説明

α−メラニン形成細胞刺激ホルモンのペプチド類似体

本発明は、メラノコルチン1受容体(MC1R)に対する選択性を有するネイティブα−メラニン形成細胞刺激ホルモン(α−MSH)の安定ペプチド類似体を提供する。また、本発明は、α−MSHペプチド類似体の薬学的調製物、ならびにMC1Rに関与する医学的および獣医学的状態の処置においてこれらの類似体を使用する方法も提供する。さらに別の態様では、本明細書中では、被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の本明細書中で提供する化合物とを含む薬学的組成物を投与することを含む、炎症を処置することを必要としている被験体における炎症を処置する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペプチド類似体に関する。具体的には、本発明は、メラノコルチン1受容体(MC1R)に対する選択性を有するネイティブα−メラニン形成細胞刺激ホルモン(α−MSH)のペプチド類似体、その薬学的調製物、ならびに医学的および獣医学的状態の処置におけるこれらの類似体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経ペプチドとは、身体全体に広く分布しており、神経伝達物質から成長因子までの機能を有する小さな生物活性ペプチドである。多くの証拠により、神経ペプチドが抗炎症能力を有することが示されている。多くの神経ペプチドのうちには、メラノコルチン(MC)受容体と結合してそれを刺激するメラノコルチンペプチド(メラノコルチン)が存在する。メラノコルチンの例としては、主に末梢色素沈着を調節するその能力が知られているが、抗炎症能力および免疫調節能力を有することも知られている、α−メラニン形成細胞刺激ホルモン(α−MSH)が挙げられる。α−MSH神経ペプチドはいくつかの臓器中で検出されており、ニューロン、下垂体、腸、皮膚、および免疫細胞によって産生される。
【0003】
α−MSHの免疫調節能力は、ハプテン特異的な寛容をα−MSHの注射によって誘導した接触過敏症のモデル、および細菌内毒素媒介性炎症の抑制において実証されている。また、α−MSHは、炎症性腸疾患、関節炎、および実験的心臓移植などの多くの動物疾患モデルにおいて治療活性を有することが示されている。脳炎症、腎傷害および肝炎症の他の動物モデルにより、この神経ペプチドの抗炎症性効果が実証されている。α−MSHは、TNF−α、IL−6、およびIL−1などの炎症誘発性サイトカインの産生を抑制し、マクロファージおよび好中球の炎症部位への遊走を減少させるケモカインを阻害する。一酸化窒素(NO)は様々な形態の炎症の共通の媒介物質である。内毒素に刺激されたマクロファージおよび好中球によるNO合成も、α−MSHによって阻害されることが示されている。サイトカイン産生に対するその効果に加えて、α−MSHは、抗原提示および同時刺激を生じさせる単球および樹状細胞上のMHCクラスI、CD86およびCD40の発現をダウンレギュレートする。また、α−MSHは、免疫抑制効果の重要な構成要素であると考えられている、単球中でのインターロイキン10(IL−10)の形成を増加させることでも知られている。
【0004】
α−MSHの免疫調節効果の分子機構は完全には理解されていないが、α−MSHの潜在的な作用機構は、細胞中での核因子−κBの活性化を阻害するその能力である。NF−κBの阻害は、マクロファージによる炎症誘発性サイトカインの産生および一酸化窒素の合成の抑制をもたらす。α−MSHは、7つの膜貫通ドメインを有するG−タンパク質−共役型受容体の群に属する特定の受容体と結合することによって機能する。これらの受容体には、マクロファージ上のメラノコルチン1およびメラノコルチン3受容体(MCR−1およびMCR−3)が含まれ、それによってα−MSHの結合がNF−κBを阻害する。また、α−MSHの免疫調節効果の多くは、cAMPの蓄積によっても媒介される。α−MSHのメラノコルチン受容体への結合はcAMPレベルを増加させ、これにより、IκBの分解が抑制され得、したがってNF−κBの転位および一酸化窒素の産生が阻害され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MC1受容体(α−MSHがこれに結合して刺激する)は、様々な抗炎症性および免疫調節性の応答に関連づけられている。5種類のメラノコルチン受容体、MC1〜MC5が同定されている。MC1受容体は、メラニン形成細胞、黒色腫細胞、マクロファージ、好中球、神経膠腫細胞、星状細胞、単球、内皮細胞、ならびに脳、精巣、および卵巣の特定の領域上に存在することが見出されている。MC1受容体を刺激し、有効な抗炎症性および免疫調節性の応答を生じさせる化合物および方法に関する興味が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中では、メラノコルチン1受容体(MC1R)と選択的に結合する実質的に純粋な化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、前記化合物は、配列His Xaa Arg Trp(配列番号1)もしくはD−Trp D−Arg Xaa D−His(配列番号2)を有するコアテトラペプチドを含む[式中、Xaaは、D−Cha、D−PheまたはChaであり、Xaaは、D−Cha、D−PheまたはPheである]。一部の実施形態では、C末端の配列は、D−Ser D−Ile D−Ile D−Ser D−Ser(配列番号3)である。
【0007】
本明細書中では、メラノコルチン1受容体(MC1R)と選択的に結合する実質的に純粋な化合物または薬学的に許容されるその塩をさらに提供し、前記化合物は、以下の配列を有するポリペプチドを含む:
Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13
[式中、Xaaは、D−Val、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、D−Pro、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、D−Lys、D−Orn、D−Nle、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、Gly、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Trp、Trp、D−3−ベンゾチエニル−Ala、D−5−ヒドロキシ−Trp、D−5−メトキシ−Trp、D−Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Arg、D−His、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Cha、D−Phe、Phe、D−4−フルオロ−Phg、D−3−ピリジル−Ala、D−Thi、D−Trp、D−4−ニトロ−Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−His、His、D−Arg、Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Glu、D−Asp、D−シトルリン、D−Ser、またはD−Alaであり、
Xaa10は、D−Met、D−ブチオニン、D−Ile、またはD−Alaであり、
Xaa11は、D−Ser、D−IleまたはD−Alaであり、
Xaa12は、D−Tyr、D−Ser、またはD−Alaであり、
Xaa13は、D−SerまたはD−Alaであり、
Xaa1〜3がすべてD−Alaである場合以外は、1個以下のXaa1〜13がD−Alaであり、
1個以下のXaa1〜13がL−アミノ酸である]。
【0008】
さらに別の態様では、本明細書中では、以下の配列を有するポリペプチドを含む実質的に純粋な化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する:
D−Val D−Pro D−Lys Gly D−Trp D−Arg Phe D−His D−Ser D−Ile D−Ile D−Ser D−Ser(配列番号4)、
D−Val D−Pro D−Lys Gly D−Trp D−Arg D−Cha D−His D−Ser D−Ile D−Ile D−Ser D−Ser(配列番号5)、
Ser Tyr Ser Met Glu His Cha Arg Trp Gly Lys Pro Val(配列番号6)、または
D−Val D−Pro D−Lys Gly D−Trp D−Arg D−Phe D−His D−Glu D−Met D−Ser D−Tyr D−Ser(配列番号7)。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書中で提供するポリペプチドはPEG化されている。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書中で提供する化合物は、生物活性部分とコンジュゲートさせることができる。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書中で提供する化合物はMC1Rと選択的に結合する。一部の実施形態では、化合物は、以下の特性、すなわち、MC1Rを選択的に活性化する能力、in vitroでの血漿中における安定性、およびプロテアーゼ分解に対する耐性のうちの少なくとも1つを示す。
【0012】
一態様では、本明細書中では、本明細書中で提供する実質的に純粋な化合物のうちの任意の1つと薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0013】
別の態様では、本明細書中では、被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の本明細書中で提供する化合物とを含む薬学的組成物を投与することを含む、自己免疫疾患または状態を処置することを必要としている被験体における自己免疫疾患または状態を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、自己免疫疾患または状態は、多発性硬化症、I型糖尿病、再生不良性貧血、グレーブス病、セリアック病、クローン病、ループス、関節炎、骨関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎および重症筋無力症からなる群から選択される。
【0014】
さらに別の態様では、本明細書中では、被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の本明細書中で提供する化合物とを含む薬学的組成物を投与することを含む、炎症を処置することを必要としている被験体における炎症を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、炎症は、炎症性腸疾患、関節リウマチ、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、乾癬、胃炎および虚血性心疾患からなる群から選択される疾患に関連している。
【0015】
一態様では、本明細書中では、被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の本明細書中で提供する化合物とを含む薬学的組成物を投与することを含む、移植片拒絶を減少させるかまたは阻害することを必要としている被験体における移植片拒絶を減少させるかまたは阻害する方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本明細書中では、被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の本明細書中で提供する化合物とを含む医薬品を投与することを含む、黒色腫を処置することを必要としている被験体における黒色腫を処置する方法を提供する。
【0017】
さらに別の態様では、本明細書中では、被験体に、薬学的に許容される賦形剤と、治療上有効な量の、抗腫瘍ペイロードとコンジュゲートさせた本明細書中で提供する化合物を含むコンジュゲートとを含む医薬品を投与することを含む、黒色腫を処置することを必要としている被験体における黒色腫を処置する方法を提供する。抗腫瘍ペイロードは、放射性核種、放射線増感剤、光増感剤、化学療法剤、または毒素であることができる。
【0018】
さらなる態様では、本明細書中では、本明細書中で提供する化合物の薬学的組成物および任意選択で使用説明書を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、ネイティブα−MSHによるブドウ膜炎の減少を示す。図1Aは、臨床スコアが2〜3となった場合にB10.RIIIマウスを1日1回のIVのネイティブα−MSH(100μg/マウス)で処置したデータを示す。ブドウ膜炎は無処置の対照と比較して有意に減少した(p<0.01)。図1Bは、B10.RIIIマウスを臨床スコアが1〜2となった場合に1日1回のIPのネイティブα−MSH(100μg/マウス)またはIPのデキサメタゾン(0.2mg/kgまたは2.0mg/kg)で処置したデータを示す(n=5)。網膜炎症は処置開始後に減少した(p<0.05)。アスタリスクは対照からの有意差を示す。
【図2】図2は、RI α−MSHおよびネイティブα−MSHによる、後期疾患におけるブドウ膜炎の寛解を例示する。B10.RIIIマウスでEAUを誘導し、マウスが後期疾患に達した(スコア3)12日目に、100μg/マウスのネイティブα−MSH、RI α−MSHまたはPBSを1日1回、i.v.で投与した。図2Aは、ネイティブα−MSHまたはレトロ−RI α−MSHで処置したマウスが、PBS対照マウスと比較してブドウ膜炎の疾患眼スコアの減少を示したデータを示す。図2Bは、EAU誘導後の16日目における、各群中のマウスの個々の最大眼スコアを示す(n=8)。アスタリスクは群間の有意差を示す(p<0.05)。
【図3】図3は、α−MSHまたはRI α−MSHで処置した動物からの網膜画像および個々の眼スコアを示す。B10.RIIIマウスでEAUを誘導し、100μg/マウスのネイティブα−MSH、RI α−MSHまたはPBSを用いた1日1回のi.v.処置を、マウスが後期疾患に達した13日目に開始した。13日間の処置後における各群からの中央値眼スコアを表す網膜の眼底検査画像を示す(n=11)。眼スコア3を有するPBSで処置したマウスは、眼のいくつかの四分円における炎症性病変および視神経に近位の血管炎を示す(図3A)。眼スコア1を有するα−MSHおよびRI α−MSHで処置したマウスは、視神経の周りにのみ炎症を有し、ブドウ膜炎の回復を示す(それぞれ図3Bおよび3C)。網膜は、各群からの中央値眼スコアを表す。処置後の13日目における各群中のマウスの個々の眼スコアをグラフに示す。アスタリスクは群間の有意差を示す(p<0.01)。
【図4】図4は、EAUにおけるRI α−MSHおよびネイティブα−MSHで処置したマウスの組織病理学を例示する。雌のB10.RIIIマウスにIRBP+CFAを注射してEAUを誘導した。マウスは、マウスが眼スコア3に達した際に、100μg/マウスのレトロ−インバーソα−MSH、ネイティブα−MSH、またはPBSを用いて1日1回、i.v.で処置した。RI α−MSHまたはα−MSHで処置したマウスの群は、眼球炎症応答が寛解していた(p<0.05)。写真は、PBS(図4A)、α−MSH(図4B)およびRI α−MSH(図4C)で処置したマウスの群からの中央値眼スコアを表す、処置開始の10日後の眼のヘマトキシリンおよびエオシン染色を示す。拡大率は100×である。
【図5】図5は、スクランブルペプチド対照と比較した、ブドウ膜炎に対するレトロ−インバーソα−MSHの1日1回の腹腔内投薬の効果を示す。B10.RIIIマウスを、疾患誘導後の11日目に、100μgのRI α−MSHまたはスクランブルDアミノ酸ペプチド対照を用いて1日1回の腹腔内注射によって処置した。データは、RI α−MSH(n=4)およびスクランブル対照ペプチド(n=5)で処置したマウスの群の臨床的平均眼スコアを示す。マウスは合計13日間処置した。データは2つの実験の代表的なものである。アスタリスクは群間の有意差を示す(p<0.04)。
【図6】図6は、網膜炎症の処置におけるRI α−MSHの有効性を例示する。B10RIIIマウスを、臨床スコアが4となった際に、RI α−MSH(3、10、または100μg/マウス)を用いて1日1回IP注射によって処置した。スクランブルペプチド対照は、100μg/マウスで1日1回注射した。グラフは経時的な臨床スコアを示す。100または10μg/マウスを用いた処置開始後に網膜炎症の減少が観察された。より低い用量のRI α−MSH(3μg/マウス)またはPBSもしくは対照スクランブルペプチドで処置したマウスでは、限られた有益な臨床応答が観察された(n=4)。アスタリスクは群間の有意差を示す(p<0.05)。
【図7】図7は、ネズミ黒色腫細胞におけるcAMP産生に対するRI α−MSHの効果を示す。0.01ng/ml〜1000ng/mlの濃度のネイティブα−MSH、レトロ−インバーソα−MSHまたはスクランブル対照ペプチドを用いて細胞を処置した後に、cAMPをB16−F1黒色腫細胞で測定した。図7Aは、ネイティブα−MSHおよびRI α−MSHがどちらもcAMPレベルを有意に増加させたことを示す。cAMPを測定するために使用した対照には、100μMの濃度のフォルスコリンが含まれていた。図7Bはアラニン走査データを示す。ネズミB16−F1黒色腫細胞系において、1μg/mlのRI α−MSHのアラニン置換ペプチドをcAMPレベルの増加について試験した。データは2つの実験の代表的なものである。配列のリストは表1に示す。アスタリスクは群間の有意差を示す(p<0.01)。
【図8】図8は、MOGで誘導したEAEの疾患の過程を例示する。MOG35−55ペプチド(200μg/マウス)およびCFAの乳剤を注射することによって、C57BL/6マウスでEAEを誘導した。百日咳毒素を0日目および2日目に注射した。100μg/マウスのα−MSH、RI α−MSH、またはPBSを用いた1日1回のi.p.処置を10日目に開始した。図8Aは、1日1回記録した臨床的疾患スコアを示す。図8Bは、疾患誘導後の20日目の各群中の個々の疾患スコアを示す。
【図9】図9は、RI α−MSHによる平均EAE疾患スコアの減少を示す。MOG35−55ペプチド(200μg/マウス)およびCFAの乳剤を注射することによって、C57BL/6マウスにおいてEAEを誘導した。百日咳毒素を0日目および2日目に注射した。100μgもしくは30μg/マウスのα−MSHもしくはRI α−MSH、2mg/kgのデキサメタゾン、またはPBSを用いた1日1回のi.p.処置を、10日目に開始した。臨床的疾患スコアを1日1回記録した。
【図10】図10は、RI α−MSHで処置したマウスの脊髄組織学を例示する。MOG35−55ペプチド(200μg/マウス)およびCFAの乳剤を注射することによって、C57BL/6マウスにおいてEAEを誘導した。百日咳毒素を0日目および2日目に注射した。100μg/マウスのRI α−MSHを用いた1日1回のi.p.処置を10日目に開始した。脊髄を疾患誘導後の24日目に収集した。各群から2匹の代表的なマウス、すなわち、PBSで処置したマウス(図10aおよび10c)ならびにRI α−MSHで処置したマウス(図10bおよび10d)を示す。矢印は炎症細胞の浸潤の部位を示す。
【図11】図11は、EAEの疾患期中のMOGペプチドで初回抗原刺激したマウスの脾臓中の、TNFαおよびIL−10のmRNAの量を示す。0日目にマウスを200μgのMOGペプチドで初回抗原刺激し、10〜15日目にPBS、α−MSH(100μg)またはRI α−MSH(100μg)を用いて1日1回処置した。脾臓を処置開始後の1日目(図11aおよび11b)、4日目(図11cおよび11d)ならびに7日目(図11eおよび11f)に採取し、定量的PCRによって、TNFαおよびIL−10のmRNAの発現について分析した。データは各処置群中の4匹のマウスの平均を示す。RNAレベルはβ−アクチンに対して正規化した。
【図12】図12は、MOG35−55ペプチドに対する復活応答を例示する。0日目にマウスを200μgのMOG35−55ペプチドで初回抗原刺激した。2〜8日目に、マウスにPBS、100μgのα−MSHまたは100μgのRI α−MSHをi.p.注射した(n=5)。9日目に、脾臓(図12a)およびリンパ節(図12b)の細胞を採取し、25μg/mlのMOG35−55ペプチドまたはOVAペプチドを用いてin vitroで刺激した。培養の3日目に、細胞に[3H]チミジンをパルスした。データは平均±SDを示す。MOGペプチドで刺激した脾臓細胞培養物から24時間後に上清を収集し、TNF−αおよびIFNγ(図12c)ならびにMCP−1(図12d)のサイトカインレベルをフローサイトメトリーによって分析した。データは平均±SDを示す。ナイーブマウスはMOGペプチドで初回抗原刺激しなかった。
【図13】図13は、MOGで初回抗原刺激したマウスにおけるRI α−MSH処置後の血清および脾臓のサイトカインプロフィールを例示する。0日目にマウスを200μgのMOG35−55ペプチドで初回抗原刺激した。2〜8日目に、マウスにPBS、100μgのα−MSHまたは100μgのRI α−MSHをi.p.注射した(n=5)。9日目に脾臓および血清を収集した。図13aおよび13bは、リアルタイムPCRによって定量した、それぞれ脾臓中のTNF−αおよびIL−10のmRNAレベルを示す。データは各処置群中の4匹のマウスの平均を示す。RNAレベルはβ−アクチンに対して正規化した。また、血清はフローサイトメトリーによってサイトカインレベルについても分析した。図13cは、TNF−α、MCP−1、IL−6の血清レベルを示し、図13dはIL−10およびIL−12の血清レベルを示す。ナイーブマウスはMOGペプチドで初回抗原刺激しなかった。データは平均±SDを示す。
【図14】図14は、マクロファージマーカーに対するα−MSHおよびRI α−MSHの効果を示す。マウスを、in vivoでMOGペプチドを用いて初回抗原刺激し、1〜7日目にα−MSHまたはRI α−MSH(100μg/マウス)で1日1回処置した。脾臓マクロファージをCD14、CD40およびCD86の発現レベルについてフローサイトメトリーによって分析した。細胞をCD11b(図14a)またはF4/80(図14b)のマクロファージ細胞集団のどちらかについてゲートした。データは、ゲートされたマクロファージ集団の両方の平均陽性率を示す(n=5)。
【図15】図15は、腹膜マクロファージ(図15a)および脾臓(図15b)の両方における、LPSで誘導したmMC1RのmRNAレベルの増加を例示する。C57BL/6マウス(n=4)にLPS(1μg/マウス)をi.p.注射した。腹膜マクロファージおよび脾臓を0.5時間、1時間、および24時間に採取した。mMC1RのmRNAレベルをリアルタイムPCRによって定量した。RNAレベルは18sに対して正規化した。
【図16−1】図16は、in vivo LPS炎症モデルにおけるMSHの効果を示す。C57BL/6マウスに1μgのLPSをi.p.注射した。30分後、マウスを、デキサメタゾン(2mg/kg)およびα−MSH(図16a〜16c)またはRI α−MSH類似体891(図16d〜16f)でi.p.処置した。LPS免疫誘発の2時間後に血清を収集した。TNF−α(図16aおよび16d)、MCP−1(図16bおよび16e)、ならびにIL−10(図16cおよび16f)のレベルを、フローサイトメトリーによる細胞数測定ビーズアッセイによって分析した。データは、個々のサイトカインの測定および各群の平均を示す(n=6)。
【図16−2】図16は、in vivo LPS炎症モデルにおけるMSHの効果を示す。C57BL/6マウスに1μgのLPSをi.p.注射した。30分後、マウスを、デキサメタゾン(2mg/kg)およびα−MSH(図16a〜16c)またはRI α−MSH類似体891(図16d〜16f)でi.p.処置した。LPS免疫誘発の2時間後に血清を収集した。TNF−α(図16aおよび16d)、MCP−1(図16bおよび16e)、ならびにIL−10(図16cおよび16f)のレベルを、フローサイトメトリーによる細胞数測定ビーズアッセイによって分析した。データは、個々のサイトカインの測定および各群の平均を示す(n=6)。
【図17】図17は、血漿および血清中におけるRI−α−MSHおよびα−MSHの安定性を例示する。図17Aは、血漿およびPBS中、37℃でのRI−α−MSHおよびα−MSHペプチドの安定性を示す。図17Bは、単回の静脈内注射後のRI−α−MSHおよびα−MSHペプチドの血清半減期を示す。
【図18】図18は、MSH(図18A)およびRI−MSH(図18B)とメラノコルチン受容体1、3、4および5との結合研究の結果を示す。
【図19】図19は、コアテトラペプチドHfRWおよびレトロインバーソMSHの反転を示す。
【図20−1】図20は、RI−MSHの様々な位置における非天然アミノ酸残基の置換を例示する。
【図20−2】図20は、RI−MSHの様々な位置における非天然アミノ酸残基の置換を例示する。
【図20−3】図20は、RI−MSHの様々な位置における非天然アミノ酸残基の置換を例示する。
【図21】図21は、MC1RにおけるRI−MSHの代表的な競合的結合アッセイおよびその変形を例示する。
【図22−1】図22は、B16 F1ネズミ黒色腫細胞におけるcAMPレベルに対するRI α−MSH類似体の効果を例示する。図22A:類似体890、891および892、図22B:類似体893、894および895、図22C:類似体880、886および878、ならびに図22D:類似体872、878および869。
【図22−2】図22は、B16 F1ネズミ黒色腫細胞におけるcAMPレベルに対するRI α−MSH類似体の効果を例示する。図22A:類似体890、891および892、図22B:類似体893、894および895、図22C:類似体880、886および878、ならびに図22D:類似体872、878および869。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本方法のα−MSHおよびMC1Rタンパク質および核酸は、特定の供給源または種に限定されない。したがって、タンパク質および核酸は、単離したものまたは組換えであることができる。
【0021】
α−メラニン形成細胞刺激ホルモン(α−MSH)とは、配列Ser Tyr Ser Met Glu His Phe Arg Trp Gly Lys Pro Val(配列番号8)(SYSMEHFRWGKPV)を含むポリペプチドである。α−MSHは抗炎症能力および免疫調節能力について最近検討されている。α−MSHは、プロオピオメラノコルチンホルモン(POMC)の細胞内タンパク質分解的切断から生じる。α−MSH神経ペプチドはいくつかの臓器中で検出されており、ニューロン、下垂体、腸、皮膚、および免疫細胞によって産生される。α−MSHは、エフェクターT細胞機能を抑制する、調節性T細胞を誘導する、ならびに自己免疫および移植モデルにおいて有益な効果を有することが報告されている。
【0022】
「コンジュゲート」または「コンジュゲート」には、付着、接続、カップリング、複合体形成または他の様式で互いに会合している、2つ以上のメンバーが含まれる。メンバーは、共有結合、イオン結合、静電気、水素結合、ファンデルワールス相互作用または物理的手段によって互いに接続していてよい。
【0023】
「生物活性」部分には、生理的応答を誘発または調節する分子または化合物が含まれる。一態様では、生物活性化合物はメラノコルチン受容体、好ましくはMC1受容体を刺激する。
【0024】
「調節する」および「調節」とは、発現、レベル、または活性が、モジュレーターの非存在下で観察されるものよりも高いまたは低いように、1つまたは複数のタンパク質またはタンパク質サブユニットの活性をアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることを意味する。たとえば、用語「調節する」とは、「阻害する」または「刺激する」ことを意味することができる。
【0025】
「C末端配列」には、必ずではないが典型的にはカルボキシル基によって終わる、アミノ酸鎖の末端への言及が含まれる。ペプチド配列を記載する慣習は、C末端を右側に置き、配列をN末端からC末端へと記載することである。C末端配列は、1〜100個のアミノ酸、好ましくは2〜15個のアミノ酸、さらにより好ましくは3〜10個のアミノ酸を含み得る。C末端配列はカルボキシル基で終わってもよく、または、末端は、機能的メンバー(たとえば、標的化基、保留シグナル、脂質、およびアンカー)を含むように当分野で周知の方法によって修飾し得る。
【0026】
本発明は「実質的に純粋な化合物」を提供する。本明細書中で使用する用語「実質的に純粋な化合物」とは、それが天然で会合している他のタンパク質、脂質、炭水化物、核酸、および他の生体物質を実質的に含まない、ポリペプチド(たとえば、MC1Rと結合するポリペプチド、またはその断片)などの分子を記載するために使用される。たとえば、実質的に純粋なポリペプチドなどの分子は、乾重量で目的分子の少なくとも60%である場合がある。ポリペプチドの純度は、たとえば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(たとえばSDS−PAGE)、カラムクロマトグラフィー(たとえば高速液体クロマトグラフィー(HPLC))、およびアミノ末端アミノ酸配列分析を含めた標準的な方法を用いて決定することができる。
【0027】
一実施形態では、語句「選択的に結合する」とは、本発明で作製または使用する化合物またはポリペプチドが、2つ以上の受容体(たとえば、メラノコルチン受容体、MC1、MC2、MC3、MC4、MC5受容体)の混合物の存在下にある場合に、1種類の受容体に別の種類の受容体よりも優先的に結合することを意味する。
【0028】
「アミノ酸」または「アミノ酸配列」には、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質配列、またはこれらのうちの任意のものの断片、一部分、もしくはサブユニット、および天然に存在するまたは合成の分子が含まれる。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」には、ペプチド結合または修飾ペプチド結合によって互いに接続したアミノ酸、すなわちペプチドアイソスターが含まれ、20種の遺伝子によってコードされるアミノ酸以外の修飾アミノ酸が含有され得る。また、用語「ポリペプチド」には、ペプチドおよびポリペプチド断片、モチーフなども含まれる。アミノ酸の大文字の一文字の略記は天然のL−異性体を指す。アミノ酸の小文字の一文字の略記はD−異性体を示す。
【0029】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、互換性があるように使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。ペプチドおよびポリペプチドは、アミノ酸の合成の非天然類似体から完全に構成されるか、または、一部が天然のペプチドアミノ酸で一部がアミノ酸の非天然類似体のキメラ分子であることができる。一態様では、ポリペプチドを本発明の組成物、細胞系またはプロセス(たとえば、本発明の少なくとも1つの酵素を発現するプラスミドを有する宿主細胞)において使用する。さらに、ポリペプチドは、別の官能基(たとえば、可溶化基、標的化基、PEG、非アミノ酸基、または他の治療剤)と共有結合したアミノ酸のポリマーを含む化合物をいうことができる。
【0030】
アミノ酸は括弧内の以下の記号を用いて略し得る:プロリン(Pro)、バリン(Val)、リシン(Lys)、オルニチン(Orn)、ノルロイシン(Nle)、グリシン(Gly)、トリプトファン(Trp)、アラニン(Ala)、フェニルアラニン(Phe)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp)、セリン(Ser)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、チロシン(Tyr)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、4−フルオロ−D−フェニルグリシン(4−フルオロ−D−Phg)、2−チエニル−D−アラニン(D−Thi)。
【0031】
本明細書中で使用する「処置」、「処置すること」、「処置する」または「療法(治療)」とは、哺乳動物に、個体において予防的、治癒的または他の有益な効果を誘発することができる薬剤を投与することをいう。処置は、被験体において疾患または疾患の症状を減弱または寛解させることをさらにもたらし得る。
【0032】
別段に指示しない限りは、本明細書中で使用する単数形「a」、「an」、および「the」には複数形の言及が含まれる。たとえば、「1つの(a)」標的細胞には1つまたは複数の標的細胞が含まれる。
【0033】
本発明のポリペプチド組成物は、非天然構造的構成要素の任意の組合せを含有することができる。個々のペプチド残基は、たとえば、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などの、ペプチド結合、他の化学結合またはカップリング手段によって接続していてよい。伝統的なアミド結合(「ペプチド結合」)の連結の代替となることができる連結基には、たとえば、ケトメチレン(たとえば、−C(=O)−NH−には−C(=O)−CH−)、アミノメチレン(CH−NH)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(CH−O)、チオエーテル(CH−S)、テトラゾール、チアゾール、レトロアミド、チオアミド、またはエステルが含まれる(たとえば、本明細書中に参考として組み込まれているSpatola(1983)、Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins、第7巻、267−357ページ、「Peptide Backbone Modifications」、Marcel Dekker、NYを参照)。
【0034】
本発明の方法を実施するために使用するポリペプチドは、翻訳後プロセッシング(たとえば、リン酸化、アシル化など)等の天然のプロセスによって、または化学修飾技術によって修飾することができ、生じる修飾されたポリペプチド。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含めた、ポリペプチド中の任意の箇所で起こり得る。同じ種類の修飾が、同じまたは異なる度合で、所定のポリペプチド中のいくつかの部位に存在することを理解されたい。また、所定のポリペプチドは多種類の修飾を有し得る。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋結合の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質分解性プロセッシング、リン酸化、プレニル化、セレノイル化、硫酸化、およびアルギニル化などの転移RNAに媒介されるタンパク質へのアミノ酸の付加が含まれる。たとえば、本明細書中に参考として組み込まれている、Creighton,T.E.、Proteins−Structure and Molecular Properties、第2版、W.H.Freeman and Company、ニューヨーク(1993)、Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B.C.Johnson編、Academic Press、ニューヨーク、1−12ページ(1983)を参照されたい。
【0035】
化合物のさらなる実施形態
一部の実施形態では、本明細書中で提供する発明は、メラノコルチン1受容体(MC1R)と選択的に結合する実質的に純粋な化合物または薬学的に許容されるその塩であり、前記化合物は、以下の配列を有するポリペプチドを含む:
Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13
[式中、Xaaは、D−Val、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、D−Pro、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、D−Lys、D−Orn、D−Nle、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、Gly、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Trp、Trp、D−3−ベンゾチエニル−Ala、D−5−ヒドロキシ−Trp、D−5−メトキシ−Trp、D−Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Arg、D−His、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Cha、D−Phe、Phe、D−4−フルオロ−Phg、D−3−ピリジル−Ala、D−Thi、D−Trp、D−4−ニトロ−Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−His、His、D−Arg、Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Glu、D−Asp、D−シトルリン、D−Ser、またはD−Alaであり、
Xaa10は、D−Met、D−ブチオニン、D−Ile、またはD−Alaであり、
Xaa11は、D−Ser、D−IleまたはD−Alaであり、
Xaa12は、D−Tyr、D−Ser、またはD−Alaであり、
Xaa13は、D−SerまたはD−Alaである]。
【0036】
一部の実施形態では、本明細書中で提供するペプチド類似体はMC1Rと選択的に結合し、配列:Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13を有するポリペプチドまたは薬学的に許容されるその塩を含む[式中、Xaaは、D−Valであり、Xaaは、D−Proであり、Xaaは、D−Lys、D−OrnまたはD−Nleであり、Xaaは、Glyであり、Xaaは、D−Trp、Trp、D−3−ベンゾチエニル−Ala、D−5−ヒドロキシ−Trp、D−5−メトキシ−Trp、またはD−Pheであり、Xaaは、D−ArgまたはD−Hisであり、Xaaは、D−Cha、D−Phe、Phe、D−4−フルオロ−Phg、D−3−ピリジル−Ala、D−Thi、D−Trp、またはD−4−ニトロ−Pheであり、Xaaは、D−His、His、D−Arg、Phe、またはD−Alaであり、Xaaは、D−Glu、D−Asp、D−シトルリンまたはD−Serであり、Xaa10は、D−Met、D−ブチオニンまたはD−Ileであり、Xaa11は、D−SerまたはD−Ileであり、Xaa12は、D−TyrまたはD−Serであり、Xaa13は、D−Serであり、1個以下のXaa1〜13がL−アミノ酸である]。
【0037】
他の実施形態では、本明細書中で提供するペプチド類似体は、配列:Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13を有するポリペプチドまたは薬学的に許容されるその塩を含む[式中、Xaaは、D−Valであり、Xaaは、D−Proであり、Xaaは、D−Lys、D−OrnまたはD−Nleであり、Xaaは、Glyであり、Xaaは、D−TrpまたはTrpであり、Xaaは、D−Argであり、Xaaは、D−Cha、D−Phe、PheまたはD−Thiであり、Xaaは、D−HisまたはHisであり、Xaaは、D−GluまたはD−Serであり、Xaa10は、D−Met、D−ブチオニンまたはD−Ileであり、Xaa11は、D−SerまたはD−Ileであり、Xaa12は、D−TyrまたはD−Serであり、Xaa13は、D−Serであり、1個以下のXaa1〜13がL−アミノ酸である]。
【0038】
本明細書中で提供する化合物は、α−メラノコルチン模倣ホルモン(α−MSH)のペプチド類似体を含む。
【0039】
1つの代替実施形態では、ペプチド類似体はD−アミノ酸からなる。他の実施形態では、ペプチドは、Dアミノ酸、Lアミノ酸またはDおよびLアミノ酸の混合物を含む。他の実施形態では、ペプチドは、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%のDアミノ酸からなる。また、本発明の化合物は、以下の非標準のアミノ酸の非限定的な例を組み込んでいてもよい:D−オルニチン、D−ノルロイシン、3−ベンゾチエニル−D−アラニン、5−ヒドロキシ−D−Trp、5−メトキシ−D−Trp、4−フルオロ−D−フェニルグリシン(4−フルオロ−D−Phg)、3−ピリジル−D−アラニン、2−チエニル−D−アラニン(D−Thi)、D−シクロヘキシルアラニン(D−Cha)、4−ニトロ−D−Phe、D−シトルリン、α−メチル−D−Met、およびD−ブチオニン。
【0040】
一部の実施形態では、コアテトラペプチドは、好ましくはD−アミノ酸立体配置の、アミノ酸配列His Phe Arg TrpまたはTrp Arg Phe Hisからなる。別の実施形態では、コアテトラペプチドは、好ましくはD−アミノ酸立体配置の、アミノ酸配列His D−Cha Arg TrpまたはTrp Arg D−Cha Hisからなる。一部の実施形態では、コアテトラペプチドは4個のD−アミノ酸からなる。他の実施形態では、コアテトラペプチドは少なくとも1つの非標準のアミノ酸を有する。
【0041】
本明細書中で提供する化合物は、合成または組換えであることができる。本発明の化合物は、当分野で知られている慣用の化学技術によって製造し得る。固相合成方法は、Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach(E.Athertonら、1989)などの公表文献に記載されている。また、本発明の化合物は、当分野で知られている慣用の分子生物技術によっても製造し得る。本出願内では、別段に記述しない限りは、用語の定義および本出願の技術の例示は、Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Goeddel,D.編、Gene Expression Technology、Methods in Enzymology、185、Academic Press、カリフォルニア州San Diego(1991)、「Guide to Protein Purification」、Deutshcer,M.P.編、Methods in Enzymology、Academic Press、カリフォルニア州San Diego(1989)、Innisら、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Academic Press、カリフォルニア州San Diego(1990)、Freshney,R.I.、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第2版、Alan Liss,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1987)、Murray,E.J.編、Gene Transfer and Expression Protocols、109−128ページ、The Humana Press Inc.、ニュージャージー州CliftonおよびLewin,B.、Genes VI、Oxford University Press、ニューヨーク(1997)などのいくつかの周知の参考文献のうちの任意のものの中に見つけ得る。引用した参考文献はすべて、完全に本明細書中に参考として組み込まれている。
【0042】
一部の実施形態では、本明細書中で提供するペプチド類似体は、メラノコルチン1受容体(MC1R)と選択的に結合するか、それを選択的に活性化する。任意の適切なアッセイを用いて、MC1Rの結合または活性化を測定することができる。たとえば、in vitroのcAMP誘導を用いてMC1Rの活性化を評価することができる。in vitro評価は、in vivoの活性化を示すことができる。本発明のさらなる実施形態は、MC1受容体に選択的な任意のポリペプチドを含む。選択的なMC1受容体化合物の同定は、適切なスクリーニングアッセイによって決定し得る。MC1受容体結合アッセイの非限定的な例を実施例4に開示する。一部の実施形態では、好ましいMC1受容体は、ヒト由来のメラノコルチン1受容体を含む(GenBank受託番号:NP_002377)。
【0043】
本発明のさらなる実施形態は、cAMP、一酸化窒素(NO)、TNF−α、TNF−αのmRNA、IL−10のmRNA、IL−10、IFNγ、IL−6、IL−12および/またはMCP−1のレベルを調節する化合物に向けられている。一部の実施形態では、化合物はcAMPレベルを増加させる。他の実施形態では、化合物は、一酸化窒素(NO)、TNF−α、TNF−αのmRNA、IL−10のmRNA、IL−10、IFNγ、IL−6、IL−12および/またはMCP−1のレベルの低下または阻害に向けられている。上述のレベルを調節する化合物が何であるかは、スクリーニングアッセイによって決定し得る。当分野で知られている許容されるアッセイを用いて、上述のレベルを測定することができる。これらのレベルの望ましい調節を示す化合物を同定するアッセイの非限定的な例は、実施例中に開示されている。
【0044】
一部の実施形態では、本発明の化合物は代替作用機構によって免疫応答および炎症を調節する場合があり、本明細書中に開示した機構に限定されない。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書中で提供するペプチドは、血漿安定性およびプロテアーゼ分解に対する耐性が改善している。血漿安定性およびプロテアーゼ分解に対する耐性は、任意の適切な方法によって評価することができる。非限定的な例は実施例19に開示されている。in vitro評価により、性能、耐性の改善およびより長いin vivo半減期が示される場合がある。
【0046】
本明細書中で提供する方法は、in vivo、ex vivoまたはin vitroで実施することができる。
【0047】
PEG化ペプチド
一部の実施形態では、ペプチドは、ペプチドの半減期が増強されるように修飾されている。一部の実施形態では、ペプチドはPEG化されている。一部の実施形態では、PEG化ペプチドは、1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖と共有結合またはコンジュゲートしたペプチドに向けられている。PEGポリマー鎖には、修飾、官能化または他の様式で誘導体化したPEG鎖が含まれ得る。別の実施形態では、PEGポリマー鎖は少なくとも1つまたは複数の分枝点を有し得る。一部の好ましい実施形態では、PEGポリマー鎖および対応するPEG化ペプチドは水溶性であり、溶液中で移動性が高く、毒性および免疫原性を欠き、身体からのクリアランスが容易で、変更された体内分布を有し得る。一部の好ましい実施形態では、PEG化ペプチドの薬物動態学的性質は、PEG鎖の種類によって調節される。PEG化ペプチドを調製するための方策および方法は、当分野で知られている方法によって実施される(本明細書中に参考として組み込まれているG.PasutaおよびF.M.Veronese(2007)「Polymer−drug conjugation,recent achievements and general strategies」、Progress in Polymer Science、32(8−9):933−961)。タンパク質の第一および第二世代のPEG化のプロセスは、当分野で見つけ得る。
【0048】
PEG化の非限定的な例は、一方または両方の末端においてPEGポリマーを適切に官能化する第1のステップを含む(直鎖状PEGの場合)。それぞれの末端を同じ反応性部分で活性化されたPEGは「ホモ二官能性」として知られ、存在する官能基が異なる場合は、PEG誘導体は「ヘテロ二官能性」または「ヘテロ官能性」と呼ばれる。PEGポリマーの化学的に活性のあるまたは活性化された誘導体を調製して、PEGを所望の分子に付着させる。PEG誘導体のための適切な官能基の選択は、PEGとカップリングさせる分子上の利用可能な反応基の種類に基づく。反応性アミノ酸の非限定的な例としては、リシン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニンおよびチロシンが挙げられる。N末端アミノ基およびC末端カルボン酸を使用することもできる。
【0049】
コンジュゲーション用の他のヘテロ二官能性PEG:これらのヘテロ二官能性PEGはは2つの実体を連結するために非常に有用であり、親水性で、柔軟かつ生体適合性のあるスペーサーが必要である。ヘテロ二官能性PEGの好ましい末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルである。
【0050】
本発明の一部の実施形態では、PEG化ペプチドは、0.2kDa〜100kDaの分子量範囲を有し得る。本発明の一部の好ましい実施形態では、PEG化ペプチドは、0.2kDa〜40kDaの分子量範囲を有し得る。本発明の一部の好ましい実施形態では、PEG化ペプチドは、0.2kDa〜15kDaの分子量範囲を有し得る。他の実施形態では、市販のPEGの好ましい平均分子量(Daで示し、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定)は、<1k、2k、3.5k、5k、10k、20k、30k、40k、およびそれより高いものから選択することができるが、所望の薬物動態学に応じて任意の分子量であることができる。たとえば、より低い分子量のヘテロ二官能性PEGをリンカーとして使用してよく、より低い分子量のPEGを用いてペプチドの溶解度を改善させ得る。また、PEGは、多重アーム、叉状、または分枝状であることもできる。
【0051】
一部の実施形態では、ペプチドは標的化分子とコンジュゲートしているか、または標的化分子として機能し、標的化分子は所望の受容体と優先的に会合する。本発明の一部の好ましい実施形態では、ペプチドを細胞毒性剤とコンジュゲートさせる。用語「細胞毒性剤」とは、細胞の発現活性、細胞の機能を阻害もしくは防止する、および/または細胞の破壊を引き起こす物質をいう。この用語には、その断片および/または変異体を含めた、放射活性同位元素、化学療法剤、および小分子毒素などの毒素、または細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素活性のある毒素を含むことを意図する。細胞毒性剤の非限定的な例には、メイタンシン、ドラスタチンならびにタシドチン(tasidotin)およびアウリスタチンを含めたその類似体が含まれる。本発明の他の実施形態では、細胞毒性剤の非限定的な例には、それだけには限定されないが、メイタンシノイド、イットリウム、ビスマス、リシン、リシンA鎖、サポリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素サブユニットA、切断緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、リストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、糖質コルチコイドおよび他の化学療法剤、ならびにAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32などの放射性同位体およびLuの放射活性同位元素が含まれる。また、抗体は、プロドラッグをその活性型に変換することができる抗癌プロドラッグ活性化酵素とコンジュゲートさせてもよい。
【0052】
ペプチドは、当分野で現在知られている任意の方法によって、細胞毒性剤または標的化剤と直接または間接的に連結させ得る。本発明の一部の好ましい実施形態では、リンカーの包含がペプチドまたはコンジュゲートした薬剤の機能、結合、毒性または包含を実質的に妨害しない限りは、ペプチドは、1つまたは複数のリンカーによって細胞毒性剤または標的化剤と繋留されてコンジュゲートを形成する。
【0053】
リンカーの非限定的な例には、イオン結合および共有結合ならびに任意の他の十分に安定な会合が含まれ、標的薬剤は、コンジュゲートしたものが標的とする細胞によって内部移行される。リンカー部分は、所望の特性に応じて選択される。リンカー選択の考慮事項には、コンジュゲートした要素が近接することによって引き起こされる立体障害の緩和もしくは低下、コンジュゲートの特異性、毒性、溶解度、血清安定性および/もしくは細胞内利用能などのコンジュゲートの他の特性の変更、ならびに/または連結の柔軟性を増加させることが含まれ得る。リンカーは任意の種類の連結であってよく、その例は、どちらも完全に本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第7,166,702号および第5,194,425号に記載されている。
【0054】
化学連結したコンジュゲートに適したリンカーおよび連結には、それだけには限定されないが、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合、およびアミンなどの遊離反応基とチオール基との間の共有結合が含まれる。これらの結合は、ヘテロ二官能性試薬を用いてポリペプチドの一方または両方上に反応性チオール基を生じさせ、その後、一方のポリペプチド上のチオール基を、反応性マレイミド基またはチオール基が付着することができる他方のポリペプチド上の反応性チオール基またはアミン基と反応させることによって生成する。他のリンカーには、より酸性の細胞内区画で切断される、ビスマレイミドエトキシプロパン、酸に不安定なトランスフェリンコンジュゲートおよびアジピン酸ジヒドラジドなどの酸切断可能リンカー、UVまたは可視光に露光された際に切断される架橋結合剤、ならびにヒトIgG1の定常領域のCH1、CH2、およびCH3などの様々なドメイン等のリンカーが含まれる(本明細書中に参考として組み込まれているBatraら(1993)Mol.Immunol.、30:379−386を参照)。
【0055】
化学リンカーおよびペプチドリンカーは、リンカーをペプチドおよび標的化剤または細胞毒性剤と共有的カップリングさせることによって挿入し得る。以下に記載のヘテロ二官能性剤を用いて、そのような共有的カップリングを行ない得る。
【0056】
ヘテロ二官能性架橋結合試薬
アミノ基とチオール基との間に共有結合を形成し、チオール基をタンパク質内に導入するために使用されている数々のヘテロ二官能性架橋結合試薬が、当業者に知られている(たとえば、そのような試薬の調製および使用を記載し、そのような試薬の商業的供給源を提供する、PIERCE CATALOG、Immuno Technology Catalog & Handbook、1992−1993を参照、また、Cumberら(1992)Bioconjugate Chem.、3’:397−401、Thorpeら(1987)Cancer Res.、47:5924−5931、Gordonら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:308−312、Waldenら(1986)J.Mol.Cell Immunol.、2:191−197、Carlssonら(1978)Biochem.J.、173:723−737、Mahanら(1987)Anal.Biochem.、162:163−170、Wawryznaczakら(1992)Br.J.Cancer、66:361−366、Fattomら(1992)Infection & Immun.、60:584−589も参照)。引用した参考文献はすべて、完全に本明細書中に参考として組み込まれている。これらの試薬は、標的化剤、ケモカイン、および標的薬剤の間に共有結合を形成するために使用し得る。これらの試薬には、それだけには限定されないが:N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジイジチオ(pyridyidithio))プロピオネート(SPDP、ジスルフィドリンカー)、スルホスクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SPDP)、スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチルベンジルチオスルフェート(SMBT、ヒンダードジスルフェートリンカー)、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジイジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP)、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB、ヒンダードジスルフィド結合リンカー)、スルホスクシンイミジル2−(7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセトアミド)エチル−1,3−ジチオプロピオネート(SAED)、スルホ−スクシンイミジル7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセテート(SAMCA)、スルホスクシンイミジル6−[α−メチル−α−(2−ピリジイジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT)、1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジイジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB)、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルチオ)トルエン(SMPT、ヒンダードジスルフェートリンカー)、スルホスクシンイミジル6[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ−MBS)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB、チオエーテルリンカー)、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ−SIAB)、スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、スルホスクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ−SMPB)、アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)が含まれる。
【0057】
他のヘテロ二官能性切断可能な架橋結合剤には、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−a−(2−ピリジルジチオ)−トルエン、スルホスクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(ピリジルジチオール)−トルアミド]ヘキサノエート、N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジイジチオ)−プロプリオネート(proprionate)、スクシンイミジル6[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド(proprionamido)]ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート、3−(2−ピリジイジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、S−(2−チオピリジル)−L−システインが含まれる。さらなる例示的な二官能性連結化合物は、すべて完全に本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許第5,349,066号、第5,618,528号、第4,569,789号、第4,952,394号および第5,137,877号に開示されている。
【0058】
酸切断可能で、光切断可能で感熱性のリンカー
特に、反応でより利用しやすくすることを可能にするために、標的薬剤を切断することが必要であり得る場合に、酸切断可能リンカー、光切断可能および感熱性のリンカーも使用し得る。酸切断可能リンカーには、それだけには限定されないが、ビスマレイミドエトキシプロパン、ならびにアジピン酸ジヒドラジドリンカー(たとえば、本明細書中に参考として組み込まれているFattomら(1992)Infection & Immun.、60:584−589を参照)および細胞内トランスフェリン循環経路内への流入を可能にするためにトランスフェリンの十分な部分を含有する、酸に不安定なトランスフェリンコンジュゲート(たとえば、本明細書中に参考として組み込まれているWelhoenerら(1991)J.Biol.Chem.、266:4309−4314を参照)が含まれる。
【0059】
光切断可能リンカーとは、露光された際に切断され(たとえば、そのリンカーが本明細書中に参考として組み込まれているGoldmacherら(1992)Bioconj.Chem.、3:104−107を参照)、それによって露光された際に標的薬剤が放出されるリンカーである。露光された際に切断され、それによって露光された際に標的薬剤が放出される、光切断可能リンカーが知られている(たとえば、ニトロベンジル基をシステインの光切断可能保護基として使用することを記載している、Hazumら(1981)、Pept.,Proc.Eur.Pept.Symp.,16th、Brunfeldt,K(編)、105−110ページ、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセインコポリマーおよびメチルローダミンコポリマーを含めた水溶性光切断可能コポリマーを記載している、Yenら(1989)Makromol.Chem.、190:69−82、近UV光(350nm)に露光した際に光分解を受ける架橋結合剤および試薬を記載している、Goldmacherら(1992)Bioconj.Chem.、3:104−107、ならびに、光切断可能な連結を生じる塩化ニトロベンジルオキシカルボニル架橋結合試薬を記載している、Senterら(1985)Photochem.Photobiol.、42:231−237を参照)。引用した参考文献はすべて、完全に本明細書中に参考として組み込まれている。そのようなリンカーは、光ファイバーを用いて露光することができる皮膚または眼の状態の処置において、特定の用途を有する。コンジュゲートを投与した後、眼もしくは皮膚または他の身体部分を露光し、コンジュゲートからの標的部分の放出がもたらされる。そのような光切断可能リンカーは、動物の身体からの迅速なクリアランスを可能にするために標的化剤を除去することが望ましい、診断プロトコルに関連して有用である。
【0060】
化学コンジュゲーション用の他のリンカー
他のリンカーには、トリチルリンカー、特に、様々な度合の酸度またはアルカリ度で治療剤の放出をもたらすコンジュゲートの部類を生じるための誘導体化トリチル基が含まれる。治療剤が放出されるpH範囲を事前に選択する能力によってこうして得られる柔軟性により、治療剤の送達を必要とする組織間の既知の生理的差異に基づいてリンカーを選択することが可能となる(たとえば、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,612,474号を参照)。たとえば、腫瘍組織の酸度は正常組織の酸度よりも低いと考えられている。
【0061】
ペプチドリンカー
リンカー部分はペプチドであることができる。ペプチドリンカーをコンジュゲート中で用いることができる。ペプチドリンカーは、典型的には、約2〜約60個のアミノ酸残基、たとえば約5〜約40、または約10〜約30個のアミノ酸残基を有する。選択される長さは、リンカーを含める使用などの要素に依存する。
【0062】
リンカー部分は、単鎖抗体研究において知られているものなどの、柔軟なスペーサーアミノ酸配列であることができる。そのような知られているリンカー部分の例には、それだけには限定されないが、GGGGS、(GGGGS)n、GKSSGSGSESKS、GSTSGSGKSSEGKG、GSTSGSGKSSEGSGSTKG、GSTSGSGKSSEGKG、GSTSGSGKPGSGEGSTKG、EGKSSGSGSESKEF、SRSSG、SGSSCが含まれる。配列AMGRSGGGCAGNRVGSSLSCGGLNLQAMを有するジフテリア毒素トリプシン感受性リンカーも有用である。
【0063】
さらなる連結部分は、たとえば、すべて本明細書中に参考として組み込まれている出版物である、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:5879−5883、1988、Whitlow,M.ら、Protein Engin.、6:989−995、1993、Newtonら、Biochemistry、35:545−553、1996、A.J.Cumberら、Bioconj.Chem.、3:397−401、1992、Ladurnerら、J.Mol.Biol.、273:330−337、1997、および米国特許第4,894,443号に記載されている。
【0064】
他のリンカーには、それだけには限定されないが、カテプシンB基質、カテプシンD基質、トリプシン基質、トロンビン基質、サブチリシン基質、第Xa因子基質、およびエンテロキナーゼ基質などの酵素基質が含まれ、溶解度、柔軟性、および/または細胞内切断性を増加させるリンカーには、(glymser)nおよび(sermgly)nなどのリンカーが含まれる(たとえば、コンジュゲート中で使用するための例示的なリンカーを提供する、本明細書中に参考として組み込まれているPCT公開WO96/06641号を参照)。一部の実施形態では、それぞれのリンカーの所望の特性を利用するために、いくつかのリンカーを含め得る。
【0065】
コンジュゲートの調製
連結した標的薬剤とのコンジュゲートは、化学コンジュゲーション、組換えDNA技術、または組換え発現と化学コンジュゲーションとの組合せのいずれかによって調製することができる。本発明のペプチおよび細胞毒性剤または標的化剤は任意の配向で連結してよく、複数の標的化剤および/または標的薬剤がコンジュゲート中に存在し得る。
【0066】
本発明の一部の好ましい実施形態では、細胞毒性剤は、短いアルキル鎖、ポリシアル酸もしくはヒアルロン酸、ポリペプチドまたはPEGを含めた、親水性かつ生体適合性のあるスペーサーポリマーによってペプチドと繋留されている。本発明の一部の好ましい実施形態では、細胞毒性剤は、切断可能リンカー、たとえば、ジスルフィド連結またはカテプシンなどのリソソームプロテアーゼによって切断可能な配列を含有するペプチドを介してコンジュゲートしている。本発明の一部の好ましい実施形態では、スペーサーは、ペプチドのNまたはC末端のどちらかに付着している。
【0067】
配合物
これらの配合物または組成物を調製する方法には、本発明の化合物を、担体、および任意選択で1つまたは複数の副成分と会合させるステップが含まれる。一般に、配合物は、本発明の化合物を、液体担体もしくは微粉固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させ、その後、必要な場合は生成物を成形することによって調製する。
【0068】
製薬配合物は、医薬品を製造するために当分野で知られている任意の方法に従って調製することができる。そのような配合物は、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤を含有することができる。配合物は、製造に適した無毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合することができる。そのような「賦形剤」とは、一般に、無毒性であり、組成物の他の構成要素と有害な様式で相互作用しない、実質的に不活性な材料をいう。薬学的に許容される賦形剤には、それだけには限定されないが、水、緩衝生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールなどの液体が含まれる。薬学的に許容される塩、たとえば、トリフルオロ酢酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩等をその中に含めることができる。
【0069】
治療剤は、送達に適した医薬品または薬学的組成物中で投与し得る。配合物は1つまたは複数の希釈剤、乳化剤、保存剤、緩衝液、賦形剤などを含んでいてよく、凍結乾燥粉末、スプレー、クリーム、ローション、ゲル、パッチ上、移植片中などの形態で提供してよい。経口投与用の製薬配合物は、当分野で周知の薬学的に許容される担体を用いて、適正かつ適切な用量で配合することができる。そのような担体は、医薬品を、患者による摂取に適した、錠剤、丸薬、散剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などの単位剤形で配合することを可能にする。経口使用用の薬学的調製物は、固体賦形剤として配合し、任意選択で粉砕して混合物をもたらし、所望する場合は適切な追加の化合物を加えた後に顆粒の混合物を加工して、錠剤またはドラジェのコアを得ることができる。適切な固体賦形剤は炭水化物またはタンパク質充填剤であり、たとえば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含めた糖、トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、または他の植物由来のデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース、アラビアおよびトラガカントを含めたガム、ならびにタンパク質、たとえば、ゼラチンおよびコラーゲンが含まれる。崩壊剤または可溶化剤、たとえば、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩を加えてもよい。
【0070】
水性懸濁液は、活性剤(たとえば本発明のキメラポリペプチドまたはペプチド模倣体)を、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して含有することができる。そのような賦形剤には、懸濁剤、たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム、ならびに分散剤または湿潤剤、たとえば、天然に存在するホスファチド(たとえばレシチン)、酸化アルキレンと脂肪酸との縮合生成物(たとえばステアリン酸ポリオキシエチレン)、酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(たとえば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、酸化エチレンと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(たとえば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、または酸化エチレンと脂肪酸およびヘキシトール酸無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が含まれる。また、水性懸濁液は、1つまたは複数の保存剤、たとえばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn−プロピル、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の香味剤および1つまたは複数の甘味剤、たとえばスクロース、アスパルテームまたはサッカリンも含有することができる。配合物は、浸透圧について調節することができる。
【0071】
本発明の疎水性活性剤の投与には油性の医薬品が有用である。油性の懸濁液は、活性剤(たとえば本発明のキメラ組成物)をラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油などの植物油、または流動パラフィンなどの鉱物油、あるいはこれらの混合物に懸濁させることによって配合することができる。たとえば、経口投与した疎水性の製薬化合物の生体利用度を増加させ、個体間および個体内のばらつきを減少させるための、精油または精油構成要素の使用を記載している、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,716,928号を参照されたい(本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,858,401号も参照)。油性懸濁液は、蜜蝋、固体パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤を含有することができる。味のよい経口調製物を提供するためにグリセロール、ソルビトールまたはスクロースなどの甘味剤を添加することができる。これらの配合物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存することができる。注射用油性ビヒクルの例として、本明細書中に参考として組み込まれているMinto(1997)J.Pharmacol.Exp.Ther.、281:93−102を参照されたい。また、本発明の製薬配合物は、水中油乳剤の形態であることもできる。油性相は、上述のように植物油もしくは鉱物油であるか、またはこれらの混合物であることができる。適切な乳化剤には、天然に存在するガム、たとえばアカシアガムおよびトラガカントガム、天然に存在するホスファチド、たとえばダイズレシチン、脂肪酸とヘキシトール酸無水物とに由来するエステルまたは部分エステル、たとえばソルビタンモノオレエート、ならびにこれらの部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが含まれる。また、乳剤は、シロップおよびエリキシルの配合におけるように、甘味剤および香味剤を含有することもできる。また、そのような配合物は粘滑剤、保存剤、または着色剤も含有することができる。
【0072】
また、治療剤を含む組成物または医薬品が、特にペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは他の同様の薬剤用の安定化剤として役割を果たす、薬学的に許容される担体を含有できることも企図される。ペプチドの安定化剤としても作用する適切な担体の例には、それだけには限定されないが、製薬グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが含まれる。他の適切な担体には、やはりそれだけには限定されないが、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムまたはカルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、およびその組合せが含まれる。荷電脂質および/または洗剤を用いることも有用であり得る。適切な荷電脂質には、それだけには限定されないが、ホスファチジルコリン(レシチン)などが含まれる。洗剤は、典型的には非イオン性、陰イオン性、陽イオン性または両性の界面活性剤である。適切な界面活性剤の例には、たとえば、Tergitol(登録商標)およびTriton(登録商標)界面活性剤(Union Carbide Chemicals and Plastics、コネチカット州Danbury)、ポリオキシエチレンソルビタン、たとえばTWEEN(登録商標)界面活性剤(Atlas Chemical Industries、デラウェア州Wilmington)、ポリオキシエチレンエーテル、たとえばBrij、薬学的に許容される脂肪酸エステル、たとえばラウリル硫酸およびその塩(SDS)、ならびに同様の材料が含まれる。薬学的に許容される賦形剤、担体、安定化剤および他の補助物質の完全な記述は、本明細書中に参考として組み込まれているRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、ニュージャージー州、1991)から入手可能である。
【0073】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、本発明の1つまたは複数の化合物を、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、配合物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有し得る、1つまたは複数の薬学的に許容される無菌の等張の水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液または乳剤、あるいは使用直前に無菌の注射用液剤または分散液へと再構成し得る無菌の散剤と組み合わせて含む。
【0074】
本発明の薬学的組成物中で用い得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。たとえば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散液の場合は所要の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。
【0075】
また、これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有し得る。本発明の化合物に対する微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを包含することによって確実にし得る。また、糖、塩化ナトリウム、リン酸緩衝生理食塩水などの等張化剤を組成物内に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射用製薬形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を包含することによって達成し得る。
【0076】
一部の例では、薬物の効果を持続させるためには、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶性または非晶質材料の液体懸濁液を使用することによって達成し得る。したがって、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、立ち代ってこれは結晶の大きさおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口投与した薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成する。
【0077】
本発明の方法では、製薬化合物は体内での徐放のためにミクロスフェアとして送達することもできる。たとえば、ミクロスフェアは、皮下でゆっくりと放出される薬物の皮内注射を介して(Rao(1995)J.Biomater Sci.Polym.Ed.、7:623−645を参照)、生分解性の注射用ゲル配合物として(たとえばGao(1995)Pharm.Res.、12:857−863(1995))、または経口投与用のミクロスフェアとして(たとえばEyles(1997)J.Pharm.Pharmacol.、49:669−674を参照)投与することができる。引用した参考文献はすべて、完全に本明細書中に参考として組み込まれている。
【0078】
注射用デポー形態は、ポリ乳酸−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中の、本発明の化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製する。薬物対ポリマーの比および用いる特定のポリマーの性質次第で、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が含まれる。また、デポー注射用配合物は、薬物を体組織に適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に封入することによっても調製される。
【0079】
ポリペプチドは、それ自体で、または別の治療化合物と組み合わせて投与し得る。特に、ポリペプチドは、哺乳動物において黒色腫、炎症または自己免疫疾患を処置するために使用する治療化合物と併せて投与し得る。ポリペプチドおよび追加の治療化合物は、同一または異なる組成物中で配合し得る。ポリペプチドは、追加の治療化合物と同時に、連続的またはそれとは別々に投与し得る。
【0080】
用量
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式において患者に毒性とならずに所望の治療反応を達成するために有効な活性成分の量を得るために、変動させ得る。本発明の化合物を医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、それ自体で、または、たとえば0.1〜99%の活性成分、より好ましくは10〜30%を、薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する薬学的組成物として与えることができる。
【0081】
選択された用量レベルは、用いた本発明の特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、用いた特定の化合物の排泄または代謝の速度、吸収の速度および程度、処置の持続期間、用いた特定の化合物と組み合わせて使用した他の薬物、化合物および/または材料、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康および以前の病歴、ならびに医学分野で周知の同様の要素を含めた、様々な要素に依存する。
【0082】
当分野の通常の技量を有する医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで、薬学的組成物中に用いる本発明の化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加することができる。
【0083】
一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果を生じるために有効な最低の用量である、化合物の量となる。そのような有効用量は、一般に上述の要素に依存する。一般に、示した効果のために使用した場合、患者における本発明の化合物の経口、静脈内、脳室内および皮下用量は、約1mcg〜約5mg/体重1キログラム/時の非限定的な範囲を有する。他の実施形態では、用量は約5mcg〜約2.5mg/体重1キログラム/時の非限定的な範囲を有する。さらなる実施形態では、用量は約5mcg〜約1mg/体重1キログラム/時の非限定的な範囲を有する。
【0084】
所望する場合は、活性化合物の有効な1日用量は、1日にわたって適切な間隔で別々に投与する2、3、4、5、6回またはそれより多くの部分用量として、任意選択で単位剤形で投与し得る。一実施形態では、化合物は1日1回の用量で投与する。さらなる実施形態では、化合物は、静脈内または他の経路などを通して連続的に投与する。他の実施形態では、化合物は、週1回またはそれ未満などの、1日1回よりも少ない頻度で投与する。
【0085】
本発明の化合物を単独で投与することは可能であるが、化合物を製薬配合物(組成物)として投与することが好ましい。
【0086】
この処置を受ける被験体は、霊長類、特にヒト、ならびに他の哺乳動物、たとえば、ウサギ、ウマ科動物、ウシなどの畜牛、ブタ、ヤギおよびヒツジ、家禽およびペット全般を含めた、必要としている任意の動物である。
【0087】
本発明の化合物は、それ自体で、または薬学的に許容される担体と混合して投与することができ、また、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよび糖ペプチドなどの抗微生物剤と併せて投与することもできる。したがって、併用療法には、最初に投与したものの治療効果が、後続を投与した際に完全に消失しない様式で、活性化合物を連続的、同時および別々に投与することが含まれる。
【0088】
開示した化合物の可能な投与経路
これらの化合物は、任意の適切な投与経路による治療のためにヒトおよび他の動物に投与し得る。本明細書中で使用する用語、投与の「経路」には、それだけには限定されないが、皮下注射、静脈内注射、眼内注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、気管内投与、脂肪内投与、関節内投与、くも膜下腔内投与、硬膜外投与、吸入、鼻腔内投与、経口投与、舌下投与、頬側投与、直腸投与、経膣投与、嚢内投与、経皮投与および外用投与、または局所送達による投与(たとえばカテーテルもしくはステントによる)が含まれることを意図する。また、化合物は徐放剤形中で投与または同時投与してもよい。
【0089】
本発明の方法では、製薬化合物は、坐薬、ガス注入、散剤およびエアロゾル配合物を含めた、鼻腔内、眼内、眼周囲および膣内の経路によって投与することもできる(ステロイド吸入剤の例には、本明細書中に参考として組み込まれている、Rohatagi(1995)J.Clin.Pharmacol.、35:1187−1193、Tjwa(1995)Ann.Allergy Asthma Immunol.、75:107−111を参照)。坐薬配合物は、薬物を、通常温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって体内で溶融して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって、調製することができる。そのような材料は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0090】
本発明の方法では、製薬化合物は、経皮的に、外用経路によって、塗布スティック、液剤、懸濁液、乳剤、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ジェリー、散剤、およびエアロゾルとして配合して、送達することができる。
【0091】
本発明の方法では、製薬化合物は、静脈内(IV)投与または体腔(たとえば滑膜腔)もしくは臓器の管腔内への投与などによって、非経口投与することができる。これらの配合物は、薬学的に許容される担体に溶解した活性剤の溶液を含むことができる。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒は、水およびリンゲル液、等張塩化ナトリウムである。さらに、無菌の不揮発性油を溶媒または懸濁媒として用いることができる。この目的には、合成のモノまたはジグリセリドを含めた任意の刺激の少ない不揮発性油を用いることができる。
【0092】
本明細書中に記載のように、本発明の方法は、単独で、または自己免疫疾患もしくは本明細書中に記載の他の状態を処置するための他の手法と組み合わせて使用し得る。
【0093】
組合せレジメンで用いるための治療(治療剤または手順)の特定の組合せには、所望の治療剤および/または手順の適合性ならびに達成する所望の治療効果を考慮する。また、用いた治療は、同じ障害で所望の効果を達成し得るか(たとえば、本発明の化合物は、同じ障害を処置するために使用する別の薬剤と同時に投与し得る)、または、これらは異なる効果(たとえば任意の有害作用の制御)を達成し得ることを理解されたい。本明細書中で使用する、特定の疾患または状態を処置または予防するために通常投与する追加の治療剤は、「処置する疾患または状態に適切」として知られる。
【0094】
本明細書中で定義する本発明の組合せ処置は、前記処置の個々の構成要素の同時、連続的または別々の投与によって達成し得る。
【0095】
治療的応用
本明細書中に記載のポリヌクレオチドまたは変調化合物(本明細書中で以下「治療剤」)の投与は、予防的または治療的な目的のどちらかであり得る。予防的に提供する場合、治療剤はいずれの症状にも先立って提供する。治療剤の予防的投与は、いずれの症状をも予防または減弱させる役割を果たす。治療的に提供する場合、治療剤は疾患または障害の症状が発症した時点(またはその直後)に提供する。治療剤の治療的投与は、症状のいずれの実際の増悪をも減弱させる役割を果たす。
【0096】
処置する個体は任意の哺乳動物であり得る。一態様では、哺乳動物はヒトである。別の態様では、ヒトは自己免疫疾患または状態に罹患している。他の態様では、自己免疫疾患または状態は、多発性硬化症、I型糖尿病、再生不良性貧血、グレーブス病、セリアック病、クローン病、ループス、関節炎、骨関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性脳脊髄炎、および重症筋無力症からなる群から選択される、またはそれに関連する。
【0097】
他の態様では、ヒトは炎症疾患または状態に罹患している。別の態様では、炎症疾患または状態は、炎症性腸疾患、関節リウマチ、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、乾癬、胃炎および虚血性心疾患からなる群から選択される、またはそれに関連する。別の態様では、炎症は、脳死、好ましくは循環内在α−MSHまたは脳組織中のα−MSHのレベルが減少している状態に関連している。さらに別の態様では、治療剤を用いて、α−MSHまたはMC1受容体に媒介される障害または疾患に罹患している被験体を処置する。
【0098】
別の態様では、本発明は、黒色腫を有する被験体の処置に向けられている。一態様では、本発明は、被験体において黒色腫を減弱または寛解させる。さらに別の態様では、本発明の化合物は、黒色腫を検出またはイメージングするためのアッセイで使用する。
【0099】
開示した化合物を含むキット
本発明は、本発明の治療レジメンを実施するためのキットも提供する。そのようなキットは、治療上有効な量の、MC1Rモジュレーターとしての特異的活性を有する薬学的に許容される形態のペプチドを、単独で、または薬学的に許容される形態の他の薬剤と組み合わせて含む。好ましい製薬形態には、無菌生理食塩水、デキストロース溶液、緩衝溶液、または他の薬学的に許容される無菌流体と組み合わせたペプチドが含まれる。あるいは、組成物を凍結乾燥または乾燥させ得る。この例では、キットは、薬学的に許容される、好ましくは無菌の溶液をさらに含んで、注射目的のための液剤を形成する。別の実施形態では、キットは、組成物を注射するための、好ましくは無菌形態で包装された針またはシリンジをさらに含み得る。他の実施形態では、キットは、組成物を被験体に投与するための指示手段をさらに含む。指示手段は、書面の挿入物、録音記録、音声映像記録、または被験体への組成物の投与を指示するための任意の他の手段であることができる。一実施形態では、キットは、(i)MC1Rに特異的な変調活性を有するペプチドを含有する第1の容器と、(ii)使用の指示手段とを含む。
【0100】
処置方法のさらなる実施形態
一部の実施形態では、本発明は、被験体に、薬学的に許容される賦形剤と、有効量の本明細書中で提供するペプチド化合物のうちの少なくとも1つとを含む薬学的組成物を投与することを含む、移植片拒絶を減少させるかまたは阻害することを必要としている被験体における移植片拒絶を減少させるかまたは阻害する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、移植した組織、細胞または臓器によって誘発される、被験体の免疫応答を減少または阻害する方法を提供する。移植した組織の非限定的な例は、実験的心臓移植における同種移植片および膵島細胞である。
【0101】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおける免疫抑制活性
α−MSHの新規D−アミノ酸ペプチド類似体を作製し、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のモデル、ならびにリポ多糖(LPS)サロゲート炎症性疾患モデルにおいて免疫調節効果を評価した。RI α−MSH類似体を用いた処置により、EAUモデルおよびMOGで誘導したEAEマウスモデルにおいて疾患の臨床的疾患スコアおよび発生率が減少した。さらに、MOGで初回抗原刺激したマウスの脾臓およびリンパ節におけるTNF−αおよびIL−10のmRNA発現レベルが、処置したマウスで低下していた。LPSで誘導した全身性炎症モデルでは、α−MSHおよび類似体の処置により、血清サイトカインレベルが低下した。これらのデータは、これらの新規α−MSH類似体が炎症および自己免疫疾患において治療的用途の潜在性を有することを示している。
【0102】
材料および方法
ペプチド。α−MSH(SYSMEHFRWGKPV)をBachem(ペンシルバニア州King of Prussia)から購入した。D−アミノ酸RI α−MSH類似体(vpkgwrfhemsys)、RI α−MSHのアラニン置換ペプチド、(ステアリル)HfRW(820)、(Ph(CHCO)HfRW(819)、およびRI α−MSH類似体891[vpkGwr(D−Cha)hsiiss]は、Genzyme Corpationによって標準の固相技術を用いて合成され、逆相HPLCによって精製された。スクランブルDアミノ酸対照ペプチド(ksrsmgvfpeyh)はGenzyme Corpationによって合成された。非関連のDアミノ酸対照ペプチド(plykkiikklles)はGenzyme Corpationによって合成された。
【0103】
動物。5〜6週齢の雌のB10.RIII−H2rマウスをJackson Laboratories(メイン州Bar Harbor)から購入した。
【0104】
6〜8週齢の雌または雄のC57BL/6マウスをJackson Laboratories(メイン州Bar Harbor)から購入した。動物研究のすべてのプロトコルは、Genzyme Corpationの施設内動物飼育使用委員会(Institutional Animal Care and use Committee、IACUC)の承認を満たしていた。
【0105】
EAU誘導。雌のB10.RIIIを、それぞれ結核菌H37Ra(Difco、ミシガン州Detroit)を含む2mg/mlの完全フロイントアジュバント(CFA、Sigma、ミズーリ州St.Louis)中の合計200μgの光受容体間結合タンパク質ペプチド(IRBP)161−180(New England Peptide、マサチューセッツ州Fitchburg)を用いて、2つの部位(肩甲骨と骨盤領域との間)に皮下注射した。
【0106】
眼の採点。マウスの眼を、1または2滴のMydriacyl1%(Alcon、プエルトリコHumacao)を用いて散大させ、暗室内で約5分間休ませた。マウスを手動で抑制し、78ジオプターのレンズを備えた倒像検眼鏡を用いて両眼の網膜を可視化した。0〜5の進行性採点システムを用いて、眼を炎症について採点した。スコア0:正常な網膜。スコア1:視神経に近位の血管炎症。スコア2:眼の1つの四分円に限定された5未満の炎症性病変。スコア3:眼の1を超える四分円中に5を超える炎症性病変。スコア4:炎症性病変が連続的である。スコア5:網膜剥離。マウスから全眼を採取し、PBS中に入れた。凍結固定用に眼をOCT培地に包埋した。5μmの切片を乳頭−視神経の平面を通って切断し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0107】
メラノコルチン受容体との結合研究。α−MSH、RI α−MSH、およびスクランブルペプチドの結合プロフィールをメラノコルチン受容体1、3、4、および5に対して測定した。結合は、(Nle4,D−Phe7)α−MSH(Bachem)との競合的結合アッセイを用いて行なった。結合分析は、コード化された試料を用いてCerep laboratories(フランスParis)によって行なった。
【0108】
また、ペプチドの結合に続いて、HEK293細胞系由来の膜調製物を用いて、メラノコルチン受容体1、3、4、および5の結合における125I−NDP−MSHとの競合を行なった。V字底の96ウェルプレート内、結合緩衝液(25mMのHEPES、pH7、1.5mMのCaCl、1mMのMgSO、100mMのNaCl、0.2%のBSA)中でペプチドを125I−(Nle4,D−Phe7)−α−MSH(PerkinElmer、マサチューセッツ州Boston)と混合し、1〜10fmolの受容体を含有するHEK293形質移入細胞系由来の膜調製物(Perkin Elmer、マサチューセッツ州Boston)と共に、1時間25℃で混合した。3μMの(Nle4,D−Phe7)−NDP−MSH(Bachem)を陽性対照として使用した。混合物を96ウェルのGFCフィルター(Millipore、マサチューセッツ州Billerica)を通して濾過し、BSAを含まない結合緩衝液で3回洗浄し、乾燥させ、計数した。
【0109】
cAMPの測定。アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection(バージニア州Manassas))からのB16−F1(黒色腫細胞系)細胞を、平底の96ウェルプレートに5×10/ウェルで播種し、終夜、2mMのグルタミン、抗生物質(100U/mlのペニシリンおよび100U/mlのストレプトマイシン)および10%の熱失活させたウシ胎児血清(Invitrogen、ニューヨーク州Grand Island)を補充したDMEM(Cambrex、メリーランド州Walkersville)中で培養した。その後、細胞をネイティブα−MSH(0.01〜1000ng/ml)、レトロ−インバーソα−MSH(0.01〜1000ng/ml)、またはスクランブルDアミノ酸対照ペプチド(0.01〜1000ng/ml)で30分間処理た。細胞を溶解し、細胞内cAMPレベルを酵素免疫アッセイキット(Amersham Biosciences、ニュージャージー州Piscataway)によって測定した。100μMのフォルスコリン(Sigma、ミズーリ州St.Louis)が陽性対照として役割を果たした。
【0110】
EAEの誘導および採点。雌のC57BL/6マウスを、0.6mgの結核菌(Difco、ミシガン州Detroit)を含有する完全フロイントアジュバント(CFA、Sigma、ミズーリ州St.Louis)中のMOG35−55ペプチド(200μg/マウス、New England Peptide、マサチューセッツ州Fitchburg)の乳剤で免疫化した。乳剤は、0.2ml/マウスの体積で、2つの部位への皮下注射によって送達した。PBS中の百日咳菌(PTX、Sigma)はi.p.投与経路を介して400ng/動物の用量で使用し、0日目および3日目に投与した。マウスを1日1回、EAEの麻痺症状について監視した。0〜5の進行性採点システムを用いて、マウスを臨床症状について採点した。スコア0:疾患なし、スコア1:弛緩した尾部、スコア2;後肢の脱力、スコア3:後肢の麻痺、スコア4:前足の脱力/部分麻痺、スコア5;死亡。脊髄および脳を採取し、ヘマトキシリンおよびエオシン染色用にパラフィンに包埋した。
【0111】
増殖アッセイ。C57BL/6マウスの脾細胞およびリンパ節細胞を96ウェルプレート中、5×105個の細胞/ウェルで培養した。MOG35−55またはOVA257−264ペプチドを25μg/mlの濃度でウェルに加えた。MOGペプチド刺激の48時間後に上清を収集した。3日間培養した後、細胞に[3H]チミジンを1μCi/ウェルで8時間パルスした。チミジンの取り込みはcpmによって測定した。
【0112】
サイトカインRNA分析−RT−QPCR。TRIzol(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)を用いて、全RNAを組織から抽出した。1μgの全RNAを逆転写し、Applied Biosystems(カリフォルニア州Foster City)からの試薬を用いたSYBR greenの取り込みをABI 7900で使用することによる、定量的PCRで使用した。cDNA標準をサイトカイン標的用のそれぞれのPCRで流し、メッセージの濃度はマウスβ−アクチンに対して正規化した。これらのデータを得るために使用したプライマーは以下のとおりであった:マウスTNFα順方向−ggcaggtctactttggagtcattgcおよび逆方向−acattcgaggctccagtgaattcgg(1)。本発明者らは、マウスIL−10順方向:tgctatgctgcctgctcttaおよび逆方向:tcatttccgataaggcttgg(2)を使用した。マウスβ−アクチンの配列は、順方向gtgggccgctctaggcaccaaおよび逆方向ctctttgatgtcacgcacgatttc(3)である。
【0113】
CBA分析。マウス血清または細胞上清の炎症性サイトカインプロフィールのフローサイトメトリー測定分析は、BD Biosciences(カリフォルニア州San Jose)によって作製された細胞数測定ビーズ・アレイ・キット(CBA)を用いて測定した。試料は製造者のプロトコルに従って処理した。
【0114】
mMC1RのRNA分析−RT−QPCR。TRIzol(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)を用いて、全RNAを組織から抽出した。1μgの全RNAを逆転写し、Applied Biosystems(カリフォルニア州Foster City)からの試薬を用いたTaqmanキットをABI 7900で使用することによる、定量的PCRで使用した。cDNA標準をmMC1R用のそれぞれのPCRで流し、メッセージの濃度は真核18S内在性コントロール(VIC/MGBプローブ、Applied Biosystems、パート#4319413E)に対して正規化した。mMC1Rのプライマーは以下のとおりであった:順方向CTCTGCCTCGTCACTTTCTTTCTAおよび逆方向AACATGTGGGCATACAGAATCGならびにプローブCCATGCTGGCACTCA。これらは、Primer Express 3.0(Applied Biosystems、カリフォルニア州Foster City)を用いて設計した。
【0115】
LPSモデル。雄のC57BL/6マウスを、LPS(1μg/マウス)、i.p.を用いて免疫誘発した。30分後、マウスをデキサメタゾン(2mg/kg、Sigma)、RI−α−MSH類似体891、またはRI−α−MSHで処置した。LPS免疫誘発後の2時間の時点で、マウスを血清のために出血させた。サイトカイン分析は細胞数測定ビーズ・アレイ・キット(BD Biosciences)を用いたフローサイトメトリーによって測定した。
【0116】
統計分析。結果は平均±SDとして表した。それぞれの実験を少なくとも2回繰り返した。結果を分析するために、一方向ANOVAおよびチューキー多重比較試験を用いた。
【実施例】
【0117】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供するが、それを限定するものではない。
【0118】
実施例1
実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)モデルにおける免疫抑制活性
自己免疫性ブドウ膜炎とは、疼痛および失明をもたらす場合がある眼の炎症性障害である。ステロイドおよび免疫抑制薬のみがブドウ膜炎の現在の治療剤であり、重篤な眼球および全身性の毒性をしばしば有する。したがって、より安全な代替の治療剤が所望される。
【0119】
EAUとは、米国において230万人を患わせるヒトブドウ膜炎の動物モデルである。光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)もしくはそのペプチド断片または網膜S抗原(S−Ag)をアジュバントと共に用いた免疫化により、感受性系統のげっ歯類において疾患を誘導することができる。この疾患は、自発性の再発がない自然の回復を伴う、眼の網膜における炎症細胞の浸潤および光受容体の損傷を含む。同系のげっ歯類レシピエントへのブドウ膜炎誘発性のT細胞の養子移植により、ブドウ膜炎が、多発性硬化症、1型糖尿病および関節リウマチなどの多くの他の類似の自己免疫疾患と同様に、臓器特異的なT細胞に媒介される自己免疫疾患であることが示唆される。
【0120】
眼球微小環境は、局所炎症を予防するために免疫抑制を維持するための機構が配置されている免疫特権部位である。眼球組織中のニューロンによって発現されるいくつかの神経ペプチドは、眼中の免疫特権を持続させることを支援する。これらの神経ペプチドのうちの1つは、30pg/mlの生理的濃度で眼球微小環境中において構成的に発現される、α−MSHである。
【0121】
ラットにおける内毒素で誘導したブドウ膜炎を誘導中のネイティブα−MSHの全身投与により、眼房水中の浸潤細胞の数ならびにIL−6、TNF−α、MCP−1、MIP−2、および一酸化窒素のレベルを用量依存的な様式で阻害された。マウスEAUモデルでは、網膜炎症のピーク時にα−MSHを投与することで、疾患の重篤度が抑制された。α−MSHは、T細胞上のメラノコルチン5受容体(MCR−5)を介してT調節細胞を誘導し、EAUを抑制することができる。
【0122】
ネズミ後部ブドウ膜炎モデルにおけるネイティブα−MSH処置の有効性を評価した。IRBP161−180およびCFAの注射を用いてB10.RIIIマウスでブドウ膜炎を誘導した。疾患の発症は抗原刺激後の約10日目に起こった。13日目に眼スコアが2〜3に達した際に、マウスにネイティブα−MSHを連続する7日間、200μg/マウスでi.v.投与したか、または未処置のままにした。予防的処置は、エフェクター相ではなく疾患の初回抗原刺激相における活性を標的とし得るため、処置は活性な網膜炎症が観察された後に開始した。さらに、この処置戦略は臨床応用をより良好に要約する。α−MSHで処置したマウスは、未処置のマウスと比較して、7日間の処置過程全体にわたって平均臨床的眼スコアの減少を示した(図1a)。15日目に最大平均眼スコア3.67±0.52に達した未処置のマウスの群と比較して、α−MSHで処置したマウスは13日目に最大平均眼スコア2.83±0.39を示した。
【0123】
実施例2
B10.RIII実験的自己免疫性ブドウ膜炎モデルにおけるネイティブα−MSHとデキサメタゾンとの比較
ブドウ膜炎の現在の治療形態には、コルチコステロイドおよび免疫抑制剤が含まれる。ネイティブα−MSHの有効性を既知のコルチコステロイド治療であるデキサメタゾンと比較した。IRBP161−180およびCFAの注射を用いてB10.RIIIマウスでブドウ膜炎を誘導した。マウスが臨床的眼スコア1に達した疾患発症時に、マウスにネイティブα−MSH(100μg/マウス)、0.2mg/kgのデキサメタゾン、または2.0mg/kgのデキサメタゾンの1日1回の腹腔内注射を投与した。マウスを1日1回、21日間処置した。PBS対照マウスと比較して、ネイティブα−MSHで処置したマウスは処置過程の全体にわたって平均臨床的眼スコアの有意な減少を示した(図1B)。データから、ネイティブα−MSHの1日1回のi.p.投与により、0.2mg/kgまたは2.0mg/kgのどちらの用量のデキサメタゾン処置よりも高い度合でブドウ膜炎が抑制されたことが示される。
【0124】
実施例3
MCR−1と特異的に結合する新規レトロ−インバーソα−MSH類似体
ネイティブα−MSHの新規の安定なD−アミノ酸ペプチド類似体を合成し(RI α−MSH)、in vitroおよび実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)モデルにおける免疫調節能力を評価した。結合研究により、ネイティブα−MSHとは異なり、RI α−MSHは抗炎症性α−MSH受容体(MCR−1)と特異的に結合するが、他のどのα−MSH受容体(MCR−3、4、または5)とも結合しないことが示された。
【0125】
RI α−MSH類似体とメラノコルチン受容体(MCR)との結合を分析した。MCR1、3、4、および5を含めたMCRパネルを用いた競合的結合アッセイを行なった。ペプチドの結合に続いて、以前に記載した125I−NDP−MSHとの競合を行なった。ネイティブα−MSHはMCR1、3、4、および5と結合した。しかし、ネイティブα−MSHとは異なり、RI α−MSHは炎症反応を調節するMCR−1とのみ結合することが見い出された(表1)。スクランブルDアミノ酸対照ペプチドはメラノコルチン受容体のいずれとも結合しなかった。MCR−1と特異的結合し、MCR−3およびMCR−4結合を排除するα−MSH類似体の開発により、ネイティブα−MSHがこれらの受容体の結合を介して生じる潜在的な副作用を低下させることができる。
【0126】
【表1−1】

【0127】
【表1−2】

【0128】
【表1−3】

ペプチドの結合に続いて、HEK293細胞系由来の膜調製物を用いて、メラノコルチン受容体1、3、4、および5の結合における125I−NDP−MSHとの競合を行なった。図18に示すように、RI α−MSHはMC1Rに対する非常に強力な選択性を示し、Ki値はMC3、4および5Rのいずれでも30μMを超えている一方で、α−MSHは4つの受容体すべてと有意な結合を示し、MC3Rと比較してMC1Rに対する選択性は100倍未満であった。
【0129】
実施例4
レトロ−インバーソα−MSH類似体を用いた処置により、EAUにおける疾患が寛解される
新規レトロ−インバーソα−MSHペプチド類似体の免疫調節効果を実験的自己免疫性ブドウ膜炎マウス(EAU)モデルにおいて観察し、結果をネイティブα−MSHペプチドと比較した。疾患の発症時または疾患の後期段階中にRI α−MSHを全身性送達することで、ブドウ膜炎が劇的かつ再現可能に寛解された。さらに、新規RI α−MSHペプチド類似体を用いた処置により、ブドウ膜炎がネイティブα−MSHペプチドと同様の規模まで抑制された。これらのデータは、新規RI α−MSH類似体が抗炎症活性を示し、ブドウ膜炎ならびに他の自己免疫疾患および炎症において治療的用途を有することを示している。
【0130】
IRBP161−180を用いて雌のB10.RIIIマウスでEAUを誘導した。RI α−MSHおよびネイティブα−MSHの、予防的ではなく治療的処置としての有効性を調査した。マウスが中等度のブドウ膜炎の疾患段階(眼スコア2)に達した時点に開始して、マウスを、100μg/マウスのRI α−MSH、100μg/マウスのネイティブα−MSH、またはPBSを用いた1日1回の静脈内注射によって処置した。図2Aに見られるように、対照のPBSで処置したマウスは、16日目に平均眼スコア2.75±0.68の最大眼スコアに達した。しかし、PBS対照マウスと比較して、RI α−MSH類似体またはネイティブα−MSHで1日1回処置したマウスは、処置過程全体にわたって平均臨床的眼スコアの有意な減少を示した。16日目、処置開始の4日後に、PBSで処置した群中の8匹のマウスのうちの5匹が3以上の最大眼スコアを有していた一方で、ネイティブα−MSHで処置した8匹のマウスのうちの1匹のみおよびRI α−MSHで処置した8匹のマウスのうちの0匹が3以上の最大眼スコアを有していた(図2B)。
【0131】
実施例5
RI α−MSHで処置した被験体の網膜画像および組織学調査は、EAUモデルにおける疾患の抑制を示す
後期段階のブドウ膜炎で開始して、RI α−MSHまたはネイティブα−MSHで1日1回処置したマウスからの網膜画像は、PBS対照マウスと比較した疾患の抑制を示す。眼底検査画像は、処置開始後の13日目に得た(図3)。PBSで処置した群における疾患は安定化または進行し、眼全体にわたる重篤な血管炎および炎症性病変を伴う中央値眼スコア3を有していた(図3A)。しかし、RI α−MSHおよびネイティブα−MSHペプチドで処置したマウスのどちらにおいても疾患は迅速に回復した。網膜画像により、視神経のみで炎症を有する眼スコア1が示された(図3Bおよび3C)。各群中の個々のマウスの最大眼スコアを図3Dに示す。PBSで処置した群では、11匹のマウスのうちの7匹が3以上の眼スコアを有していた。しかし、ネイティブα−MSHおよびRI α−MSH中の11匹のマウスのうちの2匹のみが3以上の眼スコアを有していた。
【0132】
1日1回の処置を開始した10日後の眼の組織学調査により、RI α−MSHおよびネイティブα−MSHがどちらも、眼における病理を減少させたことが示された(図4)。ネイティブα−MSHおよびRI α−MSHで処置したマウスは、視神経領域中に軽微な炎症を有する正常な網膜構造を示す(図4Bおよび4C)。対照的に、PBSで処置したマウスは眼球炎症および組織損傷を示す。光受容体の損傷を伴った炎症が網膜および視神経領域中で見られる(図4A)。
【0133】
実施例6
EAUにおけるレトロ−インバーソα−MSHとスクランブル対照ペプチドとの腹腔内投与の比較
IRBP161−180およびCFAの注射を用いてB10.RIIIマウスでブドウ膜炎を誘導した。本発明者らは、後期疾患(眼スコア2〜3)中にRI α−MSHを用いた1日1回の腹腔内注射によって処置を開始することを評価し、有効性を対照スクランブルDアミノ酸ペプチドと比較した。マウスを1日1回、i.p.で、13日間、100μg/マウスのRI α−MSHまたはスクランブルペプチドを用いて処置した。スクランブルペプチド対照マウスと比較して、RI α−MSHで処置したマウスは、疾患の過程の15、21および23日目に平均臨床的眼スコアの有意な減少を示した(p<0.04)(図5)。疾患誘導後の23日目の個々の最大眼スコアにより、1以下のスコアを有する対照スクランブルペプチド群中のマウスは存在しなかったことと比較して、RI α−MSHにおいて75%のマウスが1以下のスコアを有することが示された。疾患の過程の全体にわたる4つの時点でマウスの個々の体重を記録した。RI α−MSHで処置した群およびスクランブルペプチドで処置した群のどちらのマウスも、すべてその体重を維持したか、または正常な体重増加を示した(データ示さず)。ペプチドを用いた1日1回の腹腔内投薬は体重減少をもたらさなかった。さらに、100μg/マウスのネイティブα−MSHまたはRI α−MSHの腹腔内投与経路は、疾患の発症時、マウスが臨床的眼スコア1に達した際に処置を投与した場合に、ブドウ膜炎において有効性を有していた(データ示さず)。したがって、RI α−MSHの腹腔内投与経路は、スクランブル対照ペプチドと比較して疾患スコアの有意な減少を示した。
【0134】
実施例7
EAUモデルへの様々な用量のRI α−MSHの投与
また、本発明者らは、後期の重篤なブドウ膜炎中のレトロ−インバーソα−MSH処置の有効性および最適な投薬も調査した。B10.RIIIマウスにIRBP161−180およびCFAを注射してブドウ膜炎を誘導した。マウスを、100μg、10μgまたは3μg/マウスのPBS、対照スクランブルペプチド(100μg/マウス)、またはRI α−MSHを用いて1日1回、i.p.で処置した。マウスが、眼の後区全体にわたる炎症性病変および起こり得る出血が含まれる眼スコア4に達した疾患のピーク時に、処置を開始した。PBSおよびスクランブルペプチド対照群の疾患は重篤なままであった(図6)。対照的に、100μgまたは10μg/マウスのRI α−MSHを用いた処置により、ブドウ膜炎が迅速に寛解された(p≦0.05)。さらに、10および100μg/マウスの用量は同等に有効であった。3μg/マウスのRI α−MSHの用量は疾患を減少も阻害もしなかった。
【0135】
実施例8
cAMPレベルに対するレトロ−インバーソα−MSHの効果
ネイティブα−MSH、RI α−MSH、またはスクランブル対照ペプチドで処理した後のB16−F1黒色腫細胞中のcAMPレベルを調査した。B16−F10黒色腫細胞系は、100〜200個の受容体/細胞のみを発現するマクロファージ細胞系と比較して、高い数のMCR1受容体(3000〜4000個の受容体/細胞)を発現する。したがって、本発明者らは、黒色腫細胞系に対するRI α−MSH処理の効果を調査することを選択した。ネズミ黒色腫B16−F1細胞を、1pg/ml〜1μg/mlの濃度のネイティブα−MSH、RI α−MSH、または対照スクランブルペプチドで処理した。30分後、細胞を溶解し、酵素免疫アッセイによって細胞内cAMPを測定した。細胞の、一般的にcAMPレベルを高めるために使用するフォルスコリン対照(100μM)処理により、cAMPの増加が示された(3455.39±406.6SD)。未処理の細胞と比較して、ネイティブα−MSHで処理した細胞においてcAMPレベルが用量依存的な様式で有意に上昇した(図7A)。また、RI α−MSH類似体も、未処理またはスクランブルペプチド対照と比較して、用量依存的な様式でcAMPレベルを有意に増加させた。しかし、10pg/mlの濃度でcAMPを増加させたネイティブα−MSHと比較してcAMPを増加させるためには、より高濃度のRI α−MSH(100ng/ml)が必要であった。cAMPレベルを増加させるために必要なこのペプチド濃度の差異は、MCR1受容体に対する結合親和性の結果であり得る。
【0136】
実施例9
配列変動ならびにcAMPレベルおよび結合MC1Rに対する効果
MSHはMC1R、MC3R、MC4R、およびMC5Rと結合し、MC1Rは免疫媒介性疾患の所望の標的の1つである。レトロ−インバーソMSH(RI−MSH)は増強された血漿安定性(図17)およびMC1R選択性を有するように操作されているが、MC1Rに対するその親和性はネイティブMSHペプチドよりも11倍低い(表1)。MC1Rの親和性を修復するために、本発明者らは、MSHのMC1R親和性を改善させることが知られている修飾をRI−MSH内に移植した。MSHのMC1R親和性を増強させるN末端SYSME配列の3つの置換(脂肪酸アシル、フェニル酪酸、およびSSIIS配列)のうち、最後のみがRI−MSHの有意な改善をもたらした。RI−MSHのD−アラニン走査アナロギング(analoging)によりMSHのアラニン走査アナロギングと同様の構造活性関係が示されたが、コアの4残基MC1R結合領域の立体化学反転走査ではMSHとRI−MSHとの間に有意な差異が示唆される。さらに、主要なフェニルアラニン残基でのシクロヘキシルアラニン置換により、MC1RとのRI−MSHの結合は改善されたが、MSH結合は改善されなかった。安定性の改善およびRI−MSHの高いMC1R選択性に重要なレトロ−反転立体配置を保持しながら、シクロヘキシルアラニンおよびSSIIS置換を組み合わせることでMC1Rに対するMSH親和性の完全な修復がもたらされた。
【0137】
一組のレトロ−インバーソMSH(RI−MSH)のアラニン走査類似体(ペプチド804〜816)を調製し、B16/F1ネズミおよびM624ヒト黒色腫細胞においてcAMP誘導について試験した。その後、cAMPの結果に基づいたサブセットをMC1Rの結合について試験した。MC1Rを結合する観察されたKi値を表1に示す。
【0138】
ネズミ黒色腫B16−F1細胞を1μg/mlのネイティブα−MSH、RI α−MSH、スクランブルペプチド対照、KPV、またはRI α−MSHのアラニン置換ペプチドで処理した(図7B)。細胞のフォルスコリン対照(100μM)処理はcAMPの増加を示した(3294.82±54.53)。cAMPレベルは、未処理、スクランブルペプチド、またはKPVで処理した細胞と比較して、ネイティブα−MSHおよびRI α−MSHで処理した細胞で有意に上昇していた。810、811、および812と命名したアラニン置換ペプチドはcAMP活性の増加を示さず、未処理、スクランブルペプチドまたはKPVで処理した細胞と同等のcAMPレベルを示した。810、811、および812と命名したペプチドは中心コアテトラペプチド配列(D−Trp D−Arg D−Phe D−His領域、アミノ酸5〜8)中にアラニン置換を有し、これはネイティブα−MSHとメラノコルチン受容体およびその生物活性との結合に関与していると提案されている。RI α−MSHペプチドのN末端またはC末端領域でのアラニン置換は、黒色腫細胞中のcAMP蓄積に影響を与えなかった。メチオニンおよびヒスチジンアミノ酸中のアラニン置換(807および809)もcAMP蓄積の減少を示したが、コアテトラペプチド配列中(810、811または812)で見られたものほど大きくなかった。コアテトラペプチド中の残基(wrfh)、およびより低い程度でRI−MSHのメチオニン4は、MC1Rとの結合に重要である。
【0139】
MC1Rに対するMSHの親和性を増加させることが示されている別の手段が、MSH変異体配列のファージディスプレイに基づいた選択を用いて実証されている。続いて、高度にMC1R選択的な配列(MS05)がファージディスプレイで選択したペプチドと親MSH配列の一部分との組換えによって見つかり、これにより、MC1Rに対するナノモーラー以下の親和性が得られた。MS05は、MC1Rに対する親和性がMSHよりもわずかに低いと報告されていたにもかかわらず(Kiは0.865nM vs. MSHで0.557nM)、予想外に、この配列のレトロ−インバーソ型によって、MC1Rに対する親和性(1nM、表1のペプチド886)はRI−MSH(4nM)よりも高かったことが示された。
【0140】
RI−MSHのそれぞれの位置での荷電および構造のわずかな相違を取り込ませた、いくつかの非天然アミノ酸残基の置換により、MC1Rは高度に保存された変化のみを許容することが示された。3つ以外のすべてが、より低いまたは同等の結合を示した。2つの変化がMC1Rに対する親和性の有意な増加をもたらした:D−フェニルアラニンのD−シクロヘキシルアラニンによる置換(D−Cha、ペプチド869、2.2nMのKi)およびD−メチオニンのD−ブチオニンによる置換(ペプチド878、2.3nMのKi)。L−シクロヘキシルアラニンを用いた置換を行い、MC1Rとの結合をわずかに阻害することが見い出された(ペプチド892、Kiは0.51nM vs. MSHで0.41nM)。予想外に、ブチオニンおよびシクロヘキシルアラニン置換の組合せは、MC1Rに対する親和性のさらなる有意な増加を生じることができなかった(ペプチド890、1.9nMのKi)。しかし、RI−MSHにおいてMS05のレトロ−インバーソN末端配列(siiss)をC末端配列(emsys)で置換し、およびD−シクロヘキシルアラニンをD−Pheで置換することを含む変化の組合せにより、それぞれの変化単独よりも大きな結合の増強が生じ、これは、効果が相乗的であることを示している。生じるペプチド(891)は、MSHとは明白に異なるMC1Rに対するKiを示した。この変化および他の変化により他のMCRに対する親和性の増加も生じたが、Ki値は依然としてマイクロモルの範囲内にあり、RI−MSHの選択性の大部分が保存されたことを示している。変化を図20に例示する。代表的な競合的結合アッセイを図21に示す。観察されたKi値には表1を参照されたい。
【0141】
実施例10
RI α−MSHを用いた処置はEAEにおいて臨床的疾患スコアを減少させる
慢性の進行性EAEマウスモデルにおける、ネイティブα−MSHおよびRI α−MSH類似体の投与の効果を評価した。雌のC57BL/6マウスを、200μgのCFAで乳化したMOG35−55ペプチドで免疫化した。百日咳毒素を0および2日目に投与した。臨床症状の兆候および重量減少についてマウスを1日1回監視した。8日目に開始してマウスを麻痺の症状について評価し、0〜5の評点システムで採点した。麻痺の臨床症状の出現は、ほとんどのマウスで約9〜11日目に現れた(図8A)。100μg/マウスのα−MSHまたはRI α−MSHペプチドまたはPBS対照を用いた1日1回の腹腔内(i.p.)処置を10日目に開始した。PBS対照と比較して、100μgのRI α−MSHで処置したマウスは平均臨床的疾患スコアの有意な減少を示した(図8A)。PBSビヒクル対照と比較して、RI α−MSHでp≦0.05の有意性は14〜22日目に達した。しかし、ネイティブα−MSHペプチド処置は疾患の誘導または進行に効果がなかった。PBS(80%)またはネイティブα−MSHで処置した(75%)マウスの群と比較して、RI α−MSHで処置したマウスの群における疾患の最大%発生率(20%)も減少した。
【0142】
実施例11
EAEにおけるRI α−MSHの用量変動
RI α−MSHの治療効果は100μg/マウスの用量で明らかであった。100μg/マウスおよび30μg/マウスのα−MSHまたはRI α−MSHペプチドを用いた処置をMOG EAEマウスモデルで試験した。1日1回のi.p.処置をMOG免疫化後の10日目に開始した。1日1回のデキサメタゾン(2mg/kg)処置を対照治療剤として加えた。100μgのRI α−MSHで処置したマウスは、PBS対照と比較した平均臨床的疾患スコアの減少を繰り返し示した(図9)。しかし、30μg/マウスのRI α−MSHの用量は、平均臨床スコアの減少に有意な効果を有さなかった。デキサメタゾン処置も疾患の過程全体にわたって疾患スコアの減少を示した。ネイティブα−MSHで処置したマウスはPBSよりも低い平均臨床スコアを有していたが、α−MSHで処置したマウスはRI α−MSHまたはデキサメタゾンで処置したマウスと同様の有効性を示さなかった。75%の疾患の最大発生率を示したPBSで処置したマウスと比較して、RI α−MSHで処置した群における疾患の%発生率は最大35%に達し、デキサメタゾンは40%に達した(図9)。これらのデータは、EAEにおけるRI α−MSHペプチド類似体を用いた処置は、疾患の平均臨床的疾患スコアおよび発生率を有意に低下させることを示している。
【0143】
実施例12
CNS組織学
PBSおよびRI α−MSHで処置したマウスにおいて脊髄を疾患誘導後の24日目に採取した。脊髄切片のヘマトキシリンおよびエオシン染色を用いて、炎症の度合および病変の数を評価した。EAEの病理により、炎症細胞の浸潤および脱髄の病巣領域が示された。脊髄の組織病理学的評価により、MOG EAEモデルにおけるRI α−MSH処置の有効性が実証された。各処置群の平均臨床スコアの代表的なマウスからの切片を図10a〜10dに示す。データは、炎症の病巣領域を欠くRI α−MSHで処置したマウスと比較した、PBSで処置したマウスの群における大規模な炎症性浸潤を示す。
【0144】
実施例13
疾患進行中の脾臓中のTNF−αおよびIL−10の測定
EAEにおけるRI α−MSH処置の効果の作用機構を調査した。ネイティブα−MSHは、TNF−αレベルを低下させ、IL−10を増加させることによって、単球/マクロファージに効果を有することが報告されている。RI α−MSHまたはネイティブα−MSHで処置した、MOGで初回抗原刺激したマウスの脾臓中のTNF−αおよびIL−10のmRNAレベルを定量的PCRによって評価した。マウスをMOG p35−55で免疫化し、RI α−MSHまたはネイティブα−MSHを用いた1日1回の処置を10日目に開始した。1日1回の処置の開始後の1、4および7日目に脾臓試料をマウスから採取した。データは、7日間の1日1回の処置後のPBS対照と比較して、RI α−MSHおよびα−MSHを用いた処置がTNF−αを有意に低下させたことを示す(p≦0.001)(図11e)。しかし、それ以前の時点ではTNF−αレベルの有意な変化はなかった(1日目および4日目、図11aおよび11c)。また、PBS対照と比較して、RI α−MSHおよびαMSHの処置群のどちらでも、7日目の時点でIL−10のmRNAレベルが減少された(図11f)。しかし、それよりも前の時点でIL−10のmRNAレベルの差異は検出されなかった(図11bおよび11d)。ネイティブα−MSH処置は疾患の平均臨床的疾患スコアまたは%発生率を減少させなかったが、本研究では、α−MSH処置は、PBS対照と比較して疾患進行の17日目までに脾臓中のTNF−αおよびIL−10のmRNAレベルをどちらも減少させた。RI α−MSH類似体は、1日1回の処置後に脾臓中のTNF−αのmRNAレベルを減少させることができる。
【0145】
実施例14
MOGペプチドに対する復活応答に対する、RI α−MSHの効果
MOG35−55ペプチドに対する復活応答に対する、α−MSHまたはRI α−MSHを用いてin vivoでマウスを処置することの効果を評価した。マウスをMOG35−55ペプチドで初回抗原刺激し、2〜8日目に、マウスをPBS、100μgのα−MSHまたは100μgのRI α−MSHのいずれかで処置した。9日目に脾臓および流入領域リンパ節を採取し、MOG35−55ペプチドに対する復活応答について、[3H]チミジンの取り込みによってin vitroで分析した。データは、PBSで処置した群と比較した、α−MSHマウスの群におけるMOG35−55ペプチドの脾臓細胞の増殖応答の有意な低下を示す(図12a)。RI α−MSHで処置した群は、MOG35−55ペプチドに対する復活応答のわずかな減少を示した。しかし、リンパ節細胞集団におけるMOGペプチドに対する復活応答では、PBS、α−MSH、およびRI α−MSHで処置した群の間で応答性の有意な差異が示されなかった(図12b)。
【0146】
in vivo各処置群(ナイーブ、PBS、α−MSH、RI α−MSH)由来の、MOG35−55ペプチドを用いてin vitroで刺激した脾臓細胞から細胞上清を収集した。フローサイトメトリーによる細胞数測定ビーズアレイによってサイトカインレベルを評価した。データは、PBSで処置した群と比較して、α−MSHおよびRI α−MSHで処置した群のどちらにおいてもTNF−α、IFNγ、IL−6およびMCP−1のレベルの低下を示す(図12cおよび12d)。α−MSHおよびRI α−MSHで処置した群のどちらの脾臓細胞の上清のサイトカインレベルも、初回抗原刺激していないマウスの脾臓細胞からのサイトカインレベルと同様であった。
【0147】
したがって、RI α−MSHペプチド処置はMOGペプチドに対するサイトカイン復活応答に効果を有していたが、T細胞増殖応答に影響を与えなかった。
【0148】
実施例15
EAEの初回抗原刺激相中にマウスをα−MSHまたはRI α−MSHで処置することの効果
マウスをMOG35−55ペプチドで免疫化し、2〜8日目に、PBSビヒクル対照、α−MSH、またはRI α−MSHで1日1回処置した。個々のマウスからの脾臓を9日目に採取し、mRNAサイトカインの発現を、リアルタイムPCRを用いて定量した。図13は、疾患の初回抗原刺激相におけるPBS、α−MSHまたはRI α−MSHで処置したマウスの脾臓中のTNF−αおよびIL−10のmRNA発現レベルを示す。MOGペプチドで免疫化しなかったナイーブマウスを用いてTNF−αおよびIL−10のベースラインmRNAレベルを定量した。PBSビヒクル対照と比較して、α−MSHまたはRI α−MSHのいずれかを用いた処置は、IL−10およびTNF−αのmRNAのレベルを低下させた。
【0149】
また、血清試料も研究の9日目に収集し、サイトカインレベル:TNF−α、MCP−1、IL−12、IL−10、およびIL−6について評価した(図13cおよび13d)。データは、PBS対照群と比較した、α−MSHおよびRI α−MSHで処置した群のどちらにもおけるMCP−1およびIL−6の低下を示す。PBS対照と比較して、MCP−1はRI α−MSHで処置した群で有意に低下していた(p<0.01)。さらに、RI α−MSHで処置した群は、PBS群と比較してTNF−αおよびIL−12の低下を示した。3つの処置群間で血清IL−10レベルの差異はなかった。
【0150】
実施例16
RI α−MSHはマクロファージマーカーに対する効果を有さない
MOG35−55で免疫化したマウスにおいて、α−MSHまたはRI α−MSHを用いた7日間の1日1回の投薬後に、脾臓CD11bおよびF4/80マクロファージをCD86、CD40、およびCD14の表面発現レベルについてフローサイトメトリーによって調査した。データは、α−MSHまたはRI α−MSHで処置したマウス中の脾臓CD11bまたはF4/80マクロファージ細胞集団におけるCD86、CD40またはCD14の発現レベルに差異がないことを示す(図14)。結果は、血中単球をCD86、CD40、およびCD14の発現レベルについて調査した際と同様の発見を示した(データ示さず)。
【0151】
実施例17
LPS炎症マウスモデルにおける効果
ネイティブα−MSHは、メラノコルチン受容体(MCR)、特にメラノコルチン1受容体の刺激を介してTNF−α産生をダウンレギュレーションすることによって炎症を阻害することが報告されている。LPSはTNF−α、MCP−1、IL−6およびIFNγなどの炎症伝達物質を刺激し、急性炎症モデルとして使用されている。α−MSH類似体がLPSマウス炎症モデルにおいて炎症性サイトカインを抑制できるかどうかを調査した。LPS投与後の脾臓および腹膜マクロファージにおけるMC1Rの発現レベルを決定した。C57BL/6マウスにLPSをi.p.注射し、LPS注射後のいくつかの時点で、脾臓および腹膜マクロファージを分析用に採取した。データは、腹膜マクロファージのどの時点間でもMC1RのmRNA発現のレベルの識別可能な差異を示さない(図15a)。しかし、LPS投与は、MC1RのmRNAレベルを、LPS免疫誘発を受けなかったナイーブマウスを超えて増加させなかった。脾臓中では、MC1RのmRNAのレベルはLPS注射の30分後は上昇しており、その後、注射後1時間には低下した(図15b)。LPSは、同様にナイーブマウスにおいて脾臓中のMC1RのmRNAレベルをベースラインレベルを超えて増加させた。
【0152】
脾臓および腹膜マクロファージにおけるMC1RのmRNA発現を実証するデータにより、LPS免疫誘発の30分後がα−MSHまたはRI α−MSH類似体の処置に最適な時点であり得ることが示された。C57BL/6マウスにLPSをi.p.注射し、30分後、ネイティブα−MSHまたはRI α−MSH類似体891を5mg/kg〜0.156mg/kgの範囲の用量でi.p.投与した。RI α−MSH類似体891とは、d−Chaおよびhsiiss D−アミノ酸をコアペプチド配列に付加したRI α−MSHの類似体である。RI α−MSH類似体891は、マウスMC1Rに対する結合親和性が増加しており、cAMPを刺激する効力が増加していることが示されている(データ示さず)。結果により、PBSビヒクル対照と比較して、ネイティブα−MSHで処置した群におけるTNF−αおよびIL−10のレベルの有意な減少が示された(図16aおよび16c)。MCP−1はネイティブα−MSH処置によって影響を受けなかった(図16b)。RI α−MSH類似体891を用いたLPSで免疫誘発したマウスの処置により同様の結果が示され、ビヒクル対照と比較して、TNF−αおよびIL−10が有意な低下しており、MCP−1レベルに影響を与えなかった(図16d〜16f)。ネイティブα−MSHおよびRI α−MSH類似体891のどちらのより低い用量も炎症性サイトカインの最大抑制を示した。デキサメタゾン陽性対照はTNF−αおよびMCP−1のレベルの抑制を一貫して示した。
【0153】
実施例18
血漿中のペプチドの安定性
ネイティブα−MSHの血清半減期は約10分間であると推定されている。この制限された半減期にもかかわらず、ペプチドはそれでも強力な抗炎症活性を誘発することができる。しかし、抗炎症活性の効力を増加させ、さらに治療剤として開発するためには、より安定なα−MSH類似体が必要である。ネイティブα−MSHのD−アミノ酸類似体(レトロ−インバーソα−MSHまたはRI α−MSHと呼ぶ)が合成され、これはネイティブα−MSHよりも安定である。ペプチドのD−アミノ酸型はペプチドのL−アミノ酸型よりもタンパク質分解に耐性があり、遅い速度で代謝される。
【0154】
RI−α−MSHの安定性は、血漿またはPBS中、in vitro、37℃で24時間インキュベーションすることによって決定した。アリコートを取り出し、タンパク質を2倍体積のアセトニトリルで沈殿させた。α−MSHを対照として使用し、ブラジキニンを内部標準として使用した。遠心分離後、C18カラム分離および陽性エレクトロスプレーイオン化モードを用いたLC/MS/MS(MRM)分析を行なうまで試料を−80℃で凍結した。図17aに示すように、MSHは血漿中で約3時間の半減期を示したが、PBS中では安定であった。しかし、RI−α−MSHはPBSおよび血漿のどちらでも安定しており、24時間にわたって検出可能な分解は示されなかった。
【0155】
α−MSHおよびRI−α−MSHの薬物動態学(PK)プロフィールにより、RI−α−MSHがネイティブα−MSHよりも長い血清半減期を有することが示唆される(図17b)。単一用量の100μgのRI−α−MSHまたはα−MSHで処置したマウスは、24時間後に測定可能な血清レベルのRI−α−MSHを有していたが、処置の120分後にα−MSHは検出可能なレベルで存在しなかった(n=5)。
【0156】
実施例19
レトロ−インバーソペプチドの結合効果。
【0157】
D−Phe(HfRW)を含有するコアMSHテトラペプチドは、MC1Rとの有意な結合を生じるために十分である(20〜50nMのKi)。しかし、同じテトラペプチドのレトロ−インバーソ型では非常にわずかな結合が観察され(wrFh、883、Ki>30μM、表1)、これは、レトロ−インバーソペプチドはHfRWと同じ様式で受容体と完全に接触することができないことを示している。脂肪酸アシル基をHfRWのN末端に付加することで、MC1Rとのその結合が選択的に改善され、MSHに匹敵する親和性が得られる。これは、MC1Rでステアリル−HfRWペプチドに観察される(1.3nM、ペプチド820)。ジアミノヘキサンステアリル基をレトロ−インバーソwrFhに付加することで(ペプチド882)、MC1Rとの結合が改善され(120nM、>250倍)、HfRWのN末端へのステアリン酸付加と匹敵する程度までになるが(80倍)、RI−MSHで見られる親和性に達さず(4.1nM)、ここでも、RI−MSH中の他の残基が、MSHよりもRI−MSHとMC1Rとの結合においてより大きな役割を果たすことが示される。
【0158】
実施例20
レトロ−インバーソペプチドの結合に対する立体化学効果。
【0159】
コアレトロ−インバーソテトラペプチド中の残基の立体化学は、MC1Rとの結合に対してL型のMSHよりも有意に異なる効果を有する。図19に示すように、RI−MSH中のコアテトラペプチド残基がL型に反転させることで(ペプチド884、893〜895)、MC1Rに対するペプチドの親和性がすべて減少した。驚くべきかつ予想外に、RI配列中のD−PheからL−Pheへの反転は結合の20倍の減少を引き起こした一方で、HFRW中の対応する変化(L−PheからD−Phe)は、結合を400倍も改善させることが報告されている。他の残基については、立体化学の反転はコアHfRWペプチドよりもRI−MSHに対して低い効果を有することが見い出され、ここでも、コアテトラペプチド中のそれぞれの残基の相対的な重要性がHfRWテトラペプチドよりもRI−MSHで低いことが示される。
【0160】
実施例21
レトロ−インバーソMSHの末端キャップ化の効果。
【0161】
MC1Rに対するより高い親和性を達成するための別の可能な経路は、HfRWペプチドをフェニル酪酸で末端キャップ化することにより、MC1Rに対するHfRWの親和性が選択的かつ強力に増加されるという観察に基づく(Ki=6pM)。しかし、切断したC末端フェニルプロピルアミドを保有するRI−MSH(ペプチド847)の親和性の増加は観察されず、ヒスチジン残基で切断されたペプチド(ペプチド847int)およびそのアミノプロピル−フェニル付加物(ペプチド847、表1)のどちらでも150nMのKiが観察され、これにより、RI−MSHでは、結合がテトラペプチド配列の同時相互作用を許可しない様式で変更されることが実証され、MC1R中のヒスチジン結合要素の付近に芳香族相互作用部位が想定された。
【0162】
実施例22
レトロインバーソMSHの毒素コンジュゲートの合成。
【0163】
システインをN末端に付加したペプチド891(表1)の改変型は、Fmoc化学によって作製する。プロテアーゼ感受性バリン−シトルリンリンカーを含有するモノメチルアウリスタチンE(MMAE)と、チオールとのカップリングのマレイミド−カプロイル部分とのコンジュゲートを、本明細書中に参考として組み込まれているDoroninaら(2003)Nature Biotechnol.、21:778−784に従って合成する。ペプチドおよびMMAEコンジュゲートを、25mMのリン酸Na、2mMのEDTA、pH7の溶液中、14時間25℃でインキュベーションし、生成物をC18逆相HPLC(RP−HPLC)によって精製した。
【0164】
実施例23
ネズミ黒色腫細胞系におけるcAMPに対するRI α−MSH類似体の効果
ネイティブα−MSHおよびRI α−MSHはどちらもネズミ黒色腫細胞においてcAMPレベルを増加させる。RI α−MSHペプチド類似体を作製し、RI α−MSHペプチドのコア配列への改変が、RI α−MSHペプチドと比較してcAMPレベルを上昇させるかどうかを決定した。ネズミB16−F1黒色腫細胞を用いたcAMPアッセイにおいて、作製したRI α−MSH類似体の用量応答実験を実施した。
【0165】
In vitro細胞培養物:B16−F1ネズミ黒色腫細胞を、96ウェルプレート内、5×10個の細胞/ウェルで終夜、L−グルタミンおよびpen/strepおよびFBSを含む培地中で培養した。培地を除去し、IBMXを含む新しい培地を細胞に1時間加えた。その後、細胞をRI α−MSHまたはRI α−MSHペプチド類似体(890、891、892、893、894もしくは895)で処理した。30分後にcAMPアッセイキットを用いて細胞を溶解し、上清をアッセイに使用した。10μMのフォルスコリンを陽性対照として用いた。
【0166】
cAMPレベル:cAMP競合アッセイキット(Amersham Biosciences)を用いて細胞内cAMPを測定した。すべての細胞溶解液試料は分析用に1:100に希釈した。
【0167】
ペプチド:
869 vpkGwr(d−Cha)hemsys
872 vpkGwrfremsys
880 vpkGwrFhsiiss
878 vpkGwrfhe(d−ブチオニン)sys
886 RI−MS05 vpkgwrfhsiiss
890 vpkGwr(d−Cha)he(d−ブチオニン)sys
891 vpkGwr(d−Cha)hsiiss
892 SYSMEH(Cha)RWGKPV
893 vpkGWrfhemsys
894 vpkGwRfhemsys
895 vpkGwrfHemsys。
【0168】
結果:ネズミ黒色腫B16−F1細胞を10−4〜10−11Mの濃度範囲のRI α−MSHまたはRI α−MSH類似体(869、872、880、878、886および890〜895)で処理した。RI α−MSHまたはRI α−MSH類似体で処理した細胞からのcAMPレベル。類似体894を例外として、RI α−MSH類似体の大多数はRI α−MSHと比較して改善されたEC50値を示した。類似体891、892および886は、cAMPアッセイにおいてRI α−MSHペプチドと比較してEC50値の最大の改善を示した。要約すると、RI α−MSH類似体はRI α−MSHペプチドと比較して改善された用量応答およびEC50値を示した。グラフデータには図22およびEC50データには表2を参照されたい。
【0169】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラノコルチン1受容体(MC1R)と選択的に結合する実質的に純粋な化合物または薬学的に許容されるその塩であって、該化合物は、以下の配列:
His Xaa Arg Trp(配列番号1)またはD−Trp D−Arg Xaa D−His(配列番号2)
[式中、Xaaは、D−Cha、D−PheまたはChaであり、
Xaaは、D−Cha、D−PheまたはPheである]
を有するコアテトラペプチドを含む、化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
配列:D−Ser D−Ile D−Ile D−Ser D−Ser(配列番号3)を有するC末端ポリペプチドを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
メラノコルチン1受容体(MC1R)と選択的に結合する実質的に純粋な化合物または薬学的に許容されるその塩であって、該化合物は、以下の配列:
Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13
[式中、Xaaは、D−Val、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、D−Pro、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、D−Lys、D−Orn、D−Nle、D−AlaまたはD−Lysであり、
Xaaは、Gly、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Trp、Trp、D−3−ベンゾチエニル−Ala、D−5−ヒドロキシ−Trp、D−5−メトキシ−Trp、D−Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Arg、D−His、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Cha、D−Phe、Phe、D−4−フルオロ−Phg、D−3−ピリジル−Ala、D−Thi、D−Trp、D−4−ニトロ−Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−His、His、D−Arg、Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Glu、D−Asp、D−シトルリン、D−Ser、またはD−Alaであり、
Xaa10は、D−Met、D−ブチオニン、D−Ile、またはD−Alaであり、
Xaa11は、D−Ser、D−IleまたはD−Alaであり、
Xaa12は、D−Tyr、D−Ser、またはD−Alaであり、
Xaa13は、D−SerまたはD−Alaであり、
Xaa1〜3がすべてD−Alaである場合以外は、1個以下のXaa1〜13がD−Alaであり、
1個以下のXaa1〜13がL−アミノ酸である]
を有するポリペプチドを含む、化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
以下の配列を有するポリペプチドを含む請求項3に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩:
Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13
[式中、Xaaは、D−Valであり、
Xaaは、D−Proであり、
Xaaは、D−Lys、D−OrnまたはD−Nleであり、
Xaaは、Glyであり、
Xaaは、D−Trp、Trp、D−3−ベンゾチエニル−Ala、D−5−ヒドロキシ−Trp、D−5−メトキシ−Trp、またはD−Pheであり、
Xaaは、D−ArgまたはD−Hisであり、
Xaaは、D−Cha、D−Phe、Phe、D−4−フルオロ−Phg、D−3−ピリジル−Ala、D−Thi、D−Trp、またはD−4−ニトロ−Pheであり、
Xaaは、D−His、His、D−Arg、Phe、またはD−Alaであり、
Xaaは、D−Glu、D−Asp、D−シトルリンまたはD−Serであり、
Xaa10は、D−Met、D−ブチオニンまたはD−Ileであり、
Xaa11は、D−SerまたはD−Ileであり、
Xaa12は、D−TyrまたはD−Serであり、
Xaa13は、D−Serであり、
1個以下のXaa1〜13がL−アミノ酸である]。
【請求項5】
以下の配列を有するポリペプチドを含む請求項3に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩:Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13
[式中、Xaaは、D−Valであり、
Xaaは、D−Proであり、
Xaaは、D−Lys、D−OrnまたはD−Nleであり、
Xaaは、Glyであり、
Xaaは、D−TrpまたはTrpであり、
Xaaは、D−Argであり、
Xaaは、D−Cha、D−Phe、PheまたはD−Thiであり、
Xaaは、D−HisまたはHisであり、
Xaaは、D−GluまたはD−Serであり、
Xaa10は、D−Met、D−ブチオニンまたはD−Ileであり、
Xaa11は、D−SerまたはD−Ileであり、
Xaa12は、D−TyrまたはD−Serであり、
Xaa13は、D−Serであり、
1個以下のXaa1〜13がL−アミノ酸である]。
【請求項6】
以下の配列を有するポリペプチドを含む実質的に純粋な化合物または薬学的に許容されるその塩:
D−Val D−Pro D−Lys Gly D−Trp D−Arg Phe D−His D−Ser D−Ile D−Ile D−Ser D−Ser(配列番号4)、
D−Val D−Pro D−Lys Gly D−Trp D−Arg D−Cha D−His D−Ser D−Ile D−Ile D−Ser D−Ser(配列番号5)、
Ser Tyr Ser Met Glu His Cha Arg Trp Gly Lys Pro Val(配列番号6)、もしくは
D−Val D−Pro D−Lys Gly D−Trp D−Arg D−Phe D−His D−Glu D−Met D−Ser D−Tyr D−Ser(配列番号7)。
【請求項7】
前記ポリペプチドがPEG化されている、請求項1、3、4、5または6に記載の化合物。
【請求項8】
MC1Rと選択的に結合する、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
MC1Rを選択的に活性化する能力、
in vitroでの血漿中における安定性、または
プロテアーゼ分解に対する耐性
の特性うちの少なくとも1つを示す、請求項1、3、4、5または6に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1、3、4、5または6に記載の化合物と薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項11】
生物活性部分とコンジュゲートしている、請求項1、3、4、5または6に記載の化合物。
【請求項12】
被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の請求項1、3、4、5または6に記載の化合物とを含む薬学的組成物を投与する工程を含む、自己免疫疾患または状態の処置を必要としている該被験体における自己免疫疾患または状態を処置する方法。
【請求項13】
前記自己免疫疾患または状態が、多発性硬化症、I型糖尿病、再生不良性貧血、グレーブス病、セリアック病、クローン病、ループス、関節炎、骨関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎および重症筋無力症からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の請求項1、3、4、5または6に記載の化合物とを含む薬学的組成物を投与する工程を含む、炎症の処置を必要としている該被験体における炎症を処置する方法。
【請求項15】
前記炎症が、炎症性腸疾患、関節リウマチ、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、乾癬、胃炎および虚血性心疾患からなる群から選択される疾患に関連している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の請求項1、3、4、5または6に記載の化合物とを含む薬学的組成物を投与する工程を含む、移植片拒絶を減少させるかまたは阻害することを必要としている該被験体において移植片拒絶を減少させるかまたは阻害する方法。
【請求項17】
被験体に、薬学的に許容される賦形剤と治療上有効な量の請求項1、3、4、5または6に記載の化合物とを含む医薬品を投与する工程を含む、黒色腫の処置を必要としている該被験体における黒色腫を処置する方法。
【請求項18】
被験体に、薬学的に許容される賦形剤と、治療上有効な量の、抗腫瘍ペイロードとコンジュゲートさせた請求項1、3、4、5または6に記載の化合物を含むコンジュゲートとを含む医薬品を投与する工程を含む、黒色腫の処置を必要としている該被験体における黒色腫を処置する方法。
【請求項19】
前記抗腫瘍ペイロードが放射性核種、放射線増感剤、光増感剤、化学療法剤、または毒素である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項10に記載の薬学的組成物と任意選択で使用説明書とを含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図20−3】
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【図21】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図3】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−521949(P2011−521949A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511661(P2011−511661)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/037809
【国際公開番号】WO2009/151708
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510309190)ジェンザイム コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】