説明

X線管装置

【課題】磁場発生器における温度の上昇を抑制することができるX線管装置を提供することを目的とする。
【解決手段】熱伝導率が互いに異なる複数の部品として、鉄からなる磁性部4Aと銅からなる高熱伝導部4Bとを採用して、磁場発生器4を、磁性部4Aおよび高熱伝導部4Bの積層構造に構成する。部品のうち高い方の熱伝導率である高熱伝導部4Bが放熱作用を有するように、冷却用のオイルなどに代表される冷媒あるいは磁場発生器4を固定する固定部を高熱伝導部4Bに接触させる。このように放熱作用を有することで、磁場発生器4で発生した熱は、部品のうち高い方の熱伝導率である高熱伝導部4に熱伝導して、放熱する。その結果、磁場発生器4における温度の上昇を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ビームの陽極への衝突によりX線を発生させるX線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線管装置としては、陽極が外囲器と一体となって回転する外囲器回転型のX線管装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。かかる外囲器回転型のX線管装置では、X線管本体内の軸中心に設けられた陰極の電子源から発生させた電子ビームを、X線管本体の外に設けられた磁場発生器で集束、偏向させて、陽極のターゲットディスク上の所定位置に焦点を形成する。磁場発生器はコイルと磁極とヨークとで構成され、電子ビームを集束させるための集束磁場を発生させるが、同時に、電子ビームを偏向させる偏向磁場を重畳して発生させることができる。そのような磁場発生器としては、例えば、四重極磁場レンズや八重極磁場レンズがある。外囲器回転型X線管の陽極は外囲器と一体となって回転するので、集束、偏向した電子ビームがターゲットディスク上の一点に衝突することがない。したがって、電子ビームの衝突で発生した熱はターゲットディスク上の円周領域に広がり、ターゲットディスクの溶融を防止することができる。また、電子ビームの衝突で発生した熱は外囲器と一体となった陽極のターゲットからX線管外へ熱伝導で放熱される。したがって、X線管の冷却効率が良く、冷却時間をとることなくX線の連続照射も可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,993,055号明細書
【特許文献2】米国特許第5,883,936号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる磁場発生器はX線管本体である外囲器の外に置かれるので、電子ビームまで遠く、磁場発生器には高い起磁力(磁場発生器に流す電流とコイルの巻数との積)が必要でコイルの発熱量が増大する。特許文献2に記載の磁場発生器では、ヨークが熱伝導率の低い鉄のみで構成されているので、コイルで発生した熱が、効率的に磁場発生器の外に放熱されない。したがって、コイルやヨークの温度が上昇し、X線管からX線を連続照射できないという問題が生じる。また、コイル温度の上昇により高いエネルギのX線を照射できないという問題も生じる。それを防止するために、コイルの線径を太くする、あるいはコイルの巻数を増やすという手段があるが、コイルが大きくなるという問題が生じる。また、より高エネルギの電子ビームを集束、偏向させるためには、強い磁場を発生する必要があり、より大きな放熱が磁場発生器に必要になる。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、磁場発生器における温度の上昇を抑制することができるX線管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、電子ビームの陽極への衝突によりX線を発生させるX線管装置であって、電子ビームを集束、偏向させるために磁場を発生させる磁場発生器を備え、その磁場発生器を、熱伝導率が互いに異なる複数の部品からなる積層構造に構成し、前記部品のうち少なくとも1つを磁性材で形成することを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、磁場発生器を、熱伝導率が互いに異なる複数の部品からなる積層構造に構成し、上述した部品のうち少なくとも1つを磁性材で形成することで、磁場発生器で発生した熱は、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品に熱伝導して、放熱作用によって放熱する。その結果、磁場発生器のコイルで発生する熱による温度の上昇を抑制することができる。その結果、温度の上昇の抑制によりX線の連続差動時間を長くすることができる。また、従来よりも強い磁場を発生することができ、高いエネルギのX線を発生させることができる。また、温度の上昇の抑制により、磁場発生器のコイルの線径を太くしたり、コイルの巻数を増やす必要がなくなるので、コイルの線径を細くして、コイルの巻数が減って、コイルを小さくすることもできる。
【0008】
上述した発明のX線管装置において、磁場発生器を、磁極とそれを支持してX線管本体の外周部を囲む環状のヨークとで構成し、少なくともヨークを上述した積層構造に構成してもよいし(請求項2に記載の発明)、少なくとも磁極を上述した積層構造に構成してもよい(請求項3に記載の発明)。したがって、熱の発生箇所に応じて、ヨークを積層構造にせずに磁極を積層構造に構成してもよいし、磁極を積層構造にせずにヨークを積層構造に構成してもよいし、磁極およびヨークをともに積層構造に構成してもよい。
【0009】
また、上述した構成の具体的な例として下記のようなものが挙げられる。例えば、冷媒を上述した部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品に接触させることで、その部品が放熱作用を有する構成である。上述した部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品は、その部品に接触された冷媒によって冷却される結果、放熱作用を有する。あるいは、他の一例では、磁場発生器を真空中に固定する固定部を備え、その固定部を上述した部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品に接触させることで、その部品が放熱作用を有する構成である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るX線管装置によれば、磁場発生器を、熱伝導率が互いに異なる複数の部品からなる積層構造に構成し、上述した部品のうち少なくとも1つを磁性材で形成することで、磁場発生器で発生した熱は、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品に熱伝導して、放熱作用によって放熱する。その結果、磁場発生器における温度の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は各実施例に係るX線管装置の概略側面図、(b)は実施例1に係るX線管装置の磁場発生器の概略正面図、(c)は(b)の磁場発生器におけるヨークの側面図である。
【図2】(a)は実施例2に係るX線管装置の磁場発生器の概略正面図、(b)は(a)の磁場発生器におけるヨークおよびそれを固定する固定部の側面図である。
【図3】(a)〜(c)は変形例に係る磁場発生器におけるヨークの側面図である。
【実施例1】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1(a)は、各実施例に係るX線管装置の概略側面図であり、図1(b)は、実施例1に係るX線管装置の磁場発生器の概略正面図であり、図1(c)は、図1(b)の磁場発生器におけるヨークの側面図である。
【0013】
後述する実施例2も含めて、図1(a)に示すように、本実施例1に係る外囲器回転型のX線管装置1は、電子ビームBを発生させる陰極2と、その陰極2を溝の中に取り付けた円筒電極3と、陰極2からの電子ビームBを集束、偏向させるために磁場を発生させる磁場発生器4と、その磁場発生器4によって集束、偏向した電子ビームBの衝突によりX線を発生させる陽極5と、陰極2,円筒電極3および陽極5を内部に収容し、陽極5と一体となって回転する外囲器6とを備えている。
【0014】
電子ビームBの軸O中心に陰極2とともに円筒電極3を配設している。陰極2は、例えばタングステンで形成されたフィラメントで構成されている。フィラメントを高温に加熱することで熱電子を放出して電子ビームBを発生させる。陰極2は、フィラメントなどに代表される熱電子放出型の他に、電界放出型であってもよく特に限定されない。
【0015】
本発明の磁場発生器4は、図1(b)に示すように、複数(図1(b)では4つ)の磁極4aとそれらを支持する多角形(図1(b)では八角形)のヨーク4bとで構成される。ヨーク4bは、図1(a)に示すように、X線管本体である外囲器6の外周部を囲む環状に構成されている。磁極4aにはコイル4cが直接巻かれている。別の構成として、コイル4cはボビン(筒)に巻かれ、そのボビンを磁極4aに差し込むことで、磁極4aにコイル4cを巻いてもよい。なお、後述するコイル4cに発生する熱を、ヨーク4bを介して逃がすために、磁極4aあるいはヨーク4bの後述する磁性部4A(図1(c)を参照)にコイル4cと接触させて、磁性部4Aに接触熱抵抗が低くなるように固定する。磁極4aは、この発明における磁極に相当し、ヨーク4bは、この発明におけるヨークに相当する。
【0016】
従来では、コイルに発生する熱は磁極とオイルを通じて放熱される。従来のように鉄のみのヨークでは、コイル周囲のオイル(図1(a)では「Oil」で表記)などに伝導し、コイル表面からの熱伝導がほとんどである。したがって、放熱効率が低くコイル温度が上昇してしまう。そこで、鉄よりも熱伝導率が高い材質(例えば銅やアルミ)でヨークを形成することが考えられるが、銅やアルミは非磁性材であり、ヨークとして適しない。
【0017】
後述する実施例2も含めて、本実施例1では、図1(c)に示すように、少なくともヨーク4bを、鉄で形成された磁性部4Aと、それを挟み込んで積層した高熱伝導部4Bとで構成することを特徴とする。すなわち、ヨーク4bを、熱伝導率が互いに異なる複数の部品である磁性部4Aおよび高熱伝導部4Bからなる積層構造に構成し、上述した部品のうち少なくとも1つを磁性材で形成することを特徴とする。ここでは、磁性部4Aが磁性材として形成されている。高熱伝導部4Bは、磁性部4Aよりも熱伝導率が高い材質、例えば銅で形成する。磁性部4Aを高熱伝導部4Bが挟み込むことで、高熱伝導部4Bが、冷媒であるオイルに接触し、高熱伝導部4Bが鉄に比して大きな放熱作用を有することになる。つまり、コイル4c表面のみならず、高熱伝導部4Bにも熱伝導して有効放熱面積が増加し、放熱しやすくなる。
【0018】
以上をまとめると、磁場発生器4を、コイル4cと磁極4aとそれを支持してX線管本体(外囲器6)の外周部を囲む環状のヨーク4bとで構成し、また、熱伝導率が互いに異なる複数の部品として、磁性部4Aおよび高熱伝導部4Bを採用し、少なくともヨーク4bを、磁性部4A,高熱伝導部4Bの積層構造に構成する。鉄に比べ高い熱伝導率を有する部品である高熱伝導部4Bは大きな放熱作用を有する。
【0019】
なお、少なくともヨーク4bを、磁性部4A,高熱伝導部4Bの積層構造に構成するのであれば、ヨーク4bのみを、磁性部4A,高熱伝導部4Bの積層構造に構成してもよいし、磁極4aおよびヨーク4bをともに磁性部4A,高熱伝導部4Bの積層構造に構成してもよい。また、必ずしも、ヨーク4bを上述した積層構造に構成する必要はなく、熱の発生箇所に応じて、ヨーク4bを上述した積層構造にせずに磁極4aを積層構造に構成してもよい。このように、磁場発生器4を、磁極4aとそれを支持してX線管本体(外囲器6)の外周部を囲む環状のヨーク4bとで構成し、少なくともヨーク4bを上述した積層構造に構成してもよいし、少なくとも磁極4aを上述した積層構造に構成してもよい。したがって、熱の発生箇所に応じて、ヨーク4bを積層構造にせずに磁極4aを積層構造に構成してもよいし、磁極4aを積層構造にせずにヨーク4bを積層構造に構成してもよいし、磁極4aおよびヨーク4bをともに積層構造に構成してもよい。
【0020】
陽極5は外囲器6内部に、外囲器6と一体となって配設されている。陽極5にはターゲット傾斜部5aを設けており、集束、偏向した電子ビームBが、高電圧が作る電界により陽極5に向けて加速し、ターゲット傾斜部5aに衝突することでX線を発生させる。外囲器6は真空排気されている。外囲器6の陰極2側には陰極側回転軸7を配設しており、外囲器6の陽極5側には陽極側回転軸8を配設している。両回転軸7,8を回転させることで、陽極5と一体となって外囲器6が回転する。また、外囲器6の外部には、冷却用のオイル(図1(a)では「Oil」で表記)あるいは空気などで充填されている。
【0021】
本実施例1に係るX線管装置1によれば、磁場発生器4を、熱伝導率が互いに異なる複数の部品(各実施例では磁性部4Aおよび高熱伝導部4B)からなる積層構造に構成し、上述した部品のうち磁性部4Aを磁性材で形成することで、磁場発生器4で発生した熱は、部品のうち高い方の熱伝導率(各実施例では高熱伝導部4B)を有する部品に熱伝導して、放熱作用によって放熱する。オイルとの有効接触面積は、従来の鉄のみの場合では、例えば、40cm2であったが、本実施例1のように鉄(磁性部4A)および銅(高熱伝導部4B)の積層構造の場合では、320cm2と約8倍になる。したがって、磁場発生器4における温度の上昇を抑制することができる。その結果、温度の上昇の抑制によりX線の連続差動時間を長くすることができ、高エネルギのX線を発生させることができる。また、温度の上昇の抑制により、磁場発生器4のコイル4cの線径を太くする、コイル4cの巻数を増やす必要がなくなるので、コイル4cの線径を細くして、コイル4cの巻数が減って、コイル4cを小さくすることもできる。さらに、放熱効率が高く、冷却用のオイル中に磁場発生器4を置く必要がなく、空気中や真空中に置く事も可能となるという効果をも奏する。
【実施例2】
【0022】
次に、磁場発生器を真空中に置く例として、実施例2を説明する。図2(a)は、実施例2に係るX線管装置の磁場発生器の概略正面図であり、図2(b)は、図2(a)の磁場発生器におけるヨークおよびそれを固定する固定部の断面図である。なお、実施例2に係るX線管装置の概略側面図については、実施例1のX線管装置と同じであるので、図1(a)を用いる。また、磁場発生器4以外のX線管装置1の構成については、実施例1と同じ構成であるので、その説明を省略する。
【0023】
本実施例2では、図2(a)に示すように、真空中で磁場発生器4を固定する固定部9を備えている。さらに、図2(b)に示すように、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品である高熱伝導部4Bに固定部9を接触させている。したがって、高熱伝導部4Bが固定部9を通じた放熱作用を有することになる。なお、実施例1と同様に、オイルなどに代表される冷媒を外囲器6(図1(a)を参照)の外部に充填させてもよい。固定部9は、この発明における固定部に相当する。
【0024】
磁場発生器4を、磁性部4Aおよび高熱伝導部4Bの積層構造に構成し、固定部9が磁場発生器4を固定した場合において、コイル4cの発熱の放熱が改善する効果を計算で求めている。以下、その計算について具体的に説明する。
【0025】
図2(a)に示すように、固定部9による固定位置をPとし、熱源(コイル4c)と固定位置Pとの経路を熱の伝導経路Lとする。固定位置Pでのヨーク4bの温度が25℃で一定であるとし、コイル発熱量をQとする。鉄の熱伝導率は73W/m・K,銅の熱伝導率:394W/m・Kである。
従来の鉄のみの場合、ヨーク4bの断面積をSとし、コイル4c付近の温度をTとすると、温度Tは熱伝導方程式から求められ
=25℃+Q[W]×L[m]/(S[m]×73[W/m・K]) …(1)
となる。
一方、本実施例2のように鉄(磁性部4A)および銅(高熱伝導部4B)の積層構造の場合、ヨーク4bの断面積をS,Sとし、コイル4c付近の温度をTとすると、温度Tは熱伝導方程式から求められ
=25℃+Q[W]×L[m]/(S[m]×73[W/m・K]+
[m]×394[W/m・K]) …(2)
となる。
上記(1)式、(2)式により、従来の鉄のみの場合のコイル付近の温度Tと、本実施例2のように鉄(磁性部4A)および銅(高熱伝導部4B)の積層構造の場合のコイル4c付近の温度Tを求める。例えば、Q=50W,L=0.03m,S=1×10−4,S=S=0.5×10−4であれば、T=230℃,T=89℃である。
【0026】
このように、従来の鉄のみの場合には、コイル付近の温度Tが230℃に達して、コイル銅線が熱で損傷する。一方、本実施例2のように鉄(磁性部4A)および銅(高熱伝導部4B)の積層構造の場合には、コイル4c付近の温度Tが89℃となり、問題はない。
【0027】
本実施例2に係るX線管装置1によれば、実施例1と同様に、磁場発生器4を、熱伝導率が互いに異なる複数の部品(各実施例では磁性部4Aおよび高熱伝導部4B)からなる積層構造に構成し、上述した部品のうち磁性部4Aを磁性材で形成することで、磁場発生器4で発生した熱は、部品のうち高い方の熱伝導率(高熱伝導部4B)を有する部品に熱伝導して、放熱作用によって放熱する。その結果、磁場発生器4における温度の上昇を抑制することができる。
【0028】
上述した実施例1と相違して、本実施例2では、真空中に磁場発生器4を固定するとともに、その固定部9を上述した部品のうち高い方の熱伝導率(各実施例では高熱伝導部4B)を有する部品に接触させることで、その部品が放熱作用を有する。
【0029】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0030】
(1)非破壊検査機器などの工業用装置やX線診断装置などの医用装置にも適用することができる。
【0031】
(2)上述した各実施例では、磁性部4Aを高熱伝導部4Bが挟み込む積層構造であったが、図3(a)に示すように、磁性部4Aおよび高熱伝導部4Bを交互に積層する構造であってもよい。また、図3(b)に示すように、オイルなどに代表される冷媒あるいは固定部に接触する側に高熱伝導部4Bを積層する構造であってもよい。また、オイルなどに代表される冷媒あるいは固定部に接触する側に向かって徐々に熱伝導率を高くするように、磁場発生器を、熱伝導率が互いに異なる3つ以上の部品からなる積層構造に構成してもよい。また、図3(a)、図3(b)では、各層の厚さは均一であるが、各層が異なる厚さであってもよい。
【0032】
(3)上述した各実施例では、オイルなどに代表される冷媒あるいは固定部に接触する側に、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品が積層される構造であったが、例えば、上述した実施例2のように固定部9を備えた場合に、図3(c)に示すように、固定部9による固定位置P(図2(a)を参照)を除く箇所では部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品(例えば高熱伝導部4B)を内包し、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品を固定位置Pに接触させるように構成してもよい。
【0033】
(4)上述した各実施例では、磁性部4Aは鉄で、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品である高熱伝導部4Bは銅であったが、これらの材質を形成する物質については特に限定されない。磁場発生器4を、熱伝導率が互いに異なる複数の部品からなる積層構造に構成し、上述した部品のうち少なくとも1つを磁性材で形成するのであれば、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品としては、銅以外の物質であってもよく、例えば、アルミ、黄銅、りん青銅、銅アルミ合金でもよい。また、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品としては必ずしも銅などのような非磁性材に限定されず、磁場発生器4を、熱伝導率が互いに異なる複数の磁性材からなる積層構造、あるいは熱伝導率が互いに異なる複数の磁性材および非磁性材からなる積層構造に構成して、部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品も磁性材で形成してもよい。したがって、実施例に適用した場合には、部品のうち高い方の熱伝導率を有する磁性材からなる部品に冷媒や固定部を接触させることも可能である。また、磁性材であれば鉄以外の物質であってもよく、ニッケル、鉄ニッケル合金でもよい。また、ここで例示された物質を、上述した実施例や変形例(1)〜(3)に組み合わせてもよい。
【0034】
(5)上述した各実施例では、八角形に代表される多角形のヨーク4bからなる磁場発生器(磁場発生器4)で説明したが、環状のヨークであれば形状については特に限定されず、例えば、円環状であってもよい。また、磁場発生器は、四重極磁場レンズや八重極磁場レンズなどに例示されるように、磁極の数は特に限定されるものではない。
【0035】
(6)積層する方法には、ネジ止め、接着などが考えられるが、これらの方法に限定されない。
【0036】
(7)高熱伝導部4Bは連続した一体構造が望ましいが、製作上2個以上に分割されていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
4 … 磁場発生器
4a … 磁極
4b … ヨーク
4A … 磁性部
4B … 高熱伝導部
5 … 陽極
6 … 外囲器
9 … 固定部
B … 電子ビーム
Oil … (冷却用の)オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームの陽極への衝突によりX線を発生させるX線管装置であって、電子ビームを集束、偏向させるために磁場を発生させる磁場発生器を備え、その磁場発生器を、熱伝導率が互いに異なる複数の部品からなる積層構造に構成し、前記部品のうち少なくとも1つを磁性材で形成することを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線管装置において、前記磁場発生器を、磁極とそれを支持してX線管本体の外周部を囲む環状のヨークとで構成し、少なくともヨークを前記積層構造に構成することを特徴とするX線管装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線管装置において、前記磁場発生器を、磁極とそれを支持してX線管本体の外周部を囲む環状のヨークとで構成し、少なくとも磁極を前記積層構造に構成することを特徴とするX線管装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線管装置において、冷媒を前記部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品に接触させることを特徴とするX線管装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線管装置において、前記磁場発生器を真空中に固定する固定部を備え、その固定部を前記部品のうち高い方の熱伝導率を有する部品に接触させることを特徴とするX線管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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