説明

X線検査装置

【課題】 物品の搬送方向における間隔を確保できない等の事情で、被検査物品に対応する画素がX線画像情報の区切り部分にかかる場合でも、洩れなく異物を検出できるX線検査装置を提供する。
【解決手段】 物品を搬送する搬送手段と、搬送中の物品に対してX線を照射するX線源と、物品を透過した透過X線を受けるX線検出器と、前記X線検出器からの出力に基づくX線画像情報を、物品搬送方向における所定幅ごとに画像処理する画像処理手段と、を備えるX線検査装置であって、各画像処理の対象とする前記所定幅のX線画像情報を、物品搬送方向においてオーバーラップさせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の物品にX線照射し、その透過X線の画像情報に基づき物品を検査するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品製造工程で物品への異物混入有無を検査するため、搬送中の物品に対してX線源からX線を照射し、その透過X線を受けたX線検出器からの出力に基づくX線画像情報を画像処理手段で画像処理するX線検査装置が採用されている。かかる物品製造工程では、物品が連続的に搬送されるため、そのX線画像情報も物品搬送方向に連続したものとなる。そこで、X線検査装置では、本来、物品搬送方向に連続するX線画像情報を、物品搬送方向における所定幅ごとに画像処理する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−65972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、X線検査装置では、画像処理に際して空間フィルタによるフィルタリング処理をよく利用する。空間フィルタによるフィルタリング処理では、X線画像情報において、フィルタリング処理の対象となる画素自体の濃淡値と、その周辺領域に位置する画素の濃淡値とを比較して濃淡値を変換処理するもので、ノイズの軽減やエッジの強調を図る。しかしながら、X線画像情報の外周縁に位置する画素は、その周辺領域において画素が存在しない部分があるため、適正なフィルタリング処理を行えない場合がある。その結果、X線画像情報の外周縁に位置する画素に関しては、異物検出ができないか、又は異物検出の精度が不十分となることがある。
【0004】
ここで、搬送物品Gが包装資材で一纏めに包装される個装品の場合、図5(a)に示されるように、物品搬送方向に間隔をおいて搬送できるため、同図(b)に示されるように、搬送物品に対応する濃色の画素部分G´は、各画像処理の対象となるX線画像情報の区切り部分(外周縁)にかからないようにすることができる。しかしながら、搬送物品が個装されていないバラ品の場合、図6(a)に示されるように、物品搬送方向(矢印Z方向)において間隔を確保することができず、同図(b)に示されるように、搬送物品Gに対応する濃色の画素部分G´が、X線画像情報の区切り部分にかかり、フィルタリング処理不良とそれに起因する異物検出不良を生じる。
【0005】
本願発明は、上記の事情に鑑みて、物品の搬送方向における間隔を確保できない等の事情で、被検査物品に対応する画素がX線画像情報の区切り部分にかかる場合でも、洩れなく異物を検出できるX線検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、物品を搬送する搬送手段と、
搬送中の物品に対してX線を照射するX線源と、
物品を透過した透過X線を受けるX線検出器と、
前記X線検出器からの出力に基づくX線画像情報を、物品搬送方向における所定幅ごとに画像処理する画像処理手段と、を備えるX線検査装置であって、
各画像処理の対象とする前記所定幅のX線画像情報を、物品搬送方向においてオーバーラップさせることを特徴とするX線検査装置を提供する。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のX線検査装置であって、
前記オーバーラップさせる幅は、前記各画像処理に際して、前記X線画像情報の外周縁部分に位置するために空間フィルタによるフィルタリング処理に支障を生じる画素数幅の2倍に設定されていることを特徴とするX線検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、以下の優れた効果を奏する。X線画像情報を物品搬送方向で所定幅ごとに区切って画像処理すると、当該区切り部分にかかる画素について、空間フィルタによるフィルタリング処理を適正に行えないが、各画像処理の対象とするX線画像情報を物品搬送方向でオーバーラップさせることにより、フィルタリング処理を適正に行えない部分を実質的に解消して、異物の検出洩れを防止することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、以下の優れた効果を奏する。オーバーラップ幅を空間フィルタによるフィルタリング処理に支障を生じる画素数幅の2倍に設定することで、同じ領域を二重に検査する無駄をなくすことができる。また、検査した物品の位置を特定し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態を、図を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかるX線検査装置の構成ブロック図、図2は、連続的に出力されるX線画像情報において、画像処理の実行単位となる所定幅の単位X線画像情報を規定する方法を示す図、図3は、各単位X線画像情報において適正にフィルタリング処理が行われる範囲を示す図、図4は、X線画像情報全体として適正にフィルタリング処理が行われる範囲を示す図である。
【0011】
(X線検査装置1の概要)
図1に示されるX線検査装置1は、物品を上面に載せて矢印Z方向に搬送する搬送手段2と、搬送手段2の上方に設けられ、搬送中の物品Gに対してX線を照射するX線源3と、搬送手段2の下方に設けられ、物品Gを透過したX線を受けるX線検出器4と、X線検出器4から連続的に出力されるX線画像情報をもとに物品Gへの異物混入有無を検出する画像処理手段5と、を備えてなる。搬送手段2、X線源3及びX線検出器4は、不図示のX線防護カバー及びX線防護カーテンで覆われ、装置外部にX線が漏洩しないように構成される。
【0012】
画像処理手段5は、物品搬送方向に連続出力されるX線画像情報I(図2)に対し、物品搬送方向における所定幅Wごとに、空間フィルタによるフィルタリング処理を含む画像処理を順次行い、物品Gへの異物混入有無を検出する。画像処理手段5には、スピーカ又はモニター(ともに不図示)を備える通報手段6と、エアノズル又は水平方向に作動するバー(ともに不図示)を備える振分手段7が接続され、画像処理手段5から出力される異物検出信号に基づき、通報手段6によるオペレータへの通報及び振分手段7による異物混入物品の排除が行われる。
【0013】
(物品G及びそのX線画像情報I)
物品Gは、包装資材による個装がなされていないバラ品であって、例えば、図5(a)に示されるように、多数個が物品搬送方向において途切れることなく、連続的に搬送される。そのため、図2(a)に示されるように、X線検出器4から連続的に出力されるX線画像情報Iにおいても、物品Gに対応する濃色の画素部分G´の物品搬送方向(画像出力方向)の間隔は当然ながら確保されていない。
【0014】
上記のとおりであるから、画像処理の実行単位となる所定幅WのX線画像情報を、X線画像情報Iを物品搬送方向で単純分割して規定するのでは、その分割線前後の物品Gに対応する画素部分G´が、空間フィルタによるフィルタリング処理が適正に行われない画像の外周縁部分にかかることがあり、当該部分に関しては異物検出洩れが避けられない。そこで、画像処理手段5は、所定幅WのX線画像情報(以下、「単位X線画像情報」という。)iを、以下のように規定する。
【0015】
(単位X線画像情報iの規定)
画像処理手段5は、図2(a)に示されるように、物品搬送方向に連続するX線画像情報Iにおいて、物品搬送方向と直交し、かつ、同方向において離間する二本の規定線Ln1,Ln2により、所定幅Wの単位X線画像情報iの前後端を規定する。前後端の二本の規定線Ln1,Ln2のうち、前端側の規定線Ln1は、先に規定される単位X線画像情報in−1の後端側の規定線L(n−1)2より前方に位置しており、後端側の規定線Ln2は、後に規定される単位X線画像情報in+1の前端側の規定線L(n+1)1より後方に位置する。
【0016】
すなわち、単位X線画像情報iは、それに相前後して規定される単位X線画像情報in−1,in+1と物品搬送方向で相互にオーバーラップさせられており、図2(b)に示されるように、前端側の画像部分aが、先に規定される単位X線画像情報in−1の後端側の画像部分bと共通しており、後端側の画像部分cが、後に規定される単位X線画像情報in+1の前端側の画像部分dと共通している。
【0017】
上記各共通画像部分a,b,c,dの前後幅は、画像処理に際して、単位X線画像情報iの外周縁部分に位置するために、空間フィルタによるフィルタリング処理を適正に行えない画素数幅tの2倍の画素数幅Tに設定されている。例えば、画像処理手段5による画像処理において、空間フィルタによるフィルタリング処理に支障が生じる外周縁部分の画素数幅tが3画素分である場合、オーバーラップさせる画素数幅Tは2倍の6画素分に設定される。
【0018】
(空間フィルタによるフィルタリング処理)
画像処理手段5は、上述のように規定した所定幅Wの単位X線画像情報iに対して、空間フィルタによるフィルタリング処理を施すが、画素数幅t(=T/2)の外周縁部分(図3において斜線を施した部分)Cではフィルタリング処理が適正に行えない。その一方、外周縁部分Cより内側に形成される内枠部分(図3の太枠で囲まれる部分)Fではフィルタリング処理を適正に行うことができる。すなわち、単位X線画像情報iでは、先に規定される単位X線画像情報in−1と共通の画像部分aのうち、内枠部分Fに収まる後方側半分、及び後に規定される単位X線画像情報in−1と共通の画像部分cのうち、内枠部分Fに収まる前方側半分についてフィルタリング処理が適正に行われる。
【0019】
単位X線画像情報iの前後に規定される単位X線画像情報in−1,in+1についても同様にフィルタリング処理が施され、先に規定される単位X線画像情報in−1では、単位X線画像情報iと共通の画像部分bのうち内枠部分Fn−1に収まる前方側半分について、後に規定される単位X線画像情報in+1では、単位X線画像情報iと共通の画像部分dのうち内枠部分Fn+1に収まる後方側半分において、フィルタリング処理が適正に行われる。したがって、図4(a)に示されるように、各共通画像部分(aとb,cとd)は、一方の単位X線画像情報において適正にフィルタリング処理される画素数幅tの部分が、他方の単位X線画像情報において適正にフィルタリング処理されない画素数幅tの部分を補完する関係となる。
【0020】
したがって、単位X線画像情報in−1〜in+1の共通画像部分(aとb,cとd)を相互に重ね合わせてみると、図4(b)に示されるように、連続出力されるX線画像情報Iの濃色の画素部分G´において、適正なフィルタリング処理を施せなかった部分は残存しておらず、結果として、すべての物品Gについて確実に異物検出をすることができる。ここで、物品Gに対応する画素部分G´が、物品搬送方向と直交する方向(図中の上下方向)に広がることによって、外周縁部分(図中の上下辺)にかかることが無いように、例えば、物品Gを物品搬送方向と直交する方向の中央部に寄せるガイドを設ける等、物品群の広がりを防止する必要があることは勿論である。
【0021】
(上記実施形態に係るX線検査装置1の特徴)
第一に、X線検査装置1は、物品搬送方向に連続出力されるX線画像情報Iを、物品搬送方向における所定幅Wごとに画像処理する際、各画像処理の対象とする所定幅Wの単位X線画像情報iを、物品搬送方向においてオーバーラップさせて規定するという特徴を有する。この特徴によれば、検査する物品Gがいわゆるバラ品で、規定された単位X線画像情報iにおいて、物品搬送方向の前後端(外周縁部分)に物品Gに対応する画素部分G´がかかり空間フィルタによるフィルタリング処理が適正に行えない場合でも、物品搬送方向でオーバーラップする前後の単位X線画像情報in−1,in+1で補完することができる。その結果として、適正なフィルタリング処理を行えない部分が実質的に解消し、異物検出の洩れが確実に防止される。
【0022】
第二に、X線検査装置1は、相前後する単位X線画像情報間でオーバーラップする画素数幅Tを、各画像処理に際して、単位X線画像情報の外周縁部分に位置するために空間フィルタによるフィルタリング処理に支障を生じる画素数幅tの2倍に設定しているという特徴を有する。この特徴によれば、単位X線画像情報iの前後の単位X線画像情報in−1,in+1は、単位X線画像情報iにおいて適正にフィルタリング処理できない画素数幅tの部分のみを補完することになる。結果として、同じ領域を二重に検査する無駄をなくすことができるものである。また、オーバーラップ幅を大きく設定する場合に比べて、各X線画像情報iと実際の物品Gの対応が容易で、物品Gに異物混入していた場合に、該当する物品Gの位置を特定し易い。
【0023】
(上記実施形態の変形例)
上記実施形態では、同じ領域を二重検査する無駄をなくすため、物品搬送方向において相前後する単位X線画像情報どうしのオーバーラップ幅Tは、フィルタリング処理に支障を生じる外周縁部の画素数幅tの2倍に設定したが、これに限らず、画素数幅tの2倍より大きな画素数幅に設定しても、適切にフィルタリングできない部分が解消されて確実に異物検出することができる。
【0024】
上記実施形態では、検査対象とする物品を、包装資材による個装がなされず、物品搬送方向において間隔を確保できないバラ品として説明したが、これに限らず、個装品を検査対象としても良い。例えば、物品搬送間隔を一定に設定することができない、物品搬送間隔と各画像処理の対象となる所定幅のX線画像情報の取得間隔を同期させることができない、人手等の外乱要因で物品搬送間隔が途中変動させられる等の事情があって、物品搬送方向(画像出力方向)に間隔をおいて表れる画像の区切り部分(外周縁部分)に、物品に対応する画素部分がかかるような場合にも、本発明を適用することができる。
【0025】
その他、本発明は、上述した実施形態や変形例に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態にかかるX線検査装置の構成ブロック図。
【図2】単位X線画像情報の規定方法を示す図。
【図3】単位X線画像情報において適正にフィルタリング処理される範囲を示す図。
【図4】連続した単位X線画像情報において適正にフィルタリング処理される範囲を示す図。
【図5】従来のX線検査装置による個装品検査を説明する図。
【図6】従来のX線検査装置によるバラ品検査の問題点を説明する図。
【符号の説明】
【0027】
1 X線検査装置
2 搬送手段
3 X線源
4 X線検出器
5 画像処理手段
6 通報手段
7 振分手段
G 物品
G´ 物品に対応する画素部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送手段と、
搬送中の物品に対してX線を照射するX線源と、
物品を透過した透過X線を受けるX線検出器と、
前記X線検出器からの出力に基づくX線画像情報を、物品搬送方向における所定幅ごとに画像処理する画像処理手段と、を備えるX線検査装置であって、
各画像処理の対象とする前記所定幅のX線画像情報を、物品搬送方向においてオーバーラップさせることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線検査装置であって、
前記オーバーラップさせる幅は、前記各画像処理に際して、前記X線画像情報の外周縁部分に位置するために空間フィルタによるフィルタリング処理に支障を生じる画素数幅の2倍に設定されていることを特徴とするX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−19749(P2010−19749A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181797(P2008−181797)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】