説明

X線透視撮影装置

【課題】X線の受光撮像部としてフラットパネル型検出器あるいはイメージインテンシファイアとテレビカメラの組み合わせ等の電気信号を出力する検出器を用いるX線透視撮影装置において、X線管装置が発生するノイズのX線画像への影響を低減する。
【解決手段】X線管取付装置2の取付リング2Aおよび取付リング2Bが構成する二つ円部の内周面に、例えば厚さ1mmのフッ素樹脂板等の絶縁板4を全周にわたってネジ留めにより固定し、さらにX線管装置1の二個の保持用リング部3Bの外側面に接するように、例えばフェノール樹脂製の絶縁リング5を配置して、取付リング2BによりX線管装置1を保持することにより、X線管装置1とX線管取付装置2の間を絶縁することによりX線管装置が発生するノイズのX線画像への影響を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
X線の受光撮像部としてフラットパネル型検出器あるいはイメージインテンシファイアとテレビカメラの組み合わせ等の電気信号を出力する検出器を用いる診断用あるいは非破壊検査用のX線透視撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線透視撮影装置において受光撮像部としてフラットパネル型検出器あるいはイメージインテンシファイアとテレビカメラの組み合わせ等の電気信号を出力する検出器を用いる場合、X線の受光撮像部への電気的なノイズの混入は画像劣化の原因となるため極力防止しなければならない。このために過去種々のノイズ防止のための工夫が行われてきている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
画像劣化の原因となるノイズの一つにX線管装置が発生するノイズがある。図4はX線管装置の一例を示すものであり、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図である。X線管装置1はX線管外囲器3に内蔵されたX線管(図示しない)の陽極または陰極とそれぞれ電気的に接続された2箇所の高電圧接続部3Aに外部から高電圧を印加することによりX線放射孔3CからX線を照射するものである。またX線放射孔3Cを中心にしてほぼ対照の位置にX線管外囲器3の全周にわたって設けられた2個の保持用リング部3Bは後述する方法によりX線管装置1をX線保持装置(図示しない)に取り付けるために用いられる。
【0004】
X線管装置1は通常X線保持装置にX線受光部と対向して取り付けられるが、そのために図5に示すようなX線管取付装置2が用いられる。なお図5(a)はX線管取付装置2の正面図であり、図5(b)は側面図、図5(c)は平面図である。支持軸2Dの上部はX線管取付装置2をX線保持装置に取り付けるためにX線保持装置のX線管固定部に挿入する部分であり、下部には取付板2Cがネジにより固定される。取付板2Cの両端にはそれぞれ半円状の取付リング2Aがネジにより固定され、さらにそれぞれの取付リング2Aには半円状の取付リング2Bがネジ留めされて、X線管装置1を保持するための二個の円部を構成している。なおX線管取付装置2の各部品は通常アルミニウムで製作される。
【0005】
図6はX線管装置1を保持したX線管取付装置2の断面図を示している。X線管取付装置2において、断面がL字型の取付リング2Aおよび取付リング2Bが構成する二個の円部の内周面がそれぞれX線管装置1の二個の保持用リング部3Bの外周面に接触した状態でX線管装置1を保持するように、取付リング2Bが取付リング2Aにネジ留めにより固定される。なお図6において図5と同じ符号で示される部品は図5と同じなのでそれらの説明は省略する。
【特許文献1】特開2004−24683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像劣化の原因となるノイズの一つにX線管装置が発生するノイズがあるが、その中でも特にX線管の陽極を回転させるためのステータコイルの駆動に関係して発生するノイズの影響が大きい。そしてX線管装置が発生するノイズは、X線管装置の外囲器がX線保持装置を経由してX線受光部筐体と電気的に短絡しているために、より顕著に画像ノイズとして現われることが多い。
【0007】
一方X線管装置は感電を防止するためにその外囲器が接地線により分電盤等の接地端子に接続され、同様にX線保持装置およびX線受光部筐体も安全のために分電盤等の接地端子に接続されている。そのため上述のX線管装置の外囲器がX線保持装置を経由してX線受光部筐体と短絡していることは特に意図して行っていることではなく、結果的に画像ノイズの増加の原因になっているに過ぎない。本発明はX線管装置の外囲器がX線保持装置に電気的に短絡した状態で取り付けられていることによる画像ノイズの増加を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は上記の目的を達成するために、X線管装置と前記X線管装置をX線管取付装置により取り付け保持するX線保持装置と前記X線管装置から照射されたX線を受光して電気信号に変換するX線受光撮像装置と前記X線管装置に高電圧を供給する高電圧発生器により構成されるX線透視撮影装置において、前記X線管装置を電気的に絶縁して前記X線保持装置に取り付けるX線透視撮影装置を提供する。
【0009】
請求項2の発明は上記の目的を達成するために、X線管装置とX線保持装置との電気的絶縁をX線管装置とX線管取付装置の間に絶縁物を挿入することにより行う請求項1記載のX線透視撮影装置を提供する。
【0010】
請求項3の発明は上記の目的を達成するために、X線管装置とX線保持装置との電気的絶縁をX線管取付装置の一部または全部を絶縁物で構成することにより行う請求項1記載のX線透視撮影装置を提供する。
【0011】
請求項4の発明は上記の目的を達成するために、X線管装置とX線保持装置との電気的絶縁を前記X線保持装置の一部を絶縁物で構成することにより行う請求項1記載のX線透視撮影装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
X線管装置の外囲器を電気的に絶縁した状態でX線保持装置に取り付けることにより、X線管装置が発生するノイズの画像への影響が大幅に低減され、ノイズの少ないX線画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
請求項2、請求項3および請求項4の発明の実施例をそれぞれ実施例1、実施例2および実施例3に示す。
【実施例1】
【0014】
実施例1について図1を用いて説明する。なお図1において図5と同じ符号で示される部品は図5と同じなのでそれらの説明は省略する。
【0015】
背景技術の項で図6を用いて説明したように、X線管取付装置2において、断面がL字型の取付リング2Aおよび取付リング2Bが構成する二個の円部の内周面がそれぞれX線管装置1の二個の保持用リング部3Bの外周面に接触した状態でX線管装置1を保持するように、取付リング2Bが取付リング2Aにネジ留めにより固定されている。そのためX線管装置1はこの部分でX線管取付装置2と電気的に短絡し、さらにX線保持装置およびX線受光部筐体と短絡している。
【0016】
本実施例ではX線管取付装置2の取付リング2Aおよび取付リング2Bが構成する二個の円部の内周面に、例えば厚さ1mmのフッ素樹脂板等の絶縁板4を全周にわたってネジ6により固定し、さらにX線管装置1の二個の保持用リング部3Bの外側面に接するように、例えばフェノール樹脂製の絶縁リング5を配置して、取付リング2BによりX線管装置1を保持することにより、X線管装置1とX線管取付装置2の間が絶縁されるので、X線管装置1を絶縁した状態でX線保持装置に取り付けることができる。
【実施例2】
【0017】
実施例2について図2を用いて説明する。なお図2において図6と同じ符号で示される部品は図6と同じなのでそれらの説明は省略する。
【0018】
図2のX線管取付装置7についてはその部品である支持軸7D、取付リング7Aおよび取付リング7Bはそれぞれ図5のX線管取付装置2の支持軸2D、取付リング2Aおよび取付リング2Bと同じである。そして図5において支持軸2Dにネジによって固定されている取付板2Cの代わりに、金属製の補強板7Fが金属製の補強板7Eとの間に、例えばフェノール樹脂等の絶縁物である絶縁取付板7Cを挟んだ状態で支持軸7Dにネジ留め固定されている。ただし絶縁のために補強板7Eおよび補強板7Fはいずれも取付リング7Aに接触しない長さになっており、また絶縁取付板7Cの両端に取付リング7Aを取り付けるための各ネジ穴についてはその強度を補強するためにヘリサート8が挿入固定されている。X線管取付装置7をこのように構成することにより支持軸7Dと取付リング7Aの間が絶縁されるので、X線管装置1を絶縁した状態でX線保持装置に取り付けることができる。
【0019】
上記の実施例では図5に示すX線管取付装置2の取付板2Cを絶縁物を用いて構成したが、その代わりに取付リング2Aおよび取付リング2Bの両者または支持軸2Dを絶縁物を用いて構成してもよい。
【実施例3】
【0020】
実施例3について図3を用いて説明する。図3はX線管取付装置2とX線保持装置10の間を絶縁して、X線管装置1をX線保持装置10に取り付ける例を示すものであり、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図である。具体的にはX線管取付装置2の支持軸2D(図5参照)が挿入固定される金属製のX線管固定部10Bを金属製の保持装置本体10Aにネジ10Cにより固定する部分について、X線管固定部10Bと保持装置本体10Aの間に例えばフェノール樹脂等の絶縁物で製作された絶縁板10Eを挿入し、さらにX線管固定部10Bとネジ10Cの間に例えばフェノール樹脂等の絶縁物で製作された絶縁筒10Dを挿入することによりX線管取付装置2とX線保持装置10の間が絶縁されるので、X線管装置1を絶縁した状態でX線保持装置に取り付けることができる。
【0021】
上記の実施例では絶縁筒10Dおよび絶縁板10Eを用いてX線管固定部10Bを保持装置本体10Aに固定したが、X線管固定部10Bを絶縁物で構成して直接保持装置本体10Aに固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
受光撮像部としてフラットパネル型検出器あるいはイメージインテンシファイアとテレビカメラの組み合わせ等の電気信号を出力する検出器を用いる診断用あるいは非破壊検査用のX線透視撮影装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例を説明するための図である。
【図2】本発明の実施例を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例を説明するための図である。
【図4】X線管装置の外観を説明するための図である。
【図5】X線管取付装置について説明するための図である。
【図6】X線管装置をX線管取付装置に取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1:X線管装置
2:X線管取付装置
2A:取付リング
2B:取付リング
2C:取付板
2D:支持軸
3:X線管外囲器
3A:高電圧接続部
3B:保持用リング部
3C:X線放射孔
4:絶縁板
5:絶縁リング
6:ネジ
7:X線管取付装置
7A:取付リング
7B:取付リング
7C:絶縁取付板
7D:支持軸
7E:補強板
7F:補強板
8:ヘリサート
9:ネジ
10:X線保持装置
10A:保持装置本体
10B:X線管固定部
10C:ネジ
10D:絶縁筒
10E:絶縁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管装置と前記X線管装置をX線管取付装置により取り付け保持するX線保持装置と前記X線管装置から照射されたX線を受光して電気信号に変換するX線受光撮像装置と前記X線管装置に高電圧を供給する高電圧発生器により構成されるX線透視撮影装置において、前記X線管装置を電気的に絶縁して前記X線保持装置に取り付けることを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項2】
X線管装置とX線保持装置との電気的絶縁をX線管装置とX線管取付装置の間に絶縁物を挿入することにより行うことを特徴とする請求項1記載のX線透視撮影装置。
【請求項3】
X線管装置とX線保持装置との電気的絶縁をX線管取付装置の一部または全部を絶縁物で構成することにより行うことを特徴とする請求項1記載のX線透視撮影装置。
【請求項4】
X線管装置とX線保持装置との電気的絶縁を前記X線保持装置の一部を絶縁物で構成することにより行うことを特徴とする請求項1記載のX線透視撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−340945(P2006−340945A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170410(P2005−170410)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】