説明

手織り機

【課題】 織以外の操作の煩雑さを解消する手織り機を具現化させることを課題とする。
【解決手段】 経糸巻き付け部10の表面又は織布巻き取り部11の表面に、経糸60を挾み込むための面ファスナー17,18を有することにより、簡単に経糸を均一な張力で手織り機に整張でき、また、経糸巻き付け部(10)又は織布巻き取り部(11)の回転方向の規制をペダル28により解除できる機構を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手織り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手織り機は、製織前に経糸巻き付け部および織布巻き取り部に経糸を取り付ける機構として、経糸を結び付けるための部材を経糸巻き付け部および織布巻き取り部に具備させた構造、あるいは、断面がC字形状の弾性アタッチメントを巻き取り部に被せ経糸を固定する機構が用いられており、いずれも積極的に経糸巻き付け部および織布巻き取り部に経糸を固定する機構であった。
【0003】
また、従来の手織り機においては、経糸巻き付け部および織布巻き取り部の逆転防止のためのラチェット機構の爪とギアの噛み合わせを解除する方法は手動によるのが一般的であるけれども、ペダルを踏んで開放する機構も存在しており、従来のペダルを踏んで開放する機構としては、ラチェットの爪部とペダルが連結させており、ラチェットの爪部に直接ペダルの重量および、踏む力が加わる構造になっており、非常に強固なラチェット装置が用いられていた。
【0004】
また、先行例には、手織り機のヘドルに通された縦糸を、該ヘドル近辺で挟着できる挟着部を有する挟着支持具本体と、この挟着支持具本体の挟着部に取り付けられたクッション性を有する弾性体と、前記挟着支持具本体を着脱可能に挟着状態に保持する保持部とから構成される手織り機用縦糸支持具を使用して、多数本の縦糸の一定の間隔や均一な張り状態を容易に設定しようとするものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−309464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、手織りにおいては、手織り機への均一な張力での経糸のセットに熟練を要すると共に、製織の前工程である準備工程が非常に煩雑で、手織りを楽しもうとしても、織の楽しさを得るまでの段階で挫折するケースが多々存在していた。
【0006】
また、製織段階にあって、織以外の手動によるラチェット爪の解除等、煩雑な操作が多々存在し、手織りを難しい存在にするとともに、従来の足踏み式のラチェット爪解除機構は、足踏みによる力に耐え得る弾性力のラチェット機構になっており、回転可能方向に回す時、負荷の高い機構であった。
【0007】
また、上記先行例においては、多数本の縦糸の一定の間隔や均一な張り状態を容易に設定しようとするには、ヘドル近辺で挟着できる挟着部を有する挟着支持具本体と、この挟着支持具本体の挟着部に取り付けられたクッション性を有する弾性体と、前記挟着支持具本体を着脱可能に挟着状態に保持する保持部とから構成される手織り機用縦糸支持具を使用しなくてはならず、煩雑な操作が必要なものであった。
【0008】
そこで、本発明は、手織り愛好者が、織以外の操作の煩雑さを解消する手織り機を具現化させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る手織り機は、経糸を巻回することの出来る経糸巻き付け部と、この経糸巻き付け部と平行に配置され織布を巻き取ることのできる織布巻き取り部と、を有する手織り機において、経糸巻き付け部10の表面又は織布巻き取り部11の表面に、経糸60を挾み込むための面ファスナー17,18を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、経糸を手織り機に固定する時に経糸の張力を整えると同時に固定する従来の構造および作業方法に比較して、面ファスナーを用いて経糸の張力を整える操作と経糸を固定する操作とを切り離すことが可能になり、誰でもが簡単に経糸を均一な張力で手織り機に整張できるようになる。
【0011】
また、本発明に係る手織り機では、経糸巻き付け部10又は織布巻き取り部11の回転軸と同心の歯車20と、この歯車20と噛み合うことで歯車20の回転方向を一方向のみに規制することの出来る回転爪体21とを具備し、この回転爪体21に対して噛合い方向に付勢される弾性体23を設ける共に、回転爪体21の解除アーム部25に連結され、かつ、爪部22に対する付勢力に抗して踏み込むことによって歯車20に対する回転爪体21の爪部22の噛合いを切り離すペダル28の穴部29に当該手織り機の上部から下方向に伸びた連結体27を通し、ペダル28下面に位置するその連結体27の下部端部32にペダル用弾性体24を設けた、という構成を採用することが可能である。
【0012】
この発明によれば、許容範囲を超える力でペダル28を踏んでも一定長の連結体27の下部端部32のストッパ30がそのペダル28の踏込み代を規制してペダル28が一定の位置より下に下がることが阻止される。そのため、回転爪体21に許容範囲を超える運動量が伝わらなくなる。また、ペダル28を踏んだ状態で、回転爪体21の爪部22が歯車20との噛み合いから切り離され、ペダル28から足を離すとペダルが初期位置に戻るとともに、回転爪体21の爪部22が歯車20との噛み合い状態に戻る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、経糸巻き付け部10又は織布巻き取り部11の表面に面ファスナーを設けることにより、経糸60を経糸巻き付け部10又は織布巻き取り部11の面ファスナーの上に仮置きし、仮置きした経糸60の上に面ファスナーと対の面ファスナーを押し当て、経糸60を面ファスナーと面ファスナーで挟み込んだ状態にすることができる。
【0014】
また、経糸60を面ファスナーと面ファスナーで挟み込んだ状態では、経糸60が固定された状態でないため、経糸60を引っ張ると経糸60は移動し、経糸60の張力を誰でも簡単に調整することができ、経糸60の張力を均一に調整した後、経糸60が面ファスナー18で挟み込まれた経糸巻き付け部10又は、織布巻き取り部11を回転させることにより、経糸60を経糸巻き付け部10及び、織布巻き取り部11に固定でき、経糸60のセット段階での熟練の必要性から開放され、初心者であっても製織の段階まで簡単に到達することが可能となる。
【0015】
また、本発明によると、経糸巻き付け部10又は織布巻き取り部11の回転軸と同心の歯車20と、この歯車20と噛み合うことで歯車20の回転方向を一方向のみに規制することの出来る回転爪体21とを具備し、この回転爪体21に対して噛合い方向に付勢さる弾性体23を設ける共に、回転爪体21の解除アーム部25に連結され、かつ、爪部22に対する付勢力に抗して踏む込むことによって歯車20に対する回転爪体21の爪部22の噛合いを切り離すペダル28の穴部29に当該手織り機の上部から下方向に伸びた連結体27を通し、ペダル28下面に位置するその連結体27の下部端部32にペダル用弾性体24を設けることにより、足踏みによる力に耐え得る弾性力と強度をラチェット機構に持たす必要がなくなり、回転可能方向に回す操作の負荷の軽減することが可能となると共に、製織時の織以外の煩雑な操作の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に示す実施の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明における手織り機に経糸をセットする時の状態を図示するものであり、準備された経糸60の前方フレーム15側の束の部分を前方フレーム15に仮置きし、後方フレーム16側の経糸60を経糸巻き付け部10の表面に設けられた鈎型面ファスナー17の上に仮置きした状態である。
【0018】
なお、鈎型面ファスナー17の上に経糸60を仮置きする時、経糸60を鈎型面ファスナー17の鈎部に食い込むようにすると仮置きの安定度が高くなる。
【0019】
図2は、本発明における手織り機に経糸をセットする時の状態を図示するものであり、鈎型面ファスナー17の上に仮置きした経糸60の上に鈎型面ファスナー17と対の輪型面ファスナー18を押し当て、経糸60を鈎型面ファスナー17と輪型面ファスナー18で挟み込んだ状態にすることができる。
【0020】
なお、経糸60を鈎型面ファスナー17と輪型面ファスナー18で挟み込んだ状態では、経糸60が固定された状態でないため、経糸60を引っ張ると経糸60は移動し、経糸60の張力を誰でも簡単に調整することができ、経糸60の張力を均一に調整した後、経糸60が鈎型面ファスナー17と輪型面ファスナー18で挟み込まれた経糸巻き付け部10又は、織布巻き取り部11を回転させることにより、経糸60を経糸巻き付け部10及び、織布巻き取り部11に固定できる。
【0021】
図3は、本発明における手織り機に経糸をセットする時の状態を図示するものであり、経糸巻き付け部10に巻き付けられた経糸60の端部を、織布巻き取り部11の表面に設けられた鈎型面ファスナー17の上に仮置きした状態である。
【0022】
図4は、本発明における手織り機に経糸をセットする時の状態を図示するものであり、鈎型面ファスナー17の上に仮置きした経糸60の上に鈎型面ファスナー17と対の輪型面ファスナー18を押し当て、経糸60を鈎型面ファスナー17と輪型面ファスナー18で挟み込んだ状態にすることができ、経糸60の糸端を引っ張り張力を調整した後、経糸巻き付け部10から巻かれている経糸60をまき戻し、経糸60が鈎型面ファスナー17と輪型面ファスナー18で挟み込まれた織布巻き取り部11を回転させることにより、経糸60を経糸巻き付け部10と織布巻き取り部11間に均一な張力で整張できる。
【0023】
すなわち、本発明は、従来、経糸を手織り機に固定する時に、経糸の張力を整えると同時に固定する構造および作業方法に対し、面ファスナーを用いることにより、経糸の張力を整える操作と経糸を固定する操作を切り離すことを可能にし、誰でも簡単に経糸を均一な張力で手織り機に整張できる機能を有している。
【0024】
図5は、本発明における手織り機の要部を図示するものであり、本発明の手織り機は、経糸巻き付け部10又は織布巻き取り部11の回転軸と同心の歯車20と、この歯車20と噛み合うことで歯車20の回転方向を一方向のみに規制することの出来る回転爪体21とを具備している。そして、前記回転爪体21に対して噛合い方向に付勢される弾性体23が設けられると共に、回転爪体21の解除アーム部25に連結部材26を介して連結され、かつ、爪部22に対する付勢力に抗して踏む込むことによって歯車20に対する回転爪体21の爪部22の噛合いを切り離すペダル28の穴部29に当該手織り機の上部から下方向に伸びた連結体27を通し、ペダル28下面に位置するその連結体27の下部端部32にペダル用弾性体24が設けられている。また、このペダル用弾性体24の下方、即ち、前記連結体27の下端には、当該ペダル用弾性体24の下方への動きを規制するストッパ30が設けられている。
なお、図上、31は連結体上部固定部を示している。
【0025】
この機構により、ペダル28を踏んだ時、ペダル用弾性体24の圧縮許容範囲内でペダル28が下降し、許容範囲を超える力でペダル28を踏んでもストッパ30がペダル28の踏込み代を規制してペダル28が一定の位置より下がらなくなり、回転爪体21に許容範囲を超える運動量が伝わらなくなる。また、ペダル28を踏んだ状態では、解除アーム部25とペダル28が連結部材26により連結されているので、回転爪体21の爪部22が歯車20との噛み合いから切り離され、ペダル28から足を離すとペダルが初期位置に戻るとともに、回転爪体21の爪部22が歯車23との噛み合い状態に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る手織り機に経糸をセットする時の要部斜視図である。
【図2】本発明に係る手織り機に経糸をセットする時の要部斜視図である。
【図3】本発明に係る手織り機に経糸をセットする時の要部斜視図である。
【図4】本発明に係る手織り機に経糸をセットする時の要部斜視図である。
【図5】本発明に係る手織り機の要部側面図である。
【符号の説明】
【0027】
10:経糸巻き付け部
11:織布巻取り部
15:前方フレーム
16:後方フレーム
17:鈎型面ファスナー
18:輪型面ファスナー
20:歯車
21:回転爪体
22:爪部
23:弾性体
24:ペダル用弾性体
25:解除アーム部
26:連結部材
27:連結体
28:ペダル
29:穴部
30:ストッパ
31:連結体上部固定部
32:下部端部
60:経糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸を巻回することの出来る経糸巻き付け部と、この経糸巻き付け部と平行に配置され織布を巻き取ることのできる織布巻き取り部と、を有する手織り機において、
経糸巻き付け部(10)の表面又は織布巻き取り部(11)の表面に、経糸(60)を挾み込むための面ファスナー(17,18)を有することを特徴とする手織り機。
【請求項2】
経糸巻き付け部(10)又は織布巻き取り部(11)の回転軸と同心の歯車(20)と、この歯車(20)と噛み合うことで歯車(20)の回転方向を一方向のみに規制することの出来る回転爪体(21)とを具備し、この回転爪体(21)に対して噛合い方向に付勢される弾性体(23)を設ける共に、回転爪体(21)の解除アーム部(25)に連結され、かつ、爪部(22)に対する付勢力に抗して踏み込むことによって歯車(20)に対する回転爪体(21)の爪部(22)の噛合いを切り離すペダル(28)の穴部(29)に当該手織り機の上部から下方向に伸びた連結体(27)を通し、ペダル(28)下面に位置するその連結体(27)の下部端部(32)にペダル用弾性体(24)を設けた請求項1に記載した手織り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−265799(P2006−265799A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89984(P2005−89984)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(501348531)ワールドリビング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】