説明

X線診断装置

【課題】被検体における特定箇所へのX線の被曝量の増加を防ぐことができるX線診断装置を提供する。
【解決手段】実施形態のX線診断装置は、被検体にX線を照射するX線照射部と、前記X線照射部に対向し、前記X線を受像するX線受像部と、前記X線受像部で受像した投影画像データを画像処理する画像処理部と、前記画像処理部で画像処理した画像データを記憶する画像データ記憶部と、前記画像データ記憶部で記憶した画像データから、前記X線の照射位置に関する付帯情報を取得する付帯情報取得部と、前記付帯情報取得部で取得した、複数の前記画像データにおける付帯情報に基づき、複数のX線が集中している部分を関心部位として特定する関心部位特定部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内にカテーテルを入れ、X線診断装置で観察しながら治療を行うインターベンション(血管内カテーテル治療)が知られている。
【0003】
循環器用のX線診断装置でインターベンションを行う場合、様々な角度から血管内治療を行う部位(関心部位)へX線を照射して治療を行うが、関心部位へ集中してX線を照射するために、特定位置に対するX線照射が長時間になる場合がある。また、複雑病変や完全閉塞した血管へのインターベンションなどでは、透視時間が長くなるため、皮膚の特定箇所に被曝線量が多くなって危険域に達し、皮膚が火傷をする場合もある。
【0004】
また、関心部位の位置が定まらないと、その分余計にX線の照射時間が長くなってしまうため、長時間のインターベンションによる患者への被曝線量が問題となっている。
【0005】
インターベンション時における特定箇所への被曝量の増加を避けるために、被曝線量の管理が行われている。インターベンション時は、IVR(Interventional radiology)基準点における空気カーマを表示することが規格で定められている。しかし、ここで表示する線量は、照射部位を特定しない総線量なので、特定箇所の皮膚における被曝線量が危険域に達しているか否かを判断することができない。
【0006】
そこで、2次元あるいは3次元で表示した擬似的患者モデル画像上に、照射位置および各箇所での積算線量の分布を重ねて表示する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−42247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、患者モデル画像上に表示された積算線量の分布は、各位置でのそれまでのX線照射における積算線量を表示するだけで、Cアームの角度変更等、線量危険域を避けるための設定変更は、医師の判断および操作によって行われていた。そのため、例えば医師の誤判断で特定の位置へのX線照射量が多くなり、線量が危険域に達してしまうといった危険性もあった。よって、被曝を低減するためのX線の照射角度をX線診断装置側から自動的に設定することが望まれている。
【0009】
本発明の実施形態はこのような点を考慮してなされたもので、被検体における特定箇所へのX線の被曝量の増加を防ぐことができるX線診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態のX線診断装置は、被検体にX線を照射するX線照射部と、前記X線照射部に対向し、前記X線を受像するX線受像部と、前記X線受像部で受像した投影画像データを画像処理する画像処理部と、前記画像処理部で画像処理した画像データを記憶する画像データ記憶部と、前記画像データ記憶部で記憶した画像データから、前記X線の照射位置に関する付帯情報を取得する付帯情報取得部と、前記付帯情報取得部で取得した、複数の前記画像データにおける付帯情報に基づき、複数のX線が集中している部分を関心部位として特定する関心部位特定部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線診断装置のハードウェア構成を示す概略図。
【図2】本実施形態のX線診断装置における保持装置の外観構成を示す斜視図。
【図3】画像処理部の詳細を示すブロック図。
【図4】X線診断装置で関心部位の位置を特定する動作を示すフローチャート。
【図5】付帯情報から求めた複数の画像における(a)X線中心軸の集合、(b)X線照射幅の集合を示す図。
【図6】中心座標位置の分布および関心部位の特定の例を示す図。
【図7】X線の積算線量危険域を表示し危険域を回避するX線診断装置の動作を示すフローチャート。
【図8】X線照射位置の表示例を示す図。
【図9】心臓の3次元CT画像の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のX線診断装置100のハードウェア構成を示す概略図であり、図2は、X線診断装置100における保持装置50の外観構成を示す斜視図である。図1および図2は、本実施形態の一例として、天井走行式Cアームを備えるX線診断装置100を示す。X線診断装置100は、大きくは、保持装置50およびDF(digital fluorography)装置60から構成される。保持装置50は、検査・治療室に、DF装置60は機械室などに設置される。なお、本発明に係るX線診断装置は、天井走行式Cアームを備えるX線診断装置100に限定されるものではなく、床走行式Cアームを備えるX線診断装置であってもよい。
【0014】
保持装置50は、スライド機構21、鉛直軸回転機構23、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、受像装置28、寝台29、コントローラ30、高電圧供給装置31、駆動制御部32を設ける。
【0015】
スライド機構21は、Z軸方向レール211、X軸方向レール212、および台車213を設ける。スライド機構21は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、鉛直軸回転機構23、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、および受像装置28を一体として水平方向にスライドさせる。
【0016】
Z軸方向レール211は、Z軸方向(天板29aの長軸方向)に延設され、天井に支持される。
X軸方向レール212は、X軸方向(天板29aの短軸方向)に延設され、その両端のローラ(図示しない)を介してZ軸方向レール211に支持される。X軸方向レール212は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、Z軸方向レール211上をZ軸方向に移動される。
台車213は、ローラ(図示しない)を介してX軸方向レール212に支持される。台車213は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、X軸方向レール212上をX軸方向に移動される。
台車213を支持するX軸方向レール212がZ軸方向レール211上をZ軸方向に移動可能であり、台車213がX軸方向レール212上をX軸方向に移動可能であるので、台車213は検査室内を水平方向(X軸方向およびZ軸方向)に移動可能である。
【0017】
鉛直軸回転機構23は、台車213に回転可能に支持される。鉛直軸回転機構23は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、および受像装置28を一体として鉛直軸回転方向T1(図2に図示)に回転させる。
懸垂アーム24は、鉛直軸回転機構23によって支持される。
【0018】
Cアーム回転機構25は、懸垂アーム24に回転可能に支持される。Cアーム回転機構25は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、Cアーム26、X線照射装置27、および受像装置28を一体として懸垂アーム24に対する回転方向T2(図2に図示)に回転させる。
【0019】
Cアーム26は、Cアーム回転機構25によって支持され、X線照射装置27と受像装置28とを、被検体Pを中心に対向配置させる。Cアーム26の背面又は側面にはレール(図示しない)が設けられ、Cアーム回転機構25とCアーム26とによって挟み込まれる当該レールを介して、Cアーム26は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、X線照射装置27、および受像装置28を一体としてCアーム26の円弧方向T3(図2に図示)に円弧動させる。
【0020】
X線照射装置27は、Cアーム26の一端に設けられる。X線照射装置27は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、前後動が可能なように設けられる。X線照射装置27は、高電圧供給装置31から高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じて被検体Pの所定部位に向かってX線を照射する。X線照射装置27は、X線の出射側に、複数枚の鉛羽で構成されるX線照射野絞りや、シリコンゴム等で形成されハレーションを防止するために所定量の照射X線を減衰させる補償フィルタ等を設ける。
【0021】
受像装置28は、Cアーム26の他端であってX線照射装置27の出射側に設けられる。受像装置28は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、前後動が可能なように設けられる。受像装置28は、FPD(Flat Panel Detector:平面検出器)28aを含む。FPD28aは、平面的に配列された複数の検出素子によりX線を検出して電気信号に変換する。
【0022】
寝台29は、床面に支持され、天板(カテーテルテーブル)29aを支持する。寝台29は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、天板29aを水平(X、Z軸方向)動、上下(Y軸方向)動およびローリングさせる。天板29aは、被検体Pを載置可能である。なお、保持装置50は、X線照射装置27が天板29aの下方に位置するアンダーチューブタイプである場合を説明するが、X線照射装置27が天板29aの上方に位置するオーバーチューブタイプである場合であってもよい。
【0023】
コントローラ30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを含んでいる。コントローラ30は、後述する操作部13からの指示に従って、高電圧供給装置31、および駆動制御部32等の動作を制御する。
【0024】
高電圧供給装置31は、コントローラ30の制御に従って、X線照射装置27に高電圧電力を供給する。
【0025】
駆動制御部32は、コントローラ30の制御に従って、スライド機構21、鉛直軸回転機構23、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、受像装置28、および寝台29の天板29aをそれぞれ駆動可能である。
【0026】
DF装置60は、コンピュータをベースとして構成されており、制御部10、表示部12、操作部13、通信部15、記憶部16、情報記憶媒体17、画像処理部18、画像データベース19を含み、バスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。DF装置60の制御部10は、保持装置50のコントローラ30と接続されて相互の動作を制御する。またDF装置60は、病院基幹のLAN(Local Area Network)等のネットワークNと相互通信可能である。
【0027】
操作部13はキーボードやマウス等であり、データの入力を行う。また操作部13は、コントローラ30および駆動制御部32を介して、保持装置50の各機構の動作を指示する。表示部12はモニタ等である。通信部15は、病院内LANに接続し、例えばCT装置等といった外部の装置との通信を行う。
【0028】
記憶部16は、制御部10や通信部15などのワーク領域となるもので、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。また記憶部16は、X線照射位置を格納する。
【0029】
情報記憶媒体17(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、ハードディスク、或いはメモリ(Flash Memory、ROM:Read Only Memory)などにより実現できる。情報記憶媒体17には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)、複数のアプリケーション等が記憶される。
【0030】
制御部10は、全体の制御を司り、様々な演算処理や制御処理などを行う演算装置である。制御部10の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。制御部10は、情報記憶媒体17に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。
【0031】
画像データベース19は、投影画像データ記憶部191、画像処理後データ記憶部192を含む。投影画像データ記憶部191は、保持装置50のFPD28aから出力された投影画像データを記憶する。画像処理後データ記憶部192は、画像処理回路182から出力された透視画像および撮影画像をデータとして記憶する。詳細は後述する。
【0032】
画像処理部18は、画像データベース19に格納される画像データの各種処理を行う。画像処理部18の詳細なブロック図を図3に示す。画像処理部18は、画像取得部181、画像処理回路182、付帯情報取得部183、付帯情報分析部184、関心部位特定部185を含み、バスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。
【0033】
画像取得部181は、投影画像データ記憶部191に格納された投影画像データを取得する。画像処理回路182は、画像取得部181が投影画像データ記憶部191から取得した投影画像データに対して、対数変換処理(LOG処理)を行なって必要に応じて加算処理して、透視画像および撮影画像(DA画像)のデータを生成し、この透視画像および撮影画像に対して画像処理を行う。画像処理としては、データに対する拡大/階調/空間フィルタ処理や、時系列に蓄積されたデータの最小値/最大値トレース処理、およびノイズを除去するための加算処理等が挙げられる。なお、画像処理回路182による画像処理後のデータは、表示部12に出力されると共に、画像処理後データ記憶部192に記憶される。また、画像処理後データ記憶部192は、透視画像および撮影画像の他に、画像を撮影した際のX線照射に関する付帯情報も格納する。
【0034】
画像処理後データ記憶部192に画像データと共に格納される付帯情報とは、その画像を撮影した際のX線照射に関する情報であり、例えばCアーム26の角度、X線照射装置27から受像装置28までの距離、寝台29の高さ、天板29aの位置、X線照射装置27から照射するX線の照射野、X線の条件等を含む。
【0035】
付帯情報取得部183は、画像処理後データ記憶部192に格納される画像の付帯情報を取得する。付帯情報分析部184は、付帯情報取得部183で取得した画像の付帯情報に基づき、画像を撮影した際のX線の照射条件(被検体への照射位置、照射角度、天板の位置等)を画像毎に把握し、X線中心軸をそれぞれ求める。
【0036】
関心部位特定部185は、付帯情報分析部184で求めた複数のX線中心軸に基づいて、複数のX線の集中する位置を特定し、関心部位とする。
【0037】
表示部12は、制御部10の制御によって、画像処理回路182によって生成される透視画像および撮影画像のデータに、患者名等の検査情報(パラメータの文字情報および目盛等)を合成し、合成信号をD/A変換後、ビデオ信号として表示する。表示部12は、画像処理回路182から出力される透視画像および撮影画像をライブ表示するライブモニタや、画像処理回路182から出力される撮影画像を静止画像表示、また、動画再生表示する参照モニタや、FOV(field of view)切り替えのためのデータ等、主に保持装置50の制御を行なうためのデータを表示するシステムモニタ等を含む。
【0038】
次に、上記構成のX線診断装置100の動作について説明する。
【0039】
<関心部位の特定>
まず、X線診断装置100側で関心部位の位置を特定する動作について、図4を参照して説明する。
【0040】
医師は例えば被検体Pの大腿部からカテーテルを挿入し、インターベンションを開始する(ステップS101)。保持装置50のコントローラ30は、操作部13からの操作に基づき、被検体の体内に挿入されたカテーテルの位置におけるX線撮影ができるよう、駆動制御部32を介して保持装置50内のスライド機構21、鉛直軸回転機構23、Cアーム回転機構25、Cアーム26、天板29a等といった各動作機構を動作させ、撮影の位置合わせを行う(ステップS102)。X線照射装置27は、ステップS102で位置合わせをした撮影位置で受像装置28に向けてX線を照射し、X線撮影を行う(ステップS103)。X線撮影した投影画像データは表示部12に表示され、画像データベース19内の投影画像データ記憶部191に格納される(ステップS105)。
【0041】
医師は、カテーテルが関心部位に到達するまでは、カテーテルのある位置でのX線撮影を行い、表示部12で位置を確認する。表示部12でカテーテルが関心部位に到達したことが確認されると、医師は、関心部位を透過する照射角度であって、目的の血管が観察できるよう、操作部13を用いて保持装置50の各動作機構を動作させ、複数のX線撮影を行うことが可能である。
【0042】
次に、画像処理部18内の画像取得部181は、ステップS105で格納した投影画像データを取得し、画像処理回路182に送る(ステップS107)。このとき、投影画像データには、X線撮影時のX線照射に関する付帯情報も付随している。画像処理回路182は、ステップS107で画像取得部181が取得した投影画像データに対して、透視画像および撮影画像のデータを生成し、生成した透視画像および撮影画像に対して画像処理を行って、画像処理後データ記憶部192に格納する(ステップS109)。このとき、画像処理回路182で生成する撮影画像のデータには、ステップS107で画像取得部181が投影画像データ取得時に取得した、X線照射に関する付帯情報も付随している。
【0043】
次に付帯情報取得部183は、ステップS109で画像処理後データ記憶部192に格納された、撮影画像の付帯情報を取得する(ステップS111)。この付帯情報は、被検体へのX線照射位置、Cアーム26の角度、天板29aの高さや位置、X線の照射野等である。次に付帯情報分析部184は、付帯情報取得部183で取得した付帯情報を分析し、天板29aを基準としたX線中心軸を3次元座標上で求める(ステップS113)。付帯情報分析部184は、このX線中心軸を複数の画像データについてもそれぞれ付帯情報から求める。
【0044】
次に関心部位特定部185は、付帯情報分析部184で求めた複数のX線中心軸が集中している部分を関心部位として特定し、関心部位の3次元座標位置を決定する(ステップS115)。
【0045】
ここで、ステップS115における関心部位の特定方法を、図5および図6を参照して説明する。
図5(a)に、付帯情報取得部183で取得した付帯情報から、ステップS113で求めた、複数の画像のX線中心軸70(70a〜70f)の集合を示す。70fを除いた全てのX線中心軸は、被検体P上の、丸で囲んだ部分に交差、集中しているのがわかる。この集中している部分を関心部位として、天板を基準とした3次元座標軸での座標を求めることが出来る。なお、丸で囲んだ部分を通過していないX線中心軸70fは、カテーテルが関心部位に到達する前の画像データから求められたX線中心軸であると見なされるので、除外して良い。
【0046】
X線中心軸は3次元座標上で計算されているため、X線中心軸が複数集中していても、それぞれが必ずしも交差しているとは限らず、ねじれの位置の場合も考えられる。例えば2つのX線中心軸70aと70bとがねじれの位置の場合、X線中心軸70a、70b双方の最短距離のラインを求め、その中心位置座標を計算する。同様にして、複数のX線中心軸70について、それぞれ交差している場合は交点座標、ねじれの位置の場合は中心位置座標を求めていくことにより、中心位置座標の分布が求まる。
【0047】
複数のX線中心軸70から求められる中心位置座標の分布および関心部位の特定の例を図6に示す。この中心位置座標の分布の最も集中している部分を、例えば平均位置座標の計算で求め、関心部位の3次元座標位置とする。
【0048】
なお関心部位の位置の別の求め方として、図5(b)に示すように、X線照射装置27から照射されるX線照射野を考慮に入れた、3次元のX線照射エリア71(71a〜71c)の重なりから、関心部位の3次元座標位置を求めても良い。
【0049】
これにより、X線診断装置100側で関心部位の位置を定量的に把握することが出来る。
【0050】
<積算線量の表示>
次に、関心部位の位置が特定された上で、X線の積算線量を表示し、積算線量危険域を回避したX線照射を行う動作について、図7のフローチャート、および図8の表示例を参照して説明する。
【0051】
図8に示すように、表示部12には2次元の患者モデル画像が表示される。制御部10は、ステップS111で付帯情報取得部183が取得した撮影画像の付帯情報のうち、天板29aの位置、Cアーム26の角度、特定された関心部位の位置情報から、被検体Pの皮膚表面に照射されるX線の照射位置を算出し(ステップS201)、2次元の患者モデル画像に重ねて表示する(ステップS203)。制御部10はこの照射位置の算出を複数の撮影画像における付帯情報について行い、表示部12に表示される患者モデル画像に積算線量の分布としてすべて重ねて表示する。図8では、例えば天板29aを上から見ている例を示している。
【0052】
図8では、過去にX線照射した照射位置を領域として実線の四角で囲み、現在のX線照射位置(領域)を点線の四角で示している。現在のX線照射位置の表示(点線の四角)は、駆動制御部32で駆動させる各機構(スライド機構21、鉛直軸回転機構23、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、受像装置28、および寝台29の天板29a)の動作に連動して動くようになっている。
【0053】
X線照射の積算線量は色の濃さで表示している。X線の照射位置(領域)が重なっている部分では表示色が濃くなっており、X線の積算線量が多いことを示している。ある照射位置におけるX線照射の積算線量が所定量を超えると、その照射位置での被検体Pの皮膚表面が被曝する危険があるので、表示部12はその位置を積算線量危険域とし、注意を促す表示(例えば、赤色表示する等)を行う。図8では積算線量危険域を斜線で表示する。表示部12に表示された色の濃さ、及び危険域の表示から、被検体におけるX線照射の積算線量を把握し、操作部13を用いてX線照射の積算線量が少ない(表示色がない、または薄い)位置が医師により選択される(ステップS205)。
【0054】
制御部10は、ステップS205で表示部12上において選択された位置にX線が照射し、かつ、ステップS115で求めている関心部位が画像の中心位置に表示され透過するよう、Cアーム26の角度や天板29aの位置を自動計算する(ステップS207)。次に、駆動制御部32は、ステップS207で制御部10が計算した位置に基づき、コントローラ30の制御に従って、Cアーム26や天板29aを移動させる(ステップS209)。
【0055】
なお、操作部13を用いてCアーム26や天板29aを移動させて、連動して動く現在のX線照射位置(点線の四角)の表示を積算線量の少ない位置に合わせ、Cアーム26や天板29aの位置を設定しても良い。これにより、被曝の少ないインターベンションを行うことが可能である。
【0056】
なお、ステップS205において医師がX線照射位置を選択する際、単純に積算線量が少ない位置を照射位置として選択すると、関心部位の血管が観察しにくい角度にCアーム26や天板29a等が移動してしまう可能性がある。そこで、X線診断装置100側で、照射位置の候補を記憶部16にあらかじめ格納しておき、ステップS205において表示部12上にいくつか提示し、医師が選択できるようにしてもよい。例えば、ステップS103で関心部位をX線撮影したときの照射位置であれば、血管が良好に観察できるCアーム26の角度となると考えられるため、この照射位置を記憶部16に格納しておく。あるいは、血管の観察が良好な角度となる照射位置をあらかじめ登録し記憶部16に格納しておく。制御部10は、記憶部16に格納した照射位置のうち、X線の積算線量が少ない位置をいくつか選択して表示部12に表示し、医師に選択させるようにしても良い。これにより、被検体Pの特定箇所の被曝を防ぎ、かつ関心部位周辺の血管を観察しやすい角度でインターベンションを行うことが出来る。
【0057】
また、インターベンションの実施前に3次元CT画像を撮影しておき、インターベンション中にこの3次元CT画像とX線の照射位置の2次元表示とをリンクさせてもよい。例として、図9に心臓の3次元CT画像の例を示す。図8に示すX線照射位置の2次元表示と、図9に示す心臓の3次元CT画像とが表示部12に並べて表示されているとして、医師が積算線量の少ない位置を選択すると、Cアーム26や天板29aが自動計算した位置に移動し、また選択された位置にX線が照射されかつ関心部位を透過する角度となる3次元CT画像も同時に表示されてもよい。また、医師が図8で現在のX線の照射位置(点線部分)を動かすと、3次元CT画像の表示も連動して動いてもよいし、逆に、医師が図9に表示する3次元CT画像を所望の表示角度にすると、図8に示す現在のX線の照射位置が連動して動いてもよい。3次元CT画像を2次元表示とリンクさせることにより、関係部位における血管がどのような状態なのか、X線照射をしなくても事前に分かることができ、被曝も低減することが出来る。
【0058】
また、ステップS115で関心部位の3次元座標位置を決定していることにより、X線撮影した透視画像上に関心部位のマークを重ねて表示部12に表示することができる。例えば、カテーテルやガイドワイヤの交換をするときに、カテーテルの挿入位置にX線を照射して観察する必要があるため、Cアーム26の角度または天板29aの位置を一時的にカテーテル挿入位置に移動する。そのため、透視画像から関心部位が一時的に外れてしまう。しかし、ステップS115で関心部位の座標位置を求めているので、被検体Pの大腿部からカテーテルを再挿入し、カテーテルが関心部位に再度近づくと、求めた3次元座標位置に基づいて、透視画像上に関心部位のマークを表示することが出来る。よって医師はCアーム26や天板29aの関心部位への位置合わせを簡単に行うことが出来、X線の照射時間の低減にもつながる。
【0059】
以上説明した実施例によれば、X線診断装置において、X線撮影した画像の付帯情報からX線中心軸を求め、複数のX線中心軸が集中している部分を関心部位として特定し、その3次元座標位置を決定する。よって、X線診断装置側で関心部位の位置を把握することが出来る。また、表示部で2次元表示されるX線照射位置において、積算線量の少ない照射位置を指定すると、その照射位置から関心部位が中心に表示されるように透過するX線の入射角度になるように、Cアームの角度や天板の位置を自動計算し、移動する。よって、被検体の被曝を低減する照射位置であって、関心部位が中心に表示されるような照射位置をX線診断装置側で特定することができる。また、関心部位を特定することで、インターベンションの時間短縮に繋がり、被検体への被曝を軽減することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
100…X線診断装置、50…保持装置、60…DF装置、10…制御部、12…表示部、13…操作部、15…通信部、16…記憶部、17…情報記憶媒体、18…画像処理部、19…画像データベース、191…投影画像データ記憶部、192…画像処理後データ記憶部、21…スライド機構、23…鉛直軸回転機構、24…懸垂アーム、25…Cアーム回転機構、26…Cアーム、27…X線照射装置、28…受像装置、28a…FPD、29…寝台、29a…天板、30…コントローラ、31…高電圧供給装置、32…駆動制御部、P…被検体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部に対向し、前記X線を受像するX線受像部と、
前記X線受像部で受像した投影画像データを画像処理する画像処理部と、
前記画像処理部で画像処理した画像データを記憶する画像データ記憶部と、
前記画像データ記憶部で記憶した画像データから、前記X線の照射位置に関する付帯情報を取得する付帯情報取得部と、
前記付帯情報取得部で取得した、複数の前記画像データにおける付帯情報に基づき、複数のX線が集中している部分を関心部位として特定する関心部位特定部と、
を有することを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記付帯情報取得部で取得する前記付帯情報は、少なくとも前記X線照射部およびX線受像部の角度、前記X線照射部からX線受像部までの距離、前記被検体を載置する寝台の高さおよび上下左右の位置、前記X線照射部で照射する前記X線の照射野の情報、およびX線の照射条件のうち1つを含む、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記関心部位特定部は、前記X線の照射野の中心軸が集中している部分を前記関心部位として特定するよう構成される、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記関心部位特定部は、3次元座標上で交差する2つの前記中心軸の最短距離における中心座標位置をそれぞれ求め、前記中心座標位置の分布の集中している部分を関心部位として特定するよう構成される、
ことを特徴とする請求項3記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記関心部位特定部で特定する前記関心部位は、前記X線の照射野が集中している部分である、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記X線照射部で照射したX線照射位置を表示する表示部と、
前記関心部位特定部で特定した前記関心部位を透過し、かつ前記表示部に表示されるX線照射位置において、前記被検体におけるX線の積算線量が少ない所定の位置にX線が照射するよう前記X線照射部および前記X線受像部を移動させる駆動部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記表示部は、同一の被検体に照射されたX線の照射位置を全て表示し、X線の照射量が所定値より多い位置には注意を喚起する表示を行う、
ことを特徴とする請求項6記載のX線診断装置。
【請求項8】
X線照射位置の履歴、または登録されたX線照射位置の少なくとも一方を格納する照射位置記憶部をさらに有し、
前記駆動部は、前記関心部位特定部で特定した前記関心部位を透過し、かつ前記照射位置記憶部に格納されるX線照射位置にX線が照射されるよう、前記X線照射部および前記X線受像部を移動させる、
ことを特徴とする請求項6記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記被検体の3次元CT画像を格納する3次元CT画像記憶部をさらに有し、
前記表示部は、前記X線照射位置に対応する3次元CT画像を表示するよう構成される、
ことを特徴とする請求項6記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記関心部位特定部で特定した前記関心部位を、透視画像に表示させるよう構成される、
ことを特徴とする請求項6記載のX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−130436(P2012−130436A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283568(P2010−283568)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】