X線発生装置
【課題】X線撮像において、最も適したエネルギーの特性X線を従来のX線に付加できるX線発生装置を提供する。
【解決手段】従来と同様のターゲット(1次ターゲット層)の内側にX線撮像に最も適したエネルギーの特性X線を発生する原子を含む2次ターゲット層を配置する。従来の装置では、1次ターゲット層で発生する1次X線のうち、被検体と逆方向に放射されるものは無駄になっていたが、そのX線が2次ターゲット層で光電効果を起こし、最もX線撮像に適したエネルギーの特性X線を発生する。この特性X線は、1次ターゲット層を透過して被検体方向に射出される。
【解決手段】従来と同様のターゲット(1次ターゲット層)の内側にX線撮像に最も適したエネルギーの特性X線を発生する原子を含む2次ターゲット層を配置する。従来の装置では、1次ターゲット層で発生する1次X線のうち、被検体と逆方向に放射されるものは無駄になっていたが、そのX線が2次ターゲット層で光電効果を起こし、最もX線撮像に適したエネルギーの特性X線を発生する。この特性X線は、1次ターゲット層を透過して被検体方向に射出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層からなるターゲットを用いて、従来の連続X線に任意のエネルギーの特性X線を付加できるX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
造影剤を用いたX線撮像を含め、医療用のX線撮像においては、例えば、図13に示すように、殆ど全てタングステン製のターゲットを採用したX線発生装置を用いている。また乳房用では、モリブテン製のターゲットも用いられている。そして、これらのターゲットに電子ビームを照射し、制動放射によって発生する連続X線を人体に照射している。
【0003】
このようなX線発生装置では、高エネルギーの電子をタングステンターゲットに照射し、制動放射による連続X線を用いており、効率の悪い低エネルギーのX線や高エネルギーのX線も一緒に照射している。この制動放射が起こっているのは、タングステンの表面付近の数ミクロンの厚さの領域である。発生するX線は、ほぼ等方的に放射され、被検体の向き(電子ビームの向きと逆)に放射されたX線だけが利用される。
【0004】
【特許文献1】特開平10−50242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のX線発生装置では、ターゲットからX線取り出し方向とは逆向きに放出されたX線はほとんど利用されず、非効率である。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために、X線撮像において有用な特性X線の発生量を従来に比べて増大できるX線発生装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、X線撮像において最適なエネルギーの特性X線を付加できるX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明のX線発生装置は、電子出射手段と、前記電子出射手段からの電子が照射されると制動放射によって1次X線を発生する1次ターゲット層と、前記1次ターゲット層に対して、前記電子出射手段と反対側に位置し、前記1次ターゲット層が発生した前記1次X線を受けて、所定のエネルギーの特性X線を発生する2次ターゲット層とを有し、前記電子出射手段が配置された側に向けて前記1次X線および前記特性X線を取り出す。
【0008】
本発明のX線発生装置では、1次ターゲット層から制動放射によって発生した1次X線のうち、X線取り出し側と反対側に放出された1次X線が2次ターゲット層に達する。
そして、2次ターゲット層にて照射された1次X線によって特性X線が発生する。この特性X線のうち、上記X線取り出し側に放出された特性X線は、1次ターゲット層を透過して、X線取り出し側に出射される。
【0009】
本発明のX線発生装置は、前記2次ターゲット層に対して前記1次ターゲット層と反対側に配置され、前記1次ターゲット層で発生した熱を逃がす基板を有する。
【0010】
好適には、本発明のX線発生装置の前記1次ターゲット層の厚みは、2〜10μmであり、前記2次ターゲット層は、セリウムとベリリウム、セリウムとホウ素またはセリウムと炭素からなる合金、化合物または混合物で構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線撮像において最適なエネルギーのX線の発生量を従来に比べて増大できるX線発生装置を提供することができる。
また、本発明によれば、ターゲットからX線取り出し方向とは逆向きに放出されたX線を利用して、X線撮像において最適なエネルギーの特性X線を付加できる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係わるX線診断システムについて説明する。
先ず、本実施形態の構成要素と、本発明の構成要素との対応関係を説明する。
X線発生装置3が本発明のX線発生装置の一例である。電子ビーム発生部9が本発明の電子出射手段の一例であり、1次ターゲット層11が本発明の1次ターゲットの一例であり、2次ターゲット層15が本発明の2次ターゲットの一例である。基材17が本発明の基板の一例である。
また、1次ターゲット層11が発生する連続X線が本発明の1次X線の一例であり、2次ターゲット層15が発生する特性X線が本発明の特性X線の一例である。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わるX線診断システム1の全体構成図である。図2は、本発明の実施形態に係わるX線発生装置3の断面構成図である。
図1に示すように、X線診断システム1は、X線発生装置3で発生したX線を被検体5に照射し、被検体5を透過したX線をX線検出装置7で検出してX線画像(投影)データを生成する。
【0014】
本実施形態では、X線発生装置3において、例えば、X線画像において骨、脂肪および造影剤等の間に十分なコントラストを得るために適切なエネルギーの特性X線を効率的に生成することを特徴としている。当該エネルギーは、被検体5の厚みが20cm程度の場合、30keV台半ばから後半である。
【0015】
従来では、前述したように、高エネルギーの電子をタングステンターゲットに照射し、制動放射による連続X線を用いており、効率の悪い低エネルギーのX線や高エネルギーのX線も一緒に照射している。この制動放射が起こっているのは、タングステンの表面付近の数ミクロンの厚さの領域である。発生するX線は、ほぼ等方的に放射され、被検体の向き(電子ビームの向きと逆)に放射されたX線だけが利用される(図13参照)。
これに対して、本実施形態のX線発生装置3では、従来技術では無駄になっていた被検体5と逆向き(電子ビームの向き)に放射されたX線を有効利用する。図2および図3に示すように、制動放射を起こす数ミクロンのタングステンの内側に造影剤の撮像に最も効率のよいエネルギーの特性X線を放射する元素(例えばセリウム)を含む層を配置すると、無駄になっていたX線が、セリウム原子で光電効果を起こし、原子が基底状態に戻る際に特性X線(34〜40keV)を放射する。
タングステンのK吸収端は、69.5keVであるが、セリウムの放射する特性X線は、タングステンのK吸収端よりエネルギーが小さいので、表面のタングステン層で大きく吸収されることなく通過することができる。得られるX線のスペクトルは図4に示すようになる。
なお、2次ターゲット層15は、例えば、セリウムとベリリウムとを原子数比1:9で混合して得られた合金または混合物で構成される。
【0016】
以下、X線発生装置3について詳細に説明する。
図2に示すように、X線発生装置3では、例えば、電子ビーム発生部9から所定の距離にを隔てて1次ターゲット層11が配設されている。
1次ターゲット層11に対して電子ビーム発生部9と反対側には、2次ターゲット層15および基材17が順に接合して配置されている。
【0017】
X線発生装置3では、電子ビーム発生部9からの電子ビームを1次ターゲット層11に照射すると、1次ターゲット層11内で制動放射が起こり、1次X線としての連続X線が発生する。ここで、制動放射とは、高速の電子が原子核の作る電場で曲げられることによってX線を発生する現象である。
【0018】
そして、この連続X線が、X線取り出し方向に射出されると共に、その反対側の2次ターゲット層15に照射され、2次ターゲット層15内で光電効果が起こり、2次ターゲット層15の原子番号に対応したエネルギーの特性X線が発生する。
2次ターゲット層15で発生した特性X線の一部は、X線取り出し方向からX線発生装置3の外部に出射される。残りの特性X線は、基材17等や筐体等によって遮蔽されてX線発生装置3の外部には漏れないようにX線発生装置3が構成されている。
【0019】
[1次ターゲット層11]
1次ターゲット層11は、例えば、タングステンであり、2次ターゲット層15の上に形成されている。
なお、1次ターゲット層11の材料としては、タングステン、金、白金またはこれらの金属を主成分とする合金が挙げられる。
1次ターゲット層11は、電子ビーム発生部9から例えば90keVの電子ビームが照射されると、当該電子ビームと1次ターゲット層11内の原子(原子核)との間で制動放射(相互作用)が起こり、最大90keVまで連続X線が発生する。
1次ターゲット層11の厚みは、タングステン中における電子ビームの飛程に応じて決定され、例えば、2〜10μm、好ましくは4μm程度が適当である。なお、1次ターゲット層11の厚みを厚くし過ぎると、2次ターゲット層15で発生した特性X線が1次ターゲット層11内で吸収される割合が高くなる。
【0020】
1次ターゲット層11には、例えば、以下の性質が要求される。
(1−1)原子番号が大きい。タングステンは原子番号74であり、適切である。1次X線は、制動放射によって生成されるが、制動放射は原子番号の約2乗に比例するため、原子番号の大きいものが良い。
(1−2)融点が高い。電子ビームを照射した部分は、電子の運動エネルギーがほとんど熱エネルギーになり、高温になる。よって融点の低い物質は融解してしまう。タングステンの融点は、約3400℃であり、1次ターゲット層11の材料に適している。
(1−3)熱伝導率が大きい。電子ビームの焦点で1次ターゲット層11が融解しないように、上記(1−2)で述べた融点が高いことに加えて、発生した熱を熱伝導により、逃がす特性も重要である。タングステンの熱伝導率は、173[W/(m・K)]であり、大きい。
【0021】
上記(1−1),(1−2),(1−3)の条件を満たす物質は限られたものになる。現在医療診断で使用されているX線発生装置のターゲットは、ほとんどがタングステンまたはタングステンを主成分とする合金である。一部X線のエネルギーが低い乳房等の撮影では、モリブテン等の他の物質が使用される場合もある。
【0022】
ところで、1次ターゲット層11で発生する連続X線のうち、2次ターゲット層15中の原子(セリウム)のK吸収端以上のエネルギーのみが特性X線の発生に有効である。よって、1次ターゲット層11が発生する連続X線は、2次ターゲット15層中の原子(セリウム)のK吸収端より高いエネルギーのX線を含んでいる必要がある。連続X線の最高エネルギーは、照射する電子ビームのエネルギーでほぼ決まり、1次ターゲット層11の材質はあまり関係がない。なお、発生する量は1次ターゲット層11の原子番号のほぼ2乗に比例する。
【0023】
電子ビームのエネルギーが大きいと、連続X線の最大値が大きくなり発生するX線光子の数も増えて、相対的にセリウムの特性X線の効果が小さくなり、被ばく軽減の観点より好ましくない。電子ビームのエネルギーとしては、80〜100keV程度が適切である。
【0024】
[2次ターゲット層15]
1次ターゲット層11で発生した連続X線は、2次ターゲット層15中で光電効果を起こし、2次ターゲット層15を構成する原子の原子番号に対応したエネルギーの特性X線を発生する。
2次ターゲット層15の材料としては、セリウム、またはセリウムとベリリウム、ホウ素もしくは炭素などとの合金、化合物あるいは混合物が挙げられる。
【0025】
以下、2次ターゲット層15における特性X線の発生原理について説明する。
1次ターゲット層11で発生した連続X線が2次ターゲット層15に照射されると、連続X線と2次ターゲット層15の原子が光電効果という相互作用を起こす。光電効果を起こすと、連続X線は原子に吸収されて消滅し、原子からは光電子が飛び出す。飛び出してくる光電子は、主に最内殻(K殻)の電子であり、光電効果が起こると最内殻(K殻)の軌道に空きができる。最内殻(K殻)に空きがあると、主にその上の軌道(L殻)から電子が最内殻に落ちる。この時に発生するのが特性X線(単色X線、KX線)である。
【0026】
特性X線のエネルギーは、K殻にある電子の束縛エネルギーとL殻にある電子の束縛エネルギーの差となる。L殻の電子の方がゆるく原子核に束縛されているので、K殻に落ちる時に、その差のエネルギーを特性X線として放出する。特性X線のエネルギーは、原子番号によって決まり原子番号58のセリウムは、X線撮像、特にヨウ素を含む造影剤による血管造影に最適なエネルギーの特性X線を放出する。
ここで、2次ターゲット層15により原子番号の大きな原子の材料を用いれば、より高いエネルギーの単色X線を発生し、より小さな原子番号の原子の材料を用いれば、より低いエネルギーの特性X線を発生する。
【0027】
このように、2次ターゲット層15で、光電効果を起こして原子の最内殻に空きを作り出すには、その原子のK吸収端より大きいエネルギーのX線を照射しなければならない。K吸収端というのは、最内殻(K殻)の電子の束縛エネルギーのことで、このエネルギー以上のX線であれば、K殻の電子を光電子として放出させることができる。
【0028】
なお、K吸収端も、特性X線(KX線)のエネルギーも、原子番号のほぼ2乗に比例する。
【0029】
前述したように、発生する特性X線のエネルギーは、2次ターゲット層15の原子番号によって決まる。
医療診断においては、血管造影の際にヨウ素(I)が入った造影剤が使用されるため、ヨウ素のK吸収端より大きいX線を照射する必要があるが、特に被検体の厚みの薄い乳幼児の撮影においては、低エネルギーの方が良いコントラストが得られるので、ヨウ素のK吸収端をぎりぎり越える特性X線を放出するセリウム(原子番号58)が2次ターゲット層15の材料として適している。成人用においては、もう少し高い特性X線を放出するセリウムより原子番号の大きいものを使用することが望ましい場合もある。
2次ターゲット層には、1次ターゲット層で発生した熱を基材17に伝えるという役割もある。セリウムは、熱伝導率が11.4 W/(m・K) と小さいので、単体で用いるのは問題がある。この問題は、熱伝導率が201 W/(m・K)と大きいベリリウムとの合金または、混合物とすることで解決できる。ベリリウムは原子番号が4と小さいため連続X線や特性X線をほとんど吸収しないので、好ましい元素である。
【0030】
2次ターゲット層15には、1次ターゲット層11から基材17に向けて放出された連続X線が照射される。そして、2次ターゲット層15に達した連続X線によって発生した特性X線のうち、基材17と反対側に向けて放出された特性X線が、1次ターゲット層11を透過してX線取り出し側に出射される。
【0031】
[基材17]
基材17は、例えば、銅で形成されている。
基材17は、第1層で発生する熱を熱伝導で逃がす役割をする。銅は熱伝導率が401W/(m*K)と非常に大きいので、一般的には銅が用いられる。
【0032】
[X線発生装置3の動作例]
以下、上述したX線発生装置3の動作例(作用)を説明する。
電子ビーム発生部9が、例えば90keVの電子ビームを1次ターゲット層11に向けて出射する。
1次ターゲット層11は、上記電子ビームが照射されると、当該電子ビームと1次ターゲット層11内の原子(原子核)との間で制動放射(相互作用)が起こり、最大90keVまでの連続X線を発生する。
当該連続X線は、X線取り出し方向に向けて出射されると共に、2次ターゲット層15に照射される。
【0033】
2次ターゲット層15では、上記連続X線が達した部分で、光電効果が起こり、2次ターゲット層15の原子番号に対応した30keV台半ばから後半のエネルギーの特性X線が発生する。
2次ターゲット層15中で発生した特性X線のうち一部は1次ターゲット層11を透過してX線取り出し方向から出射される。
当該30keV台半ばから後半のエネルギーの特性X線は、例えば図1に示す被検体5の骨、脂肪および造影剤の間の良好なコントラストを得るために適切なエネルギーであり、X線診断システム1の用途に適している。
【0034】
そして、2次ターゲット層15において生成された特性X線および、1次ターゲット層11で発生した連続X線が、図2中左側の取り出し方向からX線発生装置3の外部に出射される。上記取り出し方向以外に向けて出射されたX線は、X線発生装置3の筐体によって装置内に封じられ、外部には漏れ出さない
【0035】
[X線発生装置3の効果]
以上説明したように、X線発生装置3によれば、従来と同程度の連続X線を発生し、且つ、撮像に最も適したエネルギーの特性X線を付加できる。これにより、例えば造影剤を用いた撮像において、同等の画像を得るための被ばく量を従来の1〜2割減にできる。
【0036】
X線発生装置3では、造影剤を用いた撮像において、被検体5の厚みを15g/cm2 (水15cm厚相当)、電子ビームのエネルギーを 90keVとすると、同じコントラスを得る際の被検体の被ばく量は、図5に示すように、従来に比べて18%減となる。
また、同じコントラストを得るために必要な電子ビームの強度も 18%減ということもできる。このような効果は、被検体の厚みが小さいほど大きい。
【0037】
X線発生装置3によれば、上述したように十分な量の特性X線を発生でき、後述するX線検出装置7との組み合わせにより、X線診断時における被検体5の被爆量をさらに軽減できる。
また、X線発生装置3は、小児用のX線診断に特に有効である。
【0038】
X線診断システム1によれば、2次ターゲット層15の材質として用いる原子の原子番号を選択することで、任意のエネルギーの特性X線を発生できる。
【0039】
[X線検出装置7]
X線検出装置7としては、例えば、特開2005−62169号公報に開示されているX線検出装置が用いられる。
当該X線検出装置は、コリメータ機能を備えたX線阻止部材と、X線検出機能とコリメータの中間材(支持材)としての機能とを併せ持つ半導体X線検器とを用いることで、高感度なX線検出が可能である。
X線診断システム1では、X線発生装置3で発生したX線を被検体5に照射し、被検体5を透過したX線をX線検出装置7で高感度検出してX線画像(投影)データを生成できる。
【0040】
<本実施形態の変形例>
図6は、本実施形態のX線発生装置103の構成図である。
図6に示すように、X線発生装置103のターゲットは、乳児・子供用部分80と成人用部分81とを有している。
図6に示すように、乳児・子供用部分80と成人用部分81とは厚み方向の構成が異なる。
乳児・子供用部分80は、1次ターゲット層111、2次ターゲット層115および基材17を順に配置して構成され、第1実施形態と同じ構成である。
成人用部分81は、1次ターゲット層111と基板17とで構成され、従来と同じ構成である。
すなわち、X線発生装置103のターゲットは、従来構成と第1実施形態の構成とを組み合わせて構成される。
【0041】
X線発生装置103の電子ビーム発生部109は、図6中上下方向に移動可能である。具体的には、電子ビーム発生部109は、電子ビームを乳児・子供用部分80に照射する位置と、成人用部分81に照射する位置との間で移動可能である。
【0042】
X線発生装置103は、乳児・子供を撮像する場合には、図6中実線の位置に電子ビーム発生部109を位置させて乳児・子供用部分80の部分に電子ビームを照射する。
これにより、第1実施形態で説明したように、従来と同程度の連続X線を発生し、且つ、撮像に最も適したエネルギーの特性X線を発生できる。これにより、従来に比べてコントラストを高めることができる。これは、被検体5の厚みが薄い場合やヨウ素を含む造影剤を用いた血管造影に特に有用である。
【0043】
また、X線発生装置103は、成人を撮像する場合には、図6中点線の位置に電子ビーム発生部109を位置させて成人用部分81の部分に電子ビームを照射する。被検体5の厚みが厚い場合や大量のX線を必要とする場合には、乳児・子供用部分80の構成に比べて成人用部分81の構成が有効な場合がある。このような場合に有用である。
【0044】
上述したように、X線発生装置103は、被検体5の属性に応じて、乳児・子供用部分80と成人用部分81とを切り換えて使用でき、双方の長所を利用することができる。
なお、図6に示す場合において、電子ビーム発生部109を固定し、ターゲット側を図中上下方向に移動するようにしてもよい。
【0045】
[シミュレーション]
以下、X線発生装置3のシミュレーションについて説明する。
本シミュレーションで用いたパラメータとしては電子ビームのエネルギー90keV,電子ビームの入射角:90度,タングステン層の厚み4μm,第2層はセリウム:ベリリウム=1:9とした。セリウム単体では、熱伝導率が悪く、融点も低いので、熱伝伝導率・融点が高く、X線をほとんど吸収しない原子番号4のベリリウムとの合金とした。
なお、シミュレーション用ソフトウェア「EGS5」を使用した。
【0046】
<電子ビーム発生部9からの電子ビームの入射角>
図7は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームの入射角依存性を示す図である。
電子の入射角 θ=90°(垂直入射)、θ=60°、θ=30°を試した。
これにより、電子ビームの入射角は、θ=90°(垂直入射)が最もよいが、θ=60°でも違いは約5%である。θ=30°になると、約30%低下する。
X線発生装置3では、例えば、1次ターゲット層11への電子ビームの入射角θが60°以上になるように設定する。
【0047】
<X線の放射角依存性>
図8は、X線のエネルギースペクトルにおけるX線の放射角依存性を示す図である。
1次ターゲット層11および2次ターゲット層15から放射されるX線を以下の4つの領域にわけて分析した。
このように COS θで均等に分けると、各領域の立体角も均等になるという特性があり都合が良い。
(1)
cos θ<0.25
(2)
0.25<cos θ<0.5
(3)
0.5 <cos θ<0.75
(4)
0.75<cos θ<1
図8を見ると、X線の放射角は、cos θ<0.25=90°(垂直放射)が最もよい。
特に肝心のセリウムの特性X線の量において放射角度の違いによる差が大きい。
それに対して連続X線部分は、相対的に差は小さい。
以下他のパラメータを考察する際は、cos θ<0.25(垂直放射)を用いた。
【0048】
<電子ビーム発生部9からの電子ビームのエネルギー>
図9は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームのエネルギー依存性を示す図である。
連続X線のエネルギーの最大値は、電子ビームのエネルギーである。
よって、電子ビームのエネルギーを大きくすると、連続X線の最大値が大きくなる。
また、セリウムの特性X線を含めてどのエネルギーにおいてもX線強度が大きくなる。
強度が大きくなるのは、良いことであるが、エネルギーの大きいX線が発生するのは、被ばくの観点から好ましくない。
総合的に判断して80〜100keVくらいが適当である。
ここでは、電子ビームのエネルギーとして80keV,90keV,100keVを比較してみた。
他のシミュレーションにおいては、電子ビームのエネルギーとして90keVを用いた。
【0049】
<1次ターゲット層11の厚み>
図10は、X線のエネルギースペクトルにおける1次ターゲット層の厚み依存性を示す図である。
1次ターゲット層11の役割は、効率良く制動放射X線(連続X線)を生成することであり、1次ターゲット層11は厚すぎても薄すぎてもいけない。厚すぎると2次ターゲット層15で発生したセリウムの特性X線が1次ターゲット層11で吸収されてしまう。
一方、1次ターゲット層11の厚みが薄すぎると、電子ビームが1次ターゲット層11で十分に制動放射X線を放出する前に2次ターゲット層15にしみだしてしまう。
本例は、1次ターゲット層11の厚みとして2μm,4μm,6μm を比較してみた。
2μmでは薄すぎ連続X線が十分に発生していないことがわかる。
6μmでは、セリウムの特性X線が吸収により少なくなっている。
この中では、4μmが一番良い。
他のシミュレーションにおいては、1次ターゲット層11の厚みとして4μmを用いた。
【0050】
<2次ターゲット層15の原子数比>
図11は、X線のエネルギースペクトルにおける2次ターゲット層15のセリウムとベリリウムとの混合比依存性を示す図である。
2次ターゲット層15の役割は、1次ターゲット層11で発生した連続X線を吸収し、撮像に最も適したエネルギーの特性X線を放出することである。
その役目をしているのがセリウム原子である。
2次ターゲット層15には、さらに1次ターゲット層11で発生した大量の熱を熱伝導により基材17(基板)に伝える役割もあるので、大きな熱伝導率を持っていなければならない。
セリウムの熱伝導率は、11.4W/(m・K)であり、1次ターゲット層11のタングステン
174W/(m・K)の10分の1以下しかなく、2次ターゲット層15をセリウム単体とするのは問題がある。
この問題は2次ターゲット層15をベリリウム(原子番号4)とセリウム(原子番号58)の合金とすることで解決する。ベリリウムは原子番号が4と小さいので、1次ターゲット層11で発生した連続X線や2次ターゲット層15で発生する特性X線をほとんど吸収しない。
また、ベリリウムは、熱伝導率が201W/(m・K) とタングステンより大きい。
図11に示すシミュレーションでは、2次ターゲット層15のセリウムとベリリウムの原子数比を(1)1:4, (2)1:9,(3)1:19の3通り行った。(1),(2),(3)ともに大きな違いはない。
他のシミュレーションでは、セリウム:ベリリウムを1:9とした。
【0051】
<X線フィルタの素材>
図7から図11の説明で用いた図は、ターゲットで発生する生のX線スペクトルである。
20keV以下のX線は、ほとんど被検体中で吸収されて透過しないため、被ばくの原因になるだけで撮像に寄与しない。
よって、この低エネルギーのX線はフィルタを用いて除去する。
フィルタの性能は、素材の原子番号と厚みで決定される。一般にはアルミニウムのフィルタを用いるが、本シミュレーションでは、アルミニウム(原子番号13)より良好な特性を示す原子番号22のチタンを用いた。チタンフィルタは、低エネルギーのX線を良く吸収し、最も有用なセリウムの特性X線を多く透過する。
【0052】
<X線フィルタの厚み>
図12は、X線のエネルギースペクトルにおけるフィルタの厚み依存性を示す図である。
フィルタを厚くすると、低エネルギーのX線は除去できるが、セリウムの特性X線等、有用なエネルギーのX線も損失する。よって適正なX線フィルタの厚みは、必要なX線強度等に依存する。
大強度のX線が必要な場合は、厚いX線フィルタを用いると強度不足になる場合がある。
また、被検体5の厚みや、撮影部位、造影剤の使用の有無等でも最も適したX線のエネルギーが異なるため、適切なフィルタの厚みは異なってくる。
ここでは、チタンフィルタの厚みを100μm,150μm,200μm
を比較してみた。
なお、他のシミュレーションにおいては、150μmのフィルタを用いた。
【0053】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、X線CT装置、X線TV装置、単純X線撮像装置等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係わるX線診断システムの全体構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係わるX線発生装置の断面構成図である。
【図3】図3は、図2に示すX線発生装置におけるX線発生原理を説明するための図である。
【図4】図4は、図2に示すX線発生装置から出射されるX線のエネルギーを従来技術と比較して説明するための図である。
【図5】図5は、図2に示すX線発生装置におけるX線による被検体の被ばく量を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明のその他の実施形態のX線発生装置の構成図である。
【図7】図7は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームの入射角依存性を示す図である。
【図8】図8は、X線のエネルギースペクトルにおけるX線の放射角依存性を示す図である。
【図9】図9は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームのエネルギー依存性を示す図である。
【図10】図10は、X線のエネルギースペクトルにおける1次ターゲット層の厚み依存性を示す図である。
【図11】図11は、X線のエネルギースペクトルにおける2次ターゲット層15のセリウムとベリリウムとの混合比依存性を示す図である。
【図12】図12は、X線のエネルギースペクトルにおけるフィルタの厚み依存性を示す図である。
【図13】図13は、従来のX線診断システムを説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
1…X線診断システム、3…X線発生装置、5…被検体、7…X線検出装置、9,109…電子ビーム発生部、11,111…1次ターゲット層、15,115…2次ターゲット層、17…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層からなるターゲットを用いて、従来の連続X線に任意のエネルギーの特性X線を付加できるX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
造影剤を用いたX線撮像を含め、医療用のX線撮像においては、例えば、図13に示すように、殆ど全てタングステン製のターゲットを採用したX線発生装置を用いている。また乳房用では、モリブテン製のターゲットも用いられている。そして、これらのターゲットに電子ビームを照射し、制動放射によって発生する連続X線を人体に照射している。
【0003】
このようなX線発生装置では、高エネルギーの電子をタングステンターゲットに照射し、制動放射による連続X線を用いており、効率の悪い低エネルギーのX線や高エネルギーのX線も一緒に照射している。この制動放射が起こっているのは、タングステンの表面付近の数ミクロンの厚さの領域である。発生するX線は、ほぼ等方的に放射され、被検体の向き(電子ビームの向きと逆)に放射されたX線だけが利用される。
【0004】
【特許文献1】特開平10−50242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のX線発生装置では、ターゲットからX線取り出し方向とは逆向きに放出されたX線はほとんど利用されず、非効率である。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために、X線撮像において有用な特性X線の発生量を従来に比べて増大できるX線発生装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、X線撮像において最適なエネルギーの特性X線を付加できるX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明のX線発生装置は、電子出射手段と、前記電子出射手段からの電子が照射されると制動放射によって1次X線を発生する1次ターゲット層と、前記1次ターゲット層に対して、前記電子出射手段と反対側に位置し、前記1次ターゲット層が発生した前記1次X線を受けて、所定のエネルギーの特性X線を発生する2次ターゲット層とを有し、前記電子出射手段が配置された側に向けて前記1次X線および前記特性X線を取り出す。
【0008】
本発明のX線発生装置では、1次ターゲット層から制動放射によって発生した1次X線のうち、X線取り出し側と反対側に放出された1次X線が2次ターゲット層に達する。
そして、2次ターゲット層にて照射された1次X線によって特性X線が発生する。この特性X線のうち、上記X線取り出し側に放出された特性X線は、1次ターゲット層を透過して、X線取り出し側に出射される。
【0009】
本発明のX線発生装置は、前記2次ターゲット層に対して前記1次ターゲット層と反対側に配置され、前記1次ターゲット層で発生した熱を逃がす基板を有する。
【0010】
好適には、本発明のX線発生装置の前記1次ターゲット層の厚みは、2〜10μmであり、前記2次ターゲット層は、セリウムとベリリウム、セリウムとホウ素またはセリウムと炭素からなる合金、化合物または混合物で構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線撮像において最適なエネルギーのX線の発生量を従来に比べて増大できるX線発生装置を提供することができる。
また、本発明によれば、ターゲットからX線取り出し方向とは逆向きに放出されたX線を利用して、X線撮像において最適なエネルギーの特性X線を付加できる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係わるX線診断システムについて説明する。
先ず、本実施形態の構成要素と、本発明の構成要素との対応関係を説明する。
X線発生装置3が本発明のX線発生装置の一例である。電子ビーム発生部9が本発明の電子出射手段の一例であり、1次ターゲット層11が本発明の1次ターゲットの一例であり、2次ターゲット層15が本発明の2次ターゲットの一例である。基材17が本発明の基板の一例である。
また、1次ターゲット層11が発生する連続X線が本発明の1次X線の一例であり、2次ターゲット層15が発生する特性X線が本発明の特性X線の一例である。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わるX線診断システム1の全体構成図である。図2は、本発明の実施形態に係わるX線発生装置3の断面構成図である。
図1に示すように、X線診断システム1は、X線発生装置3で発生したX線を被検体5に照射し、被検体5を透過したX線をX線検出装置7で検出してX線画像(投影)データを生成する。
【0014】
本実施形態では、X線発生装置3において、例えば、X線画像において骨、脂肪および造影剤等の間に十分なコントラストを得るために適切なエネルギーの特性X線を効率的に生成することを特徴としている。当該エネルギーは、被検体5の厚みが20cm程度の場合、30keV台半ばから後半である。
【0015】
従来では、前述したように、高エネルギーの電子をタングステンターゲットに照射し、制動放射による連続X線を用いており、効率の悪い低エネルギーのX線や高エネルギーのX線も一緒に照射している。この制動放射が起こっているのは、タングステンの表面付近の数ミクロンの厚さの領域である。発生するX線は、ほぼ等方的に放射され、被検体の向き(電子ビームの向きと逆)に放射されたX線だけが利用される(図13参照)。
これに対して、本実施形態のX線発生装置3では、従来技術では無駄になっていた被検体5と逆向き(電子ビームの向き)に放射されたX線を有効利用する。図2および図3に示すように、制動放射を起こす数ミクロンのタングステンの内側に造影剤の撮像に最も効率のよいエネルギーの特性X線を放射する元素(例えばセリウム)を含む層を配置すると、無駄になっていたX線が、セリウム原子で光電効果を起こし、原子が基底状態に戻る際に特性X線(34〜40keV)を放射する。
タングステンのK吸収端は、69.5keVであるが、セリウムの放射する特性X線は、タングステンのK吸収端よりエネルギーが小さいので、表面のタングステン層で大きく吸収されることなく通過することができる。得られるX線のスペクトルは図4に示すようになる。
なお、2次ターゲット層15は、例えば、セリウムとベリリウムとを原子数比1:9で混合して得られた合金または混合物で構成される。
【0016】
以下、X線発生装置3について詳細に説明する。
図2に示すように、X線発生装置3では、例えば、電子ビーム発生部9から所定の距離にを隔てて1次ターゲット層11が配設されている。
1次ターゲット層11に対して電子ビーム発生部9と反対側には、2次ターゲット層15および基材17が順に接合して配置されている。
【0017】
X線発生装置3では、電子ビーム発生部9からの電子ビームを1次ターゲット層11に照射すると、1次ターゲット層11内で制動放射が起こり、1次X線としての連続X線が発生する。ここで、制動放射とは、高速の電子が原子核の作る電場で曲げられることによってX線を発生する現象である。
【0018】
そして、この連続X線が、X線取り出し方向に射出されると共に、その反対側の2次ターゲット層15に照射され、2次ターゲット層15内で光電効果が起こり、2次ターゲット層15の原子番号に対応したエネルギーの特性X線が発生する。
2次ターゲット層15で発生した特性X線の一部は、X線取り出し方向からX線発生装置3の外部に出射される。残りの特性X線は、基材17等や筐体等によって遮蔽されてX線発生装置3の外部には漏れないようにX線発生装置3が構成されている。
【0019】
[1次ターゲット層11]
1次ターゲット層11は、例えば、タングステンであり、2次ターゲット層15の上に形成されている。
なお、1次ターゲット層11の材料としては、タングステン、金、白金またはこれらの金属を主成分とする合金が挙げられる。
1次ターゲット層11は、電子ビーム発生部9から例えば90keVの電子ビームが照射されると、当該電子ビームと1次ターゲット層11内の原子(原子核)との間で制動放射(相互作用)が起こり、最大90keVまで連続X線が発生する。
1次ターゲット層11の厚みは、タングステン中における電子ビームの飛程に応じて決定され、例えば、2〜10μm、好ましくは4μm程度が適当である。なお、1次ターゲット層11の厚みを厚くし過ぎると、2次ターゲット層15で発生した特性X線が1次ターゲット層11内で吸収される割合が高くなる。
【0020】
1次ターゲット層11には、例えば、以下の性質が要求される。
(1−1)原子番号が大きい。タングステンは原子番号74であり、適切である。1次X線は、制動放射によって生成されるが、制動放射は原子番号の約2乗に比例するため、原子番号の大きいものが良い。
(1−2)融点が高い。電子ビームを照射した部分は、電子の運動エネルギーがほとんど熱エネルギーになり、高温になる。よって融点の低い物質は融解してしまう。タングステンの融点は、約3400℃であり、1次ターゲット層11の材料に適している。
(1−3)熱伝導率が大きい。電子ビームの焦点で1次ターゲット層11が融解しないように、上記(1−2)で述べた融点が高いことに加えて、発生した熱を熱伝導により、逃がす特性も重要である。タングステンの熱伝導率は、173[W/(m・K)]であり、大きい。
【0021】
上記(1−1),(1−2),(1−3)の条件を満たす物質は限られたものになる。現在医療診断で使用されているX線発生装置のターゲットは、ほとんどがタングステンまたはタングステンを主成分とする合金である。一部X線のエネルギーが低い乳房等の撮影では、モリブテン等の他の物質が使用される場合もある。
【0022】
ところで、1次ターゲット層11で発生する連続X線のうち、2次ターゲット層15中の原子(セリウム)のK吸収端以上のエネルギーのみが特性X線の発生に有効である。よって、1次ターゲット層11が発生する連続X線は、2次ターゲット15層中の原子(セリウム)のK吸収端より高いエネルギーのX線を含んでいる必要がある。連続X線の最高エネルギーは、照射する電子ビームのエネルギーでほぼ決まり、1次ターゲット層11の材質はあまり関係がない。なお、発生する量は1次ターゲット層11の原子番号のほぼ2乗に比例する。
【0023】
電子ビームのエネルギーが大きいと、連続X線の最大値が大きくなり発生するX線光子の数も増えて、相対的にセリウムの特性X線の効果が小さくなり、被ばく軽減の観点より好ましくない。電子ビームのエネルギーとしては、80〜100keV程度が適切である。
【0024】
[2次ターゲット層15]
1次ターゲット層11で発生した連続X線は、2次ターゲット層15中で光電効果を起こし、2次ターゲット層15を構成する原子の原子番号に対応したエネルギーの特性X線を発生する。
2次ターゲット層15の材料としては、セリウム、またはセリウムとベリリウム、ホウ素もしくは炭素などとの合金、化合物あるいは混合物が挙げられる。
【0025】
以下、2次ターゲット層15における特性X線の発生原理について説明する。
1次ターゲット層11で発生した連続X線が2次ターゲット層15に照射されると、連続X線と2次ターゲット層15の原子が光電効果という相互作用を起こす。光電効果を起こすと、連続X線は原子に吸収されて消滅し、原子からは光電子が飛び出す。飛び出してくる光電子は、主に最内殻(K殻)の電子であり、光電効果が起こると最内殻(K殻)の軌道に空きができる。最内殻(K殻)に空きがあると、主にその上の軌道(L殻)から電子が最内殻に落ちる。この時に発生するのが特性X線(単色X線、KX線)である。
【0026】
特性X線のエネルギーは、K殻にある電子の束縛エネルギーとL殻にある電子の束縛エネルギーの差となる。L殻の電子の方がゆるく原子核に束縛されているので、K殻に落ちる時に、その差のエネルギーを特性X線として放出する。特性X線のエネルギーは、原子番号によって決まり原子番号58のセリウムは、X線撮像、特にヨウ素を含む造影剤による血管造影に最適なエネルギーの特性X線を放出する。
ここで、2次ターゲット層15により原子番号の大きな原子の材料を用いれば、より高いエネルギーの単色X線を発生し、より小さな原子番号の原子の材料を用いれば、より低いエネルギーの特性X線を発生する。
【0027】
このように、2次ターゲット層15で、光電効果を起こして原子の最内殻に空きを作り出すには、その原子のK吸収端より大きいエネルギーのX線を照射しなければならない。K吸収端というのは、最内殻(K殻)の電子の束縛エネルギーのことで、このエネルギー以上のX線であれば、K殻の電子を光電子として放出させることができる。
【0028】
なお、K吸収端も、特性X線(KX線)のエネルギーも、原子番号のほぼ2乗に比例する。
【0029】
前述したように、発生する特性X線のエネルギーは、2次ターゲット層15の原子番号によって決まる。
医療診断においては、血管造影の際にヨウ素(I)が入った造影剤が使用されるため、ヨウ素のK吸収端より大きいX線を照射する必要があるが、特に被検体の厚みの薄い乳幼児の撮影においては、低エネルギーの方が良いコントラストが得られるので、ヨウ素のK吸収端をぎりぎり越える特性X線を放出するセリウム(原子番号58)が2次ターゲット層15の材料として適している。成人用においては、もう少し高い特性X線を放出するセリウムより原子番号の大きいものを使用することが望ましい場合もある。
2次ターゲット層には、1次ターゲット層で発生した熱を基材17に伝えるという役割もある。セリウムは、熱伝導率が11.4 W/(m・K) と小さいので、単体で用いるのは問題がある。この問題は、熱伝導率が201 W/(m・K)と大きいベリリウムとの合金または、混合物とすることで解決できる。ベリリウムは原子番号が4と小さいため連続X線や特性X線をほとんど吸収しないので、好ましい元素である。
【0030】
2次ターゲット層15には、1次ターゲット層11から基材17に向けて放出された連続X線が照射される。そして、2次ターゲット層15に達した連続X線によって発生した特性X線のうち、基材17と反対側に向けて放出された特性X線が、1次ターゲット層11を透過してX線取り出し側に出射される。
【0031】
[基材17]
基材17は、例えば、銅で形成されている。
基材17は、第1層で発生する熱を熱伝導で逃がす役割をする。銅は熱伝導率が401W/(m*K)と非常に大きいので、一般的には銅が用いられる。
【0032】
[X線発生装置3の動作例]
以下、上述したX線発生装置3の動作例(作用)を説明する。
電子ビーム発生部9が、例えば90keVの電子ビームを1次ターゲット層11に向けて出射する。
1次ターゲット層11は、上記電子ビームが照射されると、当該電子ビームと1次ターゲット層11内の原子(原子核)との間で制動放射(相互作用)が起こり、最大90keVまでの連続X線を発生する。
当該連続X線は、X線取り出し方向に向けて出射されると共に、2次ターゲット層15に照射される。
【0033】
2次ターゲット層15では、上記連続X線が達した部分で、光電効果が起こり、2次ターゲット層15の原子番号に対応した30keV台半ばから後半のエネルギーの特性X線が発生する。
2次ターゲット層15中で発生した特性X線のうち一部は1次ターゲット層11を透過してX線取り出し方向から出射される。
当該30keV台半ばから後半のエネルギーの特性X線は、例えば図1に示す被検体5の骨、脂肪および造影剤の間の良好なコントラストを得るために適切なエネルギーであり、X線診断システム1の用途に適している。
【0034】
そして、2次ターゲット層15において生成された特性X線および、1次ターゲット層11で発生した連続X線が、図2中左側の取り出し方向からX線発生装置3の外部に出射される。上記取り出し方向以外に向けて出射されたX線は、X線発生装置3の筐体によって装置内に封じられ、外部には漏れ出さない
【0035】
[X線発生装置3の効果]
以上説明したように、X線発生装置3によれば、従来と同程度の連続X線を発生し、且つ、撮像に最も適したエネルギーの特性X線を付加できる。これにより、例えば造影剤を用いた撮像において、同等の画像を得るための被ばく量を従来の1〜2割減にできる。
【0036】
X線発生装置3では、造影剤を用いた撮像において、被検体5の厚みを15g/cm2 (水15cm厚相当)、電子ビームのエネルギーを 90keVとすると、同じコントラスを得る際の被検体の被ばく量は、図5に示すように、従来に比べて18%減となる。
また、同じコントラストを得るために必要な電子ビームの強度も 18%減ということもできる。このような効果は、被検体の厚みが小さいほど大きい。
【0037】
X線発生装置3によれば、上述したように十分な量の特性X線を発生でき、後述するX線検出装置7との組み合わせにより、X線診断時における被検体5の被爆量をさらに軽減できる。
また、X線発生装置3は、小児用のX線診断に特に有効である。
【0038】
X線診断システム1によれば、2次ターゲット層15の材質として用いる原子の原子番号を選択することで、任意のエネルギーの特性X線を発生できる。
【0039】
[X線検出装置7]
X線検出装置7としては、例えば、特開2005−62169号公報に開示されているX線検出装置が用いられる。
当該X線検出装置は、コリメータ機能を備えたX線阻止部材と、X線検出機能とコリメータの中間材(支持材)としての機能とを併せ持つ半導体X線検器とを用いることで、高感度なX線検出が可能である。
X線診断システム1では、X線発生装置3で発生したX線を被検体5に照射し、被検体5を透過したX線をX線検出装置7で高感度検出してX線画像(投影)データを生成できる。
【0040】
<本実施形態の変形例>
図6は、本実施形態のX線発生装置103の構成図である。
図6に示すように、X線発生装置103のターゲットは、乳児・子供用部分80と成人用部分81とを有している。
図6に示すように、乳児・子供用部分80と成人用部分81とは厚み方向の構成が異なる。
乳児・子供用部分80は、1次ターゲット層111、2次ターゲット層115および基材17を順に配置して構成され、第1実施形態と同じ構成である。
成人用部分81は、1次ターゲット層111と基板17とで構成され、従来と同じ構成である。
すなわち、X線発生装置103のターゲットは、従来構成と第1実施形態の構成とを組み合わせて構成される。
【0041】
X線発生装置103の電子ビーム発生部109は、図6中上下方向に移動可能である。具体的には、電子ビーム発生部109は、電子ビームを乳児・子供用部分80に照射する位置と、成人用部分81に照射する位置との間で移動可能である。
【0042】
X線発生装置103は、乳児・子供を撮像する場合には、図6中実線の位置に電子ビーム発生部109を位置させて乳児・子供用部分80の部分に電子ビームを照射する。
これにより、第1実施形態で説明したように、従来と同程度の連続X線を発生し、且つ、撮像に最も適したエネルギーの特性X線を発生できる。これにより、従来に比べてコントラストを高めることができる。これは、被検体5の厚みが薄い場合やヨウ素を含む造影剤を用いた血管造影に特に有用である。
【0043】
また、X線発生装置103は、成人を撮像する場合には、図6中点線の位置に電子ビーム発生部109を位置させて成人用部分81の部分に電子ビームを照射する。被検体5の厚みが厚い場合や大量のX線を必要とする場合には、乳児・子供用部分80の構成に比べて成人用部分81の構成が有効な場合がある。このような場合に有用である。
【0044】
上述したように、X線発生装置103は、被検体5の属性に応じて、乳児・子供用部分80と成人用部分81とを切り換えて使用でき、双方の長所を利用することができる。
なお、図6に示す場合において、電子ビーム発生部109を固定し、ターゲット側を図中上下方向に移動するようにしてもよい。
【0045】
[シミュレーション]
以下、X線発生装置3のシミュレーションについて説明する。
本シミュレーションで用いたパラメータとしては電子ビームのエネルギー90keV,電子ビームの入射角:90度,タングステン層の厚み4μm,第2層はセリウム:ベリリウム=1:9とした。セリウム単体では、熱伝導率が悪く、融点も低いので、熱伝伝導率・融点が高く、X線をほとんど吸収しない原子番号4のベリリウムとの合金とした。
なお、シミュレーション用ソフトウェア「EGS5」を使用した。
【0046】
<電子ビーム発生部9からの電子ビームの入射角>
図7は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームの入射角依存性を示す図である。
電子の入射角 θ=90°(垂直入射)、θ=60°、θ=30°を試した。
これにより、電子ビームの入射角は、θ=90°(垂直入射)が最もよいが、θ=60°でも違いは約5%である。θ=30°になると、約30%低下する。
X線発生装置3では、例えば、1次ターゲット層11への電子ビームの入射角θが60°以上になるように設定する。
【0047】
<X線の放射角依存性>
図8は、X線のエネルギースペクトルにおけるX線の放射角依存性を示す図である。
1次ターゲット層11および2次ターゲット層15から放射されるX線を以下の4つの領域にわけて分析した。
このように COS θで均等に分けると、各領域の立体角も均等になるという特性があり都合が良い。
(1)
cos θ<0.25
(2)
0.25<cos θ<0.5
(3)
0.5 <cos θ<0.75
(4)
0.75<cos θ<1
図8を見ると、X線の放射角は、cos θ<0.25=90°(垂直放射)が最もよい。
特に肝心のセリウムの特性X線の量において放射角度の違いによる差が大きい。
それに対して連続X線部分は、相対的に差は小さい。
以下他のパラメータを考察する際は、cos θ<0.25(垂直放射)を用いた。
【0048】
<電子ビーム発生部9からの電子ビームのエネルギー>
図9は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームのエネルギー依存性を示す図である。
連続X線のエネルギーの最大値は、電子ビームのエネルギーである。
よって、電子ビームのエネルギーを大きくすると、連続X線の最大値が大きくなる。
また、セリウムの特性X線を含めてどのエネルギーにおいてもX線強度が大きくなる。
強度が大きくなるのは、良いことであるが、エネルギーの大きいX線が発生するのは、被ばくの観点から好ましくない。
総合的に判断して80〜100keVくらいが適当である。
ここでは、電子ビームのエネルギーとして80keV,90keV,100keVを比較してみた。
他のシミュレーションにおいては、電子ビームのエネルギーとして90keVを用いた。
【0049】
<1次ターゲット層11の厚み>
図10は、X線のエネルギースペクトルにおける1次ターゲット層の厚み依存性を示す図である。
1次ターゲット層11の役割は、効率良く制動放射X線(連続X線)を生成することであり、1次ターゲット層11は厚すぎても薄すぎてもいけない。厚すぎると2次ターゲット層15で発生したセリウムの特性X線が1次ターゲット層11で吸収されてしまう。
一方、1次ターゲット層11の厚みが薄すぎると、電子ビームが1次ターゲット層11で十分に制動放射X線を放出する前に2次ターゲット層15にしみだしてしまう。
本例は、1次ターゲット層11の厚みとして2μm,4μm,6μm を比較してみた。
2μmでは薄すぎ連続X線が十分に発生していないことがわかる。
6μmでは、セリウムの特性X線が吸収により少なくなっている。
この中では、4μmが一番良い。
他のシミュレーションにおいては、1次ターゲット層11の厚みとして4μmを用いた。
【0050】
<2次ターゲット層15の原子数比>
図11は、X線のエネルギースペクトルにおける2次ターゲット層15のセリウムとベリリウムとの混合比依存性を示す図である。
2次ターゲット層15の役割は、1次ターゲット層11で発生した連続X線を吸収し、撮像に最も適したエネルギーの特性X線を放出することである。
その役目をしているのがセリウム原子である。
2次ターゲット層15には、さらに1次ターゲット層11で発生した大量の熱を熱伝導により基材17(基板)に伝える役割もあるので、大きな熱伝導率を持っていなければならない。
セリウムの熱伝導率は、11.4W/(m・K)であり、1次ターゲット層11のタングステン
174W/(m・K)の10分の1以下しかなく、2次ターゲット層15をセリウム単体とするのは問題がある。
この問題は2次ターゲット層15をベリリウム(原子番号4)とセリウム(原子番号58)の合金とすることで解決する。ベリリウムは原子番号が4と小さいので、1次ターゲット層11で発生した連続X線や2次ターゲット層15で発生する特性X線をほとんど吸収しない。
また、ベリリウムは、熱伝導率が201W/(m・K) とタングステンより大きい。
図11に示すシミュレーションでは、2次ターゲット層15のセリウムとベリリウムの原子数比を(1)1:4, (2)1:9,(3)1:19の3通り行った。(1),(2),(3)ともに大きな違いはない。
他のシミュレーションでは、セリウム:ベリリウムを1:9とした。
【0051】
<X線フィルタの素材>
図7から図11の説明で用いた図は、ターゲットで発生する生のX線スペクトルである。
20keV以下のX線は、ほとんど被検体中で吸収されて透過しないため、被ばくの原因になるだけで撮像に寄与しない。
よって、この低エネルギーのX線はフィルタを用いて除去する。
フィルタの性能は、素材の原子番号と厚みで決定される。一般にはアルミニウムのフィルタを用いるが、本シミュレーションでは、アルミニウム(原子番号13)より良好な特性を示す原子番号22のチタンを用いた。チタンフィルタは、低エネルギーのX線を良く吸収し、最も有用なセリウムの特性X線を多く透過する。
【0052】
<X線フィルタの厚み>
図12は、X線のエネルギースペクトルにおけるフィルタの厚み依存性を示す図である。
フィルタを厚くすると、低エネルギーのX線は除去できるが、セリウムの特性X線等、有用なエネルギーのX線も損失する。よって適正なX線フィルタの厚みは、必要なX線強度等に依存する。
大強度のX線が必要な場合は、厚いX線フィルタを用いると強度不足になる場合がある。
また、被検体5の厚みや、撮影部位、造影剤の使用の有無等でも最も適したX線のエネルギーが異なるため、適切なフィルタの厚みは異なってくる。
ここでは、チタンフィルタの厚みを100μm,150μm,200μm
を比較してみた。
なお、他のシミュレーションにおいては、150μmのフィルタを用いた。
【0053】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、X線CT装置、X線TV装置、単純X線撮像装置等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係わるX線診断システムの全体構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係わるX線発生装置の断面構成図である。
【図3】図3は、図2に示すX線発生装置におけるX線発生原理を説明するための図である。
【図4】図4は、図2に示すX線発生装置から出射されるX線のエネルギーを従来技術と比較して説明するための図である。
【図5】図5は、図2に示すX線発生装置におけるX線による被検体の被ばく量を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明のその他の実施形態のX線発生装置の構成図である。
【図7】図7は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームの入射角依存性を示す図である。
【図8】図8は、X線のエネルギースペクトルにおけるX線の放射角依存性を示す図である。
【図9】図9は、X線のエネルギースペクトルにおける電子ビームのエネルギー依存性を示す図である。
【図10】図10は、X線のエネルギースペクトルにおける1次ターゲット層の厚み依存性を示す図である。
【図11】図11は、X線のエネルギースペクトルにおける2次ターゲット層15のセリウムとベリリウムとの混合比依存性を示す図である。
【図12】図12は、X線のエネルギースペクトルにおけるフィルタの厚み依存性を示す図である。
【図13】図13は、従来のX線診断システムを説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
1…X線診断システム、3…X線発生装置、5…被検体、7…X線検出装置、9,109…電子ビーム発生部、11,111…1次ターゲット層、15,115…2次ターゲット層、17…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子出射手段と、
前記電子出射手段からの電子が照射されると制動放射によって1次X線を発生する1次ターゲット層と、
前記1次ターゲット層に対して、前記電子出射手段と反対側に位置し、前記1次ターゲット層が発生した前記1次X線を受けて、所定のエネルギーの特性X線を発生する2次ターゲット層と
を有し、
前記電子出射手段が配置された側に向けて前記1次X線および前記特性X線を取り出す
X線発生装置。
【請求項2】
前記2次ターゲット層に対して前記1次ターゲット層と反対側に配置され、前記1次ターゲット層で発生した熱を逃がす基板
をさらに有する請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記1次ターゲット層は、タングステン、金、白金またはこれらの金属を主成分とする合金で構成されており、
前記2次ターゲット層は、セリウムまたは、セリウムを含む合金、化合物または混合物で構成されている
請求項1または請求項2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記1次ターゲット層の厚みは、2〜10μmであり、
前記2次ターゲット層は、セリウムとベリリウム、セリウムとホウ素または、セリウムと炭素からなる合金、化合物または混合物で構成されている
請求項1〜3のいずれかに記載のX線発生装置。
【請求項1】
電子出射手段と、
前記電子出射手段からの電子が照射されると制動放射によって1次X線を発生する1次ターゲット層と、
前記1次ターゲット層に対して、前記電子出射手段と反対側に位置し、前記1次ターゲット層が発生した前記1次X線を受けて、所定のエネルギーの特性X線を発生する2次ターゲット層と
を有し、
前記電子出射手段が配置された側に向けて前記1次X線および前記特性X線を取り出す
X線発生装置。
【請求項2】
前記2次ターゲット層に対して前記1次ターゲット層と反対側に配置され、前記1次ターゲット層で発生した熱を逃がす基板
をさらに有する請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記1次ターゲット層は、タングステン、金、白金またはこれらの金属を主成分とする合金で構成されており、
前記2次ターゲット層は、セリウムまたは、セリウムを含む合金、化合物または混合物で構成されている
請求項1または請求項2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記1次ターゲット層の厚みは、2〜10μmであり、
前記2次ターゲット層は、セリウムとベリリウム、セリウムとホウ素または、セリウムと炭素からなる合金、化合物または混合物で構成されている
請求項1〜3のいずれかに記載のX線発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−54562(P2009−54562A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31563(P2008−31563)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】
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