説明

Y2O3複合ビーズ

【課題】コンタミネーションを減らすことが可能なビーズを提供する。
【解決手段】複合ビーズは、主成分としてのYに第二成分を添加し、鉱酸に対する化学的溶解性を維持しつつ、X線回折パターンが立方晶又は単斜晶のYと同一類似であることを特徴とする。第二成分にはZr、Ce、Gd、Re、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Siからなる群より少なくとも1種が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Yを主成分として含むY複合ビーズに関する。
【背景技術】
【0002】
ビーズミルは粉体の微粉砕化、高分散化が行えるため、容易にnmオーダーの微粉末を得ることができる。よって、得られた微粉末は顔料、電子材料などの様々な分野で応用されている。このビーズミルでは、そのメカニズム上、ミルマシン部材の摩耗によるコンタミネーションを避けることができない。特に、粉砕メディアであるビーズからのコンタミネーションは重要な課題となっている。この課題を解決するため、特許文献1及び2には、ビーズの素材として一般に耐摩耗性の高い材料であるジルコニアを使用することで、コンタミネーションを最小限に抑えることが開示されている。特許文献3には、窒化ケイ素のような新しい材料でビーズを形成することが開示されている。特許文献4には、被粉砕物と同材質のビーズを用いてコンタミネーションの影響をなくす方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−239063公報
【特許文献2】特開2006−160596号公報
【特許文献3】特開2000−319071号公報
【特許文献4】特開2005−206850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被粉砕物がジルコニアや窒化ケイ素と比べて硬い材料でなる場合、ビーズの摩耗率が大きくなり、コンタミネーションの混入の影響が避けられない。また必ずしも被粉砕物と同材質のビーズが得られるとは限らない。よって、コンタミネーションの混入の影響が避けられなくなり被粉砕物の最終特性が劣化する。これらのことから、被粉砕物の粒径や分散性が目標に到達する前にビーズミルの運転を停止しなければならないという制限を受ける。
すなわち、コンタミネーションを避けるためにビーズミル本来の能力を発揮できないという課題が潜在的に存在している。
【0005】
このような状況下において、本発明では、コンタミネーションを減らすことが可能なビーズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明者らは、ビーズが摩耗して発生したコンタミネーションをビーズミル処理後に鉱酸で溶解除去するというプロセスを創案し、鉱酸で容易に溶解するYに注目した。しかしながら、Yビーズを熱プラズマ溶融法で溶融して球状化すると、ビーズ表面の円周方向に筋が形成されて異方性を示し、ビーズミルで被粉砕物を粉砕すると、ビーズそのものが筋に沿って割れることがある。割れていないビーズで粉砕は進行し所望の粉砕物は得られるものの、割れたビーズが選択的に摩耗し粉砕後の精製工数が増大する。また、割れたビーズは再使用できず経済的でない。
【0007】
そこで、酸溶解性を維持しつつ表面の異方性、耐摩耗性及び硬さを改善し、ビーズミルに最適な耐久性を有するビーズを、1種もしくはそれ以上の種の第二成分を添加することにより製造することができ、本発明に至った。すなわち、本発明のビーズは、鉱酸に対する化学的溶解性を有し、X線回折パターンが立方晶又は単斜晶のYと同一又は類似である。特に、Y:X(ここで、XはZr、Ce、Gd、Re、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Siからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。)で表されることを特徴とする。
ここで、本発明のビーズは、特に、X線回折パターンの最大回折角度2θがYのパターンの最大回折角度に対して3%以下でシフトするようなX線回折パターンを有しているとよい。本発明のビーズは、とくに、X線回折パターンの最大回折角度2θの値が、29°≦2θ≦30°の範囲であるX線回折パターンを有するとよい。本発明のビーズは700以上1400以下のビッカース硬さを有するとよい。本発明のビーズは熱プラズマ溶融法で球状化されてなると好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるビーズは、耐摩耗性、硬さの機械的特性のみならず、被粉砕物をビーズで粉砕することで粉砕物に混入した摩耗粉を除去するための化学的特性、即ち鉱酸に対する化学的溶解性を有している。よって、ビーズミルによるコンタミネーションの問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に従って作製した各ビーズの走査電子顕微鏡像を示すテーブルである。
【図2】(A)〜(G)は、実施例1において、各ビーズのX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。
【図3】実施例1に従って作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。
【図4】実施例1において、ビーズに含まれるZrO量に対する硬さの関係を示す図である。
【図5】実施例1において、酸溶解性実験の様子を模式的に示す図である。
【図6】実施例1において、原料に含まれるZrO量と溶解率との関係を示す図である。
【図7】実施例1において、耐摩耗性を調べるために用いたビーズミルの構成を模式的に示す図である。
【図8】実施例1において、各ビーズの耐摩耗性を示す図表である。
【図9】比較例において、(A)は作製したビーズの走査電子顕微鏡像を示す図、(B)はX線回折パターンを示すテーブルである。
【図10】比較例において、濃塩酸で煮沸した後のビーズの走査電子顕微鏡像を示す図である。
【図11】(A)〜(F)は、実施例2において、各ビーズのX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。
【図12】実施例3において、作製した各ビーズの評価一覧表である。
【図13】実施例4において、ビーズの作製方法を示すフローチャートである。
【図14】実施例4において、作製したビーズの評価一覧表、走査電子顕微鏡像、X線回折パターン、を示す図である。
【図15】実施例5で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。
【図16】実施例6で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。
【図17】実施例7で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。
【図18】実施例8で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。
【図19】(A)〜(C)は、実施例5で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。
【図20】(A)〜(C)は、実施例6で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。
【図21】(A)〜(C)は、実施例7で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。
【図22】(A)〜(C)は、実施例8で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。
【図23】実施例5〜実施例8で作製した各ビーズの走査電子顕微鏡像を示すテーブルである。
【図24】実施例5〜8において作製した各ビーズの特性評価を示し、(A)は円周状の筋の割合(B)はビッカース硬さ、(C)は溶解するまでの時間、に関する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係るY複合ビーズ(以下、単に「複合ビーズ」という。)は、Yを主成分とし、鉱酸に対する化学的溶解性を有する。即ち、複合ビーズのX線回折パターンが立方晶又は単結晶のYのX線回折パターンと同一又は類似である。ここで、X線回折パターンが同一又は類似しているとは、Yの最大回折角度2θ(後述する実施例1では29.1°)が高回折角度側又は低回折角度側にシフトし、例えば2θが29°≦2θ≦30°、特に、29.1°≦2θ≦29.5°、さらに好ましくは29.3°≦2θ≦29.48で定められる範囲となること、換言すれば、X線の最大回折角度がYの場合を基準にシフト前の値に対し、0%以上3%以下の範囲でシフトすることを意味する。ここで、2θとは格子に入射したX線と試料表面との角度の2倍である。
本発明の複合ビーズは、第二成分として、Zr、Ce、Gd、Re、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Siからなる群より選択される一種又は二種以上の元素がYに固溶している。鉱酸にはHCl、HNO、HSOなどが含まれる。複合ビーズの平均粒径は、例えば5〜300μmである。
【0011】
本発明の実施形態における複合ビーズはYに第二成分を添加して作製される。本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、YのYの一部をXで置換することで、Y粒子の表面に筋が形成され難くなり、ビーズミル用ビーズの要求特性である耐摩耗性および硬さが向上することを見出した。
【0012】
第二成分をYに添加して固溶させると耐摩耗性、硬さが連続的に変化するが、第二成分を一定以上添加すると第二成分と化合物を形成したり、第二成分の構造が支配的になったりして、化学的溶解性が失われてしまう。例えばSiOはフッ酸に溶解するが、YSiOに類似した複酸化物が合成されると化学的溶解性が失われる。ZrOは化学的耐久性に優れているため、ZrOの構造が支配的になると鉱酸に溶解しなくなる。それゆえに、第二成分の添加量には限度がある。
【0013】
後述するように、本発明者らの実験によれば、化学的溶解性を有する条件は、X線回折パターンが立方晶又は単結晶のYのパターンと同一又は類似しており、添加される元素の量に規定されるものではない。化学的溶解性を有する条件は、Yとの固溶特性やビーズ作製時の熱履歴により固有値として決まる。以下、各実施例にて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
に対してZrを添加しYに対するZrOのモル%を、10、20、25、30、40と変化させた混合原料粉末を調製し、熱プラズマにより溶融後球状化してビーズを作製した。また比較のために、原料粉末としてZrOをYに添加していないビーズの作製と、逆に原料粉末としてZrOにYを3モル%添加したビーズの作製も行った。
作製した各ビーズについて、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によりYイオンの実質値を測定して換算したところ、仕込み量につきYに対するZrOのモル%が10、20、30、40と変化させるに従い、即ちZrOの添加量を変化させるに従い、ビーズに含まれるZrOのモル%は11.5、22.5、28.8、40.0と変化した。この結果から、ビーズの組成は仕込み量の割合、即ち、YとZrOの添加量との割合に一致していることが分かる。
【0015】
作製した各ビーズの外観を走査電子顕微鏡で観察した。図1は、作製した各ビーズの走査電子顕微鏡像を示すテーブルである。ZrOの添加量が10モル%である場合、球表面に円周状の筋がわずかに形成されているが、ZrOの添加量を増加すると、筋が観察されなくなり、ZrOの添加量が30モル%以上では、球表面に円周状の筋が形成されないことが判った。よって、ZrOの添加量は20モル%〜40モル%であることが好ましい。
【0016】
各ビーズのX線回折パターンを測定した。
図2(A)〜(G)は、各ビーズのX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。この図表には、ピーク強度が高い順に1番目から5番目までの2θ(°)、半価幅(°)、d値(×10−1nm)、強度(任意目盛)及び相対強度が示されている。ここで、θとは格子を入射したX線と試料表面との角度であり、つまり、2θは入射方向と反射方向との角度である。d値とは2つのX線の光路の距離差であり、試料面垂直方向の格子面間隔をDとすると、dとDとθとには、D=2dsinθとなる関係がある。
【0017】
ZrOを添加しないでプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図2(A)に示すように、角度を2θで表すと、29.10、48.50、57.60、33.74、20.46(°)の順でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.165、0.188、0.188、0.165、0.141(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0661、1.8754、1.5989、2.6543、4.3372(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、46、36、28、14であった。
【0018】
ZrOを10モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図2(B)に示すように、角度を2θで表すと、29.12、48.54、57.66、33.78、20.46(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.235、0.259、0.212、0.212(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0640、1.8740、1.5974、2.6512、4.3372(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、56、34、30、10であった。
【0019】
ZrOを20モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図2(C)に示すように、角度を2θで表すと、29.28、48.72、57.88、33.90、20.54(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.259、0.259、0.306、0.235、0.212(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0477、1.8675、1.5918、2.6421、4.3205(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、36、20、18、8であった。
【0020】
ZrOを25モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図2(D)に示すように、角度を2θで表すと、29.22、48.72、57.88、33.88、20.50(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.212、0.235、0.212、0.235(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0538、1.8675、1.5918、2.6437、4.3288(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、54、28、28、8であった。
【0021】
ZrOを30モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図2(E)に示すように、角度を2θで表すと、29.30、48.82、57.98、33.98、79.14(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.212、0.212、0.188、0.212(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0456、1.8639、1.5893、2.6361、1.2092(×10−1nm)で、2θの各値の相対強度は順に100、44、28、26、8であった。
【0022】
ZrOを40モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図2(F)に示すように、角度を2θで表すと、29.48、48.96、49.20、34.16、58.42(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.235、0.212、0.188、0.212、0.306(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0274、1.8589、1.8504、2.6226、1.5784(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、54、48、28、24であった。
【0023】
逆に、ZrOにYを3モル%添加しプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図2(G)に示すように、角度を2θで表すと、30.14、50.16、59.96、50.52、59.34(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.282、0.259、0.282、0.235、0.282(°)となり、2θの各値でのd値は順に2.9626、1.8172、1.5415、1.8051、1.5561(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、54、42、26、22であった。
【0024】
図3は各ビーズのX線回折パターンを示す図である。横軸は2θ(°)であり、縦軸はX線回折強度(任意目盛)である。ここで、θとは格子を入射したX線と試料表面との角度であり、つまり、2θは入射方向と反射方向との角度である。d値とは2つのX線の光路の距離差であり、試料面垂直方向の格子面間隔をDとすると、dとDとθとには、D=2dsinθとなる関係がある。
図3から、ZrOの量が増加するに伴い、ピークが高角度側にシフトして、ZrOのパターンに近づいていることが分かる。図3に示すパターンでは40モル%までのZrOを含むビーズはYの立方晶であり、また、ZrO固有のピークが生じていないので、得られたビーズは、YにZrOが固溶した複合材Y:Zrで表されることが分かった。
【0025】
以上のX線回折結果から、複合ビーズにおけるX線回折パターンの最大回折角度2θがYの場合を基準に0%以上3%以下シフトしているとよい。シフト量が3%を超えると、図2(G)に示すように、ZrOが主成分となるからである。
また、X線回折パターンの最大回折強度2θが29°以上30°以下の範囲がよい。最大回折強度2θが30°を超えると、図2(G)に示すように、ZrOが主成分となるからである。YにZrOが固溶している場合、特に29.1°≦2θ≦29.5°、さらに29.3°≦2θ≦29.48°が好ましい。これは、前述の結果から、ZrOの添加量は30モル%〜40モル%の範囲が好ましいからである。
【0026】
作製した各ビーズの硬さを測定した。図4は、原料に含まれるZrO量に対する硬さの関係を示す図である。硬さは50gの圧子によりビーズ表面に形成される圧痕から求めた。測定点は5点であり、平均値を求めてビッカース硬さを求めた。横軸は原料に含まれるZrO量(モル%)であり、縦軸はビッカース硬さHV(50)である。
原料がYのみである場合、ビッカース硬さが約620であったが、複合するZrO量が10、20、30、40(モル%)と増加するに従い、それぞれ、約750、約950、約1050、約1400となった。この結果から、YにZrOを複合させると、硬さが増加していることが判明した。なお、ZrO量を97モル%とすると、ビッカース硬さは約1325となり、ZrOの量が増しすぎると硬さが減少するので好ましくない。
このビッカース硬さの結果を前述の走査電子顕微鏡像及びX線回折パターンの結果と併せて考慮すると、700以上1400以下のビッカース硬さ、特に、1050以上1400以下のビッカース硬さを有するとよい。
【0027】
作製した各ビーズの酸溶解性について調べた。図5は、酸溶解性実験の様子を模式的に示す図である。図5に示すように、作製したビーズ1aと4NのHClとを密閉ガラス容器1に入れ、約37℃の恒温槽2で密閉ガラス容器1をモータ3で回転させながら9時間保持した。一定時間保持した後、溶解したYイオン量を測定した。その測定にはICP発光分光分析を用いた。
【0028】
図6はビーズ中に含まれるZrO量とビーズの溶解率との関係を示す図である。図から、ZrOを混入していないときのビーズの溶解率は約14%であったが、複合するZrOの量が10、20、30、40モル%では、溶解率は約9%、約6%、約3%、約1%であり、複合するZrOの量が増加するに伴い溶解率が低下することが分かった。複合するZrOの量が97モル%まで増加すると溶解率は約0.5%まで低下した。
【0029】
作製した各ビーズの耐摩耗性について調べた。各ビーズの耐摩耗性は、ビーズミルを用いてビーズをからずりし、ビーズ分離後の液にHClを入れて摩耗粉を溶解した後、ICP発光分光分析で測定して求めた。
【0030】
図7は耐摩耗性を調べるために用いたビーズミル10の構成を模式的に示す図である。水冷ジャケット11には冷却水導入口12と冷却水排出口13とが設けられ、容器14が形成されている。容器14内にはシャフト15が上から挿入される。シャフト15はモータ16により回転する。シャフト15の先端にはアジテータ17が取り付けられており、モータ16の回転により容器14内に投入したビーズ18に動きを与える。
からずりの条件は、容器14の容量を22ミリリットル、ビーズ充填量を9.5g、モ
ータ回転数を8000rpm(即ちアジテータ先端周速を10m/秒)とし、24時間行
った。
【0031】
図8は、各ビーズの耐摩耗性を示す図表である。
ZrOを複合していない場合には摩耗率は、約3100μg/gであったが、複合するZrOの量が10、20、30、40モル%では、摩耗率は、約1000μg/g、約250μg/g、約300μg/g、約300μg/gであった。ZrO10モル%量の添加で、摩耗率が約1/3に低下し、さらに、ZrO30モル%量の添加で、摩耗率が約1/10に低下した。よって、ZrOを添加することで、耐摩耗性が向上していることが確認できた。この結果からも、ZrOの添加量は10モル%〜40モル%の範囲が好ましいことが分かる。
【0032】
(比較例)
次に比較例として、複合材をSiOとした場合について説明する。
に対しSiOを50モル%混合した原料粉末を調製し、熱プラズマにより溶融後、球状化してビーズを作製した。ICP発光分光分析による分析のため濃塩酸で煮沸したが溶解できず測定できなかった。
【0033】
図9は比較例の実験結果を示すもので、(A)は走査電子顕微鏡像の図、(B)はX線回折パターンを示す。図9(A)から球表面の円周状の筋は観察されないが、図9(B)から分かるようにY以外の不明ピークが存在し、これにより酸溶解性が低下したものと推定される。図10は濃塩酸で煮沸した後のビーズの走査電子顕微鏡像の図である。図10から、ビーズが所々溶解して孔が開いているが、粒子の形状が残っており、酸溶解性が悪いことが分かった。
以上のようにY以外のピークが現れると酸溶解性が低下し、ビーズが摩耗して発生したコンタミネーションをビーズミル処理後に鉱酸で溶解除去するというプロセスが成り立たなくなる。
【実施例2】
【0034】
複合材としてCeOを1.3モル%、CeOを6.5モル%、TiOを2.8モル%、TiOを13モル%、Gdを0.7モル%、Reを3.1モル%、それぞれ添加してY複合ビーズを作製し、各ビーズのX線回折パターンを測定した。
図11(A)〜(F)は、各ビーズのX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。この図表には、ピーク強度が高い順に1番目から5番目までの2θ(°)、半価幅(°)、d値(×10−1nm)、強度(任意目盛)及び相対強度が示されている。ここで、θとは格子を入射したX線と試料表面との角度であり、つまり、2θは入射方向と反射方向との角度である。d値とは2つのX線の光路の距離差であり、試料面垂直方向の格子面間隔をDとすると、dとDとθとには、D=2dsinθとなる関係がある。
【0035】
CeOを1.3モル%添加しプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図11(A)に示すように、角度を2θで表すと、29.10、48.48、57.56、33.74、43.44(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.165、0.188、0.165、0.165(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0661、1.8762、1.5999、2.6543、2.0814(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、60、36、26、12であった。
【0036】
CeOを6.5モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図11(B)に示すように、角度を2θで表すと、29.08、48.46、57.54、33.70、43.40(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.165、0.141、0.165、0.141、0.141(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0682、1.8769、1.6004、2.6574、2.0833(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、38、30、28、12であった。
【0037】
TiOを2.8モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図11(C)に示すように、角度を2θで表すと、29.10、48.50、57.60、33.74、43.46(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.165、0.188、0.188、0.165、0.188(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0661、1.8754、1.5989、2.6543、2.0805(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、50、32、28、10であった。
【0038】
TiOを13モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図11(D)に示すように、角度を2θで表すと、29.10、48.54、33.76、57.66、20.42(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.188、0.212、0.188、0.235、0.235(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0661、1.8740、2.6528、1.5974、4.3456(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、46、26、26、10であった。
【0039】
Gdを0.7モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図11(E)に示すように、角度を2θで表すと、29.12、48.48、57.56、43.44、78.54(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.141、0.165、0.165、0.141、0.141(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0640、1.8762、1.5999、2.0814、1.2169(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、42、32、10、8であった。
【0040】
Reを3.1モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図11(F)に示すように、角度を2θで表すと、29.02、48.42、33.66、57.52、20.36(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.165、0.165、0.165、0.212、0.165(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0744、1.8784、2.6604、1.6009、4.3582(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、42、28、24、12であった。
【0041】
以上のX線回折結果から、複合ビーズにおけるX線回折パターンの最大回折角度2θがYの場合を基準に0%以上3%以下シフトしている。また、X線回折パターンの最大回折強度2θが29°以上30°以下の範囲となっていることが分かる。
【実施例3】
【0042】
複合材をCe、Gd、Re、Tiとして複合ビーズを作製した。複合材としてCeOを7モルパーセント、Gdを1モルパーセント、Reを3モルパーセント、TiOを13モルパーセント添加してY複合ビーズを作製した。作製したY複合ビーズを、酸溶解性と走査電子顕微鏡像とX線回折とビッカース硬さで評価した。酸溶解性は、4NのHClとビーズ0.5gを密閉ガラス容器に入れ、80℃のオーブンに入れて溶解するまでの時間を目視で判定した。球表面の円周状の筋は、走査電子顕微鏡像から粒子の個数比率とした。
【0043】
図12は、各複合材で作製した複合ビーズの実験結果を示す図表である。
酸溶解性については、複合材がCeO、Gd、Re7、TiOである場合、溶解するまでの時間は、それぞれ90分、60分、120分、210分であり、何れのビーズでも溶解性があることが分かった。何れのビーズにおいてもX線の回折パターンがYの立方晶のそれと同一又は類似であった。円周状の筋の割合も、8%〜19%の範囲であった。ビッカース硬さHV(10)については、複合材がCeO、Gd、Re7、TiOである場合、それぞれ、771、811、807、796であり、何れも十分な値であった。なお、測定には50gの圧子を用いた。この結果から、添加元素の種類および量と、溶解性、円周状の筋、ビッカース硬さとは相関性がない。これについて現在鋭意研究中であるが、メカニズムは不明である。また、添加元素は一種類ではなく複数でも良く、例えば安価なSiOを多く入れ少量のCeOで異方性を改善するとか、CeOで異方性を改善し、ZrOでビッカース硬さを上げる、といった組み合わせが可能である。
【0044】
その他の複合材を選定するため、同様の実験をして評価した。その結果、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cuで同じ効果が得られることを確認した。
【実施例4】
【0045】
に対するZrOを25モル%とさせたビーズを作製した。図13はビーズY:Zrの作製方法を示すフローチャートである。
第1ステップとして純水にY原料粉末を混合し、次いでZrO(CHCOO)水溶液を混合し攪拌してスラリを得る。
第2ステップとして、第1ステップで得た混合物スラリを攪拌しながら加熱してゲル化物を得る。
第3ステップとして、第2ステップで得たゲル化物を加熱して脱水させ、その後、焼成する。例えば脱水処理は180℃で12時間加熱する。焼成処理は、900℃で3時間加熱する。
第4ステップとして、第3ステップで得た焼成物を粉砕し、熱プラズマ溶融法を用いてArとOとの混合ガスで溶融後、球状化しビーズを得る。その後、粒度により篩い分けし分級して乾燥させる。なお、粉砕した後に粉砕物の大きさによって粉度範囲を所定の範囲、例えば40〜80μmに分けるとよい。球状化する粒径が均一化するためである。
以上のステップを経ることで、ビーズY:Zrを得ることができる。
【0046】
得られたビーズのZrO添加量、外観、X線回折パターン、ビッカース硬さ、酸溶解性、からずり摩耗率を実施例1の場合と同様に評価した。図14はそれらの結果の一覧である。
得られたビーズのビッカース硬さは918であり、酸溶解性は2.6wt%、からずり摩耗率は89μg/gであった。なお、からずり摩耗率の測定条件は実施例1と同様である。
【実施例5】
【0047】
実施例1と同様に、Yに対してCeを添加し、Yに対するCeOのモル%を10、20、30と変化させた混合原料粉末を調製し、熱プラズマにより溶融後球状化してビーズを作製した。逆に原料粉末としてCeOにYを3モル%添加してビーズの作製も行なった。
【実施例6】
【0048】
実施例1と同様に、Yに対してTaを添加し、Yに対するTaのモル%を10、20、30と変化させた混合原料粉末を調製し、熱プラズマにより溶融後球状化してビーズを作製した。逆に原料粉末としてTaにYを3モル%添加してビーズの作製も行なった。
【実施例7】
【0049】
実施例1と同様に、Yに対してTiを添加し、Yに対するTiOのモル%を10、20、30と変化させた混合原料粉末を調製し、熱プラズマにより溶融後球状化してビーズを作製した。逆に原料粉末としてTiOにYを3モル%添加してビーズの作製も行なった。
【実施例8】
【0050】
実施例1と同様に、Yに対してFeを添加し、Yに対するFeのモル%を10、20、30と変化させた混合原料粉末を調製し、熱プラズマにより溶融後球状化してビーズを作製した。逆に原料粉末としてFeにYを3モル%添加してビーズの作製も行なった。
【0051】
実施例5〜8において作製した各ビーズについても、実施例1と同様、ICP発光分光分析を行って、仕込み量の割合がY2O3と添加物の量との割合に一致していた。
【0052】
各ビーズのX線回折パターンを測定した。
図15は実施例5で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。横軸、縦軸は、それぞれ図3と同様、θ(°)、X線回折強度(任意目盛)である。図15から、CeOの量が増加するに伴い、ピークが高角度側にシフトしていることが分かる。図15に示すパターンでは、30モル%までCeOを含むビーズは、Yの立方晶であり、YにCeOが固溶した複合材Y:Ceで表されることが分かった。
【0053】
図16は実施例6で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。横軸、縦軸は、それぞれ図3と同様、θ(°)、X線回折強度(任意目盛)である。図16から、Taの量が増加するに伴い、ピークが高角度側にシフトしていることが分かる。図16に示すパターンでは、30モル%までTaを含むビーズは、Yの立方晶であり、YにTaが固溶した複合材Y:Taで表されることが分かった。
【0054】
図17は実施例7で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。横軸、縦軸は、それぞれ図3と同様、θ(°)、X線回折強度(任意目盛)である。図17から、TiOの量が増加するに伴い、ピークが高角度側にシフトしていることが分かる。図17に示すパターンでは、30モル%までTiOを含むビーズは、Yの立方晶であり、YにTiOが固溶した複合材Y:Tiで表されることが分かった。
【0055】
図18は実施例8で作製した各ビーズのX線回折パターンを示す図である。横軸、縦軸は、それぞれ図3と同様、θ(°)、X線回折強度(任意目盛)である。図18から、Feの量が増加するに伴い、ピークが高角度側にシフトして、Feのパターンに近づいていることが分かる。図18に示すパターンでは、30モル%までFeを含むビーズは、Yの立方晶であり、YにFeが固溶した複合材Y:Feで表されることが分かった。
【0056】
図19(A)〜(C)は、実施例5で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。図20(A)〜(C)は、実施例6で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。図21(A)〜(C)は、実施例7で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。また、図22(A)〜(C)は、実施例8で作製した各ビーズに関するX線回折パターンのデータの一部を示す図表である。何れの図表においても、ピーク強度が高い順に1番目から5番目までの2θ(°)、半価幅(°)、d値(×10−1nm)、強度(任意目盛)及び相対強度が示されている点は、図2と同様である。
【0057】
CeOを10モル%添加しプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図19(A)に示すように、角度を2θで表すと、29.02、48.36、57.44、33.64、43.34(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は何れも0.212(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0744、1.8805、1.603、2.662、2.086(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、52、38、22、12であった。
【0058】
CeOを20モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図19(B)に示すように、角度を2θで表すと、29.04、29.22、48.38、57.46、33.66(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.235、0.141、0.306、0.306、0.212(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0723、3.0538、1.8798、1.6025、2.6604(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、58、42、42、34であった。
【0059】
CeOを30モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図19(C)に示すように、角度を2θで表すと、29.02、48.3、33.64、57.32、60.14(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.235、0.259、0.259、0.259、0.259(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0744、1.8827、2.662、1.6061、1.5373(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、30、22、18、6であった。
【0060】
Taを10モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図20(A)に示すように、角度を2θで表すと、29.18、57.78、48.64、33.84、78.88(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は何れも0.212(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0579、1.5944、1.8704、2.6467、1.2125(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、38、34、24、12であった。
【0061】
Taを20モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図20(B)に示すように、角度を2θで表すと、29.24、48.78、57.94、33.92、79.14(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.188、0.188、0.188、0.188(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0517、1.8653、1.5903、2.6406、1.2092(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、54、38、30、18であった。
【0062】
Taを30モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図20(C)に示すように、角度を2θで表すと、29.5、49.16、58.4、34.2、79.8(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.259、0.259、0.235、0.282(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0254、1.8518、1.5789、2.6196、1.2008(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、56、44、36、12であった。
【0063】
TiOを10モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図21(A)に示すように、角度を2θで表すと、29.1、48.54、57.66、33.76、43.5(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.235、0.259、0.259、0.235、0.235となり、2θの各値でのd値は順に3.0661、1.874、1.5974、2.6528、2.0787(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、48、28、26、10であった。
【0064】
TiOを20モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図21(B)に示すように、角度を2θで表すと、29.16、29.54、48.6、33.82、57.52(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.235、0.259、0.235、0.306(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0599、3.0214、1.8718、2.6482、1.5959(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、34、30、22、16であった。
【0065】
TiOを30モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図21(C)に示すように、角度を2θで表すと、29.52、29.2、48.7、49.22、34.24(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.235、0.212、0.376、0.376、0.235(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0234、3.0558、1.8682、1.8497、2.6167(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、96、32、30、22であった。
【0066】
Feを10モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図22(A)に示すように、角度を2θで表すと、29.06、48.46、57.56、33.7、43.4(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は何れも0.212であり、2θの各値でのd値は順に3.0702、1.8769、1.5999、2.6574、2.0833(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、46、32、26、10であった。
【0067】
Feを20モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図22(B)に示すように、角度を2θで表すと、29.08、48.48、57.58、33.72、20.42(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.212、0.212、0.212、0.212、0.188(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.682、1.8762、1.5994、2.6558、4.3456(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、34、24、22、10であった。
【0068】
Feを30モル%添加してプラズマ溶融して固化したプラズマビーズでは、図22(C)に示すように、角度を2θで表すと、29.04、48.46、57.56、33.68、29.92(°)の順序でピーク強度が高く、2θの各値での半価幅は順に0.235、0.235、0.235、0.235、0.424(°)となり、2θの各値でのd値は順に3.0723、1.8769、1.5999、2.6589、2.9839(×10−1nm)であり、2θの各値の相対強度は順に100、44、22、22、18であった。
【0069】
以上の実施例5〜実施例8で作製した各ビーズにおけるX線回折パターンの最大回折角度2θは、実施例1で求めたYの場合を基準に、シフト量を計算すると、Taを30モル%、TiOを30モル%添加しプラズマ溶融して固化した場合であっても、それぞれ1.37%、1.44%であり、最大回折角度2θのシフト量は0%以上3%以下であった。また、最大回折角度2θも、TiOを30モル%添加しプラズマ溶融して固化したものを除いて、29°≦2θ≦29.5の範囲であった。また、実施例5〜実施例8で作製したもののうち、仕込み量が10、20、30モル%であれば、X線回折スペクトルには不純物などに起因する信号も観察されなかった。
【0070】
作製した各ビーズの外観を走査電子顕微鏡で観察した。図23は実施例5〜実施例8で作製した各ビーズの走査電子顕微鏡像を示すテーブルである。Ceを添加したものを除いて、球の表面に際立って筋が見られなかった。
【0071】
実施例5〜8において作製した各ビーズについて、硬さ、溶解性、円周状の筋の割合に関して実施例3と同様の手法により調べた。図24は実施例5〜8において作製した各ビーズの特性評価を示し、(A)は円周状の筋の割合、(B)はビッカース硬さ、(C)は溶解するまでの時間、に関する図表である。
【0072】
実施例5において作製した各ビーズについて、筋の割合は、CeOの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、32、30、30(%)であった。ビッカース硬さHV(25)は、CeOの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、977、919、1086であった。溶解性は、CeOの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、120、210、270(分)であった。
【0073】
実施例6において作製した各ビーズについて、筋の割合は、Taの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、10、8、4(%)であった。ビッカース硬さHV(25)は、Taの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、1280、1106、1059であった。溶解性は、Taの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、600、840、900(分)であった。
【0074】
実施例7において作製した各ビーズについて、筋の割合は、TiOの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、19、12、8(%)であった。ビッカース硬さHV(25)は、TiOの添加量が10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、983、1099、1193であった。溶解性は、TiOの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、210、240、300(分)であった。
【0075】
実施例8において作製した各ビーズについて、筋の割合は、Feの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、16、6、8(%)であった。ビッカース硬さHV(25)は、Feの添加量が10、20、30モル%に対応してそれぞれ、856、855、737であった。溶解性は、Feの添加量10、20、30(モル%)に対応してそれぞれ、210、210、180(分)であった。
【0076】
実施例5〜実施例8の結果から、Ce、Ta、Ti、FeがYに添加されていることで、ビーズ表面に筋が形成され難くなり、ビッカース硬さも使用に耐えうる十分な強度を得ることができた。Ta以外のものを添加した場合には、溶解性も使用に耐えうる値であった。
【符号の説明】
【0077】
1a:ビーズ
1:密閉ガラス容器
2:恒温槽
3:モータ
10:ビーズミル
11:水冷ジャケット
12:冷却水導入口
13:冷却水排出口
14:容器
15:シャフト
16:モータ
17:アジテータ
18:ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱酸に対する化学的溶解性を有し、X線回折パターンが立方晶又は単斜晶のYと同一又は類似である、Y複合ビーズ。
【請求項2】
:X(ここで、XはZr、Ce、Gd、Re、Nb、Ta、Ti、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Siからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。)で表される、請求項1記載のY複合ビーズ。
【請求項3】
前記X線回折パターンの最大回折角度2θがYの場合を基準に3%以下シフトしている、請求項1に記載のY複合ビーズ。
【請求項4】
前記X線回折パターンの最大回折角度2θが29°以上30°以下の範囲である、請求項1に記載のY複合ビーズ。
【請求項5】
700以上1400以下のビッカース硬さを有する、請求項1〜4の何れかに記載のY複合ビーズ。
【請求項6】
熱プラズマ溶融法で球状化されてなる、請求項1〜5の何れかに記載のY複合ビーズ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−111570(P2010−111570A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235786(P2009−235786)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】