説明

X線透視検査装置

【課題】制御の容易なX線検出器の首振り機構を持つX線透視検査装置を提供する。
【解決手段】被検体にX線源からX線を照射し、X線検出器12によって、被検体の透過画像を検出するX線透視検査装置1において、照射されるX線を検出する位置を変えるようにX線検出器12を直線移動させるとともに、X線検出器12の検出面の法線がX線源を向くように首振り運動させる移動機構14を有し、移動機構14は、X線検出器12と首振り運動の軸となる位置関係にある第1固定部16と、X線源と第1固定部とを結ぶ直線上に位置する第2固定部17と、第1固定部を直線方向に任意の距離移動させるとともに、X線源と第1固定部の移動経路間の距離とX線源と第2固定部の移動経路間の距離との比率に対し、任意の距離と第2固定部の移動距離の関係が比率となるように、第2固定部を第1固定部が移動した直線と平行な直線方向に移動させる搬送部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対し、X線を照射させて被検体の内部を非破壊で検査するX線透視検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を実装した基板等の被検体に対し、高倍率で、また、透視角度(傾斜角)を変化させて透過画像を得られるようにしたX線透視検査装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に、電子部品等を実装した基板等の板状の被検体の場合には、このように透視角度を変えて観察することで、不良部分の発見や解析等に役立てることができる。
【0004】
図11は、従来のX線透視検査装置の一例である特許文献1記載のX線透視検査装置100を示している。同図に示すように、X線管101から放射されたX線200は、テーブル103に載置された被検体201を透過した後、X線検出器102で検出され、これによって、被検体201の透過画像が得られている。このとき、X線200が放射される範囲内で、X線検出器102を直線レール104上をモータ(図示せず)によって摺動させるとともに、X線200の焦点Fに対向するよう首振り運動させ透視角度αを変更するように位置決め調整させる。これによって、被検体201の斜め方向からの透視が可能となる。この場合、X線検出器102の首振り運動は、ウオーム歯車105を首振り用のモータ106で駆動することにより所定の角度が得られるように調整している。
【特許文献1】特開2001−153819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1記載のX線透視検査装置100は、透視角度αを変更する場合、直線移動用のモータによってX線検出器102をレール104上で摺動(直線移動)させるとともに、直線移動用のモータとは別の首振り用のモータ106によって直進移動量に比例しない回転角でX線検出器102を首振り運動させている。この場合、直線移動用のモータ及び首振り運動用のモータの2つのモータと、これら2つのモータを駆動するために2つのモータ駆動回路を必要とする。そのため、X線透視検査装置の装置構成が大型で複雑になるばかりでなく、これらの制御も複雑化するという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、制御及び構成が容易なX線検出器の首振り機構を持つX線透視検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、請求項1記載の発明は、テーブル上に載置された被検体にX線源からX線を照射し、X線検出器によって、前記被検体の透過画像を検出して表示部に前記透過画像を表示するX線透視検査装置において、照射される前記X線を検出する位置を変えるように前記X線検出器を直線移動させるとともに、前記X線検出器の検出面の法線が前記X線源を向くように首振り運動させる移動機構を有し、前記移動機構は、前記X線検出器と首振り運動の軸となる位置関係にある第1固定部と、前記X線源と前記第1固定部とを結ぶ直線上に位置する第2固定部と、前記第1固定部を直線方向に任意の距離移動させるとともに、前記X線源と前記第1固定部の移動経路間の距離と前記X線源と前記第2固定部の移動経路間の距離との比率に対し、前記任意の距離と前記第2固定部の移動距離の関係が前記比率となるように、前記第2固定部を前記第1固定部が移動した直線と平行な直線方向に移動させる搬送部とを備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成の本発明によれば、移動機構によりX線検出器と所定の位置関係を保つ第1固定部及び第2固定部とを、それぞれ平行な直線上に互いに同期して所定の移動比率をもって移動させるので、容易な機構制御でX線検出器を直線的に移動させるとともにX線検出器の検出面の法線が常にX線の焦点Fの方向を向くよう首振り運動させることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、第1プーリー及び第2プーリーと、前記第1固定部が固定され、前記第1プーリーと第2プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第1プーリー又は前記第2プーリーの回転に伴って搬送される第1ベルトとを備えることを要旨とする。
【0010】
上記構成の本発明によれば、第1固定部を第1ベルトによって直線的に移動させるので小型なX線透視検査装置を構成することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、第3プーリー及び第4プーリーと、前記第2固定部が固定され、前記第3プーリーと第4プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第3プーリー又は前記第4プーリーの回転に伴って搬送される第2ベルトとを備えることを要旨とする。
【0012】
上記構成の本発明によれば、第2固定部を第2ベルトによって直線的に移動させるので小型なX線透視検査装置を構成することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、第1プーリー及び第2プーリーと、前記第1固定部が固定され、前記第1プーリーと第2プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第1プーリー又は前記第2プーリーの回転に伴って搬送される第1ベルトと、第3プーリー及び第4プーリーと、前記第2固定部が固定され、前記第3プーリーと第4プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第3プーリー又は前記第4プーリーの回転に伴って搬送される第2ベルトと、前記第2プーリー及び前記第4プーリーを連結するとともに前記第2プーリー及び前記第4プーリーの回転を同期させる連結機構と、前記第2プーリー及び前記第4プーリーを回転させる1つのモータとを備え、前記第2プーリーの回転に伴い前記第1固定部が任意の距離移動したとき、前記第4プーリーは、前記X線源と前記第1固定部間の距離と前記X線源と前記第2固定部間の距離との比率に対し、前記任意の距離と前記第2固定部の移動距離の関係が前記比率となるように、前記第2固定部を移動させる速度で回転することを要旨とする。
【0014】
上記構成の本発明によれば、第1ベルトと第2ベルトとを連結機構によって連結して動作させている。そのため、X線透視検査装置の制御機構を、1つのモータを回転させるだけでX線検出器を直線的に移動させるとともに首振り運動させる容易な機構にすることができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項2乃至4記載のいずれか1記載のX線透視検査装置において、前記移動機構は、前記第1ベルトと平行に配置され、前記第1ベルトの搬送とともに移動する前記第1固定部を支える直線形状の第1レールを備えることを要旨とする。
【0016】
上記構成の本発明によれば、第1固定部を第1レールと係合し、第1レールに沿って摺動させる。これによって、第1固定部を移動させるとき、第1ベルトのたわみの影響がなく、正確に直線上を移動させ、X線検出器の重量が大きい場合等にも、X線検出器の動きを正確にすることができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項3乃至5いずれか1記載のX線透視検査装置において、前記移動機構は、前記第2ベルトと平行に配置され、前記第2ベルトの搬送とともに移動する前記第2固定部を支える直線形状の第2レールを備えることを要旨とする。
【0018】
上記構成の本発明によれば、第2固定部を第2レールと係合し、第2レールに沿って摺動させる。これによって、第2固定部を移動させるとき、第2ベルトのたわみの影響がなく、正確に直線上を移動させ、X線検出器の重量が大きい場合等にも、X線検出器の動きを正確にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御の容易なX線検出器の首振り機構を持つX線透視検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を用いて、本発明の最良の実施形態に係るX線透視検査装置1を説明する。図1に示すX線透視検査装置1は、テーブル13上に載置された被検体31に向けてX線30を照射するX線管11と、被検体31を透過したX線30を検出面12aで検出するX線検出器12とを有している。X線検出器12で検出される透過画像は二次元分解能のデータであり、例えばコンピュータ(図示せず)に取り込まれてディスプレイに表示される。
【0021】
図示を用いた説明を省略するが、X線管11は、フレームによりフロアより支持されている。また、テーブル13も同一のフロアより支持され、テーブル機構によってテーブル移動方向である直交3方向xt、yt、ztに平行移動されて位置設定される。さらに、図1に示す各部材の全体はX線遮蔽箱に納められている。
【0022】
移動機構14(搬送部)は、テーブル13上に載置された被検体31におけるテーブル13面に対して垂直からα傾斜した方向の透過画像を検出するため、照射されたX線30を検出する位置を変えるように、X線検出器12を直線的に移動させて位置決め調整するとともに、X線検出器12の検出面12aの(中央での)法線が焦点F(X線30の照射を逆に辿った収束点のこと)(X線源)の方向を向くよう首振り運動させるようにX線検出器12を制御する。
【0023】
移動機構14は、X線検出器12の位置決め調整を制御するため、第1ピン16、第2ピン17、第1ベルト18、第1プーリー19、第2プーリー20、第2ベルト21、第3プーリー22、第4プーリー23及び連結機構24を有し、フロア(図示せず)により支持されている。
【0024】
第1プーリー19及び第2プーリー20は一対となり、この両プーリー19,20間に第1ベルト18が所定の張力をもって架け渡されている。また、第3プーリー22及び第4プーリー23は一対となり、この両プーリー22,23間に第2ベルト21が所定の張力をもって架け渡されている。ここで、第1ベルト18及び第2ベルト21は、互いに平行になるようにフロアに対して同一の傾き(β)で設置されている。
【0025】
検出器移動角度βとして、例えば、30°程度が考えられる。この角度βは30°には限られないが、透視の角度αの最大値の1/2程度、あるいは1/2よりやや少ない角度が望ましく、これは通常、0°〜40°の値である。
【0026】
これら第1ベルト18,第2ベルト21は、内面側に歯が設けられた歯付ベルトで構成されている。また、各プーリー19,20,22,24の円周面にはベルトの歯と嵌合するための歯が形成されている。そのため、プーリー20,23が回転を繰り返してもすべりが生じないように構成されている。ベルト18,21の歯間隔はそれぞれ同一であり、プーリー19,20,22,23の歯数もそれぞれ同一である。
【0027】
第1ベルト18には、固定部である円柱形状の第1ピン16の一端が固定されている。また、第2ベルト21には、固定部である円柱形状の第2ピン17の一端が固定されている。ベルト18,21の幅は、少なくともピン16,17の一端が固定できる幅であり、ピン16,17の他端は固定されたベルト18,21から突出している。すなわち、ピン16,17の長さは、ベルト18,21の幅よりも長いことが望ましい。
【0028】
ここで、第1ベルト18から突出される第1ピン16の他端は、図2に示すX線検出器12を固定するフレーム15に設けられた穴部15aに挿入されて、第1ピン16と穴部15aが係合する。また、第2ベルト21から突出される第2ピン17の他端は、フレーム15に設けられた長穴部15bに挿入されて、第2ピンと長穴部15bが係合する。
【0029】
第2プーリー20及び第4プーリー23は原動プーリーであって、モータからの駆動力を得て回転し、ベルト18,21をそれぞれ搬送させる。また、第1プーリー19及び第3プーリー22は従動プーリーであり、ベルト18,21の搬送に伴ってそれぞれ回転する。第2プーリー20及び第4プーリー23はそれぞれ異なる回転速度で同期して回転するが、プーリー20,23の回転制御については、図4を用いて後述する。
【0030】
第2プーリー20及び第4プーリー23の回転に伴って第1ベルト18及び第2ベルト21が搬送されると、ベルト18,21に固定されたピン16,17の位置もベルト18,21とともに移動する。上述したように、第1ベルト18及び第2ベルト21は、互いに平行であるため、ベルト18及び21にそれぞれ固定されたピン16,17は平行な直線上を移動することになる。
【0031】
図2を用いて、フレーム15について説明する。フレーム15は、X線検出器12を取り付ける板状部材で構成され、X線検出器12の取り付け面の裏面側には、穴部15aと長穴部15bとが設けられている。穴部15a及び長穴部15bを一直線とする方向をフレーム15の縦方向としたとき、このX線検出器12は、検出面12aの法線が縦方向となるようにフレーム15に固定されている。
【0032】
穴部15aは、第1ピン16の直径と略同程度の直径の円形の凹型状であり、第1ピン16の第1ベルト18から突出している一端が挿入されて第1ピン16と係合する。また、長穴部15bは、穴部15aが設けられる方向に対して長い棒形の凹型状であり、第2ピン17の第2ベルト21から突出している一端が挿入されて第2ピン17と係合する。長穴部15bの幅wは、第2ピン17の直径と略同程度である。また、長穴部15bの長さlは、第2ピンの直径よりも長く、長穴部15bの内壁面に沿って長径方向に第2ピン17が移動することができる程度の長さである。穴部15a及び長穴部15bの深さは、ピン16,17が挿入される深さであればよく、フレーム15を貫通していてもよい。
【0033】
フレーム15は、ピン16,17が移動すると、第1ピン16を軸にして第2ピン17の長穴部15bにおける移動に伴って回転する(傾きが変更される)。具体的には、第1ピン16及び第2ピン17が異なる移動比率で平行に移動するが、第2ピン17の移動量が第1ピン16に比して大きいため、フレーム15は、第1ピン16を中心(軸)として、第1ピン16の移動量に対して第2ピン17の移動量の増分、傾きながら移動する。
【0034】
このように、移動機構14では、第1ピン16をX線検出器12の首振り運動の軸とし、ピン16,17の移動量によって、フレーム15に固定されているX線検出器12の直線移動と、首振り運動を制御している。
【0035】
この移動機構14におけるピン16,17の位置の移動によるフレーム15の動作と、X線検出器12の直線移動及び首振りの制御について、図3を用いて説明する。移動機構14では、第1ピン16と第2ピン17をそれぞれ互いに平行な直線上に同期して所定の移動比率をもって移動させる。このとき、移動機構14は、第1ピン16及び第2ピンが、常にX線管11の焦点Fと一直線上にあるように移動させる。
【0036】
第1ピン16と第2ピン17の移動比率は、第1ベルト18と第2ベルト21との搬送の速度によって調整されるが、焦点Fとピン16の移動経路Raとの距離(焦点Fから移動経路Raに下ろした垂線の長さ)を距離L1、焦点Fとピン17の移動経路Rbとの距離を距離L2としたとき、第1ピンの移動距離:第2ピンの移動距離は、L1:L2の関係になる。すなわち、第2ピン17の移動距離は、第1ピン16の移動距離との比率が、焦点Fと第1ピン16間の距離と焦点Fと第2ピン17間の距離との比率と同一になるように求められる。
【0037】
まず、第1ピン16と第2ピン17の初期位置をそれぞれ点A0、点B0としたとき、焦点Fに対して、焦点F、点A0及び点B0が一直線上になるように合わせておく。第1ピン16と第2ピン17を同期させてL1:L2の移動比率で移動させた後の位置をそれぞれA,Bとすると、焦点F、点A及び点Bは常に一直線に保たれ、線分A0Aと線分B0Bの比は常にL1:L2となる。これは、三角形FA0Aと三角形FB0Bの相似関係からわかる。
【0038】
このように、第1ピン16と第2ピン17に挿入されたフレーム15の縦方向(穴部15aと長穴部15bを結ぶ方向)は常に焦点Fを向く。また、X線検出器12は、上述したように、検出面12aの法線が縦方向になるようにフレーム15に固定されている。そのため、移動機構14は、X線検出器12を直線的に移動させるとともに、検出面12aの法線が常に焦点Fの方向を向くように首振り運動させることができる。
【0039】
次に、図4を用いて、連結機構24と、原動プーリーである第2プーリー20及び第4プーリー23の回転について説明する。図4において、第2プーリー20に架けられる第1ベルト18及び第4プーリー23に架けられる第2ベルト21は省略している。
【0040】
連結機構24は、第5プーリー26及び第6プーリー27が一対となり、第3ベルト28が一定の張力をもつように架け渡されている。ここで、第3ベルト28は内側に歯が設けられた歯付きベルトであり、第5プーリー26及び第6プーリー27の円周面にはベルトの歯に嵌合するための歯が形成されている。第5プーリー26は、第2プーリー20と固定されて同軸で回転し、第6プーリー27は、第4プーリー23と固定されて同軸で回転する。
【0041】
モータ25が、第2プーリー20を回転させることにより、第5プーリー26も回転する。このとき、第5プーリー26とともに第3ベルト28が架けられている第6プーリー27も回転する。また、第6プーリー27が回転することによって、第4プーリー23も回転する。このように、第2プーリー20の回転に同期して、第4プーリー23も回転する。
【0042】
ここで、第5プーリー26に形成される歯数をN1、第6プーリー27に形成される歯数をN2とすると、第5プーリー26の歯数N1及び第6プーリー27の歯数N2は、上述した距離L1及び距離L2の関係は、式(1)が成立するように形成されている。
【0043】
N1:N2=L2:L1 … (1)
これにより、プーリー26とプーリー27の回転速度比は(歯数の逆数に比例するので)L1:L2となる。
【0044】
移動機構14では、このように、各プーリー26,27に形成する歯数を変えることによって、第2プーリー20と第4プーリー23の回転速度を変えている。すなわち、第1ベルト18は第2プーリー20の回転に伴って搬送の速度が決められる。一方、第2ベルト21の回転速度は、第2プーリー20と同軸の第5プーリー26の回転に対して、第3ベルト28によって回転する第6プーリー27と同軸の第4のプーリー23の回転に伴って搬送の速度が決められる。回転速度の比率は移動比率(移動量の比率)として表すこともできるため、回転速度がL1:L2であるベルト18,21に固定される第1ピン16と第2ピン17の移動比率もL1:L2となる。
【0045】
上述した本発明の最良の実施形態に係るX線透視検査装置1によれば、移動機構14によりX線検出器12を固定したフレームを、第1ピン16と第2ピン17をそれぞれ互いに平行な直線上に同期して所定の移動比率をもって移動させる。これにより、容易な機構制御でX線検出器12を直線的に移動させるとともにX線検出器12の検出面12aの法線が常に焦点Fの方向を向くよう首振り運動させることができる。
【0046】
また、第1ピン16と第2ピン17をそれぞれ第1ベルト18と第2ベルト21で同一の機構によって直線的に移動させる構成にしたことで、移動機構14及びこの移動機構14を含むX線透視検査装置1を小型にすることができる。
【0047】
さらに、連結機構24は、プーリー20,23,26,27が有する歯数の比で第1ピン16と第2ピン17の移動比率を決めて移動比率の精度を保つことで、正確にX線検出器12の検出面12aの法線を焦点Fの方向に向けることができる。
【0048】
他に、焦点F位置を軸として旋回するアームを利用してX線検出器の検出面を焦点方向に向ける首振り機構を有するX線透視検査装置と比較しても、アームを必要とせず、移動機構14及びこの移動機構14を含むX線透視検査装置1を小型に構成することができる。
【0049】
以上のように、本発明の最良の実施形態によれば、制御の容易なX線検出器の首振り機構を持つX線透視検査装置を提供することができる。
【0050】
なお、上述した最良の実施形態に係るX線透視検査装置1では、ピン16,17を介してX線検出器12を移動させる構成としてベルト18,21を用いているが、ベルト18,21に替えて、チェーンやワイヤ等を用いても同一の効果を得ることができる。また、ピン16,17を介してX線検出器12を移動させる構成として、ベルト18,21に替えて、ネジとナットあるいはボールネジとボールナット等を用いても同様の効果を得ることができる。さらに、上述した最良の実施形態に係るX線透視検査装置1では、X線検出器12の位置をベルト18,21に固定する固定部としてピン16,17を用いたが、ピン16,17に変えて、ベルト18,21に固定させる他の部材を用いても同一の効果を得ることができる。
【0051】
[変形例1]
図5を用いて、本発明の最良の実施形態の変形例1に係るX線透視検査装置の移動機構について説明する。変形例1に係るX線透視検査装置は、図1で説明したX線透視検査装置1に加えて、第1ピン16に固定される第1支持板40と、第2ピン17に固定される第2支持板41と、第1支持板40を第1ベルト18に沿って移動させる第1レール42と、第2支持板41を第2ベルト21に沿って移動させる第2レール43とを有している。
【0052】
第1レール42は、第1ベルト18と平行な直線形状の部材であって、第1ベルト18の近傍に設けられている。第1レール42は、第1支持板40を第1ベルト18に沿って移動させるように支持しており、第1支持板40は、第1ピン16の移動とともに、第1レール42に沿って摺動する。
【0053】
第2レール43は、第2ベルト21と平行な直線形状の部材であって、第2ベルト21の近傍に設けられている。第2レール43は、第2支持板41を第2ベルト21に沿って移動させるように支持しており、第2支持板41は、第2ピン17の移動とともに、第2レール43に沿って摺動する。レール42,43の長さは、ピン16,17がベルト18,21とともに移動する距離より少し長く、ピン16,17の移動する下に設置されている。
【0054】
各支持板40,41及びレール42,43は、互いに係合する部分に鋼球を配し、鋼球の転がりにより摩擦を少なくしたもの(例えば、THK株式会社のLMガイド(商標)等)であることが好ましい。
【0055】
第1レール42及び第2レール43は、フレーム(図示せず)によりフロアから支持される。その他の構成は、上述した最良の実施形態に係るX線透視検査装置と同一の構成であるため、説明を省略する。
【0056】
なお、第1レール42又は第2レール43のいずれか一方のみ設ける構成でもよい。
【0057】
上述したように、変形例1に係るX線透視検査装置では、ピンを移動させるとき、レールに沿って移動させている。これによって、ベルトに生じるたわみの影響が無く、正確に直線上を移動させることが可能となり、X線検出器12の重量が大きい場合等にも、X線検出器12の動きを正確にできる効果がある。
【0058】
[変形例2]
図6を用いて、本発明の最良の実施形態の変形例2に係るX線透視検査装置の移動機構について説明する。変形例2に係るX線透視検査装置は、図1で説明したX線透視検査装置に加えて、第1すり板44及び第2すり板45を有している。
【0059】
第1すり板44は、第1ベルト18の下部に第1ベルト18に接して設けられる直線形状の板である。また、第2すり板45は、第2ベルト21の下部に第2ベルト21に接して設けられる直線形状の板である。例えば、すり板44,45の長さは、ピン16,17がベルト18,21とともに移動する距離であり、すり板44,45の幅はベルト18,21の幅とする。
【0060】
ベルト18,21は、それぞれすり板44,45にすれながら移動する。これにより、第1ピン16及び第2ピン17を移動させるときにベルト18,21のたわみの影響が無く、正確に直線上を移動させることができる。
【0061】
したがって、変形例2に係るX線透視検査装置では、X線検出器12の重量が大きいとき等であっても、X線検出器12の動きを正確にできる効果が得られる。なお、すり板44,45は、フレームにより、フロアから支持される(図示せず)。
【0062】
図6において、すり板44,45は、それぞれベルト18,21を介してピン16,17の移動をガイドしているが、ベルト18,21と隣り合わせて配置し、直接ピン16,17に接して、ピン16,17をガイドするようにしてもよい。
【0063】
[変形例3]
図7を用いて、本発明の最良の実施形態の変形例3に係るX線透視検査装置の移動機構について説明する。変形例3に係るX線透視検査装置は、図6で説明したX線透視検査装置に加えて、第3すり板46及び第4すり板47を有している。
【0064】
第3すり板46は第1すり板44と同一の形状であって、第1ベルト18の上部の第1ピン16に接する位置に配置されている。第1ベルト18が、第1すり板44にすれながら移動するとき、第1ピン16は第3すり板46にすれながら移動する。
【0065】
第4すり板47は第2ベルト21と同一の形状であって、第2ベルト21の上部の第2ピン17に接する位置に配置されている。第2ベルト21が、第2すり板44にすれながら移動するとき、第2ピン17は第4すり板47にすれながら移動する。
【0066】
これにより、第1ピン16および第2ピン17を移動させるときにベルト18,21のたわみの影響が無く、正確に直線上に移動させることができる。
【0067】
したがって、変形例3に係るX線透視検査装置では、X線検出器12の重量が大きいとき等であっても、X線検出器12の動きを正確にできる効果が得られる。なお、すり板46,47は、フレーム(図示せず)により、フロアから支持される。
【0068】
[変形例4]
図8を用いて、本発明の最良の実施形態の変形例4に係るX線透視検査装置の移動機構について説明する。変形例4に係るX線透視検査装置は、図5で説明したX線透視検査装置と比較して、レール42を有しておらず、ピン16を直接第3レール48aと第4レール48bに係合させている。
【0069】
第3レール48a及び第4レール48bは、ピン16を係合させて移動可能な領域をもつ枠形状の部材である。レール48a,48bの長さは、第1ピン16が第1ベルト18とともに移動する距離を確保する長さである。図8に示す例では、第1ピン16の両端部がレール48a,48bの領域に合うように中央部と比較して細くなっている。
【0070】
変形例4では、上述した変形例1と同様に、第2ベルト18のたわみの影響が無く、正確に直線上を移動させることが可能となり、X線検出器12の動きを正確にすることができる。
【0071】
変形例4では、レール42を無くす代わりにレール43を無くし、図8を用いて上述したレールと同様のレールにピン17を直接係合させるように構成してもよい。
【0072】
または、レール42及びレール43の両方を無くし、図8を用いて上述したレールと同様のレールにピン16及びピン17の両方を直接接合させるようにしてもよい。
【0073】
[変形例5]
図9を用いて、本発明の最良の実施形態の変形例5に係るX線透視検査装置の移動機構について説明する。変形例5に係るX線透視検査装置は、図5で説明したX線透視検査装置と比較して、第2レール43が無く、第1ピン16を支持する第1支持板40及び第2ピン17を支持する第2支持板41’の両方を第1レール42に係合させている。
【0074】
ベルト18,21の移動に伴ってピン16,17が動くとき、第1ピン16は第1レール42に支持される第1支持板40にガイドされ、ピン17は第1レール42に支持される第2支持板41’にガイドされる。
【0075】
第1ピン16と第2ピン17との移動速度は異なるため、例えば図9に示すように、第2ピン17を支持する第2支持板41’は、第1支持板40と第1レール42の係合部分と両側に所定の距離を保つ位置で第1レール42と係合させ、第1レール42上において第1支持板40と第2支持板41’とが接触しないような構成にしている。
【0076】
変形例5では、上述した変形例1と同様に、ベルト19,21のたわみの影響が無く、正確に直線上を移動させることが可能となり、X線検出器12の動きを正確にすることができる。
【0077】
[変形例6]
図10を用いて、本発明の最良の実施形態の変形例6に係るX線透視検査装置の移動機構について説明する。変形例6に係るX線透視検査装置は、変形例1又は変形例5で、第1レール42と第1支持板40との係合に車輪50a,50bを用いている。
【0078】
図10は、第1レール42をレール42に対して長手方向から見た側面図である。第1支持板40には、シャフト49a,49bそれぞれにベアリングを介して車輪50a,50bを付ける。第1レール42は、両側面にV溝を設けており、車輪50a,50bそれぞれで第1レール42のV溝を挟み支持板40とレール42が係合される。支持板40は、車輪が転がることで、少ない摩擦でレール42に沿って摺動する。
【0079】
図10において車輪は2台であるが、変形例6で、車輪の数は2台に限られず、1台、3台、4台等であっても同様である。また、この第1支持板40とレールとの係合方法は、第1レール42でなく、第2レール43等の他のレールに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るX線透視検査装置の概念図である。
【図2】本発明の最良の実施形態に係るX線透視検査装置のフレームを裏側から見た図である。
【図3】本発明の最良の実施形態に係るX線透視検査装置の移動機構の動作を説明する図である。
【図4】本発明の最良の実施形態に係るX線透視検査装置の連結機構とモータの概略構成図である。
【図5】本発明の最良の実施形態の変形例1に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図6】本発明の最良の実施形態の変形例2に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図7】本発明の最良の実施形態の変形例3に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図8】本発明の最良の実施形態の変形例4に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図9】本発明の最良の実施形態の変形例5に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図10】本発明の最良の実施形態の変形例6に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図11】従来のX線透視検査装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0081】
1…X線透視検査装置
11…X線管
12…X線検出器
12a…検出面
13…テーブル
14…移動機構
15…フレーム
15a…穴部
15b…長穴部
16…第1ピン(固定部)
17…第2ピン(固定部)
18…第1ベルト
19…第1プーリー
20…第2プーリー
21…第2ベルト
22…第3プーリー
23…第4プーリー
24…連結機構
25…モータ
26…第5プーリー
27…第6プーリー
28…第3ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に載置された被検体にX線源からX線を照射し、X線検出器によって、前記被検体の透過画像を検出して表示部に前記透過画像を表示するX線透視検査装置において、
照射される前記X線を検出する位置を変えるように前記X線検出器を直線移動させるとともに、前記X線検出器の検出面の法線が前記X線源を向くように首振り運動させる移動機構を有し、
前記移動機構は、
前記X線検出器と首振り運動の軸となる位置関係にある第1固定部と、
前記X線源と前記第1固定部とを結ぶ直線上に位置する第2固定部と、
前記第1固定部を直線方向に任意の距離移動させるとともに、前記X線源と前記第1固定部の移動経路間の距離と前記X線源と前記第2固定部の移動経路間の距離との比率に対し、前記任意の距離と前記第2固定部の移動距離の関係が前記比率となるように、前記第2固定部を前記第1固定部が移動した直線と平行な直線方向に移動させる搬送部と、
を備えることを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、
第1プーリー及び第2プーリーと、
前記第1固定部が固定され、前記第1プーリーと第2プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第1プーリー又は前記第2プーリーの回転に伴って搬送される第1ベルトと、
を備えることを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、
第3プーリー及び第4プーリーと、
前記第2固定部が固定され、前記第3プーリーと第4プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第3プーリー又は前記第4プーリーの回転に伴って搬送される第2ベルトと、
を備えることを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項4】
請求項1記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、
第1プーリー及び第2プーリーと、
前記第1固定部が固定され、前記第1プーリーと第2プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第1プーリー又は前記第2プーリーの回転に伴って搬送される第1ベルトと、
第3プーリー及び第4プーリーと、
前記第2固定部が固定され、前記第3プーリーと第4プーリーとの間に所定の張力を持って架け渡されるとともに、前記第3プーリー又は前記第4プーリーの回転に伴って搬送される第2ベルトと、
前記第2プーリー及び前記第4プーリーを連結するとともに前記第2プーリー及び前記第4プーリーの回転を同期させる連結機構と、
前記第2プーリー及び前記第4プーリーを回転させる1つのモータとを備え、
前記第2プーリーの回転に伴い前記第1固定部が任意の距離移動したとき、前記第4プーリーは、前記X線源と前記第1固定部間の距離と前記X線源と前記第2固定部間の距離との比率に対し、前記任意の距離と前記第2固定部の移動距離の関係が前記比率となるように、前記第2固定部を移動させる速度で回転することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、
前記第1ベルトと平行に配置され、前記第1ベルトの搬送とともに移動する前記第1固定部を支える直線形状の第1レールを備えることを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1記載のX線透視検査装置において、前記搬送部は、
前記第2ベルトと平行に配置され、前記第2ベルトの搬送とともに移動する前記第2固定部を支える直線形状の第2レールを備えることを特徴とするX線透視検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−316014(P2007−316014A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148369(P2006−148369)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】