説明

X線検査装置

【課題】物品に照射するX線の強度を高めた場合でも、効率良くX線の漏洩を防止することが目的とされる。
【解決手段】X線検査装置1は、X線を用いて物品の検査を行う装置であって、照射部12と、受光部と、搬送機構とを備える。照射部12は、物品にX線を照射する。受光部は、物品を透過したX線を受光する。搬送機構は、搬送ベルト163とガイド部材165とを有し、X線の照射位置へと物品を搬送する。搬送ベルト163は、物品を載せた状態で、物品を照射位置へ導くベルトである。ガイド部材165は、搬送ベルト163のうち少なくとも物品に接する部分163aをガイドする。そして、物品の搬送方向から見たときのガイド部材165の両端部1652,1653は、中央部1651に対して起き上がっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線検査装置に関し、特にX線の漏洩の防止に関する。
【背景技術】
【0002】
製造された商品中に異物が混入していないかどうかや、商品に欠損が生じていないかどうかなどの不良を検査するために、従来からX線検査装置が用いられている。具体的にX線検査装置では、商品にX線を照射して、商品を透過したX線を受信する。そして、受信したX線に基づいて不良の検査を行う。
【0003】
ところで、X線検査装置で用いるX線が外部に漏れると、X線検査装置の使用者や、その周辺にいる者に甚大な被害を与える。そこで、X線検査装置には、X線が照射される空間を遮蔽すべく、商品の投入口や排出口などに遮蔽カーテンが取り付けられている。かかるX線検査装置は、例えば下掲の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2002−328101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のX線検査装置では、不良の検査の精度を高めるべく物品に照射するX線の強度を高めると、搬送方向については遮蔽カーテンでX線の漏洩を防止できるものの、搬送方向に交差する方向についてはX線が漏洩するおそれがあった。
【0005】
搬送方向に交差する方向へのX線の漏洩を防止するためには、例えば、物品にX線を照射するための空間を囲む筐体の厚みを大きくすることが考えられる。しかし、X線検査装置のサイズや重量が大きくなってしまい、あまり望ましくない。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みて成されたものであり、物品に照射するX線の強度を高めた場合でも、効率良くX線の漏洩を防止することが目的とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明にかかるX線検査装置は、X線を用いて物品の検査を行う装置であって、照射部と、受光部と、搬送機構とを備える。照射部は、物品にX線を照射する。受光部は、物品を透過したX線を受光する。搬送機構は、搬送ベルトとガイド部材とを有し、X線の照射位置へと物品を搬送する。搬送ベルトは、物品を載せた状態で、物品を照射位置へ導くベルトである。ガイド部材は、搬送ベルトのうち少なくとも物品に接する部分をガイドする。そして、物品の搬送方向から見たときのガイド部材の両端部は、中央部に対して起き上がっている。
【0008】
第1の発明にかかるX線検査装置によれば、ガイド部材の両端部が起き上がっているので、搬送方向に交差する方向に拡がったX線を、両端部によってX線検査装置の内部空間の方へと反射することができる。よって、X線検査装置の外部へのX線の漏洩を効率良く防止することができる。
【0009】
第2の発明にかかるX線検査装置は、第1の発明にかかるX線検査装置であって、ガイド部材の両端部は、水平面に対して斜めに傾いた面を照射部側に有する
第2の発明にかかるX線検査装置によれば、ガイド部材の両端部が斜めに傾いた面を有するので、X線を効率良く内部空間の方へと反射することができ、以ってX線検査装置の外部へのX線の漏洩をより効率良く防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるX線検査装置によれば、ガイド部材の両端部が起き上がっているので、搬送方向に交差する方向に拡がったX線を、両端部によってX線検査装置の内部空間の方へと反射することができる。よって、X線検査装置の外部へのX線の漏洩を効率良く防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.X線検査装置の構造
図1は、本発明の実施の形態にかかるX線検査装置1を概念的に示す前面図である。なお図1では、X線検査装置1の前面のカバーは取り外されている。
【0012】
X線検査装置1は、X線を用いて物品Pの検査を行う装置であって、本体11、シールドボックス111、照射部12、受光部13、支持部14、遮蔽カーテン15、及び搬送機構16を備える。
【0013】
<本体>
本体11には、X線が照射される内部空間S1と、通路W1,W2とが設けられている。通路W1は、外部から内部空間S1への物品Pの搬入に用いられる。通路W2は、内部空間S1から外部への物品Pの搬出に用いられる。なお、かかる物品Pの搬入及び搬出は、搬送機構16によって行われる。
【0014】
<照射部>
照射部12は、内部空間S1の上側に位置し、X線を物品Pに照射することができる。具体的には、照射部12で発せられたX線は、照射部12の下側に配置されたスリット121を通って、内部空間S1内の照射位置P1にある物品Pに達する。X線がスリット121を通ることで、照射部12から照射位置P1へと向かうX線の指向性が高まる。
【0015】
<シールドボックス>
シールドボックス111は、X線を遮蔽することができる筐体であって、本体11の上に載置されている。シールドボックス111の内部には、照射部12が配設されている。シールドボックス111によれば、照射部12から発せられたX線が、本体11の上側で漏洩するのを防止することができる。
【0016】
<受光部>
受光部13は、例えばラインセンサであって、照射位置P1の下側に位置する。受光部13は、物品Pに照射されたX線のうち物品Pを透過したものを受光する。
【0017】
そして、受光部13で受光したX線の画像を、例えば画像処理部で処理することで、物品Pの不良を検査する。上述したようにスリット121を通ったX線の指向性は高いので、受光部13で受光されたX線の画像にはノイズがほとんど生じず、以って高い精度で不良を検出することができる。
【0018】
<支持部>
支持部14は、本体11に取り付けられており、受光部13を支持する。
【0019】
<遮蔽カーテン>
遮蔽カーテン15は、通路W1,W2のそれぞれに吊り下げられている。図1では、通路W1,W2のそれぞれに、遮蔽カーテン15が二つずつ配設されている。遮蔽カーテン15を通路W1,W2に吊り下げることで、通路W1,W2を通ってX線が漏洩することを防止できる。
【0020】
<搬送機構>
搬送機構16は、X線の照射位置P1へと物品Pを搬送する。詳細については、以下の「2.搬送機構の構造」で説明する。
【0021】
2.搬送機構の構造
搬送機構16は、回転ローラ1611〜1613、駆動ローラ162、搬送ベルト163、搬送台1641,1642、及びガイド部材165を有する(図1)。
【0022】
<搬送台>
搬送台1641,1642はそれぞれ、支持部14の両側に配置されている。具体的には、搬送台1641は、支持部14に対して下流側の位置で、本体11及び支持部14の少なくともいずれか一方に取り付けられている。搬送台1642は、支持部14に対して上流側の位置で、本体11及び支持部14の少なくともいずれか一方に取り付けられている。なお、上流及び下流という表現は、物品Pの搬送方向90について用いている。
【0023】
搬送台1641,1642には、X線の透過を妨げる遮蔽部材を採用することが好ましい。これにより、照射部12から発せられたX線の、支持部14の下側の空間への伝播を遮ることができる。
【0024】
<回転ローラ>
回転ローラ1611は搬送台1641に回転自在に支持されている。回転ローラ1612は、搬送台1642に回転自在に支持されている。回転ローラ1613は、支持部14によって回転自在に支持されている。
【0025】
<搬送ベルト>
搬送ベルト163は、回転ローラ1611〜1613に掛けられる。具体的には、回転ローラ1611〜1613の各々は、搬送ベルト163が三角形状を呈するように、搬送ベルト163を内周側から支持する。
【0026】
このとき、回転ローラ1611は、搬送ベルト163のうち物品Pを載せて搬送する部分163aの下流端を形成する。回転ローラ1612は、部分163aの上流端を形成する。なお、部分163aは、搬送ベルト163のうち物品Pに接する部分と把握することができる。
【0027】
<駆動ローラ>
駆動ローラ162は、本体11に取り付けられており、搬送ベルト163に駆動力を与えることができる。駆動ローラ162で搬送ベルト163に駆動力を与えることで、搬送ベルト163は回転する。これにより、搬送ベルト163(部分163a)に載せられた物品Pを、搬送方向90へと搬送することができる。
【0028】
<ガイド部材>
ガイド部材165は、支持部14及び搬送台1641,1642の上に取り付けられており、搬送ベルト163の部分163aを下からガイドする(図1)。
【0029】
図2は、図1に示される位置II−IIでの断面を搬送方向90から見た図をある。ガイド部材165の両端部1652,1653が、中央部1651に対して起き上がっている。具体的には、両端部1652,1653が水平面93に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)だけ起き上がっている。
【0030】
搬送ベルト163には、回転ローラ1611〜1613の支持によって張力が生じる。この張力により、搬送ベルト163のうちガイド部材165でガイドされている部分163aは、ガイド部材165の上面1651a〜1653aに沿う。
【0031】
図3は、ガイド部材165を上から見た図である。ガイド部材165には、照射位置P1に切れ目165aが設けられている。これにより、物品Pを透過したX線の強度が、ガイド部材165によって低下するのを回避することができる。よって、ガイド部材165の取付けによるX線の画像への影響、例えばX線の画像の鮮明度の低下などを、回避することができる。
【0032】
3.X線検査装置の特徴
上述したX線検査装置1によれば、ガイド部材165の両端部1652、1653が所定の角度θだけ起き上がっているので、搬送方向90に交差する方向に拡がったX線を、両端部1652,1653によってX線検査装置1の内部空間S1の方へと反射することができる(図2)。よって、X線検査装置1の外部へのX線の漏洩を効率良く防止することができる。なお図2では、上面1652a,1653aで反射されるX線の光路を、二点鎖線で示している。
【0033】
ガイド部材165で反射されるX線の多くは、ガイド部材165の上面1651a〜1653aで反射される。よって、X線の漏洩を効率良く防止するという観点からは、図2に示されるように、両端部1652,1653の上面1652a,1653aがそれぞれ、水平面93に対して斜めに傾いていることが好ましい。
【0034】
ガイド部材165の両端部1652,1653が起き上がっているので、搬送の際に物品Pが搬送ベルト163から脱落するのを、防止することができる。
【0035】
4.変形例
<変形例1>
水平面93に対して斜めに傾いた上面1652a、1653aを有するガイド部材165であれば、両端部1652,1653の全体が起き上がっているもの(図1)に限らず、図4に示されるように中央部1651に対して両端部1652,1653が突出したものであっても良い。
【0036】
上述したように搬送ベルト163に張力が生じるので、搬送ベルト163をガイドするガイド部材165には、特に両端部1652,1653に応力が集中する。このため、図2に示されるガイド部材165では、両端部1652,1653が変形してしまうおそれがある。
【0037】
しかし、本変形例にかかるガイド部材165によれば、ガイド部材165の両端部1652,1653の強度を高めることができる。よって、両端部1652,1653の変形を防止することができる。
【0038】
なお、両端部1652,1653の全体が起き上がっているガイド部材165だけでなく、中央部1651に対して両端部1652,1653が上に向かって突出したものも含めて、ガイド部材165を次のように把握することできる。つまり、両端部1652,1653は、中央部1651に対して起き上がっている。
【0039】
<変形例2>
図2及び図4では、上面1652a,1653aは平面であるが、図5に示されるように、上面1652a,1653aは内部空間S1に向かって凹状に湾曲していても良い。これにより、より多くのX線を内部空間S1へと反射することができ、以ってX線の漏洩をより効率良く防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態にかかるX線検査装置を概念的に示す図である。
【図2】図1に示される位置II−IIでの断面を搬送方向から見た図をある。
【図3】ガイド部材を上から見た図である。
【図4】変形例1にかかるガイド部材を概念的に示す図である。
【図5】変形例2にかかるガイド部材を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 X線検査装置
12 照射部
13 受光部
16 搬送機構
90 搬送方向
93 水平面
163 搬送ベルト
165 ガイド部材
1651 中央部
1652,1653 両端部
1652a,1653a 上面
P 物品
P1 照射位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を用いて物品の検査を行う装置であって、
前記物品に前記X線を照射する照射部と、
前記物品を透過したX線を受光する受光部と、
前記X線の照射位置へと前記物品を搬送する搬送機構と
を備え、
前記搬送機構は、
前記物品を載せた状態で、前記物品を前記照射位置へ導く搬送ベルトと、
前記搬送ベルトのうち少なくとも前記物品に接する部分をガイドするガイド部材と
を有し、
前記物品の搬送方向から見たときの前記ガイド部材の両端部は、中央部に対して起き上がっている、X線検査装置。
【請求項2】
前記ガイド部材の前記両端部は、水平面に対して斜めに傾いた面を前記照射部側に有する、請求項1記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−128311(P2009−128311A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306391(P2007−306391)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】