ZNF281を発現する臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法
本発明は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法、本発明によって分離された臍帯血由来の万能幹細胞、前記の臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含む細胞治療剤に関するものである。また、本発明は、新規な幹細胞培養用培地、この培地で幹細胞を培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法、及び幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)増加方法に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法、本発明によって分離された臍帯血由来の万能幹細胞、前記の臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含む細胞治療剤に関するものである。また、本発明は、新規な幹細胞培養用培地、この培地で幹細胞を培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法、及び幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)増加方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幹細胞などは、自己再生(self-renewing)、分化、永久性(immortal)などの特徴を有しており、このような独特の性質を用いて再生医学の観点から多様な退行性疾病の治療のための解決方法として提示されるだけでなく、細胞などのバイオロジーに対する深い通察ができる。多様な組職から得ることができる成体幹細胞は、一般的に胚芽幹細胞に比べて無制限的なソースと研究者らが直面できる倫理的な問題を避けることができるため、遥かに魅力的である。さらに、臍帯血から分離された幹細胞は、骨髓や脂肪組職と異なって寄贈者が追加的な害を被る恐れがないので、他の成体幹細胞などよりもさらに大きい長所を有している。
【0003】
試験管内(in vitro)で臍帯血由来の間葉系幹細胞は、成功的に神経細胞、肝細胞、骨細胞のような多様な種類の細胞に成功的に導入された(Sun, W. et al., Stem cells, 23:931, 2005; Hong SH. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 30:1153, 2005; Hutson EL. et al., Tissue Engineering, 11:1407, 2005)。また、生体内(in vivo)で、臍帯血間葉系幹細胞を用いた傷、糖尿病、心臓梗塞(heart infraction)などに成功的な移植が多くの論文などを介して報告されて来た(Nonome, K. et al., Am, J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 289:1091, 2005; Yoshida, S. et al., Stem cells, 23:1409, 2005; Kim Bo. et al., Circulation, 112:96, 2005)。伝染病の伝達危険が少なく、移植片対宿主病(graft-versus-host disease)にかかる危険が低いため、臍帯血間葉系幹細胞移植は、小児、大人患者の皆に急速に施術されている(Claudio G. B. et al., Annual Review of Medicine, 57:403, 2006)。臍帯血移植がいくつかの疾病、特に、造血母欠陷(hematopoietic defection)に係った疾病などに施術することができる方法として受け入れられたと言っても(Grewal, SS. et al., Blood, 103:1147, 2004; Knutsen, AP. et al., Journal pediatrics, 142:519, 2003; Ooi, J. et al., Blood, 103:489, 2004; Sanz GF. et al., Blood, 103:489, 2004)、臍帯血由来の間葉系幹細胞の臨床的な適用に関する研究は、依然として制限されている。例えば、脊髓損傷された女性及びバージャー病(buerger's disease)患者において、完全な回復ではないが、部分的に成功した報告などがある(Kim, SW. et al., Stem Cells, 2006; Kang, KS. et al., Cytotherapy, 7:368, 2005)。しかし、このような細胞などの発達メカニズムだけでなく、この細胞などをどんなによく培養して増殖するかに対しては、依然としてよく知られていない。
【0004】
臍帯血から間葉系幹細胞を分離する方法は、骨髓由来の間葉系幹細胞の分離方法を適用した時に、細胞の分離率が20%内外であり、5時間以内の新鮮な血液を使用した時は、50%であるが、その以後になると、20%以下に落ち、分離後にも細胞の増殖がよくできない限界を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、ヒト臍帯血由来の血液から分離した単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器で培養し、紡錘形(spindle-shape)の細胞が大量に増殖され、集落を成すことを見付け、これを持続的に培養した時、細胞の特性が一定ほど維持されることを確認した。それで既存の方法において問題視されている臍帯血由来の非造血係万能幹細胞及び間葉系幹細胞の效率的分離及び大量増殖が可能な培養方法として本発明を完成した。
【0006】
本発明の一つの目的は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記分離方法によって分離された臍帯血由来の万能幹細胞を提供することにある。
【0008】
本発明のまた他の目的は、前記臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含有する細胞治療剤を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、本発明による新規な幹細胞培養用培地を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、幹細胞を前記培地で培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、幹細胞を球培養または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性増加方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの観点は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法に関するものである。
【0013】
前記培養物から幹細胞を回収することにおいて、幹細胞の免疫学的特性を用いて分離することを更に含むことができる。
【0014】
先ず、臍帯血から単核細胞の分離は、当業界に知られている通常の方法を用いて行うことができる。本発明の一つの態様においては、臍帯血とHetasepを混合して赤血球を除去した後、フィコール−プラーク(Ficoll-plaque)を用いて単核細胞を分離することによって得ることができる。ここで、臍帯血とHetasepの混合比は、臍帯血5ml当たり0.5〜2mlにするのが好ましい。
【0015】
本発明では、臍帯血から単核細胞の分離収率を高めるために、分娩直後に回収した臍帯血、分娩直後に回収して室温で12〜48時間保管した臍帯血または3〜5℃で6〜72時間保管した臍帯血を使用するのが好ましい。
【0016】
本発明は、臍帯血から分離された単核細胞から幹細胞を分離する方法において、フィブロネクチンを用いることを特徴とする。本発明における用語‘フィブロネクチンを含む培養容器'とは、単核細胞とフィブロネクチンとが接触できる状態を意味する。例えば、フィブロネクチンは、培養容器にコーティングされるとか、粒子形態または三次元構造物の形態として培地に含まれることができる。一つの態様として、フィブロネクチンが培養容器にコーティングされた場合、フィブロネクチンは、0.1〜1mg/mlの濃度で含まれることができる。
【0017】
本発明において、フィブロネクチンは、特別な制限なく、動物から由来したものを使用することができるが、ヒトから由来したものが好ましい。前記フィブロネクチンは、人工合成(例えば、化学的合成法、タンパク質合成装置を用いた合成など)または生合成(例えば、組換えDNA技術、繊維芽細胞培養など)を通じて製造するとか、ヒトを含む動物の血漿または細胞外基質から分離することによって入手することもできる。前記フィブロネクチンは、フィブロネクチンの断片(fragment)またはペプチドであるとか、これを含むことができる。
【0018】
単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養する時、利用可能な培地は、特に制限されないが、基本培地としては、SNU−1またはEGM−2を用いるのが好ましい。
【0019】
‘SNU−1培地’の組成は、下記の通りである(表1)。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明では、前記基本培地にFGF−B(Fibroblast Growth Factor)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、EGF(Epodermal Growth Factor)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、IGF−1(Insulin-like Growth Factor-1)またはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)、ヘパリン(heparin)を添加し、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、 Amphotericin-B)を更に添加するのが好ましい。
【0022】
より好ましくは、 前記基本培地に、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF(Epidermal Growth Factor)1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I(Insulin-like Growth Factor-1)1〜40ng/mlまたはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlを添加し、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、 Amphotericin-B)を更に添加することである。
【0023】
一方、単核細胞を培養して3日後、付着しなかった単核細胞は除去し、付着した単核細胞のみを続けて培養する。これにより、付着した単核細胞のうち、幹細胞だけ選択的に増殖するようになり、分離した後、12〜20日の間に速く増殖する幹細胞を観察することができる。ここで、培地は2〜3日ごとに交替するのが好ましい。
【0024】
培養物から臍帯血由来の万能幹細胞を取得する方法としては、ソーティング機能を有したフローサイトメーターを使用したFACS法(Int.Immunol.,10(3):275,1998)、磁気ビーズを使用する方法、間葉系幹細胞を特異的に認識する抗体を使用したパニング法(J.Immunol.,141(8):2797,1998)などがある。また、大量の培養物などから多分化能幹細胞を取得する方法としては、細胞の表面に発現されて分子(以下、表面抗原と称する)を特異的に認識する抗体を単独または組み合わせてこれをカラムとして使用する方法がある。
【0025】
フローサイトメーターのソーティングの方式としては、水滴荷電方式、セルキャプチャー方式などを例示することができる。どちらの方法も、細胞の表面抗原を特異的に認識する抗体を蛍光に標識し、標識された抗体と抗原との結合体に対する蛍光を測定して蛍光強度を電気信号に変換することにより細胞の抗原発現量を定量することができる。また、使用する蛍光物質の種類を組み合わせることにより複数の表面抗原を発現している細胞を分離することも可能である。ここに使用可能な蛍光物質としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(allo-phycocyanin)、TR(TexasRed:テキサスレッド)、Cy3、CyChrome、レッド(Red)613、レッド670、TRI−カラー、クァンタムレッド(QuantumRed)などがある。
【0026】
フローサイトメーターを使用したFACS法としては、前記にで取得した幹細胞溶液を集め、遠心分離などの方法で細胞を分離した後、直接抗体で染色する方法と、一度適当な培地中で培養、増殖を行った後に抗体を染色する方法を利用することができる。細胞の染色はまず、表面抗原を認識する一次抗体と目的の細胞サンプルを混合し、氷上で30分〜1時間、インキュベーションする。一次抗体が蛍光で標識されている場合には、洗浄後フローサイトメーターで分離を行う。一次抗体が蛍光標識されていない場合には、洗浄後一次抗体に対して結合活性を有する蛍光標識された二次抗体と一次抗体が反応した細胞とを混合し、再び氷で30分〜1時間、インキュベーションする。洗浄後、一次抗体と二次抗体で染色された細胞をフローサイトメーターで分離を行う。
【0027】
本発明によって分離された、臍帯血由来の万能幹細胞は、下記の特性のうち、少なくとも一つの特性を有している:
(a)転写調節因子であるc−myc、ZNF281に対して陽性の免疫学的な特性を示す。
(b)細胞外基質がコーティングされた底に付着され、付着の後5〜30日の間に紡錘形または球形態の細胞集落を成しながら増殖する。
(c)30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示す。
(d)CD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的特性を示す。
(e)中胚葉、内胚葉及び外胚葉の細胞に分化可能である。
(f)TIMP−2、TGF−β、RANTES CINC−3、EOTAXIN、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、Leptin、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbからなる群から選択された少なくとも一つのサイトカインまたはケモカインを分泌する。
【0028】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞がOct−4、Sox−2、Rex−1、c−myc、ZNF281を発現するということは、未分化状態が維持されていることを意味する。
【0029】
また、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示し、増殖力が優れることを分かる。核型分析によって、本発明の細胞は速く増殖するが、正常染色体の構造を有していることが確証された。
【0030】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、造血母幹細胞マーカーまたは免疫拒否反応関連マーカーとして知られたCD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的な特性を示す。このように本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、造血及び免疫拒否反応関連マーカーが欠けて移植の時に血管形成と拒否反応を最小化することができ、同種間移植(allogenic transplantation)に有用な細胞として使用することができる。
【0031】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、中胚葉の骨形成細胞、軟骨細胞、脂肪細胞への分化だけではなく、内胚葉の肝細胞及び外胚葉の神経細胞と網膜関連細胞へも分化することができる。よって、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0032】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、TIMP−2、TGF−β、RANTES CINC−3、EOTAXIN、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、Leptin、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbなどの多様なサイトカインまたはケモカインを分泌する。このようなサイトカインまたはケモカインを分泌することにより本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0033】
このような特徴を有する幹細胞は、新規なものであって、本発明は、前記のような特徴を有する臍帯血由来の万能幹細胞を提供する。
【0034】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、骨形成細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞、神経細胞を含めて多様な類型の細胞に分化することができ、それに対応されるように多様な疾病治療に利用することができる。よって、本発明は、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含有する細胞治療剤を提供する。本発明の細胞治療剤は、例えば、神経疾患(例えば、退行性神経疾患)、骨関節炎(例えば、退行性関節炎、リウマチ関節炎)、骨欠損(例えば、骨粗鬆症)、肝疾患(例えば、肝硬変)、心血管系疾患を含む多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0035】
本発明の細胞治療剤は、細胞を保護及び維持する一つ以上の希釈剤を含むのが好ましい。前記希釈剤は、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)、HBSS(Hank's balanced salt solution)などの緩衝溶液、血漿または血液成分などがあり得る。
【0036】
一方、本発明は、新規な幹細胞培養用培地に関するものである。前記培地は、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF(Epidermal Growth Factor)1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I(Insulin-like Growth Factor-1)1〜40ng/mlまたはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlが添加され、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、Amphotericin-B)が更に添加されたEGM−2またはSNU−1培地を含む。
【0037】
前記幹細胞培養用培地は、新規なものであって、上述されたように、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法においても用いられた。本発明の培地は、臍帯血由来の幹細胞を含めてすべての成体幹細胞の増殖に有用であるので、成体幹細胞を培養するのに利用することができる。
【0038】
また、本発明は、幹細胞を本発明の培地で培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法に関するものである。前記幹細胞は、好ましくは成体幹細胞であり得る。
【0039】
一つの態様として、本発明の幹細胞培養用培地は、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞培養に利用され得る。本発明の臍帯血由来の万能幹細胞を本発明の培地で培養しながら紡錘形(spindle-shape)細胞の集落が確認されてから3〜5日後に継代培養するのが好ましい。培養は、5%CO2条件下で行うのが適合し、培養は、5〜30日間長続くことができるが、これに制限されるのではない。
【0040】
一方、本発明は、幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法に関するものである。前記三次元培養の時にMEF(Mouse embryonic fibroblast cell)を用いることを特徴とするのが好ましい。また、前記幹細胞は、成体幹細胞であるものを更に含むことができる。
【0041】
前記において、幹性増加とは、胚芽幹細胞様集落(Embryonic Stem Cell-like colony)を形成するとか、Oct4、Sox2などのような転写調節因子をさらに強く発現することを意味する。
【発明の効果】
【0042】
以上、詳細に記述したように、本発明による万能幹細胞は、ヒト臍帯血由来ので、フィブロネクチンを含む培養容器内で培養すれば、既存の成体幹細胞に比べて未分化段階で長い間に盛んな細胞成長をし、不治病治療に有用に使用されることができ、軟骨細胞、骨形成細胞及び脂肪細胞など多くの種類の細胞に分化する能力を有しているため、神経系疾患、心血管系、骨格系疾患などの治療に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、ヒト臍帯血由来の細胞を分離した後、それぞれ14日目、15日目、16日目、17日目、18日目の細胞成長形態を示した写真(A、B、C、D及びE)及び新しい容器に移した後、Passage3で細胞成長を示した写真である(F)。
【図2】図2は、臍帯血由来の万能幹細胞の時間に応じる細胞増殖を累積で示したグラフである。
【図3】図3は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞を長期間培養した後、核型分析を行った結果である。
【図4】図4は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞に様々なマーカーを付着させて流細胞分析を行った結果である。
【図5】図5は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞が未分化状態幹細胞マーカーの発現を流細胞分析器と細胞免疫染色を介して分析した結果である(A:Oct4流細胞分析結果グラフ、B:免疫染色でOct4発現写真、C:Oct4発現写真の核染色写真、D:Oct4発現写真と核染色写真との合成)。
【図6】図6は、terra−1、hUCB−MSC、AD−MSC及びAMにおいてZNF281の発現を確認した結果(上)と、3〜9回継代培養されたhUCB−MSCにおいてZNF281の発現をFACS分析で確認した結果(下)である。
【図7】図7は、本発明によるヒト臍帯血由来の万能幹細胞がZNF281、Oct4、Sox2、c−myc及びRex−1のような未分化状態を維持するのにおいて重要な遺伝子を発現していることをRT−PCRを介して確認した結果である。
【図8】図8は、ヒト臍帯血由来の万能幹細胞がそれぞれ骨形成細胞、脂肪細胞、軟骨細胞及び神経細胞に分化したことを示す写真である(A:骨形成細胞に分化を誘導しなかった対照群をAlizarin Red Sで染色した写真、B:骨形成細胞に分化を誘導した細胞のAlizarin Red S染色写真、C:脂肪細胞に分化を誘導しなかった対照群のオイルレッドO(Oil red O)染色写真、D:脂肪細胞に分化を誘導した細胞のオイルレッドO(Oil red O)染色写真、E:軟骨細胞に分化を誘導した細胞のToluidine Blue染色写真、F:軟骨細胞に分化を誘導した後に撮影した細胞pelletの写真、G:神経細胞に分化を誘導した後に神経細胞のマーカーであるTuj−1及びMAP2で免疫蛍光染色した写真)。
【図9】図9は、ヒト臍帯血由来の万能幹細胞を骨形成細胞及び脂肪細胞に分化を誘導した後、RNAを抽出した後にRT−PCRを介して確認した結果である(PPAR−γとFABP−4は、脂肪細胞分化のマーカーであり、Collagen Type 1は、骨形成細胞分化のマーカーである。PPAR−γ:Peroxisome Proliferator-Activated Receptor gamma、FABP−4:Fatty Acid Binding Protein-4、GAPDH:Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)。
【図10】図10は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の網膜関連タンパク質の発現様相を示したものである。
【図11】図11は、ヒト臍帯血由来の万能幹細胞を培養した培養液を集めて細胞が分泌した様々なサイトカインを抗体配列(antibody array)を用いて分析した写真である(A:hUCB−MSC1、B:hUCB−MSC2、C:hUCB−MSC3、D:配列された抗体の順に、POS:Positive control、NEG:Negative control、GCSF:Granulocyte-Colony Stimulating Factor、GM−CSF:Granulocyte Monocyte-Colony Stimulating Factor、ICAM−1:Intra-Cellular Adhesion Molecule、IFN−γ:Interferon-γ、IL:Interleukin、MCP:Monocyte Chemoattractant Protein、M−CSF:Monocyte-Golony Stimulating Factor、MIG:Monokine induced by Interferon Gamma、MIP:Macrophage Inflammatory Protein、RANTES:Regulated upon Activation、Normal T-cell Expressed and Secreted、TGF−β:Transforming Growth Factor-β、TNF:Tumour Necrosis Factor、sTNFR:soluble Tumour Necrosis Factor Receptor、PDGF−BB:Platelet-Derived Growth Factor-BB、TIMP2:Tissue Inhibitor of Metalloproteinases-2)。
【図12】図12、図13は、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞を球培養(sphere culture)及びマウス線維芽細胞(mouse fibroblast cell)であるSTO細胞を用いて三次原的に培養した写真及び転写調節因子であるOct4、Sox2遺伝子の発現様相をRT−PCRを介して確認した結果である(図12:球培養を介した臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養、図13:STO細胞を用いた臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養)。
【図13】図12、図13は、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞を球培養(sphere culture)及びマウス線維芽細胞(mouse fibroblast cell)であるSTO細胞を用いて三次原的に培養した写真及び転写調節因子であるOct4、Sox2遺伝子の発現様相をRT−PCRを介して確認した結果である(図12:球培養を介した臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養、図13:STO細胞を用いた臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者において自明なことである。
【0045】
実施例1:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の培養、増殖能の調査及び核型分析
Full term UCBサンプル(n=20)は、産婦の同意下で集めた。まず、Full term UCBをHetaSep(Stem cells TechnologiesINC,Vancouver,BC)を用いて赤血球を優先的に分離した。その後は、既存の方法と同様にフィコール相(ficoll gradient)から分離を行った。分離した単核細胞を20%FBSを含有したEGM−2 SingleQuotsを添加したSNU−1培地またはEGM−2(Lonza)を用いてフィブロネクチンを0.1mg/ml−1mg/mlの濃度でコーティングした6 well plateに1×105〜8細胞で培養した。EGM−2 SingQoutsの構成は、ヘパリン(heparin)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、rhEGF、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、VEGF、rhFGF−B、R3−IGF−1、GA−1000から構成されている。細胞を培養してから3日後に付着されなかった単核細胞を除去し、培地は2〜3日ごとに交替させた。
【0046】
前記分離した後、CO25%の条件で培養してから5〜30日目に、一定の紡錘形の細胞などが集落を成すことを確認した(図1A)。生成された集落は、速い速度で増殖し、集落が観察されてから3日〜7日後、0.125%のTrypsin−EDTAで浮遊させた後、新しい容器に移して細胞を続けて維持した(図1B、図1C、図1D、図1E及び図1F)。図1は、このような過程を示す写真であって、時間が経過するに応じて細胞集落の大きさが増加することを見られ、また、継代培養の後にも細胞の形状が一定に維持されることを観察することができる。(図1:本実施例によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞の形成と増殖過程を示す写真。A:単核細胞培養14日後の初期集落の形態、B:15日、C:16日、D:17日、E:18日、F:継代培養後のpassage3で観察した細胞の写真)。
【0047】
持続的に細胞を培養しながら、分離した臍帯血由来の万能幹細胞の増殖力がどのくらいなのか調査するためにCPDL(cumulative population doubling level)を測定した(Cristofalo et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 95,1998)。細胞は、二分法を用いて増殖する。したがって、細胞の成長速度は、1つの細胞が2つの細胞になる時間がどのくらいなのかに応じて決定される。これをDoubling timeといい、細胞の増殖力を評価できる尺度として使用され得る。もし、CDPL値が10であれば、1つの細胞が10回の分裂をすることを意味し、これを数値上で計算すれば、1つの細胞が約1000個の細胞まで増殖することを意味する。既存の臍帯血由来の幹細胞の最大の問題点は、脂肪組職や骨髓由来の間葉系幹細胞に比べて著しく落ちる増殖力であり、細胞の大量増殖である臨床適用の側面からも増殖力が重要であると見られる。測定方法は、次のように行った。まず、異なる臍帯血サンプルから分離した3種類の臍帯血由来の万能幹細胞を100ディッシュに2×105個ずつ培養し、3日または4日ごとに継代を行い、細胞計算機を用いて細胞数を測定した。細胞の増殖が止めるまで継続的に細胞を培養して細胞数を測定した。このように求めた細胞数を次のような数学式1を用いてCPDL値を求める。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、NIは、最初培養をはじめる時の細胞数、NHは、継代を行う当時の飽和状態での細胞数を意味する。
【0050】
このような方法で持続的に細胞を維持しながら値を求めた。対照群としては、やはり臍帯血から由来した内皮前駆細胞(hUCB-EPC; human Umbilical cord blood derived endothelial progenitor cells)を用いた。その結果は、図2のグラフのように、臍帯血由来の内皮前駆細胞が2ヶ月程度の培養時間に約20CPDLを示した一方、臍帯血由来の万能幹細胞の場合は、3種類の異なるサンプルのすべてが40〜45CPDLを示した。このような数値は、理論上に1つの細胞集落から1012まで増殖できることを意味する。
【0051】
一般的に、このような盛んな増殖力を示す細胞は、癌細胞化されて速く爆発的に増加する場合があり得る。癌細胞化された細胞は、人体内で多くの調節信号などを無視して大きく増殖する傾向があるため、細胞治療剤として利用することができず、研究の目的もないと見られる。したがって、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞が正常な染色体を有した細胞なのか確認を必ずしなければならず、その方法として、核型分析を解して細胞の染色体異常を確認して見た。図3からわかるように、passage10の細胞においても正常染色体の構造を有していることが確認された。
【0052】
実施例2:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の表面抗原分析
培地内に懸濁した細胞などを特性を分析するフローサイトメトリー(flow cytometry)実験を行った。細胞表面抗原のフェノタイピング(phenotyping)のために、3−4継代細胞などを取得してFITC(fluorescein isothiocyanate)またはPE(phycoerythrin)が結合された抗体で染色し、FACS Aria(Becton Dickinson,NY)にて分析を行った。
【0053】
本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞(partially pluripotent stem cell)の特性を分析するために、標識抗原としては、CD10(T細胞マーカー)、CD14(単核細胞マーカー)、CD24(上皮細胞マーカー)、CD29(単核細胞マーカー)、CD31(内皮細胞マーカー)、CD34(造血母幹細胞マーカー)、CD44(間葉系幹細胞マーカー)、CD45(非造血母幹細胞マーカー)、CD51/61(破骨細胞マーカー)、CD73(間葉系幹細胞マーカー)、CD90(間葉系幹細胞マーカー)、CD105(間葉系幹細胞マーカー)、CD133(造血母幹細胞マーカー)、HLA−DR(免疫拒否反応関連マーカー)を使用し、これをフローサイトメトリーを用いて分析を行った。実施結果は、表2の通りである。図4は、下記の結果をグラフで表示したものである。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例3:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞のZNF281発現及び核心転写因子(Core transcription factor)発現様相分析
ZNF281(Zinc finger protein 281)は、ESCで核心転写因子中の一つである(Wang J et al.(2006) Nature 444,364-368)。初期にZBP−99と命名された、ZNF281は、ZBP−89と91%アミノ酸配列類似性及び79%配列同一性を共有する4つのKrppel型ジンクフィンガーを保有している。また、2つの遺伝子のカルボキシ末端切片には、よく保存されたアミノ酸配列が存在する。ZNF281 cDNAの予想されるオープンリーディングフレームは、99kDaタンパク質を暗号化する。EMSA(Electrophoretic mobility shift as say)の結果では、ガストリン(GASTRIN)及びオルニチン脱炭酸酵素(ORNITHINE DECARBOXYLASE)遺伝子のGC−リッチ(rich)プロモーター部位に特異的に結合することを示す(Law DJ et al.(1999) Biochem Biophys Res Commun 262,113-120; Lisowsky T et a l.(1999) FEBS Lett 453,369-374)。ZNF281は、質量スペクトル多次元タンパク質同定技術(mass spectral multidimensional protein identification technology)と組合されたタンデム親和度精製(tandem affinity purification)によってc−MYC連関タンパク質のうちの一つとして同定された(Koch HB et al.(2007) Cell Cycle 6,205-217)。
【0056】
POUファミリー転写因子(family transcription factors)のようなOct3/4遺伝子などは、分化した組職では存在せず、高い増殖能を含有する未分化した幹細胞などから特別に発現されるものとして知られている(Tai M-H.et al.,Carcinogenesis 26:4 95,2005; Tondreau T.et al.,Stem cells,23:1105,2005)。一般的に胚芽幹細胞のマーカーとして使用されるが、前記のような特性で未分化状態を意味するマーカーとして使用されることもある。それで幹性(stemness)のマーカーとしてOct4を使用して細胞コロニーを染色した結果、多い細胞などが核部位にOct4が染色されることを確認することができ、フローサイトメトリーを介した分析においても多くの細胞で発現することを確認することができた。
【0057】
細胞内タンパク質(intracellular proteins)の染色のために、細胞などは、4℃で4%ホルムアルデヒドで一晩固定し、0.1%トリトン(Triton)X−100(Sigma-Aldrich)で10分間透過処理(permeabilize)した。スライドとディッシュは、ヒトOct4(1:200)に対するマウス1次抗体で1時間インキュベーションした後、PBS(phosphate buffered saline; Gibco)で洗浄し、赤色蛍光染料であるAlexa594が結合されたgoat抗マウスIgG2次抗体(Invitrogen)で1時間インキュベーションして免疫染色を行い、対照染色としてDAPIを用いて核を染色した。
【0058】
図5、図6に示されたように、Oct4染色結果、多い臍帯血由来の万能幹細胞でOct4を発現することとして示された(図5A:Oct4流細胞分析結果グラフ、B:免疫染色でOct4発現写真、C:Oct4発現写真の核染色写真、D:Oct4発現写真と核染色写真との合成写真)。
【0059】
これらのOct4のような遺伝子は、幹細胞の幹性(stemness)と極めて密接に関連されており、実際に、Oct4、Sox2などのような遺伝子を過発現させて成体幹細胞で胚芽幹細胞と類似した構造の全能性を有した細胞を誘導する技術も最近研究された(Takahashi et al,Cell,131(5),861-872,2007)。したがって、幹細胞においてこのような遺伝子の発現は、幹細胞の幹性(stemness)を失わないのに未分化状態を維持するのにおいて非常に重要であるといえる。したがって、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞において、既存の論文によって知られたZNF2 81、Oct−4、Sox2のような遺伝子の発現がどのように示されるのか逆転写重合酵素連鎖反応(RT−PCR)を介して確認してみることにした。
【0060】
本実施例のために作製されたプライマーは、下記の表3の通りである。
【0061】
【表3】
【0062】
図7から実験結果を見ると、Oct−4、Sox2、c−myc、ZNF281、REX−1などの遺伝子が発現することを確認することができる。これは、本発明による臍帯血由来の幹細胞の万能幹細胞としての能力を示すものであるといえるでしょう。
【0063】
実施例4:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の骨形成細胞への分化
骨形成細胞へ分化を誘導するために細胞を付着させ、細胞が付着してから約70−80%のコンフルアンシ(confluency)になるまで培養した。70−80%のコンフルアンシに到逹した場合に骨分化誘導培地に交換した。骨分化誘導培地は、DMEM(low glucose)に10%のFBSを添加し、10mMのβ−グリセロリン酸(beta-glycerophosphate)(Sigma-Aldrich)、0.1μMのデキサメタゾン(Dexamethasone)(Sigma-Aldrich)、50μMのアスコルビン酸塩(ascorbate)(Sigma-Aldrich)を添加して製造した。培地は、3日ごとに交換させ、分化誘導は、約2週間行った。
【0064】
2週後、骨分化によったカルシウム鉱物化(calcium mineralization)を確認するためにアリザリンレッドS染色(Alizarin red s staining)を行った。染色方法は、次の通りである。培地を除去した後に蒸溜水を用いて2回洗浄した後、冷たい70%のEtOHを使用して4℃で1時間固定した。再び蒸溜水で2回洗浄した後、40mMのアリザリンレッドS(Alizarin red s)を使用して常温で10分間染色した。その後に蒸溜水を用いて5回洗浄した。
【0065】
染色を行った結果、図8A、図8Bに示されたように、分化を誘導しない図8Aは、アリザリンレッドS(Alizarin red s)に染色されたカルシウムがほとんど見えないが、分化を誘導した図8Bでは、赤色で染色されることを観察できる。これは、臍帯血由来の万能幹細胞が骨形成細胞へ分化してカルシウムを分泌することを意味すると見られる。
【0066】
実施例5:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の脂肪細胞への分化
脂肪細胞分化を誘導するために、細胞が付着してから約70−80%のコンフルアンシになるまで培養した。70−80%のコンフルアンシに到逹した場合に脂肪分化誘導培地に交換した。脂肪分化誘導培地は、DMEM(low glucose)に10%のFBSを添加した。1μMのデキサメタゾン(Dexamethasone)、10μg/mlのインシュリン(insulin)(Sigma-Aldrich)、0.5mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(3-isobutyl-1-methylxanthine)(Sigma-Aldrich)、0.2mMのインドメタシン(indomethacin)(Sigma-Aldrich)を添加して分化培地を製造した。分化誘導培地は、3日ごとに交換させ、分化誘導は、約2−3週間行った。
【0067】
2−3週の後にオイルレッドO(Oil red O)染色を行って脂肪分化が誘導されたことを確認する。培地を除去してPBSを用いて洗浄した後、10%のホルマリンを入れて常温で5分間置いた。ホルマリンを除去し、再び新しいホルマリンを同量入れて常温で最小1時間以上固定した。ホルマリンを除去した後、60%のイソプロパノール(isopropanol)を用いて洗浄した。完全に乾くまで待った後、オイルレッドO(Oil red O)染色薬を入れて常温で10分間染色した。染色薬を除去した後、直ちに蒸溜水を入れて洗浄した。
【0068】
脂肪幹細胞への分化を経る細胞などは、オイルレッドO(Oil red O)によって染色された時に赤い色を示すが、オイルレッドO(Oil red O)は、脂肪細胞の脂肪滴(lipid droplet)を赤い色で染色するからである。図8C及び図8Dからわかるように、分化を誘導しない図8Cは、脂肪滴(lipid droplet)が多く見えないだけでなく染色もほとんどできなかったが、分化を誘導した図8Dは、脂肪滴(lipid droplet)が多く見えて赤い色に染色されたことを観察できる。
【0069】
実施例6:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の軟骨細胞への分化
軟骨細胞へ分化を誘導するために、ロンザ(Lonza)から出たrTGF−beta 3を含有した軟骨細胞形成培地(PT-3003)に3週間処理した。培地は、一週間に2回ずつ交換させ、軟骨細胞形成(osteogenesis)は、1週間ごとに測定した。
【0070】
軟骨細胞に分化したのか調べるために、トルイジンブルー染色(toluidine blue staining)を行った。細胞などを10時間4%のホルムアルデヒドで固定し、その後に再び10時間ピクリン酸(picric acid)で固定した。その後、クリオセクション(cryosection)して3分間トルイジンブルー染色(toluidine blue staining)を行い、ヘマトキシリン(hematoxilin)で3秒間対比染色(counterstaining)を行った。
【0071】
軟骨細胞への分化を経る細胞などは、ペレット(pellet)が崩れず、一定の形態を維持してトルイジンブルー(toluidine blue)によって染色された時に青色を示すが、図8E及び図8Fに示されたように、青色に染色されていることを確認することができ、形態もよく維持していることを確認することができる。
【0072】
実施例7:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の骨形成細胞及び脂肪細胞へ分化誘導後の遺伝子発現レベルの変化
幹細胞は、分化過程を経ながら遺伝子発現の様相が著しく変化することを観察することができる。一般的に、幹細胞が脂肪細胞へ分化をするようになると、PPAR−γ(Peroxisome Proloferator-activated Receptor-γ)やFABP4(Fatty Acid Binding Protein 4)のような遺伝子の発現が増加し、骨形成細胞へ分化するようになると、コラーゲン型1(Collagen Type 1)などの遺伝子発現が増加する(Mat hews et al.,J Am Acad Dermatol,56(3),472-492,2007; Cho et al.,J.Cell.Biochem.,96,533-542,2005)。したがって、分化を誘導した後、特定細胞で発現する遺伝子の発現レベルを見ることによって、間接的に分化を確認することができる。実験方法は、下記の通りである。
【0073】
骨形成細胞と脂肪細胞とをそれぞれ誘導2−3週後にTrizol(Invitrogen)を用いてRNAを抽出した。AccuPower RT Premix(Bioneer)を使用してcDNAを合成し、Maxime PCR PreMix Kit(Intronbio)を用いてPCRを行った。
【0074】
本実施例に使用するために作製したプライマーは、下記の表4の通りである。
【0075】
【表4】
【0076】
実験を行った結果、図9からわかるように、脂肪細胞分化マーカーであるPPAR−γとFABP4とは、分化を誘導した細胞で発現が大きく増加することが見られ、骨形成細胞の分化マーカーであるコラーゲン型1(Collagen Type 1)の場合も同様に分化を誘導した細胞で大きく増加することが見られた。一方、ローディングコントロール(loading control)であるGAPDHの場合、分化を誘導した細胞としない細胞とのいずれも同一に出たし、したがって、実験結果の正当性を裏付けた。
【0077】
実施例8:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の神経細胞への分化
神経細胞へ分化を誘導するために、一応5%のFBS、10ng/mlのbFGF(basic Fibroblast Growth Factor)を含有したDMEMから構成された培地で24時間前処理(preincubation)した。本格的な神経分化を誘導するために、1%のDMSO、100uMのBHA、0.5mMのVPA、10mMのKCl、10ng/mlのNGF、B27を含有したDMEMから構成された神経細胞形成培地に24時間処理した。神経細胞へ分化したのか調べるために、細胞を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)に固定した後、Tuj−1、MAP−2、GFAP、ニューロフィラメント−160(Neurofilament-160)の神経細胞マーカーで免疫染色を行った場合、4種類のマーカーを発現することを確認することができた(図8G)。
【0078】
実施例9:本発明による臍帯血由来の間葉系幹細胞の網膜(retina)関連特性タンパク質発現分析
本実施例は、臍帯血由来の万能幹細胞で網膜(retina)関連特性を調べるために、免疫蛍光染色法を用いて発現程度及びパターンに関して確認した。網膜(retina)だけで特異的に発現するタンパク質の発現様相を確認した。
【0079】
図10は、網膜で特異的に発現するタンパク質を免疫蛍光染色を介して発現様相を確認した写真である。A)では、PAX6及びHu proteinの発現様相を観察した。PAX6は、網膜前駆体マーカー(retina progenitor marker)として知られており、Hu proteinは、網膜を構成する細胞のうちの1つである神経節細胞(ganglion cell)及びアマクリン細胞(amacrine cell)で特異的に発現するタンパク質である。一般的な細胞培養状態では発現しないことを確認した。B)では、オプシン(Opsin)とロドプシン(Rhodopsin)との発現様相を確認した。オプシンの場合は、錘体細胞(Cone cell)に特異的に発現するタンパク質であり、ロドプシンの場合は、杆体細胞(rod cell)に特異的に発現するタンパク質である。一般的な細胞培養状態でオプシンは発現しなかったが、ロドプシンは発現することを確認した。C)では、CRX及びリカバリン(Recoverin)との発現様相を確認した。CRXは、pan−photoreceptor markerとして知られており、リカバリンは、photoreceptor markerとして知られている。一般的な細胞培養状態では発現しないことを確認した(倍率400倍、scale bar=50um)。
【0080】
実施例10:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞で分泌したサイトカイン分析
幹細胞を用いた治療の可能性は、大きく2つに分けられ得る。第1は、損傷された細胞への直接的な分化を介した治療効果であり、第2は、生体内で既存の細胞などに治療効果を示すことができる肯定的な変化を起こす多くのサイトカインや成長因子を分泌する能力である。一般的に、幹細胞は多くのサイトカインまたは成長因子を分泌するものとして知られている(Kim et al.Cytokine.2005)。このような効果をパラクリン効果(paracrine effect)と呼ぶ。本発明によって分離・増殖した臍帯血由来の万能幹細胞のサイトカイン分泌様相がどうか調べるために、ヒトサイトカイン抗体アレイ(human Cytokine antibody array)(RaybioTech.Norc ross,USA)を用いて調査して見た。
【0081】
まず、FBSとサプリメント(Supplement)を除去した培養液を用いて細胞を24時間安定化させた後、2時間ごとに培地を1mlずつ集めた。集めた培地を100μlずつ合わせてタンパク質定量法を用いて定量した後、配列を行った。
【0082】
図11からわかるように、3つの異なるサンプルから分離した臍帯血由来の万能幹細胞で共通的にIL−8、TIMP−2などが分泌することを確認でき、その他に、TGF−β、RANTES、CINC−3、エオタキシン(EOTAXIN)、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、レプチン(Leptin)、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbのようなサイトカインなども分泌することを確認することができた(図11A:hUCB−MSC1の配列分析写真、図11B:hUCB−MSC2、図11C:hUCB−MSC3、図11D:抗体配列手順)。
【0083】
実施例11:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養
成体幹細胞は、一般的に培養ディッシュ(culture dish)で単層(monolayer)へ増殖する。しかし、2Dではない3D状態の球(sphere)で増殖させると、さらに幹性(stemness)の高い細胞を選別して増殖させ得ることを実験を介して確認した。球(sphere)の形成のために培養ディッシュ(culture dish)を0.7%のアガロース(agarose)でコーティングさせるが、細胞がディッシュの底に侵透できないようにコーティングは5mm以上になるようにする。細胞を接種(seeding)する時に、単細胞(single cell)間の付着を最小化するために、cm2当り2000個未満の細胞を振り撤いた。このように得られた球(sphere)は、40μmのストレーナ(strainer)を用いて球(sphere)を形成できなかった単細胞(single cell)と区分した。その結果、図12からわかるように、球培養(sphere culture)時に細胞死せず、球(sphere)を形成して幹細胞の特徴を維持することを観察できる。また、図12A−Dのように、球培養(sphere culture)を介して培養した細胞は、単層(monolayer)で培養した幹細胞に比べて相対的にOCT4、SOX2などの胚芽マーカー(embryonic marker)の発現が高く示されることを観察できた。
【0084】
胚芽幹細胞(Embryonic stem cell)の培養は、マウス胚芽線維芽細胞(Mouse embryonic fibroblast cell)上でなされる。マウス胚芽線維芽細胞(Mouse embryonic fibroblast cell)が出すLIFなどの様々なケモカイン(chemokine)がES細胞の形態を維持して分化しないように抑える役割を果たすからである。臍帯血由来の万能幹細胞をマウス胚芽線維芽細胞(mouse embryonic fibroblast cell line)上で培養した結果、一般的な成体幹細胞の形態のように偏平ではなく三次原的な形態でコロニー(colony)を成すことを観察した。STO細胞は、マイトマイシンC(mitomycin C)を0.1mg/mlで処理して増殖を抑制した後、0.1%のゼラチン(gelatin)がコーティングされたディッシュに2×105cell/mlで接種(seeding)した後24時間培養した後に臍帯血由来の万能幹細胞を接種(seeding)した。その結果、図13からわかるように、時間が過ぎることに応じて細胞がSTO細胞上で胚芽幹細胞(Embryonic stem cell)と類似するように増殖することを観察できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明による万能幹細胞は、ヒト臍帯血由来で、フィブロネクチンを含む培養容器内で培養すると、既存の成体幹細胞に比べて未分化段階で長期間盛んな細胞成長をし、不治病治療に有用に使用されることができ、軟骨細胞、骨形成細胞及び脂肪細胞など多くの種類の細胞へ分化する能力を有しているため、神経系疾患、心血管系、骨格係疾患などの治療に使用され得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法、本発明によって分離された臍帯血由来の万能幹細胞、前記の臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含む細胞治療剤に関するものである。また、本発明は、新規な幹細胞培養用培地、この培地で幹細胞を培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法、及び幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)増加方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幹細胞などは、自己再生(self-renewing)、分化、永久性(immortal)などの特徴を有しており、このような独特の性質を用いて再生医学の観点から多様な退行性疾病の治療のための解決方法として提示されるだけでなく、細胞などのバイオロジーに対する深い通察ができる。多様な組職から得ることができる成体幹細胞は、一般的に胚芽幹細胞に比べて無制限的なソースと研究者らが直面できる倫理的な問題を避けることができるため、遥かに魅力的である。さらに、臍帯血から分離された幹細胞は、骨髓や脂肪組職と異なって寄贈者が追加的な害を被る恐れがないので、他の成体幹細胞などよりもさらに大きい長所を有している。
【0003】
試験管内(in vitro)で臍帯血由来の間葉系幹細胞は、成功的に神経細胞、肝細胞、骨細胞のような多様な種類の細胞に成功的に導入された(Sun, W. et al., Stem cells, 23:931, 2005; Hong SH. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 30:1153, 2005; Hutson EL. et al., Tissue Engineering, 11:1407, 2005)。また、生体内(in vivo)で、臍帯血間葉系幹細胞を用いた傷、糖尿病、心臓梗塞(heart infraction)などに成功的な移植が多くの論文などを介して報告されて来た(Nonome, K. et al., Am, J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 289:1091, 2005; Yoshida, S. et al., Stem cells, 23:1409, 2005; Kim Bo. et al., Circulation, 112:96, 2005)。伝染病の伝達危険が少なく、移植片対宿主病(graft-versus-host disease)にかかる危険が低いため、臍帯血間葉系幹細胞移植は、小児、大人患者の皆に急速に施術されている(Claudio G. B. et al., Annual Review of Medicine, 57:403, 2006)。臍帯血移植がいくつかの疾病、特に、造血母欠陷(hematopoietic defection)に係った疾病などに施術することができる方法として受け入れられたと言っても(Grewal, SS. et al., Blood, 103:1147, 2004; Knutsen, AP. et al., Journal pediatrics, 142:519, 2003; Ooi, J. et al., Blood, 103:489, 2004; Sanz GF. et al., Blood, 103:489, 2004)、臍帯血由来の間葉系幹細胞の臨床的な適用に関する研究は、依然として制限されている。例えば、脊髓損傷された女性及びバージャー病(buerger's disease)患者において、完全な回復ではないが、部分的に成功した報告などがある(Kim, SW. et al., Stem Cells, 2006; Kang, KS. et al., Cytotherapy, 7:368, 2005)。しかし、このような細胞などの発達メカニズムだけでなく、この細胞などをどんなによく培養して増殖するかに対しては、依然としてよく知られていない。
【0004】
臍帯血から間葉系幹細胞を分離する方法は、骨髓由来の間葉系幹細胞の分離方法を適用した時に、細胞の分離率が20%内外であり、5時間以内の新鮮な血液を使用した時は、50%であるが、その以後になると、20%以下に落ち、分離後にも細胞の増殖がよくできない限界を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、ヒト臍帯血由来の血液から分離した単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器で培養し、紡錘形(spindle-shape)の細胞が大量に増殖され、集落を成すことを見付け、これを持続的に培養した時、細胞の特性が一定ほど維持されることを確認した。それで既存の方法において問題視されている臍帯血由来の非造血係万能幹細胞及び間葉系幹細胞の效率的分離及び大量増殖が可能な培養方法として本発明を完成した。
【0006】
本発明の一つの目的は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記分離方法によって分離された臍帯血由来の万能幹細胞を提供することにある。
【0008】
本発明のまた他の目的は、前記臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含有する細胞治療剤を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、本発明による新規な幹細胞培養用培地を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、幹細胞を前記培地で培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、幹細胞を球培養または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性増加方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの観点は、臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法に関するものである。
【0013】
前記培養物から幹細胞を回収することにおいて、幹細胞の免疫学的特性を用いて分離することを更に含むことができる。
【0014】
先ず、臍帯血から単核細胞の分離は、当業界に知られている通常の方法を用いて行うことができる。本発明の一つの態様においては、臍帯血とHetasepを混合して赤血球を除去した後、フィコール−プラーク(Ficoll-plaque)を用いて単核細胞を分離することによって得ることができる。ここで、臍帯血とHetasepの混合比は、臍帯血5ml当たり0.5〜2mlにするのが好ましい。
【0015】
本発明では、臍帯血から単核細胞の分離収率を高めるために、分娩直後に回収した臍帯血、分娩直後に回収して室温で12〜48時間保管した臍帯血または3〜5℃で6〜72時間保管した臍帯血を使用するのが好ましい。
【0016】
本発明は、臍帯血から分離された単核細胞から幹細胞を分離する方法において、フィブロネクチンを用いることを特徴とする。本発明における用語‘フィブロネクチンを含む培養容器'とは、単核細胞とフィブロネクチンとが接触できる状態を意味する。例えば、フィブロネクチンは、培養容器にコーティングされるとか、粒子形態または三次元構造物の形態として培地に含まれることができる。一つの態様として、フィブロネクチンが培養容器にコーティングされた場合、フィブロネクチンは、0.1〜1mg/mlの濃度で含まれることができる。
【0017】
本発明において、フィブロネクチンは、特別な制限なく、動物から由来したものを使用することができるが、ヒトから由来したものが好ましい。前記フィブロネクチンは、人工合成(例えば、化学的合成法、タンパク質合成装置を用いた合成など)または生合成(例えば、組換えDNA技術、繊維芽細胞培養など)を通じて製造するとか、ヒトを含む動物の血漿または細胞外基質から分離することによって入手することもできる。前記フィブロネクチンは、フィブロネクチンの断片(fragment)またはペプチドであるとか、これを含むことができる。
【0018】
単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養する時、利用可能な培地は、特に制限されないが、基本培地としては、SNU−1またはEGM−2を用いるのが好ましい。
【0019】
‘SNU−1培地’の組成は、下記の通りである(表1)。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明では、前記基本培地にFGF−B(Fibroblast Growth Factor)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、EGF(Epodermal Growth Factor)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、IGF−1(Insulin-like Growth Factor-1)またはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)、ヘパリン(heparin)を添加し、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、 Amphotericin-B)を更に添加するのが好ましい。
【0022】
より好ましくは、 前記基本培地に、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF(Epidermal Growth Factor)1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I(Insulin-like Growth Factor-1)1〜40ng/mlまたはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlを添加し、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、 Amphotericin-B)を更に添加することである。
【0023】
一方、単核細胞を培養して3日後、付着しなかった単核細胞は除去し、付着した単核細胞のみを続けて培養する。これにより、付着した単核細胞のうち、幹細胞だけ選択的に増殖するようになり、分離した後、12〜20日の間に速く増殖する幹細胞を観察することができる。ここで、培地は2〜3日ごとに交替するのが好ましい。
【0024】
培養物から臍帯血由来の万能幹細胞を取得する方法としては、ソーティング機能を有したフローサイトメーターを使用したFACS法(Int.Immunol.,10(3):275,1998)、磁気ビーズを使用する方法、間葉系幹細胞を特異的に認識する抗体を使用したパニング法(J.Immunol.,141(8):2797,1998)などがある。また、大量の培養物などから多分化能幹細胞を取得する方法としては、細胞の表面に発現されて分子(以下、表面抗原と称する)を特異的に認識する抗体を単独または組み合わせてこれをカラムとして使用する方法がある。
【0025】
フローサイトメーターのソーティングの方式としては、水滴荷電方式、セルキャプチャー方式などを例示することができる。どちらの方法も、細胞の表面抗原を特異的に認識する抗体を蛍光に標識し、標識された抗体と抗原との結合体に対する蛍光を測定して蛍光強度を電気信号に変換することにより細胞の抗原発現量を定量することができる。また、使用する蛍光物質の種類を組み合わせることにより複数の表面抗原を発現している細胞を分離することも可能である。ここに使用可能な蛍光物質としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(allo-phycocyanin)、TR(TexasRed:テキサスレッド)、Cy3、CyChrome、レッド(Red)613、レッド670、TRI−カラー、クァンタムレッド(QuantumRed)などがある。
【0026】
フローサイトメーターを使用したFACS法としては、前記にで取得した幹細胞溶液を集め、遠心分離などの方法で細胞を分離した後、直接抗体で染色する方法と、一度適当な培地中で培養、増殖を行った後に抗体を染色する方法を利用することができる。細胞の染色はまず、表面抗原を認識する一次抗体と目的の細胞サンプルを混合し、氷上で30分〜1時間、インキュベーションする。一次抗体が蛍光で標識されている場合には、洗浄後フローサイトメーターで分離を行う。一次抗体が蛍光標識されていない場合には、洗浄後一次抗体に対して結合活性を有する蛍光標識された二次抗体と一次抗体が反応した細胞とを混合し、再び氷で30分〜1時間、インキュベーションする。洗浄後、一次抗体と二次抗体で染色された細胞をフローサイトメーターで分離を行う。
【0027】
本発明によって分離された、臍帯血由来の万能幹細胞は、下記の特性のうち、少なくとも一つの特性を有している:
(a)転写調節因子であるc−myc、ZNF281に対して陽性の免疫学的な特性を示す。
(b)細胞外基質がコーティングされた底に付着され、付着の後5〜30日の間に紡錘形または球形態の細胞集落を成しながら増殖する。
(c)30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示す。
(d)CD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的特性を示す。
(e)中胚葉、内胚葉及び外胚葉の細胞に分化可能である。
(f)TIMP−2、TGF−β、RANTES CINC−3、EOTAXIN、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、Leptin、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbからなる群から選択された少なくとも一つのサイトカインまたはケモカインを分泌する。
【0028】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞がOct−4、Sox−2、Rex−1、c−myc、ZNF281を発現するということは、未分化状態が維持されていることを意味する。
【0029】
また、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示し、増殖力が優れることを分かる。核型分析によって、本発明の細胞は速く増殖するが、正常染色体の構造を有していることが確証された。
【0030】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、造血母幹細胞マーカーまたは免疫拒否反応関連マーカーとして知られたCD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的な特性を示す。このように本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、造血及び免疫拒否反応関連マーカーが欠けて移植の時に血管形成と拒否反応を最小化することができ、同種間移植(allogenic transplantation)に有用な細胞として使用することができる。
【0031】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、中胚葉の骨形成細胞、軟骨細胞、脂肪細胞への分化だけではなく、内胚葉の肝細胞及び外胚葉の神経細胞と網膜関連細胞へも分化することができる。よって、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0032】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、TIMP−2、TGF−β、RANTES CINC−3、EOTAXIN、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、Leptin、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbなどの多様なサイトカインまたはケモカインを分泌する。このようなサイトカインまたはケモカインを分泌することにより本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0033】
このような特徴を有する幹細胞は、新規なものであって、本発明は、前記のような特徴を有する臍帯血由来の万能幹細胞を提供する。
【0034】
本発明の臍帯血由来の万能幹細胞は、骨形成細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞、神経細胞を含めて多様な類型の細胞に分化することができ、それに対応されるように多様な疾病治療に利用することができる。よって、本発明は、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含有する細胞治療剤を提供する。本発明の細胞治療剤は、例えば、神経疾患(例えば、退行性神経疾患)、骨関節炎(例えば、退行性関節炎、リウマチ関節炎)、骨欠損(例えば、骨粗鬆症)、肝疾患(例えば、肝硬変)、心血管系疾患を含む多様な疾病を治療するのに利用され得る。
【0035】
本発明の細胞治療剤は、細胞を保護及び維持する一つ以上の希釈剤を含むのが好ましい。前記希釈剤は、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)、HBSS(Hank's balanced salt solution)などの緩衝溶液、血漿または血液成分などがあり得る。
【0036】
一方、本発明は、新規な幹細胞培養用培地に関するものである。前記培地は、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF(Fibroblast Growth Factor)1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF(Epidermal Growth Factor)1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I(Insulin-like Growth Factor-1)1〜40ng/mlまたはVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlが添加され、必要に応じてGA−1000(Gentamycin Sulfate、Amphotericin-B)が更に添加されたEGM−2またはSNU−1培地を含む。
【0037】
前記幹細胞培養用培地は、新規なものであって、上述されたように、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の分離方法においても用いられた。本発明の培地は、臍帯血由来の幹細胞を含めてすべての成体幹細胞の増殖に有用であるので、成体幹細胞を培養するのに利用することができる。
【0038】
また、本発明は、幹細胞を本発明の培地で培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法に関するものである。前記幹細胞は、好ましくは成体幹細胞であり得る。
【0039】
一つの態様として、本発明の幹細胞培養用培地は、本発明の臍帯血由来の万能幹細胞培養に利用され得る。本発明の臍帯血由来の万能幹細胞を本発明の培地で培養しながら紡錘形(spindle-shape)細胞の集落が確認されてから3〜5日後に継代培養するのが好ましい。培養は、5%CO2条件下で行うのが適合し、培養は、5〜30日間長続くことができるが、これに制限されるのではない。
【0040】
一方、本発明は、幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法に関するものである。前記三次元培養の時にMEF(Mouse embryonic fibroblast cell)を用いることを特徴とするのが好ましい。また、前記幹細胞は、成体幹細胞であるものを更に含むことができる。
【0041】
前記において、幹性増加とは、胚芽幹細胞様集落(Embryonic Stem Cell-like colony)を形成するとか、Oct4、Sox2などのような転写調節因子をさらに強く発現することを意味する。
【発明の効果】
【0042】
以上、詳細に記述したように、本発明による万能幹細胞は、ヒト臍帯血由来ので、フィブロネクチンを含む培養容器内で培養すれば、既存の成体幹細胞に比べて未分化段階で長い間に盛んな細胞成長をし、不治病治療に有用に使用されることができ、軟骨細胞、骨形成細胞及び脂肪細胞など多くの種類の細胞に分化する能力を有しているため、神経系疾患、心血管系、骨格系疾患などの治療に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、ヒト臍帯血由来の細胞を分離した後、それぞれ14日目、15日目、16日目、17日目、18日目の細胞成長形態を示した写真(A、B、C、D及びE)及び新しい容器に移した後、Passage3で細胞成長を示した写真である(F)。
【図2】図2は、臍帯血由来の万能幹細胞の時間に応じる細胞増殖を累積で示したグラフである。
【図3】図3は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞を長期間培養した後、核型分析を行った結果である。
【図4】図4は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞に様々なマーカーを付着させて流細胞分析を行った結果である。
【図5】図5は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞が未分化状態幹細胞マーカーの発現を流細胞分析器と細胞免疫染色を介して分析した結果である(A:Oct4流細胞分析結果グラフ、B:免疫染色でOct4発現写真、C:Oct4発現写真の核染色写真、D:Oct4発現写真と核染色写真との合成)。
【図6】図6は、terra−1、hUCB−MSC、AD−MSC及びAMにおいてZNF281の発現を確認した結果(上)と、3〜9回継代培養されたhUCB−MSCにおいてZNF281の発現をFACS分析で確認した結果(下)である。
【図7】図7は、本発明によるヒト臍帯血由来の万能幹細胞がZNF281、Oct4、Sox2、c−myc及びRex−1のような未分化状態を維持するのにおいて重要な遺伝子を発現していることをRT−PCRを介して確認した結果である。
【図8】図8は、ヒト臍帯血由来の万能幹細胞がそれぞれ骨形成細胞、脂肪細胞、軟骨細胞及び神経細胞に分化したことを示す写真である(A:骨形成細胞に分化を誘導しなかった対照群をAlizarin Red Sで染色した写真、B:骨形成細胞に分化を誘導した細胞のAlizarin Red S染色写真、C:脂肪細胞に分化を誘導しなかった対照群のオイルレッドO(Oil red O)染色写真、D:脂肪細胞に分化を誘導した細胞のオイルレッドO(Oil red O)染色写真、E:軟骨細胞に分化を誘導した細胞のToluidine Blue染色写真、F:軟骨細胞に分化を誘導した後に撮影した細胞pelletの写真、G:神経細胞に分化を誘導した後に神経細胞のマーカーであるTuj−1及びMAP2で免疫蛍光染色した写真)。
【図9】図9は、ヒト臍帯血由来の万能幹細胞を骨形成細胞及び脂肪細胞に分化を誘導した後、RNAを抽出した後にRT−PCRを介して確認した結果である(PPAR−γとFABP−4は、脂肪細胞分化のマーカーであり、Collagen Type 1は、骨形成細胞分化のマーカーである。PPAR−γ:Peroxisome Proliferator-Activated Receptor gamma、FABP−4:Fatty Acid Binding Protein-4、GAPDH:Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)。
【図10】図10は、本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の網膜関連タンパク質の発現様相を示したものである。
【図11】図11は、ヒト臍帯血由来の万能幹細胞を培養した培養液を集めて細胞が分泌した様々なサイトカインを抗体配列(antibody array)を用いて分析した写真である(A:hUCB−MSC1、B:hUCB−MSC2、C:hUCB−MSC3、D:配列された抗体の順に、POS:Positive control、NEG:Negative control、GCSF:Granulocyte-Colony Stimulating Factor、GM−CSF:Granulocyte Monocyte-Colony Stimulating Factor、ICAM−1:Intra-Cellular Adhesion Molecule、IFN−γ:Interferon-γ、IL:Interleukin、MCP:Monocyte Chemoattractant Protein、M−CSF:Monocyte-Golony Stimulating Factor、MIG:Monokine induced by Interferon Gamma、MIP:Macrophage Inflammatory Protein、RANTES:Regulated upon Activation、Normal T-cell Expressed and Secreted、TGF−β:Transforming Growth Factor-β、TNF:Tumour Necrosis Factor、sTNFR:soluble Tumour Necrosis Factor Receptor、PDGF−BB:Platelet-Derived Growth Factor-BB、TIMP2:Tissue Inhibitor of Metalloproteinases-2)。
【図12】図12、図13は、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞を球培養(sphere culture)及びマウス線維芽細胞(mouse fibroblast cell)であるSTO細胞を用いて三次原的に培養した写真及び転写調節因子であるOct4、Sox2遺伝子の発現様相をRT−PCRを介して確認した結果である(図12:球培養を介した臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養、図13:STO細胞を用いた臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養)。
【図13】図12、図13は、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞を球培養(sphere culture)及びマウス線維芽細胞(mouse fibroblast cell)であるSTO細胞を用いて三次原的に培養した写真及び転写調節因子であるOct4、Sox2遺伝子の発現様相をRT−PCRを介して確認した結果である(図12:球培養を介した臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養、図13:STO細胞を用いた臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者において自明なことである。
【0045】
実施例1:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の培養、増殖能の調査及び核型分析
Full term UCBサンプル(n=20)は、産婦の同意下で集めた。まず、Full term UCBをHetaSep(Stem cells TechnologiesINC,Vancouver,BC)を用いて赤血球を優先的に分離した。その後は、既存の方法と同様にフィコール相(ficoll gradient)から分離を行った。分離した単核細胞を20%FBSを含有したEGM−2 SingleQuotsを添加したSNU−1培地またはEGM−2(Lonza)を用いてフィブロネクチンを0.1mg/ml−1mg/mlの濃度でコーティングした6 well plateに1×105〜8細胞で培養した。EGM−2 SingQoutsの構成は、ヘパリン(heparin)、アスコルビン酸(Ascorbic acid)、rhEGF、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、VEGF、rhFGF−B、R3−IGF−1、GA−1000から構成されている。細胞を培養してから3日後に付着されなかった単核細胞を除去し、培地は2〜3日ごとに交替させた。
【0046】
前記分離した後、CO25%の条件で培養してから5〜30日目に、一定の紡錘形の細胞などが集落を成すことを確認した(図1A)。生成された集落は、速い速度で増殖し、集落が観察されてから3日〜7日後、0.125%のTrypsin−EDTAで浮遊させた後、新しい容器に移して細胞を続けて維持した(図1B、図1C、図1D、図1E及び図1F)。図1は、このような過程を示す写真であって、時間が経過するに応じて細胞集落の大きさが増加することを見られ、また、継代培養の後にも細胞の形状が一定に維持されることを観察することができる。(図1:本実施例によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞の形成と増殖過程を示す写真。A:単核細胞培養14日後の初期集落の形態、B:15日、C:16日、D:17日、E:18日、F:継代培養後のpassage3で観察した細胞の写真)。
【0047】
持続的に細胞を培養しながら、分離した臍帯血由来の万能幹細胞の増殖力がどのくらいなのか調査するためにCPDL(cumulative population doubling level)を測定した(Cristofalo et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 95,1998)。細胞は、二分法を用いて増殖する。したがって、細胞の成長速度は、1つの細胞が2つの細胞になる時間がどのくらいなのかに応じて決定される。これをDoubling timeといい、細胞の増殖力を評価できる尺度として使用され得る。もし、CDPL値が10であれば、1つの細胞が10回の分裂をすることを意味し、これを数値上で計算すれば、1つの細胞が約1000個の細胞まで増殖することを意味する。既存の臍帯血由来の幹細胞の最大の問題点は、脂肪組職や骨髓由来の間葉系幹細胞に比べて著しく落ちる増殖力であり、細胞の大量増殖である臨床適用の側面からも増殖力が重要であると見られる。測定方法は、次のように行った。まず、異なる臍帯血サンプルから分離した3種類の臍帯血由来の万能幹細胞を100ディッシュに2×105個ずつ培養し、3日または4日ごとに継代を行い、細胞計算機を用いて細胞数を測定した。細胞の増殖が止めるまで継続的に細胞を培養して細胞数を測定した。このように求めた細胞数を次のような数学式1を用いてCPDL値を求める。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、NIは、最初培養をはじめる時の細胞数、NHは、継代を行う当時の飽和状態での細胞数を意味する。
【0050】
このような方法で持続的に細胞を維持しながら値を求めた。対照群としては、やはり臍帯血から由来した内皮前駆細胞(hUCB-EPC; human Umbilical cord blood derived endothelial progenitor cells)を用いた。その結果は、図2のグラフのように、臍帯血由来の内皮前駆細胞が2ヶ月程度の培養時間に約20CPDLを示した一方、臍帯血由来の万能幹細胞の場合は、3種類の異なるサンプルのすべてが40〜45CPDLを示した。このような数値は、理論上に1つの細胞集落から1012まで増殖できることを意味する。
【0051】
一般的に、このような盛んな増殖力を示す細胞は、癌細胞化されて速く爆発的に増加する場合があり得る。癌細胞化された細胞は、人体内で多くの調節信号などを無視して大きく増殖する傾向があるため、細胞治療剤として利用することができず、研究の目的もないと見られる。したがって、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞が正常な染色体を有した細胞なのか確認を必ずしなければならず、その方法として、核型分析を解して細胞の染色体異常を確認して見た。図3からわかるように、passage10の細胞においても正常染色体の構造を有していることが確認された。
【0052】
実施例2:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の表面抗原分析
培地内に懸濁した細胞などを特性を分析するフローサイトメトリー(flow cytometry)実験を行った。細胞表面抗原のフェノタイピング(phenotyping)のために、3−4継代細胞などを取得してFITC(fluorescein isothiocyanate)またはPE(phycoerythrin)が結合された抗体で染色し、FACS Aria(Becton Dickinson,NY)にて分析を行った。
【0053】
本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞(partially pluripotent stem cell)の特性を分析するために、標識抗原としては、CD10(T細胞マーカー)、CD14(単核細胞マーカー)、CD24(上皮細胞マーカー)、CD29(単核細胞マーカー)、CD31(内皮細胞マーカー)、CD34(造血母幹細胞マーカー)、CD44(間葉系幹細胞マーカー)、CD45(非造血母幹細胞マーカー)、CD51/61(破骨細胞マーカー)、CD73(間葉系幹細胞マーカー)、CD90(間葉系幹細胞マーカー)、CD105(間葉系幹細胞マーカー)、CD133(造血母幹細胞マーカー)、HLA−DR(免疫拒否反応関連マーカー)を使用し、これをフローサイトメトリーを用いて分析を行った。実施結果は、表2の通りである。図4は、下記の結果をグラフで表示したものである。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例3:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞のZNF281発現及び核心転写因子(Core transcription factor)発現様相分析
ZNF281(Zinc finger protein 281)は、ESCで核心転写因子中の一つである(Wang J et al.(2006) Nature 444,364-368)。初期にZBP−99と命名された、ZNF281は、ZBP−89と91%アミノ酸配列類似性及び79%配列同一性を共有する4つのKrppel型ジンクフィンガーを保有している。また、2つの遺伝子のカルボキシ末端切片には、よく保存されたアミノ酸配列が存在する。ZNF281 cDNAの予想されるオープンリーディングフレームは、99kDaタンパク質を暗号化する。EMSA(Electrophoretic mobility shift as say)の結果では、ガストリン(GASTRIN)及びオルニチン脱炭酸酵素(ORNITHINE DECARBOXYLASE)遺伝子のGC−リッチ(rich)プロモーター部位に特異的に結合することを示す(Law DJ et al.(1999) Biochem Biophys Res Commun 262,113-120; Lisowsky T et a l.(1999) FEBS Lett 453,369-374)。ZNF281は、質量スペクトル多次元タンパク質同定技術(mass spectral multidimensional protein identification technology)と組合されたタンデム親和度精製(tandem affinity purification)によってc−MYC連関タンパク質のうちの一つとして同定された(Koch HB et al.(2007) Cell Cycle 6,205-217)。
【0056】
POUファミリー転写因子(family transcription factors)のようなOct3/4遺伝子などは、分化した組職では存在せず、高い増殖能を含有する未分化した幹細胞などから特別に発現されるものとして知られている(Tai M-H.et al.,Carcinogenesis 26:4 95,2005; Tondreau T.et al.,Stem cells,23:1105,2005)。一般的に胚芽幹細胞のマーカーとして使用されるが、前記のような特性で未分化状態を意味するマーカーとして使用されることもある。それで幹性(stemness)のマーカーとしてOct4を使用して細胞コロニーを染色した結果、多い細胞などが核部位にOct4が染色されることを確認することができ、フローサイトメトリーを介した分析においても多くの細胞で発現することを確認することができた。
【0057】
細胞内タンパク質(intracellular proteins)の染色のために、細胞などは、4℃で4%ホルムアルデヒドで一晩固定し、0.1%トリトン(Triton)X−100(Sigma-Aldrich)で10分間透過処理(permeabilize)した。スライドとディッシュは、ヒトOct4(1:200)に対するマウス1次抗体で1時間インキュベーションした後、PBS(phosphate buffered saline; Gibco)で洗浄し、赤色蛍光染料であるAlexa594が結合されたgoat抗マウスIgG2次抗体(Invitrogen)で1時間インキュベーションして免疫染色を行い、対照染色としてDAPIを用いて核を染色した。
【0058】
図5、図6に示されたように、Oct4染色結果、多い臍帯血由来の万能幹細胞でOct4を発現することとして示された(図5A:Oct4流細胞分析結果グラフ、B:免疫染色でOct4発現写真、C:Oct4発現写真の核染色写真、D:Oct4発現写真と核染色写真との合成写真)。
【0059】
これらのOct4のような遺伝子は、幹細胞の幹性(stemness)と極めて密接に関連されており、実際に、Oct4、Sox2などのような遺伝子を過発現させて成体幹細胞で胚芽幹細胞と類似した構造の全能性を有した細胞を誘導する技術も最近研究された(Takahashi et al,Cell,131(5),861-872,2007)。したがって、幹細胞においてこのような遺伝子の発現は、幹細胞の幹性(stemness)を失わないのに未分化状態を維持するのにおいて非常に重要であるといえる。したがって、本発明によって分離した臍帯血由来の万能幹細胞において、既存の論文によって知られたZNF2 81、Oct−4、Sox2のような遺伝子の発現がどのように示されるのか逆転写重合酵素連鎖反応(RT−PCR)を介して確認してみることにした。
【0060】
本実施例のために作製されたプライマーは、下記の表3の通りである。
【0061】
【表3】
【0062】
図7から実験結果を見ると、Oct−4、Sox2、c−myc、ZNF281、REX−1などの遺伝子が発現することを確認することができる。これは、本発明による臍帯血由来の幹細胞の万能幹細胞としての能力を示すものであるといえるでしょう。
【0063】
実施例4:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の骨形成細胞への分化
骨形成細胞へ分化を誘導するために細胞を付着させ、細胞が付着してから約70−80%のコンフルアンシ(confluency)になるまで培養した。70−80%のコンフルアンシに到逹した場合に骨分化誘導培地に交換した。骨分化誘導培地は、DMEM(low glucose)に10%のFBSを添加し、10mMのβ−グリセロリン酸(beta-glycerophosphate)(Sigma-Aldrich)、0.1μMのデキサメタゾン(Dexamethasone)(Sigma-Aldrich)、50μMのアスコルビン酸塩(ascorbate)(Sigma-Aldrich)を添加して製造した。培地は、3日ごとに交換させ、分化誘導は、約2週間行った。
【0064】
2週後、骨分化によったカルシウム鉱物化(calcium mineralization)を確認するためにアリザリンレッドS染色(Alizarin red s staining)を行った。染色方法は、次の通りである。培地を除去した後に蒸溜水を用いて2回洗浄した後、冷たい70%のEtOHを使用して4℃で1時間固定した。再び蒸溜水で2回洗浄した後、40mMのアリザリンレッドS(Alizarin red s)を使用して常温で10分間染色した。その後に蒸溜水を用いて5回洗浄した。
【0065】
染色を行った結果、図8A、図8Bに示されたように、分化を誘導しない図8Aは、アリザリンレッドS(Alizarin red s)に染色されたカルシウムがほとんど見えないが、分化を誘導した図8Bでは、赤色で染色されることを観察できる。これは、臍帯血由来の万能幹細胞が骨形成細胞へ分化してカルシウムを分泌することを意味すると見られる。
【0066】
実施例5:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の脂肪細胞への分化
脂肪細胞分化を誘導するために、細胞が付着してから約70−80%のコンフルアンシになるまで培養した。70−80%のコンフルアンシに到逹した場合に脂肪分化誘導培地に交換した。脂肪分化誘導培地は、DMEM(low glucose)に10%のFBSを添加した。1μMのデキサメタゾン(Dexamethasone)、10μg/mlのインシュリン(insulin)(Sigma-Aldrich)、0.5mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(3-isobutyl-1-methylxanthine)(Sigma-Aldrich)、0.2mMのインドメタシン(indomethacin)(Sigma-Aldrich)を添加して分化培地を製造した。分化誘導培地は、3日ごとに交換させ、分化誘導は、約2−3週間行った。
【0067】
2−3週の後にオイルレッドO(Oil red O)染色を行って脂肪分化が誘導されたことを確認する。培地を除去してPBSを用いて洗浄した後、10%のホルマリンを入れて常温で5分間置いた。ホルマリンを除去し、再び新しいホルマリンを同量入れて常温で最小1時間以上固定した。ホルマリンを除去した後、60%のイソプロパノール(isopropanol)を用いて洗浄した。完全に乾くまで待った後、オイルレッドO(Oil red O)染色薬を入れて常温で10分間染色した。染色薬を除去した後、直ちに蒸溜水を入れて洗浄した。
【0068】
脂肪幹細胞への分化を経る細胞などは、オイルレッドO(Oil red O)によって染色された時に赤い色を示すが、オイルレッドO(Oil red O)は、脂肪細胞の脂肪滴(lipid droplet)を赤い色で染色するからである。図8C及び図8Dからわかるように、分化を誘導しない図8Cは、脂肪滴(lipid droplet)が多く見えないだけでなく染色もほとんどできなかったが、分化を誘導した図8Dは、脂肪滴(lipid droplet)が多く見えて赤い色に染色されたことを観察できる。
【0069】
実施例6:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の軟骨細胞への分化
軟骨細胞へ分化を誘導するために、ロンザ(Lonza)から出たrTGF−beta 3を含有した軟骨細胞形成培地(PT-3003)に3週間処理した。培地は、一週間に2回ずつ交換させ、軟骨細胞形成(osteogenesis)は、1週間ごとに測定した。
【0070】
軟骨細胞に分化したのか調べるために、トルイジンブルー染色(toluidine blue staining)を行った。細胞などを10時間4%のホルムアルデヒドで固定し、その後に再び10時間ピクリン酸(picric acid)で固定した。その後、クリオセクション(cryosection)して3分間トルイジンブルー染色(toluidine blue staining)を行い、ヘマトキシリン(hematoxilin)で3秒間対比染色(counterstaining)を行った。
【0071】
軟骨細胞への分化を経る細胞などは、ペレット(pellet)が崩れず、一定の形態を維持してトルイジンブルー(toluidine blue)によって染色された時に青色を示すが、図8E及び図8Fに示されたように、青色に染色されていることを確認することができ、形態もよく維持していることを確認することができる。
【0072】
実施例7:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の骨形成細胞及び脂肪細胞へ分化誘導後の遺伝子発現レベルの変化
幹細胞は、分化過程を経ながら遺伝子発現の様相が著しく変化することを観察することができる。一般的に、幹細胞が脂肪細胞へ分化をするようになると、PPAR−γ(Peroxisome Proloferator-activated Receptor-γ)やFABP4(Fatty Acid Binding Protein 4)のような遺伝子の発現が増加し、骨形成細胞へ分化するようになると、コラーゲン型1(Collagen Type 1)などの遺伝子発現が増加する(Mat hews et al.,J Am Acad Dermatol,56(3),472-492,2007; Cho et al.,J.Cell.Biochem.,96,533-542,2005)。したがって、分化を誘導した後、特定細胞で発現する遺伝子の発現レベルを見ることによって、間接的に分化を確認することができる。実験方法は、下記の通りである。
【0073】
骨形成細胞と脂肪細胞とをそれぞれ誘導2−3週後にTrizol(Invitrogen)を用いてRNAを抽出した。AccuPower RT Premix(Bioneer)を使用してcDNAを合成し、Maxime PCR PreMix Kit(Intronbio)を用いてPCRを行った。
【0074】
本実施例に使用するために作製したプライマーは、下記の表4の通りである。
【0075】
【表4】
【0076】
実験を行った結果、図9からわかるように、脂肪細胞分化マーカーであるPPAR−γとFABP4とは、分化を誘導した細胞で発現が大きく増加することが見られ、骨形成細胞の分化マーカーであるコラーゲン型1(Collagen Type 1)の場合も同様に分化を誘導した細胞で大きく増加することが見られた。一方、ローディングコントロール(loading control)であるGAPDHの場合、分化を誘導した細胞としない細胞とのいずれも同一に出たし、したがって、実験結果の正当性を裏付けた。
【0077】
実施例8:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の神経細胞への分化
神経細胞へ分化を誘導するために、一応5%のFBS、10ng/mlのbFGF(basic Fibroblast Growth Factor)を含有したDMEMから構成された培地で24時間前処理(preincubation)した。本格的な神経分化を誘導するために、1%のDMSO、100uMのBHA、0.5mMのVPA、10mMのKCl、10ng/mlのNGF、B27を含有したDMEMから構成された神経細胞形成培地に24時間処理した。神経細胞へ分化したのか調べるために、細胞を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)に固定した後、Tuj−1、MAP−2、GFAP、ニューロフィラメント−160(Neurofilament-160)の神経細胞マーカーで免疫染色を行った場合、4種類のマーカーを発現することを確認することができた(図8G)。
【0078】
実施例9:本発明による臍帯血由来の間葉系幹細胞の網膜(retina)関連特性タンパク質発現分析
本実施例は、臍帯血由来の万能幹細胞で網膜(retina)関連特性を調べるために、免疫蛍光染色法を用いて発現程度及びパターンに関して確認した。網膜(retina)だけで特異的に発現するタンパク質の発現様相を確認した。
【0079】
図10は、網膜で特異的に発現するタンパク質を免疫蛍光染色を介して発現様相を確認した写真である。A)では、PAX6及びHu proteinの発現様相を観察した。PAX6は、網膜前駆体マーカー(retina progenitor marker)として知られており、Hu proteinは、網膜を構成する細胞のうちの1つである神経節細胞(ganglion cell)及びアマクリン細胞(amacrine cell)で特異的に発現するタンパク質である。一般的な細胞培養状態では発現しないことを確認した。B)では、オプシン(Opsin)とロドプシン(Rhodopsin)との発現様相を確認した。オプシンの場合は、錘体細胞(Cone cell)に特異的に発現するタンパク質であり、ロドプシンの場合は、杆体細胞(rod cell)に特異的に発現するタンパク質である。一般的な細胞培養状態でオプシンは発現しなかったが、ロドプシンは発現することを確認した。C)では、CRX及びリカバリン(Recoverin)との発現様相を確認した。CRXは、pan−photoreceptor markerとして知られており、リカバリンは、photoreceptor markerとして知られている。一般的な細胞培養状態では発現しないことを確認した(倍率400倍、scale bar=50um)。
【0080】
実施例10:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞で分泌したサイトカイン分析
幹細胞を用いた治療の可能性は、大きく2つに分けられ得る。第1は、損傷された細胞への直接的な分化を介した治療効果であり、第2は、生体内で既存の細胞などに治療効果を示すことができる肯定的な変化を起こす多くのサイトカインや成長因子を分泌する能力である。一般的に、幹細胞は多くのサイトカインまたは成長因子を分泌するものとして知られている(Kim et al.Cytokine.2005)。このような効果をパラクリン効果(paracrine effect)と呼ぶ。本発明によって分離・増殖した臍帯血由来の万能幹細胞のサイトカイン分泌様相がどうか調べるために、ヒトサイトカイン抗体アレイ(human Cytokine antibody array)(RaybioTech.Norc ross,USA)を用いて調査して見た。
【0081】
まず、FBSとサプリメント(Supplement)を除去した培養液を用いて細胞を24時間安定化させた後、2時間ごとに培地を1mlずつ集めた。集めた培地を100μlずつ合わせてタンパク質定量法を用いて定量した後、配列を行った。
【0082】
図11からわかるように、3つの異なるサンプルから分離した臍帯血由来の万能幹細胞で共通的にIL−8、TIMP−2などが分泌することを確認でき、その他に、TGF−β、RANTES、CINC−3、エオタキシン(EOTAXIN)、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、レプチン(Leptin)、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbのようなサイトカインなども分泌することを確認することができた(図11A:hUCB−MSC1の配列分析写真、図11B:hUCB−MSC2、図11C:hUCB−MSC3、図11D:抗体配列手順)。
【0083】
実施例11:本発明による臍帯血由来の万能幹細胞の三次元培養
成体幹細胞は、一般的に培養ディッシュ(culture dish)で単層(monolayer)へ増殖する。しかし、2Dではない3D状態の球(sphere)で増殖させると、さらに幹性(stemness)の高い細胞を選別して増殖させ得ることを実験を介して確認した。球(sphere)の形成のために培養ディッシュ(culture dish)を0.7%のアガロース(agarose)でコーティングさせるが、細胞がディッシュの底に侵透できないようにコーティングは5mm以上になるようにする。細胞を接種(seeding)する時に、単細胞(single cell)間の付着を最小化するために、cm2当り2000個未満の細胞を振り撤いた。このように得られた球(sphere)は、40μmのストレーナ(strainer)を用いて球(sphere)を形成できなかった単細胞(single cell)と区分した。その結果、図12からわかるように、球培養(sphere culture)時に細胞死せず、球(sphere)を形成して幹細胞の特徴を維持することを観察できる。また、図12A−Dのように、球培養(sphere culture)を介して培養した細胞は、単層(monolayer)で培養した幹細胞に比べて相対的にOCT4、SOX2などの胚芽マーカー(embryonic marker)の発現が高く示されることを観察できた。
【0084】
胚芽幹細胞(Embryonic stem cell)の培養は、マウス胚芽線維芽細胞(Mouse embryonic fibroblast cell)上でなされる。マウス胚芽線維芽細胞(Mouse embryonic fibroblast cell)が出すLIFなどの様々なケモカイン(chemokine)がES細胞の形態を維持して分化しないように抑える役割を果たすからである。臍帯血由来の万能幹細胞をマウス胚芽線維芽細胞(mouse embryonic fibroblast cell line)上で培養した結果、一般的な成体幹細胞の形態のように偏平ではなく三次原的な形態でコロニー(colony)を成すことを観察した。STO細胞は、マイトマイシンC(mitomycin C)を0.1mg/mlで処理して増殖を抑制した後、0.1%のゼラチン(gelatin)がコーティングされたディッシュに2×105cell/mlで接種(seeding)した後24時間培養した後に臍帯血由来の万能幹細胞を接種(seeding)した。その結果、図13からわかるように、時間が過ぎることに応じて細胞がSTO細胞上で胚芽幹細胞(Embryonic stem cell)と類似するように増殖することを観察できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明による万能幹細胞は、ヒト臍帯血由来で、フィブロネクチンを含む培養容器内で培養すると、既存の成体幹細胞に比べて未分化段階で長期間盛んな細胞成長をし、不治病治療に有用に使用されることができ、軟骨細胞、骨形成細胞及び脂肪細胞など多くの種類の細胞へ分化する能力を有しているため、神経系疾患、心血管系、骨格係疾患などの治療に使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする万能幹細胞の分離方法。
【請求項2】
前記単核細胞は、臍帯血をHetasepと混合して赤血球を除去した後、フィコール−プラーク(Ficoll-plaque)を用いて単核細胞を分離する段階を経って取得することを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項3】
臍帯血とHetasepとの混合割合は、臍帯血5ml当たり0.5〜2mlにすることを特徴とする請求項2に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項4】
前記臍帯血は、分娩直後回収した臍帯血、分娩直後回収して室温で12〜48時間保管した臍帯血または3〜5℃で6〜72時間保管した臍帯血であることを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項5】
前記フィブロネクチンが含まれた培養容器は、フィブロネクチンは培養容器にコーティングされるとか、粒子形態または3次元構造物形態で培地に含まれたことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項6】
フィブロネクチンが培養容器にコーティングされた場合、フィブロネクチンは0.1〜1mg/mlで含まれることを特徴とする請求項5に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項7】
前記フィブロネクチンは、動物から由来したことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項8】
前記動物は、ヒトであることを特徴とする請求項7に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項9】
前記フィブロネクチンは、人工的に合成されるとか、生合成されたことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項10】
前記フィブロネクチンは、フィブロネクチンの断片またはペプチドを含むことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項11】
培養の時には、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I1〜40ng/mlまたはVEGF1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlを含むEGM−2または SNU−1培地を用いることを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項12】
培養物から幹細胞を回収することにおいて、幹細胞の免疫学的特性を用いて分離することを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項13】
請求項1によって分離した、下記の特徴の中で少なくとも一特性を有する万能幹細胞:(a)転写調節因子であるc−myc、ZNF281に対して陽性の免疫学的特性を示す;(b)細胞の外基質がコーティングされた底に付着して付着後5〜30日間に紡錘形または球形態の細胞集落を成しながら増殖する;(c)30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示す;(d)CD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的特性を示す;(e)中胚葉、内胚葉及び外胚葉の細胞に分化可能である;(f)TIMP−2、TGF−β、RANTES、CINC−3、エオタキシン(EOTAXIN)、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、レプチン(Leptin)、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbからなる群から選択された少なくとも一つのサイトカインまたはケモカインを分泌する。
【請求項14】
請求項13による臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含む細胞治療剤。
【請求項15】
ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I1〜40ng/mlまたはVEGF1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlが追加されたEGM−2またはSNU−1培地を含む幹細胞培養用培地。
【請求項16】
前記幹細胞は、成体幹細胞であることを特徴とする請求項15に記載の幹細胞培養用培地。
【請求項17】
幹細胞を請求項15または16による培地で培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法。
【請求項18】
前記幹細胞は、成体幹細胞であることを特徴とする請求項17に記載の幹細胞の培養方法。
【請求項19】
幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法。
【請求項20】
三次元培養の時にMEF(Mouse embryonic fibroblast cell)を用いることを特徴とする請求項19に記載の幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法。
【請求項21】
前記幹細胞は、成体幹細胞であることを特徴とする請求項20に記載の幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法。
【請求項1】
臍帯血から分離された単核細胞をフィブロネクチンが含まれた培養容器内で培養した後、培養物から幹細胞を回収することを特徴とする万能幹細胞の分離方法。
【請求項2】
前記単核細胞は、臍帯血をHetasepと混合して赤血球を除去した後、フィコール−プラーク(Ficoll-plaque)を用いて単核細胞を分離する段階を経って取得することを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項3】
臍帯血とHetasepとの混合割合は、臍帯血5ml当たり0.5〜2mlにすることを特徴とする請求項2に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項4】
前記臍帯血は、分娩直後回収した臍帯血、分娩直後回収して室温で12〜48時間保管した臍帯血または3〜5℃で6〜72時間保管した臍帯血であることを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項5】
前記フィブロネクチンが含まれた培養容器は、フィブロネクチンは培養容器にコーティングされるとか、粒子形態または3次元構造物形態で培地に含まれたことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項6】
フィブロネクチンが培養容器にコーティングされた場合、フィブロネクチンは0.1〜1mg/mlで含まれることを特徴とする請求項5に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項7】
前記フィブロネクチンは、動物から由来したことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項8】
前記動物は、ヒトであることを特徴とする請求項7に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項9】
前記フィブロネクチンは、人工的に合成されるとか、生合成されたことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項10】
前記フィブロネクチンは、フィブロネクチンの断片またはペプチドを含むことを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項11】
培養の時には、ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I1〜40ng/mlまたはVEGF1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlを含むEGM−2または SNU−1培地を用いることを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項12】
培養物から幹細胞を回収することにおいて、幹細胞の免疫学的特性を用いて分離することを特徴とする請求項1に記載の万能幹細胞の分離方法。
【請求項13】
請求項1によって分離した、下記の特徴の中で少なくとも一特性を有する万能幹細胞:(a)転写調節因子であるc−myc、ZNF281に対して陽性の免疫学的特性を示す;(b)細胞の外基質がコーティングされた底に付着して付着後5〜30日間に紡錘形または球形態の細胞集落を成しながら増殖する;(c)30〜45のCPDL(cumulative population doubling level)を示す;(d)CD14、CD31、CD34、CD45及びHLA−DRに対して陰性の免疫学的特性を示す;(e)中胚葉、内胚葉及び外胚葉の細胞に分化可能である;(f)TIMP−2、TGF−β、RANTES、CINC−3、エオタキシン(EOTAXIN)、GM−CSF、IFN−γ、IL−1b、IL−3、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、IL13、IL−16、IP−10、レプチン(Leptin)、MCP−2、MIG、MIP−3a、b−NGFm、sTNFRI、PFGF−bbからなる群から選択された少なくとも一つのサイトカインまたはケモカインを分泌する。
【請求項14】
請求項13による臍帯血由来の万能幹細胞またはこれから分化した細胞を含む細胞治療剤。
【請求項15】
ウシ胎児血清(FBS)20%、bFGF1〜40ng/ml、アスコルビン酸0.1〜5.0μg/ml、EGF1〜40ng/ml、ヒドロコルチゾン0.1〜1μg/ml、IGF−I1〜40ng/mlまたはVEGF1〜5ng/ml及びヘパリン20〜25μg/mlが追加されたEGM−2またはSNU−1培地を含む幹細胞培養用培地。
【請求項16】
前記幹細胞は、成体幹細胞であることを特徴とする請求項15に記載の幹細胞培養用培地。
【請求項17】
幹細胞を請求項15または16による培地で培養して増殖させることを特徴とする幹細胞の培養方法。
【請求項18】
前記幹細胞は、成体幹細胞であることを特徴とする請求項17に記載の幹細胞の培養方法。
【請求項19】
幹細胞を球培養(sphere culture)または三次元培養することを特徴とする幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法。
【請求項20】
三次元培養の時にMEF(Mouse embryonic fibroblast cell)を用いることを特徴とする請求項19に記載の幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法。
【請求項21】
前記幹細胞は、成体幹細胞であることを特徴とする請求項20に記載の幹細胞の幹性(stemness)を増加させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【図8】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【図8】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−520671(P2012−520671A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500708(P2012−500708)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001338
【国際公開番号】WO2010/107192
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(509084149)エスエヌユー アールアンドディービー ファウンデーション (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001338
【国際公開番号】WO2010/107192
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(509084149)エスエヌユー アールアンドディービー ファウンデーション (19)
【Fターム(参考)】
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