説明

p53モルホリノに基づくアンチセンス

【課題】哺乳類の被験体におけるp53の誘導によって特徴づけられる疾患状態を処置するための方法および組成物を提供すること。
【解決手段】増殖性細胞障害(例えば、癌、または脳卒中のような虚血性の発作によって誘導される低酸素状態)のような、p53誘導によって特徴づけられる疾患状態を処置するのに有用な、アンチセンスオリゴヌクレオチドが記載される。このアンチセンス薬剤は、好ましくは、「立体的遮断剤」型オリゴヌクレオチドとして知られるクラスのものであり、このクラスとしては、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、2’−O−アリルもしくは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチド、またはN3’→P5’ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、p53の誘導により特徴づけられる疾患状態の処置のためのアンチセンス薬剤および方法に関する。このような状態としては、増殖性の細胞障害(例えば、癌)、再狭窄、および乾癬、ならびに脳卒中のような虚血性の発作により誘導される低酸素状態が挙げられる。
【0002】
(参考文献)
【0003】
【表1】

【0004】

【背景技術】
【0005】
(発明の背景)
細胞増殖におけるp53の重要性は、すべてのヒト癌の半分以上がp53変異を提示するという知見から明白である(Levine、1997)。p53発現における誘導は、DNAアルキル化剤、一酸化窒素(Messmer、1994)、電離放射線および紫外線照射(ionizing and ultraviolet irradiation)(LuおよびLane、1993)、染色体損傷を誘導する制限酵素PvuII(LuおよびLane、1993)、ならびにDNA鎖切断を誘導する能力のある他の因子(NelsonおよびKastan、1994)に曝される細胞において観察される。虚血/再灌流(Raafat、1997)、てんかんのモデル(Xiang、1996)、および低酸素血症(Graeber、1994)もまた、p53の誘導を示している。本明細書および以前の研究(Rininger、1997)において示されるように、p53タンパク質レベルもまた、部分肝切除後の肝再生の過程の間に高度に上方制御され、これは、内因性起源の損傷もまた、インビボでp53の誘導を引き起こし得ることを示している。
【0006】
p53の役割は、細胞周期チェックポイント活性、アポトーシス、分化およびDNA修復において想定されている(Magnelli、1997)。細胞周期チェックポイントは、2つの重要な機能に役立っている。1つは、細胞周期における必須な事象が、引き続く現象の前に完了されることを保証することであり;もう1つは、DNA複製および有糸分裂が生じる前に、損傷を受けたDNAの修復のために、より多くの時間を提供することである(Hartwell、1994)。このp53のチェックポイント活性は、細胞周期のS期(DNA合成)に入る細胞のレベルにおいて、主に生じる(Kastan、1992)。G2−Mチェックポイント活性もまた、p21waf-1の上流の調節因子としての役割のために、p53について報告されている。いずれか一方のタンパク質の非存在において、DNA損傷細胞は、G2様状態において阻止されるが、次いで、正常な有糸分裂(M期)を介さずにさらなるS期を起こし、例えば、倍数性といった核の異常を引き起こし、そしてアポトーシスに達する(Waldman、1996)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、一つの局面において、哺乳類の被験体におけるp53の誘導によって特徴づけられる疾患状態を処置するための方法および組成物を提供する。この方法は、適切な薬学的キャリアにおいて、塩基配列配列番号1(5’−TCA GTC TGA GTC AGG CCC−3として同定される)または塩基配列配列番号2(5’−CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC−3’として同定される)を有する薬学的に有効な量のアンチセンス薬剤を、被験体へ投与する工程を包含する。ここで、このアンチセンス薬剤は、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、2’−O−アリルもしくは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチド、N3’→P5’ホスホロアミデート(phosphoramidate)オリゴヌクレオチド、またはC−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである。好ましい実施形態において、このアンチセンス薬剤は、モルホリノオリゴヌクレオチド(好ましくは、ホスホロジアミデート(phosphorodiamidate)骨格結合によって結合したモルホリノサブユニットを有する)である。別の好ましい実施形態において、このアンチセンス薬剤は、C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである。
【0008】
本発明はまた、このような疾患状態の処置における使用のための組成物を含む。これらの組成物は、適切な薬学的キャリアにおいて、上記のようなアンチセンス薬剤を含む。
【0009】
方法の好ましい適用において、被験体は、ヒト被験体である。この疾患状態は、器官移植の発作(stroke)または余波のような、虚血性または虚血/再灌流障害に起因するものであり得る。あるいは、この疾患状態は癌であり得、この場合に、好ましい実施形態は、細胞レベルでラジカル酸素種を増加させるのに有効な因子を投与する工程をさらに包含する。このような因子としては、細胞レベルでラジカル酸素種を増加させる、放射線増感剤(radiosensitizing agents)、電離放射線、高圧酸素環境および化学療法剤(例えば、特定のアントラサイクリンまたはアントラキノン)が挙げられる。
【0010】
癌の処置について、この方法はまた、細胞周期のG2期からM期への進行を妨げるのに有効な薬剤を投与する工程を包含し得る。このような薬剤としては、ホスホキナーゼC(PKC)インヒビター、ビス(クロロエチル)ニトロソ尿素(BCNU)、ペントキシフィリン、シリマリン(silymarin)、スタウロスポリン、フェニルアヒスチン(phenylahistin)、パクリタキセル、レチノイン酸、フラボピリドール(flavopiridol)、メチル−2,5−ジヒドロシンナマート、ハーボキシジエン(herboxidiene)、9−ニトロカンプトセシン、マイトトキシン、アピゲニン、ノコダゾール(nocodazole)およびコルセミドが挙げられる。
【0011】
別の局面においては、本発明は、配列番号1(5’−TCA GTC TGA
GTC AGG CCC−3’として同定される)および配列番号2(5’−CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC−3’として同定される)からなる群から選択される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを提供する。ここで、このオリゴヌクレオチドは、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、2’−O−アリルまたは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチドおよびN3’→P5’ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。1つの実施形態において、このオリゴヌクレオチドは、モルホリノオリゴヌクレオチド(好ましくは、ホスホロジアミデート骨格結合によって結合したモルホリノサブユニットを含有する)である。本発明はまた、配列番号1(5’−TCA GTC TGA GTC AGG CCC−3’として同定される)および配列番号2(5’−CCC TGC TCC CCC CTG GCT
CC−3’として同定される)からなる群から選択される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドも提供し、ここで、このオリゴヌクレオチドは、C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである。
【0012】
本発明のこれらおよび他の目的ならびに特徴は、添付の図面と組み合わせて、本発明の以下の詳細な説明を読めば、より十分に明白になる。
【0013】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 哺乳動物被験体においてp53誘導によって特徴づけられる疾患状態を処置する方法であって、適切な薬学的キャリアにおいて、5’−TCA GTC TGA GTC AGG CCC−3’として同定される配列番号1の塩基配列および5’−CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC−3’として同定される配列番号2の塩基配列を有する、薬学的に有効量のアンチセンス薬剤を該被験体に投与する工程を包含し、
該アンチセンス薬剤が、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、2’−O−アリルもしくは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチド、N3’→P5’ホスホロアミデートオリゴヌクレオチド、またはC−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである、方法。
(項目2) 前記アンチセンス薬剤がモルホリノオリゴヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記モルホリノオリゴヌクレオチドが、ホスホロジアミデート骨格結合によって結合されるモルホリノサブユニットを含む、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記オリゴヌクレオチドが、C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
(項目5) 前記アンチセンス薬剤が前記配列番号1の配列を有する、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記アンチセンス薬剤が前記配列番号2の配列を有する、項目1に記載の方法。
(項目7) 前記被験体がヒト被験体である、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記疾患状態が癌である、項目1に記載の方法。
(項目9) 前記被験体を、細胞レベルでラジカル酸素種を増加させるのに有効な因子で処置する工程をさらに包含する、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記因子が、細胞レベルでラジカル酸素種を増加させる、放射線増感剤、電離放射線、高圧酸素環境および化学療法剤から選択される、項目9に記載の方法。
(項目11) 前記化学療法剤が、アントラサイクリンまたはアントラキノンである、項目10に記載の方法。
(項目12) 前記被験体を、細胞周期のG2期からM期への進行を妨げるのに有効な薬剤で処置する工程をさらに包含する、項目8に記載の方法。
(項目13) 前記薬剤が、ホスホキナーゼC(PKC)インヒビター、ビス(クロロエチル)ニトロソ尿素(BCNU)、ペントキシフィリン、シリマリン、スタウロスポリン、フェニルアヒスチン、パクリタキセル、レチノイン酸、フラボピリドール、メチル−2,5−ジヒドロシンナマート、ハーボキシジエン、9−ニトロカンプトセシン、マイトトキシン、アピゲニン、ノコダゾールおよびコルセミドからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記疾患状態が、虚血または虚血/再灌流障害から生じる、項目1に記載の方法。
(項目15) 被験体においてp53誘導によって特徴づけられる疾患状態の処置における使用のための組成物であって、以下:
5’−TCA GTC TGA GTC AGG CCC−3’として同定される配列番号1および5’−CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC−3’として同定される配列番号2からなる群から選択される塩基配列を有する、アンチセンス薬剤であって、
該アンチセンス薬剤が、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、2’−O−アリルもしくは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチド、N3’→P5’ホスホロアミデートオリゴヌクレオチド、またはC−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである、アンチセンス薬剤、および
適切な薬学的キャリア
を含む、組成物。
(項目16) 前記アンチセンス薬剤がモルホリノオリゴヌクレオチドである、項目15に記載の組成物。
(項目17) 前記モルホリノオリゴヌクレオチドが、ホスホロジアミデート骨格結合によって結合されるモルホリノサブユニットを含む、項目16に記載の組成物。
(項目18) 前記オリゴヌクレオチドが、C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである、項目15に記載の組成物。
(項目19) 前記アンチセンス薬剤が前記配列番号1の配列を有する、項目15に記載の組成物。
(項目20) 前記アンチセンス薬剤が前記配列番号2の配列を有する、項目15に記載の組成物。
(項目21) 5’−TCA GTC TGA GTC AGG CCC−3’として同定される配列番号1および5’−CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC−3’として同定される配列番号2からなる群から選択される塩基配列を有する、オリゴヌクレオチドであって
該オリゴヌクレオチドが、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、2’−O−アリルもしくは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチド、およびN3’→P5’ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、オリゴヌクレオチド。
(項目22) 配列番号1の塩基配列を有する、項目21に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目23) 配列番号2の塩基配列を有する、項目21に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目24) 前記オリゴヌクレオチドがモルホリノオリゴヌクレオチドである、項目23に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目25) ホスホロジアミデート骨格結合によって結合されるモルホリノサブユニットを含む、項目24に記載のモルホリノオリゴヌクレオチド。
(項目26) 前記オリゴヌクレオチドがモルホリノオリゴヌクレオチドである、項目23に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目27) ホスホロジアミデート骨格結合によって結合されるモルホリノサブユニットを含む、項目26に記載のモルホリノオリゴヌクレオチド。
(項目28) 5’−TCA GTC TGA GTC AGG CCC−3’として同定される配列番号1および5’−CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC−3’として同定される配列番号2からなる群から選択される塩基配列を有する、オリゴヌクレオチドであって、
該オリゴヌクレオチドが、C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチドである、オリゴヌクレオチド。
(項目29) 配列番号1の塩基配列を有する、項目28に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目30) 配列番号2の塩基配列を有する、項目28に記載のオリゴヌクレオチド。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、ホスホロジアミデート連結モルホリノオリゴヌクレオチドアナログの構造を示す。
【図2】図2は、ラットにおける残留再生肝臓の湿重量(グラム)、24時間後の部分肝切除ならびに以下のアンチセンスオリゴヌクレオチド(それぞれ配列番号1および2を有する)の投与を示す:ホスホロチオエート(S−ODN、1mg/200g);C−5−P改変ホスホロチオエート(C−5−P、0.1mg/200g);および中性骨格(ホスホロジアミデート)モルホリノオリゴヌクレオチド(3.4mg/200g)。エラーバーは、各々それぞれの群の生理食塩水処置コントロールに関しては、p<0.05の統計差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
(I. 定義)
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「アンチセンス薬剤」は、標的核酸配列において、対応する、近接した塩基との水素結合に有効な骨格によって支持されたプリンおよびピリミジン複素環式塩基の配列を包含する分子をいう。この骨格は、このような水素結合化を可能にする位置で、プリンおよびピリミジン複素環式塩基を支持するサブユニット骨格部分から構成される。これらの骨格部分は、1〜3原子長の亜リン酸含有結合により互いに連結される、長さにおいて5〜7原子の環状部分である。
【0016】
「モルホリノ」オリゴヌクレオチドは、図1に示される形態のモルホリノサブユニット構造から構成され、ここで、(i)この構造は、1〜3原子長の亜リン酸含有結合により互いに連結し、1つのサブユニットのモルホリノ窒素が、隣接するサブユニットの5’環外炭素に結合し、そして(ii)Bは、塩基特異的水素結合化による、ポリヌクレオチドにおける塩基への結合に有効なプリンまたはピリミジン塩基対合部分である。図1は、ホスホロジアミデート結合により結合した、2つのこのようなサブユニットを図示する。
【0017】
「N3’→P5’ホスホロアミデート」オリゴヌクレオチドは、例えば、GryaznovらおよびChenらによって記載される通り、2’−デオキシリボースの3’−酸素が、3’−アミンに置換されるものである。
【0018】
「2’−O−アリル(またはアルキル)改変オリゴヌクレオチド」は、2’−ヒドロキシルが、アリルまたはアルキルエーテルに変換されたオリゴリボヌクレオチドである。このアルキルエーテルは、代表的には、メチルエーテルである。
【0019】
「C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチド」は、チミジン塩基のC−5メチル基および/またはシチジン塩基のC−5水素がプロピン基で置換されているオリゴヌクレオチドである。
【0020】
「ペプチド核酸」において、オリゴヌクレオチド骨格のデオキシリボースリン酸ユニットは、ポリアミド結合で置換される。例えば、NielsenらおよびHanveyらに記載される通り、適切な骨格間隔が、2−アミノエチルグリシンユニットの使用によって獲得され、ヌクレオチド塩基が、メチレンカルボニル基を介して各々の2−アミノ基に付着される。
【0021】
「RNAse−不活化」オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドアナログは、RNAse−活性オリゴヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート)と異なり、RNase−非依存性メカニズムを介して作用するものである。これらは、標的RNA形成、核原形質輸送または翻訳の立体的遮断によって機能すると考えられ、従って、また「立体的遮断剤」とも呼ばれる。このクラスは、例えば、メチルホスホネート、モルホリノオリゴヌクレオチド(本明細書に記載の通り)、ペプチド核酸(PNA)、2’−O−アリルまたは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチドおよびN3’→P5’ホスホロアミデートを包含する。
【0022】
「p53の誘導により特徴づけられる」状態とは、罹患された細胞におけるp53タンパク質のレベルまたは発現が、非疾患状態に比例して増加する疾患状態、および/またはp53発現の抑制(時々他の処置と組み合わせて)が、有益な治療効果を有する状態である。例としては、癌、脳卒中から生じるような虚血、心筋梗塞またはてんかん発作、およびその結果の低酸素状態、ならびに器官移植において起こり得るような虚血/再灌流障害である。
略語:
ON=オリゴヌクレオチド
ODN=オリゴデオキシリボヌクレオチド
S−ODN=ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
C−5−P=C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチド。
【0023】
(II. アンチセンスオリゴヌクレオチド)
(A. 配列)
本発明のアンチセンス薬剤は、標的RNA配列と共に、ハイブリダイゼーションのためのヌクレオチド塩基を示すヌクレオチド間の(internucleotide)骨格結合によって結合される、ヌクレオチドサブユニットを包含する。これらの薬剤の塩基配列は、p53 mRNAの一部分に相補的(アンチセンス)である。配列番号1に対応する第一の配列は、ラットp53 mRNAの特有の一部分(残基1182〜1199;Genbank登録# X13058)と相補的であり、そして、本明細書において「p53T」と呼ばれる。この配列は、ラット、マウス、サルおよびヒトのmRNAにおいて同じであり、従って、理想的に、動物モデルにおけるインビボでの試験に適する。
【0024】
「OL(1)p53」と命名され、かつ配列番号2に対応する第二の配列は、ヒトp53に対するアンチセンスであり、従って、ヒトにおいてp53発現の阻害に有効である(Iverson、米国特許第5,641,754号)。これは、このラット配列との4つのミスマッチを有するため、ラットにおいてこのような発現を変化させず、従って、ラットモデル研究において有用なコントロールを提供する。
【0025】
(B. オリゴヌクレオチドの構造)
当該分野において公知の種々のオリゴヌクレオチドアナログは、安定性、著しいヌクレアーゼ耐性、非特異的結合の減少およびバイオアベイラビリティー(すなわち、細胞を利用する機会)のような領域において、「天然の」ポリヌクレオチドを超える利点を示す。この構造は、骨格、糖部分または塩基それ自体で改変され得る。このようなアナログとしては、例えば、ホスホロチオエート(本明細書において、S−ODNと示される)、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、C−5−プロピンピリミジン改変オリゴヌクレオチド(C−5−P)、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、2’−O−アリルまたは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチドおよびN3’→P5’ホスホロアミデートが挙げられる。
【0026】
このようなアンチセンス薬剤の調製は、当該分野において周知であり、そして、しばしば簡便に、自動化合成機上で行われ得る。S−ODN、C−5−Pおよび非荷電のモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドの合成のための一般的な手順を、実施例1に示す。
【0027】
2つの一般的なメカニズムが、アンチセンスオリゴヌクレオチドによる発現の阻害を説明するために、提唱されている(例えば、Agrawal;Bonham;Boudvillain;およびその中で引用される参考文献を参照のこと)。第一に、オリゴヌクレオチドとmRNAとの間に形成されるヘテロ二重鎖が、RNaseHの基質として働き、mRNAの切断を導く。このクラスに属するかまたは属すると提唱されているオリゴヌクレオチドとしては、ホスホロチオエート、ホスホトリエステルおよびホスホジエステル(すなわち、非改変「天然」オリゴヌクレオチド)が挙げられる。このような化合物は、一般的には、高い活性を示し、そして、ホスホロチオエートは、アンチセンスの適用において、現在最も広く利用されるオリゴヌクレオチドである。しかしながら、これらの化合物は、細胞性タンパク質への非特異的な結合(Gee)、ならびに非標的RNAヘテロ二重鎖の不適切なRNase切断(Giles)に起因して、望まれない副作用を生じる傾向がある。
【0028】
「立体的遮断剤」または、あるいは、「RNase不活化」もしくは「RNase耐性」と呼ばれるオリゴヌクレオチドアナログの第二のクラスは、RNaseHの活性化が観察されず、そして、標的RNA形成、核原形質輸送または翻訳の立体的遮断によって作用すると考えられる。このクラスとしては、メチルホスホネート(Toulme)ならびにモルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、2’−O−アリルまたは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチド(Bonham)およびN3’→P5’ホスホロアミデート(Gee)が挙げられる。これらは、AUG開始コドン、5’−スプライス部位またはmRNAの5’−非翻訳領域で標的される場合、最も有効であると報告されている。今日まで、これらは、コード領域で下流に標的される場合、比較的弱い活性(Bonham)またはよりしばしば、活性がないことが示された(例えば、メチルホスホネートに関して、Toulme;PNAに関して、Gambacorti;二重鎖形成化PNAに関して、Knudsen;ならびにPNAおよびN3’→P5’ホスホロアミデートに関して、Geeを参照のこと)。これらのONによって形成されたハイブリッドは、コード領域に指向される場合、翻訳の間のリボソーム複合体の巻き戻し作用による置換を回避するのに十分に安定ではないことが提唱されている(Boudvillain、Gee)。この問題に取り組むための1つのアプローチは、ONの、その標的配列への共有結合的連結または挿入であった(Gee、Johansson)。しかしながら、このような改変がなければ、ONの立体的遮断の活性は、一般的には、上記の開始領域に限定されている。
【0029】
(III. 増殖性細胞におけるp53の誘導およびアンチセンスp53による抑制)
以前に報告された研究(Arora、1998)において、上記のアンチセンス薬剤p53TおよびON(1)p53を、図2に記載の通り、部分肝切除手術の直後に、ラットに投与した。この再生ラット肝臓は、天然の組織環境における増殖制御および細胞増殖のメカニズムを研究するのに良好なインビボモデル系である。再生肝臓において急速に増殖する細胞は、発癌に対して非常に感受性である。それは、DNA修復のための細胞周期の間に利用可能な時間が最小であるためである(Grisham、1983)。上記の通り、ON(1)p53は、ラットにおいてp53発現を変化させず、そして、コントロールとして用いられた。
【0030】
大量のp53の誘導が、PH(肝切除後)ラットにおいて、再生のプロセスの間に観察された。アンチセンスON投与の以下の効果を、測定した:再生肝臓の重量増加;p53、PCNA、p21およびNADPHのレベル;単離された細胞のDNA含量;ミクロソームのタンパク質含量;種々のミクロソームの酵素アッセイ;脂質過酸化により明白に示されたような酸化ストレス;および有糸分裂指数。
【0031】
アンチセンスp53T(配列番号1)で処置した場合、肝臓は、重量増加における増大(コントロールと比較して)、有糸分裂指数およびPCNA発現(これは、細胞増殖の正確なマーカーである)(Assy、1998)、ならびにG1細胞集団における5倍の減少によって明白に示されるように、そのG1−S細胞周期チェックポイント活性を失った。このp53Tで処置したPHラット肝臓はまた、より多数の多核細胞を示した。酵素アッセイによって決定されるように、再生肝臓の機能的回復もまた、p53阻害によって増加した。
【0032】
要約すれば、このデータは、p53発現が、アンチセンスp53T(配列番号1)で処置した肝切除後のラットの再生肝臓において阻害されること、ならびに、この阻害が、高められた有糸分裂、高められたPCNA発現および細胞周期のG1期における減少した細胞数を生じることを示した。この結果は、p53のG1−S細胞周期チェックポイント活性と合致する。
【0033】
(IV. S−ODN、C−5−Pおよびモルホリノアンチセンス薬剤の比較効果)
配列番号1および配列番号2として与えられる塩基配列を有する中性骨格モルホリノアンチセンス薬剤を、実施例1に記載される通りに調製した。このようなモルホリノオリゴマーは、RNA標的に対して高い結合親和性を示し、そして、ホスホロチオエートのような荷電したアナログに関連して、非荷電骨格は細胞への取り込みを助け、そして、非特異的結合相互作用を減少させる。対応するC−5−プロピンシトシン改変(C−5−P)ホスホロチオエートもまた、調製される。上記で議論した通り、このモルホリノアナログは、「立体的遮断剤」として作用すると考えられる。C−5−Pホスホロチオエートは、RNase−H依存メカニズムによって作用すると報告され(Wagner)、これは、一般に、ホスホロチオエートによるものである。
【0034】
これらのアンチセンス薬剤の腹腔内投与の効果を、第III節および実施例2に記載される通り、PH24時間後の残留再生肝臓の湿重量増加に関して、非改変ホスホロチオエート(S−ODN)の効果と比較した。図2に示されるデータは、p53T配列が、肝臓再生モデルにおいて、試験される代替のアナログの両方について活性であることを示し、そしてOL(1)p53配列は、試験される用量で、代替のアナログと共に、(予測されるように)不活性なままであったことを示す。
【0035】
S−ODN p53Tの1mg/200gm用量と類似した有効性が、C−5−P改変S−ODNの100μg/200gmおよびモルホリノ抗p53Tオリゴヌクレオチド(配列番号1を有する)の50nM/200gm(約3.7mg/200g)を用いて観察された。モルホリノアンチセンスオリゴマーが、遺伝子のコード領域のエキソン10を標的される場合、5’−非翻訳領域またはAUG開始コドンを標的されるよりもむしろ活性であることは、特に注目すべきである。上記のように、「立体的遮断剤」アンチセンス薬剤は、一般的には、AUG翻訳開始部位から下流に標的される場合、有意な活性を示さなかった。このコード配列は、特に、アンチセンスON結合に適し得、翻訳を立体的遮断するに十分に安定な二重鎖を形成する。加えて、上記のように、モルホリノオリゴマーは、特に有効なRNA結合分子であることが証明された。本発明は、特定のメカニズムに限定されないが、RNAヘリックスが、モルホリノオリゴヌクレオチドの結合によって歪み、そして、この歪みがリボソーム結合を妨げることが推論される。
【0036】
本発明の支持における研究は、C−5−Pプロピン改変ODNのプロピン基が、RNA二重鎖の深いほうの溝に突出し、従って、リボソーム結合もまた立体的に妨げ得ることを示唆している。従って、プロピン基の代わりに他の立体的にかさ高い基(t−ブチルのような異なる電子的構造を有する基を含む)を用いることは、類似の阻害効果を生じ得る。
【0037】
(V. 治療方法)
本発明は、特に、p53誘導によって特徴づけられる細胞において、p53発現を阻害する方法を提供し、そして、ここで、p53の阻害が、治療的利点を生じる。この方法は、p53誘導によって特徴づけられる疾患状態の処置のために用いられ得る。この方法は、このような状態を有する被験体またはこのような被験体から収集した細胞に、配列番号1または配列番号2に対応する配列を有するオリゴヌクレオチドを投与する工程を包含する。好ましくは、この被験体は、ヒト被験体である。(上記のように、配列番号2は、ラットモデルにおいて、有効ではない。)このオリゴヌクレオチドは、好ましくは、モルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、2’−O−アリルもしくは2’−O−アルキル改変オリゴヌクレオチド、N3’→P5’ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドまたはC−5−プロピンピリミジン改変ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである。モルホリノオリゴヌクレオチドは、特に、両方の配列にとって好ましい。C−5−P改変モルホリノオリゴヌクレオチドもまた、意図される。
【0038】
本明細書で示され、およびArora,1998において報告されたデータによって実証されるように、抗p53ONは、肝切除後のラットにおいて、p53の発現を抑制する。モルホリノおよびC−5−P ONは、再生肝臓の重量増加によって測定されたように、非改変ホスホロチオエート(S−ODN)の等価量よりも有効であることが見出された。このモルホリノオリゴマーは、驚くほど有効であるが、これは、コード領域(エキソン10)、AUG開始領域の十分に下流に標的されるという事実を考慮したものであり、これらの後者は、RNAse不活化(「立体的遮断剤」)アンチセンスオリゴヌクレオチドについての、従来の標的である。
【0039】
(A. 抗増殖治療)
上記の通り、p53発現における誘導は、種々のDNA損傷化因子に曝された細胞において観察される。この損傷を受けたDNAは、予定外のDNA合成によって、最も一般に修復される。このような修復は、通常、S(合成)期に先行するG1細胞周期の間に生じる。しかしながら、この改変されたDNA塩基が修復されないままであると(例えば、G1−S細胞周期チェックポイントを排除することにより、従って、未成熟細胞をS期へ送る)、結果は、損傷を受けたDNAヌクレオチド塩基鋳型の誤った複製に起因する変異誘発および/または損傷を受けたDNA部位を通り過ぎて、細胞がそのゲノムを複製できないことに起因する細胞死を含み得る。
【0040】
p53の発現の阻害は、この細胞周期チェックポイントを抑制し、従って、選択的にDNA損傷細胞を殺傷するために用いられ得る。配列OL(1)p53(配列番号2)を有するアンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの投与が、ヒト肝臓細胞において、エキソビボおよびインビボでアポトーシスを生じたことが、米国特許第5,641,764号(Iverson)において示された。この効果は、細胞を、細胞における正味の反応酸素含量を増加する条件に曝すことによって、増加した。このような処置は、正常組織に、ほとんどまたはまったく悪影響を生じない。これは、正常な組織が、癌細胞よりも高い酸素除去活性を有するためである。ほとんどの細胞は、例えば、通常、SOD、カタラーゼまたはグルタチオンペルオキシダーゼ(非常に急速に、過剰な反応性酸素種と結合し、そして不活化する)のような1つ以上の酵素を含む。上記の通り、p53の阻害によるG1−Sチェックポイントの抑制は、損傷を受けたDNAの修復を妨げ、変異誘発および細胞死を導くと考えられる。
【0041】
従って、好ましい方法(特に癌細胞に対して有用な方法)において、ONは、細胞傷害を誘導するラジカル酸素を増加し得る因子と組み合わせて投与される。オリゴヌクレオチドおよび因子は、実質的に、同時にまたは経時的に投与され得、いずれかの治療因子が、最初に与えられる。しかしながら、オリゴヌクレオチドが、達成されるべき治療血液レベルを可能にするために、あらかじめ十分に投与される場合に、最良の結果が達成される。
【0042】
例えば、増加したラジカル酸素レベルは、放射線、またはラジカル酸素誘導細胞傷害を可能にする薬剤(例えば、アントラサイクリン細胞傷害性抗生物質(例えば、ドキソルビシン)、BCNU、BSO(ブチオニンスルホキサミン)(buthionine sulfoxamine)、過酸化水素、またはSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)のアンチセンスオリゴヌクレオチドインヒビター、カタラーゼ、GSHシンテターゼ、GSHレダクターゼ、もしくはGSHペルオキシダーゼのような薬剤)に細胞を曝すことによって生成される。
【0043】
ラジカル酸素誘導細胞傷害を可能にする薬剤は、例えば、放射線増感剤、ラジカル酸素を発生する化学療法剤、またはヒドロキシラジカルの形成を引き起こす宿主の細胞との相互作用を可能にするオリゴヌクレオチドであり得る(例えば、1991年7月25日に出願され、「Inhibition of Mutagenicity Induced by Binding of Oligonucleotides to Cells」と題された、Iversen、米国出願番号07/735,067(この内容は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。患者において標的細胞に対する致死性の効果を有する多くの細胞傷害性因子(ここで、この致死性の効果は、1つ以上の感作因子(sensitizing agent)によって高められ得る)が、本発明の方法に用いられ得る。挙げられるものとしては、放射線(放射線治療が、経口で送達されるにしろ外用の手段により投与されるにしろ)および細胞傷害性薬物である。多くのこのような薬物のいくつかの例は、L−フェニルアラニンナイトロジェンマスタード(L−phenylalanine nitrogen mustard)(メルファラン)のようなナイトロジェンマスタード、ダウノルビシンおよびドキソルビシンのようなアントラサイクリン化学療法剤、ならびにシス−ジアミノジクロロ白金(シス−プラチン)のような白金化合物である。
【0044】
経口的に送達された放射線としては、患者に注射される治療的に有効な放射性同位体が挙げられる。このような放射性同位体としては、放射性核種金属186Re、188Re、64Cu、67Cu、109Pd、212Bi、203Pb、212Pb、211At、97Ru、105Rh、198Au、199Agおよび131Iが挙げられるが、これらに限定されない。これらの放射性同位体は、一般的に、患者に投与した場合、キャリア分子に(例えば、キレート−抗体結合体の形態で)に結合する。経口的に送達される適切な放射線療法剤の例は、例えば、欧州特許公開第188,256号に記載されるような、抗体に結合体化される金属放射性核種キレートである。外用の手段により投与される放射線としては、コバルト治療のような外用ビーム放射線が挙げられる。
【0045】
増感剤の選択は、処置されるべき特定の型の腫瘍および投与されるべき細胞傷害性因子のような因子に依存する。好ましくは、この化合物は、インビボで癌細胞のような、特定の標的部位にとって選択的である。例えば、米国特許第4,628,047号は、ジルチアゼムを使用し、ドキソルビシンのような細胞傷害性因子に対する種々の型の癌細胞の感受性を高めることを報告する。増感剤の細胞傷害性因子との他の組み合わせ、ならびにこれらの薬剤を用いる処置に対する異なる型の癌細胞の感受性における予期される相違は、Important Advances in Oncology(DeVitaら、編、J.B.Lippincott Co.、Philadelphia(1986)、145−157頁)で議論される。
【0046】
好ましい増感剤は、BSO(ブチオニンスルホキサミン、Chemical Dynamics Corporation、South Plainfield、N.J.から入手可能)であり、これは、γ−グルタミルシステインシンテターゼを阻害し、そして、細胞中で、グルタチオン(GSH)の顕著な減少を導く合成アミノ酸である。従って、BSOは、細胞のグルタチオンレベルの減少によって高められた細胞傷害性効果を有する薬物についての増感剤として機能すると考えられる。特に好ましいものは、細胞中でグルタチオンの枯渇において有用性を有する、BSOのS−異性体である(米国特許第5,171,885号および同第5,245,077号を参照のこと)。
【0047】
増感剤および細胞傷害性因子のさらなる組み合わせは、所望の標的細胞に対応する培養細胞(例えば、特定の癌細胞株)を使用するインビトロアッセイのような方法を通して同定され得る。例えば、Russoらは、BSOが、特定の型の細胞株において、グルタチオンシンテターゼレベルを低下させるのに有効であるか否かを決定するためのアッセイを記載する。
【0048】
ラジカル酸素産生種、細胞傷害性因子および増感剤についての上記の議論は、主に、好ましい標的細胞、すなわち、p53発現により特徴づけられる癌細胞に指向される。このような癌としては、膀胱、脳、乳房、頸部、結腸、食道、咽頭、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃および甲状腺の癌が挙げられる。
【0049】
別の好ましい方法においては、アンチセンスONの投与は、細胞周期のG2期からM(有糸分裂)期 への進行を妨げるのに有効な薬剤の投与に随伴する。このような薬剤としては、例えば、ペントキシフィリン(Russell、1996)、シリマリン(Ahmad、1998)、スタウロスポリン(Swe、1997)、フェニルアヒスチン(Kanoh、1997)、パクリタキセル(Shu、1997)、レチノイン酸(Zhu、1997)、フラボピリドール(Sedlacek、1996)、メチル−2,5−ジヒドロシンナマート(Koch、1996)、ハーボキシジエン(Horiguchi、1996)、9−ニトロカンプトセシン(Khooustov、1995)、マイトトキシン(VanDolah、1996)、アピゲニン(Sato、1994)、ノコダゾール、およびコルセミド(Zhang、1998)が挙げられる。最近の論文(Cross、1995)は、p53が紡錘体チェックポイント(細胞周期の有糸分裂(M)期の間、紡錘体装置の完全な集合体を確実にする)において役立つことを示唆している。本発明を裏付ける研究において、p21−欠損マウスは、上記に列挙したようなG2−Mインヒビターで処置した場合、罹患された細胞において、高度の異数性を示した。このインヒビターは、細胞が、有糸分裂期を通して正常な進行を受けること、そして、有糸分裂の(およびG1−S期)チェックポイントを欠くことを妨げ、細胞が連続的な合成(S)期を受け、結果として異数性になることが仮定される。p53は、p21の転写活性化に必要であるので、p53が、本発明のアンチセンス薬剤により阻害される細胞は、同様の効果を示すはずである。
【0050】
ノコダゾールまたはコルセミド(Cross、Zhang)のような紡錘体インヒビターはまた、抗p53アンチセンス薬剤と組み合わせて用いられ得る。p53依存性紡錘体チェックポイントの非存在において、このような細胞は、異常なまたは不完全な有糸分裂期を有する連続的な細胞周期を受けると予測され、また、倍数性または異数性を導く。
【0051】
他の過剰増殖性疾患もまた、処置され得る。過剰増殖性の皮膚障害の例としては、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染細胞(一般に、いぼに関連する)、黒色腫のような皮膚の表層性新生物形成、前悪性(pre−malignant)および悪性の癌腫、光線性角化症、紅斑性狼瘡、皮膚炎ならびに乾癬が挙げられる。他の上皮組織(例えば、内皮、中皮)の過剰増殖性疾患としては、喘息および気管支炎のような可逆的閉塞性気道疾患が挙げられる。眼の種々の過剰増殖性疾患(円錐角膜、角結膜炎、春季結膜炎および角膜炎角膜白斑、(keratitis leukoma)を含む)もまた、処置され得る。この方法はまた、内膜平滑筋細胞過形成(intimal smooth muscle cell hyperplasia)、血管閉塞および再狭窄のような過剰増殖性血管疾患を処置するために用いられ得る。
【0052】
(B. 低酸素または虚血状態の処置)
p53誘導によって特徴づけられる他の疾患状態としては、脳卒中のような虚血性の発作が続くといったような低酸素状態が挙げられる。例えば、p53は、大脳における虚血後のアポトーシス細胞において(Li)、ならびに虚血およびてんかんのモデルにおける損傷を受けたニューロンにおいて(Xiang)、優先的に発現されることが観察された。Raafatは、腎臓における虚血/再灌流に続くp53の増加したレベルを観察し、そして、この増加が、アポトーシスを容易にし得ることを提唱した。熱ショックもまた、p53を誘導することが報告されている(Graeber)。従って、別の局面において、本発明は、本明細書において記載される抗p53アンチセンス薬剤と共に、このようなストレス、例えば、熱ショック、てんかん発作、脳卒中、ならびに虚血および/または再灌流の他の発生(例えば、以下の器官移植)に供される組織の処置を含む。
【0053】
(VI. 処方物および投与)
(A. 治療処方物)
本発明の処置方法に従った投与について、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、適切な液体ビヒクルまたは賦形剤)および必要に応じた補助添加剤と組み合わされる。この液体ビヒクルおよび賦形剤は、通常および市販のものである。その例示としては、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などである。
【0054】
一般に、活性化合物に加えて、本発明の薬学的組成物は、薬学的に用いられ得る調製物への活性化合物の処理を容易にする、適切な賦形剤および補助物を含み得る。適切な賦形剤は、特に、糖のようなフィラー、例えば、乳糖またはショ糖、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム、ならびに結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、ガムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン)である。所望であれば、上記のデンプンならびにカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはそれらの塩のような崩壊化剤(disintegrating agent)が、添加され得る。補助物としては、流量調節化薬剤および潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩、および/またはポリエチレングリコールが挙げられる。
【0055】
糖剤のコア(dragee core)は、適切なコーティング(所望であれば、これは胃液耐性であり得る)とともに提供され得る。この目的のために、濃縮された糖溶液が用いられ得、これは、必要に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含み得る。胃液耐性コーティングを生成するために、アセチルセルロースフタラートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートのような適切なセルロース調製物の溶液が用いられる。染料および顔料が、同定のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけるために、糖剤コーティングの錠剤に添加され得る。
【0056】
経口的に用いられ得る他の薬学的調製物としては、ゼラチンから作製されたプッシュフィット(push−fit)カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から作製された密封された軟性カプセルが挙げられる。このプッシュフィットカプセルは、乳糖のようなフィラー、デンプンのような結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ならびに、必要に応じて、安定剤と共に混合され得る顆粒の形態で活性化合物を含み得る。軟性カプセルにおいて、この活性化合物は、好ましくは、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールのような適切な液体に溶解または懸濁される。さらに、安定剤が添加され得る。
【0057】
直腸に用いられ得る薬学的調製物としては、例えば、活性化合物の坐剤基剤(suppository base)との組み合わせからなる坐剤が挙げられる。適切な坐剤基剤としては、天然または合成のトリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコールまたは高級アルカノールが挙げられる。さらに、活性化合物の基剤との組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルの使用が可能である。可能な基剤材料としては、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコールまたはパラフィン炭化水素が挙げられる。
【0058】
非経口投与のための適切な液体処方物としては、水溶性形態または水分散性形態における活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、適切な油性の注入懸濁液として活性化合物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド)が挙げられる。水性注入懸濁液は、懸濁液の粘性を高める物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストラン)を含み得る。この懸濁液はまた、安定剤を含み得る。
【0059】
従来のキャリアを用いる投与に加えて、活性成分は、種々の特別な送達技術により投与され得る。例えば、本発明の化合物は、リポソーム中で被包されて投与され得る。この活性成分(その溶解度に依存する)は、水相においても脂質層においても、または、一般的に、リポソームの懸濁液と称されるものにおいて存在し得る。この脂質層は、一般的に、レシチンもしくはスフィンゴミエリンのようなリン脂質、コレステロールのようなステロイド、ジアセチルホスフェート(diacetylphosphate)、ステアリルアミン(stearylamine)もしくはホスファチジン酸のようなイオン性界面活性剤、および/または他の疎水性材料を含む。リポソームの直径は、一般的に、約15nm〜約5ミクロンの範囲である。
【0060】
このような投薬形態の調製方法は、公知であるか、または、当業者に明らかである;例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(第19版、WilliamsおよびWilkins、1995)を参照のこと。薬学的調製物は、当該分野において周知の手順に従って製造される。例えば、これらは、従来の混合化、顆粒化、糖剤形成化、溶解化または凍結乾燥化のプロセスにより作製され得る。この用いられるべきプロセスは、究極的には、用いられる活性成分の物理的性質に依存する。
【0061】
(B. 腫瘍の処置)
組成物は、経口的、経皮的または非経口的に(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内の注射によって)に、被験体に投与され得る。インビボ抗腫瘍性の使用について、p53 mRNAアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、静脈内に投与される。
【0062】
本発明に従って、p53の発現を阻害し、従って、酸化的修復経路の下方制御因子として作用するオリゴヌクレオチドが、ラジカル酸素誘導細胞傷害性を可能にする薬剤の投与の前にまたはそれに随伴して、患者に投与される。同時に投与される場合、この2つの活性薬剤は、結合体化または非結合体化の形態であり得る。結合体化形態における場合、この結合体は、オリゴヌクレオチドおよび細胞傷害性因子が標的部位で放出されるように、切断可能な結合を含むことが好ましい。
【0063】
投与される各々の薬剤の量は、2つの型の薬剤の組み合わせが、治療的に、有効であるようなものである。投薬は、患者の年齢、健康、性別、大きさおよび体重、投与経路、薬物の毒性ならびにオリゴヌクレオチドおよび細胞傷害性因子に対する癌の相対的感受性のような因子に一致して変動する。細胞傷害性因子の大部分について推奨される投薬量および投薬形態は、確立されており、そして、Medical Economics Company,Inc.、Oradell、N.J.より出版されているPhysicians Desk Referenceのような従来の出典から得られ得る。必要であれば、これらのパラメーターは、十分に確立された手順および分析によって、例えば、臨床試験において、各々の系について決定され得る。
【0064】
インビボでの使用については、本発明のオリゴヌクレオチドの好ましい投薬量は、代表的に、約0.01〜約1μmol/lの血中濃度を達成することが必要である。この濃度は、種々の方法で達成され得る;連続的IV注入による約0.05mg/kg/時間と約0.2mg/kg/時間との間の用量が、受容可能であることが見出された。より多量またはより少量のオリゴヌクレオチドが、要求に応じ、投与され得る。
【0065】
以下の実施例3は、ヒトB細胞リンパ種の処置における本発明の適用を示す。
【0066】
(C. 虚血障害の処置)
虚血状態は、心不全、または、脳への血液供給の広範な損失もしくは血液洪水における局在的妨害(例えば、脳出血または局所的血栓性もしくは塞栓性の事象、あるいは頭部外傷に起因する)を導く他の状態によって引き起こされるような脳循環における妨害に起因し得る。処置されるべきこの虚血状態は、一般的に、脳卒中(脳における血管の閉塞または破裂によって引き起こされる、神経学的機能の突然の減少または損失として定義される)に関連する。最初の虚血事象に起因する二次的な脳の損傷は、代表的には、限局的な虚血の場合における虚血障害の周辺領域において、および広範な虚血の場合における、損傷における選択的脆弱性の領域(例えば、海馬または基底核)においてもまた、大脳の細胞破壊または損傷を含む。この二次的な損傷は、しばしば、機能障害(例えば、短期または長期の記憶の損失)によって明らかになり得る。
【0067】
ONは、滅菌生理食塩水溶液のような適切な不活性のキャリアにおいて、非経口投与のために処方される。投与される用量は、投与の経路によって決定される。1つの適切な経路は、用量レベルが、体重1kg当たり、約50μg〜5mg
ONでの、脳室内(ICV)である。薬学的に有効な用量、すなわち、解剖学的および/または機能的損傷における有意な減少を生じるのに有効な用量は、虚血および脳卒中損傷についてのモデル系において見られる、用量/反応から見積もられ得る。このようなモデル系としては、頸部の頸動脈の一過性の閉塞によって生じる広範な虚血のスナネズミのモデル、およびラットの4つの血管閉塞モデルが挙げられる。組織は、解剖学的損傷について試験され、そして機能的損傷は、機能亢進、動物における大脳虚血の共通の結果、または短期記憶の効果の観察によって評価され得る。これらの手順は、当該分野において公知である;例えば、米国特許第5,051,403号を参照のこと。
【0068】
(D. 再狭窄の処置)
首尾良い抗再狭窄治療の重要な局面(特に、アンチセンス薬剤に関して)は、罹患された細胞へのアンチセンスオリゴマーの有効な送達である。全身的に投与された抗再狭窄薬物は、代表的には、受容できない高濃度の薬物を用いずに、血管障害部位で、有効な濃度を達成できない。送達デバイス(例えば、共同所有され、かつ同時係属中の、「Method of Treating Restenosis by Antisense Targeting of CMV」という題名の米国出願番号09/062,160に記載される)は、患者における血管形成部位へオリゴマーを送達するのに用いられ得る。このオリゴマーは、好ましくは、モルホリノオリゴマーであり、そして、好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアに含まれる。このオリゴマーはまた、生体適合性のポリマーキャリアに含まれ得、また、上記に参照される出願に記載され得る。
【0069】
好ましくは、このオリゴマーは、血管形成手順と同時に送達される。Farrellによって報告されたように、細胞によるオリゴヌクレオチドの取り込みは、化合物が、バルーンで傷ついた動脈に投与される場合に、正常な動脈による取り込みと比較して、顕著に増加し得る。本発明の組成物を用いる薬物治療は、放射線または光力学的治療と組み合わせられ得る。
【0070】
投薬量は、標準的薬学的操作に従って、被験体の大きさ、投与経路および罹患された組織の範囲に従って、決定される。薬物の好ましいレベルは、受容可能でない副作用なしに、p53発現を阻害し、そして再狭窄を減少または阻止するのに有効であるものである。成人ヒトについて、推奨される投薬量は、アンチセンスオリゴマー1〜25μmol、そして好ましくは2〜15μmolの範囲である。所定の経路の最適投薬量は、当該分野において公知の方法に従って、慣用的な実験法によって決定され得る。例えば、血管障害の部位への送達について、EdelmanおよびRosenbergに記載されるようなインビボモデルが用いられ得る。
【0071】
オリゴマーが、薬物送達デバイスに取り込まれる場合、上記のように、このデバイスは、適切な薬物投薬量を送達するのに有効である。処置されるべき組織の表面積に関しては、有効な用量は、代表的には、血管壁1cm2当たり、30〜3000μgオリゴマーの範囲であり、そしてより好ましくは、1cm2当たり、約300〜1500μgである。患者はまた、血管形成術後に、再狭窄をさらに阻害するために十分な投薬量レベルで、周期性基底(periodic basis)上の組成物を与えられ得る。
【0072】
本発明は、特定の方法および実施形態に関連して記載されているが、種々の改変が、本発明から逸脱することなくなされ得ることが明らかである。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
(オリゴヌクレオチド合成)
すべての鎖伸長合成を、ABI User Bulletin、No.58、1991によって記載されるように、Applied Biosystems Model 380B DNA合成機(Foster City,CA)上で、1μモルのカラム支持体およびホスホラミダイト化学を利用するシアノエチルアプローチを使用して、行った。この合成機を、ユーザー用マニュアルにおけるプロトコルを用いてプログラ化した。
【0074】
代表的な合成の概要は、以下の通りである:3’ヒドロキシル基によって連結されたODN(すなわち、非改変ヌクレオチド、C−5−プロピンヌクレオチドまたはモルホリノヌクレオチドアナログ)の3’塩基を有する1μモルのシリカゲル支持体カラムを挿入し、そして合成を、3’から5’方向への塩基様式によって、塩基中で行う。すべての液体試薬は、Applied Biosystems,Inc.より供給する。アルゴンガスは、Air Products(Omaha)より供給する。第一段階は、カラムの、アセトニトリル、次いでアルゴンガスによる洗い流し(flushing)(カラム中のあらゆる残留物を除去する)である。次に、トリクロロ酢酸で、ジメトキシトリチル(DMT)基(ODN合成の間に、ヌクレオチドの5’酸素をキャップする)をプロトン化する。次いで、プロトン化されたDMTを、塩基から除く。このカラムを、アセトニトリルおよびアルゴンで、再び洗い流す。DMT廃棄物を、DMT廃棄口によって試験管へ収集し、そして、明橙(bright orange)色かどうかを検査する。この色の検査は、脱トリチル化(detritylation)が成功したかを保証するために行う。DMT基を、498nmでの吸光度を読み取ることにより、分光光度的に定量化し得る。この色が明橙色ではない場合、塩基の脱トリチル化は、首尾良く行われ得ず、そして、不純物を含んだODNの合成が生じ得る。合成の次の段階は、ODN配列における次の塩基のカップリングである。シアノエチルホスホラミダイトに改変された適切なヌクレオチド塩基を、アセトニトリルに溶解し、そしてテトラゾールを用いてカラムに送達する。この塩基は、ヌクレオチド間ホスファイト(phosphite)結合を形成するように反応する。カラムを、アセトニトリルおよびアルゴンで洗い流す。あらゆるカップリングしていない5’ヒドロキシル基を、無水酢酸および1−メチルイミダゾールを用いてカラムを洗い流すことによって、アセチル基でキャップする。このキャップは、合成において、これらのカップリングしていない塩基のあらゆる存続を妨げ、そして、不純物の長さを減少させる。このカラムを再び洗い流し、そして、3価のホスファイトをテトラエチルチウラムジスルフィドおよびアセトニトリルを用いて、5価のホスホロチオエートトリエステルに酸化する。このカラムを、アセトニトリルおよびアルゴンで洗い流す。次いで、この合成を、脱トリチル化段階で始まる配列において、次の塩基について再び繰り返す。S−ODNを、水酸化アンモニウムをカラムに通し、そして、溶出液を収集することによって、カラムから切断する。この水酸化アンモニウムおよびシアノエチル(リン酸連結から)を、一晩、減圧遠心機において、S−ODN溶液のエバポレーションによって除く。この乾燥したODNを、滅菌生理食塩水で希釈する。S−ODNの純度を、10%ポリアクリルアミドゲル上で、水で希釈したS−ODNのサンプルを、電気泳動することによって検査する。S−ODNの濃度を、260nmでの吸光度の読み取り、そしてその吸光度に吸光係数を掛けることによって、決定する。
【0075】
モルホリノオリゴヌクレオチドアナログの調製についてのさらなる詳細が、例えば、SummertonおよびWeller、Antisense&Nucleic Acid Drug Dev.7:187−195(1997)において見出され得る。
【0076】
(実施例2)
(部分肝切除)
部分肝切除研究を、体重200〜220グラムの雄性Sprague Dawleyラット(Sasco、Omaha NE)で行った。動物を、12時間の明/暗サイクルで、UNMC’s AAALAC認可施設において透明なプラスチックのケージに収容し、そしてPurinaラット固形飼料および水道水を任意に入手できるようにした。すべての動物プロトコルは、大学の「Institutional Animal Care and Use Committee」によって承認された。
【0077】
手順を、HigginsおよびAnderson(1931)によって記載されるように行った。無菌的外科技術を利用した。ラットを、メトキシフルラン(Mallinckrodt Veterinary,Mundelein,IL)を用いて麻酔し、そして、その腹部の表面を曝すように置いた。3〜4cm長の領域を、剣状突起からすぐ後方、中線に沿って剃毛し、そしてベタジン(betadine)を塗布した。切開を、肝臓を曝すために、中線に沿らせた。この内側および左の外側の葉(lobe)を、しっかりと結紮し、次いで、切除した。これは、肝臓全体の約65〜70%の除去という結果になった。腹部切開を、2層において閉じた。部分肝切除を受けなかったコントロールラットは、同じだが偽の手術を受けた;これらの肝臓は、単に曝されただけであり、そして、部分切除されなかった。
【0078】
オリゴヌクレオチド投与:ODNを、1mg/200グラム/日 S−ODN、0.1mg/220グラム/日 C−5−P S−ODN、および50nM(約3.4mg)/200グラム/日 モルホリノの用量で、腹腔内に注射した。すべてのラットに、手術後意識を回復して直ちに、そしてその後24時間おきに(実験の長さに依存する)、それぞれのODNを投与した。次いで、手術時から1、2、5または7日間、ラットが、回復できるようにした。湿重量増加を、ODNの投与の24時間後に測定し、図1に示すデータを作製した。
【0079】
(実施例3)
(ヒトB細胞リンパ種の処置)
薬物処置レジメン:0日目から開始、患者は、0.2mg/kg/時間の用量で、7日間連続IV注入として、静脈アクセスデバイスを通して、配列番号1を有するモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを受ける。MINE化学療法を、以下の一覧表に従って、開始4日目で与える:
・Mesna Injection(MESNEXTM、Bristol−Meyers Oncology):500mg/M2 IV(イホスファミドより30分前)、250mg/M2 IV(イホスファミド4時間後)、および経口的に250mg/M2(イホスファミド8時間後)(4〜7日目の各々において)。
・イホスファミド(IFEXTM、Bristol−Meyers Oncology):1.33g/M2 IV(4〜7日目の各々において)。
・塩酸ミトザントロン(NOVANTRONETM、Lederle Laboratories)10mg/M2 IV(4日目においてのみ)。
・エトポシド(VEPESIDTM、Bristol−meyers Oncology)80mg/M2 IV(4〜7日目の各々において)。
【0080】
患者を、定期的に、その疾患の毒性および応答について評価する。患者は、毎週、CBC(完全な血球算定)および血小板算定を受ける。サイクルを、4週間ごとに、最大6サイクルの間、反復する。患者を、サイクルごとの応答に関して、身体検査によって測定可能な疾患について評価する。患者を、応答(完全な応答、部分的な応答、安定な応答または進行性の疾患)に関して、分類する。
【0081】
患者は、伝統的なMINE治療(これは、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列番号1(OL(1)p53)の使用を含まない)とは対照的に、この治療と共に、高められた臨床応答を示すことが予測される。OL(1)p53は、細胞周期修復メカニズムを阻害し、それによって、優先的に、p53非依存性アポトーシスを介して癌細胞を殺傷することによって、癌細胞を、MINEの効果に敏感にすることが予測される。
【0082】
(配列表)
【0083】
【数1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−79865(P2011−79865A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−10285(P2011−10285)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【分割の表示】特願2000−578439(P2000−578439)の分割
【原出願日】平成11年10月22日(1999.10.22)
【出願人】(501169659)エイブイアイ バイオファーマ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】