説明

hERGイオンチャネルに関する分子及びその使用

ここに開示された組成物は、化学式(I)及び(II)の構造を有する化合物、又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、及びプロドラッグであり、当該化学式中のR、R、R、R、R、及びRは本明細書内において定義される。
【化1】


これら化合物は、hERGイオンチャネルを変調する治療剤として、また、hERGに関する心筋再分極障害の予防及び治療を改善する治療剤として有益なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年12月31日に出願された米国仮出願第61/291742号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(human ether-a-go-go related gene (hERG))は、電位依存性カリウムチャネル(KV11.1)における細孔を形成するαサブユニットをコード化する。hERGチャネルは、心筋細胞、ニューロン、膵臓β細胞、平滑筋、及びいくつかの癌細胞を含む様々な組織内において発現される。
【0003】
hERG電流は、活動電位の再分極において重要な心臓内の遅延整流電流Ikrの主要な成分として最もよく知られている。hERGチャネルにおける遺伝子の突然変異は、突然死を引き起こし得る疾病である遺伝性QT延長症候群(LQT)の原因となることが知られている。hERG電流を遮断することができる薬剤、すなわちhERGチャネルのタンパク質輸送を阻害することができる薬剤は後天性(acquired)LQTを引き起こし得る。薬物誘発性の心リスクを最小化するために、研究新薬(Investigational New Drug)(IND)の申請を検討している全ての化合物は、ICH S7Aガイドライン及びICH S7Bガイドラインに従ってかつGLP原則を遵守してhERG相互作用について試験されなければならない。
【0004】
心筋細胞において重要な役割を果たす一方、hERGチャネルの発現レベルが白血病、大腸癌、胃癌、乳癌、及び肺癌の細胞を含むいくつかの種類の癌細胞内において上昇したことを示す証拠が増えてきている。なぜ癌細胞内においてhERGチャネルが多く発現されるかは明らかではないが、hERGチャネルが癌細胞の増殖に影響を与えることが示された。
【0005】
hERGチャネルの機能はプロテインキナーゼA及びプロテインキナーゼCに関する経路によって変調される。hERGタンパク質がcAMP依存性PKAの活性化によってリン酸化された際にhERG電流は急性的に阻害される。cAMPレベルの上昇及びPKA活性の延長もhERGタンパク質の発現を増大させることがある。さらに、hERG電流はPKA及びPKCを介してアドレナリン受容体によって変調されることがある。
【0006】
hERGチャネルは様々な構造のチャネル遮断剤を収容することができる特有の細孔領域を有している。比較的大きな内部空洞及び当該チャネルの内部(S6)へリックスにおける特定の芳香族アミノ酸残基(Y652及びF656)の存在は、hERGに異なる薬剤を収容及び結合させる重要な特徴である。
【0007】
最も一般に使われるクラスIII抗不整脈剤は、特に抗アドレナリン作用薬として、複数の標的に影響を及ぼした。例えば、アミオダロンは薬物動態学的な薬剤間の相互作用及び多くの潜在的な副作用を有している。しかし、hERG遮断は、リエントリ性不整脈の予防に使用される抗不整脈性の薬剤作用として用いられている。他のクラスIII抗不整脈薬(例えばアミオダロンおよびラセミソタロール)と異なり、FDA承認済みの高親和性hERG遮断剤であるドフェチリドはhERG遮断を介した純粋なクラスIII活性を有している。いくつかの他のhERGを遮断するクラスIII抗不整脈薬(例えば、イブチリドおよびクロフィリウム)が開発されているが、クロフィリウムは実際の臨床では使われていない。hERGの遮断にはいくつかのメカニズムがある。これらの臨床薬の全てはポア・キャビティ内部の正準的な(canonical)hERG薬剤結合位置におけるチャネル遮断によって作用し、当該遮断は、薬剤がその標的結合位置に到達する前のチャネル開閉に依存する(開口状態又は不活性状態での遮断)。しかし、薬剤によるhERG遮断の他の状態依存メカニズムが存在する(例えば、閉口状態依存及び混合状態依存)。hERG遮断の異なる例は、しばしばそれらの作用位置によって区別することができる。すなわち、いくつかのhERG遮断剤は必ずしも厳密にポア・キャビティ内部のS6の芳香族残基に関連する正準的なhERG薬剤結合位置を介して作用するわけではなく、また、クラスIII抗不整脈薬のドロネダロンは、その開口/不活性状態依存性にもかかわらず、正確にその位置で作用するわけではないことが示されている。異なるタイプのhERG遮断(すなわち、異なる状態依存性又は作用位置)が異なるレベルの催不整脈性リスクと関連するかもしれず、単にhERGIC50値を測定することが特定のhERG遮断薬に関連する「真の」hERGの障害(催不整脈性のリスク)を理解するのに必ずしも充分でないことが示唆されてきた。
【0008】
様々なhERGチャネル遮断剤に加えて、RPR260243、NS1643、NS3623、PD−118057、PD−307243、マロトキシン、及びA−935142を含む7つのhERGチャネル活性剤が同定された(Su, Z等. Electrophysiologic characterization of a novel hERG channel activator. Biochem Pharm 77:1383, 2009を参照)。これらhERG活性剤は異なる化学構造を有しており、かつ異なるメカニズムによってhERGチャネルの活性を強化する。その中で、マロトキシン及びA−935142は電位依存性のチャネル活性化をシフトして脱分極電位を小さくすることができる。電気生理の研究は、10マイクロモルのMTXが最大活性電位の半分の電位(V1/2)を25mVの過分極方向へシフトすることを示した。これら既知のhERG活性剤の中で、PD−118057、NS3623、及びRPR260243は、心室内AP期間及びQT間隔の両方を短くすることが示された。RPR260243及びPD−118057はドフェチリド(dofetilide)のAP延長効果を逆行させることがある。これらチャネル活性剤の作用メカニズムは様々である。NS1643及びNS3623はhERGの電位依存性を右方向へシフトすることによってhERGの不活性化を一次的に低減するが、両方の化合物はS5−ポア(pore)のリンカ(linker)と相互作用するように構成されておらず、hERGチャネルとの作用部位は未知である。マロトキシンは活性化曲線を大きく左方向へシフトするだけでなく非活性化を遅延させ、かつ不活性化への小さな効果を有している。さらに、hERG電流がプロテインキナーゼA及びプロテインキナーゼCの活性によって変調されると、プロテインキナーゼ上で作用する薬剤を用いてhERG活性を変調できるかもしれない。これら構造的に異なるhERG活性剤の発見は、hERG標的を用いた臨床症状の治療に関する大きな進歩であり、さらにhERGを遮断することが知られている他の薬剤の安全性を高める可能性がある。
【発明の概要】
【0009】
ここに開示されているのはhERGを変調する組成物である。
【0010】
ここに開示されているのは、化学式(I)及び(II)の構造を有する組成物、又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、及びプロドラッグであり、当該化学式中のR、R、R、R、R、及びRは本明細書内において定義される。
【0011】
【化1】

【0012】
これら化合物は、hERGイオンチャネルを変調する治療剤として、また、hERGに関する心筋再分極障害の予防及び治療を改善する治療剤として有益なものである。
【0013】
さらに、ここに開示されているのは、無標識(ラベルフリー)アッセイにおいてhERGを活性化することが可能であるが、イオンフラックスアッセイにおいてイオンフラックスを大きく変化させないhERG経路活性剤である。これらhERG経路活性剤は、毒性アッセイに関するアッセイのみならず、無標識アッセイにおいて、hERG活性剤を試験して同定するのに用いられ得る。
【0014】
ここに開示されているhERG活性剤は、LQTSを引き起こす薬を無効にするのに使用されることができ、従って、既存の新しい薬剤の治療上の可能性及び安全面を改善するのに使用されることができる。これらhERG活性剤はhERGイオンチャネル内において結合されたhERG遮断薬分子を除去することができ、従って、hERGチャネルを介して作用する薬剤分子の潜在的な障害を減少させることができる。
【0015】
さらに、ここに開示されているクラスhERG活性剤の構造−活性関連機能は、潜在的なLQTSを最小化するhERGとの所望の交差反応性プロファイルを有する新世代の抗癌薬の設計に使用されることができる。hERGチャネルは、いくつかの癌において発現し、更にこれらの癌の成長において増殖的な役割を果たすことが知られている。このように、hERG電流に大きな影響を与えることなくhERGが介在するシグナル伝達(シグナリング)を遮断するhERG遮断剤は、癌の進行の予防又は抑制に有益なものであるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1A−図1Dは、例示的なhERG活性剤の無標識光学バイオセンサのDMRプロファイルを示す。(A)大腸癌細胞株HT29の化合物EのDMRシグナル、(B)hERGを安定して発現する人工のHEK293細胞株(HEK−hERG)の化合物EのDMRシグナル、(C)天然のHEK293細胞の化合物EのDMRシグナル、(D)HT29およびHEK−hERG細胞株のマロトキシンDMRシグナルに対する化合物Eの変調インデックス、である。化合物Eは全ての細胞において10マイクロモルにてアッセイされ、マロトキシンは16マイクロモルでアッセイされた。グラフA、BおよびCには、それぞれ、ネガティブコントロールして、賦形剤(すなわちバッファ)に反応する細胞の正味ゼロのDMRシグナルのみが含まれた。
【図2】図2A−図2Dは、例示的なhERG活性剤の無標識光学バイオセンサのDMRプロファイルを示す。(A)大腸癌細胞株HT29の化合物DのDMRシグナル、(B)hERGを安定して発現する人工のHEK293細胞株(HEK−hERG)の化合物DのDMRシグナル、(C)天然のHEK293細胞の化合物DのDMRシグナル、(D)HT29及びHEK−hERG細胞株のマロトキシンDMRシグナルに対する化合物Dの変調インデックス、である。化合物Dは全ての細胞において10マイクロモルにてアッセイされ、マロトキシンは16マイクロモルでアッセイされた。グラフA、BおよびCには、それぞれ、ネガティブコントロールして、賦形剤(すなわちバッファ)に反応する細胞の正味ゼロのDMRシグナルのみが含まれた。
【図3】図3は、5mMのKClの下でHEK−hERG細胞を用いた場合の例示的なhERG活性剤の化合物D及びEのRbフラックス測定を、周知のhERG遮断剤のドフェチリドと同様に周知のhERG活性剤のマロトキシンと比較して示す。当該変調剤は、KClを5mMで維持しつつ10マイクロモル又は50マイクロモルのいずれかでアッセイされた。
【図4】図4は、化合物E、D、及びU(全て25マイクロモル)が体外の培養条件下で癌細胞株HT29に細胞毒性を呈しなかったことを示している。少なくとも4つの複製物を用いて平均反応値を算出した。
【図5】図5A−図5Eは、例示的なhERG活性剤であるフルフェナム酸のプロファイルを示す。(A)大腸癌細胞株HT29における抗炎症薬フルフェナム酸のDMRシグナル、(B)hERGを安定して発現する人工のHEK293細胞株(HEK−hERG)におけるフルフェナム酸のDMRシグナル、(C)天然のHEK293細胞におけるフルフェナム酸のDMRシグナル、(D)HT29及びHEK−hERG細胞株のマロトキシンDMRシグナルに対するフルフェナム酸の変調インデックス、である。フルフェナム酸は全ての細胞において10マイクロモルにてアッセイされ、マロトキシンは16マイクロモルでアッセイされた。グラフA、BおよびCには、それぞれ、ネガティブコントロールして、賦形剤(すなわちバッファ)に反応する細胞の正味ゼロのDMRシグナルのみが含まれた。(E)はHEK−hERG細胞の電流における50マイクロモルのフルフェナム酸の効果を示す電気生理学的ダイアグラムである。グレーの曲線はフルフェナム酸の添加前におけるHEK−hERG細胞の電気生理学的記録を示し、黒の曲線はフルフェナム酸の添加後における当該細胞の電気生理学的記録を示した。(a、b、c)はここに定義されているhERG電流の測定結果の3つの段階を示した。
【図6】図6A−図6Eは、例示的なhERG経路活性剤であるジフルニサルのプロファイルを示す。ジフルニサルはプロスタグランジン合成酵素阻害剤としても知られている。(A)大腸癌細胞株HT29におけるジフルニサルのDMRシグナル、(B)hERGを安定して発現する人工のHEK293細胞株(HEK−hERG)におけるジフルニサルのDMRシグナル、(C)天然のHEK293細胞におけるジフルニサルのDMRシグナル、(D)HT29及びHEK−hERG細胞株のマロトキシンDMRシグナルに対するジフルニサルの変調インデックス、である。ジフルニサルは全ての細胞において10マイクロモルにてアッセイされ、マロトキシンは16マイクロモルでアッセイされた。グラフA、BおよびCには、それぞれ、ネガティブコントロールして、賦形剤(すなわちバッファ)に反応する細胞の正味ゼロのDMRシグナルのみが含まれた。(E)はHEK−hERG細胞の電流における50マイクロモルのジフルニサルの効果を示す電気生理学的ダイアグラムである。グレーの曲線はジフルニサルの添加前におけるHEK−hERG細胞の電気生理学的記録を示し、黒の曲線はジフルニサルの添加後における当該細胞の電気生理学的記録を示した。
【図7】図7A−図7Eは、例示的なhERG活性剤である化合物Bのプロファイルを示す。(A)大腸癌細胞株HT29における化合物BのDMRシグナル、(B)hERGを安定して発現する人工のHEK293細胞株(HEK−hERG)における化合物BのDMRシグナル、(C)天然のHEK293細胞における化合物BのDMRシグナル、(D)HT29及びHEK−hERG細胞株のマロトキシンDMRシグナルに対する化合物Bの変調インデックス、である。化合物Bは全ての細胞において10マイクロモルにてアッセイされ、マロトキシンは16マイクロモルでアッセイされた。グラフA、BおよびCには、それぞれ、ネガティブコントロールして、賦形剤(すなわちバッファ)に反応する細胞の正味ゼロのDMRシグナルのみが含まれた。(E)はHEK−hERG細胞の電流における50マイクロモルの化合物Bの効果を示す電気生理学的ダイアグラムである。グレーの曲線は化合物Bの添加前におけるHEK−hERG細胞の電気生理学的記録を示し、黒の曲線は化合物Bの添加後における当該細胞の電気生理学的記録を示した。
【図8】図8A−図8Hは一組のhERG活性剤の電気生理学的プロファイルを示している。(A)から(H)は、化合物A、C、D、F、H、I、J、及びUである。電気生理学的ダイアグラムはHEK−hERG細胞の電流におけるこれら化合物の効果を示す。グレーの曲線は化合物の添加前におけるHEK−hERG細胞の電気生理学的記録を示し、黒の曲線は化合物の添加後における当該細胞の電気生理学的記録を示した。(b)はhERG電流のテール電流を反映する段階を示している。全ての化合物は50マイクロモルにてアッセイされた。
【図9】図9は周知のhERG遮断剤であるドフェチリドの電気生理学的プロファイルを示す。当該電気生理学的ダイアグラムはHEK−hERG細胞の電流における100nMのドフェチリドの効果を示す。グレーの曲線910はドフェチリドの添加前におけるHEK−hERG細胞の電気生理学的記録を示し、黒の曲線920はドフェチリドの添加後における当該細胞の電気生理学的記録を示した。(b)はhERG電流のテール電流を反映する段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
hERGイオンチャネルは大きな四量体のタンパク質であり、細胞背景(バックグラウンド)によっては他のタンパク質と錯体(複合体)を形成し得る。従って、当該細胞背景はhERGの変調を観察するアッセイに影響を与えることがある。ここに開示されたアッセイは、3種類の細胞及び細胞株、すなわち、天然のhERG発現細胞株、hERGを発現しない天然の細胞株、及びhERGを発現するように操作された人工の細胞株を使用する。無標識(ラベルフリー)バイオセンサの細胞アッセイは光学バイオセンサを用いたDMRシグナル又は電気バイオセンサを用いたインピーダンスシグナルなどの汎用の読み出し情報に依存しており、かつ当該バイオセンサのシグナルはしばしば対象となる標的(例えばhERGチャネル)におけるシステム細胞生態情報を含んでいるため、単一のhERG発現細胞を用いたスクリーニング検査結果には高い確率で偽陽性のものが存在し得る。3つの細胞型を結合して無標識バイオセンサを用いたhERG変調を検出することは、偽陽性を大きく減少させるだけでなく、同定されたhERG変調電位の質を高めることができる。さらに、当該3つの細胞株を使用することによって、hERG特有の変調剤(モジュレータ)の高い分解能の評価が作成される。また、ここに開示されたアッセイはマロトキシンなどのhERG活性剤を使用し、これによってhERGを発現する細胞株の両方におけるhERG活性剤に誘発されたDMRシグナルに対する分子の変調インデックスを生成する。当該変調インデックスはhERGチャネル又はhERGチャネルのシグナル伝達錯体(複合体)上において作用する分子の作用モードを分類することに使用されることもできる。
【0018】
例えばトール(toll)受容体などの他のイオンチャネルのような他のタンパク質は、3つの異なる細胞株及び既知の変調剤を用いて、同様にスクリーニング検査されかつ特性化(キャラクタライズ)されることができる。
【0019】
ある無標識の細胞アッセイ方法において、その1つは細胞株、標的、活性剤(すなわち変調剤)、及びマーカを有している。これらの組合せは他の変調剤のアッセイに使用されることができる(例えば、国際公開第2006108183号(発明者Fang, Y.等、発明の名称「Label-free biosensors and cells」)を参照)。
【0020】
典型的な無標識の細胞アッセイ標的法は高い偽陽性を有している。経路の無標識細胞アッセイ試験はこれらに含まれる経路及び標的に関する情報を得るが、標的レベルにおいていくつかの特異性は失われる。ここに開示された方法は、無標識の標的アッセイ及び無標識の経路アッセイから得られる情報を使用して標的レベルにおいて高い特異性のスクリーニング検査結果を実現する。
【0021】
ここに開示された方法は、特定の標的において、例えば米国出願第12/623,708号(発明者Fang, Y.等、発明の名称「Methods of creating an index」)及び米国出願第12/623,693号(発明者Fang, Y.等、発明の名称「Methods for Characterizing Molecules」)に開示されているような従来の無標識の統合された薬理方法よりも高い分解能の評価を提供する。米国出願第12/623,693号(発明者Fang, Y.等、発明の名称「Methods for Characterizing Molecules」)に開示されている方法においては、マーカパネルが選択されてアッセイされており、この情報は当該マーカに接続された細胞の経路に関する情報を提供する。ここに開示された方法は、特定の標的における適切な経路に基づいて同定された細胞を使用する。特定の実施例において、米国出願第12/623,693号(発明者Fang, Y.等、発明の名称「Methods for Characterizing Molecules」)に開示された方法に使用されている情報は、ここに開示された方法に使用され得る情報及び同定された細胞を提供するのに使用されることができる。
【0022】
ここに開示されているのは従来未知であった活性、特にhERGチャネルにおける活性を有する分子である。ここに開示されているのはhERGイオンチャネルの無標識バイオセンサの細胞アッセイにおいて試験された3000を超える化合物である。これら化合物は、BioMol 640というFDA承認済み薬剤ライブラリ、BioMol 80というキナーゼ阻害剤ライブラリ、BioMol ActiComライブラリ、コーニング社内参照化合物ライブラリ、及びコーニング社内化合物ライブラリを含む。ここに開示された方法に従って、これら化合物のサブセットはhERG変調剤として同定され、hERG変調剤は、hERG電流への影響の有無にかかわらずhERGシグナル伝達を活性化するhERGシグナル伝達活性剤、hERG阻害剤、及びhERG活性剤の3つのクラスに分類されることができる。
【0023】
従来のhERGイオンチャネルアッセイは、イオン吸収アッセイを使用してRbフラックスなどのイオンフラックスをアッセイすること、すなわちパッチクランプ法を用いてhERG電流を直接アッセイすることを含む。従来から、Rb+フラックス及び/又はhERG電流を増加させる分子はhERG活性剤と称され、Rb+フラックス及び/又はhERG電流を阻害する分子はhERG阻害剤と称されている。ここに開示された方法は、hERGイオンチャネル活性剤及びhERG経路活性剤を含むhERG活性剤の異なるクラスを同定した。これらhERG活性剤は無標識バイオセンサの細胞アッセイを用いた場合の細胞における検出可能なバイオセンサシグナルとなる場合とならない場合がある。hERGシグナル伝達錯体又はhERGを介したhERG発現細胞において検出可能なバイオセンサシグナルとなるhERG活性剤は無標識バイオセンサのhERG活性剤とも称される。hERG経路活性剤は、細胞内においてhERG又はhERGに関するシグナル伝達錯体を介してもたらされる細胞シグナル伝達を引き起こす分子である。これらhERG経路活性剤はhERGシグナル伝達活性剤とも称される。hERG経路活性剤は、従来的には、hERGイオンフラックス及び/又はhERG電流を増強するものについてはhERG活性剤、阻害するものについてはhERG阻害剤とすることができる。本願のデータが開示するのは、従来は未知であった、hERGチャネルを介したイオンチャネルフラックス活性に依存するhERGの細胞シグナル伝達活性又は依存しないhERGの細胞シグナル伝達活性が存在するということである。hERG経路活性剤は、hERGチャネルの直下又はhERGチャネルに関するシグナル伝達錯体の下流にある特定の経路の活性化を導出し、そして細胞内の検出可能なバイオセンサシグナルを誘発することができる。これら経路は、プロテインキナーゼA(PKA)、プロテインキナーゼC(PKC)、MAPキナーゼ(MAPK)の経路、インテグリン経路、又はこれら経路の組合せを含み得る。
【0024】
本願のデータが明示することの1つは、プロドラッグ及び薬剤が、従来のhERGイオンフラックス活性剤として、またhERG経路活性剤として、hERGチャネルに異なった影響を及ぼし得るということである。
【0025】
マロトキシンは市販されており、無標識バイオセンサのhERG経路活性剤であり、hERGイオンチャネル活性剤である。
【0026】
さらに同定されたのは、フルフェナム酸がhERG経路活性剤であり、無標識バイオセンサのhERG経路活性剤であり、弱いhERGイオンフラックス活性剤であり、弱いhERG電流活性剤であることである。
【0027】
さらに同定されたのは、RPR260243、NS1643、NS3623、PD−118057、PD−307243、A−935142、ニフルム酸、及びジフルニサルが無標識バイオセンサのhERG活性剤であることである。
【0028】
ここに開示されているのは、hERG変調剤、hERG活性剤、無標識バイオセンサのhERG活性剤、hERG経路活性剤、hERGイオンチャネル活性剤、hERG阻害剤、hERG経路阻害剤、及びhERGイオンチャネル阻害剤である。これらクラス及び各々の特定の例は例えばここに開示された方法において使用されることができる。
【0029】
ここに開示された方法、並びに当該方法において使用される組成物及び化合物は、材料、物質、分子、及びリガンドなどの複数の異なるクラスから生ずることができる。さらに、例えばhERG活性化用のマーカとしてのマロトキシンなど、マーカと呼ばれる無標識バイオセンサアッセイ特有のこれらクラスの特定のサブセットも開示されている。
【0030】
さらに、分子混合物などのこれらクラスの混合物も開示されており、かつここに開示された方法に使用される。
【0031】
ある方法においては、既知の分子のみならず未知の分子、試験分子、薬剤候補分子を使用することができる。
【0032】
ある方法又は状況においては、変調が行われ又は変調剤がその機能を果たす。同様に、既知の変調剤が使用される。
【0033】
ある方法においては、組成物のみならず細胞が関与しており、本明細書に記載しているように細胞が培養され、細胞培養物を使用することができる。
【0034】
ここに開示された方法はバイオセンサを使用するアッセイを含む。特定のアッセイにおいては、バイオセンサはアゴニズムモード又はアンタゴニズムモードにおいて実行される。しばしば、当該アッセイは、材料、物質、又は分子などの1つ以上のクラスで細胞を処理することを含む。本明細書に記載しているように、物質はさらに処理されることができる。
【0035】
ある方法においては、例えば細胞と分子とを接触させるステップを実行することができる。ここに開示された方法において、DMR反応などのバイオセンサ反応として表現される細胞反応などの反応が検出されることができる。これらの反応及び他の反応はアッセイされることができる。特定の方法においては、バイオセンサからのシグナルはロバストなバイオセンサシグナルすなわちロバストなDMRシグナルである。
【0036】
ここに開示された方法は、無標識バイオセンサを使用して、一次プロファイル、二次プロファイル、及び変調プロファイルなどのプロファイルを生成することができる。これらプロファイル及び他のプロファイルは、分子に関するマーキング判定に使用されることができ、例えば本明細書に記載されているクラスに対して使用されることができる。
【0037】
さらに、ここに開示されているのは、分子、細胞、材料、又はここに開示された物質などの化合物又は組成物のライブラリ及びパネルである。さらに、マーカパネル及び細胞パネルなどの特定のパネルが開示されている。
【0038】
ここに開示された方法は様々な特徴を使用し、当該特徴は、バイオセンサシグナル、DMRシグナル、正規化すること、コントロール、ポジティブコントロール、変調比較、インデックス、バイオセンサインデックス、DMRインデックス、分子バイオセンサインデックス、分子DMRインデックス、分子インデックス、変調剤バイオセンサインデックス、変調剤DMRインデックス、分子変調インデックス、既知の変調剤バイオセンサインデックス、既知の変調剤DMRインデックス、マーカバイオセンサインデックス、マーカDMRインデックス、マーカのバイオセンサインデックスを変調すること、DMRシグナルを変調すること、増強すること、及びインデックスの類似性である。
【0039】
ここに開示されている組成物、化合物、又は他のものはここに開示されている方法によって特性化されることができる。
【0040】
ここに開示されているのは、より高い、阻害、及びこれらと同様の用語のような特性化に依存する方法である。
【0041】
特定の方法においては、受容体すなわち細胞標的が使用される。特定の方法はシグナル伝達経路、分子処理された細胞、及び他の細胞プロセスに関する情報を提供することができる。
【0042】
ある実施例においては、特定の効力又は効能が特性となり、その直接の作用(例えば薬剤候補分子の)がアッセイされることができる。
【0043】
ここに開示された方法は、サンプル上で又はサンプルと共に実行されることができる。
【0044】
A.定義
ここに開示されている様々な実施例は、図がある場合には図を参照して詳細に説明される。様々な実施例に対する参照物は本開示の範囲を限定するものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書に記載されている例は限定的なものではなく、特許請求の範囲の実施可能な多くの実施例のいくつかを記載しているに過ぎない。
【0045】
1.「不定冠詞、単数形(A)」
本明細書及び特許請求の範囲に使用されている「a」、「an」、及び「the」等の単数系の用語は明示されない限り複数の対象を含む。従って、例えば「薬剤担体」は2つ以上の担体の混合物等を含む。
【0046】
2.「省略形(Abbreviation)」
当業者には広く知られている省略形が使用されることがある(例えば、時間に対する「h」又は「hr」、グラムに対する「g」又は「gm」、ミリリットルに対する「mL」、室温に対する「rt」、ナノメートルに対する「nm」、モルに対する「M」など)。
【0047】
3.「約(About)」
例えば、組成物内の成分数、濃度、体積、処理温度、処理時間、収率、流速、圧力などの値、及びその範囲であって本開示の実施例に記載されているものに「約」が修飾されている場合、その数量は変化することを示し、当該変化は、例えば、化合物、組成物、濃縮物、又は使用する製剤を作製するのに使用される典型的な測定手順及び取扱手順によって、これら手順における故意でない間違いによって、生成物、原料、出発材料の純度、又は本方法を実施するのに使用される成分の差によって、及びこれらと同様の要因によって生じ得る。さらに、用語「約」は特定の初期濃度又は初期混合における組成物又は製剤の老化によって変化する量及び特定の初期濃度又は初期混合における組成物又は製剤の混合又は処理によって変化する量を含む。用語「約」が修飾されているかに関わらず、特許請求の範囲はこれら数量に均等なものを含む。
【0048】
4.「アッセイすること(Assaying)」
アッセイすること、アッセイする等の用語は細胞又は分子などの物質の特性を判定するための分析をいい、当該特性は例えばリガンド又はマーカなどの1つ以上の外因性刺激剤に刺激された際の細胞の光学反応又は生体インピーダンス反応の有無、量、範囲、速度、動態、又は種類である。刺激剤に対する細胞反応のバイオセンサシグナルを生成することがアッセイであってもよい。
【0049】
5.「反応をアッセイすること(Assaying the response)」
「反応をアッセイすること」等の用語は、当該反応を特性化する手段を使用することを意味する。例えば、分子が細胞に接触させられる場合、当該分子にさらされた当該細胞の反応をアッセイするのにバイオセンサを使用することができる。
【0050】
6.「アゴニズムモード及びアンタゴニズムモード(Agonism and antagonism mode)」
アゴニズムモード等の用語は、例えばDMRシグナルなどのバイオセンサシグナルのきっかけとなる分子の能力を判定するために細胞が分子にさらされるようなアッセイをいい、一方、アンタゴニズムモードは、マーカに反応する細胞のバイオセンサシグナルを変調する分子の能力を判定するために細胞が分子の存在するマーカにさらされるようなアッセイをいう。
【0051】
7.「バイオセンサ(Biosensor)」
バイオセンサ等の用語は、生物学的成分に物理化学的検出成分を組み合わせた検体を検出するデバイスをいう。典型的な場合バイオセンサは3つの部分からなり、当該部分は、生物学的成分又は要素(例えば、組織、微生物、病原体、細胞、又はこれらの組合せ)、検出要素(光学的、圧電的、電気化学的、温度的、又は磁気的などの物理化学的手法において機能するもの)、及び両成分に関するトランスデューサである。当該生物学的成分又は要素は、例えば、生細胞、病原体、又はこれらの組合せであることができる。実施例において、光学バイオセンサは、生細胞、病原体、又はこれらの組合せにおける分子認識事象又は分子刺激事象を定量化可能なシグナルへ変換する光学トランスデューサを含み得る。
【0052】
8.「バイオセンサ反応(Biosensor response)」
「バイオセンサ反応」、「バイオセンサ出力シグナル」、「バイオセンサシグナル」等の用語は、細胞を有するセンサシステムの細胞反応に対する応答をいう。バイオセンサは細胞反応を定量化可能なセンサ反応へ変換する。バイオセンサ反応は、RWG又はSPRなどの光学バイオセンサによって測定された刺激に対する光学反応又は電気バイオセンサによって測定された刺激に対する細胞の生体インピーダンス反応である。本開示の実施例において、バイオセンサ反応は刺激に対する細胞反応に直結しているため、当該バイオセンサ及び当該細胞反応は同じ意味で使用され得る。
【0053】
9.「バイオセンサシグナル(Biosensor signal)」
「バイオセンサシグナル」等の用語は、バイオセンサを用いて測定された細胞のシグナルであって、刺激に対する細胞の反応によって生成されたものをいう。
【0054】
10.「細胞(Cell)」
細胞等の用語は、半透膜によって外部を囲まれた原形質の小さく通常は顕微鏡でしか見ることができない原形質のかたまりをいい、細胞は選択的に1つ以上の核及び様々なオルガネラを含み、細胞は生命体の全ての基本的な働きを単独で又は他の同様のかたまりと相互作用して行うことができ、細胞は独立して働くことができる生命体の最小の構造単位を形成し、細胞は人工の細胞構造、細胞モデルシステム、及び同様の人工細胞系を含む。
【0055】
細胞は異なる細胞型を含むことができ、当該細胞型は例えば、特定の疾病に関する細胞、特定の起源に由来する細胞型、特定の標的に関する細胞型、又は特定の生理機能に関する細胞型である。さらに、細胞は、天然の細胞、人工の細胞、形質転換細胞、不死化細胞、一次細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、癌幹細胞、又は細胞から派生した幹細胞であってもよい。
【0056】
ヒトは約210の既知の異なる細胞型からなる。どのように細胞が準備されるか(例えば、人工的に作り出された、形質転換された、不死化された、又はヒトの体から新鮮分離されたなど)、及び、どこで(例えば、異なる年齢のヒトの体又は異なる病期のヒトの体など)細胞が得られたかを考慮すると、当該細胞型の数はほぼ無限である。
【0057】
11.「細胞培養する(Cell culture)」
「細胞培養する」又は「細胞培養すること」は、管理された状況下において原核細胞又は真核細胞が培養されるプロセスをいう。「細胞培養する」は、多細胞真核生物、特に動物細胞から派生した細胞を培養することだけでなく、複合組織及び複合器官を培養することもいう。
【0058】
12.「細胞パネル(Cell panel)」
「細胞パネル」等の用語は、少なくとも2つの細胞型を含むパネルをいう。当該細胞はここに開示されたものの任意の組合せであり得る。
【0059】
13.「細胞反応(Cellular Response)」
「細胞反応」等の用語は、刺激に対する細胞の応答をいう。
【0060】
14.「細胞プロセス(Cellular process)」
「細胞プロセス」等の用語は細胞内において又は細胞によって起こる応答をいう。細胞プロセスの例は、増殖、アポトーシス、壊死、分化、細胞シグナル変換、極性変化、移動、又は形質転換を含むが、これらに限定されない。
【0061】
15.「細胞標的(Cellular target)」
「細胞標的」等の用語はタンパク質又は核酸などのバイオポリマであって、当該バイオポリマの活性が外部刺激によって変形されることができるものをいう。細胞標的は、酵素、キナーゼ、イオンチャネル、及び受容体のような最も普及しているタンパク質である。
【0062】
16.「特性化すること(Characterizing)」
「特性化すること」等の用語は、リガンド、分子、マーカ、又は細胞などの物質の特徴に関する情報を収集することをいい、例えばリガンド、分子、又は細胞に対するプロファイルを得ることをいう。
【0063】
17.「含む(Comprise)」
本明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む」、「含んでいる」、及びその変形は、「含むがこれに限定されない」という意味であり、例えば他の添加物、成分、整数、又はステップを除外するという意味ではない。
【0064】
18.「基本的に構成されている(Consisting essentially of)」
実施例において、「基本的に構成されている」とは、例えば、表面組成、バイオセンサ表面上における表面組成、製剤又は組成物を構成又は使用する方法、及び本開示の物質、デバイス、又は装置について説明するものであり、これらが、特許請求の範囲に記載された成分又はステップに加えて、ここに開示されている組成物、物質、装置、及び方法を作製・構成及び使用することに関する基礎的かつ新規な特徴に大きな影響を与えない他の成分又はステップを含み得ることをいい、当該他の成分又はステップは、例えば、特定の反応剤、特定の添加剤若しくは材料、特定の作用物質、特定の細胞若しくは細胞株、特定の表面改質剤若しくは表面調節剤、特定のリガンド候補、又はこれらと同様の変更可能な構造体、材料、若しくはプロセスである。当該本開示の成分又はステップの基礎的な特徴に大きな影響を与え得る項目又は本開示に望ましくない特性を与え得る項目は、例えば、バイオセンサ表面に対する細胞の親和性低下、細胞表面受容体又は細胞内受容体に対する刺激剤の親和性異常、リガンド候補又は同様の刺激剤に対する異常な細胞活性又は逆の細胞活性、及びこれらと同様の特性を含む。
【0065】
19.「成分(Components)」
ここに開示されているのは、開示された組成物を準備するのに使用される成分と、本明細書に開示された方法に使用される組成物自体と、である。これら及び他の材料は本明細書に開示されており、かつ、これら材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示されている場合において、これら分子の各々、集合的組合せ、及びその置換のうちの特定のものが明確に開示されていなくても、その各々は詳細に検討されて本明細書に記載されているものとする。従って、分子クラスA、B、及びCと分子クラスD、E、及びFとが開示され、分子の組合せ例A−Dが開示されているならば、各々が個別に記載されていない場合であってもその各々は個別かつ集合的に検討されており、すなわち組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、及びC−Fも開示されていることを意味する。同様にこれらのサブセット又は組合せも開示されているものとする。従って、例えば、A−E、B−F、及びC−Eのサブグループも開示されているものとする。このコンセプトは、ここに開示された組成物を作製及び使用する方法におけるステップ(これらに限定されない)を含む本願の全ての特徴に適用される。従って、実行されることができる様々な追加ステップが存在するならば、これら追加ステップの各々は開示された方法の任意の特定の実施例又は実施例の組合せに伴って実行されることができるものとする。
【0066】
20.「接触させること(Contacting)」
接触させること等の用語は、少なくとも2つのもの、例えば分子、細胞、マーカ、化合物若しくは組成物、少なくとも2つの組成物、又は生成物若しくは機械を含むこれらの任意のものの間に分子相互作用が起こり得る場合において、分子相互作用が起こり得るように近接させることを意味する。例えば、接触させることは、少なくとも2つの組成物、分子、生成物、又は物質を、接触させるすなわちこれらが近接して混合又は触れるような状態にさせることをいう。例えば、組成物Aの溶液と培養された細胞Bとを有しており、組成物Aの溶剤を培養された細胞B上に注入することは、組成物Aを細胞培養物Bに接触させることである。細胞をリガンドに接触させることは、リガンドを、当該細胞に対して、当該細胞が当該リガンドへのアクセスを有する状態を保証させることである。
【0067】
ここに開示されている全てのものは、他のものに接触することができるものとする。例えば、細胞は、マーカすなわち分子、バイオセンサ等に接触することができる。
【0068】
21.「化合物及び組成物(Compounds and compositions)」
化合物及び組成物は当該技術分野におけるその標準的な意味を有している。特定の指定物、例えば分子、物質、マーカ、細胞、又は試薬であってこれら指定物を含むもの、これら指定物で構成されているもの、及びこれら指定物で基本的に構成されているものが開示されているものとする。従って、特定の指定マーカが使用される場合、当該マーカを含む組成物、当該マーカで構成されている組成物、又は当該マーカで基本的に構成されている組成物も開示されているものとする。特定の指定物が作製される場合、当該指定物の化合物も開示されているものとする。例えば、EGFなどの特定の生物学的材料が開示されているならば、化合物の形態をとったEGFも開示されているものとする。
【0069】
22.「コントロール(Control)」
「コントロール」、「コントロールレベル」、又は「コントロール細胞」等の用語は、変化が測定される基準として定義されるものをいい、例えば、コントロールは実験によるものではなく所定のパラメータセットによるものであり、又はコントロールは前処理レベル若しくは後処理レベルに基づくものである。これらは試験の実行と同時、試験の実行前、若しくは試験の実行後に実行されるものであるか、又は予め決められた基準であり得る。例えば、コントロールは、並行試験として主体物、客体物、試薬等が試験手順、試験用の作用物質、試験変数等の不備・不作為を除いて処理される場合の試験結果、及び、試験効果の判断における比較基準として使用される試験結果をいう。従って、コントロールは、手順、作用物質、変数等に関する効果を判定するのに使用されることができる。例えば、細胞上の試験分子の効果が対象であるならば、a)当該分子の存在下における当該細胞の特性を記録し、b)aを実行した後に既知の活性若しくは活性不足を備えたコントロール分子又はコントロール組成物(例えばアッセイバッファ溶液(賦形剤))を追加してその効果を記録し、そして試験分子のコントロールに対する効果を比較することができる。特定の状況においては、一旦コントロールが実行されると当該コントロールは基準として使用されることができ、再度コントロール実験が行われる必要はなく、他の状況においては、コントロール実験は比較が行われる度に毎回実行されなければならない。
【0070】
23.「化学用語(Chemistry terms)」
a)「アルキル(alkyl)」
本明細書で使用されている用語「アルキル」は、分岐型又は非分岐型の飽和炭化水素部分をいう。「非分岐型」又は「分岐型」アルキルは、非環状であり、飽和しており、かつ直鎖又は分岐鎖の炭化水素部分であって、1−24個の炭素、1−20個の炭素、1−15個の炭素、1−12個の炭素、1−8個の炭素、1−6個の炭素、又は1−4個の炭素原子を有するものを含む。さらに、用語「アルキル」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素部分を含む。このようなアルキルラジカルの例は、メチル(methyl)、エチル(ethyl)、プロピル(propyl)、ブチル(butyl)、ペンチル(pentyl)、ヘキシル(hexyl)、ヘプチル(heptyl)、オクチル(octyl)、n−プロピル、イソプロピル(iso-propyl)、ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル(amyl)、t−アミル、n−ペンチルなどを含む。低級アルキル(lower alkyl)は、非環状であり、飽和しており、かつ直鎖又は分岐鎖の炭化水素残基であって、1−4個の炭素原子を有するもの、すなわちC−Cアルキルを含む。
【0071】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲に亘って使用されている用語「アルキル」は、「非置換(unsubstituted)アルキル」と「置換(substituted)アルキル」の両方を含み、後者は上記のアルキルラジカルに類似したものであって、1つ以上の有機又は無機の置換基にさらに置換されたものを意味する。適切な置換基は、水素、アルキル、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)、ヒドロキシル(hydroxyl)、シクロアルキル(cycloalkyl)、ヘテロシクリル(heterocyclyl)、アミノ(amino)、モノ置換(mono-substituted)アミノ、ジ置換(di-substituted)アミノ、非置換若しくは置換アミノ、カルボニル(carbonyl)、ハロゲン(halogen)、スルフヒドリル(sulfhydryl)、スルホニル(sulfonyl)、スルホナト(sulfonato)、スルファモイル(sulfamoyl)、スルホンアミド(sulfonamide)、アジド(azido)、アシルオキシ(acyloxy)、ニトロ(nitro)、シアノ(cyano)、カルボキシ(carboxy)、カルボアルコキシ(carboalkoxy)、アルキルカルボキサミド(alkylcarboxamido)、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド(dialkylcarboxamido)、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル(alkylsulfonyl)、アルキルスルフィニル(alkylsulfinyl)、チオアルキル(thioalkyl)、チオハロアルキル(thiohaloalkyl)、アルコキシ(alkoxy)、置換アルコキシ、ハロアルコキシ(haloalkoxy)、ヘテロアリール(heteroaryl)、置換ヘテロアリール、アリール(aryl)、又は置換アリールを含むが、これらに限定されない。当業者であれば、「アルコキシ」がエステル(ester)を形成するカルボニル置換「アルキル」の置換基であり得ることを理解するであろう。2つ以上の置換基が存在する場合、それらは同一のもの又は異なるものである。有機置換部分は、1−12個の炭素原子、1−6個の炭素原子、又は1−4個の炭素原子を含み得る。当業者であれば、「アルキル」鎖上で置換された部分それ自体が上記したように必要に応じて置換されることができることを理解するであろう。
【0072】
b)「アルケニル(alkenyl)」
本明細書で使用されている用語「アルケニル」は、上記アルキルの残基であって、炭化水素鎖の主鎖において少なくとも1つの炭素間二重結合を含むものをいう。その例は、ビニル(vinyl)、アリル(allyl)、2−ブテニル(2-butenyl)、3−ブテニル、2−ペンテニル(2-pentenyl)、3−ペンテニル、4−ペンテニル、2−ヘキセニル(2-hexenyl)3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル(2-heptenyl)、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、5−ヘプテニル、6−ヘプテニル等を含むが、これらに限定されない。用語「アルケニル」は直鎖及び分岐鎖のジエン(dienes)及びトリエン(trienes)を含む。
【0073】
c)「アルキニル(alkynyl)」
本明細書で使用されている用語「アルキニル」は上記アルキルの残基であって、炭化水素鎖の主鎖において少なくとも1つの炭素間三重結合を含むものをいう。その例は、エチニル(ethynyl)、1−プロピニル(1-propynyl)、2−プロピニル、1−ブチニル(1-butynyl)、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル(1-pentynyl)、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル(1-hexnyl)、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等を含むが、これらに限定されない。用語「アルキニル」はジイン(diynes)及びトリイン(triynes)を含む。
【0074】
d)「シクロアルキル(cycloalkyl)」
本明細書で使用されている用語「シクロアルキル」は、飽和炭化水素構造であってその構造が少なくとも1つの環(ring)を形成するように閉じているものをいう。シクロアルキルは典型的な場合3−8個の環炭素を含む環状ラジカルであり、例えばシクロプロピル(cyclopropyl)、シクロブチル(cyclobutyl)、シクロペンチル(cyclypentyl)、シクロペニル(cyclopenyl)、シクロヘキシル(cyclohexyl)、シクロヘプチル(cycloheptyl)等である。シクロアルキルラジカルは多環(multicyclic)のものであってもよく、合計3−18個の炭素、好ましくは4−12個の炭素、又は5−8個の炭素を含み得る。その例は、デカヒドロナフチル(decahydronapthyl)、アダマンチル(adamantyl)等のラジカルを含む多環シクロアルキルである。
【0075】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲に亘って使用されている用語「シクロアルキル」は、「非置換シクロアルキル」と「置換シクロアルキル」の両方を含み、後者は上記のシクロアルキルラジカルに類似したものであって、1つ以上の有機又は無機の置換基にさらに置換されたものを意味する。シクロアルキルは、ヒドロキシル、シクロアルキル、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、非置換アミノ若しくは置換アミノ、カルボニル、ハロゲン、スフルヒドリル(sulfhydryl)、スルホニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、アジド、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルコキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリール、又は置換アリールを含むが、これらに限定されない。シクロアルキルが2つ以上の置換基に置換される場合、それらは同一のもの又は異なるものである。当該有機の置換基は1−12個の炭素原子、1−6個の炭素原子、又は1−4個の炭素原子を含み得る。
【0076】
e)「シクロアルケニル(cycloalkenyl)」
本明細書で使用されている用語「シクロアルケニル」は、上記シクロアルキルラジカルであって、少なくとも1つの炭素間二重結合を含むものをいう。その例は、シクロプロペニル(cyclopropenyl)、1−シクロブテニル(cyclobutenyl)、2−シクロブテニル、1−シクロペンテニル(cyclopentenyl)、2−シクロペンテニル、3−シクロペンテニル、1−シクロヘキシル、2−シクロヘキシル、3−シクロヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0077】
f)「アルコキシ(alkoxy)」
本明細書で使用されている用語「アルコキシ」は、上記アルキルの残基であって、酸素原子に直接結合して他の部分に結合するものをいう。その例は、メトキシ(methoxy)、エトキシ(ethoxy)、n−プロポキシ(propoxy)、イソプロポキシ、n−ブトキシ(butoxy)、t−ブトキシ、イソブトキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0078】
g)「アミノ(amino)」
本明細書で使用されている用語「アミノ」は、ゼロ、1、又は2個の有機置換基に置換されたNラジカルからなる部分であり、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールラジカルを含むが、これらに限定されない。2つの置換基がある場合、それらは同一のものか又は異なるものであり得る。アミノ基の例は、−NH、メチルアミノ(−NH−CH)、エチルアミノ(−NHCHCH)、ヒドロキシエチルアミノ(−NH−CHCHOH)、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ等を含む。
【0079】
h)「モノ置換アミノ(mono-substituted amino)」
本明細書で使用されている用語「モノ置換アミノ」は、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキル(arylalkyl)(これらに限定されない)を含む1つの有機置換基に置換されたNHラジカルを含む部分をいう。モノ置換アミノ基の例は、メチルアミノ(methylamino)(−NH−CH)、エチルアミノ(ethylamino)(−NHCHCH)、ヒドロキシエチルアミノ(hydroxyethylamino)(−NH−CHCHOH)等を含む。
【0080】
i)「ジ置換アミノ(di-substituted amino)」
本明細書で使用されている用語「ジ置換アミノ」は、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、又はアリールアルキル(これらに限定されない)から選択された同一又は異なる2つの有機ラジカルに置換された窒素原子を含む部分をいい、用語の定義はここに記載されているものと同じである。そのいくつかの例はジメチルアミノ(dimethylamino)、メチルエチルアミノ(methylethylamino)、ジエチルアミノ(diethylamino)等を含む。
【0081】
j)「アジド(azide)」
本明細書で使用されている用語「アジド(azide)」、「アジド基(azido)」、及びその変形した用語は、一価の基−N又は一価のイオン−Nを含む部分又は化合物をいう。
【0082】
k)「ハロアルキル(haloalkyl)」
本明細書で使用されている用語「ハロアルキル」は、上記アルキルの残基であって、1つ以上のハロゲン、好ましくはフッ素、例えばトリフルオロメチル(trifluoromethyl)、ペンタフルオロエチル(pentafluoroethyl)等に置換されたものをいう。
【0083】
l)「ハロアルコキシ(haloalkoxy)」
本明細書で使用されている用語「ハロアルコキシ」は、上記ハロアルキルの残基であって、酸素に直接結合してトリフルオロメトキシ(trifluoromethoxy)、ペンタフルオロエトキシ(pentafluoroethoxy)等を形成するものをいう。
【0084】
m)「アシル(acyl)」
本明細書で使用されている用語「アシル」は1−8個の炭素を含むR基を有するR−C(O)−残基をいう。用語「アシル」は、ハロゲン化アシル(acyl halide)のR−(O)−ハロゲンを含む。その例は、ホルミル(hormyl)、アセチル(acetyl)、プロピオニル(propionyl)、ブタノイル(butanoyl)、イソブタノイル、ペンタノイル(pentanoyl)、ヘキサノイル(hexanoyl)、ヘプタノイル(heptanoyl)、ベンゾイル(benzoyl)、天然アミノ酸若しくは非天然アミノ酸などを含むが、これらに限定されない。
【0085】
n)「アシルオキシ(acyloxy)」
本明細書で使用されている用語「アシルオキシ」は上記アシルラジカルが酸素に直接結合してR−C(O)O−残基を形成したものをいう。その例はアセチルオキシ(acetyloxy)、プロピオニルオキシ(propionyloxy)、ブタノイルオキシ(butanoyloxy)、イソブタノイルオキシ、ベンゾイルオキシ(benzoyloxy)等を含むが、これらに限定されない。
【0086】
o)「アリール(aryl)」
本明細書で使用されている用語「アリール」は6−18個の炭素、好ましくは6−12個の炭素を含む環ラジカルであって、その中に少なくとも1つの芳香族残基を含むものをいう。当該アリールラジカルの例はフェニル(phenyl)、ナフチル(naphthyl)、及びイソクロマン(isochroman)ラジカルを含む。さらに、本明細書及び特許請求の範囲に亘って使用されている用語「アリール」は「非置換アリール」と「置換アリール」の両方を含み、後者は上記アリール環ラジカルであって1つ以上、好ましくは1−3個の有機又は無機の置換基に置換されたものを意味する。当該置換基は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、シクロアルキル、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、非置換若しくは置換アミノ、カルボニル、ハロゲン、スルフヒドリル、スルホニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、アジド、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、複素環(heterocyclic ring)を含むが、これらに限定されない。環の用語はここに定義されている。当該有機の置換基は1−12個の炭素原子、1−6個の炭素原子、又は1−4個の炭素原子を含み得る。1、2、又は3個のアルキル置換基を含むアリール部分は「アリールアルキル(arylalkyl)」と呼ばれる。当業者であれば、上記したように、「アリール」上で置換された部分それ自体が必要に応じて置換されることができることを理解するであろう。
【0087】
p)「ヘテロアリール(heteroaryl)」
本明細書で使用されている用語「ヘテロアリール」は、上記アリール環ラジカルであって、少なくとも環炭素のうちの1つ、好ましくはアリール芳香族環の1−3個の炭素が、窒素、酸素、及び硫黄原子(これらに限定されない)を含むヘテロ原子に置換されたものをいう。ヘテロアリール残基の例は、ピリジル(pyridyl)、ビピリジル(bipyridyl)、フラニル(furanyl)、及びチオフラニル(thiofuranyl)残基を含む。置換された「ヘテロアリール」残基は、1つ以上の有機又は無機の置換基、好ましくはアリール基において上記した1−3個の置換基を有することができ、芳香族複素環の炭素原子となる。当該有機の置換基は1−12個の炭素原子、1−6個の炭素原子、又は1−4個の炭素原子を含み得る。
【0088】
q)「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」
本明細書で使用されている用語「ヘテロシクリル」又は「ヘテロシクリル基」は、3−16個のメンバ(member)、好ましくは4−10個のメンバを有する非芳香族の単環又は多環のラジカル構造であって、少なくとも1つの環構造が1−4個のヘテロ原子(例えばO、N、S、P等)を含むものをいう。ヘテロシクリル基は、例えば、ピロリジン(pyrrolidine)、オキソラン(oxolane)、チオラン(thiolane)、イミダゾール(imidazole)、オキサゾール(oxazole)、ピペリジン(piperidine)、ピペラジン(piperazine)、モルホリン(morpholine)、ラクトン(lactones)、ラクタム(lactams)、アゼチジノン(azetidinones)、ピロリジノン(pyrrolidinones)、スルタム(sultams)、スルトン(sultones)等を含む。さらに、本明細書及び特許請求の範囲に亘って使用されている用語「ヘテロシクリル」は、「非置換アルキル」と「置換アルキル」の両方を含み、後者は上記アリール環ラジカルであって1つ以上、好ましくは1−3個の有機又は無機の置換基に置換されたものを意味する。当該置換基は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、シクロアルキル、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、非置換若しくは置換アミノ、カルボニル、ハロゲン、スルフヒドリル、スルホニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、アジド、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、複素環を含むが、これらに限定されない。環の用語はここに定義されている。当該有機の置換基は1−12個の炭素原子、1−6個の炭素原子、又は1−4個の炭素原子を含み得る。当業者であれば、上記したように、「ヘテロシクリル」上で置換された部分それ自体が必要に応じて置換されることができることを理解するであろう。
【0089】
r)「ハロゲン(halogen)又はハロ(halo)」
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ(fluoro)、クロロ(chloro)、ブロモ(bromo)、又はヨード(iodo)基をいう。
【0090】
s)「部分(moiety)」
「部分」は分子(又は化合物、又は類似物質等)の一部をいう。「官能基(functional group)」は分子における特定の原子群である。部分は官能基であるか、1つ以上の官能基を含み得る。
【0091】
t)「エステル(ester)」
本明細書で使用されている用語「エステル」は式C(O)OAで表されるものをいい、式中のAは、上記した、アルキル、ハロゲン化(halogenated)アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル(cycloalkenyl)、ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl)、又はヘテロシクロアルケニル(heterocycloalkenyl)基であり得る。
【0092】
u)「炭酸塩基(carbonate group)」
本明細書で使用されている用語「炭酸塩基」は式OC(O)ORで表されるものをいい、式中のRは、上記した、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル(aralkyl)、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、又はヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0093】
v)「ケト基(keto group)」
本明細書で使用されている用語「ケト基」は式C(O)Rで表されるものをいい、式中のRは、上記した、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、又はヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0094】
w)「アルデヒド(aldehyde)」
本明細書で使用されている用語「アルデヒド」は式C(O)H又は−R−C(O)Hで表されるものをいい、式中のRは、上記したアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0095】
x)「カルボン酸(carboxylic acid)」
本明細書で使用されている用語「カルボン酸」は式C(O)OHで表されるものをいう。
【0096】
y)「カルボニル基(carbonyl group)」
本明細書で使用されている用語「カルボニル基」は式C=Oで表されるものをいう。
【0097】
z)「エーテル(ether)」
本明細書で使用されている用語「エーテル」は式AOAで表されるものをいい、式中のA及びAは、それぞれ無関係に、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロシクロアルケニル基(これらは上記されている)であり得る。
【0098】
aa)「ウレタン(urethane)」
本明細書で使用されている用語「ウレタン」は式OC(O)NRR´で表されるものをいい、式中のR及びR´は、それぞれ無関係に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、又はヘテロシクロアルキル基(これらは上記されている)であり得る。
【0099】
bb)「シリル基(silyl group)」
本明細書で使用されている用語「シリル基」は式SiRR´R´´で表されるものをいい、式中のR、R´、R´´は、それぞれ無関係に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、又はヘテロシクロアルキル基(これらは上記されている)であり得る。
【0100】
cc)「スルホオキソ基(sulfo-oxo group)」
本明細書で使用されている用語「スフホオキソ基」は式S(O)R、OS(O)R、又はOS(O)ORで表されるものをいい、式中のRは、水素、又は上記した、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、又はヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0101】
24.「クラスレート(Clathrate)」
本発明に使用される化合物は薬剤ホスト包接(drug-host inclusion)錯体の「クラスレート」のような錯体を形成することがあり、薬剤ホスト包接錯体において、薬剤及びホストは、溶媒和物(solvate)とは異なり、化学量論的又は非化学量論的な量で存在する。さらに、ここで使用されている化合物は、2つ以上の有機成分及び/又は無機成分であって化学量論的又は非化学量論的な量のものを含み得る。得られる錯体は、イオン化されたもの、部分的にイオン化されたもの、又はイオン化されていないものであり得る。当該錯体については、HaleblianによるJ. Pharm. ScL, 64(8), 1269-1288(1975年8月)を参照されたい。
【0102】
25.「検出する(Detect)」
検出する等の用語は、本開示の装置及び方法の能力であって、分子又はマーカに誘発された細胞反応を発見又は検知し、かつ異なる分子に対する当該検知された反応を区別する能力をいう。
【0103】
26.「(薬剤候補分子の)直接作用(Direct action)」
「直接作用」等の用語は、細胞上において独立して作用する(薬剤候補分子の)結果をいう。
【0104】
27.「DMRシグナル(DMR signal)」
「DMRシグナル」等の用語は、光学バイオセンサを用いて測定された細胞のシグナルであって、刺激の際に細胞の反応によって生成されたものをいう。
【0105】
28.「DMR反応(DMR response)」
「DMR反応」等の用語は、光学バイオセンサを用いたバイオセンサ反応をいう。DMRは動的質量再分布すなわち動的な細胞物質の再分布をいう。P−DMRはポジティブなDMR反応であり、N−DMRはネガティブなDMR反応であり、PR−DMRは回復した(recovery)P−DMR反応である。
【0106】
29.「薬剤候補分子(Drug candidate molecule)」
薬剤候補分子等の用語は、薬剤又はファーマコフォアとして機能する能力を試験される試験分子をいう。この分子は鉛分子と考慮されてもよい。
【0107】
30.「効能(Efficacy)」
効能等の用語は、理想的又は最適な条件下での所望の効果の大きさを生成する能力をいう。効能は、現実の条件下での変化に関するものである有効性(effectiveness)に関する概念とは区別されるものである。効能は、分子レベル、細胞レベル、組織レベル、又は系レベルにおける反応を起こす能力と受容体占有率との間の関係である。
【0108】
31.「hERG変調剤(hERG modulator)」
hERG変調剤(モジュレータ)は、直接的又は間接的にhERGイオンチャネルの活性を変調することができる分子である。hERGチャネルの活性を直接変調するhERG変調剤は、hERGチャネルに結合して、hERG電流、hERGを介したイオンフラックス、及び/又はhERGを介した細胞シグナル伝達などのhERG活性に変化を起こす分子である。hERGチャネルの活性を間接的に変調するhERG変調剤は、細胞内のhERGに関するシグナル伝達錯体に結合して、hERG電流、hERGを介したイオンフラックス、及び/又はhERGチャネル若しくはhERGに関するシグナル伝達錯体を介した細胞シグナル伝達などのhERG活性に変化を起こす分子である。hERG活性の変化については、変調剤の非存在下での細胞におけるhERGチャネル又はhERGに関するシグナル伝達錯体の基礎活性が参照される。
【0109】
32.「hERG活性剤(hERG activator)」
hERG活性剤は、適切な印加電圧においてhERGチャネルを介した電流を増大させる分子、及び/又は適切なKCl濃縮物の存在下においてhERGチャネルを介したイオンフラックスを増大させる分子、及び/又はhERGチャネル又は細胞内のhERGに関するシグナル伝達錯体を介した細胞シグナル伝達を引き起こす分子である。その例は、マロトキシン、フルフェナム酸、及びニフルム酸である。
【0110】
33.「hERG経路活性剤(hERG pathway activator)」
hERG経路活性剤はhERGチャネル又は細胞内のhERGに関するシグナル伝達錯体を介した細胞シグナル伝達を引き起こす分子である。hERG経路活性剤は、hERG電流の変化及び/又はhERGチャネルを介したイオンフラックスの変化を引き起こす場合とそうでない場合がある。当該変化は増大する場合と減少する場合がある。例としてはジフルニサル、AG126、及びチルホスチン51がある。
【0111】
34.「hERGイオンチャネル活性剤(hERG ion channel activator)」
hERGイオンチャネル活性剤は、hERGチャネルに直接結合してhERGチャネルを活性化し、これによってhERG電流の増加、及び/又はhERGイオンフラックスの増加、及び/又はhERGチャネルを介した細胞シグナル伝達を導く分子である。その例はマロトキシン、フルフェナム酸、及びニフルム酸である。hERGイオンチャネル活性剤は細胞シグナル伝達を引き起こす場合と引き起こさない場合とがある。
【0112】
35.「無標識バイオセンサのhERG活性剤(label-free biosensor hERG activator)」
無標識バイオセンサのhERG活性剤等の用語は、hERG活性剤であって、無標識バイオセンサの細胞アッセイによってhERG発現細胞における検出可能なバイオセンサシグナルのきっかけとなることができる分子をいう。当該バイオセンサのhERG活性剤は、hERG活性剤、hERG経路活性剤、又はhERGイオンチャネル活性剤であり得る。その例は、マロトキシン、RPR260243、NS1643、NS3623、PD−118057、PD−307243、A−935142、フルフェナム酸、ニフルム酸、又はジフルニサルである。
【0113】
36.「hERG阻害剤(hERG inhibitor)」
hERG阻害剤は、hERGチャネル又はhERGに関するシグナル伝達錯体に結合してhERG電流及び/又はhERGイオンフラックスを阻害する分子である。
【0114】
37.「hERG経路阻害剤(hERG pathway inhibitor)」
hERG経路阻害剤は、hERGに関するシグナル伝達錯体に結合してhERG電流及び/又はhERGイオンフラックスを阻害する分子である。その例はチロシン51を含む。
【0115】
38.「hERGイオンチャネル阻害剤(hERG ion channel inhibitor)」
hERGイオンチャネル阻害剤は、hERGチャネルに直接結合してhERG電流及び/又はhERGイオンフラックスを阻害する分子である。その例はドフェチリドを含む。
【0116】
39.「より高い(Higher)、阻害する(inhibit)等の単語」
より高い、増大する(increase)、上昇する(elevate)、上昇(elevation)等の用語、又はこれらの変形は、例えばコントロールと比較して、基礎レベルよりも大きく(高く)増大(上昇)することをいう。低い(low)、より低い(lower)、低下する(reduce)、減少する(decrease)、低下(reduction)等の用語、又はこれらの変形は、例えばコントロールと比較して、基礎レベルよりも小さく(低く)減少(低下)することをいう。例えば、基礎レベルは、アゴニスト又はアンタゴニストなどの分子を細胞に加える前すなわち当該分子の非存在下における通常の生体内レベルである。阻害する、阻害形態等の用語は低下させる又は抑制することをいう。
【0117】
40.「分子の存在下(In the presence of the molecule)」
「分子の存在下」等の用語は、培養された細胞が分子に接触又はさらされていることをいう。当該接触又はさらすことは刺激剤が細胞に接触する前又は同時に行われ得る。
【0118】
41.「インデックス(Index)」
インデックス等の用語はデータの集合をいう。例えば、インデックスは1つ以上の変調プロファイルを含む一覧、表、ファイル、又はカタログであり得る。インデックスはデータの組合せから生成されることもできる。例えば、DMRプロファイルは、P−DMR、N−DMR、及びRP−DMRを含み得る。インデックスは、完成したプロファイルのデータ、P−DMRデータ、N−DMRデータ、RP−DMRデータ、これらの任意のデータ点、又はこれら若しくは他のデータの組合せを用いて生成され得る。インデックスはこのような情報の集合である。典型的な場合、インデックスを比較する際のインデックスは同様のデータ(すなわちP−DMRとP−DMRデータ)である。
【0119】
a)「バイオセンサインデックス(Biosensor index)」
「バイオセンサインデックス」等の用語は、バイオセンサデータの集合からなるインデックスをいう。バイオセンサインデックスは、一次プロファイル又は二次プロファイルなどのバイオセンサプロファイルの集合であり得る。当該インデックスは任意の種類のデータを含み得る。例えば、プロファイルのインデックスは、N−DMRデータ点、P−DMRデータ点、その両方、又はインピーダンスデータ点からなることができる。当該インデックスはプロファイル曲線に関する全てのデータ点であってもよい。
【0120】
b)「DMRインデックス(DMR index)」
「DMRインデックス」等の用語はDMRデータの集合からなるバイオセンサインデックスをいう。
【0121】
42.「既知の分子(Known molecule)」
既知の分子等の用語は、既知の薬理学的/生物学的/生理学的/病態生理学的な活性を有する分子をいい、その正確な作用モードは既知の場合未知の場合がある。
【0122】
43.「既知の変調剤(Known modulator)」
既知の変調剤等の用語は、標的の内の少なくとも1つが既知であり既知の親和性を有する変調剤をいう。例えば、既知の変調剤は、PI3K阻害剤、PKA阻害剤、GPCRアンタゴニスト、GPCRアゴニスト、PTK阻害剤、抗体を中和させる上皮成長因子受容体、ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase)阻害剤、PKC阻害剤、又はPKC活性剤であり得る。
【0123】
44.「既知の変調剤のバイオセンサインデックス(Known modulator biosensor index)」
「既知の変調剤のバイオセンサインデックス」等の用語は、既知の変調剤に対して収集されたデータによって生成された変調剤のバイオセンサインデックスをいう。例えば、既知の変調剤のバイオセンサインデックスは、細胞パネル上において作用する既知の変調剤のプロファイル、及びマーカパネルに対する既知の変調剤の変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネル内の細胞用である。
【0124】
45.「既知の変調剤のDMRインデックス(Known modulator DMR index)」
「既知の変調剤のDMRインデックス」等の用語は、既知の変調剤に対して収集されたデータによって生成されたDMRインデックスをいう。例えば、既知の変調剤のDMRインデックスは、細胞パネル上において作用する既知の変調剤のプロファイル、及びマーカパネルに対する既知の変調剤の変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネル内の細胞用である。
【0125】
46.「リガンド(Ligand)」
リガンド等の用語は、物質、組成物、又は分子であって、生物学的目的を果たす生体分子に結合して当該分子との錯体を形成することができるものをいう。リガンドとその標的分子との間の実際の不可逆的な共有結合は生物系においては希少である。受容体に結合するリガンドは化学的配座すなわち受容体タンパク質の立体形状を変化させる。受容体タンパク質の配座状態は受容体の機能状態を決定する。結合傾向すなわち結合強度は親和性と呼ばれている。リガンドは、基質、遮断剤、阻害剤、活性剤、及び神経伝達物質を含む。放射性リガンドは放射標識付きリガンドであり、一方、蛍光リガンドは蛍光標識付きリガンドであり、その両方は、受容体生物学及び受容体生物化学の研究用のトレーサとしてしばしば使用されるリガンドと考慮されてもよい。リガンドと変調剤はほぼ同じ意味で使用される。
【0126】
47.「ライブラリ(Library)」
ライブラリ等の用語は集合をいう。ライブラリはここに開示された全てものの集合であり得る。例えば、インデックスの集合であるインデックスライブラリ、プロファイルの集合であるプロファイルライブラリ、DMEインデックスの集合であるDMRインデックスライブラリ、分子の集合である分子ライブラリ、細胞の集合である細胞ライブラリ、及びマーカの集合であるマーカライブラリであってもよい。ライブラリは、例えば、ランダム又は非ランダムのもの、判定された又は未判定のものであってもよい。例えば、ここに開示されているのは既知の変調剤のバイオセンサインデックス又はDMRインデックスのライブラリである。
【0127】
48.「マーカ(Marker)」
マーカ等の用語は、バイオセンサの細胞アッセイにおけるシグナルを生成するリガンドをいう。さらに、当該シグナルは、少なくとも1つの特定の細胞シグナル伝達経路及び/又は少なくとも1つの特定の標的介した少なくとも1つの特定の細胞プロセスの特性でなければならない。当該シグナルは、ポジティブ若しくはネガティブ、又はその組合せ(振動)であり得る。マロトキシンなどのhERGチャネル活性剤は、hERGチャネルが安定して発現される又は細胞毎に内因的に発現されるHEK−hERG細胞又はHT29細胞に対するマーカであり得る。
【0128】
49.「マーカパネル(Marker panel)」
「マーカパネル」等の用語は、少なくとも2つのマーカを含むパネルをいう。当該マーカは異なる経路、同一の経路、異なる標的、又は同一の標的に対するものであり得る。例えば、マロトキシンは、HEK−hERG細胞とHT29細胞の両方に対する単一のマーカとして使用されることができる。従って、hERGチャネル変調剤の同定及び区別において、マロトキシンは効果的なマーカパネルとして機能する。
【0129】
50.「マーカバイオセンサインデックス(Marker biosensor index)」
「マーカバイオセンサインデックス」等の用語は、マーカに対して収集されたデータによって生成されたバイオセンサインデックスをいう。例えば、マーカバイオセンサインデックスは、細胞パネル上で作用するマーカのプロファイル、及びマーカパネルに対するマーカの変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネルにおける細胞用である。hERGチャネル変調剤の同定及び区別において、マーカバイオセンサインデックスは、3つの異なる細胞(例えば、HEK293細胞、HEK−hERG細胞、及びHT29細胞)における分子の一次プロファイルと、HEK−hERG細胞及びHT29細胞におけるマロトキシンDMRシグナルに対する分子の変調インデックスと、を含み、これらは図1、図2、図5、図6、及び図7に例示されている。
【0130】
51.「マーカDMRインデックス(Marker DMR index)」
「マーカDMRインデックス」等の用語は、マーカに対して収集されたデータによって生成されたバイオセンサのDMRインデックスをいう。例えば、マーカDMRインデックスは、細胞パネル上で作用するマーカのプロファイル、及びマーカパネルに対するマーカの変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネルにおける細胞用である。
【0131】
52.「材料(Material)」
材料は、物理的客体物の構造に進入するもの(化学的なもの、生物化学的なもの、生物学的なもの、又はその混合物)の有形部分である。
【0132】
53.「模倣する(Mimic)」
本明細書で使用されている「模倣する」等の用語は、対象となる客体物の1つ以上の機能を実行することをいう。例えば、分子模倣体は分子の1つ以上の機能を実行する。
【0133】
54.「変調する(Modulate)」
変調すること又はその変形は、細胞標的を介した細胞活性を増大、減少、又は維持することを意味する。これらの単語の内の1つが使用されている場合、コントロールから1%、5%、10%、20%、50%、100%、500%、若しくは1000%増加する、又はコントロールから1%、5%、10%、20%、50%、若しくは100%減少し得ることが開示されているものとする。
【0134】
55.「変調剤(Modulator)」
変調剤等の用語は、細胞標的の活性を制御するリガンドをいう。変調剤は標的タンパク質などの細胞標的に結合するシグナル変調分子である。
【0135】
56.「変調比較(Modulation comparison)」
「変調比較」等の用語は、一次プロファイル及び二次プロファイルを正規化した結果をいう。
【0136】
57.「変調剤のバイオセンサインデックス(Modulator biosensor index)」
「変調剤のバイオセンサインデックス」等の用語は、変調剤に対して収集されたデータによって生成されたバイオセンサインデックスをいう。例えば、変調剤のバイオセンサインデックスは、細胞パネル上で作用する変調剤のプロファイル、及びマーカパネルに対する変調剤の変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネルにおける細胞用である。図1、図2、図5、図6、及び図7に例示されているように、hERG変調剤のバイオセンサインデックスは、3種類の細胞(例えば、HT29、HEK−hERG、及びHEK293)における一次DMRシグナルと、HT29細胞及びHEK−hERG細胞におけるマロトキシンDMRシグナルに対する変調剤の変調DMRインデックスと、を含む。
【0137】
58.「変調剤のDMRインデックス(Modulator DMR index)」
「変調剤のDMRインデックス」等の用語は、変調剤に対して収集されたデータによって生成されたDMRインデックスをいう。例えば、変調剤のDMRインデックスは、細胞パネル上で作用する変調剤のプロファイル、及びマーカパネルに対する変調剤の変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネルにおける細胞用である。図1d、図2d、図5d、図6d、及び図7dに例示されているように、hERG変調剤のDMRインデックスは、変調剤によるHT29細胞及びHEK−hERG細胞におけるマロトキシンDMRシグナルの変調率である。
【0138】
59.「マーカのバイオセンサシグナルを変調する(Modulate the biosensor signal of a marker)」
「マーカのバイオセンサシグナルを変調する」等の用語は、マーカを用いた刺激に対する細胞のバイオセンサシグナル又はプロファイルの変化を引き起こすことをいう。
【0139】
60.「DMRシグナルを変調する(Modulate the DMR signal)」
「DMRシグナルを変調する」等の用語は、マーカを用いた刺激に対する細胞のDMRシグナル又はプロファイルの変化を引き起こすことをいう。
【0140】
61.「分子(Molecule)」
本明細書で使用されている「分子」等の用語は、生物学的、生物化学的、又は化学的存在であって、確定的な分子量を有する分子又は化学分子の形態をとって存在するものをいう。分子等の用語は、化学的、生物化学的、又は生物学的分子をいい、そのサイズは問わない。
【0141】
いくつかの分子は炭素を含まない(酸素分子などの単純な気体分子及びいくつかの硫黄ベースのポリマなどのより複雑な分子を含む)が、多くの分子は有機分子と呼ばれる形態をとるもの(炭素原子を含む分子であり、特に共有結合によって接続されているもの)である。一般用語の「分子」は、タンパク質、核酸、炭水化物、ステロイド、有機薬剤、小さな分子、受容体、抗体、及び脂質などの分子における多数の記述的クラス又はグループを含む。適切な場合は、1つ以上のこれらのより記述的な用語(タンパク質などの多くのものは分子のグループと重複して記載されている)が、分子のサブグループに対する本方法の用途のために、分子がタンパク質などのサブクラスと一般クラスとしての「分子」との両方を示すことなく、本明細書において使用される。明記されない限り、単語「分子」は、特定の分子及びその塩(例えば薬剤学的に許容できる塩)を含む。
【0142】
62.「分子混合物(Molecule mixture)」
分子混合物等の用語は、少なくとも2つの分子を含む混合物をいう。当該2つの分子は、構造的に異なるもの(すなわち光学異性体(enantiomers))、組成的に異なるもの(例えば、プロテインアイソフォーム、グリコフォーム、又は異なるポリ(エチレングリコール)(PEG)の変形物を有する抗体など)、又は構造的及び組成的に異なるもの(例えば、未浄化の天然抽出物又は未浄化の合成化合物)であり得るが、これらに限定されない。
【0143】
63.「分子のバイオセンサインデックス(Molecule biosensor index)」
「分子のバイオセンサインデックス」等の用語は、分子に対して収集されたデータによって生成されたバイオセンサインデックスをいう。例えば、分子のバイオセンサインデックスは、細胞パネル上で作用する分子のプロファイル、及びマーカパネルに対する分子の変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネルにおける細胞用である。
【0144】
64.「分子のDMRインデックス(Molecule DMR index)」
「分子のDMRインデックス」等の用語は、分子に対して収集されたデータによって生成されたDMRインデックスをいう。例えば、分子のDMRインデックスは、細胞パネル上で作用する分子のプロファイル、及びマーカパネルに対する分子の変調プロファイルからなることができ、各マーカパネルは細胞パネルにおける細胞用である。
【0145】
65.「分子インデックス(Molecule index)」
「分子インデックス」等の用語は分子に関するインデックスをいう。
【0146】
66.「分子処理された細胞(Molecule-treated cell)」
分子処理された細胞等の用語は、分子にさらされた細胞をいう。
【0147】
67.「分子変調インデックス(Molecule modulation index)」
「分子変調インデックス」等の用語は、細胞パネル上で作用するマーカパネルのバイオセンサ出力シグナルを変調する分子の能力を表示するインデックスをいう。当該変調インデックスは、分子の存在下におけるマーカを用いた刺激の際の細胞反応の特定のバイオセンサ出力シグナルのパラメータを、分子の非存在下におけるものに対して正規化することによって生成される。
【0148】
68.「分子薬理(Molecule pharmacology)」
「分子薬理」等の用語は、システム細胞生態(systems cell biology)又はシステム細胞薬理(systems cell pharmacology)をいい、すなわち細胞上で作用する分子の作用モードである。分子薬理は、毒性、特定の細胞プロセス(例えば、増殖、分化、活性酸素種シグナル伝達)に影響を与える能力、又は特定の細胞標的(例えば、hERGチャネル、hERGに関するもの、PI3K、PKA、PKC、PKG、JAK2、MAPK、MEK2、若しくはアクチン)を変調する能力(これらに限定されない)によってしばしば特性化される。
【0149】
69.「正規化すること(Normalizing)」
正規化すること等の用語は、例えば少なくとも1つの共通変数を除去するために、データ、プロファイル、又は反応を調節することを意味する。例えば、2つの反応が生成され、その一方が細胞上で作用するマーカに対するものであり、他方が細胞上で作用するマーカ及び分子に対するものである場合、正規化することとは、分子の非存在下におけるマーカ誘発された反応と分子の存在下における当該反応とを比較してマーカのみによる反応を除去することをいい、これによって正規化された反応はマーカに対する分子の変調による反応を示すこととなる。変調比較はマーカの一次プロファイル及び分子の存在下におけるマーカの二次プロファイル(変調プロファイル)を正規化することによって得られる。
【0150】
70.「任意の(Optional)」
「任意の」、「任意で」等の用語は、その後に記載されている事象又は状況が発生する場合と発生しない場合があることを意味し、かつ当該記載が当該事象又は状況の発生する例と発生しない例とを含むことを意味する。例えば、「任意で組成物は組合せを含む」との表現は、当該組成物が異なる分子の組合せを含む場合と組合せを含まない場合とがあることを意味し、この表現は当該組合せと当該組合せではないこと(すなわち当該組合せの個別のメンバ)との両方を含む。
【0151】
71.「又は(Or)」
本明細書で使用されている「又は」等の用語は、特定の一覧の中の1のメンバ及び当該一覧のメンバの任意の組合せを含むことを意味する。
【0152】
72.「プロファイル(profile)」
プロファイル等の用語は、細胞などの組成物に対して収集されたデータをいう。プロファイルは上記したように無標識バイオセンサによって収集され得る。
【0153】
a)「一次プロファイル(Primary profile)」
「一次プロファイル」等の用語は、バイオセンサ反応又はバイオセンサ出力シグナルであり、すなわち分子が細胞に接触した際に得られたプロファイルをいう。典型的な場合、一次プロファイルは、最初の細胞反応を正味ゼロ(すなわち基準線(baseline))のバイオセンサシグナルに対して正規化した後に得られる。
【0154】
b)「二次プロファイル(Secondary profile)」
「二次プロファイル」等の用語は、分子の存在下におけるマーカに対する細胞のバイオセンサ反応又はバイオセンサ出力シグナルをいう。二次プロファイルは、マーカ誘発された細胞反応すなわちバイオセンサ反応を変調する分子の能力を示すものとして使用されることができる。
【0155】
c)「変調プロファイル(Modulation profile)」
「変調プロファイル」等の用語は、分子の存在下におけるマーカの二次プロファイルと分子の非存在下におけるマーカの一次プロファイルとの間の比較をするものである。当該比較物は、例えば、二次プロファイルから一次プロファイルを差し引くこと又は一次プロファイルから二次プロファイルを差し引くこと、すなわち一次プロファイルに対して二次プロファイルを正規化することによるものである。
【0156】
73.「パネル(Panel)」
パネル等の用語は、所定の組の試料(例えば、マーカ、細胞、又は経路)をいう。パネルはライブラリから試料を選定して作成され得る。
【0157】
74.「ポジティブコントロール(Positive control)」
「ポジティブコントロール」等の用語は、データ収集条件がデータ収集を導き得ることを示すコントロールをいう。
【0158】
75.「増強する(Potentiate)」
増強する、増強された等の用語は、分子によって引き起こされた細胞内のマーカのバイオセンサ反応の特定のパラメータを増大することをいう。分子の存在下における同一の細胞内におけるマーカの二次プロファイルと同一のマーカの一次プロファイルとを比較することによって、当該分子による細胞のマーカ誘発されたバイオセンサ反応の変調を計算することができる。ポジティブな変調は、マーカに誘発されたバイオセンサシグナルを増大させる分子を意味する。
【0159】
76.「効力(Potency)」
効力等の用語は、所定の強度の効果を得るのに必要な量で表された分子活性の測定結果をいう。例えば、高効力薬剤は少ない濃度でも大きな反応を引き起こす。効力は親和性及び効能に比例する。親和性は受容体に結合する薬剤分子の能力である。
【0160】
77.「プロドラッグ(Prodrug)」
「プロドラッグ」等の用語は、生体内において代謝された際に所望の薬理活性を有する化合物へ変換される化合物をいう。プロドラッグは、例えばH. BundgaarのDesign of Prodrugs(1985年)に記載されているような「プロ部分(Pro-moieties)」を有する薬理活性化合物内に存在する適切な官能基を置換することによって準備され得る。プロドラッグの例は、エステル、エーテル若しくは本明細書内の化合物のアミド誘導体、及びその医薬上許容可能な塩を含む。プロドラッグのさらなる説明については、例えば、T. Higuchi and V. Stella “Pro-drugs as Novel Delivery Systems”、ACS Symposium Series 14 (1975)、及びE. B. Roche ed., Bioreversible Carriers in Drug Design (1987)を参照されたい。
【0161】
78.「刊行物(Publications)」
本願を通して、様々な刊行物が参照されている。これら刊行物の開示内容は、当該技術分野の状況をより完全に説明するために、その全てにおいて、参照することにより本願に組み込まれているものとする。開示された参照物は、当該参照物の属する文中において記載されている材料においても、個別かつ詳細に参照することにより本明細書に組み込まれているものとする。
【0162】
79.「受容体(Receptor)」
受容体等の用語は、細胞の原形質膜又は細胞質に組み込まれているタンパク質分子であって、可動性のシグナル伝達分子(又は「シグナル」分子)が結合し得るものをいう。受容体に結合する分子は「リガンド」と呼ばれ、ペプチド(神経伝達物質など)、ホルモン、調合薬、又は毒素であることができ、さらに受容体は、当該結合が起きた際に、通常は細胞反応を開始する構造変化に進入する。しかし、いくつかのリガンドは反応を誘発することなく受容体を遮断するのみである(例えばアンタゴニスト)。受容体におけるリガンド誘発された変化は、当該リガンドの生物学的活性を構成する生理学的変化を引き起こす。
【0163】
80.「ロバストなバイオセンサシグナル(Robust biosensor signal)」
「ロバストなバイオセンサシグナル」はバイオセンサシグナルであって、その振幅がノイズレベル又はネガティブコントロール反応よりも十分に(例えば、3倍、10倍、20倍、100倍、又は1,000倍)大きいシグナルである。しばしば、当該ネガティブコントロール反応はアッセイバッファ溶液(すなわち賦形剤)を加えた後の細胞のバイオセンサ反応である。当該ノイズレベルは他の溶液を加えない場合の細胞のバイオセンサシグナルである。細胞が他の溶液を加える前から溶液に浸されているのは影響しない。
【0164】
81.「ロバストなDMRシグナル(Robust DMR signal)」
「ロバストなDMRシグナル」等の用語は「ロバストなバイオセンサシグナル」のDMRの形態をとったものをいう。
【0165】
82.「範囲(Ranges)」
範囲は、1の「約」に修飾された特定の値から、及び/又は他の「約」に修飾された特定の値まで、として本明細書において表現されることができる。このように範囲が表現された場合、他の実施例は、一方の特定の値から他方の特定の値までか、一方の特定の値以上か、又は他方の特定の値以下を含む。同様に、値が、先行詞「約」を使用することによって、近似値として表現された場合、この特定の値は他の実施例を形成する。さらに、当該範囲の終点の各々は、その他の終点に関連してかつ当該他の終点とは独立して重要なものである。さらに、本明細書には多数の値が開示されており、当該値の各々は、その値に加えて「約」に修飾された特定の値として本明細書に開示されているものとする。例えば、値「10」が開示されているならば、「約10」も開示されているものとする。さらに、当業者に適切に理解されるように、1の値が当該値「以下」と開示されている場合、「当該値以上」及びその値間の可能な範囲も開示されているものとする。例えば、値「10」が開示されているならば、「10以下」及び「10以上」も開示されているものとする。さらに、本願を通して、データは多数の異なる形式で与えられており、このデータは、終点、始点、及び当該データ点の任意の組合せを表すものであるとする。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点15が開示されているならば、10より大きい、15より大きい、10以上、15以上、10未満、15未満、10以下、15以下、10、及び15が10と15との間と同様に考慮され開示されているものとする。さらに、2つの特定の単位間の各単位も開示されているものとする。例えば、10及び15が開示されているならば、11、12、13、及び14も開示されているものとする。
【0166】
83.「反応(Response)」
反応等の用語は刺激に対する応答をいう。
【0167】
84.「サンプル(Sample)」
サンプル又はこれと同様の用語は動物、植物、真菌などであって、天然物、天然抽出物等、動物由来の組織若しくは器官、細胞(対象物内のもの、対象物から直接取出したもの、又は培養状態を維持している細胞若しくは培養された細胞株由来の細胞)、細胞溶解物(又は溶解物の一部)若しくは細胞抽出物、又は細胞若しくは細胞材料(例えば、ポリペプチド又は核酸)から派生した1つ以上の分子を含む溶液をいい、これらは本明細書に記載されているようにアッセイされる。サンプルは体液又は排出物(例えば、血液、尿、便、唾液、涙、胆汁であるがこれらに限定されない)であって細胞又は細胞成分を含むものであってもよい。
【0168】
85.「塩及び医薬上許容可能な塩(Salt(s) and pharmaceutically acceptable salt(s))」
本発明による化合物は、無機酸又は有機酸から派生した塩の態様をとって使用され得る。当該化合物の塩は、1つ以上の塩の物理的性質の故に有益なものであり、当該性質は、様々な温度及び湿度における強化された医薬安定性又は水中若しくは油中における所望の溶解性等である。いくつかの例において、化合物の塩は、化合物の分離、浄化、及び/又は溶解における補助剤としても使用され得る。
【0169】
塩が患者に投与されることが意図されている(例えば体外の状況において使用されるのとは対称的に)場合、塩は医薬上許容可能であることが好ましい。用語「医薬上許容可能な塩」は、式I又は式IIの化合物とアニオン又は塩基性カチオンが食用に適していると一般に考慮されている酸とを結合することによって準備される塩をいう。医薬上許容可能な塩は、その親化合物に比べて高い水溶解性の故に、本発明の方法の生成物として特に有益なものである。薬物としての使用においては、本発明の化合物の塩は非毒性の「医薬上許容可能な塩」である。用語「医薬上許容可能な塩」に含まれる塩は、本発明の化合物の非毒性塩であって、適切な有機酸又は無機酸を用いて遊離塩基を反応させることによって概して準備されるものをいう。
【0170】
本発明の化合物の適切な医薬上許容可能な酸付加塩は、無機酸及び有機酸から派生したものを含み得る。当該無機酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、炭酸、スルホン酸、及び硫酸等であり、当該有機酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グリコール酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、コハク酸、トルエンスルホン酸、酒石酸、及びトリフルオロ酢酸等である。適切な有機酸は、一般的に、例えば、脂肪酸、シクロ脂肪酸(cycloaliphatic acid)、芳香族酸、アリール脂肪酸(araliphatic acid)、複素環酸、カルボン酸、及びスルホン基分類の有機酸を含む。
【0171】
適切な有機酸の特定の例は、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ジグルコン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、グルクロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、アントラニル酸、メシル酸塩、ステアリン酸塩、サリチル酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸塩、マンデル酸塩、エンボン酸塩(パモ酸塩)、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パントテン酸塩、トルエンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、スルファニル酸塩、シクロヘキシルアミノスルホン酸塩、アルギン酸、β−ヒドロキシ酪酸塩、ガラクタル酸塩、ガラクツロン酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、グリコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、及びウンデカン酸塩を含む。さらに、本発明による化合物が酸性部分を有している場合、その医薬上許容可能な塩は、アルカリ金属塩すなわちナトリウム塩又はカリウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、及び第4級アンモニウム塩などの適切な有機リガンドを含んで形成された塩を含み得る。他の実施例においては、塩基性塩は、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リジン塩、メグルミン塩、オラミン塩、トロメタミン塩、及び亜鉛塩を含む非毒性塩を形成する塩基から形成される。
【0172】
有機塩は、第2級、第3級、又は第4級アミン塩から作製されることができ、当該アミン塩は、例えば、トロメタミン、ジエチルアミン、N、N´−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)、及びプロカインである。塩基性の窒素含有基は作用因子を用いて4級化されることができ、当該作用因子は、例えば、低級アルキル(CrC)のハロゲン化物(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、硫酸ジアルキル(すなわち、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、及び硫酸ジアミル)、長鎖ハロゲン化物(すなわち、デシル、ミリスチル、及びステアリルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、アリールアルキルのハロゲン化物(すなわち、ベンジル及びフェネチルの臭化物)等である。
【0173】
1の実施例においては、さらに、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩などの酸及び塩基のヘミ塩が形成され得る。
【0174】
本発明による化合物及びその塩は、溶媒和されていない形態及び溶媒和された形態の両方の形態をとって存在し得る。
【0175】
86.「シグナル伝達経路(Signaling pathway)」
「定義された経路を」等の用語は、シグナル(例えば外因のリガンド)を受信することから細胞の応答(例えば細胞標的の発現増大)までの細胞の経路である。場合によっては、受容体に結合するリガンドによって生じる受容体活性化は、リガンドに対する細胞反応に直結する。例えば、神経伝達物質GABAは、イオンチャネルの部分である細胞表面受容体を活性化することができる。ニューロン上のGABA A受容体に結合するGABAは、当該受容体の一部である塩化物選択性イオンチャネルを開く。GABA A受容体の活性化は、負の電荷を帯びた塩化物イオンが、ニューロンへ進入して活動電位を生成するニューロンの能力を阻害することを可能にする。しかし、多くの細胞表面受容体において、リガンド−受容体相互作用は細胞の応答に直結していない。活性化された受容体は、細胞の挙動におけるリガンドの最終的な生理学的効果が生成される前に、まず細胞内部の他のタンパク質と相互作用しなければならない。しばしば、いくつかの相互作用する細胞タンパク質の鎖の挙動は受容体の活性化に従って変更される。受容体活性化によって誘発された細胞変化のすべてのセットはシグナル伝達機序すなわちシグナル伝達経路と呼ばれる。当該シグナル伝達経路は比較的単純であるか非常に複雑であり得る。
【0176】
87.「インデックスの類似性(Similarity of indexes)」
「インデックスの類似性」等の用語は、インデックスのパターン及び/又はスコアのマトリクスに基づいて、分子に対する2つのインデックス間又は少なくとも3つのインデックスの間の類似性を表現する用語である。当該スコアのマトリクスはその比較対象・比較相手となるもの(counterparts)に大きく関係しており、当該比較対象・比較相手は、例えば、対応する細胞内における異なる分子の一次プロファイルの特徴と、各マーカに対する異なる分子の変調プロファイルの性質及び割合と、である。例えば、より高いスコアはより類似する特性に対して与えられ、より低い又はネガティブのスコアはあまり類似していない特性に対して与えられる。分子変調インデックスに見られる変調はポジティブ、ネガティブ、及びニュートラルの3種類であるため、類似性マトリクスは比較的単純である。例えば、単純なマトリクスにおいて、同一の変調(例えばポジティブ変調)には+1のスコアが割り当てられ、同一でない変調には−1のスコアが割り当てられる。
【0177】
代替として、異なるスコアが異なるスケールの変調タイプに与えられることもできる。例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、100%、200%等のポジティブ変調に、それぞれ、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+20、+20のスコアの与えられることができる。一方、ネガティブ変調に対しては、同様であるが反対のスコアが与えられることができる。この手法に従うと、図5dに示されているように、2つの細胞におけるマロトキシンに対するフルフェナム酸の変調インデックスは、フルフェナム酸が当該2つの細胞におけるマロトキシンに誘発されたバイオセンサ反応を別々に変調することを示しており、すなわちHT29(−90%)とHEK−hERG(約12%)である。従って、フルフェナム酸の変調インデックスのスコア座標には、(−9,1)と割り当てられることができる。同様に、ジフルニサルに対するスコア座標は(−9,1)である(図6d)。フルフェナム酸とジフルニサルとの間のスコアを比較することによって、両方の分子がhERGチャネルにおいて同様の作用モードを示すことがわかる。
【0178】
88.「溶媒和する・溶媒和物(Solvate)」
本化合物及びその医薬上許容可能な塩は、完全な非結晶質のものから完全な結晶質のものまでに及ぶ連続した固体状態にて存在し得る。さらに、これらは溶媒和されていない形態及び溶媒和された形態をとって存在し得る。用語「溶媒和物」は、化合物及び1つ以上の医薬上許容可能な溶媒分子(例えばエタノール)を含む分子錯体をいう。用語「水和物」は溶媒が水である溶媒和物である。医薬上許容可能な溶媒和物は、溶媒が同位体で置換され得る(例えば、DO、d−アセトン、d−DMSO)溶媒和物を含む。
【0179】
有機化合物の溶媒和物及び水和物に対する現在認められている分類システムは、分離サイト溶媒和物及び水和物と、チャネル溶媒和物及び水和物と、金属イオン配位された溶媒和物及び水和物と、を識別するものである。これについては例えばK. R. Morris (H. G. Brittain ed.) Polymorphism in Pharmaceutical Solids (1995)を参照されたい。分離サイト溶媒和物及び水和物は、有機化合物の分子に介入することによって溶媒(例えば水)分子が互いの直接接触から分離されたものである。チャネル溶媒和物において、当該溶媒分子は他の溶媒分子に隣接する格子チャネル内に位置している。金属イオン配位された溶媒和物において、当該溶媒分子は金属イオンに結合されている。
【0180】
溶媒又は水が強固に結合されている場合、その錯体は特定の化学量論的に独立した湿度を有することとなる。しかし、溶媒又は水が例えばチャネル溶媒和物及び吸湿性化合物内において弱く結合されている場合、水又は溶媒の量は湿度条件及び乾燥条件に依存することとなる。このような場合において、不定比性が基準となる。
【0181】
本化合物及びその医薬上許容可能な塩は、化合物及び他の少なくとも1つの成分が化学量論的な量又は非化学量論的な量で存在する多成分錯体(塩及び溶媒和物以外)としても存在し得る。このタイプの錯体はクラスレート(薬剤ホスト包接錯体)及び共結晶(コクリスタル)を含む。後者は、非共有結合相互作用によって互いに結合されている中性分子成分の結晶質錯体として典型的に定義されるが、塩を含む中性分子の錯体でもあることができる。共結晶は、溶融結晶化によって、溶媒和物からの再結晶化によって、又は化合物を互いに物理的に研削することによって準備され得る。これについては、例えば、O. Almarsson and M. J. Zaworotko, Chem. Commun., 17:1889-1896 (2004)を参照されたい。多成分錯体の一般論については、J. K. Haleblian, J. Pharm. Sci. 64(8):1269-88 (1975)を参照されたい。
【0182】
89.「安定した(Stable)」
医薬組成物に関して使用される場合、「安定した」等の用語は、当業者の間では、特定の保存条件下での所定期間の活性材料の喪失が特定の量未満、通常は10%未満であることを意味する。組成物が安定していると考慮されるのに必要な時間は、生成物の用途に関係しており、かつ生成物の生成、品質管理及び検査のための保管、最終的な使用の前に再度保管される卸売業者への輸送又は消費者への直接の輸送における商業的実用性によって定められる。数ヶ月の安全率を含めると、医薬品の最低生成物寿命は通常1年であり、18ヶ月よりも長いのが好ましい。本明細書で使用されている用語「安定した」は、これら市場の実情と、2度から8度の間の冷蔵状態などの容易に達成可能な環境条件で生成物を保管及び輸送する能力と、を考慮している。
【0183】
90.「物質(Substance)」
物質等の用語は任意の物理的客体物をいう。材料は物質である。分子、リガンド、マーカ、細胞、タンパク質、及びDNAは物質と考えられる。機械又は生成物は、物質そのものではなく、物質から作られているものと考えられる。
【0184】
91.「対象物(Subject)」
本願を通して使用されている対象物等の用語は個体を意味する。従って、「対象物」は、例えば、犬、猫などの家畜化された動物、家畜類(牛、馬、豚、羊、ヤギなど)、実験動物(マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)、哺乳類、ヒト以外の哺乳類、霊長類、ヒト以外の霊長類、齧歯動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、及び他の動物を含むことができる。1つの対象物の態様は、霊長類又はヒトなどの哺乳類である。対象物はヒト以外であってもよい。
【0185】
92.「試験分子(Test molecule)」
試験分子等の用語は、当該試験分子に関するいくつかの情報を得る手法において使用される分子をいう。試験分子は未知の分子又は既知の分子であることができる。
【0186】
93.「処理・治療すること(Treating)」
処理すること、処理等の用語は少なくとも2つの意味で使用されることができる。第1に、処理すること、処理等の用語は投与すなわち対象物に向けてとられる行為をいう。第2に、処理すること、処理等の用語は2つのものを混合することをいい、当該2つのものは例えば分子及び細胞などの2つ以上の物質である。この混合は、当該少なくとも2つの物質を接触し得る状態にさせる。
【0187】
治療すること、治療等の用語が疾病に関する文脈において使用される場合、これらは例えば治癒又は症状の軽減を暗示するものではない。治療学的用語又はこれと同様の用語が治療すること、治療等の用語に伴って使用される場合、基礎疾病の症状が軽減すること及び/又は基礎的な1つ以上の細胞的原因、生理学的原因、若しくは生物化学的原因、若しくは症状を起こす機序が軽減されることを意味する。この文脈において使用される軽減とは、単に疾病の生理学的状態だけでなく、疾病の分子状態を含む疾病の状態が比較的低減されることを意味する。
【0188】
94.「トリガ(Trigger)」
トリガ等の用語は反応などの事象を起こす又は開始する動作・作用をいう。
【0189】
95.「値(Values)」
組成物、要素、添加物、細胞型、マーカなどの態様及びそれらの範囲のために開示された特定かつ好ましい値は、説明のためだけのものであり、それらは、定義された他の値又は定義された範囲中の他の値を除外するものではない。本開示の組成物、装置及び方法は、それらが有するどんな値又は値のどんな組み合わせ、特定の値、さらなる特定の値及びここに開示された好ましい値のものも含む。
【0190】
従って、ここに開示された方法、組成物、生成物及び機械は、本明細書に記載された様々な成分、ステップ、分子及び組成物等を含み、これらで構成され、又は本質的にこれらで構成されるような態様にて結合され得る。それらは、例えば、ここに定義したようなリガンドを含む分子を特性化する方法、ここに定義したようなインデックスを生成する方法、又は、ここに定義したような創薬の方法において使われることができる。
【0191】
96.「未知の分子(Unknown molecule)」
未知の分子等の用語は、未知の生物学的、薬理学的、生理学的、病態生理学的な活性を有する分子をいう。
【0192】
97.「最適化すること(Optimizing)」
最適化することは、より良くするプロセス、又は、あるもの若しくはあるプロセスがより良くなりそうかどうかを確認するプロセスをいう。
【0193】
98.「治療効能(Therapeutic efficacy)」
治療効能は、対象物の治療による結果の程度又は度合いをいう。
【0194】
99.「疾病マーカ(Disease marker)」
疾病マーカは、試薬、分子、物質等であって、hERGチャネル関連疾病を同定、診断、又は予知するのに使用され得るものである。
【0195】
100.「hERGチャネル関連疾病(hERG channel related disease)」
hERGチャネル関連疾病は、疾病の原因又は疾病の治療がhERGチャネルの変調によって変化し得るような疾病である。例示的な疾病は癌であり、例えば、白血病、大腸癌、胃癌、乳癌、又は肺癌である。例示的な疾病は、遺伝子の突然変異による遺伝的QT延長症候群(LQTS)、薬剤分子による後天性LQTS、及びクラス3不整脈(class III arrhythmics)である。
【0196】
101.「毒性マーカ(Toxicity marker)」
毒性マーカは、試薬、分子、物質等であって、有機体、細胞、組織、又は器官などの物質の毒性レベルを同定、診断、又は予知するのに使用され得るものである。
【0197】
102.「分析方法(Analytical Methods)」
分析方法は、例えば、分子又は物質を測定する方法である。例えば、ガスクロマトグラフィ(gas chromatography)、ゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography)、高分解能ガスクロマトグラフィ、高分解能質量分析(mass spectrometry)、又は質量分析は分析方法である。
【0198】
103.「毒性(Toxicity)」
毒性は、物質又は分子にさらされた際の細胞、組織、器官、又は有機体全体などのあるものに損傷を与えることができる物質又は分子の程度である。例えば、肝臓、又は肝臓内の細胞である肝細胞は特定の物質によって損傷を受け得る。
【0199】
B.電位依存性イオンチャネル
電位依存性イオンチャネルは、心臓及び神経などの興奮組織内における細胞表面膜に亘るタンパク質である。チャネルを通過するイオンは心筋活動電位の基礎を形成する。NAイオン及びCA2+イオンの流入は、それぞれ、脱分極の立ち上がり及び活動電位のプラトー相を制御する。Kイオンの流出は、細胞膜を再分極し、活動電位を終端し、かつ筋肉の弛緩を可能にする。再分極電流の急速成分は、ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(hERG)によってコード化されたKチャネルを通過する。再分極障害は、活動電位の持続時間を延長し、弛緩を遅らせ、かつ心拍障害を進めることがある。活動電位の延長は、心電図(ECG)上で測定されるQT間隔の長期化として臨床的に検出される。薬剤誘発性のQT延長は再分極障害による薬剤の深刻な合併症であり、これは致死の心室性不整脈のリスクの増大に関連する。薬剤誘発性のQT延長は、ほぼhERGのKチャネルの遮断に関連している。メタンスルホンアニリド、ドフェチリド、MK−499、及びE−4031などの薬剤の大量のものは、影響を受けやすい患者に対して命に関わる心臓発作及び心室性不整脈を起こすような心臓のhERGなどのKイオンチャネルを遮断することが知られている。残念ながら、薬剤誘発性の心室性不整脈の発生率は低く、臨床試験では検出されない。
【0200】
テルフェナジン(抗ヒスタミン剤)、アステミゾール(抗ヒスタミン剤)、及びシサプリド(胃運動促進剤)などの非心血管性薬剤によってhERGチャネルが遮断されることによる突然死は、市場からのこれら薬剤の撤退のきっかけとなった。近年、バイオックス(Vioxx)等の薬剤も危険な心臓副作用に関する懸念のために市場から撤退した。一方、Kチャネルに関する心臓への安全性は監督機関の大きな懸念事項となっている。高い損耗率を抑えるために、創薬において、リード化合物(lead compounds)におけるhERGチャネルの阻害活性をできるだけ早く選別して排除することが最優先となっている。
【0201】
薬剤分子のhERG遮断活性に対する特性を試験する現在の方法はいくつかの制限を有している。細胞ベースのパッチクランプ型電気生理学的試験すなわち動物試験に基づく手法は、心臓安全試験における正確さ及び出力の要求を満たすものではなく、技術的に困難である。他のアッセイは、結合の定量化及び検出に、放射性標識マーカ、蛍光マーカ、染料結合マーカ、又はビオチン化マーカを使用する。しかし、これらマーカの多くは標識後に活性を低下させる。さらに、放射性物質は、放射性化合物を取り扱う複雑なインフラ及びライセンスの必要性などの実施上の制限をもたらす。本明細書ではhERG Kチャネル、hERG、hERGイオンチャネル、又はhERGチャネルと呼ばれるこのチャネルの無差別な性質は、多様な化学構造(Cavalli, A.等., J.Med. Chem. 2002, 45(18), 3844-53)との結合を導き、その相互作用によって致死的結果となる可能性を伴う。このことは、全ての新薬候補が天然型又は組み換え型で発現されたヒトのhERGタンパク質(Bode, G.等., Fundam. Clin. Pharmacol. 2002, 16(2), 105-18)を用いた機能的パッチクランプアッセイの試験を受ける米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)及び国際調和会議(International Congress of Harmonization)からの勧告をもたらした。自動化された高いスループットのパッチクランプ法が近年開発されたが、当該システムは専門のオペレータ、生細胞、及び多額の設備投資を必要とする(Bridgland-Taylor, M.等., J. Pharmacol. Toxicol. Methods 2006, 54(2), 189-99; Dubin, A., et al., J. Biomol. Screen. 2005, 10(2), 168-81)。従って、薬剤候補などの分子とhERGチャネルとの結合を特性化及び定量化する新規な組成物及び方法を開発する必要がある。
【0202】
KCNH2すなわちヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(hERG)はKv11.1カリウムイオンチャネルを形成するために結合するKv11.1のαサブユニットをコード化する。当該hERG遺伝子は、小胞体においてはコアグリコシル化された未成熟の135kDaタンパク質(Kv11.1)と訳され、ゴルジ体においては複雑にグリコシル化された成熟の155kDaタンパク質に変換される。(Warmke, J.W.ら(Proc. Nat. Acad. Sci. USA 1994, 91(8), 3438-3442、参照することにより組み込まれている)は、hERG遺伝子の配列及び構造とその野生型翻訳生成物のKv11.1とを開示している。hERGタンパク質の配列はSEQ ID NO: NP_000229に開示されている。hERG遺伝子の配列はSEQ ID NO: NM_000238に開示されている。
【0203】
ここに開示されているのは、hERG変調剤、hERG活性剤、無標識バイオセンサのhERG活性剤、hERG経路活性剤、hERGイオンチャネル活性剤、hERG阻害剤、hERG経路阻害剤、及びhERGイオンチャネル阻害剤である。薬剤分子によるhERG電流の変化を無効にすることができるhERGイオンチャネル活性剤は、hERG障害を減少させるため、臨床的に有益なものとなり得る。このようなhERGイオンチャネル活性剤は、hERG遮断剤でもある薬剤分子と組み合わせた薬剤として使用されることができる。hERG電流を変化させないhERG経路阻害剤も抗癌剤として部分的に有益なものである。このようなhERG経路遮断剤は最小限のhERG障害を有し、癌に対する抗増殖活性を有している。
【0204】
ここに開示された方法及び組成物は、hERGイオンチャネルを変調する治療剤として、また、hERGに関する心筋再分極障害の予防及び治療を改善する治療剤として有益なものである。本化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグの構造式において、式中のR、R、R、X、及びYは本明細書内において定義される。
【0205】
ここに開示された組成物は、2−ジシアノメチル−3−シアノ−2、5−ジヒドロフラン、及び式(I)及び(II)に記載されているようなそれらの派生物、並びにそれらの医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、及びプロドラッグに関し、式中のR、R、R、R、R、及びRは本明細書内において定義される。
【0206】
【化2】

【0207】
及びRは、無関係に、−H、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルキニル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アリール、非置換又は置換アルキルアリール、非置換又は置換炭素環、非置換又は置換ヘテロ環、非置換又は置換シクロヘキシル、及びnが1−10の(CH2)n−O−(CH2)nから選択されることができる。
【0208】
は、無関係に、アルキルか、又は、二重結合によって結合された完全共役発色団であって電子的供与−架橋−受容構造又は供与−受容構造若しくは架橋−受容構造のみを有するものから選択される。
【0209】
好ましい電子供与基(electron donating group)は、例えば、米国特許第6,393,290B1号、第5,044,725号、第4,795,664号、第5,247,042号、第5,196,509号、第4,810,338号、第4,936,645号、第4,767,169号、第5,326,661号、第5,187,234号、第5,170,461号、第5,133,037号、第5,106,211号、及び第5,006,285号に説明されており、これら特許の全内容は参照することにより本明細書に組み込まれているものとする。好ましくは、当該電子供与基は、例えば、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアルキルアニリノ、1−ピペリジノ、1−ピペラジノ、1−ピロリジノ、アシルアミノ、ヒドロキシル、チオロ(thiolo)、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アルキル、ビニル、1、2、3、4−テトラヒドロキノリニル等によってパラ位置において置換されたフェニル環からなる基から選択されるが、これらに限定されない。
【0210】
好ましい架橋基(bridge group)は、置換又は非置換の2−ジシアノメチル−3−シアノ−2、5−ジヒドロフラン、及び電子供与基を結合する環状の架橋である。好ましくは、橋かけ基は少なくとも1つの二価の環である。好ましい環状の架橋は1つ又は複数の二価の環を含む。本願において環状の架橋として採用されることができる好ましい二価の環は、例えば、米国特許第5,044,725号、第4,795,664号、第5,247,042号、第5,196,509号、第4,810,338号、第4,936,645号、第4,767,169号、第5,326,661号、第5,187,234号、第5,170,461号、第5,133,037号、第5,106,211号、及び第5,006,285号に説明されており、これら特許の全内容は本明細書に援用されているものとする。環架橋は芳香族又は非芳香族であり得る。
【0211】
本発明の化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグは、hERGイオンチャネルを活性化するのに特に有益である。特に、本発明の化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグは、hERG遮断剤によって誘発された潜在的LQTSを無効にすることができ、これによってhERGに関する心筋再分極障害の予防及び治療を改善することができる。
【0212】
ここに開示されているのは、体内及び体外の両方のhERGイオンチャネルを特性化し、かつ心血管安全性の不利益を低減した薬剤を開発するのに有益な化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグである。
【0213】
さらに、ここに開示されているのは、効果的な量の化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグを含む医薬組成物と、医薬上許容可能な担体又は賦形剤である。さらに、これら組成物は添加剤を含み得る。これら組成物は、hERGに関する心筋再分極障害を治療又は予防するのに有益なものである。
【0214】
さらに、ここに開示されているのは、hERGに関する心筋再分極障害を治療又は予防する方法であり、当該方法は、本発明による化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグか、本発明による化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグを含む医薬組成物を必要としている対象にこれを投与するステップを含む。さらに、これら方法は、本発明による化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグとは別に、又は組み合わせて添加剤を対象に投与するステップを含む。
【0215】
さらに、ここに開示されているのは、本発明による化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグか、本発明による化合物又はその医薬上許容可能な塩、溶媒和物、クラスレート、若しくはプロドラッグを含む医薬組成物を用いて、体内又は体外において、hERGイオンチャネル及び癌細胞増殖を含む細胞機能を変調する方法である。
【0216】
ここに開示された全ての方法は、化合物のみ、又はhERG遮断剤若しくはLQTSを引き起こし得る薬剤などの他の作用因子と組み合わせて実施されることができる。
【0217】
ここに開示されているのは、客体内のhERGイオンチャネルを変調する組成物及び方法であり、以下の化学式のものから選択される1つ以上の化合物を投与すること(ステップ)を含む。
【0218】
【化3】

【0219】
【化4】

【0220】
【化5】

【0221】
【化6】

【実施例】
【0222】
【実施例1】
【0223】
化学合成と特性化
化合物E:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4、5−ジメチル−5−[4´−n−ブチルフェニル]−2、5−ジヒドロフラン
10.0グラム(0.0455モル)の3−ヒドロキシ−3−[4´−n−ブチルフェニル]−2−ブタノン、6.0グラム(0.091モル)のマロノニトリル、2.3ml(2.3mモル)のリチウムエトキシド、及び50mlのTHFが混合され、一晩還流においてボイル(boil)された。エタノール内において再結晶化によって純粋な化合物Eが得られ、これによって、収率69.1%、mp:129.3-130.5℃、1H NMR: δ 7.259 (d, 2H), 7.112 (d, 2H), 2.638 (t, 2H, CH2), 2.225 (s, 3H, Me), 1.997 (s, 3H, Me), 1.60-1.28 (m, 4H, CH2), 0.931 (t, 3H, CH3)、13C NMR: 182.476, 175.753, 145.841, 131.069, 129.692 (2C), 125.075 (2C), 110.406, 109.088, 104.728, 101.724, 58.830, 35.236, 33.277, 22.335 (2C), 14.558, 13.873、HPLC:100%において9.95グラムのものを与えた。
【0224】
化合物D:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4、5−ジメチル−5−[2´、4´−ジフルオロフェニル]−2、5−ジヒドロフラン
8グラム(0.04モル)の3−ヒドロキシ−3−[2´、4´−ジフルオロフェニル]−2−ブタノン、5.3グラム(0.08モル)のマロノニトリル、及び2ml(2mモル)のリチウムエトキシドが50mlのTHF内で一晩還流された。精密検査の後には、エタノールから再結晶化によって純粋な化合物Dが得られた。収率37.9%、Mp: 219.0-221.4、1H NMR: δ 7.441 (d, 1H), 7.066 (dd, 1H), 6.945 (d, 1H), 2.274 (s, 3H, Me)、19F NMR: -104.81 (d, 1F), 107.294 (d, 1F)、HPLC: 100%において4.5グラムのものを与えた。
【0225】
化合物Q:3−シアノ−2−(ジシアノメチリデン)−4−{トランス、トランス、トランス−[3−(2−(4−(N、N−ジエチルアミノ)−フェニル)ビニル)シクロヘキサ−2−エニリデン]−1−プロペニル}−5−メチル−5−(4−nブチルフェニル)−2、5−ジヒドロフラン
3.0グラム(9.3mモル)の2−[3−[2−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]エテニル]−5、5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−イリデン]−アセトアルデヒド、及び3.5グラム(11.2mモル)の2−(ジシアノメチレン)−3−シアノ−4、5−ジメチル−5−(4−n−ブチルフェニル)−2、5−ジヒドロフランがTHF/エタノール内において反応し、カラムクロマトグラフィシリカゲル(ヘキサン内において酢酸エチル20%)を用いて精製された。クロマトグラフィの後には、1.5グラムの化合物Qが得られた。収率26.0%、1H NMR (溶媒CD2Cl2): δ 7.31 (m, 7), (m, 2), 6.62 (m, 2H), 6.37 (m, 2H), 6.25 (m, 1H), 3.40 (q, 4H), 2.64 (t, 2H), 2.34 (s, 2H), 2.09 (m, 2H), 2.07 (s, 3H), 1.60-1.36 (m, 4H), 1.17 (t, 6H), 1.00 (s, 3H), 0.92 (t, 3H), 0.85 (s, 3H)、13C NMR: 177.16, 174.00, 156.19, 149.74, 149.23, 146.25, 145.94, 134.94, 134.27, 129.94, 129.77, 129.77, 129.61, 127.86, 126.63, 125.88, 124.35, 116.27, 113.19, 112.71, 112.20, 98.92, 95.24, 55.32, 45.06, 39.84, 35.83, 34.08, 31.73, 29.18, 28.05, 22.91, 14.24, 13.00、分子式:C42H46N4O、正確な質量+Na: 645.3569(計算)、645.3559(観測)、偏差(ppm): 0.6であった。
【0226】
化合物U:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4−メチル−5−スピロ−シクロヘキシル−2、5−ジヒドロフラン
14.2グラム(0.1モル)の1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシル−エタノン、13.2グラム(0.2モル)のマロノニトリル、100ml(0.1モル、エタノール内において1M溶液)のナトリウムエトキシド、及び100mlのエタノールが混合され、室温にて一晩反応した。エタノール内において再結晶化から純粋な化合物Uが得られ、これによって、収率67.5%、mp: 236.5-237.5℃、1H NMR: δ 2.337 (s, 3H, Me), 1.86-1.70 (m, 11H, 環)、13C NMR: 182.387, 175.230, 110.980, 110.458, 108.999, 104.883, 101.437, 58.572, 33.123 (2C), 23.918, 21.289 (2C), 14.499、HPLC: 100%において16.1グラムのものを与えた。
【0227】
化合物B:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4−メチル−5−フェニル−5−ペルフルオロメチル−2、5−ジヒドロフラン
10.0グラム(0.046モル)の3−ヒドロキシ−3−フェニル−4、4、4−トリフルオロ−2−ブタノン、6.1グラム(0.092モル)のマロノニトリル、2.5ml(2.5mモル)のリチウムエトキシド、及び20mlのTHFが混合され、一晩還流された。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル上の100%ジクロロメタン、60−200メッシュ)を介して純粋な化合物Bが得られ、これによって、収率25.9%、mp: 133-135℃、1H NMR: 7.577-7.546 (m, 3H, Ar), 7.444-7.410 (m, 2H, Ar), 2.479 (s, 3H, Me)、19F NMR: -72.852、13C NMR: 174.224, 172.148, 131.908, 130.191, 127.467, 125.742, 121.682, 109.793, 109.511, 109.098, 108.099, 98.521, 62.938, 15.439、GC/MS: 317 (M+2), 247 (M-CF3)、HPLC: 100%において3.75グラムのものを与えた。
【0228】
化合物V:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4−メチル−5−スピロ−[7−(1´、1´、2´、2´、3´、3´、4´、4´、4´−ペルフルオロブチル)テトラリン]−2、5−ジヒドロフラン
6.8グラム(0.0167モル)の1−ヒドロキシ−1−アセチル−7−[1´、1´、2´、2´、3´、3´、4´、4´、4´−ノナフルオロブチル]テトラリン、2.2グラム(0.033モル)のマロノニトリル、1ml(1mモル、エタノール内において1M溶液)のリチウムエトキシド、及び20mlのTHFが反応し、一晩還流された。エタノールから再結晶化によって純粋な化合物Vが得られ、これによって、収率11.86%、mp: 211.0-212.4℃、1H NMR: δ 7.636 (dd, 1H), 7.479 (d, 1H), 6.925 (d, 1H), 3.148-2.879 (m, 2H), 2.252 (s, 3H, Me), 2.166 (m, 4H)、13C NMR: 178.962,173.437, 142.286, 130.305, 128.206, 127.779, 127.473, 124.453, 118.514, 116.378, 114.119 (2C), 109.570, 109.105 (2C), 107.892, 107.830, 106.571, 98.558, 58.921, 32.632, 27.877, 17.537, 13.797、19F NMR: -111.843 (2F), -123.282 (2F), -126.127 (3F)、HPLC: 100%において1グラムのものを与えた。
【0229】
【化7】

【0230】
化合物T:
3.0グラム(0.008モル)の化合物A2及び2.9グラム(0.008モル)の化合物B2の混合物に対して、20mLのTHF及び30mLのエタノールが加えられた。この混合物が還流にて加熱され、その際無水ピペリジンが5滴加えられた。この混合物は当該温度にて16時間加熱された。その後、反応混合物は室温にて冷却され、溶媒が減圧しながら除去され、塩化メチレン内に溶解した油を得た。この塩化メチレン溶液は水で洗浄され、無水MgSO上にて乾燥され、濃縮されて油状生成物を形成した。カラムクロマトグラフィ(シリカ上の100%塩化メチレン)を介して純粋な化合物Tが得られ、収率54%、HPLC: 100%において3.0グラムのものを与えた。
【0231】
化合物W:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4−メチル−5−スピロ−フルオレニリジン−2、5−ジヒドロフラン
5.0グラム(0.0223モル)の9−ヒドロキシ−9−アセチル−フルオレン、2.94グラム(0.0446モル)のマロノニトリル、3.1グラム(0.0223モル)の無水炭酸カリウム、18−クラウン−6エーテル(触媒量)、及び50mlの乾燥したTHFが混合され、一晩還流された。エタノールから再結晶化によって純粋な041が収集され、これによって、収率45.0%、mp: 302-303℃、1H NMR: δ 7.760 (d, 2H), 7.566 (t, 2H), 7.393 (t, 2H), 7.187 (d, 2H), 1.935 (s, 3H)、13C NMR: 177.504, 140.459、HPLC: 100%において3.22グラムのものを与えた。
【0232】
化合物G:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4、5−ジメチル−5−[2´、4´−ジクロロフェニル]−2、5−ジヒドロフラン
6.8グラム(0.029モル)の1−ヒドロキシ−1−メチル−1−[2´、4´−ジクロロフェニル]−2−プロパノン、3.8グラム(0.058モル)のマロノニトリル、1ml(1mモル)のリチウムエトキシド、及び10mlのTHFが混合され、還流にて36時間ボイルされた。上記精密検査の結果、エタノール及び酢酸エチルの混合物内において再結晶化によって固体生成物が得られ、これによって、収率16.7%、mp: 239-240℃、1H NMR: δ 7.501 (d, 1H), 7.472 (s, 1H), 7.427 (dd, 1H), 2.194 (s, 3H, Me), 2.032 (s, 3H, Me)、13C NMR: 180.244, 176.047, 138.409, 135.059, 132.545, 130.484, 128.649, 128.359, 110.807, 110.281, 109.033, 107.339, 99.563, 60.479, 25.521, 14.494、HPLC: 88.05%において1.6グラムの化合物Gを与えた。
【0233】
【化8】

【0234】
化合物N:
1.11グラム(0.0034モル)の化合物A3、1.22グラム(0.004モル)の化合物D、及びピペリジンがTHF(30mL)/エタノール(30mL)内において混合された。この混合物は一晩還流された。室温にて冷却された後、この混合物は酢酸エチル/ヘキサンエチル内において精密検査された。エタノールから再結晶化によって純粋なNが収集され、収率63%、HPLC: 100%において1.29グラムのものを与えた。
【0235】
化合物F:2−ジシアノメチレン−3−シアノ−4、5−ジメチル−5−[3´、4´−ジクロロフェニル]−2、5−ジヒドロフラン
15グラム(0.064モル)の3−ヒドロキシ−3−[3´、4´−ジクロロフェニル]−2−ブタノン、8.5グラム(0.129モル)のマロノニトリル、及び3.2ml(3.2mモル、エタノール内において1M溶液)のリチウムエトキシドが80mlのTHF溶液内において混ぜられ、還流条件下において一晩ボイルされることを許容された。当該溶液は、吸引真空下のロータリーエバポレータ(rotary evaporator)上にて大部分のTHFを除去することによって濃縮された。塩化メチレン内において残留物が吸い上げられ、塩水(2倍)を用いて洗浄され、その後脱イオン化水(2倍)を用いて洗浄された。有機層は無水MgSO上にて乾燥され、ろ過され、溶媒が除去された。変性アルコールから粗生成物が再結晶化され、目的の化合物Fを得て、これによって収率25.9%、mp: 226.4-228.6℃、1H NMR: δ 7.579 (d, 1H), 7.324 (d, 1H), 7.070 (dd, 1H), 2.254 (s, 3H, Me), 2.001 (s, 3H, Me)、13C NMR: 180.253, 175.015, 135.676, 134.630, 134.382, 131.982, 127.552, 124.595, 110.580, 109.966, 108.810, 105.822, 100.107, 60.573, 22.894, 22.894, 14.637、HPLC: 100%において5.5グラムのものを与えた。
【0236】
【化9】

【0237】
化合物I:
0.5グラム(0.003モル)の化合物A4及び1.0グラム(0.003モル)の化合物B2の混合物に対して、40mLのTHF及び10mLのエタノールが加えられた。この混合物は70において800Cまで加熱され、その際無水ピペリジンが5滴加えられた。この混合物は同じ温度において16時間加熱された。その後、反応混合物は室温にて冷却され、溶媒が減圧しながら除去され、塩化メチレンに溶解した油を得た。この塩化メチレン溶液は水で洗浄され、無水MgSO上にて乾燥され、濃縮されて油状生成物を形成した。シリカ上においてカラムクロマトグラフィを介して純粋な化合物Iが得られ、収率20%、HPLC: 100%において0.3グラムのものを与えた。
【0238】
【化10】

【0239】
化合物K:
0.45グラム(0.001モル)の化合物A5、0.45グラム(0.001モル)の化合物G、及び3滴のピペリジンがTHF(40mL)/エタノール(20mL)内において混合された。この混合物は一晩還流された。室温での冷却後、この混合物は酢酸エチル/酢酸ヘキサン内において精密検査され、所望の生成物を得た。エタノールから再結晶化によって純粋な化合物Kが収集され、収率23%、HPLC: 100%において0.15グラムのものを与えた。
【実施例2】
【0240】
B.無標識光学バイオセンサの細胞アッセイにおける化合物の特性化
光学バイオセンサは表面に結合した電磁波を一次的に使用して細胞反応を特性化する。当該表面結合波は、光に励起された表面プラズモンを用いて金属(例えば金)基板上において得られる(表面プラズモン共鳴(SPR))か、又は回折格子に結合された導波モード共鳴を用いて誘電体基板上において得られる(共鳴導波路回折格子(RWG))ことができる。SPRにおいて、読み出しは発生する反射光の強度が最小の共鳴角度である。同様に、RWGバイオセンサにおいて、読み出しは得られる光取り込み(incoupling)効率が最大の共鳴角度又は共鳴波長である。光結晶バイオセンサはRWGバイオセンサである。当該共鳴角度又は共鳴波長はセンサ表面又はその近傍における局所屈折率の関数である。アッセイにおいて数個のフローチャネルに限られるSPRとは異なり、RWGバイオセンサは、機器及びアッセイの近年の進歩によって、ハイスループットスクリーニング(HTS)及び細胞アッセイを受け入れる余地がある。典型的なRWGにおいて、細胞は、高屈折率の材料を含むバイオセンサが組み込まれたマイクロタイタープレートのウェルに直接配置される。局所的な屈折率変化は、刺激された生細胞の動的質量再分布(DMR)シグナルを導出する。これらバイオセンサは、受容体の生態、リガンドの薬理、及び細胞付着を含む様々な細胞プロセスの研究に使用されている。
全ての化合物は、RWGバイオセンサのコーニングEpic(登録済み)システムを用いて、生細胞内のhERGイオンチャネルを変調する能力を、体系的に特性化された。Epic(登録済み)システムは、温度管理ユニット、光学検出ユニットから構成されており、さらにロボットを備えたオンボードの液体操作ユニットを含むか、又はロボットを備えた外部の液体補助システムを含む。当該検出ユニットは統合されたファイバ光学系の中央に設けられ、細胞反応の約7又は15秒間隔での動態測定を可能にする。化合物溶液は当該オンボードの液体操作ユニット又は外部の液体補助システム(共に従来の液体操作システムを使用する)を用いて導入された。
【0241】
1.材料及び方法
a)細胞培養
全ての細胞培養試薬はインビトロジェンギブコ社(Invitrogen GIBCO)から購入した細胞培養である。HEK293細胞、MCF7細胞、及びHT29細胞はATCCから購入された。HEK293細胞は、ATCCの指示に従って、10%のウシ胎児血清及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含んだMEM-GlutoMax内に保存された。HT29細胞は10%のウシ胎児血清及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含んだMcCoy5A培地内に保管された。MCF7細胞は、ATCCに処方された0.01mg/mlのウシインスリンのウシ胎児血清を含むイーグルの最小必須培地(Eagle’s Minimum Essential Medium)内において最終濃度が10%になるまで保管された。hERG安定発現HEK細胞株(HEK−hERG)はSunら(J. Biol. Chem. 2006, 281, 5877)に従って保管された。細胞は週当たり1−2回二次培養され(subcultured)、15未満の通過細胞が全ての実験に使用された。全ての細胞培養は、典型的な細胞培養器内において5%の二酸化炭素内にて行われた。
【0242】
b)化合物
マロトキシン、フルフェナム酸、ジフルニサル、及びドフェチリドはエンゾライフサイエンス社(Enzo Lifesciences)から購入された。ドフェチリドはフィッシャーサイエンティフィック社(Fisher Scientific)からも購入された。
【0243】
c)無標識バイオセンサの細胞アッセイ
Epic(登録済み)波長インタロゲーションシステム(コーニング社、コーニング、NY)が全ての細胞検知に使用された。このシステムは、温度管理ユニット、光学検出ユニット、及びオンボードのロボット付き液体操作ユニットで構成されている。当該検出ユニットは統合されたファイバ光学系の中央に設けられており、約15秒間隔での細胞反応の動的測定を可能にする。
【0244】
細胞は、アッセイ前は、384ウェルのEpic(登録済み)細胞培養処理プレート(Corning Cat#5040)に16−20時間プレート化(plated)された(HEK293細胞及びHEK−hERG細胞はウェル当たり15000細胞、HT29細胞はウェル当たり30000細胞)。HEK−hERG細胞及びその親のHEK293細胞については、それぞれ10μlの5μg/mlフィブロネクチンに覆われた。アッセイ前の1時間、細胞は、20mMのヘペス(Hepes)を含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS)を含有するBioTek ELx405セレクトウォッシャによって2回洗浄された。細胞は、Epicシステム内における28度のウェル当たり40μlのHBSS内において1時間培養された。各アッセイにおいては、10μlの化合物溶液(5倍)の添加後2分を基準線として開始され、細胞反応が1時間連続で記録された。
【0245】
全ての調査は管理された温度(28度)において実施された。少なくとも2つの独立した実験が、各々少なくとも3つの複製物に対して行われた。アッセイの変動係数は10%未満であった。全ての用量依存性反応がグラフパッドプリズム5(GraphPad Prism 5)を用いた非線形回帰法によって分析された。
【0246】
d)Rbフラックスアッセイ
Rbフラックスアッセイは上記文献(Sun, H., et al, J. Biol. Chem. 2006, 281, 5877)に記載してあるようにHEK−hERG細胞を用いて実施された。つまり、96ウェルの組織培養処理プレート内においてウェル当たり50,000の細胞がアッセイ前に20時間プレート化された。翌日、細胞は、5mMのRbClを含む完全細胞培地を用いて、5%の二酸化炭素と共に37度で3時間培養された。その後、HBSS内で希釈された化合物(10倍)が細胞培地に添加され、細胞はさらに1時間、5%の二酸化炭素と共に37度で培養された。細胞はRb+のない細胞培地を用いて2回洗浄され、異なる濃度のKClを含むウェル当たり180μlの細胞培地を用いて厳密に10分間培養された。各ウェルにおける浮遊物は新しい96ウェルのプレートに直ちに移動された。細胞はHBSS内においてウェル当たり180μlの0.5%トリトン100に溶解した。各サンプルのRb濃度がICR8000(Aurora Biomed社製)によって判定された。
【0247】
e)細胞増殖アッセイ
CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(技術告示#288、プロメガ社、マディソン、WI)を用いて増殖が測定された。細胞が加えられると、アッセイ試薬は生存細胞からATPの存在下において発光する。細胞は、96ウェルCorning Costar TCT(組織培養処理)プレート内においてウェル当たり10,000細胞の密度にプレート化され、24時間培養された。試験サンプルはジメチルスルホキシド(DMSO)内において超音波処理によって可溶化され、ろ過殺菌され、培地を用いて所望の処理濃度まで溶解された。細胞は100μlのコントロール培地又は試験サンプルを用いて処理され、48時間の薬剤暴露期間において培養された。48時間経過後、プレートは室温にて30分間平衡化され、100μlのアッセイ試薬が各ウェルに加えられ、オービタルシェーカ(orbital shaker)上において2分間細胞の溶解が誘発された。プレートは室温にて10分間培養されて発光シグナルが安定化され、Perkin Elmer Vector 3 Microplate Reader上にてその結果が読み込まれた。背景の発光に対する値を得るために、全てのプレートは細胞のない培地を含むコントロールウェルを有していた。データは3つの副生物に対するものとして表された。
【0248】
f)IonWorksを用いた自動パッチクランプ記録
hERGチャネルを安定して発現するCHO−K1細胞(CHO−hERG)がT175フラスコ内において約70%の密集度まで培養された。細胞はPBSを用いて2回洗浄され、2.5mlの0.25%トリプシン/EDTAが2.5mlのPBSに混合され、T175フラスコへ加えられた。細胞は希釈されたトリプシン/EDTA溶液を用いて37度で2分間培養され、その後室温で約3分間連続して培養された。20mlの新鮮培地(fresh medium)が懸濁された細胞に加えられ、50mlのチューブに移動された。細胞は750rpmにおいて5分間遠心分離された。余分な培地は除去され、細胞は6mlの外部バッファ(137mMのNaCl、4mMのKCl、1.8mMのCaCl、1mMのMgCl、10mMのヘペス、10mMのグルコース、pH7.4)に懸濁された。その後細胞は450rpmにおいてさらに5分間遠心分離された。最後に、細胞は4mlの外部バッファに懸濁され、血球計算機(hemacytometer)を用いて細胞数がカウントされた。細胞懸濁液は外部バッファを用いてml当たり2.5x10細胞まで希釈された。4mlの再懸濁された細胞がIonWorks内の細胞リザボに加えられた。40mMのKCl、100mMのグルコン酸カリウム、3.2mMのMgCl、2mMのCaCl、5mMのヘペス、pH7.25(KOHを用いて調節されたもの)を含む内部溶液が使用された。200μlのDMSOストックからの5mgのアンフォテリシンBが65mlの内部溶液に加えられ、ウェルが混合され、パッチプレート上の細胞の内部への電気接続を得た。
【0249】
化合物は10mMのDMSOストックから準備され、外部バッファ内において希釈され、3倍の化合物溶液を作製した。ウェル当たり60μlの3倍化合物溶液は384ウェルのプレートの列A、B、C、及びDに移動された。hERGチャネル活性剤と報告されているPD11857(シグマアルドリッチ社)が活性剤ポジティブコントロールとして使用された(最終濃度は30μM及び50μM)。hERG遮断剤のドフェリチドは遮断剤ポジティブコントロールとして使用された(最終濃度は100nM)。IonWorks Quattro PatchPlate PPCプレート(Cat#9000-0902, モレキュラーデバイス社)の最終DMSO濃度は0.5%であった。最終化合物濃度は50μMであった。各化合物は1つのPPCプレートの4つのウェルに加えられた。
【0250】
hERG電流はIonWorks Quattro(モレキュラーデバイス社)に記録された。hERG電流を記録するために、細胞はまず−80mVにてクランプされ、次に+40mVにて5秒間脱分極され、チャネルが活性化された。−35mVへの回帰を確保している間のテール電流が測定された。データ分析はIonWorks Quttro(登録済み)システムソフトウェアのバージョン2.0.4.4を用いて行われた。ウェルからのデータの50MΩ未満のシール抵抗のもの又は0.1nA未満のhERGテール電流のものは除外された。hERGテール電流比率(後化合物/前化合物)が平均的なDMSOコントロールの平均値+2SD(標準偏差(standard deviation))よりも大きい場合に活性剤のヒットが選択された。hERGテール電流比率(後化合物/前化合物)が平均的なDMSOコントロールの平均値−2SD未満である場合に阻害剤のヒットが選択された。
【0251】
2.結果
ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(hERG)生成物は、心筋活動電位の再分極を調節する遅延整流性K+チャネルの急速成分(rapid component)における細孔を形成するサブユニットをコード化する。hERGは電位依存性イオンチャネルであり、かつ細胞の原形質膜においてカリウムイオンの移動を制御するのに関与する。hERGは非常に大きなイオンチャネルであるため、少なくとも多くの癌細胞において、大きなシグナル伝達錯体を形成する受容体チロシンキナーゼ及び/又はインテグリンを含むいくつかの他のシグナル伝達分子が共存し得る。hERGチャネルが細胞シグナル伝達に関与することを示す証拠が存在する。さらに、異なるメカニズムが介在しているが、最近発見されたいくつかのhERG活性剤は生理学的状態又はそれに近い状態のhERGチャネルの活性化を引き起こすことができる。無標識のRWGバイオセンサの細胞アッセイは、細胞に電位を付加することなく、当該活性化及びそれに続くhERGチャネルのシグナル伝達を直接アッセイするために開発された。さらに、hERGイオンチャネルを変調、特に活性化する化合物の能力を実証する方法が開発された。ここに開示されている、hERGイオンチャネルを介して直接作用する変調剤又はhERGに関するシグナル伝達錯体を介して間接的に作用する変調剤を特性化する方法は、無標識バイオセンサの細胞アッセイに関する。ここに開示されているのは、hERG変調剤を特性化するために、3つの細胞型、すなわち、内因的にhERGイオンチャネルを発現する癌細胞株、内因性hERGチャネルを含まない天然の細胞株、及び過剰にhERGチャネルを発現する人工の細胞株を使用することである。さらに、ここに開示されているのは、hERG変調剤の作用モードをさらに裏付ける読み出しとしてマロトキシン又他のhERG活性剤を使用することである。また、ここに開示されているのは、例えばRb+アッセイ、膜電位蛍光アッセイ、又はパッチクランプアッセイなどのイオンフラックスアッセイのようなさらなるアッセイを用いる方法である。
【0252】
内因的にhERGチャネルを発現する天然の細胞株は、白血病細胞株のHL60、胃癌細胞株のSGC7901及びMGC803、神経芽腫細胞株のSH−SY5Y、乳癌細胞株のMCF−7、並びにヒト大腸癌細胞のHT−29、HCT8、及びHCT116を含むが、これらに限定されない。hERGを含まない天然の細胞株は、ヒト胚性腎臓細胞株のHEK−293、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞株のCHO−K1を含むが、これらに限定されない。過剰にhERGを発現する人工の細胞株は、HEK−hERG及びCHO−hERG細胞を含むが、これらに限定されない。内因性hERGチャネルを有する一次細胞を含む心血管細胞又は神経細胞が使用されることもできる。
【0253】
hERG活性剤は、マロトキシン、RPR260243、NS1643、NS3623、PD−118057、PD−307243、及びA−935142を含むが、これらに限定されない。
【0254】
特定の手法において、化合物は、アゴニズムモード及びアンタゴニズムモードの両方において、3つの細胞型であるHT29細胞、HEK−hERG細胞、及びHEK−293細胞内においてプロファイル作製されることができる。ヒト大腸癌細胞株のHT−29は内因的にhERGチャネルを発現することが知られている。HEK293は内因的に発現されたhERGチャネルを含まない天然の細胞株であり、一方HEK−hERGは安定的に発現されたhERGチャネルを有する人工のHEK293細胞である。マロトキシンは無標識バイオセンサのhERG活性剤としても選択された。マロトキシンは生理的条件(すなわち1倍のHBSSのバッファ条件)又はそれに近い条件においてhERGチャネルを活性化するhERG活性剤である。
【0255】
図1及び図2に示されているように、化合物E及びDはHT29細胞及びHEK−hERG細胞においてはロバストなDMRシグナルを導出したが、HEK−293細胞においては導出しなかった。さらに、それぞれ、10マイクロモルの両化合物は、典型的なアンタゴニズムアッセイを用いると、HT29細胞及びHEK−hERG細胞におけるマロトキシン反応の減衰したシグナルを生じさせた。hERGチャネルの異なる発現レベル及びhERGチャネルシグナル伝達錯体の異なる組織の故に、HT29細胞及びHEK−hERG細胞におけるマロトキシンDMRシグナルの異なるhERG変調剤によって変調されたものは、大きく異なることが予想される。これら結果は化合物E及びDがhERG活性剤として機能することを示している。化合物P、M、Q、U、R、B、V、T、W、G、L、S、N、O、F、J、H、I、C、A、Kについても同様の結果が観測された(データは示されていない)。
【0256】
これら発見を裏付けるために、Rb+フラックスアッセイが使用されて両化合物を特性化した。図3に示されてるように、細胞が5mMのKClを含むバッファ溶液内に保管された場合、10μM又は50μMのマロトキシンはRbシグナル伝達の著しい同大を導出した。一方、既知のhERG遮断剤のドフェチリドは、HEK−hERG細胞におけるRbシグナルを抑制させた。さらに、化合物E及びD(10マイクロモル又は50マイクロモル)は、小さいが検出可能なRbフラックスの増大を導出した。これら結果は、化合物E及びDがhERGイオンフラックス活性剤として機能することを示している。
【0257】
HT29及びMCF7の両方を用いた細胞増殖アッセイは、化合物E、D、及びUの全てが細胞死又は細胞増殖率の変化を導出しない(図4、データは示されていない)ことを示した。
【0258】
同様の方法を用いて、非ステロイド系抗炎症薬剤のフルフェナム酸がhERG活性剤であることが分かった。10マイクロモルのフルフェナム酸は、HT−29細胞及びHEK−hERG細胞においてロバストなDMRシグナルを導出した(それぞれ、図5A及び図5B)が、HEK293細胞においては導出しなかった(図5C)。フルフェナム酸は、HT−29細胞においてマロトキシンDMRシグナルを選択的に減衰させたが、HEK−hERG細胞においては減衰させなかった(図5D)。両方のhERG発現細胞株におけるフルフェナム酸のDMRシグナルは対応するマロトキシンのDMRシグナルとは大きく異なるものであるが、これら結果はフルフェナム酸が弱いhERG活性剤として機能することを示している。Rbフラックスアッセイによる追跡調査が示したものは、HEK−hERGが5mMのKCl内においてアッセイされた場合にフルフェナム酸が確かにRbシグナルを小さくかつ用量依存的に増大させたということである(データは示されていない)。さらに、図5Eに示されているように、パッチクランプ記録は、フルフェナム酸がhERG電流活性剤であることを示唆している。曲線510はフルフェナム酸を加える前のhERG電流を示しており、曲線520はフルフェナム酸を加えた後のhERG電流を示している。図5E(b)に示されているテール電流はフルフェナム酸によって強化される。さらに、同様に、ニフルム酸は、無標識バイオセンサのhERG活性剤であり、hERG電流活性剤であり、かつhERG活性剤であることが分かった(データは示されていない)。しかし、ジフルニサルは無標識バイオセンサのhERG活性剤であり、hERG経路活性剤であるが、hERG電流活性剤ではないことが分かった(図6)。hERG電流を記録するために、細胞はまず−80mVにてクランプされ、次に+40mVにて5秒間脱分極され、チャネルが活性化された(図5Dの段階a)。−35mVへの回帰を確保している間のテール電流が2秒間測定された(図5Dの段階b)。最終保持電位は−70mVにおけるものであった(図5Dの段階c)。ニフルム酸がhERG活性剤であることは文献には報告されていなかった。
【0259】
興味深いことに、化合物Bは強力な無標識バイオセンサのhERG活性剤であることが分かり、これはHT−29細胞及びHEK−hERG細胞においてロバストなDMRシグナルであった(それぞれ、図7a及び図7b)が、HEK293細胞においてはそうでなかった(図7c)ことから明らかである。化合物Bは後続のマロトキシン刺激に対して両細胞を脱感作させた(図7d)。化合物Bは弱いhERG電流活性剤でもあり、これはCHO−hERG細胞内のhERGチャネルのテール電流(段階b)を強化した(図7E)ことから明らかである。化合物Wは化合部Bに類似したプロファイルを導出した(データは示されていない)。
【0260】
一方、化合物A、C、D、F、H、I、J、及びUは無標識バイオセンサのhERG活性剤であることが分かったが、これら化合物はCHO−hERG細胞内においてhERG電流にわずかな影響を与え、これは自動パッチクランプを用いて記録された(図8)。これら結果が示唆することが、これら化合物が、無標識バイオセンサのhERG活性剤及びhERG経路活性剤として機能し、非常に弱いhERGイオンチャネル活性剤として機能するか又はhERGイオンチャネル活性剤としては機能しないということである。化合物E、G、K、L、M、N、O、P、Q、S、T、及びVは自動パッチクランプ法を用いては試験されなかった。
【0261】
コントロールとして、従来のhERG遮断剤である100nMのドフェチリドは、CHO−hERG細胞内においてhERGチャネルのテール電流を完全に阻害した(図9)。
【0262】
III.配列
hERGタンパク質の配列はSEQ ID NO: NP_000229に開示されている。hERG遺伝子の配列はSEQ ID NO: NM_000238に開示されている。
【0263】
参考文献
米国出願第12/623,693号(発明者:Fang, Y., Ferrie, A.M., Lahiri, J., and Tran, E、発明の名称「Methods for Characterizing Molecules」、出願日2009年11月23日)
米国出願第12/623,708号(発明者:Fang, Y., Ferrie, A.M., Lahiri, J., and Tran, E、発明の名称「Methods of creating an index」、出願日2009年11月23日)
米国特許第6393190B1号(発明者:He, M., Leslie, T.M、発明の名称「Chromophores for polymeric thin films and optical waveguides and devices comprising the same」)
Cavalli, A.; Poluzzi, E.; De Ponti, F.; Recanatini, M., Toward a pharmacophore for drugs inducing the ling QT syndrome: insights from a CoMFA study of hERG K(+) channel blockers. J Med Chem 2002, 45, (18), 3844-53
Bridgland-Taylor, M. H.; Hargreaves, A. C; Easter, A.; Orme, A.; Henthorn, D. C; Ding, M.; Davis, A.; Small, B. G.; Heapy, C. G.; Abi-Gerges, N.; Persson, F.; Jacobson, L; Sullivan, M.; Albertson, N.; Hammond, T. G.; Sullivan, E.; Valentin, J. P.; Pollard, C. E., Oprimisation and validation of a medium-throughput electrophysiology-based hERG assay using IonWorks HT. J Pharmacol Toxicol Methods 2006, 54, (2), 189-99
Dubin, A. E.; Nasser, N.; Rohrbacher, J.; Hermans, A. N.; Marrannes, R.; Grantham, C; Van Rossem, K.; Cik, M.; Chaplan, S. R.; Gallacher, D.; Xu, J.; Guia, A.; Byrne, N. G.; Mathes, C, Identifying modulators of hERG channel activity using the PatchXpress planar patch clamp. J Biomol Screen 2005, 10, (2), 168-81
Warmke J. W.等. (A family of potassium channel genes related to eag in Drosophila and mammals. PNAS. 1994. 91 (8):3438-3442 incorporated by reference


【特許請求の範囲】
【請求項1】
hERGイオンチャネルを変調する方法であって、
化学式1を有する1つ以上の化合物を投与するステップを含み、
【化1】

前記化学式1において、Xは酸素又は硫黄であり、
、RおよびRは、それぞれシアン又は電子吸引基であり、
は、水素、C−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、電子的供与−架橋−受容構造、供与−受容構造若しくは架橋−受容構造、又は化学式2を有する完全共役発色団であり、
【化2】

前記化学式2において、nは1−6であり、
は、水素又はC−Cアルキルであり、
は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式3であり、
【化3】

前記化学式3において、mは0−1であり、
は水素又はC−Cアルキルであり、
及びRは、任意に環化されて4−8メンバの環を形成するものであり、
13及びR14は、それぞれ水素又はC−Cアルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
15及びR16は、それぞれ水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシであり、
17は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
23は、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアルキルアニリノ、1−ピペリジノ、1−ピペラジノ、1−ピロリジノ、アシルアミノ、水酸基、チオロ、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アルキル、ビニル、又は1、2、3、4−テトラヒドロキノリニルであり、
10は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式4であり、
【化4】

前記化学式4において、oは0−6であり、
11は、水素又はC−Cアルキルであり、
及びR11は、任意に環化されて4−8メンバの環を形成するものであり、
12は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式5であり、
【化5】

前記化学式5において、Rは、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フェニル、アルキルアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、シクロヘキシル、nが1−10の−(CH)n−O−(CH)n、又は化学式6であり、
【化6】

前記化学式6において、R18、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ水素、ハロゲン、塩素、フッ素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、C−Cシクロアルキルであり、
は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フェニル、アルキルアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、シクロヘキシル、nが1−10の−(CH)n−O−(CH)n、又は化学式7であり、
【化7】

前記化学式7において、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ水素、ハロゲン、塩素、フッ素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、C−Cシクロアルキルであり、
およびRは、任意に環化されるものであり、
前記化合物はhERG変調剤であることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物は化学式8を有しており、
【化8】

前記化学式8において、Rは、水素、C−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、電子的供与−架橋−受容構造、供与−受容構造若しくは架橋−受容構造、又は化学式9を有する完全共役発色団であり、
【化9】

前記化学式9において、nは1−6であり、
は、水素又はC−Cアルキルであり、
は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式10であり、
【化10】

前記化学式10において、mは0−1であり、
は水素又はC−Cアルキルであり、
及びRは、任意に環化されて4−8メンバの環を形成するものであり、
13及びR14は、それぞれ水素、C−Cアルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
15及びR16は、それぞれ水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシであり、
17は水素、C−Cアルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
23は、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアルキルアニリノ、1−ピペリジノ、1−ピペラジノ、1−ピロリジノ、アシルアミノ、水酸基、チオロ、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アルキル、ビニル、又は1、2、3、4−テトラヒドロキノリニルであり、
10は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式11であり、
【化11】

前記化学式11において、oは0−6であり、
11は水素又はC−Cアルキルであり、
及びR11は、任意に環化されて4−8メンバの環を形成するものであり、
12は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式12であり、
【化12】

前記化学式12において、Rは、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フェニル、アルキルアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、シクロヘキシル、nが1−10の−(CH)n−O−(CH)n、又は化学式13であり、
【化13】

前記化学式13において、R18、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ水素、ハロゲン、塩素、フッ素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、C−Cシクロアルキルであり、
は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フェニル、アルキルアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、シクロヘキシル、nが1−10の−(CH)n−O−(CH)n、又は化学式14であり、
【化14】

前記化学式14において、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ水素、ハロゲン、塩素、フッ素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、C−Cシクロアルキルであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、Rが化学式15であることを特徴とする方法。
【化15】

【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物は化学式16を有しており、
【化16】

前記化学式16において、R18、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ水素、ハロゲン、塩素、フッ素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、又はC−Cシクロアルキルであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物は化学式17を有しており、
【化17】

前記化学式17において、Rは、水素、C−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、電子的供与−架橋−受容構造、供与−受容構造若しくは架橋−受容構造、又は化学式18を有する完全共役発色団であり、
【化18】

前記化学式18において、nは1−6であり、
は水素又はC−Cアルキルであり、
は、H、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式19であり、
【化19】

前記化学式19において、mは0−1であり、
は水素又はC−Cアルキルであり、
及びRは、任意に環化されて4−8メンバの環を形成するものであり、
13及びR14は、それぞれ水素、C−Cアルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
15及びR16は、それぞれ水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシであり、
17は水素、C−Cアルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
23は、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアルキルアニリノ、1−ピペリジノ、1−ピペラジノ、1−ピロリジノ、アシルアミノ、水酸基、チオロ、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アルキル、ビニル、又は1、2、3、4−テトラヒドロキノリニルであり、
10は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式20であり、
【化20】

前記化学式20において、oは0−6であり、
11は水素又はC−Cアルキルであり、
およびR11は、任意に環化されて4−8メンバの環を形成するものであり、
12は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、又は化学式21であり、
【化21】

前記化学式21において、Rは、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フェニル、アルキルアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、シクロヘキシル、nが1−10の−(CH)n−O−(CH)n、又は化学式22であり、
【化22】

前記化学式22において、R18、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ水素、ハロゲン、塩素、フッ素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、C−Cシクロアルキルであり、
は、水素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フェニル、アルキルアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、シクロヘキシル、nが1−10の−(CH)n−O−(CH)n、又は化学式23であり、
【化23】

前記化学式23において、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ水素、ハロゲン、塩素、フッ素、C−Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、C−Cシクロアルキルであることを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、R4が化学式24であることを特徴とする方法。
【化24】

【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物が化学式25−28に記載されたものから選択されることを特徴とする方法。
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、客体に投与される前記化合物はhERG変調剤であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記hERG変調剤はhERG活性剤であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記客体は疾病を治療又は予防するためにhERG活性剤を必要としていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記疾病は薬剤誘発性の後天性LQTSであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、
前記hERG活性剤は、薬剤の安全性プロファイルを改善するために、hERG遮断剤としての副作用を有する薬剤と共に投与されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法であって、前記hERG変調剤はhERG経路遮断剤であり、前記客体は疾病を治療又は予防するためにhERG経路遮断剤を必要としていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記疾病は、白血病、大腸癌、胃癌、乳癌又は肺癌であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、疾病の存在をアッセイするステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載された客体の疾病が治療されていることをアッセイすることを含む疾病の存在をアッセイする方法。
【請求項17】
hERG変調剤を用いてhERGイオンチャネルを含む細胞を培養するステップを含むhERGイオンチャネルを変調する方法であって、前記変調剤は、hERG経路活性剤であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、前記hERG経路活性剤は化合物E、P、M、D、Q、U、R、V、T、G、L、S、N、O、F、J、H、I、C、A、K、又はジフルニサルの中から選択された化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
hERG変調剤を用いてhERGイオンチャネルを含む細胞を培養するステップを含むhERGイオンチャネルを変調する方法であって、前記変調剤は、hERGイオンチャネル活性剤であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記hERGイオンチャネル活性剤は化合物B、W、フルフェナム酸、又はニフルム酸の中から選択された化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
hERG変調剤をアッセイする方法であって、
a.hERGを発現する少なくとも1つの細胞型を用いてラベルフリーバイオセンサのhERG活性剤を培養するステップと、
b.ラベルフリーバイオセンサアッセイによって前記細胞型の各々におけるhERG活性剤の効果を分析するステップと、
c.少なくとも1つの異なる細胞型を用いてhERG活性剤及び試験化合物を培養するステップと、
d.ラベルフリーバイオセンサアッセイによって前記細胞型におけるhERG活活性剤よび試験化合物の効果を分析するステップと、
e.bの効果とdの効果とを比較するステップと、
f.前記試験化合物がhERG変調剤であるかどうかを判定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
hERG変調剤をアッセイする方法であって、
a.hERGを発現する天然の細胞、hERGを発現しない天然の細胞、及びその人工の細胞を含む少なくとも3つの細胞型を用いてラベルフリーバイオセンサのhERG活性剤を培養するステップと、
b.ラベルフリーバイオセンサアッセイによって前記細胞型の各々におけるhERG活性剤の効果を分析するステップと、
c.少なくとも3つの異なる細胞型を用いてhERG活性剤及び試験化合物を培養するステップと、
d.ラベルフリーバイオセンサアッセイによって前記細胞型におけるhERG活活性剤よび試験化合物の効果を分析するステップと、
e.bの効果とdの効果とを比較するステップと、
f.前記試験化合物がhERG変調剤であるかどうかを判定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
hERGチャネル関連疾病の治療のための治療効能を最適化する方法であって、
前記hERGチャネル関連疾病を有する対象に対してhERG変調剤を提供する薬剤を投与するステップと、
前記hERGチャネル関連疾病を有する前記対象におけるhERGチャネル関連疾病に対するマーカのレベルを判定するステップと、を含み、
前記hERGチャネル関連疾病に対するマーカのレベルがその後投与するhERG変調剤の量に影響を与えることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記マーカは血液マーカ又は尿素マーカを含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記マーカのレベルが前の時点でのマーカのレベル未満であることは、その後前記対象に投与される前記薬剤の量を増加する必要がなく、前記対象にその後投与されるhERG変調剤の量は同じままであるか又は前の投与量に対して増加されることを示していることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、前記hERGチャネル関連疾病は、クラスIII不整脈、薬剤誘発性の後天性QT延長症候群、遺伝性QT延長症候群、白血病、大腸癌、胃癌、乳癌、又は肺癌からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、前記hERGチャネル関連疾病に対する前記マーカのレベルは、血液サンプル内において判定されることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、前記レベルは、質量分析、高圧液体クロマトグラフィ、抗体ベースのアッセイなどの分析方法を使用して判定されることを特徴とする請求項23記載の方法。ことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法であって、前記マーカは毒性マーカであることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法であって、前記毒性マーカは肝臓酵素又は血液酵素のレベルを測定することを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−516410(P2013−516410A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547111(P2012−547111)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060655
【国際公開番号】WO2011/081970
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】