説明

[4−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−5−メチル−チアゾロ−2−イル]−[2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル]−アミンを調製するための方法

本発明の主題は、式(I)


の[4−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−5−メチル−チアゾロ−
2−イル]−[2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチ
ル]−アミンを調製するための新規な方法、および該調製法の新しい中間体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、式(I)の[4−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−5−メチル−チアゾロ−2−イル]−[2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル]−アミン
【0002】
【化1】

を調製するための新規な方法および該調製法の新しい中間体である。
【背景技術】
【0003】
式(I)の化合物は、潜在的な抗うつ効果および/または抗不安効果を有する公知のCRF1(コルチコトロピン放出因子1)受容体アンタゴニストである、式(VI)の[4−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−N−プロピニル−5−メチル−チアゾロ−2−イル]−[2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル]−アミン
【0004】
【化2】

の調製の主要中間体である。
【0005】
式(I)のチアゾールアミンは、現在、ハンチ合成を利用していくつかのステップを経ることにより、調製されている(WO2001005776 Sanofi−Aventis)。
【0006】
これまで使用されている調製法(WO2001005776 Sanofi−Aventis)は、一般式(II)の化合物
【0007】
【化3】

(式中、Xはハロゲン原子を意味する。)から出発する。しかし、この化合物は、容易に分解し、刺激性であり、品質を再現するのが難しく、単離および処理に困難を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2001/005776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らの目的は、特性が良く決定されており、処理が容易で、良く結晶化でき、高収率で好都合に調製できる、式(I)の化合物を調製するための出発物質を見出すことであった。驚いたことに、本発明者らは、式(III)の2−チオシアナト−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−プロパン−1−オン
【0010】
【化4】

が、本発明者らの要求をすべて満たす出発物質であることを見出した。式(III)の化合物を適用することのさらなる利点は、特定の条件下、すなわち相間移動触媒の存在下、水性媒体中において、従来使用されてきた一般式(II)の化合物から容易に調製できることである。本発明によるこの新しい方法は、水性排出液のみが生じ、使用される有機溶媒の量が少なく、溶媒が再使用できるので環境に優しく、本方法は工業規模で実施することができ、高純度の生成物を高収率で生じる。
【0011】
水性条件におけるケトン誘導体(III)の調製は、チオシアネート基が水に対して鋭敏であり、イソチオシアネートに容易に転換し得る、または加水分解し得るので、驚くべきことである。従って、現状技術において、上記誘導体は、イオン液体中(Tetrahedron Letters 46(2005)1489−1491)またはアルコール媒体中(J.Indian Chem.Soc,81(2004)786−788)のいずれかで調製されるが、いずれの場合でも水は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主題は、式(I)の[4−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−5−メチル−チアゾロ−2−イル]−[2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル]−アミン
【0013】
【化5】

を調製するための新規な方法であり、本方法において、
a.)一般式(II)の2−ハロゲノ−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−プロパン−1−オン
【0014】
【化6】

(式中、Xはハロゲンを意味する。)が、相間移動触媒の存在下、アルカリ金属のチオシアン酸塩と反応し、
b.)その結果得られた式(III)の2−チオシアナト−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−プロパン−1−オン
【0015】
【化7】

またはこの互変異性体が、式(IV)の2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル−アミン
【0016】
【化8】

と反応する。
【0017】
式(I)の化合物の適当な光学活性異性体を調製するためには、光学活性な式(IV)の各アミンから出発しなければならない。
【0018】
本発明による方法の一実施形態では、ステップa.)において、反応は、非プロトン性溶媒および水からなる二成分系において行われる。
【0019】
本発明による方法の一代替形態では、一般式(II)の化合物(式中、Xは、有利にはクロロ基またはブロモ基を意味し、好ましくはブロモ基を意味する。)は、非プロトン性有機溶媒に溶解して、相間移動触媒、好ましくはTBAB(臭化テトラブチルアンモニウム)の存在下、アルカリ金属のチオシアン酸塩、好ましくはチオシアン酸カリウムの水溶液と反応させる。反応混合物は、該混合物を水によって希釈した後に有機相を分離することにより、後処理される。所与の場合においては、溶媒の交換後、式(III)の化合物は、高収率で良く結晶化し得る。
【0020】
ステップb.)の一変形例では、式(III)の化合物が、式(IV)の化合物に添加されることにより、有利な不純物プロファイルを有する所望の生成物が高収率で得られる。
【0021】
最良の収率を達成するため、添加期間は、少なくとも1時間継続する。
【0022】
ステップb.)において、有利には無極性非プロトン性溶媒が加えられ、好ましくはメチル−シクロヘキサンまたはトルエンが加えられる。ステップb.)は、好ましくは25℃から還流温度の間の温度範囲において実施され、最も好ましくは還流温度において実施される。
【0023】
一般式(II)の化合物および式(IV)のアミン、ならびにこれらの調製は、公開番号WO2001005776の特許出願により公知である。
【0024】
本発明のさらなる主題は、式(III)の新しい化合物およびこの互変異性体、ならびにこれらの調製である。
【0025】
化合物(III)の互変異性体のうち、式(V)の5−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−4−メチル−[1.3]−オキサチオール−2−イリデンアミン
【0026】
【化9】

も本発明の主題である。
【0027】
本方法のさらなる詳細は、下記の実施例において明示されるが、特許請求の範囲がこれらの実施例に限定されることはない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施例)
【実施例1】
【0029】
ジクロロメタン(DCM)中の化合物(II)からの化合物(III)の調製
291.5gの2−ブロモ−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−プロパン−1−オン(II)を、291gのDCMに溶解し、そこに、5.3gのTBAB(臭化テトラブチルアンモニウム)触媒を添加する。167gのKSCNを、83.6gの水に溶解する。この水溶液をDCM溶液に添加する。得られた二成分系を40℃まで加熱(還流)して、3−4時間撹拌する。この反応は塩析沈殿を伴う。塩が溶解するまで混合物に水を添加する。下側の水相を分離し、上側の有機相は蒸発させ、一方で870mlのメタノール(MeOH)をそこに添加する。このメタノール溶液から、化合物(III)が、冷却したときに結晶化する。この結晶をろ過して、数回MeOHで洗浄する。
収率:90−95%
【0030】
融点:75℃(MeOH)
IRスペクトル:2158cm−1(CN)、1664cm−1(C=O)
Hスペクトル(DMSO−d,TMS):7.73(1H,s)、7.14(1H,s)、5.28(1H,q,J=7,2Hz)、3.89(3H,s)、2.16(3H,s)、1.60(3H,d,J=7.2Hz)
13C−NMRスペクトル:194.7、160.9、132.6、131.5、126.3、125.5、113.5、111.4、56.7、49.4、18.8、15.8
【実施例2】
【0031】
メチル−シクロヘキサン(MCH)中の化合物(II)からの化合物(III)の調製
調製手順は実施例1に記載した通りであるが、DCMの代わりにMCHを溶媒として使用する。生成物は、MCHから冷却したときに結晶化する。
収率:60%
【実施例3】
【0032】
アミンの存在下における無極性溶媒中の化合物(III)からの化合物(V)の調製
26.4gの化合物(III)(実施例1または2に記載したように調製)を、52mlのMCH中に懸濁する。化学量論量のアミン(好ましくはベンジルアミン)を該混合物に添加する。この混合物を0.5−1時間、撹拌する(アミンの構造は反応時間に影響を与える。)。濃厚な沈殿物が得られ、これをろ過して、メチル−シクロヘキサンで数回洗浄する。
収率:85%。
【実施例4】
【0033】
溶媒としての第三級アミン中の化合物(III)からの化合物(V)の調製
調製手順は実施例3に記載した通りであるが、化合物(III)を、MCH中ではなく、溶媒としてのトリエチル−アミン中に懸濁させ、他のアミンは該混合物に添加しないという点が異なる。
収率:85%。
融点:106℃(EtOH)
IRスペクトル:3253cm−1(NH)、1679cm−1(C=N)
Hスペクトル(DMSO−d,TMS):7.30(1H,s)、7.14(1H,s)、3.86(3H,s)、2.14(3H,s)、1.88(3H,s)
13C−NMRスペクトル:163.1(s)、158.9(s)、138.9(d)、133.0(s)、131.4(s)、125.3(s)、118.3(s)、111.8(d)、111.5(s)、56.0(t)、15.3(t)、11.6(t)
【実施例5】
【0034】
メチル−シクロヘキサン(MCH)中の化合物(III)からの化合物(I)の調製
26.3gの単離生成物(III)を、52mlのMCHに溶解する。反応混合物を85−90℃まで加熱して、19.2gのアミン(IV)のMCH(20%)中溶液(85−90℃)に添加する。添加期間は2−4時間である。添加の後、反応混合物を85−90℃で1時間撹拌する。粗生成物(I)のMCH溶液を冷却し、沈殿した結晶をろ過する。結晶生成物は、少量のMCHによって覆われている。
収率:80%。
【実施例6】
【0035】
MCHおよびMeOH中の化合物(III)からの化合物(I)の調製
調製手順は実施例5に記載した通りであるが、生成物(I)は、溶媒の交換後、MCHではなく、MeOHから結晶化する。
収率:90%
【実施例7】
【0036】
化合物(V)からの化合物(I)の調製
調製手順は実施例5および6に記載した通りであるが、化合物(III)の代わりに、化合物(V)を同量で使用する。
収率:85%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の[4−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−5−メチル−チアゾロ−2−イル]−[2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル]−アミン
【化1】

を調製するための方法であって、
a.)一般式(II)の化合物
【化2】

(式中、Xはハロゲンを意味する。)が、相間移動触媒の存在下、アルカリ金属のチオシアン酸塩と反応し、
b.)その結果得られた式(III)の2−チオシアナト−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−プロパン−1−オン
【化3】

またはこの互変異性体が、式(IV)の2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル−アミン
【化4】

と反応することを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップb.)において、式(III)のケトンが、式(IV)のアミンに添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(III)のケトンの式(IV)のアミンへの添加に、少なくとも1時間をかけることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa.)において、反応が、非プロトン性溶媒および水からなる二成分系において行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステップb.)が、無極性非プロトン性溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップb.)において用いられる無極性非プロトン性溶媒が、メチル−シクロヘキサンまたはトルエンであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb.)が、25℃から還流温度の間の温度において実施されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップb.)が、還流温度において実施されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
一般式(II)において、Xがブロモ基を意味することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
式(III)の2−チオシアナト−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−プロパン−1−オン
【化5】

およびこの互変異性体。
【請求項11】
請求項10に記載の式(III)の化合物の互変異性体のうち、式(V)の5−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−4−メチル−[1.3]−オキサチオール−2−イリデン−アミン。
【化6】

【請求項12】
式(III)の2−チオシアナト−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−プロパン−1−オン
【化7】

を調製するための方法であって、
一般式(II)のこの誘導体
【化8】

(式中、Xはハロゲンを意味する。)が、相間移動触媒の存在下、アルカリ金属のチオシアン酸塩と反応することを特徴とする、方法。
【請求項13】
式(I)の[4−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−5−メチル−チアゾール−2−イル]−[2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチル−フェニル)−エチル]−アミン
【化9】

を調製するための方法であって、
式(III)の2−チオシアナト−1−(2−クロロ−4−メトキシ−5−メチル−フェニル)−プロパン−1−オン
【化10】

が、式(IV)の2−シクロプロピル−1−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−エチル−アミン
【化11】

と、式(III)のケトンが式(IV)のアミンに添加されるように反応することを特徴とする、方法。

【公表番号】特表2012−525368(P2012−525368A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507828(P2012−507828)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/HU2010/000047
【国際公開番号】WO2010/125414
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】