説明

α−ケトグルタル酸及び関連化合物の血漿中脂質を低下させるための使用

本発明は、α-ケトグルタル酸、グルタミン、グルタミン酸、及び医薬的に許容され得るそれらの酸の塩、α-ケトグルタル酸のアミノ酸またはジ-もしくはトリペプチドとのアミド、グルタミンと他のアミノ酸のジペプチド、グルタミンと他のアミノ酸のトリペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のジペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のトリペプチド、並びに医薬的に許容され得る前記ジペプチド及びトリペプチドの塩、α-ケトグルタル酸または医薬的に許容され得るそれらの塩と少なくとも1種のアミノ酸の医薬的に許容される物理的混合物から成る群から選定される少なくとも1種の、医薬品または食品もしくは補助食品の製造のため、コレステロール、低密度脂質(LDL)及びグリセライドから成る群から選定される少なくとも1種の増加した血漿レベルの症状の治療または予防のため、または鳥類及び人を含む哺乳動物等の脊椎動物における高密度脂質(HDL)産生を促進するための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公知の薬理学的活性化合物の新規の使用に関する。より詳細には、本発明は所定の酸、脂質及び塩ならびにそれらの混合物の、医薬調製品、または食品もしくは補助食品の製造のための、コレステロール、低比重脂質(LDL)及びグリセリドから成る群から選定される少なくとも1つの増加した血漿中レベルの症状を治療または予防するための、或いは鳥類、及びヒトを含む哺乳動物等の脊椎動物において高密度脂質(HDL)産生を促進するための、新規の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは両親媒性脂質であり、そして例えば生体膜及び血漿中リポタンパク質の外層の必須構成成分である。リポタンパク質は遊離コレステロールを血流に輸送し、ここでは他のリポタンパク質と血漿中に含まれるコレステロールとのバランスの原理上で交換される。エステル化されたコレステロールは、バッファーコレステロールであり、体の大部分の組織で見出される。それは血漿リポタンパク質のコアの中で”荷(a load)”として輸送される。LDL、低密度リポタンパク質は、コレステロールとコレステロールエステルを多くの組織へ運搬する中で媒介として働く。遊離コレステロールは、HDL、高密度リポタンパク質により組織から除去され、そしてそれが胆汁酸へと代謝される肝臓へ運ばれ、そして最終的に逆コレステロール輸送のプロセスにおいて体内から除去される。コレステロールは、胆石の主成分でもある。しかしながら、病理学的プロセスにおけるその最も重要な役割は、血管のアテローム性動脈硬化症におけるその積極的な関与であり、脳動脈、冠状脈、及び全身性動脈の疾患を導く。動脈硬化症の増大は、HDL濃度比に対して高いLDLに確実に相関する。HDLは、組織から肝臓へ輸送される間の特定コレステロール”スイーパー”である。
【0003】
コレステロールは、コルチコステロイド、性ホルモン、胆汁酸、及びビタミンD等の体内の全ての他のステロイドの前駆体である。それは動物代謝の典型的な産物であり;その結果として、卵黄、肉、肝臓お及び脳等の動物起源の食品中に見出された。
【0004】
成人体は、約140 gの全(遊離及びエステル化)コレステロールを含み、約40 gが神経組織で見出され;血漿中には5%が残存しているのが見出される。他の器官及び組織中のコレステロールの含有量は、脂肪組織および肝臓中の最も重要な変化により変動する。
【0005】
動脈壁の結合組織におけるコレステロールエステル及び他の脂質の堆積は、動脈硬化に特徴付けられる。経時的な動脈中のコレステロール堆積は、硬化を来たし、それは動脈を狭くし、そして血流を妨げ、または血流を全体的に遮断しさえする。動脈が狭窄すると、不十分な血流で酸素不足になる。心臓で酸素が欠乏すると(虚血が起こる)、胸痛が引き起こされる。冠動脈の一つが全体的に遮断されると、心筋梗塞または心臓の壊死が発達する。
【0006】
高レベルのコレステロール自体は、いかなる徴候も誘発しないので;多くの人は、体内での高濃度のコレステロールの有害な影響に気付かない。高いコレステロール濃度の効果的な低下は、冠状動脈性心疾患、心不全及び心臓死のリスクを減少させる。更に、心筋梗塞を経験した冠状動脈性心疾患で苦しむ人におけるコレステロールの減少は、更なる梗塞のリスクを減少させ、そして彼等の寿命を延長させた。コレステロールレベルの減少は、全ての年齢群における全ての人々の懸案事項である。
【0007】
血漿中の低密度リポタンパク質またはLDLは、酸化プロセスの間に容易に修飾され、動脈硬化症の発達において重要な要因を構成する。動脈硬化症の始まりは、必ずLDLの酸化に関連する。酸化されたLDL(オキシLDL)は、一般的にプロ動脈硬化剤(proarteriosclerotic agent)であるとみなされる。LDLの酸化は、リン脂質とコレステロールエステル中に含まれる不飽和脂肪酸残基の過酸化から成る。このプロセスは酸素フリーラジカルによって誘導される。マクロファージと平滑筋細胞は、修飾されたLDLを吸収し、そしてそれらの細胞自体は、アテロームプラークの主な成分であるコレステロールと脂質がつまった泡沫(黄色腫)細胞に変化する。泡沫細胞の形成は、血漿中のオキシLDL濃度の増加により増大する。しばしば血管内血栓形成を導く血小板凝集は、動脈硬化の発病にも重要な役割を果たす。
【0008】
アテロームプラークは、骨組織形成に似た特定のミネラル化(石灰化)プロセスを行う。石灰化は患者の年齢に関係なく心筋梗塞のリスクを増加させる。血管形成術(例えば、冠動脈壁解離)後の合併症はより頻繁に起こるようになる。石灰化は、アテロームプラークの縁での破裂が、堅いプラークが動脈のしなやかな壁に接近した時により頻繁になるため、不安定な冠状動脈性心疾患の形成も促進する。また石灰化は、血管壁の張力へ影響を及ぼし、そして血管壁の弾力性を減少させて、動脈の縦断面を増加させることを困難にする。弾力性の喪失は、血液動態を有意に損ない、そして心疾患の発達へつながる。
【0009】
循環器系疾患は、以下の不規則形態:標準レベルのLDLでのVLDL(主にトリグリセリド)レベルの増加 、標準レベルのVLDL(トリグリセロール)でのLDLレベルの増加、または両リポタンパク質フラクション(コレステロール+トリグリセリド)レベルの増加の一つを取り得る。
【0010】
多様な外部要因はコレステロール濃度にも影響を及ぼし得る。何よりもまず、その濃度は、年齢により変化する。卵巣または内分泌腺の活性の終了が影響とされる更年期障害は、特に当てはまる。類似の兆候は、男性更年期でも起こる。妊娠は、血中のコレステロール濃度を増加させる。月経周期に関連するバラツキが一般的に報告されている。排卵中は、血漿中コレステロール濃度は減少する。卵巣摘出後、または卵巣活性の自発的に起こる活動終了の結果として、 コレステロール及びトリグリセリドの濃度が増加する。エストロゲンは、血中HDL濃度を増加させる。従って、HDLの不存在が増加したLDL濃度を惹起し、その結果として循環器疾患の増加したリスクを惹起するので、エストロゲンの欠如は動脈硬化のより大きなリスクに変わる。避妊薬の経口投与は、特に顕著に若い女性のコレステロールレベルをも増加させ得る。
【0011】
粗悪な食事は、コレステロールレベルを上昇させる更なる他の隠れた原因である。脂肪消費及び高度に偏った食物及び減少した野菜と果実の消費は、 血中のコレステロールを上昇させる。肥満及び異常への傾性、特に非常に重い体重は、コレステロール及びトリグリセリドのレベルにも影響を与え得る。かかる人々は、彼らの体内でそれらの上昇した量の成分を有すことが報告されている。更に、循環器系における変化は、肥り過ぎの人々を骨格系に関連した問題に曝す。関節異常が発生するようであり、そして骨格系が成長し続けている若者が骨損傷を患い得る。彼らの骨が度を超えた体重を支えるのに適合しないからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明によれば、驚くことに、α-ケトグルタル酸、グルタミン及びグルタミン酸及び塩、並びに前記アミノ酸及び塩のジペプチド及びトリペプチド、α-ケトグルタル酸のアミノ酸とのアミド及び混合物を、増加した血漿中コレステロールレベル、LDLレベル及び/またはグリセリドレベルの症状の治療または予防のため、或いは鳥類及び人を含む哺乳動物等の脊椎動物におけるHDL産生の促進のために使用し得ることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の一つの観点によれば、α-ケトグルタル酸、グルタミン、グルタミン酸及び医薬的に許容され得るそれらの酸の塩、α-ケトグルタル酸とアミノ酸またはジペプチドもしくはトリペプチドのアミド、グルタミンと他のアミノ酸のジペプチド、 グルタミンと他のアミノ酸のトリペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のジペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のトリペプチド、並びに医薬的に許容され得る前記ジペプチドとトリペプチドの塩、α-ケトグルタル酸または医薬的に許容され得るそれらの塩、及び少なくも1種のアミノ酸の医薬的に受け入れられる物理的混合物から成る群から選定される少なくとも1種のメンバーの、医薬品または食品もしくは補助食品の製造のための、コレステロール、低密度脂質(LDL)及びグリセリドから成る群から選定された少なくとも1つの増加した血漿レベルの状態を治療または予防するための、或いは鳥類及び人を含む哺乳動物等の脊椎動物における高密度脂質(HDL)の産生促進のための新規の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適な態様によれば、α-ケトグルタル酸またはそれらのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、またはそれらの組合せが使用される。好適にはα-ケトグルタル酸ナトリウムが使用される。
【0015】
本発明の他の観点によれば鳥類及び人を含む哺乳動物中のコレステロール、低密度脂質(LDL)及びグリセリドから成る群から選定される少なくとも1つの増加した血漿中レベルの状態を治療または予防するための方法を提供し、当該方法は、かかる治療または予防を必要とする対象に、血漿レベルを低める有効量のα-ケトグルタル酸、グルタミン、グルタミン酸及び医薬的に許容され得るそれらの酸の塩、α-ケトグルタル酸のアミド、及びアミノ酸またはジ-もしくはトリペプチド、グルタミンと他のアミノ酸のジペプチド、グルタミンと他のアミノ酸のトリペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のジペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のトリペプチド、及び医薬的に許容され得る前記ジペプチドとトリペプチドの塩、α-ケトグルタル酸もしくは医薬的に許容され得るそれらの塩、及び少なくとも1種のアミノ酸の医薬的に許容される物理的混合物から成る群から選定される少なくとも1種を投与することを含んで成る。
【0016】
本発明の更なる観点によれば、鳥または人を含む哺乳動物において高密度脂質(HDL)産生を促進するための方法を提供し、当該方法は、前記鳥または哺乳動物に、α-ケトグルタル酸、グルタミン、グルタミン酸及び医薬的に許容され得るそれらの酸の塩、α-ケトグルタル酸とアミノ酸またはジ-もしくはトリペプチドのアミド、グルタミンと他のアミノ酸のジペプチド、グルタミンと他のアミノ酸のトリペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のジペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のトリペプチド、及び前記ジペプチド及びトリペプチドの医薬的に許容され得る塩、α-ケトグルタル酸または医薬的に許容され得るそれらの塩及び少なくとも1種のアミノ酸の医薬的に許容される物理的混合物から成る群から選定される少なくとも1種を、血漿中HDLレベルを増加させるために有効な量を投与することを含んで成る。
【0017】
これらの観点の好適な態様によれば、α-ケトグルタル酸またはそれらのアルカリもしくはアルカリ土類塩またはそれらの組合せを投与する。最適には、α-ケトグルタル酸ナトリウムを投与する。
【0018】
本発明で使用される活性成分または成分の食品または補助食品及び医薬品は、哺乳動物及び鳥類を含む脊椎動物、例えば、げっ歯類(マウス、ラット、モルモット、またはウサギ等);鳥(七面鳥、雌鳥(hen)または鶏及び他のブロイラー及び放し飼い動物等); 牛、馬、豚または子豚及び他の家畜、イヌ、ネコ、そして他のペット、及び特にヒトに投与してよい。
【0019】
投与は、処置する脊椎動物の種、前記方法を必要とする脊椎動物の症状、及び処置を行う特定の適応症によって異なる方法で実施してよい。
【0020】
一の態様では、当該投与は、食品または補助食品、例えば栄養補助食品及び/または固形食品及び/または飲料の形態にある成分としてなされる。更なる態様は、更に後述する懸濁物または溶液、例えば飲料の形態にあってよい。更に、形態はカプセルまたは錠剤、例えば可咀嚼性または可溶性等(例えば発泡性錠剤)、並びに当業者に公知のパウダー及び他の乾燥形態、例えばペレット等(マイクロペレット及びグレイン等)であってよい。
【0021】
投与は、非経口、直腸、または経口食品もしくは補助食品として、上述したように投与してよい。非経口のビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、Ringer's デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸化Ringer'sまたは不揮発性油を含む。
【0022】
食品及び補助食品は更に乳化してよい。その後、活性治療成分または成分は賦形剤と混合してよく、当該賦形剤は医薬的に許容され得るものであり、且つ活性成分と相性がよいものである。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等及びそれらの組合せである。更に所望されるならば、当該組成物は、活性成分の有効性を増強する湿潤剤、または乳化剤、pH緩衝剤等の少量の補助剤を含むことができる。
【0023】
経口食品または補助食品の多様な形態は、固形食品、液体または凍結乾燥製剤、または乾燥製剤等で供給してよい。それは多様な緩衝剤(例えば Tris-HCl、アセテート、ホスフェート)、pH及びイオン強度の希釈剤、表面吸着を妨げるためのアルブミンまたはゼラチン等の添加物、洗剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、充填剤または等張改善剤(例えばラクトース、マンニトール)、当該組成物へ共有結合したポリエチレングリコール等のポリマー、金属イオンとの錯体形成、または 当該材料の高分子化合物(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル等)の微粒子調製品中もしくは微粒子調製品上、またはリポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層もしくは多重膜小胞、赤血球ゴースト、もしくはスフェロプラスト上への導入を含んでよい。一つの態様では、食品または補助食品は、本発明のいずれかの方法において、飲料またはそれらの乾燥組成物の形態において投与される。
【0024】
飲料は、栄養的に許容され得る水溶性担体(例えばミネラル、ビタミン、 炭水化物、脂質及びタンパク質)と一緒に、それらの活性成分または成分の有効量を含む。それらの構成要素の全ては、飲料が乾燥形態で提供されるならば、乾燥形態で供される。消費の準備が成された飲料は、更に水を含んで成る。最終的な飲料溶液は、制御された等張性と酸性(例えば、上記段落における一般的な示唆による緩衝溶液のような)を更に有し得る。
【0025】
pHは好適には約2-5の範囲で、そして詳細には約2-4の範囲で、バクテリア及び真菌の成長を妨げる。殺菌された飲料は、約6-8のpHで使用され得る。
【0026】
飲料は単独または1つ以上の治療的に有効な組成物との組合せで供され得る。
【0027】
更なる態様によれば、経口及び直腸使用のための薬物としての医薬品は、錠剤、ロゼンジ、カプセル、粉末、水性もしくは油性の懸濁物、シロップ、エリキシル、水性溶液等の形態にあってよく、医薬的に許容され得る担体及び/または添加剤(例えば本発明において開示された方法及び使用において有用である希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、補助剤及び/または担体等)との混合にある活性成分または成分を含む。
【0028】
更に、本明細書において使用される"医薬的に許容され得る担体"とは、当業者に周知のものであり、そして限定されずに、0.01- 0.05 Mのリン酸緩衝剤または0.8%の生理食塩水を含んでよい。更にかかる医薬的に許容され得る担体は、水性または非水性溶液、懸濁物、及びエマルションであってよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)、及び注入可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)である。 水性担体は生理食塩水及び緩衝媒体を含む水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁物を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、Ringer'sデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、 乳酸化Ringer'sまたは不揮発性油を含む。保存剤及び他の添加物(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等)が更に存在してよい。
【0029】
α-ケトグルタル酸とのアミドの一部、或いはグルタミンもしくはグルタミン酸とのジペプチド、またはグルタミン及び/もしくはグルタミン酸とのトリペプチドを形成するアミノ酸は、天然でのペプチド中の成分として発生する任意のアミノ酸であってよい。同一物は、α-ケトグルタル酸または少なくとも1種のアミノ酸とのそれらの塩の医薬的に許容される物理的混合物に適用される。好適にはアミノ酸または酸は、アルギニン、オルニチン、ロイシン、イソロイシン、及びリシンから成る群から選定される。
【0030】
前記アミノ酸は、好適にはそれらのL-配置で使用される。
【0031】
α-ケトグルタル酸とアミノ酸、またはジ-もしくはトリペプチドのアミドの例は、制限されずに、α-ケトグルタル酸の、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、リシン、プロリン、イソロイシン及びロイシンから成る群から選定されるアミノ酸とのアミド、並びにα-ケトグルタル酸の、グルタミンと任意のグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、リシン、プロリン、イソロイシン、及びロイシンのジペプチド、並びにグルタミン酸と任意のアルギニン、オルニチン、リシン、プロリン、イソロイシン及びロイシンのジペプチドとのアミドを含む。
【0032】
グルタミン及びグルタミン酸の他のアミノ酸とのジペプチド及びペプチドの例は、上記α-ケトグルタル酸のジ-またはトリペプチドとのアミドとの関係におけるものを含む。
【0033】
α-ケトグルタル酸またはそれらの塩の少なくとも1つのアミノ酸との物理的混合物の例は、制限されずに、α-ケトグルタル酸、並びに任意のグルタミン、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、ロイシン、イソロイシン、リシン及びプロリン、及び任意の前記アミノ酸の組合せとのナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウム塩から成る群から選定される少なくとも1種の物理的混合物を含む。
【0034】
α-ケトグルタル酸またはそれらの塩とアミノ酸または前記物理的混合物のアミノ酸のモル比は、一般的には1:0.01から1:2、好適には1:0.1から1:1.5、及び最適には1:0.2から1:1.0の範囲にあるだろう。
【0035】
投与量は、使用する活性成分または成分、処置する症状、処置する患者の年齢、性別、体重等に依存して変化するだろうが、一般的に1〜1000 mg/体重kg/日、好適には10〜100 mg/体重kg/日の範囲内であろう。
【0036】
本発明は、多くの実施例によってここに更に説明され、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0037】
試験は、標準的な気象条件で保たれたWistar雌ラットで実施した。最初の14日間、このラットを動物室の条件(温度22℃±2℃、12時間/12時間昼夜サイクル、湿度55%±5%)への順応期間におき、水を近くに置き、そして標準ラットペレット飼料(LSM)を与えた(Wytwornia Pasz [飼料供給装置] "Agropol" Motycz near Lublin)。その後、雌ラットを無作為に2群に分け:1群の全ての動物の卵巣を摘出し(OVX)、そして第2の群にプラセボ処置を行った(SHO)。外科的処置は、一般的な麻酔下(それぞれrometare、ケタミン及びアトロピンを2、10及び0.05 mg/体重の量)で実施した。
【0038】
試験は当該2群の動物で行った:処置後7日間から実験溶液を受けた雌(卵巣ホルモンの活性が欠如した最初の期間と同時)(実験I 1)、卵巣のホルモン活性がないまま5ヶ月にある7ヶ月齢の雌(卵巣ホルモンの活性の不存在を延長させることによる期間と同時) (実験 I 2) (表.2)。それぞれの年齢群にある動物は、経口で基礎溶液(表.1)を受ける群と、10倍及び100倍に薄めた基礎溶液を受ける群(後述するAKG 1、0.1、及び0.01投与量)に分けられる。
【0039】
実験Il及びI2では、それぞれの実験での投与が計240の動物となるように、それぞれ40の動物を使用した。
表1.基礎のプラセボ及びα-ケトグルタル酸(AKG)実験溶液の組成物
【表1】


【0040】
表2. 実験1のダイアグラム
【表2】



解体後すぐに血液サンプルを収集し、そして遠心分離により除去した血漿を更なる生化学的分析のための安全な場所で貯蔵した。
【0041】
生化学的分析
全コレステロール濃度を、分光光度法を用いて、一般的に入手できる分析装置により決定した。
結果は以下の表3〜8に報告する。
【0042】
表3.投与量0.01のAKGの血漿中コレステロール濃度(mmol/1)への保護効果(手術後7日+60日のAKG処置)(X±S.E.M)(a,b,p<0.05) (SHO=シャム処理済;OVX=卵巣摘出済Wistarラット)
【表3】


【0043】
表4.投与量0.1のAKGの血漿中コレステロール濃度(mmol/1)への保護効果(手術後7日+60日のAKG処置) (SHO=シャム処理済;OVX=卵巣摘出済Wistarラット)
【表4】


【0044】
表5.投与量0.01のAKGの血漿中コレステロール濃度(mmol/1)への治療効果(手術後150日+60日のAKG処置)
(X±S.E.M)(a,b,p<0.01)(A,Bp<0.05)
(SHO=シャム処理済;OVX =卵巣摘出済Wistar ラット)
【表5】


【0045】
表6.投与量0.1のAKGの血漿中コレステロール濃度(mmol/1)への治療効果(手術後150日+60日のAKG処置)(X±S.E.M)(a,b,p<0.05)(A,Bp<0.01)
【表6】


【0046】
表7.投与量1.0のAKGの血漿中コレステロール濃度(mmol/1)への保護効果(手術後7日+60日のAKG処置)
【表7】


【0047】
表8.投与量1.0のAKGの血漿中コレステロール濃度(mmol/1)への治療効果(手術後90日+60日のAKG処置)(a,b p<0.05; A,B p<0.001プラセボ、対.AKG処置群の間での統計学的に有意な差異)(# p<0.001;* p<0.01 それぞれSHO プラセボ、対. OVX処置群の間での統計学的に有意な差異)。
【表8】


【実施例2】
【0048】
(実験II)
試験は250 gの平均体重を有するWistarラット(計84の動物が使用される)で実施した。このラットを動物室の条件(温度22℃±2℃、12時間/12時間昼夜サイクル、湿度55%±5%)への順応期間におき、水と飼料を近くに置いた。その後、全ての動物は、高コレステロール血症を得るために、1%のコレステロール(Sigma-Aldrich, 独)と10%のラードを有す栄養価の高い飼料を受けた。
【0049】
12のラット(6は雌、及び6は雄)をコントロール導入として0日で殺した。
12のラット(6は雌、及び6は雄)を30日で殺した。
12のラット(6は雌、及び6は雄)を60日で殺した。
【0050】
残りの48のラットを3群に分割し、そして実験は、更にコレステロール性の食餌で60日間継続した:
1. プラセボ群-24のラット(12の雌、および12の雄)
2. 1 gのAKG群-12のラット(6の雌、および6の雄)
3. 0.1 gのAKG群-12のラット(6の雌、および6の雄)
プラセボと実験溶液は、実施例1で記載した。
【0051】
表9.実施例IIのダイアグラム
【表9】

【0052】
生化学的分析
コレステロールとラードに富む食餌を用いた最初の60日間は、脂質プロファイルを3回チェックして、全コレステロール、LDL及びHDLのフラクション、並びにトリグリセリドの濃度を決定した。前記食餌を開始する前日に計測試験を実施し(0日)、そして引き続き前記食餌の適用の30日及び60日後に行った。試験の61日目に動物を2群に分け:-一方の群はプラセボ溶液を受け、そしてもう一方の群はAKG溶液(投与量0.1と1のAKG)を受けた(表9)。全ての時間において、動物は実験飼料を継続して受けた。プラセボ及びAKG溶液を投与した期間、実験の120日目に脂質プロファイルをチェックした。
【0053】
血漿は全てのケースにおいて使用し、そして試験は解体後に速やかに実施した。
【0054】
結果は以下の表10〜14に示す。
表10.ラット血漿中の総コレステロールレベル(mg/dl)(X±S.E.M) (a,b,cp<0.01)
【表10】

【0055】
表11.ラット血漿中トリグリセリドレベル(mg/dl)(X±S.E.M) (a,b,c p<0.01)
【表11】


【0056】
表12.ラット血漿中LDLレベル(mg/dl)(X±S.E.M) (a,b,c p<0.001)
【表12】

【0057】
表13.ラット血漿中HDLレベル(mg/dl)(X±S.E.M) (a,b,c p<0.05)
【表13】

【0058】
表14.ラットの体重(g)(X±S.E.M) (a,b,c p<0.05)
【表14】

【実施例3】
【0059】
(実施例III)
試験は、高レベルのコレステロール、194 mg/dl及び190 mg/dlをそれぞれ有するボランティアで行った。チュアブル錠は1.28 gのα-ケトグルタル酸カルシウム(1 gのα-ケトグルタル酸(AKG)と0.28 gのカルシウムに相当する)を個々に含むように調製し、そしてボランティアに経口投与した。実験は計42日間継続した。1日から28日は、患者は1日3回、2錠のAKGを服用した。試験期間において、食事に関する定量的または定性的な制限は導入されなかった。コレステロール、LDL及びHDLのフラクション、及びトリグリセリドの濃度を決定するために、1日から28日間の患者の脂質プロファイルを7日ごとにチェックした。AKG錠の投与は、28日期後の14日間中断した。脂質プロファイルのその後の計測は、実験の42日目に行った。その結果は、以下の表15〜18に示す。
【0060】
表15.総コレステロールレベル(mg/dl)
【表15】

【0061】
表16.HDLレベル(mg/dl)
【表16】

【0062】
表17.LDLレベル(mg/dl)
【表17】

【0063】
表18.トリグリセリドレベル(mg/dl)
【表18】

【0064】
考察
卵巣摘出(OVX)の適用は、一般的に閉経後症候群の中で観察される徴候をシミュレートするモデルアプローチとして見なされ、ラットの血漿中コレステロール濃度を増加へ導いた。AKGの投与量0.01での、60日間の、OVX雌(実験I-1)への適用は、コントロール群の動物において観察されるレベルへと到達するそれらの動物における全コレステロールの濃度において、統計学的に有意な減少をもたらした(p=0.04)。同様の傾向は、AKGを投与量0.1で受けたラットに観察された(実験I-1)。AKGの効果は、延長した卵巣ホルモンの欠如を有す雌でより明白であった(実験I-2)。0.01と0.1のα-ケトグルタル酸は、両投与量ともOVX及びSHO群における分析下での動物中の全コレステロールの濃度の統計学的に有意な減少を引き起こした。更に投与量1のαケトグルタル酸の適用も、卵巣ホルモンの活性の短期間及び長期間不存在に関する実験の両方で、コントロール群に対して、卵巣摘出後の雌における全コレステロール濃度を減少させた。 (実験I-1及びI-2)。
【0065】
実験IIでは、1%のコレステロールと10%のラードを有す栄養価の高い飼料を、高コレステロール血症を導くために使用した。実験の30日後のコレステロールプロファイルの分析は、雌雄ともに0日でのコントロール群と比較して、トリグリセリド濃度の統計学的な増加を示した。更に全コレステロール濃度の有意な増加は、雄で測定された。それは雌性及び雄性における一様なHDL濃度に関連の下降傾向、及びLDL濃度中の適合増加(matching increase)を実験飼料の給餌期間60日後に観察したことが強調されるべきである。
【0066】
61日から60日間継続して、投与量0.1と1のAKG溶液を投与した。実験の120日目で実施した脂質プロファイルの分析は、雌性及び雄性の血漿中の全コレステロール、LDLフラクション及びトリグリセリドの統計学的に有意な減少を示した(p< 0.05)。試験を受けた動物のHDL濃度の上昇も同時に観察され、統計学的に確認された(p<0.05)。
【0067】
実験III では、比較的高いレベルの全コレステロール、LDLフラクション及びトリグリセリドを有する2人のボランティアで試験をした。1gのAKGを含むように特に調製された錠剤を服用して28日後(1日2錠、3回)、全コレステロール及びLDLフラクションの濃度の減少を観察した。HDLの濃度に有意な影響は観察されなかった。HDLの濃度は、実験の第二週及び第三週にいくぶん低下し、そして28日目のHDLレベルはもとのレベルと同等であった。実験の1日目から28日目では、トリグリセリド濃度の増加が確認された。α-ケトグルタル酸の適用により減少する全コレステロールとLDLフラクションの濃度は、当該調製品投与を14日間中断した後に上昇した。トリグリセリド濃度の有意な上昇も更に観察された。コレステロールのHDLフラクションの濃度の統計学的に有意な減少も同時に測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-ケトグルタル酸、グルタミン、グルタミン酸及び医薬的に許容され得るそれらの酸の塩、α-ケトグルタル酸のアミノ酸またはジペプチドもしくはトリペプチドとのアミド、グルタミンと他のアミノ酸とのジペプチド、グルタミンと他のアミノ酸とのトリペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸とのジペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸とのトリペプチド、並びに医薬的に許容され得る前記ジペプチド及びトリペプチドの塩、α-ケトグルタル酸の医薬的に許容される物理的混合物、または医薬的に許容され得るそれらの塩、及び少なくとも1つのアミノ酸から成る群から選定される少なくとも1つの、医薬品または食品もしくは補助食品の製造のための使用、コレステロール、低密度脂質(LDL)及びグリセリドから成る群から選定させる少なくとも1つの上昇した血漿レベルの症状を治療または予防するための使用、或いは鳥類及び人を含む哺乳動物等の脊椎動物における高密度脂質(HDL)産生促進のための使用。
【請求項2】
α-ケトグルタル酸またはそれらのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、或いはそれらの組み合わせを使用する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
α-ケトグルタル酸ナトリウムを使用する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
鳥類及び人を含む哺乳動物におけるコレステロール、低密度脂質(LDL)及びグリセリドから成る群から選定される少なくとも1種の上昇した血漿レベルの症状を治療または予防するための方法であって、かかる治療または予防を必要とする対象へ、上記血漿レベルを低下させるに有効量の、α-ケトグルタル酸、グルタミン、グルタミン酸及びそれらの酸の医薬的に許容され得る塩、α-ケトグルタル酸とアミノ酸またはジペプチドもしくはトリペプチドとのアミド、グルタミンと他のアミノ酸のジペプチド、グルタミンと他のアミノ酸のトリペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のジペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のトリペプチド、及び前記ジペプチド及びトリペプチドの医薬的に許容され得る塩、α-ケトグルタル酸の医薬的に許容される物理的混合物、或いは医薬的に許容され得るそれらの塩、及び少なくとも1つのアミノ酸から成る群から選定される少なくとも1種を投与することを含んで成る方法。
【請求項5】
鳥または人を含む哺乳動物における高密度脂質(HDL)産生を促進するための方法であって、前記鳥または哺乳動物へ、血漿中のHDLレベルが上昇するに有効量の、α-ケトグルタル酸、グルタミン、グルタミン酸及びそれらの酸の医薬的に許容され得る塩、α-ケトグルタル酸とアミノ酸のアミド、グルタミンと他のアミノ酸のジペプチド、グルタミンと他のアミノ酸のトリペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のジペプチド、グルタミン酸と他のアミノ酸のトリペプチド、及び前記ジペプチドとトリペプチドの医薬的に許容され得る塩、α-ケトグルタル酸、他のアミノ酸または医薬的に許容され得るそれらの塩の医薬的に許容される物理的な混合物、及び少なくとも1つのアミノ酸から成る群から選定される少なくとも1種を投与することを含んで成る方法。
【請求項6】
α-ケトグルタル酸、またはそれらのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、またはそれらの組合せを投与する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
α-ケトグルタル酸ナトリウムを投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
活性成分または成分を含んで成る医薬品または食品もしくは補助食品を投与する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−502679(P2008−502679A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516436(P2007−516436)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000929
【国際公開番号】WO2005/123056
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506414691)エスゲーペー アンド ソンズ アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】