説明

X線CT装置

【課題】 X線管の寿命を落とさずに、X線管におけるX線焦点の大きさに対する許容負荷を大きくすることが可能なX線CT装置を提供する。
【解決手段】 X線管21のターゲット電極21tを固定型(非回転型)とし、X線を照射する際に、X線管21の電子ビーム70を電界や磁界により偏向してX線焦点fをターゲット電極21t上で移動させ、電子ビーム70が衝突するターゲット電極21t上の面積を実効的に増大させる。電子ビーム70の偏向は、例えば偏向電極に電圧を印加し、電界を形成して行う。そして、ビューごとのX線焦点fの位置を検出または推定により特定し、X線焦点fの移動を考慮した画像再構成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管を備えるX線CT(Computed Tomography)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は被検体にX線を照射するためのX線管を有している。X線CT装置のX線管は、一般的に、電子発生源と、タングステン(tungsten)等で構成される回転型のターゲット電極(target electrode)とを有しており、電子発生源からの電子ビーム(electron beam)をターゲット電極である回転陽極に衝突させ、そこに形成されるX線焦点からX線を発生させる(例えば特許文献1,図1〜図3等参照)。ターゲット電極が回転しているので、電子ビームが衝突するターゲット電極上の面積を実効的に増大させて熱冷却効率を高めることができ、小さいX線焦点で大きな負荷(X線照射出力)に耐えることができる。これにより、被検体の画像を画像診断に必要とされる画質、例えば一定以上の空間分解能および一定以下のノイズレベル(noise level)にて撮影することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−280195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなX線管では、重いターゲット電極を長時間に渡り高速で回転させることになり、さらにはそのX線管が走査ガントリの回転部に搭載されて回転され、強い遠心力を受けることになる。そのため、ターゲットの回転機構を構成する部品、例えばベアリング(bearing)が磨耗により劣化し、X線管の寿命が短くなる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、X線管の寿命を落とさずに、X線管におけるX線焦点の大きさに対する許容負荷を大きくすることが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点では、本発明は、電子発生源とターゲットとを含み、前記電子発生源からの電子ビームが前記ターゲットに衝突して形成されるX線焦点からX線を発生するX線管と、該X線管と被検体を挟んで相対向して配置されるX線検出器と、前記X線管およびX線検出器を被検体の周りに回転させながらX線を前記被検体に照射して複数ビュー(view)の投影データ(projection data)を収集するデータ収集手段と、前記収集された投影データに基づいて逆投影処理により画像を再構成する画像再構成手段とを備えたX線CT装置であって、前記複数ビューの各々におけるX線焦点の位置を特定する焦点位置特定手段をさらに備えており、前記ターゲットは固定型(非回転型)であり、前記データ収集手段は、前記電子ビームを偏向して前記X線焦点を前記ターゲット上で所定のパターン(pattern)に従って移動させながら前記複数ビューの投影データを収集し、前記画像再構成手段は、前記特定されたX線焦点の位置を用いて前記逆投影処理を行うX線CT装置を提供する。
【0007】
「データ収集手段」は、例えば電子ビームを電界または磁界により偏向する。
【0008】
「焦点位置特定手段」は、例えば焦点位置を実際に検出して、あるいは、焦点位置の移動パターンが決まっている場合には推定するなどして、焦点位置を特定する。
【0009】
第2の観点では、本発明は、前記所定の移動パターンが、前記ターゲット上を2次元的に移動するパターンである上記第1の観点のX線CT装置を提供する。
【0010】
第3の観点では、本発明は、前記所定の移動パターン上で最も離れた位置同士の距離は、前記ターゲット上において2ミリメートル(mm)以上である上記第1の観点または第2の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0011】
第4の観点では、本発明は、前記ターゲットを、冷媒を用いて冷却する冷却手段をさらに備えている上記第1の観点から第3の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0012】
「冷媒」としては、例えば水や油などを考えることができる。
【0013】
第5の観点では、本発明は、前記X線焦点の最小の幅が、前記ターゲット上において300ミクロン(μm)以下である上記第4の観点のX線CT装置を提供する。
【0014】
第6の観点では、本発明は、前記焦点位置特定手段が、前記X線管からのX線の照射領域内に配置された所定のX線被照射体と、該X線被照射体の透過X線を検出してその投影データを得る検出部とを有しており、該投影データに基づいて前記X線焦点の位置を検出する上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0015】
ここで、「所定のX線被照射体」は、例えばX線ビームを形成するコリメータ(collimator)、ピンホール(pin-hole)が形成されたX線吸収材等とすることができる。
【0016】
また、「検出部」は、被検体の透過X線を検出するためのX線検出器と兼用であってもよい。
【0017】
第7の観点では、本発明は、前記逆投影処理が、3次元逆投影処理である上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0018】
第8の観点では、本発明は、前記ターゲットが、前記電子ビームが衝突する面と同じ側にX線を発生する上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0019】
第9の観点では、本発明は、前記ターゲットが、前記電子ビームが衝突する面と反対側にX線を発生する上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、X線管のターゲットを固定型(非回転型)としているので、ターゲットの回転機構が不要であり、回転機構の磨耗による劣化をなくすことができる。また、X線管の電子ビームを偏向してX線焦点をターゲット上で移動させながら被検体の投影データを収集するので、X線焦点を固定する従来の方式よりも、電子ビームが衝突するターゲット上の実効的な面積を増大させ、熱冷却効率を高めることができる。これにより、X線管の寿命を落とさずに、X線焦点の大きさに対する許容負荷を大きくすることが可能なX線CT装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図である。
【図2】X線管、コリメータ(collimator)、およびX線検出器の構成と位置関係を概略的に示す図である。
【図3】X線管の要部を示す図である。
【図4】ターゲット電極上に形成されるX線焦点を示す図である。
【図5】X線焦点がターゲット電極上で2次元的に移動する様子を示す図である。
【図6】X線焦点の移動パターンの例を示す図である。
【図7】X線焦点位置検出部の構成を示す図である。
【図8】1ビュー分の投影データの構成を示す図である。
【図9】3次元画像再構成処理を示すフローチャートである。
【図10】3次元逆投影処理を示すフローチャートである。
【図11】画像再構成領域上のラインをX線透過方向へ投影する状態を示す概念図(xy平面図)である。
【図12】画像再構成領域上のラインをX線透過方向へ投影する状態を示す概念図(yz平面図)である。
【図13】X線検出器の検出面に投影したライン(line)を示す概念図である。
【図14】投影データを画像再構成領域上に投影した状態を示す概念図である。
【図15】画像再構成領域上の各画素の逆投影画素データを示す概念図である。
【図16】逆投影画素データを画素対応に全ビュー加算して逆投影データを得る状態を示す概念図である。
【図17】円形の画像再構成領域上のラインをX線透過方向へ投影する状態を示す概念図である。
【図18】第一実施形態のX線CT装置における処理の流れを示すフローチャート(flow chart)である。
【図19】第二実施形態のX線CT装置におけるX線管の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0023】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【0024】
X線CT装置100は、操作コンソール(console)1と、撮影テーブル(table)10と、走査ガントリ(gantry)20とを具備している。
【0025】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体40の投影データを収集するための各部の制御や3次元画像再構成処理等を行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラム(program)やデータ等を記憶する記憶装置7とを具備している。
【0026】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の開口部Bに入れ出しするクレードル(cradle)12を具備している。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。
【0027】
走査ガントリ20は、回転部15と、回転部15を回転可能に支持する本体部20aとを有している。
【0028】
回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線ビーム81をコリメート(collimate)して扇状のX線ビーム81を形成するコリメータ23と、被検体40を透過したX線ビーム81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力を投影データに変換して収集するDAS(Data Acquisition System)(データ収集装置ともいう)25と、X線管21を冷却する冷却器31と、X線管21のX線焦点の位置を検出するX線焦点位置検出部32と、X線コントローラ22,コリメータ23,DAS25,冷却器31,X線焦点位置検出部32の制御を行う回転部コントローラ26と、DAS25,X線焦点位置検出部32等から送られてくるデータをまとめてデータ収集バッファ5に送るインタフェース(interface)部27とが搭載されている。
【0029】
本体部20aは、操作コンソール1、撮影テーブル10、回転部コントローラ26、およびインタフェース部27との間で制御信号やデータなどを送受信する制御コントローラ29を具備する。回転部15と本体部20aとは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0030】
なお、走査ガントリ20は、本発明におけるデータ収集手段の一例である。また、中央処理装置3は、本発明における画像再構成手段の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、この手段として機能する。
【0031】
図2は、X線管、コリメータ、およびX線検出器の構成とこれらの位置関係を概略的に示す図である。X線管21、コリメータ23およびX線検出器24は、回転部15の所定の基部に支持されて図示のような位置関係を維持している。すなわち、X線管21とX線検出器24とは、走査ガントリ20の開口部Bを挟んで相対向して配置され、またコリメータ23は、X線管21と開口部Bとの間に配置されている。
【0032】
X線管21は、図2に示すように、陰極スリーブ(cathode sleeve)21sと、陰極スリーブ21sとz方向にて対向して支持されるターゲット電極21tとをハウジング(housing)21qに収容した構造を有している。ターゲット電極21tは、例えばタングステンなどにより構成されている。ターゲット電極21tは、固定型(非回転型)であり、また、電子ビームが衝突する面と同じ側にX線を発生するいわゆる反射型である。X線管21の構造およびその制御については、後ほど詳しく説明する。
【0033】
X線検出器24は、図2に示すように、X線検出素子24aをチャネル(channel)方向chに複数個配列してなる検出素子列をz方向に複数列配設して成る多列X線検出器である。ここでは、チャネル数をCH(例えば1000程度)、列数をROW(例えば64程度)とし、チャネル番号1〜CHおよび列番号1〜ROWを図のように付す。
【0034】
コリメータ23は、図2に示すように、2本の円柱状の遮蔽棒23a、23bと、2枚の直方形状の遮蔽板23c、23dを有しており、これらによりX線ビーム81を通過させるスリット(slit)Sが形成される。
【0035】
上記のような構成により、X線管21のX線焦点fから放射されたX線ビーム81が、コリメータ23のスリットSを通過することによって、所定のコーン角(cone angle)およびファン角αを有する扇状のX線ビーム81が形成される。そして、クレードル12に載置され開口部Bに搬送された被検体40を透過したX線ビーム81がX線検出器24にて検出される。
【0036】
投影データの収集は、回転部15を回転させ、X線管21、X線検出器24、およびコリメータ23を、被検体40の周りに回転しながらX線ビーム81を被検体40に照射し、その透過したX線ビーム81を検出することにより行う。投影データは、例えば、回転部15の1回転分、すなわち投影角度2π(360度)分を1000ビューとして、1ビューずつ収集し、全部でπ(180度)+ファン角α分、または2π(360度)分収集する。
【0037】
ここで、X線管21の構造およびその制御について詳しく説明する。なお、X線管21およびX線検出器24のデータ収集幾何学系において、上記z方向をzz方向、zz方向に垂直で、X線検出器24の検出面の中心と開口部B内のアイソセンタ(isocenter)ICを通る直線方向をyy方向、zz方向およびyy方向に垂直な方向をxx方向とする。
【0038】
図3は、X線管の要部をxx方向に見たときの透視図である。
【0039】
陰極スリーブ21sは、図3に示すように、陰極フィラメント(cathode filament)21k、第1〜第4の集束電極21a,21b,21c,21dを内蔵している。
【0040】
陰極フィラメント21kとターゲット電極21tは、zz方向において相対向するように所定の間隔を置いて配置されている。第1および第2の集束電極21a,21bは、陰極フィラメント21kとターゲット電極21tとの間の所定の空間AR1をxx方向にて挟むようにそれぞれ配置されている。第3および第4の集束電極21c,21dは、空間AR1をyy方向にて挟むようにそれぞれ配置されている。
【0041】
陰極フィラメント21k、第1〜第4の集束電極21a〜21dは、X線コントローラ22と接続されている。ターゲット電極21tは、本体部20aの筐体グラウンドGND(ゼロ電位)に接続されている。
【0042】
X線コントローラ22は、陰極フィラメント21kに印加する負の電圧Ekと、陰極フィラメント21kに内蔵されるフィラメントに流す電流Ikとを制御する。X線コントローラ22は、X線照射時には、フィラメントの電流Ikを所定値にして陰極フィラメント21kから熱電子を放出させるとともに、陰極フィラメント21kとターゲット電極21tとの間にX線管電圧Vが掛かるように、陰極フィラメント21kの電圧Ekを−V〔V〕に相当する負の電圧とする。これにより、放出された熱電子は、陰極フィラメント21kとターゲット電極21tとの間に形成される電界により、ターゲット電極21t側に加速され、zz方向にビーム状に伸びる電子ビーム70となる。
【0043】
また、X線コントローラ22は、第1〜第4の集束電極21a〜21dにそれぞれ印加する負の電圧Ea,Eb,Ec,Edを制御する。これにより、第1〜第4の集束電極21a〜21dにより囲まれる空間AR1に電界を形成して電子ビーム70をxx方向およびyy方向に集束させ、電子ビーム70のxx方向およびyy方向の幅を調整する。
【0044】
集束された電子ビーム70は、ターゲット電極21tの電子衝突面σに衝突してX線焦点fを形成し、X線焦点fからX線ビーム81が放射される。ターゲット電極21tの電子衝突面σは、例えば5〜10〔mm〕角程度の大きさであり、yy方向に対してyy−zz面方向に角度γtだけ傾斜しており、X線ビーム81は略yy方向を中心に広がりを持って放射される。角度γtは、例えば約7度である。
【0045】
なお、本例では、ターゲット電極21tをゼロ電位に設定し、陰極フィラメント21kを負の電位に設定しているが、逆に陰極フィラメント21kをゼロ電位に設定し、ターゲット電極21tを正の電位に設定してもよい。あるいは、陰極フィラメント21kを負の電位に設定し、ターゲット電極21tを正の電位に設定してもよい。
【0046】
図4は、ターゲット電極上に形成されたX線焦点を示す図であり、図4(a)はX線焦点をxx方向に見たときの図、図4(b)はX線焦点をzz方向に見たときの図、図4(c)は、X線焦点をyy方向に見たときの図である。
【0047】
X線焦点fは、zz方向に見たとき、例えば図4(b)に示すようにxx方向の幅Dxx、yy方向の幅Dyyの矩形状を有している。また、ターゲット電極21tの電子衝突面σは、上述の通りyy方向に対して角度γtで傾斜している。本例では、X線コントローラ22は、幅Dxxが幅Dとなり、幅Dyyが幅D/tan(γt)となるように、第1〜第4の集束電極21a〜21dに印加する電圧Ea〜Edを調整する。これにより、X線焦点fをアイソセンタICから見たとき、すなわちyy方向に見たときの実効的な形状及びサイズ(size)を、例えば図4(b)に示すように、xx方向およびzz方向において幅D×Dサイズの正方形状にする。また、X線コントローラ22は、撮影条件に応じて電圧Ea〜Edを制御して、X線焦点fの幅Dの大きさを変更する。
【0048】
なお、本例では、X線焦点fの実効的なサイズを、回転型ターゲット電極にて通常形成するような標準サイズ、例えば、幅D=500〔μm〕の正方形状サイズSZ1と、幅D≦300〔μm〕の微小サイズ、例えば、幅D=100〔μm〕の正方形状サイズSZ2とに切り換える。
【0049】
ターゲット電極21tは、図3に示すように、ハウジング21qに固定される支持部21rにより密着して支持されている。支持部21rは、例えば熱伝導性のよい銅などの金属により構成されている。支持部21rの内部には、ハウジング21qの外部から流体を流入する流入口piとその流体を外部へ排出する排出口poとを有する管21pが設けられている。流入口piと排出口poとはそれぞれホース(hose)31hを介して冷却器31と接続されており、冷却器31と支持部21rとの間に流体の流路が形成される。冷却器31は、この流路内に水や油などの冷媒31aを循環させて、X線放射時に発熱したターゲット電極21tを、支持部21rを介した熱伝導により冷却する。なお、この冷却機構は一例であり、ターゲット電極21tを熱伝導により効率よく冷却できるものであれば、いずれの冷却機構を用いても構わない。
【0050】
陰極スリーブ21sは、図3に示すように、さらに第1〜第4の偏向電極21e,21f,21g,21hを内蔵している。
【0051】
第1および第2の偏向電極21e,21fは、第1〜第4の集束電極21a〜21dとターゲット電極21tとの間の所定の空間AR2をxx方向にて挟むようにそれぞれ配置されている。第3および第4の偏向電極21g,21hは、空間AR2をyy方向にて挟むようにそれぞれ配置されている。
【0052】
第1〜第4の偏向電極21e〜21hは、X線コントローラ22と接続されている。
【0053】
X線コントローラ22は、第1〜第4の偏向電極21e〜21hに印加する負の電圧Ee,Ef,Eg,Ehを制御する。これにより、第1〜第4の偏向電極21e〜21gに囲まれる空間AR2に電界を形成し、集束された電子ビーム70を、xx方向およびyy方向に2次元的に偏向(位置制御)し、X線焦点fをターゲット電極21t上で2次元的に移動させることができる。X線焦点fがターゲット電極21t上で2次元的に移動する様子を図5に示す。
【0054】
このようにX線焦点fを移動させると、電子ビーム70がターゲット電極21tに衝突する面積を実効的に増大させることができるので、ターゲット電極21tの熱冷却効率を上げることができる。
【0055】
本例では、X線焦点fのサイズに応じて、X線照射時にX線焦点fを移動させるか否かを決定する。具体的には、X線焦点fの実効的なサイズを、幅D=500〔μm〕の正方形状サイズSZ1とする場合には、ターゲット電極21tの発熱は冷却器31による冷却のみで対応し、X線焦点fは固定して移動させない。一方、X線焦点fの実効的なサイズを、幅D=100〔μm〕の正方形状サイズSZ2にする場合には、ターゲット電極21tの集中した発熱による溶融を防ぐため、X線焦点fをターゲット電極21t上で所定の移動パターンを繰り返すように移動させ、熱冷却効率を上げる。
【0056】
図6は、X線焦点の移動パターン(1周期分)の一例を示す図である。この図において、点Pnは、nビュー目の投影データ収集時のX線焦点fの中心位置を示している。
【0057】
例えば、図6(a)に示すように、ターゲット電極21tの電子衝突面σ上において、X線焦点fの位置を、一方向にてラスタ(raster)走査するように移動させる。なお、X線焦点の位置が走査ライン間を跨いで移動する際、すなわち図の破線で示す部分では、X線の出力を一旦切るようにする(以下、同様)。
【0058】
また例えば、図6(c)に示すように、電子衝突面σ上において、X線焦点fの位置を、xx方向の両端部で順次折り返しながらラスタ走査するように移動させる。この場合、図6(a)の移動パターンのように、走査する走査ライン(line)が変わる際にX線の出力が一旦途切れることがないので、X線照射時間が短くなることによる投影データのSN比(signal-noise ratio)の劣化を防ぐことができる。
【0059】
また例えば、図6(b)に示すように、電子衝突面σ上において、X線焦点fの位置を、奇数ビューと偶数ビューとでzz方向に振りながらラスタ走査するように移動させる。X線焦点の位置が走査ライン間を跨いで移動する際には、X線の出力を一旦切る(図の破線で示す部分)。この場合、zz方向のコーン(cone)角がずれた投影データを収集することができ、再構成画像におけるコーン角アーチファクト(cone angle artifact)を低減することができる。
【0060】
また例えば、図6(d)に示すように、図6(b)の移動パターンと図6(c)の移動パターンとを組み合わせて、X線焦点fを、奇数ビューと偶数ビューとで位置をzz方向に振りながら、かつ、xx方向の両端部で順次折り返しながらラスタ走査するように移動させてもよい。なお、X線焦点の位置が走査ライン間を跨いで移動する際には、X線の出力を一旦切る(図の破線で示す部分)。
【0061】
また例えば、図6(e),図6(f)に示すように、電子衝突面σ上において、X線焦点fの位置を、奇数番目の走査ラインと偶数番目の走査ラインとで交互に飛越走査するように移動させてもよい。
【0062】
X線焦点fの移動パターンは、これらの他にも種々考えることができるが、いずれにおいても、ターゲット電極21tの熱冷却効率が高まるように、移動する範囲を広く取ることが好ましい。例えば、10〔mm〕角程度のターゲットに対して、移動パターン上で最も離れた位置同士の距離(図6(a)の例では、点p1とp1000との距離)を、2〔mm〕以上、さらには5〔mm〕以上とすることが好ましい。
【0063】
なお、X線焦点fの移動パターンに従って移動する1周期は、例えば、回転部15の回転速度を0.2〜2〔s/回転〕とし、回転部15の1回転分、すなわち2π(360度)を1000〜2000ビューで分割した場合、1回転分のビューの0.5%以上に相当する5ビュー分以上、さらにはその10%以上に相当する100ビュー分以上で、2000ビュー以下を目安とすることができる。
【0064】
X線焦点位置検出部32は、図7に示すように、ピンホール部32pと、2次元X線エリア(area)検出部32dと、位置特定部32cとを具備している。
【0065】
ピンホール部32pおよび2次元X線エリア検出部32dは、X線ビーム81の照射領域内であって被検体40のX線照射に支障がない場所に配置される。本例では、X線管21とコリメータ23の間に配置されている。
【0066】
ピンホール部32pは、xx−zz面に平行な平板形状のX線吸収材で構成されており、略中央にyy方向に貫通するピンホールpが形成されている。
【0067】
2次元X線エリア検出部32dは、xx−zz面に平行な検出面を有しており、ピンホール部32pのピンホールpを通ったX線ビーム81を検出する。
【0068】
位置特定部32cは、2次元X線エリア検出部32dの出力、すなわちピンホール部32pの投影データに基づいて、X線焦点fの位置を例えば下記の如く特定し、X線焦点fの座標位置Lfを出力する。
【0069】
ここで、X線焦点fをアイソセンタICから見たときの実効的なX線焦点として、xx−zz面内を移動する実効X線焦点f′を想定する。そして、実効X線焦点f′の中心位置のxx方向およびzz方向の座標を(fxx,fzz)とし、ピンホールpの中心位置のxx方向およびzz方向の座標を(pxx,pzz)とし、2次元X線エリア検出部32dにてピンホールpを通ったX線ビーム81が検出された位置dのxx方向およびzz方向の座標を(dxx,dzz)とする。また、実効X線焦点f′とピンホール部32pとのyy方向の距離をM、実効X線焦点f′とピンホール部32pと2次元X線エリア検出部32dとのyy方向の距離をLとすると、実効X線焦点f′の中心位置の座標は、次式により求めることができる。
【0070】
【数1】

【0071】
このように、X線焦点fの位置は、X線焦点fのデータ収集幾何学系における実効X線焦点f′の中心位置の座標として求めることができる。
【0072】
なお、本例では、ピンホール部32pおよび2次元X線エリア検出部32dを、X線管21の近傍に配置しているが、X線検出器24の近傍に配置してもよい。
【0073】
DAS25は、X線検出器24のアナログ出力をデジタル信号に変換して、ビューごとに投影データとして収集する。
【0074】
インタフェース部27は、DAS25、回転部コントローラ26、制御コントローラ29、および位置特定部32cと接続されている。インタフェース部27には、DAS25から投影データD0が、位置特定部32cからX線焦点fの座標位置Lfが、回転部コントローラ26からビュー角度θが、制御コントローラ29からX線管21およびX線検出器24を含むデータ収集系のz方向座標位置zn(クレードル12のz方向座標位置)がそれぞれ送られてくる。インタフェース部27は、ビューごとの投影データD0(view,j,i)に、そのビューにおけるX線焦点fの座標位置Lf(view)、ビュー角度θ、データ収集系のz方向座標位置zn(view)を付加して、データ収集バッファ5に送る。ここで、viewはビュー番号、j,iはそれぞれX線検出器24の列番号とチャネル番号である。1ビュー分の投影データは、例えば図8に示すような構成となる。
【0075】
中央処理装置3は、データ収集バッファ5から受け取った投影データに基づいて3次元画像再構成処理を行い、被検体40の画像を再構成する。
【0076】
図9は、3次元画像再構成処理を示すフローチャートである。
【0077】
ステップ(step)Z1では、投影データに対して、オフセット(offset)補正、対数変換、X線線量補正、X線検出器の感度補正、線質硬化(ビームハードニング(beam hardening))補正等を含む所定の前処理を行う。
【0078】
ステップZ2では、前処理された投影データに所定の再構成関数を重畳する。
【0079】
ステップZ3では、再構成関数が重畳された投影データに対して3次元逆投影処理を行う。この3次元逆投影処理については、後ほど詳しく説明する。
【0080】
ステップZ4では、3次元逆投影処理して得られた画像を画像診断に適した画質にするための後処理を行う。そして、この後処理が完了したら、3次元画像再構成処理を終了する。
【0081】
図10は、3次元逆投影処理(Z3)の詳細を示すフローチャートである。
【0082】
本実施形態では、再構成される画像はz方向に垂直な面、すなわちxy平面に3次元画像再構成される。つまり、以下の画像再構成領域Pは、xy平面に平行なものとする。
【0083】
ステップZ31では、図10に示すように、断層像の画像再構成に必要な全ビュー、すなわち、2π(360度)分のビュー、またはπ(180度)+ファン角α分のX線ファンビーム投影データの全ビュー、またはファンパラ(fan-parallel)変換されたX線平行ビーム投影データの場合は2π(360度)分の全ビュー、またはπ(180度)分の全ビュー中の1ビューに着目し、画像再構成領域Pの各画素に対応する投影データDrを抽出する。
【0084】
ここでは、図11〜図14を参照して、投影データDrについて説明する。図11,図12は画像再構成領域P上のラインをX線透過方向への投影を示す概念図であり、その図11はxy平面、図12はyz平面を示している。図13はX線検出器24の検出面に投影した画像再構成平面の各ラインを示す概念図である。
【0085】
図11,図12に示すように、xy平面に平行な512×512画素の正方形の領域を画像再構成領域Pとし、y=0のx軸に平行な画素列L0,y=63の画素列L63,y=127の画素列L127,y=191の画素列L191,y=255の画素列L255,y=319の画素列L319,y=383の画素列L383,y=447の画素列L447,y=511の画素列L511を列にとる。そして、これらの画素列L0〜L511をX線透過方向にX線検出器24の面に投影した図13に示す如きラインT0〜T511上の投影データを抽出すれば、それらが画素列L0〜L511の投影データDr(view,x,y)となる。ただし、x,yは断層像の各画素(x,y)に対応する。
【0086】
なお、画像再構成領域Pのある画素に対するX線透過方向は、X線焦点fとその画素とを通る直線で示すことができるが、この直線がX線検出器24の検出面上の複数のX線検出素子間に跨いで交差するような位置関係にあるときは、その画素に対する投影データは、上記複数のX線検出素子の投影データを加重加算処理して求める。
【0087】
X線透過方向は、X線管21のX線焦点fと各画素とX線検出器24との幾何学的位置によって決まる。
【0088】
ここでは、投影データD0(view,j,i)に、このデータが収集されたときのビューにおける、ビュー角度θ(view)、データ収集系のz方向座標位置zn(view)、およびX線焦点fのデータ収集幾何学系での座標位置Lf(view)が添付されている。そのため、X線焦点fの移動中に収集されたX線検出器データであっても、投影データに添付された各種の情報とデータ収集系の幾何学的位置関係とに基づいて、X線焦点fおよびX線検出器24のデータ収集幾何学系の中でのX線透過方向を正確に求めることができる。また、テーブルの加速・減速中に収集された投影データであっても、同様に同データ収集幾何学系の中でのX線透過方向を正確に求めることができる。
【0089】
なお、例えば画素列L0をX線透過方向にX線検出器24の面に投影したラインT0のように、ラインの一部がX線検出器24のチャネル方向の外に出た場合は、対応する投影データDr(view,x,y)を「0」にする。また、z方向の外に出た場合は投影データDr(view,x,y)を補外して求める。
【0090】
このようにして、図14に示すように、画像再構成領域Pの各画素に対応する投影データDr(view,x,y)を抽出できる。
【0091】
ステップZ32では、図10に示すように、投影データDr(view,x,y)にコーンビーム再構成加重加算係数を乗算し、図15に示す如き逆投影画素データD2(view,x,y)を作成する。
【0092】
ここで、コーンビーム再構成加重加算係数w(i,j)は以下の通りである。ファンビーム画像再構成の場合は、一般に、view=βaでX線管21のX線焦点fと画像再構成領域P上(xy平面上)の画素g(x,y)とを結ぶ直線がX線ビームの中心軸BCに対してなす角度をγとし、その対向ビューをview=βbとするとき、以下の(数式2)のようになる。
【0093】
【数2】

【0094】
画像再構成領域P上の画素g(x,y)を通るX線ビームとその対向X線ビームが再構成平面Pとなす角度を、αa,αbとすると、これらに依存したコーンビーム(cone beam)再構成加重加算係数ωa,ωbを掛けて加算し、逆投影画素データD2(0,x,y)を求める。この場合、(数式3)のようになる。
【0095】
【数3】

【0096】
ただし、D2(0,x,y)_aはビューβaの逆投影データ、D2(0,x,y)_bはビューβbの逆投影データとする。
【0097】
なお、コーンビーム再構成加重加算係数の対向ビーム同士の和は、(数式4)のようになる。
【0098】
【数4】

【0099】
コーンビーム再構成加重加算係数ωa,ωbを掛けて加算することにより、コーン角アーチファクトを低減することができる。
【0100】
例えば、コーンビーム再構成加重加算係数ωa,ωbは、次式により求めたものを用いることができる。なお、gaはビューβaの加重加算係数、gbはビューβbの加重加算係数である。
【0101】
そして、ファンビーム(fan
beam)角の1/2をγmaxとするとき、以下の(数式5)から(数式10)のようになる。
【0102】
【数5】

(例えば、q=1とする)
【0103】
また、例えば、ga,gbの1例として、max[ ]を値の大きい方を採る関数とすると、以下の(数式11),(数式12)のようになる。
【0104】
【数6】

【0105】
また、ファンビーム画像再構成の場合は、更に、距離係数を画像再構成領域P上の各画素に乗算する。距離係数は、X線管21のX線焦点fから投影データDrに対応するX線検出器24の検出器列j,チャネルiまでの距離をr0とし、X線管21のX線焦点fから投影データDrに対応する画像再構成領域P上の画素までの距離をr1とするとき、(r1/r0)である。
【0106】
また、平行ビーム画像再構成の場合は、画像再構成領域P上の各画素にコーンビーム再構成加重加算係数w(i,j)のみを乗算すればよい。
【0107】
ステップZ33では、図10に示すように、逆投影データD3(x,y)に逆投影画素データD2(view,x,y)を画素対応に加算する。具体的には、予めクリア(clear)しておいた逆投影データD3(x,y)に、逆投影画素データD2(view,x,y)を画素対応に加算する。図16が逆投影画素データD2(view,x,y)を画素ごとに加算する概念を示している。
【0108】
ステップZ34では、図10に示すように、画像再構成に必要な全ビューの逆投影データD2を加算したか否かについて判断する。ここでは、全てについて加算していない場合には、断層像の画像再構成に必要な全ビュー(すなわち、2π(360度)分のビュー又は「180度分+ファン角度分」のビュー)について、ステップZ31〜Z33を繰り返し、画像再構成に必要な全ビューを加算すると図16の左側の図に示される逆投影データD3(x,y)を得ることができる。一方で、全てについて加算した場合には図10に示すように、本処理を終了する。
【0109】
以上、図10の3次元逆投影処理のフローチャートは、図11に示す画像再構成領域Pを正方形512×512画素として説明したものである。しかしこれに限られるものではない。
【0110】
図17は円形の画像再構成領域P上のラインをX線透過方向へ投影する状態を示す概念図である。例えば、画像再構成領域Pを512×512画素の正方形の領域とせずに、図17に示すように、直径512画素の円形の領域としてもよい。
【0111】
これより、本実施形態のX線CT装置における処理の流れについて説明する。
【0112】
図18は、本実施形態のX線CT装置における処理の流れを示す図である。
【0113】
ステップS1では、被検体40を撮影テーブル10のクレードル12に載置し、位置合せを行う。
【0114】
ステップS2では、X線焦点fを標準サイズSZ1にして、そのX線焦点fをターゲット21t上に固定したままX線ビーム81を被検体40に照射してスカウトスキャン(scout scan)を行い、被検体40のスカウト像を取得する。
【0115】
ステップS3では、ステップS2で取得したスカウト像に基づいて、撮影条件の設定を行う。なお、撮影条件には、撮影モード(mode)を高分解能モードにするか標準モードにするかの選択が含まれる。
【0116】
ステップS4では、撮影モードが高分解能モードであるか否かを判定し、高分解能モードであればステップS5に進み、高分解能モードでない、すなわち標準モードであればステップS7に進む。
【0117】
ステップS5では、X線焦点fを微小サイズSZ2に絞り、そのX線焦点fをターゲット21t上で所定の移動パターンに従って移動させながら被検体40の投影データを収集する。このとき、X線焦点位置検出部32は、X線焦点fの座標位置Lfをビューごとに検出する。また、回転部コントローラ26は、ビュー角度θをビューごとに特定する。制御コントローラ29は、データ収集系のz方向座標位置znをビューごとに特定する。そして、各ビューの投影データに、そのビューにおけるX線焦点fの座標位置Lf、ビュー角度θ、データ収集系のz方向座標位置znが添付される。
【0118】
ステップS6では、X線焦点fの移動を考慮した3次元画像再構成処理を行う。すなわち、各ビューの投影データに添付された、X線焦点fの座標位置Lf、ビュー角度θ、およびデータ収集系のz方向座標位置znを読み取って、これらの情報とデータ収集系の幾何学的位置関係とを基に、ビューごとのX線焦点fの位置を特定する。そして、画像再構成領域Pの各画素に対するX線透過方向を正確に求めた上で、3次元逆投影処理を行う。
【0119】
ステップS7では、X線焦点fを標準サイズSZ1にして、そのX線焦点fをターゲット21t上の所定の位置に固定したまま被検体40の投影データを収集する。
【0120】
ステップS8では、通常の3次元画像再構成処理を行う。すなわち、各ビューの投影データに添付された、ビュー角度θ、およびデータ収集系のz方向座標位置znを読み取って、これらの情報とデータ収集系の幾何学的位置関係とを基に、ビューごとのX線焦点fの位置を特定する。そして、画像再構成領域Pの各画素に対するX線透過方向を求めた上で、3次元逆投影処理を行う。
【0121】
ステップS9では、ステップS6またはステップS8にて再構成された画像をモニタ6の画面に表示する。
【0122】
以上、第一実施形態によれば、X線管21のターゲット電極21tを固定型としているので、ターゲット電極の回転機構が不要であり、回転機構の磨耗による劣化をなくすことができる。また、高分解能モードにおいては、X線管21の電子ビーム70を偏向してX線焦点fを移動させながら被検体40の投影データを収集するので、X線焦点fを固定する従来の方式よりも、電子ビーム70が衝突するターゲット電極21t上の面積を実効的に増大させることができる。これにより、X線管21の寿命を落とさずに、X線焦点fの大きさに対する許容負荷を大きくすることが可能なX線CT装置を実現できる。
【0123】
また、第一実施形態によれば、X線焦点fを移動させるだけでなく、ターゲット電極21tを冷却器31により冷却するので、従来の回転陽極式X線管と比較して、X線焦点fのサイズをより小さく、例えば幅D≦300〔μm〕、さらには幅D≦100〔μm〕にもすることができ、撮影における空間分解能や投影データのSN比を改善することができる。
【0124】
また、第一実施形態によれば、ターゲット電極21tの回転機構が不要であり、ターゲット電極21tの形状も円盤状にする必要がないので、X線管21をより小型にすることができる。
【0125】
(第二実施形態)
ターゲット電極21tは、図19に示すように、電子ビームが衝突する面と反対側にX線を発生する、いわゆる透過型であってもよい。この場合、陰極フィラメント21kとターゲット電極21tとはyy方向にて相対向するように配置する。
【0126】
(第三実施形態)
第1〜第4の集束電極21a〜21dおよび第1〜第4の偏向電極21e〜21hのうち少なくも一部を、ハウジング21qの外側に設けてもよい。
【0127】
(第四実施形態)
X線焦点fの移動は、電子ビーム70を磁界により偏向して行ってもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
7 記憶装置
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
20a 本体部
21 X線管
21a〜21d 第1〜第4の集束電極
21e〜21h 第1〜第4の偏向電極
21k 陰極フィラメント
21p 管
21q ハウジング
21r 支持部
21s 陰極スリーブ
21t ターゲット電極
22 X線コントローラ
23 コリメータ
23a,23b 遮蔽棒
23c,23d 遮蔽板
24 X線検出器
24a X線検出素子
25 DAS
26 回転部コントローラ
27 インタフェース部
29 制御コントローラ
30 スリップリング
31 冷却器
31a 冷媒
31h ホース
32 X線焦点位置検出部
32c 位置特定部
32d 2次元X線エリア検出部
32p ピンホール部
40 被検体
70 電子ビーム
81 X線ビーム
100 X線CT装置
B 開口部
f X線焦点
IC アイソセンタ
S スリット
σ 電子衝突面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子発生源とターゲットとを含み、前記電子発生源からの電子ビームが前記ターゲットに衝突して形成されるX線焦点からX線を発生するX線管と、該X線管と被検体を挟んで相対向して配置されるX線検出器と、前記X線管およびX線検出器を被検体の周りに回転させながらX線を前記被検体に照射して複数ビューの投影データを収集するデータ収集手段と、前記収集された投影データに基づいて逆投影処理により画像を再構成する画像再構成手段とを備えたX線CT装置であって、
前記複数ビューの各々におけるX線焦点の位置を特定する焦点位置特定手段をさらに備えており、
前記ターゲットは固定型であり、
前記データ収集手段は、前記電子ビームを偏向して前記X線焦点を前記ターゲット上で所定のパターンに従って移動させながら前記複数ビューの投影データを収集し、
前記画像再構成手段は、前記特定されたX線焦点の位置を用いて前記逆投影処理を行うX線CT装置。
【請求項2】
前記所定の移動パターンは、前記ターゲット上を2次元的に移動するパターンである請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記所定の移動パターン上で最も離れた位置同士の距離は、前記ターゲット上において2ミリメートル(mm)以上である請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記ターゲットを、冷媒を用いて冷却する冷却手段をさらに備えている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記X線焦点の最小の幅は、前記ターゲット上において300ミクロン(μm)以下である請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記焦点位置特定手段は、前記X線管からのX線の照射領域内に配置された所定のX線被照射体と、該X線被照射体の透過X線を検出してその投影データを得る検出部とを有しており、該投影データに基づいて前記X線焦点の位置を検出する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記逆投影処理は、3次元逆投影処理である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記ターゲットは、前記電子ビームが衝突する面と同じ側にX線を発生する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記ターゲットは、前記電子ビームが衝突する面と反対側にX線を発生する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−19802(P2011−19802A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168737(P2009−168737)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】