて略最大の径D1と略最小の径D2を算出することができる。例えば、上述のようにして算出した断面S上の重心Gの通る直線と輪郭とが交わる2つの点同士の距離が最大の線分を略最大の径D1としてもよい。いずれにしても、ここでは径の比に基づいて歪みを評価することができればよく、差分を含むところの最大と最小の径の比によって断面の歪みを評価することができる限りにおいて、種々の手法で径を算出可能である。なお、上記ステップS215においては、2つの径D1,D2の比D1/D2を特徴量として良否判定を行っていることになる。
【0065】
次に図5のステップS215に続いて、予め決められた位置i1の断面積S(i1)と位置i2の断面積S(i2)との比S(i2)/S(i1)を算出し、この比が予め決められた閾値Thより大きいか否かを判別する(ステップS220)。ここで、閾値Thは、良品の断面積S0(i1)およびS0(i2)に基づいて決定されている。すなわち、典型的な良品について得られる典型的な断面積の比S0(i2)/S0(i1)はほぼ一定の値になり、図6の上部右側に示す不良バンプにおける断面積の比S(i2)/S(i1)より小さい。
【0066】
より具体的には、図6の上部右側に示す不良バンプにおいてはボール状のバンプ形状が維持されているので、その中央部に近い位置i2より周縁に近い位置i1の方が断面積が小さい。従って、不良品における断面積の比S(i2)/S(i1)は良品における断面積の比S0(i2)/S0(i1)より大きく、閾値Thを断面積の比S0(i2)/S0(i1)とほぼ同値あるいは所定のマージンを設けて比S0(i2)/S0(i1)より大きな値と定義する。
【0067】
この結果、断面積の比S(i2)/S(i1)が閾値Thより大きいか否かを判別することで、バンプが典型的な不良品であるか否かを判別することができる。そこで、断面積の比S(i2)/S(i1)が閾値Thより大きい場合に不良であるとし、ステップS225において不良判定を行う。一方、上記断面積の比S(i2)/S(i1)が閾値Thより小さい場合に良品と判別することができ、ステップS230において良判定を行う。
すなわち、ステップS220においては、断面積の比S(i2)/S(i1)を特徴量として良否判定を行っていることになる。ただし、断面積の比は断面積の差によって表現しても同義であり、断面積の比を示す情報に含まれる。また、断面積は上記の2つの位置ではなく、上中下のように複数の位置の断面積を比較することも可能である。
なお、ステップS225における不良判定とステップS230における良判定は、上記出力部27に対してその判定結果を出力し、上記図2に示すフローに復帰する。むろん、ここでは、各種の表示法を採用することが可能であるし、不良品が発生しているときにステップS100に復帰することなく処理を中断してもよく、種々の処理を行うことができる。
【0068】
以上により、基板側の接合位置に閾値以上の大きさの接合面(断面積)を有し、その形状に歪が無く略円形で、上下方向の断面が均一であることを確認することにより、バンプの形状が図6左側の樽型に近似な形状と判定することができる。
ただし、バンプの形状が樽型であることを確定するためには、次に説明する処理を採用しても良い。
【0069】
はじめに、上記の断面積の比S(i2)/S(i1)を求めるステップS220の判定方法に代えて重心によって樽型であることを判定してもよい。そこで、この場合には図6に示す断面積の重心Gsを算出し、この重心Gsが予め決められた閾値Thと閾値Thとの間に存在するか否かを判別すればよい。ここで、重心Gsは断面積S(i)と位置iとの積に基づいて算出され、本実施形態においてはこの積を規格化している。すなわち、Gs=Σ(S(i)・i)/ΣS(i)として重心Gsを定義している。このとき、典型的な良品の重心Gs0の位置が含まれる範囲はほぼ一定の範囲となるので、その範囲を閾値Th〜Thとする。
【0070】
一方、図6の上部右側に示す不良バンプにおいては、バンプの溶融が不適切であり半田は上下に広がらないので、図に示す例では重心Gsの位置が上方にずれる。従って、不良品における重心の位置は閾値Th〜Thで示される範囲に含まれない。そこで、重心Gsが閾値Th〜Thで示される範囲に含まれないときには不良であるとする。
なお、上記の断面積の比S(i2)/S(i1)を求めるステップS220に上記の断面積の重心Gsを算出する方法を追加して精度を向上させることも勿論可能である。
【0071】
また、樽型の形状をより高精度に判定するために、以下の処理を併用するようにしてもよい。
(A)基板側のバンプにおける変曲点の存在を判定
図6において、断面積S(i)について、独立変数をiとして2次微分値T(i)を算出する。そして、基板の上面(i=0)から半導体チップの下面(iの最大値imax)までに変曲点が存在するか否か(2次微分値T(i)=0のiが存在するか否か)を判別し、変曲点が存在すると判別されたときには不良判定を行う。
【0072】
図8は、変曲点の存在に基づく良否判定の説明図である。同図8において、横軸は位置i、縦軸は断面積であり、左側に良品における断面積S0(i)、右側に不良品における断面積S(i)を示している。図6の上部左側に示すように、典型的な良品は樽型であるので、その断面積S0(i)の位置に対する変化はなめらかであり、図8の左側に示すように、断面積S0(i)に変曲点は存在しない。一方、図6の上部右側に示す例ではバンプの下部にクリーム半田が存在し、ある位置より上にボール状のバンプが存在する。
【0073】
従って、ある位置に括れが存在し、図8の右側に示すように断面積S(i)は極小および極大をもち、これらの間に少なくとも一つ変曲点ipが存在する。そこで、断面積S(i)に変曲点が存在するときに不良であるとし、不良判定を行う。すなわち、変曲点を特徴量とし、バンプの外形に基づいて良否判定を行っていることになる。
【0074】
(B)基板側のバンプにおける曲率を判定
バンプ表面の曲率Cを算出し、この曲率Cが予め決められた閾値Th6より大きいか否かを判別する。ここで、閾値Th6は、良品のバンプにおける表面の曲率に基づいて決定されている。すなわち、上述のように良品のバンプの外形は樽型であり表面の変化が小さいので、曲率は小さい。そこで、当該良品における曲率に対して所定のマージンを設けて閾値Th6を定義すれば、上記曲率Cが当該閾値Th6より大きい場合に不良品であると判別することができ、この場合に不良判定を行う。
【0075】
図9は、当該曲率Cに基づく良否判定を説明するための図である。同図9に示すグラフは、横軸が位置i、縦軸がバンプの中心軸からバンプの表面までの距離R(i)であり、ある垂直断面内で中心軸と距離R(i)とが定義される。上述のように、良品のバンプの外形は樽型であって、上記距離R0(i)の変化はなめらかであるとともに変化度合いは小さい。この距離R0(i)についての曲率C0は、例えば、ある注目位置inとその前後の位置in-1,in+1とにおけるグラフ上の点(R0(in),R0(in-1),R0(in+1))を結ぶ2つの直線を定義し、当該2つの直線によって形成される微小角dθ0および注目位置inと一方の位置(例えば、位置in+1)との距離ds0に基づいてC0=dθ0/ds0と定義できる。
【0076】
一方、上記図6の上部右側に示すような不良品の場合、上記距離R(i)の変化は良品に比較して急激かつ大きい。この距離R(i)についての曲率Cは、例えば、ある注目位置inとその前後の位置in-1,in+1とにおけるグラフ上の点(R(in),R(in-1),R(in+1))を結ぶ2つの直線を定義し、当該2つの直線によって形成される微小角dθおよび注目位置inと一方の位置(例えば、位置in+1)との距離dsに基づいてC=dθ/dsと定義できる。そこで、ある位置における曲率について閾値Th6を定義したり、複数の位置における曲率を算出した平均値に基づいて閾値Th6を定義するなどすれば、曲率に基づいて不良であるか否かを判別することができる。
【0077】
むろん、曲率の算出手法は上述の手法に限定されることはなく、例えば、位置iのピッチが充分小さいと考えてdsを位置iのピッチとするなど、バンプ表面の形状を評価することができる限りにおいて種々の手法を採用可能である。なお、ここでは曲率Cを特徴量として良否判定を行っていることになる。
【0078】
(C)基板側のバンプ断面の対称性を判定
上記実施例のバンプの歪みを示す情報を取得する方法として、上記ステップ210と215に代えて採用するか、あるいは、より高精度の判定を行うため処理として追加してもよい。
バンプ断面の対称性を示す対称性指数Eを算出する。対称性指数Eは、例えばバンプ断面の重心に対する回転対称性が高いほど小さくなるように定義し、当該対称性指数Eが予め決められた閾値Th7より大きいか否かを判別する。ここで、閾値Th7は、良品のバンプ断面における対称性に基づいて決定されている。すなわち、図7の上部左側に示すような典型的な良品について得られる典型的な断面S0は図7の下部左側に示すように略円形である。
【0079】
従って、重心に対する回転対称性は高く、良品における対称性指数Eは所定の小さな値になる。そこで、当該所定の小さな値に対して所定のマージンを設けて閾値Th7を定義すれば、上記対称性指数Eが当該閾値Th7より大きい場合に不良品であると判別することができ、この場合に不良判定を行う。
【0080】
より具体的には、例えば、重心を結ぶ直線とバンプの輪郭との交点を算出し、重心から各交点までの距離の差分を複数の角度について算出した値に基づいて対称性指数Eを定義することができる。図7には、当該対称性指数Eの算出法の説明も示してある。すなわち、上述の処理と同様にして重心を算出すると、良品についてG0,不良品についてGと示す重心が特定される。重心を結ぶ直線とバンプの輪郭との交点を良品についてA0,B0、不良品についてA,Bとすれば、重心から各交点への距離を良品についてR10,R20、不良品についてR1,R2と定義できる。
【0081】
得られた距離の差分の絶対値、すなわち、|R10−R20|や|R1−R2|を考えると、回転対称性が高ければこの値が小さくなるので、この値の大小によって回転対称性を評価することができる。そこで、複数の角度(例えば、図7に示すy軸に対する角度θを複数個定義する)について上記絶対値を算出し、加え合わせたり、その平均値を算出すれば対称性指数Eとすることができる。つまり、上記|R1−R2|を複数の角度について算出し、対称性指数Eを算出すれば、対称性に基づいて良否判定を行うことができる。むろん、対称性指数Eの算出手法は上述の手法に限定されることはなく、バンプ断面の対称性を評価することができる限りにおいて種々の手法を採用可能である。
【0082】
いずれにしても、本実施形態においては、3次元画像から特徴量を算出して予め決められた閾値と比較することによって良否判定を行っているので、人間の主観に頼ることなく自動で良否判定を行うことができる。また、本実施形態においては、複数の特徴量に基づいて良否判定を行っているので、ある特徴量に基づく判定では良品であるが他の特徴量に基づく判定では不良品であるという場合に、不良を見逃すことがなく、極めて高精度に良否判定を行うことが可能である。
【0083】
(3)他の実施形態:
本発明においては、複数の角度から検査対象品を撮影してX線画像を取得し、再構成演算によって得られる3次元画像に基づいて良否の特徴が現れる特徴量を算出し、この特徴量に基づいて良否を判定することができれば良く、上記実施形態の他、種々の構成を採用可能である。例えば、複数の角度から検査対象品を撮影するために、X線検出器13aを回転させるのではなく、固定的に配置された複数の検出面によってX線画像を取得しても良い。
【0084】
また、上記実施形態においては、複数の特徴量のいずれかに基づいて不良品であると判別された場合にはそのバンプが不良であるとしていたが、むろん、この構成に限らず、種々の判別法を採用可能である。例えば、複数の特徴量のいずれかに基づいて良品であると判別された場合にはそのバンプが良品であるとしてもよい。さらに、2つ以上の特徴量を組み合わせ、この組み合わせの全てにおいて不良品と判別されたときにバンプが不良品であると判別してもよい。
【0085】
さらに、複数の特徴量について判別し、不良品と判別された特徴量の数が所定の数以上であるときにバンプが不良品であると判別してもよいし、良品と判別された特徴量の数が所定の数以上であるときにバンプが良品であると判別してもよい。さらに、上述の特徴量の全てを判別可能に構成することが必須というわけではないし、3次元画像に基づいて良否の特徴が現れる特徴量を算出できる限りにおいて他の特徴量を組み合わせて良否判定を行うことも可能である。
【0086】
さらに、上記の他の特徴量としては、体積の重心を採用してもよい。すなわち、ある単位領域の体積について位置を重みとして乗じた値を特徴量とすれば、この特徴量に良否の特徴が現れるので、当該体積の重心に基づいて良否判定を行うことが可能である。また、上記断面積S(i)に基づいて微分値を算出して極値を求め、極値の有無や極値の数に予め閾値を設定して良否判定を行ってもよい。
【0087】
さらに、上記特徴量を算出する際に予め決められた位置として共通の位置i1を利用していたが、むろん、位置i1は各特徴量において良否の特徴が現れるように定義することができればよく、特徴量毎に異なる位置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。
【図2】X線検査処理のフローチャートである。
【図3】X線検査装置の構成を座標系とともに説明する説明図である。
【図4】視野領域の例を示す図である。
【図5】良否判定処理のフローチャートである。
【図6】特徴量の算出を説明するための説明図である。
【図7】特徴量の算出を説明するための説明図である。
【図8】特徴量の算出を説明するための説明図である。
【図9】特徴量の算出を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0089】
10…X線検査装置
11…X線発生器
12…X−Yステージ
12a…基板
13a…X線検出器
13b…回転機構
14…搬送装置
21…X線制御機構
22…ステージ制御機構
23…画像取得機構
23a…θ制御部
24…搬送機構
25…CPU
25a…搬送制御部
25b…X線制御部
25c…ステージ制御部
25d…画像取得部
25e…良否判定部
26…入力部
27…出力部
28…メモリ
28a…検査位置データ
28b…撮像条件データ
28c…X線画像データ
28d…3次元画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得手段と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得する3次元画像取得手段と、
上記取得した3次元画像に基づいて良否の特徴が現れる特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて良否判定を行う良否判定手段とを備えることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
上記良否判定手段は、上記特徴量と基準の検査対象品の特徴量とを比較することによって良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
上記良否判定手段は、上記取得した3次元画像に基づいて検査対象品の接合位置における断面積を示す情報を取得し、この情報に基づいて良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1または請求項2のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項4】
上記良否判定手段は、上記取得した3次元画像に基づいて検査対象品の断面の歪みを示す情報を取得し、この情報に基づいて良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項5】
上記良否判定手段は、上記取得した3次元画像に基づいて検査対象品の複数の位置における断面積の比を示す情報を取得し、この情報に基づいて良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項6】
上記良否判定手段は、上記取得した3次元画像に基づいて検査対象品の重心を示す情報を取得し、この情報に基づいて良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項7】
上記良否判定手段は、上記取得した3次元画像に基づいて検査対象品の外形の変化を示す情報を取得し、この情報に基づいて良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項8】
上記良否判定手段は、上記取得した3次元画像に基づいて検査対象品の断面の対称性を示す情報を取得し、この情報に基づいて良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1〜請求項7のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項9】
上記良否判定手段は、接合位置の大きさに係る特徴量と表面張力によって生じる形状の均一性に係る特徴量の複数の特徴量に基づいて良否判定を行うことを特徴とする上記請求項1〜請求項8のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項10】
X線によって検査対象を検査するX線検査方法であって、
X線を検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得工程と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得する3次元画像取得工程と、
上記取得した3次元画像に基づいて良否の特徴が現れる特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて良否判定を行う良否判定工程とを備えることを特徴とするX線検査方法。
【請求項11】
X線によって検査対象を検査するX線検査プログラムであって、
X線を検査対象品に照射して複数の方向から撮影した複数のX線画像を取得するX線画像取得機能と、
上記複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行して検査対象品の3次元画像を取得する3次元画像取得機能と、
上記取得した3次元画像に基づいて良否の特徴が現れる特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて良否判定を行う良否判定機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするX線検査プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−114150(P2007−114150A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308517(P2005−308517)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】