説明

β−アミロイドペプチドを認識するヒト化抗体

本発明は、患者の脳中のAβのアミロイド沈着物を伴う疾患の処置のための改良された作用物質および方法を提供する。好ましい作用物質はヒト化抗体を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は“Humanaized Antibodies That Recognize Beta−Amyloid Peptide(β−アミロイドペプチドを認識するヒト化抗体)”と題された既出願の米国仮出願第60/363,751号明細書(2002年3月12日出願)(係属中)の利益を主張する。上で言及された出願の内容全体は引用することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は老人性痴呆をもたらす進行性疾患である。全般として、非特許文献1;特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照されたい。大まかに言えば、該疾患は2つの範疇、すなわち高齢(65歳超)で発生する晩発性および老年期のかなり前すなわち35と60歳との間に発症する早発性に分けられる。双方の型の疾患で病状は同一であるがしかしより若年で開始する場合に異常がより重篤でありかつ広まる傾向にある。該疾患は脳中の少なくとも2つの型の病変すなわち神経原線維錯綜および老人斑を特徴とする。神経原線維錯綜は、対中の相互の周囲で捻れた2本のフィラメントよりなる微小管会合したτタンパク質の細胞内沈着物である。老人斑(すなわちアミロイド斑)は、中心に細胞外アミロイド沈着物を伴う直径150μmまでのまとまりのない神経網の領域であり、脳組織の切片の顕微鏡分析により見える。脳内のアミロイド斑の蓄積はまた、ダウン症候群および他の認識障害とも関連する。
【0003】
斑の主構成要素はAβすなわちβ−アミロイドペプチドと称されるペプチドである。Aβペプチドは、より大きな膜貫通糖タンパク質(アミロイド前駆体タンパク質(APP)と称される著名なタンパク質)の39〜43アミノ酸の4kDaの内的フラグメントである。多様なセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解性プロセシングの結果として、Aβは長さ40アミノ酸の短い形態および長さ42から43アミノ酸の範囲にわたる長い形態の双方で主に見出される。APPの疎水性膜貫通ドメインの一部がAβのカルボキシ端で見出されており、そしてとりわけ長い形態の場合に斑に凝集するAβの能力の原因であるとみられる。脳中のアミロイド斑の蓄積は最終的にニューロン細胞死に至る。この型の神経変質を伴う身体的症状がアルツハイマー病を特徴づける。
【0004】
APPタンパク質内のいくつかの突然変異がアルツハイマー病の存在と相互に関連づけられている。例えば、非特許文献5(バリン717をイソロイシンへ);非特許文献6(バリン717をグリシンへ);非特許文献7(バリン717をフェニルアラニンへ);非特許文献8(リシン595−メチオニン596をアスパラギン595−ロイシン596に変える二重突然変異)を参照されたい。こうした突然変異はAPPのAβへの増大されたもしくは変えられたプロセシング、とりわけAPPの増大された量の長い形態のAβ(すなわちAβ1−42およびAβ1−43)へのプロセシングによりアルツハイマー病を引き起こすと考えられている。プレセニリン遺伝子PS1およびPS2のような他の遺伝子中の突然変異が、APPのプロセシングに影響を及ぼして増大された量の長い形態のAβを生成させると間接的に考えられている(非特許文献9を参照されたい)。
【0005】
マウスモデルが、アルツハイマー病におけるアミロイド斑の意義を決定するために成功裏に使用されてきた(非特許文献4;非特許文献10)。とりわけ、PDAPPトランスジェニックマウス(変異体のヒトAPPを発現しかつ若齢でアルツハイマー病を発症する)に長い形態のAβを注入する場合、それらはアルツハイマー病の進行の低下およびAβペプチドに対する抗体力価の増大の双方を表す(非特許文献11)。上で論考された観察結果は、とりわけその長い形態のAβがアルツハイマー病の原因要素であることを示す。
【0006】
従って、アルツハイマー病の処置のための新たな治療および試薬、とりわけ生理学的(例えば非毒性の)用量で治療上の利益を遂げることが可能な治療および試薬に対する必要性が存在する。
【特許文献1】Hardyら、第WO 92/13069号明細書
【非特許文献1】Selkoe、TINS 16:403(1993)
【非特許文献2】Selkoe、J.Neuropathol.Exp.Neurol.53:438(1994)
【非特許文献3】Duffら、Nature 373:476(1995)
【非特許文献4】Gamesら、Nature 373:523(1995)
【非特許文献5】Goateら、Nature 349:704)(1991)
【非特許文献6】Chartier Harlanら Nature 353:844(1991))
【非特許文献7】Murrellら、Science 254:97(1991)
【非特許文献8】Murrellら、Nature Genet.1:345(1992)
【非特許文献9】Hardyら、TINS 20:154(1997)
【非特許文献10】Johnson−Woodら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1550(1997)
【非特許文献11】Schenkら、Nature 400、173(1999)
【発明の開示】
【0007】
[発明の要約]
本発明は新たな免疫学的試薬、とりわけアミロイド原性疾患(例えばアルツハイマー病)の予防および処置のための治療的抗体試薬を特徴とする。本発明は、少なくとも部分的に、Aβペプチドに特異的に結合しかつアミロイド原性障害と関連する斑負荷量(plaque burden)を低下かつ/もしくは神経炎性ジストロフィーを低下させるのに有効であるモノクローナル抗体の同定および特徴付けに基づく。本抗体の構造および機能の分析は予防的および/もしくは治療的使用のための多様なヒト化抗体の設計に至る。とりわけ、本発明は本抗体の可変領域のヒト化を特徴とし、そして従って特徴とされる抗体のヒト化免疫グロブリンもしくは抗体鎖、無傷のヒト化免疫グロブリンもしくは抗体、および機能的免疫グロブリンもしくは抗体フラグメント、とりわけ抗原結合フラグメントを提供する。
【0008】
特徴とされるモノクローナル抗体の相補性決定領域を含んでなるポリペプチドもまた、前記ポリペプチドをコードするのに適するポリヌクレオチド試薬、ベクターおよび宿主細胞がそうであるように開示される。
【0009】
アミロイド原性疾患もしくは障害(例えばアルツハイマー病)の処置方法が、製薬学的組成物およびこうした応用での使用のためのキットがそうであるように開示される。
【0010】
適正な免疫学的機能、ならびに治療的試薬として使用される場合に改良された結合親和性および/もしくは低下された免疫原性を有するヒト化抗体の設計における置換の影響を受けやすい残基の同定に重要である、特徴とされるモノクローナル抗体内の残基の同定方法もまた特徴とする。
【0011】
変えられたエフェクター機能を有する抗体(例えばヒト化抗体)およびそれらの治療的使用もまた特徴とする。
[発明の詳細な説明]
本発明はアルツハイマー病もしくは他のアミロイド原性疾患を予防もしくは治療するための新たな免疫学的試薬および方法を特徴とする。本発明は、少なくとも部分的に、β−アミロイドタンパク質(Aβ)の結合(例えば可溶性および/もしくは凝集したAβの結合)、(例えば凝集したAβの)貪食作用の媒介、(例えば患者における)斑負荷量の低下ならびに/または神経炎性ジストロフィーの低下で有効なモノクローナル免疫グロブリン12B4の特徴付けに基づく。本発明はさらに、12B4免疫グロブリンの可変LおよびH鎖の一次および二次構造の決定および構造の特徴付け、ならびに活性および免疫原性に重要な残基の同定に基づく。
【0012】
本明細書で記述される12B4モノクローナル免疫グロブリンの可変Lおよび/もしくは可変H鎖を包含する免疫グロブリンを特徴とする。ヒト化可変Lおよび/もしくはヒト化可変H鎖を包含する好ましい免疫グロブリン、例えば治療的免疫グロブリンを特徴とする。好ましい可変Lおよび/もしくは可変H鎖は、12B4免疫グロブリン(例えばドナー免疫グロブリン)からの相補性決定領域(CDR)、および実質的にヒトアクセプター免疫グロブリンからの可変枠組み領域を包含する。「実質的にヒトアクセプター免疫グロブリンから」という句は、大多数のもしくは重要な枠組み残基がヒトアクセプター配列からであるが、しかしながらヒト化免疫グロブリンの活性を向上させる(例えばそれがドナー免疫グロブリンの活性をより緊密に模倣するような活性を変える)よう選択されたかもしくはヒト化免疫グロブリンの免疫原性を低下させるよう選択された残基でのある位置での残基の置換を見込むことを意味している。
【0013】
一態様において、本発明は、12B4の可変領域相補性決定領域(CDR)を包含し(すなわち、配列番号2として示されるL鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを包含するか、または配列番号4として示されるH鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを包含する)かつ実質的にヒトアクセプター免疫グロブリンLもしくはH鎖配列からの可変枠組み領域を包含する、ヒト化免疫グロブリンLもしくはH鎖を特徴とするが、但し、該枠組み残基の最低1残基が対応するマウス残基に逆突然変異され、ここで前記逆突然変異はAβ結合を指図する該鎖の能力に実質的に影響を及ぼさない。
【0014】
別の態様において、本発明は、12B4可変領域相補性決定領域(CDR)を包含し(すなわち、配列番号2として示されるL鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを包含しかつ/または配列番号4として示されるH鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを包含する)かつ実質的にヒトアクセプター免疫グロブリンLもしくはH鎖配列からの可変枠組み領域を包含する、ヒト化免疫グロブリンLもしくはH鎖を特徴とするが、但し、最低1個の枠組み残基がマウス12B4 LもしくはH鎖可変領域配列からの対応するアミノ酸残基で置換され、ここで該枠組み残基は(a)抗原を直接非共有結合する残基;(b)CDRに隣接する残基;(c)CDRと相互作用する残基(例えば相同な既知の免疫グロブリン鎖の解明された構造上でLもしくはH鎖をモデル化することにより同定される);および(d)VL−VH界面に参画する残基よりなる群から選択される。
【0015】
別の態様において、本発明は、12B4の可変領域のCDRおよびヒトアクセプター免疫グロブリンLもしくはH鎖配列からの可変枠組み領域を包含するヒト化免疫グロブリンLもしくはH鎖を特徴とするが、但し、最低1個の枠組み残基がマウス12B4 LもしくはH鎖可変領域配列からの対応するアミノ酸残基で置換され、ここで、該枠組み残基は、可変領域の三次元モデルの解析により同定されるところのL鎖可変領域のコンホメーションもしくは機能に影響を及ぼすことが可能な残基、例えば抗原と相互作用することが可能な残基、抗原結合部位に近接の残基、CDRと相互作用することが可能な残基、CDRに隣接する残基、CDR残基の6Å以内の残基、正準(canonical)残基、補助装置領域(vernier zone)残基、鎖間充填残基、異常な残基、もしくは構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基である。
【0016】
別の態様において、本発明は、上述された置換に加え、最低1個の稀なヒト枠組み残基の置換を特徴とする。例えば、稀な残基はその位置でヒト可変鎖配列に普遍的であるアミノ酸残基で置換され得る。あるいは、稀な残基は、相同な生殖系列可変鎖配列からの対応するアミノ酸残基で置換され得る。
【0017】
別の態様において、本発明は、上述されたところのL鎖およびH鎖を包含するヒト化免疫グロブリン、もしくは前記免疫グロブリンの抗原結合フラグメントを特徴とする。例示的一態様において、ヒト化免疫グロブリンは最低10−1、10−1もしくは10−1の結合親和性でβ−アミロイドペプチド(Aβ)に結合(例えば特異的に結合)する。別の態様において、免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメントはアイソタイプγ1を有するH鎖を包含する。別の態様において、免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメントは可溶性β−アミロイドペプチド(Aβ)および凝集したAβ双方に結合(例えば特異的に結合)する。別の態様において、免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメントはβ−アミロイドペプチド(Aβ)の貪食作用を媒介する(例えば貪食作用を誘導する)。なお別の態様において、免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメントは被験体の血液脳関門を横断する。なお別の態様において、免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメントは被験体におけるβ−アミロイドペプチド(Aβ)負荷量および神経炎性ジストロフィー双方を低下させる。
【0018】
別の態様において、本発明は12B4可変領域(例えば配列番号2もしくは配列番号4として示される可変領域配列)を包含するキメラ免疫グロブリンを特徴とする。なお別の態様において、免疫グロブリンもしくはその抗原結合フラグメントはIgG1からの定常領域をさらに包含する。
【0019】
本明細書に記述される免疫グロブリンは、アミロイド原性疾患の予防もしくは治療を目的とする治療的方法での使用にとりわけ適する。一態様において、本発明は、有効投薬量の本明細書に記述されるところのヒト化免疫グロブリンを患者に投与することを必要とするアミロイド原性疾患(例えばアルツハイマー病)の予防もしくは治療方法を特徴とする。別の態様において、本発明は本明細書に記述されるところのヒト化免疫グロブリンおよび製薬学的担体を包含する製薬学的組成物を特徴とする。本明細書に記述される免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントもしくは鎖を製造するための単離された核酸分子、ベクターおよび宿主細胞、ならびに前記免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメントもしくは免疫グロブリン鎖の製造方法もまた特徴とする。
【0020】
本発明はさらに、それぞれヒト化12B4免疫グロブリンを製造する場合に置換の影響を受けやすい12B4残基の同定方法を特徴とする。例えば、置換の影響を受けやすい可変枠組み領域の残基の同定方法は、解明された相同な免疫グロブリン構造上で12B4可変領域の三次元構造をモデル化すること、および、12B4免疫グロブリン可変領域のコンホメーションもしくは機能に影響を及ぼすことが可能な残基について前記モデルを分析することを必要とし、その結果置換の影響を受けやすい残基が同定される。本発明はさらに、12B4免疫グロブリン、12B4免疫グロブリン鎖もしくはそれらのドメインの三次元像の製作における配列番号2もしくは配列番号4として示される可変領域配列またはそれらのいずれかの部分の使用を特徴とする。
【0021】
本発明はさらに、エフェクター分子、例えば補体もしくはエフェクター細胞上の受容体を結合する能力のような変えられたエフェクター機能を有する免疫グロブリンを特徴とする。とりわけ、本発明の免疫グロブリンは、変えられた定常領域例えばFc領域を有し、ここでFc領域中の最低1アミノ酸残基が異なる残基もしくは側鎖で置換されている。一態様において、改変された免疫グロブリンはIgGクラスのものであり、免疫グロブリンが例えば改変されない免疫グロブリンと比較して変えられたエフェクター機能を有するようなFc領域中の最低1アミノ酸残基置換を含んでなる。特定の態様において、本発明の免疫グロブリンは、それがより少なく免疫原性であり(例えば望ましくないエフェクター細胞活性、溶解もしくは補体結合を惹起しない)、改良されたアミロイド除去(clearance)特性を有し、かつ/または所望の半減期を有するような変えられたエフェクター機能を有する。
【0022】
本発明を記述する前に、下で使用されるべきある種の用語の定義を示すことがその理解に有用であると思われる。
【0023】
「免疫グロブリン」もしくは「抗体」(本明細書で互換性に使用される)という用語は、2本のHおよび2本のL鎖(前記鎖は例えば抗原を特異的に結合する能力を有する鎖間ジスルフィド結合により安定化されている)よりなる基本的な4ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指す。「一本鎖免疫グロブリン」もしくは「一本鎖抗体」(本明細書で互換性に使用される)という用語は、1本のHおよび1本のL鎖(前記鎖は例えば抗原を特異的に結合する能力を有する鎖間ペプチドリンカーにより安定化されている)よりなる2ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指す。「ドメイン」という用語は、例えばβ−プリーツシートおよび/もしくは鎖間ジスルフィド結合により安定化されるペプチドループを含んでなる(例えば3ないし4個のペプチドループを含んでなる)1本のHもしくはL鎖ポリペプチドの球状の領域を指す。ドメインはさらに、「定常」ドメインの場合には多様なクラスのメンバーのドメイン内の配列の変動、もしくは「可変」ドメインの場合には多様なクラスのメンバーのドメイン内の重要な変動の相対的欠如に基づき「定常」もしくは「可変」と本明細書で称される。抗体もしくはポリペプチド「ドメイン」は、しばしば、当該技術分野で互換性に抗体もしくはポリペプチド「領域」と称される。抗体L鎖の「定常」ドメインは「L鎖定常領域」、「L鎖定常ドメイン」、「CL」領域もしくは「CL」ドメインと互換性に称される。抗体H鎖の「定常」ドメインは「H鎖定常領域」、「H鎖定常ドメイン」、「CH」領域もしくは「CH」ドメインと互換性に称される)。抗体L鎖の「可変」ドメインは「L鎖可変領域」、「L鎖可変ドメイン」、「VL」領域もしくは「VL」ドメインと互換性に称される)。抗体H鎖の「可変」ドメインは、「H鎖定常領域」、「H鎖定常ドメイン」、「CH」領域もしくは「CH」ドメインと互換性に称される)。
【0024】
「領域」という用語もまた、抗体鎖もしくは抗体鎖ドメインの一部(part)もしくは一部分(portion)(例えば、本明細書で定義されるところのHもしくはL鎖の一部もしくは一部分、または定常もしくは可変ドメインの一部もしくは一部分)、ならびに前記鎖もしくはドメインのより分離した一部もしくは一部分も指すことができる。例えば、LおよびH鎖もしくはLおよびH鎖可変ドメインは、本明細書で定義されるところの「枠組み領域」すなわち「FR」間に点在した「相補性決定領域」すなわち「CDR」を包含する。
【0025】
免疫グロブリンもしくは抗体は、単量体もしくは多量体で存在し得る(例えば五量体で存在するIgM抗体および/または単量体、二量体もしくは多量体で存在するIgA抗体)。「フラグメント」という用語は無傷のすなわち完全な抗体もしくは抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含んでなる抗体もしくは抗体鎖の一部もしくは一部分を指す。フラグメントは無傷のすなわち完全な抗体もしくは抗体鎖の化学的もしくは酵素的処理を介して得ることができる。フラグメントはまた組換え手段によっても得ることができる。例示的フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabcおよび/もしくはFvフラグメントを包含する。「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原を結合する、もしくは抗原結合(すなわち特異的結合)について無傷の抗体と(すなわちそれらが由来した無傷の抗体と)競合する免疫グロブリンもしくは抗体のポリペプチドフラグメントを指す。
【0026】
「コンホメーション」という用語はタンパク質もしくはポリペプチド(例えば抗体、抗体鎖、そのドメインもしくは領域)の三次構造を指す。例えば、「L(もしくはH)鎖のコンホメーション」という句はL(もしくはH)鎖可変領域の三次構造を指し、また、「抗体のコンホメーション」もしくは「抗体フラグメントのコンホメーション」という句は抗体もしくはそのフラグメントの三次構造を指す。
【0027】
抗体の「特異的結合」は、抗体が抗原もしくは好ましいエピトープに対する認識可能な親和性を表しかつ好ましくは有意の交差反応性を表さないことを意味する。「認識可能な」もしくは好ましい結合は最低10、10、10、10−1もしくは1010−1の親和性での結合を包含する。10−1より大きい、好ましくは10−1より大きい親和性がより好ましい。本明細書に示されるものの中間の値もまた本発明の範囲内にあることを意図しており、そして、好ましい結合親和性は、ある範囲の親和性、例えば10ないし1010−1、好ましくは10ないし1010−1、より好ましくは10ないし1010−1として示し得る。「有意の交差反応性を表さない」抗体は、望ましくない実体(例えば望ましくないタンパク質性の実体)に認識可能に結合しないことができるものである。例えば、Aβに特異的に結合する抗体はAβを認識可能に結合することができるが、しかし非Aβタンパク質もしくはペプチド(例えば斑に包含される非Aβタンパク質もしくはペプチド)と有意に反応しないことができる。好ましいエピトープに特異的な抗体は、例えば同一のタンパク質もしくはペプチド上の離れたエピトープと有意に交差反応しないことができる。特異的結合はこうした結合を測定するためのいずれかの技術に認識された手段に従って測定し得る。好ましくは、特異的結合はスキャッチャード分析および/もしくは競合的結合アッセイに従って測定する。
【0028】
結合フラグメントは組換えDNA技術または無傷の免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断により生じられる。結合フラグメントはFab、Fab’、F(ab’)、Fabc、Fv、単一鎖および一本鎖抗体を包含する。「二特異性」もしくは「二官能性」免疫グロブリンもしくは抗体以外に、免疫グロブリンもしくは抗体は同一のその結合部位のそれぞれを有すると理解される。「二特異性」もしくは「二官能性抗体」は、2種の異なるH/L鎖対および2種の異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である。二特異性抗体はハイブリドーマの融合もしくはFab’フラグメントの連結を包含する多様な方法により製造し得る。例えばSongsivilaiとLachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547−1553(1992)を参照されたい。
【0029】
「ヒト化免疫グロブリン」もしくは「ヒト化抗体」という用語は、最低1本のヒト化免疫グロブリンもしくは抗体鎖(すなわち最低1本のヒト化LもしくはH鎖)を包含する免疫グロブリンもしくは抗体を指す。「ヒト化免疫グロブリン鎖」もしくは「ヒト化抗体鎖」(すなわち「ヒト化免疫グロブリンL鎖」もしくは「ヒト化免疫グロブリンH鎖」)という用語は、実質的にヒト免疫グロブリンもしくは抗体からの可変枠組み領域および実質的に非ヒト免疫グロブリンもしくは抗体からの相補性決定領域(CDR)(例えば最低1個のCDR、好ましくは2個のCDR、より好ましくは3個のCDR)を包含しかつ定常領域(例えばL鎖の場合は最低1個の定常領域もしくはその部分、および好ましくはH鎖の場合は3個の定常領域)をさらに包含する可変領域を有する免疫グロブリンもしくは抗体鎖(すなわちそれぞれLもしくはH鎖)を指す。「ヒト化可変領域」(例えば「ヒト化L鎖可変領域」もしくは「ヒト化H鎖可変領域」)という用語は、実質的にヒト免疫グロブリンもしくは抗体からの可変枠組み領域および実質的に非ヒト免疫グロブリンもしくは抗体からの相補性決定領域(CDR)を包含する可変領域を指す。
【0030】
「実質的にヒト免疫グロブリンもしくは抗体から」または「実質的にヒト」という句は、比較の目的上ヒト免疫グロブリンもしくは抗体のアミノ配列に整列させた場合に、例えば保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換、逆突然変異などを見込みヒト枠組みもしくは定常領域配列と該領域が最低80〜90%、好ましくは最低90〜95%、より好ましくは最低95〜99%の同一性(すなわち局所の配列の同一性)を共有することを意味している。保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換、逆突然変異などの導入はしばしばヒト化抗体もしくは鎖の「至適化」と称される。「実質的に非ヒト免疫グロブリンもしくは抗体から」または「実質的に非ヒト」という句は、非ヒト生物体、例えば非ヒト哺乳動物のものに最低80〜95%、好ましくは最低90〜95%95%、より好ましくは96%、97%、98%もしくは99%同一の免疫グロブリンもしくは抗体配列を有することを意味する。
【0031】
従って、おそらくCDRを除くヒト化免疫グロブリンもしくは抗体、またはヒト化免疫グロブリンもしくは抗体鎖の全部の領域もしくは残基は、1種もしくはそれ以上の天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する領域もしくは残基に実質的に同一である。「対応する領域」もしくは「対応する残基」という用語は、第一および第二の配列を比較の目的上至適に整列する場合に第一のアミノ酸もしくはヌクレオチド配列上の一領域もしくは残基と同一の(すなわち同等な)位置を占有する第二のアミノ酸もしくはヌクレオチド配列上の一領域もしくは残基を指す。
【0032】
「有意な同一性」という用語は、2種のポリペプチド配列をデフォルトのギャップ重み(gap weight)を使用してプログラムGAPもしくはBESTFITによるように至適に整列する場合に最低50〜60%の配列の同一性、好ましくは最低60〜70%の配列の同一性、より好ましくは最低70〜80%の配列の同一性、より好ましくは最低80〜90%の同一性、なおより好ましくは最低90〜95%の同一性、およびなおより好ましくは最低95%の配列の同一性もしくはそれ以上(例えば99%の配列の同一性もしくはそれ以上)を共有することを意味している。「実質的同一性」という用語は、2種のポリペプチド配列をデフォルトのギャップ重みを使用してプログラムGAPもしくはBESTFITによるように至適に整列する場合に最低80〜90%の配列の同一性、好ましくは最低90〜95%の配列の同一性、およびより好ましくは最低95%の配列の同一性もしくはそれ以上(例えば99%の配列の同一性もしくはそれ以上)を共有することを意味している。配列比較のため、典型的には1配列が参照配列として作用し、それと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合はその後の座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。その後、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づき参照配列に関しての試験配列(1種もしくは複数)の配列の同一性パーセントを計算する。
【0033】
比較のための配列の至適のアライメントは、例えば、SmithとWaterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanとWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、PearsonとLipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズム(ウィスコンシン ジェネティックス ソフトウェア パッケージ(Wisconsin Genetics Software Package)、ジェネティックス コンピュータ グループ(Genetics Computer Group)、575 Science Dr.、ウィスコンシン州マディソン中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピュータ化された実行、もしくは視覚的精査(全般的に、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい)により実施し得る。配列の同一性および配列の類似性のパーセントを決定するのに適するアルゴリズムの一例は、Altschulら、J.Mol.Biol.215:403(1990)に記述されるBLASTアルゴリズムである。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)(国立保健研究所(the National Institutes of Health)NCBIインターネットサーバを通して公的にアクセス可能)を通じて公的に入手可能である。典型的には、デフォルトのプログラムパラメータを使用して配列比較を実施し得るが、とは言えカスタマイズしたパラメータもまた使用し得る。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムはデフォルトとして3の語長(wordlength)(W)、10の期待値(expectation)(E)およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(HenikoffとHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0034】
好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。アミノ酸置換を保存的もしくは非保存的と分類する目的上、アミノ酸は後に続くとおり、すなわちグループI(疎水性側鎖):leu、met、ala、val、leu、ile;グループII(中性の親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖);asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖の向きに影響する残基):gly、pro;およびグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、pheにグループ分けされる。保存的置換は同一分類内のアミノ酸間の置換を必要とする。非保存的置換はこれらの分類の1つの1メンバーを別のもののメンバーと交換することを構成する。
【0035】
好ましくは、ヒト化免疫グロブリンもしくは抗体は、対応する非ヒト化抗体のものの3、4もしくは5の係数内にある親和性で抗原を結合する。例えば、非ヒト化抗体が10−1の結合親和性を有する場合、ヒト化抗体は最低3×10−1、4×10−1もしくは10−1の結合親和性を有することができる。免疫グロブリンもしくは抗体鎖の結合特性を記述する場合、鎖は「抗原(例えばAβ)結合を導く」その能力に基づいて記述し得る。鎖は、それが無傷の免疫グロブリンもしくは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)に特異的な結合特性もしくは結合親和性を賦与する場合に「抗原結合を導く」と言われる。突然変異(例えば逆突然変異)は、それが前記突然変異を欠く同等な鎖を含んでなる抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)のものに比較して最低1桁だけ、前記鎖を含んでなる無傷の免疫グロブリンもしくは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)の結合親和性に影響を及ぼす(例えば減少させる)場合に、抗原結合を導くHもしくはL鎖の能力に実質的に影響を及ぼすと言われる。突然変異は、それが前記突然変異を欠く同等な鎖を含んでなる抗体(もしくはその抗原結合フラグメント)のものの2、3もしくは4の係数のみだけ、前記鎖を含んでなる無傷の免疫グロブリンもしくは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)の結合親和性に影響を及ぼす(例えば減少させる)場合に「抗原結合を導く鎖の能力に実質的に影響を及ぼさ(例えば減少させ)ない」。
【0036】
「キメラ免疫グロブリン」もしくは抗体という用語は、その可変領域が第一の種由来でありかつその定常領域が第二の種由来である免疫グロブリンもしくは抗体を指す。キメラ免疫グロブリンもしくは抗体は、例えば異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから遺伝子工学により構築し得る。「ヒト化免疫グロブリン」もしくは「ヒト化抗体」という用語は、下に定義されるところのキメラ免疫グロブリンもしくは抗体を包含することを意図していない。ヒト化免疫グロブリンもしくは抗体はそれらの構築においてキメラである(すなわち1以上の種のタンパク質からの領域を含んでなる)とは言え、それらは本明細書に定義されるところのキメラ免疫グロブリンもしくは抗体中で見出されない付加的な特徴(すなわちドナーCDR残基およびアクセプター枠組み残基を含んでなる可変領域)を包含する。
【0037】
「抗原」は抗体が特異的に結合する実体(例えばタンパク質性の実体すなわちペプチド)である。
【0038】
「エピトープ」もしくは「抗原決定子」という用語は免疫グロブリンもしくは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)が特異的に結合する抗原上の一部位を指す。エピトープは、連続するアミノ酸もしくはタンパク質の三次フォールディングにより並置される非連続的アミノ酸双方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露に際して保持される一方、三次フォールディングにより形成されるエピトープは典型的には変性溶媒での処理に際して喪失される。エピトープは、典型的には独特の空間的コンホメーション中に最低3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15アミノ酸を包含する。エピトープの空間的コンホメーションの決定方法は例えばx線結晶学および二次元核磁気共鳴を包含する。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、Vol.66、G.E.Morris編(1996)を参照されたい。
【0039】
同一エピトープを認識する抗体は、標的抗原への別の抗体の結合を封鎖する1抗体の能力を示す単純なイムノアッセイ、すなわち競合的結合アッセイで同定し得る。競合的結合は、試験中の免疫グロブリンがAβのような共通の抗原への参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイで測定される。多数の型の競合的結合アッセイ、例えば:固相直接もしくは間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接もしくは間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliら、Methods in Enzymology 9:242(1983)を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirklandら、J.Immunol.137:3614(1986)を参照されたい);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(HarlowとLane、Antibodies:A Laboratory Manual、コールド スプリング ハーバー プレス(Cold Spring Harbor Press)(1988)を参照されたい);125−I標識を使用する固相直接標識RIA(Morelら、Mol.Immunol.25(1):7(1988)を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheungら、Virology 176:546(1990));および直接標識RIA(Moldenhauerら、Scand.J.Immunol.32:77(1990))が既知である。典型的には、こうしたアッセイはこれらすなわち未標識の試験免疫グロブリンおよび標識した参照免疫グロブリンのいずれかをもつ固体表面もしくは細胞に結合した精製された抗原の使用を必要とする。競合的阻害は、試験免疫グロブリンの存在下での固体表面もしくは細胞に結合された標識の量を測定することにより測定する。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合する抗体が過剰に存在する場合、それは、共通の抗原への参照抗体の特異的結合を最低50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%もしくはそれ以上だけ阻害することができる。
【0040】
エピトープはまた免疫学的細胞、例えばB細胞および/もしくはT細胞によっても認識される。エピトープの細胞認識は、H−チミジンの取り込み、サイトカイン分泌、抗体分泌もしくは抗原依存性の殺傷(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ)により測定されるところの抗原依存性の増殖を測定するin vitroアッセイにより測定し得る。
【0041】
例示的エピトープもしくは抗原決定子はヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内で見出され得るが、しかし好ましくはAPPのAβペプチド内に見出される。APPの複数のアイソフォーム、例えばAPP695APP751およびAPP770が存在する。APP内のアミノ酸はAPP770アイソフォーム(例えばジェンバンク(GenBank)受託番号P05067を参照されたい)の配列に従って番号を割り当てられている。Aβ(本明細書でβ−アミロイドペプチドおよびA−βともまた称される)ペプチドはAPPの39〜43アミノ酸のおよそ4kDaの内的フラグメントである(Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43)。例えばAβ40はAPPの残基672−711よりなり、また、Aβ42はAPPの残基673−713よりなる。in vivoもしくはin situでの多様なセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解性プロセシングの結果として、Aβは、長さ40アミノ酸の「短い形態」および長さ42から43アミノ酸の範囲にわたる「長い形態」双方で見出される。本明細書に記述されるところの好ましいエピトープもしくは抗原決定子はAβペプチドのN末端内に位置し、そしてAβのアミノ酸1−10内、好ましくはAβ42の残基1−3、1−4、1−5、1−6、1−7もしくは3−7からの残基を包含する。付加的な言及されるエピトープもしくは抗原決定子は、Aβの残基2−4、5、6、7もしくは8、Aβの残基3−5、6、7、8もしくは9、またはAβ42の残基4−7、8、9もしくは10を包含する。抗体がAβ3−7のような指定された残基内の1エピトープに結合すると言われる場合、意味しているものは、該抗体が指定された残基(すなわちこの一例においてAβ3−7)を含有するポリペプチドに特異的に結合することである。こうした抗体はAβ3−7内のすべての残基と必ずしも接触するわけではない。また、Aβ3−7内のすべての単一のアミノ酸置換もしくは欠失が必ずしも結合親和性に有意に影響を及ぼすわけではない。
【0042】
「アミロイド原性疾患」という用語は不溶性のアミロイド原線維の形成もしくは沈着を伴う(もしくはそれにより引き起こされる)いかなる疾患も包含する。例示的アミロイド原性疾患は、限定されるものでないが全身性アミロイドーシス、アルツハイマー病、成人発症型糖尿病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型痴呆ならびにプリオン関連の伝染性海綿状脳症(それぞれ、ヒトにおけるクールーおよびクロイツフェルト−ヤーコブ病、ならびにヒツジおよび蓄牛におけるスクレイピーおよびBSE)を挙げることができる。多様なアミロイド原性疾患は沈着される原線維のポリペプチド成分の性質により定義もしくは特徴付けされている。例えば、アルツハイマー病を有する被験体もしくは患者において、β−アミロイドタンパク質(例えば野性型、バリアント、もしくは短縮型β−アミロイドタンパク質)がアミロイド沈着物の特徴をなすポリペプチド成分である。従って、アルツハイマー病は、例えば被験体もしくは患者の脳中の「Aβの沈着を特徴とする疾患」もしくは「Aβの沈着物を伴う疾患」の一例である。「β−アミロイドタンパク質」、「β−アミロイドペプチド」、「β−アミロイド」、「Aβ」および「Aβペプチド」という用語は本明細書で互換性に使用する。
【0043】
「免疫原性作用物質」もしくは「免疫原」は、場合によってはアジュバントとともに哺乳動物への投与に際してそれ自身に対する免疫学的応答を誘導することが可能である。
【0044】
本明細書で使用されるところの「処置」という用語は、疾患、疾患の症状もしくは疾患に対する素因を治療(cure)、治癒、緩和、解放、変化、治療(remedy)、軽減、改善もしくはそれらに影響を及ぼす目的を伴い、疾患、疾患の症状もしくは疾患に対する素因を有する患者への治療薬の適用もしくは投与または患者からの単離された組織もしくは細胞株への治療薬の適用もしくは投与と定義する。
【0045】
「有効用量」もしくは「有効投薬量」という用語は所望の効果を達成もしくは少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義する。「治療上有効な用量」という用語は、既に疾患に罹っている患者において該疾患およびその合併症を治癒もしくは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量と定義する。この使用に有効な量は感染症の重症度および患者自身の免疫系の全般的状態に依存することができる。
【0046】
「患者」という用語は予防的もしくは治療的いずれかの処置を受領するヒトおよび他の哺乳動物被験体を包含する。
【0047】
「可溶性」もしくは「解離した」Aβは、単量体の可溶性ならびにオリゴマーの可溶性Aβポリペプチド(例えば可溶性Aβ二量体、三量体など)を包含する非凝集型すなわち分解したAβポリペプチドを指す。「不溶性」Aβは凝集するAβポリペプチド、例えば非共有結合により一緒に保持されるAβを指す。Aβ(例えばAβ42)は、少なくとも部分的に該ペプチドのC末端の疎水性残基(APPの膜貫通ドメインの一部)の存在により凝集すると考えられる。可溶性Aβは脳脊髄液および/もしくは血清のような生物学的液体中でin vivoで見出し得る。あるいは、可溶性Aβは、凍結乾燥したペプチドを超音波処理を用いて希釈していないDMSO中で溶解することにより調製し得る。生じる溶液を遠心分離(例えば14,000×g、4℃、10分)していかなる不溶性粒子も除去する。
【0048】
「エフェクター機能」という用語は抗体(例えばIgG抗体)のFc領域中に存する活性を指し、そして、例えばエフェクター細胞活性、溶解、補体媒介性の活性、抗体消失および抗体の半減期のような抗体のいくつかの免疫機能を制御し得る補体および/もしくはFc受容体のようなエフェクター分子を結合する抗体の能力を包含する。
【0049】
「エフェクター分子」という用語は、限定されるものでないが補体タンパク質もしくはFc受容体を挙げることができる抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合することが可能である分子を指す。
【0050】
「エフェクター細胞」という用語は、典型的には、限定されるものでないがリンパ球、例えば抗原提示細胞およびT細胞を挙げることができるエフェクター細胞の表面上で発現されるFc受容体を介して抗体(例えばIgG抗体)のFc部分に結合することが可能な細胞を指す。
【0051】
「Fc領域」という用語は、IgG抗体のC末端領域、とりわけ前記IgG抗体のH鎖(1本もしくは複数)のC末端領域を指す。IgG H鎖のFc領域の境界はわずかに変動し得るとは言え、Fc領域は典型的にはIGg H鎖(1本もしくは複数)のほぼアミノ酸残基Cys226からカルボキシル末端までにわたると定義する。
【0052】
「Kabatの番号付け」という用語は、別の方法で述べられない限り、Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、国立保健研究所公衆衛生局(Public Health Service,National Institutes of Health)、メリーランド州ベセスダ(1991))(明らかに引用することにより本明細書に組み込まれる)中のようなEUインデックス(EU index)を使用する例えばIgG H鎖抗体中の残基の番号付けと定義する。
【0053】
「Fc受容体」もしくは「FcR」という用語は抗体のFc領域に結合する受容体を指す。抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体は、限定されるものでないが、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体(これらの受容体のアレルバリアントおよび選択的スプライスされた形態を包含する)を挙げることができる。Fc受容体はRavetchとKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capelら、Immunomethods 4:25−34(1994);およびde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)に総説されている。
I.免疫学的および治療的試薬
本発明の免疫学的および治療的試薬は、本明細書に定義されるところの免疫原もしくは抗体、またはそれらの機能的もしくは抗原結合フラグメントを含むかもしくはそれらよりなる。基本的な抗体構造単位はサブユニットの四量体を含んでなることが知られている。各四量体はポリペプチド鎖の2個の同一の対より構成され、各対は1本の「軽い」(約25kDa)および1本の「重い」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識を司る約100ないし110もしくはそれ以上のアミノ酸の可変領域を包含する。各鎖のカルボキシ末端部分は主としてエフェクター機能を司る定常領域を規定する。
【0054】
L鎖はκもしくはλのいずれかと分類され、そして長さ約230残基である。H鎖はγ、μ、α、δもしくはεと分類され、長さ約450〜600残基であり、そしてそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEのような抗体のアイソタイプを規定する。HおよびL双方の鎖はドメインにフォールディングする。「ドメイン」という用語は一タンパク質、例えば免疫グロブリンもしくは抗体の球状の一領域を指す。免疫グロブリンもしくは抗体ドメインは、例えばβ−プリーツシートにより安定化される3もしくは4個のペプチドループおよび1個の鎖間ジスルフィド結合を包含する。無傷のL鎖は例えば2ドメイン(VおよびC)を有し、また、無傷のH鎖は例えば4もしくは5ドメイン(V、C1、C2およびC3)を有する。
【0055】
LおよびH鎖内で、可変および定常領域は、約12アミノ酸もしくはそれ以上の「J」領域により結合され、H鎖はまたさらに約10アミノ酸の「D」領域も包含する。(全般的に、Fundamental Immunology(Paul,W.編、第2版 レイバン プレス(Raven Press)、ニューヨーク(1989)、第7章(全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)を参照されたい)。
【0056】
各L/H鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。従って無傷の抗体は2個の結合部位を有する。二官能性もしくは二特異性抗体を除いて2個の結合部位は同一である。鎖は全部、相補性決定領域すなわちCDRともまた呼ばれる3個の超可変領域により結合される比較的保存された枠組み領域(FR)の同一の一般的構造を表す。天然に存在する鎖もしくは組換え的に製造された鎖はリーダー配列とともに発現される可能性があり、これは細胞のプロセシングの間に除去されて成熟鎖を生じさせる。例えば目的の特定の鎖の分泌を高めるもしくはそのプロセシングを変えるために天然に存在しないリーダー配列を有する成熟鎖もまた組換え的に製造し得る。
【0057】
各対の2個の成熟鎖のCDRは枠組み領域により整列されて特定のエピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端へ、LおよびH双方の鎖はドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。「FR4」はまた、当該技術分野で可変H鎖のD/J領域および可変L鎖のJ領域とも称される。各ドメインへのアミノ酸の割り当てはKabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest(国立保健研究所(National Institutes of Health)、メリーランド州ベセスダ、1987および1991)の定義に従う。代替の構造の定義がChothiaら、J.Mol.Biol.196:901(1987);Nature 342:878(1989);およびJ.Mol.Biol.186:651(1989)(下で集合的に「Chothiaら」と引用されかつ全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)により提案されている。
A.Aβ抗体
本発明の治療薬はアミロイド斑のAβもしくは他の成分に特異的に結合する抗体を包含する。好ましい抗体はモノクローナル抗体である。いくつかのこうした抗体は、可溶性の形態に結合することなく凝集した形態のAβに特異的に結合する。いくつかは凝集された形態に結合することなく可溶性の形態に特異的に結合する。いくつかは凝集されたおよび可溶性双方の形態に結合する。治療方法で使用される抗体は、好ましくは、無傷の定常領域もしくはFc受容体と相互作用するのに少なくとも十分な定常領域を有する。好ましい抗体は斑中のAβのFc媒介性の貪食作用の刺激で有効なものである。ヒトアイソタイプIgG1はそれが貪食細胞上(例えば脳に常在するマクロファージもしくは小グリア細胞上)のFcRI受容体に対するヒトアイソタイプの最高の親和性を有するために好ましい。ヒトIgG1はマウスIgG2aの同等物であり、後者は従ってアルツハイマー病の動物(例えばマウス)モデルにおいてin vivo有効性を試験するのに適する。二特異性Fabフラグメントもまた使用することができ、ここで抗体の一アームはAβに対する、そして他者はFc受容体に対する特異性を有する。好ましい抗体は約10、10、10、10もしくは1010−1(これらの値の中間の親和性を包含する)より大きい(もしくはこれらに等しい)結合親和性でAβに結合する。
【0058】
モノクローナル抗体は、コンホメーション的もしくは非コンホメーション的エピトープであり得るAβ内の特異的一エピトープに結合する。抗体の予防的および治療的有効性は実施例に記述されるトランスジェニック動物モデル手順を使用して試験し得る。好ましいモノクローナル抗体はAβの残基1−10(天然のAβの第一のN末端残基を1と称する)内のエピトープ、より好ましくはAβの残基3−7内のエピトープに結合する。いくつかの方法において、異なるエピトープに対する結合特異性を有する複数のモノクローナル抗体を使用し、例えば、Aβの残基3−7内のエピトープに特異的な抗体をAβの残基3−7の外側のエピトープに特異的な抗体と共投与し得る。こうした抗体は連続してもしくは同時に投与し得る。Aβ以外のアミロイド成分に対する抗体もまた使用(例えば投与もしくは共投与)し得る。
【0059】
抗体のエピトープ特異性は、例えば、異なるメンバーがAβの異なる配列を表すファージディスプレイライブラリーを形成することにより決定し得る。ファージディスプレイライブラリーをその後、試験中の抗体に特異的に結合するメンバーについて選択する。一団の配列を単離する。典型的には、こうした一団は共通のコア配列および異なるメンバーで変動する長さの隣接配列を含有する。抗体への特異的結合を示す最短のコア配列が該抗体により結合されるエピトープを規定する。抗体はまた、そのエピトープ特異性が既に決定されている抗体を用いる競合アッセイでエピトープ特異性について試験することもできる。例えば、Aβへの結合について12B4抗体と競合する抗体は、12B4と同一のもしくは類似のエピトープに、すなわち残基Aβ3−7内に結合する。エピトープ特異性についての抗体のスクリーニングは治療的有効性の有用な予測因子である。例えば、Aβの残基1−7内のエピトープに結合することが決定された抗体は、本発明の方法論によりアルツハイマー病の予防および治療において有効であることがありそうである。
【0060】
Aβの他領域に結合することなくAβの好ましい一セグメントに特異的に結合する抗体は、他の領域に結合するモノクローナル抗体もしくは無傷のAβに対するポリクローナル血清に関して多数の利点を有する。第一に、等量の投薬量について、好ましいセグメントに特異的に結合する抗体の投薬量はより高いモル投薬量のアミロイド斑の除去で有効な抗体を含有する。第二に、好ましいセグメントに特異的に結合する抗体は、無傷のAPPポリペプチドに対する除去応答を誘導することなくアミロイド沈着物に対する除去応答を誘導して、それにより潜在的な副作用を低下させ得る。
1.非ヒト抗体の製造
本発明は非ヒト抗体、例えば本発明の好ましいAβエピトープに対する特異性を有する抗体を特徴とする。こうした抗体は本発明の多様な治療組成物の処方で使用し得るか、または、好ましくはヒト化もしくはキメラ抗体(下に詳述される)の製造のための相補性決定領域を提供し得る。非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス、モルモット、霊長類、ウサギもしくはラットの製造は、例えばAβで動物を免疫することにより達成し得る。Aβを含んでなるより長いポリペプチドもしくはAβの免疫原性フラグメントもしくはAβに対する抗体に対する抗イディオタイプ抗体もまた使用し得る。HarlowとLane、上記(全部の目的上引用することにより組み込まれる)を参照されたい)。こうした免疫原は天然の供給源から、ペプチド合成により、もしくは組換え発現により得ることができる。場合によっては、免疫原は下述されるとおり担体タンパク質と融合もしくは別の方法で複合体形成されて投与し得る。場合によっては免疫原はアジュバントとともに投与し得る。「アジュバント」という用語は、抗原とともに投与される場合に該抗原に対する免疫応答を増大するがしかし単独で投与される場合に該抗原に対する免疫応答を生成させない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球動員、Bおよび/もしくはT細胞の刺激ならびにマクロファージの刺激を包含するいくつかの機構により免疫応答を増大し得る。下述されるとおりいくつかの型のアジュバントを使用し得る。フロイントの完全アジュバント、次いで不完全アジュバントが実験動物の免疫感作に好ましい。
【0061】
ウサギもしくはモルモットは典型的にポリクローナル抗体を作成するのに使用される。例えば受動的保護のためのポリクローナル抗体の例示的製造を後に続くとおり実施し得る。125匹の非トランスジェニックマウスを100μgのAβ1−42に加えてCFA/IFAアジュバントで免疫し、そして4〜5か月に安楽死させる。免疫したマウスから血液を収集する。IgGを他の血液成分から分離する。免疫原に特異的な抗体はアフィニティークロマトグラフィーにより部分的に精製してよい。マウスあたり平均約0.5〜1mgの免疫原特異的な抗体が得られ、合計で60〜120mgを生じる。
【0062】
マウスはモノクローナル抗体を作成するのに典型的に使用される。Aβのフラグメントもしくはより長い形態をマウスに注入すること、ハイブリドーマを調製することおよびAβに特異的に結合する抗体のハイブリドーマをスクリーニングすることにより、フラグメントに対しモノクローナル抗体を製造し得る。場合によっては、抗体はAβの他のオーバーラップしないフラグメントに結合することなくAβの特定の領域もしくは所望のフラグメントへの結合についてスクリーニングする。後者のスクリーニングは、Aβペプチドの欠失変異体の集合物に対する抗体の結合を測定すること、およびどの欠失変異体が該抗体に結合するかを決定することにより達成し得る。結合は例えばウェスタンブロットもしくはELISAにより評価し得る。該抗体への特異的結合を示す最小のフラグメントが該抗体のエピトープを規定する。あるいは、エピトープの特異性は、試験および参照抗体がAβへの結合について競合する競合アッセイにより測定し得る。試験および参照抗体が競合する場合には、それらは、同一のエピトープもしくは一方の抗体の結合が他方の結合を妨害するような十分に近接のエピトープに結合する。こうした抗体の好ましいアイソタイプはマウスアイソタイプIgG2aもしくは他の種の同等なアイソタイプである。マウスアイソタイプIgG2aはヒトアイソタイプIgG1(例えばヒトIgG1)の同等物である。
2.キメラおよびヒト化抗体
本発明はまたβ−アミロイドペプチドに特異的なキメラおよび/もしくはヒト化抗体(すなわちキメラおよび/もしくはヒト化免疫グロブリン)も特徴とする。キメラおよび/もしくはヒト化抗体は、キメラもしくはヒト化抗体の構築の出発原料を提供するマウスもしくは他の非ヒト抗体と同一のもしくは類似の結合特異性および親和性を有する。
A.キメラ抗体の製造
「キメラ抗体」という用語は、そのLおよびH鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから典型的には遺伝子工学により構築された抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグメントを、IgG1およびIgG4のようなヒト定常(C)セグメントに結合してよい。ヒトアイソタイプIgG1が好ましい。典型的なキメラ抗体は従って、マウス抗体からのVすなわち抗原結合ドメインおよびヒト抗体からのCすなわちエフェクタードメインよりなるハイブリッドタンパク質である。
B.ヒト化抗体の製造
「ヒト化抗体」という用語は、実質的にヒト抗体鎖(アクセプター免疫グロブリンもしくは抗体と称される)からの可変領域の枠組み残基を含んでなる最低1本の鎖および実質的にマウス抗体(ドナー免疫グロブリンもしくは抗体と称される)からの最低1個の相補性決定領域を含んでなる抗体を指す。例えば、Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第US 5,530,101号、同第US 5,585,089号、同第US 5,693,761号、同第US 5,693,762号明細書、Selickら、第WO 90.07861号明細書、およびWinter、米国特許第US 5,225,539号明細書(全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)を参照されたい。定常領域(1個もしくはそれ以上)は、存在する場合はまた実質的にもしくは完全にヒト免疫グロブリンからである。
【0063】
ヒト可変ドメインの枠組みへのマウスCDRの置換は、最もありそうには、ヒト可変ドメインの枠組みがCDRが発するマウス可変枠組みと同一のもしくは類似のコンホメーションを採用する場合にそれらの正しい空間的向きの保持をもたらす。これは、その枠組み配列がCDRが由来したマウス可変枠組みドメインと高程度の配列の同一性を表すヒト抗体からヒト可変ドメインを得ることにより達成される。HおよびL鎖可変枠組み領域は同一のもしくは異なるヒト抗体配列由来であり得る。ヒト抗体配列は天然に存在するヒト抗体の配列であり得るか、もしくは数種のヒト抗体のコンセンサス配列であり得る。Kettleboroughら、Protein Engineering 4:773(1991);Kolbingerら、Protein Engineering 6:971(1993)およびCarterら、第WO 92/22653号明細書を参照されたい。
【0064】
マウスドナー免疫グロブリンおよび適切なヒトアクセプター免疫グロブリンの相補性決定領域を同定すれば、次の段階は、生じるヒト化抗体の特性を至適化するのにこれらの成分からのどの残基(あれば)を置換すべきかを決定することである。一般に、マウス残基の導入はヒトにおいてヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を導き出す抗体の危険を増大させるため、ヒトアミノ酸残基のマウスでの置換は最小限にすべきである。免疫応答の技術に認識された決定方法を実施して特定の患者におけるもしくは臨床試験の間のHAMA応答をモニターし得る。ヒト化抗体を投与された患者には、前記治療の投与の開始時およびそれを通じて免疫原性の評価を与えることができる。HAMA応答は例えば、表面プラスモン共鳴技術(BIACORE)および/もしくは固相ELISA分析を包含する当業者に既知の方法を使用して患者からの血清サンプル中のヒト化治療的試薬に対する抗体を検出することにより測定する。
【0065】
ヒト可変領域枠組み残基からのある種のアミノ酸を、CDRのコンホメーションおよび/もしくは抗原への結合に対するそれらの可能な影響に基づいて置換のために選択する。ヒト可変枠組み領域とのマウスCDR領域の不自然な並置は不自然なコンホメーションの歪みをもたらす可能性があり、これは、あるアミノ酸残基の置換により是正されない限り結合親和性の喪失につながる。
【0066】
置換のためのアミノ酸残基の選択は部分的にコンピュータモデル化により決定される。免疫グロブリン分子の三次元像を生じさせるためのコンピュータのハードウェアおよびソフトウェアを本明細書に記述する。一般に、免疫グロブリン鎖もしくはそれらのドメインの解明された構造から出発して分子モデルを製作する。モデル化されるべき鎖を、解明された三次元構造の鎖もしくはドメインとアミノ酸配列の類似性について比較し、そして最大の配列の類似性を示す鎖もしくはドメインを分子モデルの構築のための出発点として選択する。最低50%の配列の同一性を共有する鎖もしくはドメインをモデル化に選択し、そして好ましくは最低60%、70%、80%、90%もしくはそれ以上の配列の同一性を共有するものをモデル化のため選択する。解明された出発構造は、モデル化されている免疫グロブリン鎖もしくはドメイン中の実際のアミノ酸と出発構造中のものとの間の差違を見込むように改変する。改変された構造をその後混成免疫グロブリンに集成する。最後に、エネルギー最小化、ならびに全部の原子が相互から適切な距離内にあることならびに結合長さおよび角度が化学的に許容できる限界内にあることを検証することにより、モデルを精緻なものとする。
【0067】
置換のためのアミノ酸残基の選択はまた、部分的に、特定の位置のアミノ酸の特徴の検査または特定のアミノ酸の置換もしくは突然変異誘発の影響の経験的観察結果によっても決定し得る。例えば、アミノ酸がマウス可変領域枠組み残基と選択したヒト可変領域枠組み残基との間で異なる場合は、ヒト枠組みアミノ酸は通常、該アミノ酸が:
(1)抗原を直接非共有結合する、
(2)CDR領域に隣接している、
(3)CDR領域と別の方法で相互作用する(例えばコンピュータモデル化により決定されるところのCDR領域の約3〜6Å以内である)、もしくは
(4)VL−VH界面に参画している
ことが合理的に期待される場合は、マウス抗体からの同等な枠組みアミノ酸により置換されるべきである。
【0068】
「抗原を直接非共有結合する」残基は、確立された化学的な力に従って、例えば水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などにより抗原上のアミノ酸と直接相互作用する十分な確率を有する枠組み領域中の位置のアミノ酸を包含する。
【0069】
CDRおよび枠組み領域はKabatらもしくはChothiaら、上記により定義されるとおりである。Kabatら、上記により定義されるところの枠組み残基がChothiaら、上記により定義されるところの構造的ループ残基を構成する場合、マウス抗体中に存在するアミノ酸をヒト化抗体中への置換のため選択してよい。「CDR領域に隣接する」残基は、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列中のCDRの1個もしくはそれ以上に直に隣接する位置、例えばKabatにより定義されるところのCDRもしくはChothiaら(例えばChothiaとLesk JMB 196:901(1987)を参照されたい)により定義されるところのCDRに直に隣接する位置のアミノ酸残基を包含する。これらのアミノ酸は、CDR中のアミノ酸と相互作用すること、およびアクセプターから選ばれる場合はドナーCDRを歪ませかつ親和性を低下させることがとりわけありそうである。さらに、隣接するアミノ酸は抗原と直接相互作用するかもしれず(Amitら、Science、233:747(1986)(引用することにより本明細書に組み込まれる))、また、ドナーからこれらのアミノ酸を選択することが、元の抗体で親和性を提供する全部の抗原接触を保つために望ましいかもしれない。
【0070】
「別の方法でCDR領域と相互作用する」残基は、CDR領域に影響を及ぼすのに十分な空間的向きにあることが二次構造分析により決定されるものを包含する。一態様において、「別の方法でCDR領域と相互作用する」残基は、ドナー免疫グロブリンの三次元モデル(例えばコンピュータで生成されたモデル)を分析することにより同定される。典型的には元のドナー抗体の三次元モデルは、CDRの外側のあるアミノ酸がCDRに近くかつ水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによりCDR中のアミノ酸と相互作用する十分な確率を有することを示す。それらのアミノ酸位置ではアクセプター免疫グロブリンのアミノ酸よりむしろドナー免疫グロブリンのアミノ酸を選択してよい。この基準によるアミノ酸は、一般に、CDR中の何れかの原子の約3オングストローム単位(Å)以内の側鎖原子を有することができ、また、上に列挙されたもののような確立された化学的な力によりCDRの原子と相互作用し得る原子を含有しなければならない。
【0071】
水素結合を形成しうる原子の場合、それらの核間で3Åを示すが、しかし、結合を形成しない原子についてはそれらのファンデルワールス表面間で3Åを示す。これゆえに、後者の場合において、核は原子が相互作用することが可能とみなされるために約6Å(3Åに加えてファンデルワールス半径の総和)内になければならない。多くの場合、核は4もしくは5から6Åまで離れていることができる。あるアミノ酸がCDRと相互作用し得るかどうかの決定において、H鎖CDR2の最後の8アミノ酸をCDRの一部とみなさないことが好ましい。構造の観点からこれらの8アミノ酸は枠組みの一部としてより多く挙動するためである。
【0072】
CDR中のアミノ酸と相互作用することが可能であるアミノ酸はなお別の方法で同定してもよい。各枠組みアミノ酸の溶媒が接近可能な表面領域が、2つの方法すなわち(1)無傷の抗体、および(2)そのCDRが除去された抗体よりなる仮想分子において計算されている。約10平方オングストロームもしくはそれ以上のこれらの数の間の有意の差異は、溶媒への枠組みアミノ酸の接近がCDRにより少なくとも部分的に遮断されること、および従って該アミノ酸がCDRとの接触をなしていることを示す。アミノ酸の溶媒が接近可能な表面領域は、当該技術分野で既知のアルゴリズム(例えば、Connolly、J.Appl.Cryst.16:548(1983)およびLeeとRichards、J.Mol.Biol.55:379(1971)(その双方は引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい)を使用して抗体の三次元モデルに基づき計算してよい。枠組みアミノ酸はまた、ときに、順にCDRと接触する別の枠組みアミノ酸のコンホメーションに影響を及ぼすことにより間接的にCDRと相互作用するかもしれない。
【0073】
枠組み中のいくつかの位置のアミノ酸は多くの抗体中のCDRと相互作用することが可能であることが知られている(ChothiaとLesk、上記、Chothiaら、上記およびTramontanoら、J.Mol.Biol.215:175(1990)(その全部は引用することにより本明細書に組み込まれる))。注目すべきことに、L鎖の位置2、48、64および71ならびにH鎖の26−30、71および94のアミノ酸(Kabatによる番号付け)は、多くの抗体中でCDRと相互作用することが可能であることが知られている。L鎖の位置35ならびにH鎖の93および103のアミノ酸もまたCDRと相互作用することがありそうである。全部のこれらの番号付けされた位置で、ヒト化免疫グロブリン中にあるべきアクセプターアミノ酸よりむしろドナーアミノ酸の選択(それらが異なる場合)が好ましい。他方、L鎖の最初の5アミノ酸のようなCDR領域と相互作用することが可能なある残基は、ときに、ヒト化免疫グロブリン中の親和性の喪失を伴わずにアクセプター免疫グロブリンから選ばれることがある。
【0074】
「VL−VH界面に参画する」残基もしくは「充填残基」は、例えばNovotnyとHaber、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:4592−66(1985)もしくはChothiaら、上記により定義されるところのVLとVHとの間の界面の残基を包含する。一般に、それらがヒト枠組み中のものと異なる場合は、異常な充填残基がヒト化抗体中に保持されているはずである。
【0075】
一般に、上の基準を満たすアミノ酸の1個もしくはそれ以上が置換される。いくつかの態様においては上の基準を満たすアミノ酸の全部もしくは大部分が置換される。ときに、特定の一アミノ酸が上の基準に合致するかどうかについて若干のあいまいさが存在し、そして代替のバリアント免疫グロブリンが製造され、その一方はその特定の置換を有し、その他方は有しない。そのように製造された代替のバリアント免疫グロブリンを所望の活性について本明細書に記述されるアッセイのいずれかで試験し得、そして好ましい免疫グロブリンを選択し得る。
【0076】
通常、ヒト化抗体中のCDR領域は実質的に同一であり、かつ、より通常はドナー抗体の対応するCDR領域に同一である。通常は望ましくないとは言え、生じるヒト化免疫グロブリンの結合親和性に認識可能に影響を及ぼすことなくCDR残基の1個もしくはそれ以上の保存的アミノ酸置換をなすことがときに可能である。保存的置換により、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyrのような組合せを意図している。
【0077】
置換の付加的な候補はその位置でヒト免疫グロブリンに異常もしくは「稀」であるアクセプターヒト枠組みアミノ酸である。これらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の同等な位置もしくはより典型的なヒト免疫グロブリンの同等な位置からのアミノ酸で置換し得る。例えば、アクセプター免疫グロブリンのヒト枠組み領域中のアミノ酸がその位置に稀でありかつドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン配列中のその位置に普遍的である場合;もしくはアクセプター免疫グロブリン中のアミノ酸がその位置に稀でありかつドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸もまた他のヒト配列に関して稀である場合は、置換が望ましいかもしれない。これらの基準は、ヒト枠組み中で典型的でないアミノ酸が抗体構造を破壊しないことを確実にするのを助ける。さらに、異常なヒトアクセプターアミノ酸をヒト抗体に偶々典型的であるドナー抗体からのアミノ酸で置換することにより、ヒト化抗体はより少なく免疫原性とされるかもしれない。
【0078】
本明細書で使用されるところの「稀な」という用語は、配列の代表的サンプル中の配列の約20%未満、しかし通常は約10%未満でその位置に存在するアミノ酸を示し、また、本明細書で使用されるところの「普遍的な」という用語は代表的サンプル中の配列の約25%以上、しかし通常は約50%以上に存在するアミノ酸を示す。例えば、全部のヒトLおよびH鎖可変領域配列は、相互にとりわけ相同でありかつある決定的に重要な位置で同一のアミノ酸を有する(Kabatら、上記)配列の「サブグループ」にそれぞれグループ分けされる。ヒトアクセプター配列中の1アミノ酸がヒト配列間で「稀」であるかもしくは「普遍的」であるかを決定する場合、該アクセプター配列と同一のサブグループのヒト配列のみを考慮することがしばしば好ましいことができる。
【0079】
置換の付加的な候補は、Chothiaら、上記により提案された代替の定義でCDR領域の一部として同定されることができるアクセプターヒト枠組みアミノ酸である。置換の付加的な候補は、AbMおよび/もしくは接触の定義でCDR領域の一部として同定されることができるアクセプターヒト枠組みアミノ酸である。
【0080】
置換の付加的な候補は、稀なもしくは異常なドナー枠組み残基に対応するアクセプター枠組み残基である。稀なもしくは異常なドナー枠組み残基は、その位置でマウス抗体に(本明細書で定義されるところの)稀もしくは異常であるものである。マウス抗体について、Kabatに従ってサブグループを決定し得、そしてコンセンサスと異なる残基位置を同定し得る。これらのドナー特異的な差異は、活性を高めるマウス配列中の体細胞突然変異を示すかもしれない。結合に影響を及ぼすことが予測される異常な残基が保持される一方、結合に重要でないことが予測される残基は置換し得る。
【0081】
置換の付加的な候補はアクセプター枠組み領域中に存在する非生殖系列残基である。例えば、アクセプター抗体鎖(すなわちドナー抗体鎖とかなりの配列の同一性を共有するヒト抗体鎖)を生殖系列抗体鎖(同様にドナー鎖とかなりの配列の同一性を共有する)と整列させる場合、アクセプター鎖の枠組みと生殖系列鎖の枠組みとの間で一致しない残基を生殖系列配列からの対応する残基で置換し得る。
【0082】
上で論考された特定のアミノ酸置換以外に、ヒト化免疫グロブリンの枠組み領域は通常実質的に同一であり、そして、より通常はそれらが由来したヒト抗体の枠組み領域に同一である。もちろん、枠組み領域中のアミノ酸の多くは抗体の特異性もしくは親和性にほとんどもしくはまったく直接的な寄与をなさない。従って、枠組み残基の多くの個々の保存的置換は、生じるヒト化免疫グロブリンの特異性もしくは親和性の認識可能な変化を伴わずに耐えられ得る。従って、一態様において、ヒト化免疫グロブリンの可変枠組み領域は、ヒト可変枠組み領域配列もしくはこうした配列のコンセンサスに対する最低85%の配列の同一性を共有する。別の態様において、ヒト化免疫グロブリンの可変枠組み領域は、ヒト可変枠組み領域配列もしくはこうした配列のコンセンサスに対する最低90%、好ましくは95%、より好ましくは96%、97%、98%もしくは99%の配列の同一性を共有する。しかしながら一般にこうした置換は望ましくない。
【0083】
ヒト化抗体は、好ましくは、最低10、10、10もしくは1010−1の抗原に対する特異的結合親和性を表す。通常、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性の上限はドナー免疫グロブリンのものの3、4もしくは5の係数内である。しばしば、結合親和性の下限もまたドナー免疫グロブリンのものの3、4もしくは5の係数内である。あるいは、結合親和性は、置換を有しないヒト化抗体(例えば、ドナーCDRおよびアクセプターFRを有するがしかしFR置換を有しない抗体)のものと比較し得る。こうした場合は、(置換を伴う)至適化された抗体の結合は、好ましくは未置換の抗体のものより最低2ないし3倍より大きい、もしくは3ないし4倍より大きい。比較を行うために、多様な抗体の活性を例えばBIACORE(すなわち未標識の試薬を使用する表面プラスモン共鳴)もしくは競合的結合アッセイにより測定し得る。
C.ヒト化12B4抗体の製造
本発明の好ましい一態様は、とりわけ本明細書に記述される治療および/もしくは診断の方法論での使用のためのAβのN末端に対するヒト化抗体を特徴とする。ヒト化抗体の製造のためのとりわけ好ましい一出発原料は12B4である。12B4はAβのN末端に特異的でありかつアミロイド斑の貪食作用を媒介(例えば貪食作用を誘導)することが示されている。12B4抗体HおよびL鎖可変領域をコードするcDNAのクローニングおよびシークェンシングを実施例Iに記述する。
【0084】
適するヒトアクセプター抗体配列は、マウス可変領域のアミノ酸配列の既知のヒト抗体の配列とのコンピュータ比較により同定される。該比較はHおよびL鎖について別個に実施されるが、しかし原理はそれぞれについて類似である。とりわけ、その枠組み配列がマウスVLおよびVH枠組み領域と高程度の配列の同一性を表すヒト抗体からの可変ドメインは、それぞれのマウス枠組み配列を用いるNCBI BLAST(国立保健研究所(National Institutes of Health)NCBIインターネットサーバを通じて公的にアクセス可能)を使用するKabatデータベースのクエリにより同定した。一態様において、マウスドナー配列と50%以上の配列の同一性を共有するアクセプター配列を選択する。好ましくは、60%、70%、80%、90%もしくはそれ以上を共有するアクセプター抗体配列を選択する。
【0085】
12B4のコンピュータ比較は、12B4 L鎖がサブタイプκIIのヒトL鎖に対する最大の配列の同一性を示すこと、および、12B4 H鎖がKabatら、上記により定義されるところのサブタイプIIのヒトH鎖に対する最大の配列の同一性を示すことを示した。従って、LおよびHヒト枠組み領域は、好ましくはこれらのサブタイプのヒト抗体もしくはこうしたサブタイプのコンセンサス配列に由来する。12B4からの対応する領域に対する最大の配列の同一性を示す好ましいL鎖ヒト可変領域はKabat ID番号005036を有する抗体からである。12B4からの対応する領域に対する最大の配列の同一性を示す好ましいH鎖ヒト可変領域は、Kabat ID番号000333を有する抗体、ジェンバンク(GenBank)受託番号AAB35009を有する抗体およびジェンバンク(GenBank)受託番号AAD53816を有する抗体からであり、Kabat ID番号000333を有する抗体がより好ましい。
【0086】
次に、後に続くとおり置換のための残基を選択する。アミノ酸が、12B4可変枠組み領域と同等なヒト可変枠組み領域との間で異なる場合は、該アミノ酸が:
(1)抗原を直接非共有結合する、
(2)CDR領域に隣接する、Chothiaら、上記により提案された代替の定義でCDR領域の一部である、もしくは別の方法でCDR領域と相互作用する(例えばCDR領域の約3A以内である)、または
(3)VL−VH界面に参画する
ことが合理的に期待される場合は、ヒト枠組みアミノ酸は通常、同等のマウスアミノ酸により置換されるべきである。
【0087】
12B4抗体HおよびL鎖可変領域のコンピュータモデル化ならびに12B4抗体のヒト化を実施例Vに記述する。簡潔には、HおよびL鎖の最も近い解明されたマウス抗体構造に基づき三次元モデルを生成する。好ましくない原子接触から解放しかつ静電的およびファンデルワールス相互作用を至適化する一連のエネルギー最小化段階により、該モデルをさらに精緻なものとする。
【0088】
本明細書に記述される抗体の三次元構造情報は、例えば構造バイオインフォマティクス研究共同体(Research Collaboratory for Structural Bioinformatics)のタンパク質データバンク(PDB)から公的に入手可能である。PDBはワールドワイドウェブのインターネットを介して自由にアクセス可能であり、そしてBermanら(2000)Nucleic Acids Research、28:235により記述されている。コンピュータモデル化はCDRと相互作用する残基の同定を可能にする。12B4の構造のコンピュータモデルは、順に、ヒト枠組み構造中に置換された12B4相補性決定領域を含有する抗体の三次元構造を予測するための出発点としてはたらく可能性がある。さらなるアミノ酸置換が導入されるところの構造を表す付加的なモデルを構築し得る。
【0089】
一般に、上の基準を満たすアミノ酸の1個、大部分もしくは全部の置換が望ましい。従って、本発明のヒト化抗体は、通常、選ばれた位置の最低1、2、3個もしくはそれ以上に対応する12B4残基でのヒトL鎖枠組み残基の置換を含有することができる。該ヒト化抗体はまた、通常、選ばれた位置の最低1、2、3個もしくはそれ以上に対応する12B4の残基でのヒトH鎖枠組み残基の置換も含有する。
【0090】
しかしながら、ときに、特定の1アミノ酸が上の基準に合致するかどうかについて若干のあいまいさが存在し、そして代替のバリアント免疫グロブリンが製造され、その一方はその特定の置換を有し、その他方は有しない。マウス残基での置換が特定の一位置にヒト免疫グロブリン中で稀である残基を導入するとみられる場合には、該特定の置換を伴うもしくは伴わない活性について該抗体を試験することが望ましいかもしれない。活性(例えば結合親和性および/もしくは結合特異性)が置換を伴いもしくは伴わずにほぼ同一である場合は、本明細書に記述されるところのHAMA応答の喪失を導き出すことが期待されるとみられるため、置換を伴わない抗体が好ましい。
【0091】
置換の他の候補はその位置でヒト免疫グロブリンに異常であるアクセプターヒト枠組みアミノ酸である。これらのアミノ酸はより典型的なヒト免疫グロブリンの同等な位置からのアミノ酸で置換し得る。あるいは、マウス12B4中の同等な位置からのアミノ酸は、こうしたアミノ酸が同等な位置でヒト免疫グロブリンに典型的である場合はヒト枠組み領域に導入し得る。
【0092】
置換の他の候補は枠組み領域中に存在する非生殖系列残基である。既知の生殖系列配列との12B4のコンピュータ比較を実施することにより、HもしくはL鎖に対する最大の程度の配列の同一性をもつ生殖系列配列を同定し得る。枠組み領域および生殖系列配列の整列が、どの残基を対応する生殖系列残基での置換に選択してよいかを示すことができる。選択されたL鎖アクセプター枠組みとこれらの生殖系列配列の1つとの間で一致しない残基を、対応する生殖系列残基での置換に選択し得る。
【0093】
表1は12B4 VHおよびVL領域の配列分析を要約する。12B4抗体および付加的なヒト抗体のコンピュータモデル化に使用し得る付加的なマウスおよびヒト構造、ならびにアミノ酸置換の選択で使用し得る生殖系列配列を示す。稀なマウス残基もまた表1に示す。稀なマウス残基は、ドナーVLおよび/もしくはVH配列を、該ドナーVLおよび/もしくはVH配列が(Kabatに従って)属するサブグループの他のメンバーの配列と比較すること、ならびにコンセンサスと異なる残基位置を同定することにより同定する。これらのドナー特異的な差異は活性を高める体細胞突然変異を示すかもしれない。結合部位に近い異常なもしくは稀な残基はおそらく抗原と接触して、それをマウス残基を保持するのに望ましくするかもしれない。しかしながら、異常なマウス残基が結合に重要でない場合は、マウス残基がヒト化抗体中で免疫原性の新エピトープを創製するかもしれないため、対応するアクセプター残基の使用が好ましい。ドナー配列中の異常な残基が、対応するアクセプター配列中の事実上普遍的な残基である状況では、好ましい残基は明らかにアクセプター残基である。
【0094】
【表1】

【0095】
本明細書で言及されるKabat ID配列は、例えばノースウェスタン大学生物医学工学部(Northwestern University Biomedical Engineering Department)の免疫学的目的のタンパク質の配列のKabatデータベース(Kabat Databese of Sequences of Proteins of Immunological Interest)から公的に入手可能である。本明細書に記述される抗体の三次元構造の情報は、例えば構造バイオインフォマティクス研究共同体(Research Collaboratory for Structural Bioinformatics)のタンパク質データバンク(PDB)から公的に入手可能である。PDBはワールドワイドウェブのインターネットを介して自由にアクセス可能であり、そしてBermanら(2000)Nucleic Acids Research、p235−242により記述されている。本明細書で言及される生殖系列遺伝子配列は、例えば国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のIgh、IgκおよびIgλ生殖系列V遺伝子の集合物中の配列のデータベース(国立保健研究所(National Institutes of Health)(NIH)の国立医学図書館(National Library of Medicine)(NLM)の一部門として)から公的に入手可能である。NCBIの「Ig生殖系列遺伝子」データベースの相同性検索はIgG BLASTTMにより提供される。
【0096】
好ましい一態様において、本発明のヒト化抗体は(i)マウス12B4 VL CDRおよびヒトアクセプター枠組み(該枠組みは対応する12B4の残基で置換された最低1残基を有する)を含んでなる可変ドメインを含んでなるL鎖、ならびに(ii)12B4 VH CDRおよびヒトアクセプター枠組み(該枠組みは対応する12B4の残基で置換された最低1、好ましくは2、3、4、5、6、7、8もしくは9残基、および場合によっては対応するヒト生殖系列残基で置換された最低1、好ましくは2もしくは3残基を有する)を含んでなるH鎖を含有する。
【0097】
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は本明細書に記述されるところの構造的特徴を有し、かつ、さらに以下の活性すなわち(1)可溶性Aβを結合する;(2)凝集したAβ1−42を結合する(例えばELISAにより測定されるところの);(3)斑中のAβを結合する(例えばADおよび/もしくはPDAPP斑の染色);(4)キメラ12B4(例えばマウス可変領域配列およびヒト定常領域配列を有する12B4)と比較して2ないし3倍より高い結合親和性でAβを結合する;(5)Aβの貪食作用を媒介する(例えば本明細書に記述されるところのex vivo貪食作用アッセイにおいて);ならびに(6)血液脳関門を横断する(例えば、例えば本明細書に記述されるところのPDAPP動物モデルで短期の脳局在化を示す)の最低1つ(好ましくは2、3、4もしくは全部)を有する。
【0098】
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は本明細書に記述されるところの構造的特徴を有し、以下のin vivo効果すなわち(1)Aβ斑負荷量を低下させる;(2)斑形成を予防する;(3)可溶性Aβのレベルを低下させる;(4)アミロイド原性障害に関連する神経炎性の病状を低下させる;(5)アミロイド原性障害に関連する最低1種の生理学的症状を小さくするもしくは軽減する;および/または認識機能を改善する、の最低1つを導き出す様式でもしくはそれに十分な親和性でAβを結合する。
【0099】
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構造的特徴を有し、そしてAβの残基3−7を含んでなるエピトープに特異的に結合する。
【0100】
別の好ましい態様において、本発明のヒト化抗体は、本明細書に記述されるところの構造的特徴を有し、Aβ内のN末端エピトープに結合し(例えばAβのアミノ酸3−7内の1エピトープに結合し)、そして(1)Aβペプチドレベル;(2)Aβ斑負荷量;および(3)アミロイド原性障害に関連する神経炎性負荷もしくは神経炎性ジストロフィーを低下させることが可能である。
【0101】
上述された活性は本明細書もしくは当該技術分野で記述される多様なアッセイのいずれか1つ(例えば結合アッセイ、貪食作用アッセイなど)を利用して測定し得る。活性はin vivo(例えば標識アッセイ成分および/もしくは画像化技術を使用して)またはin vitro(例えば被験体由来のサンプルもしくは試料を使用して)のいずれかでアッセイし得る。活性は直接もしくは間接的にのいずれかでアッセイし得る。ある好ましい態様において、神経学的エンドポイント(例えばアミロイド負荷量、神経炎性負荷量など)をアッセイする。こうしたエンドポイントは非侵襲的検出の方法論を使用して生存被験体中で(例えばアルツハイマー病の動物モデルもしくは例えば免疫療法を受けているヒト被験体で)アッセイし得る。あるいは、こうしたエンドポイントは死後の被験体でアッセイし得る。動物モデルおよび/もしくは死後のヒト被験体でこうしたエンドポイントをアッセイすることは、類似の免疫治療の応用で利用されるべき多様な作用物質(例えばヒト化抗体)の有効性の評価において有用である。他の好ましい態様において、行動的もしくは神経学的パラメータを上の神経病理学的活性もしくはエンドポイントの指標として評価し得る。
3.可変領域の製造
ヒト化免疫グロブリンのCDRおよび枠組み成分を概念的に選択すれば、こうした免疫グロブリンを製造するのに多様な方法が利用可能である。暗号の縮重のため、多様な核酸配列が各免疫グロブリンのアミノ酸配列をコードすることができる。所望の核酸配列は、de novoの固相DNA合成もしくは所望のポリヌクレオチドの以前に製造されたバリアントのPCR突然変異誘発により製造し得る。オリゴヌクレオチド媒介性の突然変異誘発は標的ポリペプチドDNAの置換、欠失および挿入バリアントの好ましい製造方法である。Adelmanら、DNA 2:183(1983)を参照されたい。簡潔には、標的ポリペプチドDNAは、所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドを一本鎖DNA鋳型にハイブリダイズさせることにより変えられる。ハイブリダイゼーション後にDNAポリメラーゼを使用して、オリゴヌクレオチドプライマーを組み込みかつ標的ポリペプチドDNA中の選択された変化をコードする鋳型の完全な第二の相補鎖を合成する。
4.定常領域の選択
上述されたとおり製造される抗体の可変セグメント(例えばキメラもしくはヒト化抗体のHおよびL鎖可変領域)は、典型的には、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分(Fc領域)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものに連結される。ヒト定常領域DNA配列は、多様なヒト細胞、しかし好ましくは不死化B細胞から公知の手順に従って単離し得る(Kabatら、上記、およびLiuら、第W087/02671号明細書を参照されたい)(その双方は全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)。通常、抗体はL鎖およびH鎖双方の定常領域を含有することができる。H鎖定常領域は通常CH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を包含する。本明細書に記述される抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを包含する全タイプの定常領域、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を包含するいかなるアイソタイプも有する抗体を包含する。抗体(例えばヒト化抗体)が細胞傷害性の活性を表すことが望ましい場合、定常ドメインは通常補体を固定する定常ドメインであり、また、クラスは典型的にIgG1である。ヒトアイソタイプIgG1が好ましい。L鎖定常領域はλもしくはκであり得る。ヒト化抗体は1以上のクラスもしくはアイソタイプからの配列を含んでよい。抗体は、2本のLおよび2本のH鎖を、別個のH鎖、L鎖として、Fab、Fab’F(ab’)2およびFvとして、もしくはHおよびL鎖可変ドメインがスペーサーにより連結されている一本鎖抗体として含有する四量体として発現され得る。
5.組換え抗体の発現
キメラおよびヒト化抗体は典型的には組換え発現により製造する。場合によっては定常領域に連結されたLおよびH鎖可変領域をコードする核酸を発現ベクターに挿入する。LおよびH鎖は同一のもしくは異なる発現ベクターにクローン化し得る。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクター(1種もしくは複数)中の制御配列に動作可能に連結する。発現制御配列は、限定されるものでないがプロモーター(例えば天然に関連するもしくは異種のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサー要素および転写終止配列を挙げることができる。好ましくは、発現制御配列は真核生物宿主細胞を形質転換もしくはトランスフェクトすることが可能なベクター中の真核生物プロモーター系である。ベクターが適切な宿主中に一旦取り入れられれば、該ヌクレオチド配列の高レベル発現ならびに交差反応する抗体の収集および精製に適する条件下で該宿主を維持する。
【0102】
これらの発現ベクターは、典型的にはエピソームもしくは宿主染色体DNAの不可欠の部分のいずれかとして宿主生物体中で複製可能である。普遍的には、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にする選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性もしくはネオマイシン耐性)を含有する(例えばItakuraら、米国特許第4,704,362号明細書を参照されたい)。
【0103】
大腸菌(E.coli)は本発明のポリヌクレオチド(例えばDNA配列)のクローニングにとりわけ有用な一原核生物宿主である。使用に適する他の微生物宿主は、放線菌(Bacillus subtilis)のようなバチルス属桿菌、ならびにサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)および多様なシュードモナス属(Pseudomonas)種のような他の腸内細菌を包含する。これらの原核生物宿主において、典型的には該宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば複製起点)を含有することができる発現ベクターもまた作成し得る。加えて、いずれかの数の、乳糖プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系もしくはファージλからのプロモーター系のような多様な公知のプロモーターが存在することができる。プロモーターは、典型的には、場合によってはオペレーター配列とともに発現を制御することができ、また、転写および翻訳を開始および終了するためのリボソーム結合部位配列などを有することができる。
【0104】
酵母のような他の微生物もまた発現に有用である。サッカロミセス属(Saccharomyces)が好ましい酵母宿主であり、適するベクターは発現制御配列(例えばプロモーター)、複製起点、終止配列などを所望のとおり有する。典型的なプロモーターは3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の解糖酵素を包含する。誘導可能な酵母プロモーターは、とりわけ、アルコール脱水素酵素、イソチトクロームC、ならびに麦芽糖およびガラクトースの利用を司る酵素からのプロモーターを包含する。
【0105】
微生物に加え、哺乳動物組織の細胞培養物もまた本発明のポリペプチド(例えば免疫グロブリンもしくはそれらのフラグメントをコードするポリヌクレオチド)を発現かつ製造するのに使用してよい。Winnacker、From Genes to Clones、VCH パブリッシャーズ(VCH Publishers)、ニューヨーク州ニューヨーク(1987)を参照されたい。異種タンパク質(例えば無傷の免疫グロブリン)を分泌することが可能な多数の適する宿主細胞株が当該技術分野で開発されているため、真核生物細胞が実際に好ましく、そして、CHO細胞株、多様なCos細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株、または形質転換されたB細胞もしくはハイブリドーマを包含する。好ましくは細胞は非ヒトである。これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサーのような発現制御配列(Queenら、Immunol.Rev.89:49(1986))、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終止配列のような必要なプロセシング情報部位を包含し得る。好ましい発現制御配列は免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなど由来のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照されたい。
【0106】
あるいは、トランスジェニック動物のゲノム中への導入および該トランスジェニック動物の乳中でのその後の発現のために、抗体をコードする配列をトランスジーン中に組み込み得る(例えばDeboerら、米国特許第US 5,741,957号、Rosen、同第US 5,304,489号およびMeadeら、同第US 5,849,992号明細書を参照されたい)。適するトランスジーンは、カゼインもしくはβ−ラクトグロブリンのような乳腺特異的遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサーと動作可能な連結にあるLおよび/もしくはH鎖のコーディング配列を包含する。
【0107】
目的のポリヌクレオチド配列(例えばHおよびL鎖コーディング配列ならびに発現制御配列)を含有するベクターは、細胞宿主の型に依存して変動する公知の方法により宿主細胞に移入し得る。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核生物細胞に普遍的に利用される一方、リン酸カルシウム処理、電気穿孔法、リポフェクション、遺伝子銃もしくはウイルスに基づくトランスフェクションを他の細胞宿主に使用してよい(全般として、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(コールド スプリング ハーバー プレス(Cold Spring Harbor Press)、第2版、1989(全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)を参照されたい)。哺乳動物細胞を形質転換するのに使用される他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔法および微小注入法の使用を包含する(全般的に、Sambrookら、上記を参照されたい)。トランスジェニック動物の製造のために、トランスジーンを受精卵母細胞に微小注入し得るか、もしくは胚幹細胞のゲノム中に組み込み得、そしてこうした細胞の核を除核卵母細胞に移入し得る。
【0108】
HおよびL鎖を別個の発現ベクター上でクローン化する場合、無傷の免疫グロブリンの発現および集成を得るために該ベクターをコトランスフェクトする。発現されれば、全抗体、それらの二量体、個々のLおよびH鎖もしくは本発明の他の免疫グロブリンの形態を、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを包含する当該技術分野の標準的手順に従って精製し得る(全般として、Scopes、Protein Purification(シュプリンガー−フェラアーク(Springer−Verlag)、ニューヨーク(1982)を参照されたい)。製薬学的使用には、最低約90ないし95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、そして98ないし99%もしくはそれ以上の均一性が最も好ましい。
6.抗体フラグメント
抗体フラグメントもまた本発明の範囲内で企図されている。一態様において非ヒトおよび/もしくはキメラ抗体のフラグメントが提供される。別の態様においてヒト化抗体のフラグメントが提供される。典型的には、これらのフラグメントは最低10、およびより典型的には10もしくは10−1の親和性での抗原への特異的結合を表す。ヒト化抗体フラグメントは個別のH鎖、L鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、FabcおよびFvを包含する。フラグメントは組換えDNA技術、または無傷の免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的分離により製造される。
7.動物モデルにおける治療的有効性についての抗体の試験
それぞれ7〜9月齢のPDAPPマウスの群にPBS中0.5mgのポリクローナル抗Aβもしくは特異的抗Aβモノクローナル抗体を注入する。全抗体調製物は低いエンドトキシンレベルを有するよう精製する。モノクローナル抗体は、マウスにAβのフラグメントもしくはより長い形態を注入すること、ハイブリドーマを調製すること、およびAβの他のオーバーラップするフラグメントに結合することなくAβの所望のフラグメントに特異的に結合する抗体について該ハイブリドーマをスクリーニングすることにより、フラグメントに対して製造し得る。
【0109】
マウスに、ELISAにより測定される循環抗体濃度(Aβ42もしくは他の免疫原に対するELISAにより定義される1/1000より大きい力価)に維持するのに必要なように4か月の期間にわたって腹腔内に注入する。力価をモニターし、そしてマウスを6か月の注入の終了後に安楽死させる。組織化学、Aβレベルおよび毒物学を死後に実施する。1群あたり10匹のマウスを使用する。
8.除去活性についての抗体のスクリーニング
本発明はまた、それに対する除去活性が望ましいアミロイド沈着物もしくはいずれかの他の抗原または関連する生物学的実体の除去における活性についての抗体のスクリーニング方法も提供する。アミロイド沈着物に対する活性についてスクリーニングするために、アルツハイマー病を伴う患者もしくは特徴的なアルツハイマー病の病状を有する動物モデルの脳からの組織サンプルを、小グリア細胞のようなFc受容体をもつ貪食細胞および試験中の抗体とin vitroで媒体中で接触させる。貪食細胞は初代培養物もしくは細胞株であり得、また、マウス(例えばBV−2もしくはC8−B4細胞)またはヒト起源(例えばTHP−1細胞)のものであり得る。いくつかの方法においては、成分を顕微鏡スライドガラス上で組み合わせて顕微鏡モニタリングを助長する。いくつかの方法においては、複数の反応をマイクロタイター皿のウェル中で同時に実施する。こうした形式において、別個の小型顕微鏡スライドガラスを別個のウェル中に据付け得るか、もしくはAβのELISA検出のような非顕微鏡的検出形式を使用し得る。好ましくは、反応が進行する前の基礎値から出発して、in vitro反応混合物中のアミロイド沈着物の量および反応の間の1個もしくはそれ以上の試験値の一連の測定を行う。抗原は、例えばAβもしくはアミロイド斑の他の成分に対する蛍光標識抗体を用いる染色により検出し得る。染色に使用される抗体は除去活性について試験されている抗体と同一であってももしくはなくてもよい。アミロイド沈着物の反応の間の基礎に関しての低下は試験中の抗体が除去活性を有することを示す。こうした抗体は、アルツハイマー病および他のアミロイド原性疾患の予防もしくは治療において有用であることがありそうである。アルツハイマー病および他のアミロイド原性疾患の予防もしくは治療にとりわけ有用な抗体は、緻密および拡散性双方のアミロイド斑を除去することが可能なもの、例えば本発明の12B4抗体またはそのキメラもしくはヒト化バージョンを包含する。
【0110】
類似の方法を使用して、他の型の生物学的実体の除去における活性について抗体をスクリーニングし得る。該アッセイを使用して事実上いかなる種類の生物学的実体に対する除去活性も検出し得る。典型的には、該生物学的実体はヒトもしくは動物の疾患において何らかの役割を有する。該生物学的実体は、組織サンプルとして、もしくは単離された形態で提供され得る。組織サンプルとして提供される場合、該組織サンプルは、好ましくは、該組織サンプルの成分への容易な接近を可能にしかつ固定に副次的な成分のコンホメーションの混乱を回避するために固定されない。本アッセイで試験し得る組織サンプルの例は癌組織、前癌組織、疣贅もしくは母斑のような良性の増殖を含有する組織、病原性微生物に感染した組織、炎症細胞に浸潤された組織、細胞間に病理学的マトリックスをもつ組織(例えば線維性心膜炎)、異常な抗原をもつ組織、および瘢痕組織を包含する。使用し得る単離された生物学的実体の例は、Aβ、ウイルス抗原もしくはウイルス、プロテオグリカン、他の病原性微生物の抗原、腫瘍抗原および接着分子を包含する。こうした抗原は、他の手段のなかで、天然の供給源、組換え発現もしくは化学合成から得ることができる。組織サンプルもしくは単離された生物学的実体を、単球もしくは小グリア細胞のようなFc受容体をもつ貪食細胞および試験されるべき抗体と媒体中で接触させる。試験中の生物学的実体もしくは該実体に関連する抗原に対し抗体が作られ得る。後者の状況において、該目的は、該生物学的実体が該抗原とともに貪食されるかどうかを試験することである。通常、とは言え必ずではなく、抗体および生物学的実体(ときに関連抗原を伴う)を、貪食細胞を添加する前に相互と接触させる。その後、生物学的実体および/もしくは存在する場合は媒体中に残存する関連抗原の濃度をモニターする。媒体中の抗原もしくは関連する生物学的実体の量もしくは濃度の低下は、該抗体が貪食細胞とともに抗原および/もしくは関連する生物学的実体に対する除去応答を有することを示す(例えば実施例IVを参照されたい)。
9.変えられたエフェクター機能を有するキメラ/ヒト化抗体
定常領域(Fc領域)を含んでなる本発明の上述された抗体について、該分子のエフェクター機能を変えることもまた望ましいかもしれない。一般に、抗体のエフェクター機能は、多様なエフェクター分子、例えば補体タンパク質もしくはFc受容体への結合を媒介し得る分子の定常すなわちFc領域中に存する。Fc領域への補体の結合は、例えば細胞病原体のオプソニン作用および溶解ならびに炎症応答の活性化において重要である。例えばエフェクター細胞の表面上のFc受容体への抗体の結合は、例えば抗体被覆された病原体もしくは粒子の貪食および破壊、免疫複合体の除去、キラー細胞(すなわち抗体依存性の細胞媒介性の細胞傷害性すなわちADCC)による抗体被覆された標的細胞の溶解、炎症メディエーターの遊離、抗体の胎盤移動ならびに免疫グロブリン産生の制御を包含する多数の重要かつ多彩な生物学的応答を誘発し得る。
【0111】
従って、特定の治療もしくは診断の応用に依存して、前述の免疫機能もしくは選択された免疫機能のみが望ましいかもしれない。抗体のFc領域を変えることにより、診断および治療において有益な効果をもつ免疫系の多様な反応を高めるもしくは抑制することを包含する該分子のエフェクター機能の多様な局面が達成される。
【0112】
ある型のFc受容体とのみ反応する本発明の抗体を製造し得、例えば、本発明の抗体は、あるFc受容体のみに結合するように、または所望の場合はFc受容体結合を完全に欠くように抗体のFc領域中に位置するFc受容体結合部位の欠失もしくは変更により改変し得る。本発明の抗体のFc領域の他の望ましい変化の目録を下で作成する。典型的には、エフェクター機能の所望の変化を達成するために(例えばIgG抗体の)Fc領域のどのアミノ酸残基(1個もしくは複数)が(例えばアミノ酸置換により)変えられるかを示すのにKabatの番号付けの系を使用する。該番号付けの系はまた、例えばマウス抗体中で観察される所望のエフェクター機能をその後本発明のヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体に系統的に工作し得るような種を横断して抗体を比較するのにも使用される。
【0113】
例えば、抗体(例えばIgG抗体)は、Fc受容体(例えばヒト単球上のFc受容体(FcγRI))への強固な、中間のもしくは弱い結合を表すことが見出されたものにグループ分けし得る。これらの異なる親和性群中でのアミノ酸配列の比較により、ヒンジ結合領域中の単球結合部位(Leu234−Ser239)が同定された。さらに、ヒトFcγRI受容体はヒトIgG1およびマウスIgG2aを単量体として結合するが、しかしマウスIgG2bの結合は100倍より弱い。ヒンジ結合領域中のこれらのタンパク質の配列の比較は、強力な結合体中の配列234ないし238すなわちLeu−Leu−Gly−Gly−Proがマウスγ2bすなわち弱い結合体中でLeu−Glu−Gly−Gly−Proになることを示す。従って、低下されたFcγI受容体結合が望ましい場合はヒト抗体ヒンジ配列中の対応する変化を作成し得る。同一のもしくは類似の結果を達成するために他の変化を行い得ることが理解される。例えば、FcγRI結合の親和性は、その側鎖上に不適切な官能基を有する残基で指定された残基を置換すること、あるいは荷電した官能基(例えばGluもしくはAsp)または例えば芳香族非極性残基(例えばPhe、TyrもしくはTrp)を導入することにより変えることができる。
【0114】
これらの変更は、多様な免疫グロブリン間の配列の相同性を考えればマウス、ヒトおよびラットの系に等しく応用し得る。ヒトFcγRI受容体に結合するヒトIgG3について、Leu235をGluに変えることは該受容体に対する変異体の相互作用を破壊することが示されている。この受容体の結合部位は、従って、適切な突然変異を行うことによりスイッチを入れもしくは切ることができる。
【0115】
ヒンジ結合領域中の隣接するもしくは近い部位での突然変異(例えばAlaによる残基234、236もしくは237の置換)は、残基234、235、236および237での変化が少なくともFcγRI受容体に対する親和性に影響を及ぼすことを示す。従って、本発明の抗体は、改変されない抗体に比較してFcγRIに対する変えられた結合親和性をもつ変えられたFc領域もまた有し得る。こうした抗体は慣習的にアミノ酸残基234、235、236もしくは237に1改変を有する。
【0116】
他のFc受容体に対する親和性は、多様な方法で免疫応答を制御するための類似のアプローチにより変えることができる。
【0117】
さらなる一例として、補体のC1成分の結合後のIgG抗体の溶解特性を変えることができる。
【0118】
補体系の第一の成分C1は、強固に一緒に結合するC1q、C1rおよびC1sとして知られる3種のタンパク質を含んでなる。C1qが該3種のタンパク質複合体の抗体への結合を司ることが示されている。
【0119】
従って、抗体のC1q結合活性は、H鎖のアミノ酸残基318、320および322の最低1個が異なる側鎖を有する残基に変更されている変えられたCH2ドメインをもつ抗体を提供することにより変えることができる。H鎖中の残基の番号付けはEUインデックス(Kabatら、上記を参照されたい)のものである。抗体への特異的C1q結合を変える、例えば低下もしくは消失させるための他の適する変更は、残基318(Glu)、320(Lys)および322(Lys)のいずれか1つをAlaに変えることを包含する。
【0120】
さらに、これらの残基で突然変異を行うことにより、残基318が水素結合する側鎖を有しかつ残基320および322双方が正に荷電した側鎖を有する限りはC1q結合が保持されることが示されている。
【0121】
C1q結合活性は3個の指定された残基のいずれか1個をその側鎖上に不適切な官能性を有する残基で置換することにより消失させ得る。C1q結合を消失させるためにイオン性残基のみをAlaで置換することが必要ではない。C1q結合を消失させるために、該3残基のいずれか1個の代わりにGly、Ile、LeuもしくはValのような他のアルキル置換非イオン性残基またはPhe、Tyr、TrpおよびProのような芳香族非極性残基を使用することもまた可能である。加えて、C1q結合活性を消失させるために、残基320および322(しかし318でない)の代わりにSer、Thr、CysおよびMetのような極性の非イオン性残基を使用することもまた可能である。
【0122】
イオン性もしくは非イオン性の極性残基上の側鎖が、Glu残基により形成される結合に類似の様式で水素結合を形成することが可能であることができることもまた示されている。従って、極性残基による318(Glu)残基の置換はC1q結合活性を改変するかもしれないが、しかし消失させないかもしれない。
【0123】
残基297(Asn)をAlaで置換することは、C1qに対する親和性をわずかにのみ低下(約3倍より弱い)しつつ溶解活性の除去をもたらすこともまた知られている。この変更は補体活性化に必要とされるグリコシル化部位および炭水化物の存在を破壊する。この部位でのいずれの他の置換もまたグリコシル化部位を破壊することができる。
【0124】
本発明はまた、抗体が改変されたヒンジ領域を有する変えられたエフェクター機能を有する抗体も提供する。該改変されたヒンジ領域はCH1ドメインのものと異なる抗体クラスもしくはサブクラスの抗体に由来する完全なヒンジ領域を含みうる。例えば、クラスIgG抗体の定常ドメイン(CH1)をクラスIgG4抗体のヒンジ領域に結合し得る。あるいは、新たなヒンジ領域は天然のヒンジもしくは反復単位の一部を含んでもよく、ここで反復中の各単位は天然のヒンジ領域由来である。一例において、天然のヒンジ領域は、1個もしくはそれ以上のシステイン残基をアラニンのような中性残基に転化すること、または適して配置された残基をシステイン残基に転化することにより変えられる。こうした変更は技術に認識されたタンパク質化学および好ましくは本明細書に記述されるところの遺伝子工学技術を使用して実施される。
【0125】
本発明の一態様において、抗体のヒンジ領域中のシステイン残基の数を例えば1システイン残基に減少させる。この改変は、抗体、例えば二特異性抗体分子およびFc部分がエフェクターもしくはレポーター分子により置換されている抗体分子の集成を助長するという利点を有する。単一のジスルフィド結合を形成することのみが必要であるためである。この改変はまた、例えば化学的手段により直接もしくは間接的のいずれかで別のヒンジ領域またはエフェクターもしくはレポーター分子のいずれかにヒンジ領域を結合するための特定の標的も提供する。
【0126】
逆に、抗体のヒンジ領域中のシステイン残基の数を、例えば通常存在するシステイン残基の数より最低1個より多く増大させる。システイン残基の数の増大を使用して隣接するヒンジ間の相互作用を安定化し得る。この改変の別の利点は、それが変えられた抗体にエフェクターもしくはレポーター分子を結合するためのシステインのチオール基の使用を助長することである(例えば放射標識)。
【0127】
従って、本発明は、変えられたエフェクター機能を達成するための抗体クラス、とりわけIgGクラス間のヒンジ領域の交換および/またはヒンジ領域中のシステイン残基の数の増大もしくは減少を提供する(例えば米国特許第5,677,425号明細書(明らかに本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。変えられた抗体のエフェクター機能の決定は本明細書に記述されるアッセイもしくは他の技術に認識される技術を使用して行う。
【0128】
重要なことに、結果として生じる抗体は出発抗体に比較しての生物学的活性のいかなる変化も評価するための1種もしくはそれ以上のアッセイにかけることができる。例えば、変えられたFc領域をもつ抗体の補体もしくはFc受容体を結合する能力は、本明細書に開示されるアッセイならびにいずれかの技術に認識されるアッセイを使用して評価し得る。
【0129】
本発明の抗体の製造は、本明細書に記述される技術ならびに当業者に既知の技術を包含するいずれかの適する技術により実施する。例えば、例えば抗体の適切な定常ドメイン例えばFc領域の一部もしくは全部(すなわちCH2および/もしくはCH3ドメイン(1種もしくは複数))を形成しかつ適切に変えられた残基(1個もしくは複数)を包含する適切なタンパク質配列を合成し得、そしてその後抗体分子中の適切な場所に化学的に結合し得る。
【0130】
好ましくは、変えられた抗体の製造に遺伝子工学技術を使用する。好ましい技術は、例えばIgG H鎖の少なくとも一部分例えばFcすなわち定常領域(例えばCH2および/もしくはCH3)をコードするDNA配列が1個もしくはそれ以上の残基で変えられるようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)での使用のための適するプライマーを調製することを包含する。該セグメントをその後、該抗体の残存する部分、例えば該抗体の可変領域および細胞中での発現のための必要とされる調節要素に動作可能に連結し得る。
【0131】
本発明はまた、細胞株を形質転換するのに使用されるベクター、形質転換ベクターの製造において使用されるベクター、形質転換ベクターで形質転換された細胞株、調製的ベクターで形質転換された細胞株、およびそれらの製造方法も包含する。
【0132】
好ましくは、変えられたFc領域をもつ(すなわち変えられたエフェクター機能の)抗体を製造するために形質転換される細胞株は不死化哺乳動物細胞株(例えばCHO細胞)である。
【0133】
変えられたFc領域をもつ抗体を製造するのに使用される細胞株は好ましくは哺乳動物細胞株であるとは言え、細菌細胞株もしくは酵母細胞株のようないかなる他の適する細胞株も代替で使用してよい。
B.免疫学的および治療的作用物質をコードする核酸
アミロイド沈着物に対する免疫応答は、抗体をコードする核酸および受動免疫感作に使用されるそれらの成分鎖の投与によっても誘導し得る。こうした核酸はDNAもしくはRNAであり得る。免疫原をコードする核酸セグメントは、典型的には患者の意図された標的細胞中での該DNAセグメントの発現を可能にするプロモーターおよびエンハンサーのような調節要素に連結する。免疫応答の誘導に望ましいところの血液細胞中での発現のために、LもしくはH鎖免疫グロブリン遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサー要素またはCMV主要中初期プロモーターおよびエンハンサーが直接発現に適する。連結された調節要素およびコーディング配列はしばしばベクター中にクローン化する。二本鎖抗体の投与のためには、2種の鎖は同一のもしくは別個のベクターにクローン化し得る。
【0134】
レトロウイルス系(例えばLawrieとTumin、Cur.Opin.Genet.Develop.3:102−109(1993)を参照されたい);アデノウイルスベクター(例えばBettら、J.Virol.67:5911(1993)を参照されたい);アデノ随伴ウイルスベクター(例えばZhouら、J.Exp.Med.179:1867(1994)を参照されたい)、ワクシニアウイルスおよびトリポックスウイルスを包含するポックス科からのウイルスベクター、シンドビスおよびセムリキ森林ウイルス由来のもののようなアルファウイルス属からのウイルスベクター(例えばDubenskyら、J.Virol.70:508(1996)を参照されたい)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Johnstonら、米国特許第US 5,643,576号明細書を参照されたい)ならびに水疱性口内炎ウイルス(Rose、第6,168,943号明細書を参照されたい)のようなラブドウイルス、ならびにパピローマウイルス(Oheら、Human Gene Therapy 6:325(1995);Wooら、第WO 94/12629号明細書およびXiaoとBrandsma、Nucleic Acids.Res.24、2630−2622(1996))を包含する多数のウイルスベクター系が利用可能である。
【0135】
免疫原をコードするDNAもしくはそれを含有するベクターはリポソーム中にパッケージングし得る。適する脂質および関連類似物がEppsteinら、米国特許第US 5,208,036号、Felgnerら、同第US 5,264,618号、Rose、同第US 5,279,833号およびEpandら、同第US 5,283,185号明細書により記述されている。免疫原をコードするベクターおよびDNAは特定の担体に吸着もしくはそれと会合させることもまた可能であり、それらの例はポリメチルメタクリレートポリマーならびにポリラクチドおよびポリ(ラクチドコグリコリド)を包含する。例えばMcGeeら、J.Micro Encap.(1996)を参照されたい。
【0136】
遺伝子治療ベクターもしくは裸のポリペプチド(例えばDNA)は、典型的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内、鼻、胃、皮内、筋肉内、皮下もしくは頭蓋内注入)または局所適用(例えばAndersonら、米国特許第US 5,399,346号明細書を参照されたい)による個々の患者への投与によりin vivoで送達し得る。「裸のポリヌクレオチド」という用語はコロイド状物質と複合体形成されないポリヌクレオチドを指す。裸のポリヌクレオチドはときにプラスミドベクターにクローン化されている。こうしたベクターはさらにブピバカインのような促進剤を包含し得る(Weinerら、米国特許第US 5,593,972号明細書)。DNAは遺伝子銃を使用してもまた投与し得る。XiaoとBrandsma、上記を参照されたい。免疫原をコードするDNAを非常に小さな金属ビーズの表面上に沈殿させる。衝撃波もしくは膨張するヘリウムガスで微小発射体を加速し、そして数細胞層の深さまで組織に浸透する。例えばアグリシータス インク(Agricetus,Inc)、ウィスコンシン州ミドルトンにより製造されるアクセル[Accel]TM遺伝子送達装置が適する。あるいは、裸のDNAは、化学的もしくは機械的刺激を用いて該DNAを皮膚上に単純にスポットすることにより皮膚を通って血流中に進み得る(Howellら、第WO 95/05853号明細書を参照されたい)。
【0137】
さらなる一変形において、免疫原をコードするベクターを個々の患者から外植された細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引物、組織生検)もしくは普遍的ドナー造血幹細胞のような細胞にex vivoで送達し得、次いで通常は該ベクターを組み込んだ細胞についての選択後に患者に該細胞を再埋植し得る。
II.予防および治療方法
本発明はとりわけ、例えばアミロイド原性疾患の予防もしくは治療のための該患者中での患者における有益な治療応答(例えばAβの貪食作用の誘導、斑負荷量の低減、斑形成の阻害、神経炎性ジストロフィーの低減、認識機能の改善および/または認識低下の復帰、治療もしくは予防)を生成させる条件下での患者へのAβ内の特定のエピトープに対する治療的免疫学的試薬(例えばヒト化免疫グロブリン)の投与によるアルツハイマー病および他のアミロイド原性疾患の処置に向けられる。本発明はまた、アミロイド原性疾患の処置もしくは予防のための医薬の製造における開示される免疫学的試薬(例えばヒト化免疫グロブリン)の使用にも向けられる。
【0138】
一局面において、本発明は患者の脳中のAβのアミロイド沈着物を伴う疾患の予防もしくは治療方法を提供する。こうした疾患はアルツハイマー病、ダウン症候群および認識障害を包含する。後者はアミロイド原性疾患の他の特徴を伴いもしくは伴わずに発生し得る。本発明のいくつかの方法は、有効投薬量のアミロイド沈着物の一成分に特異的に結合する抗体を患者に投与することを伴う。こうした方法はヒト患者におけるアルツハイマー病を予防もしくは治療するのにとりわけ有用である。例示的方法は有効投薬量のAβに結合する抗体を投与することを伴う。好ましい方法は、有効投薬量のAβの残基1−10内の1エピトープに特異的に結合する抗体、例えばAβの残基1−3内の1エピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1−4内の1エピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1−5内の1エピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1−6内の1エピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1−7内の1エピトープに特異的に結合する抗体もしくはAβの残基3−7内の1エピトープに特異的に結合する抗体を投与することを伴う。なお別の局面において、本発明はAβの遊離のN末端1残基を含んでなる1エピトープに結合する抗体を投与することを特徴とする。なお別の局面において、本発明はAβの1−10の残基内の1エピトープに結合する抗体を投与することを特徴とし、ここでAβの残基1および/もしくは残基7はアスパラギン酸である。なお別の局面において、本発明は完全長のアミロイド前駆体タンパク質(APP)に結合することなくAβペプチドに特異的に結合する抗体を投与することを特徴とする。なお別の局面において、該抗体のアイソタイプはヒトIgG1である。
【0139】
なお別の局面において、本発明は患者中のアミロイド沈着物に結合しかつアミロイド沈着物に対する除去応答を誘導する抗体を投与することを特徴とする。例えば、こうした除去応答はFc受容体に媒介される貪食作用により遂げられ得る。
【0140】
本発明の治療薬は典型的には望ましくない汚染物質から実質的に純粋である。これは、作用物質が典型的には最低約50%w/w(重量/重量)純度であり、ならびに妨害するタンパク質および汚染物質を実質的に含まないことを意味する。ときに該作用物質は最低約80%w/w、およびより好ましくは最低90もしくは約95%w/w純度である。しかしながら、慣習的タンパク質精製技術を使用して最低99%w/wの均一なペプチドを得ることができる。
【0141】
該方法は無症候性の患者および疾患の症状を現在示しているものの双方に使用し得る。こうした方法で使用される抗体はヒト、ヒト化、キメラもしくは非ヒト抗体またはそれらのフラグメント(例えば抗原結合フラグメント)であり得、そして、本明細書に記述されるとおりモノクローナルもしくはポリクローナルであり得る。なお別の局面において、本発明はAβペプチドで免疫したヒトから調製された抗体を投与することを特徴とし、そのヒトは抗体で治療されるべき患者であり得る。
【0142】
別の局面において、本発明は製薬学的組成物として製薬学的担体とともに抗体を投与することを特徴とする。あるいは、該抗体は最低1種の抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを投与することにより患者に投与し得る。該ポリヌクレオチドが患者中で発現されて抗体鎖を産生する。場合によっては該ポリヌクレオチドは抗体のHおよびL鎖をコードする。該ポリヌクレオチドが患者中で発現されてHおよびL鎖を産生する。例示的態様において、患者は該患者の血液中の投与された抗体のレベルについてモニターされる。
【0143】
本発明は従って、神経病理学および若干の患者においてはアルツハイマー病に伴う認識障害を予防もしくは軽減するための治療レジメンに対する長年の必要性を満たす。
A.処置の影響を受けやすい患者
処置の影響を受けやすい患者は、疾患の危険にさらされているがしかし症状を示していない個体、ならびに現在症状を示している患者を包含する。アルツハイマー病の場合、彼もしくは彼女が十分長く生きている場合は事実上誰でもアルツハイマー病に罹る危険にさらされている。従って、本方法は被験体患者の危険のいかなる評価に対する必要性も伴わずに一般集団に予防的に投与し得る。本方法はアルツハイマー病の既知の遺伝的危険を有する個体にとりわけ有用である。こうした個体は、この疾患を経験した親族を有する者、および遺伝的もしくは生化学的マーカーの分析によりそのリスクが決定される者を包含する。アルツハイマー病に対する危険の遺伝的マーカーは、APP遺伝子中の突然変異、とりわけそれぞれハーディ型およびスウェーデン型突然変異と称される位置717ならびに位置670および671の突然変異を包含する(Hardy、上記を参照されたい)。危険の他のマーカーはプレセニリン遺伝子PS1およびPS2ならびにApoE4中の突然変異、ADの家族歴、高コレステロール血症もしくはアテローム硬化症である。現在アルツハイマー病に罹っている個体は特徴的痴呆ならびに上述された危険因子の存在から認識し得る。加えて、多数の診断検査がADを有する個体を同定するために利用可能である。これらはCSF τおよびAβ42レベルの測定を包含する。上昇されたτおよび減少されたAβ42レベルはADの存在の前兆となる。アルツハイマー病に罹っている個体はまた、実施例の節で論考されるところのADRDA基準によっても診断し得る。
【0144】
無症候性の患者において、処置はいかなる年齢(例えば10、20、30)でも開始し得る。しかしながら、通常は患者が40、50、60もしくは70に達するまで処置を開始することは必要でない。処置は、典型的には一定期間にわたる複数の投薬量を必要とする。処置は抗体レベルを長期にわたってアッセイすることによりモニターし得る。応答が下落する場合は追加免疫投薬量を指示する。潜在的なダウン症候群患者の場合、処置は母親に治療薬を投与することにより出生前にもしくは出生直後に開始し得る。
B.処置レジメンおよび投薬量
予防的応用においては、製薬学的組成物もしくは医薬は、アルツハイマー病の生化学的、組織学的および/もしくは行動的症状、その合併症ならびに疾患の発症の間に呈する中間的な病理学的表現型を包含する該疾患の危険を排除もしくは低下させる、重症度を小さくするまたは発症を遅らせるのに十分な量で、該疾患に罹りやすい、そうでなければその危険にさらされている患者に投与する。治療的応用においては、組成物もしくは医薬を、その合併症および疾患の発症における中間的な病理学的表現型を包含する該疾患の症状(生化学的、組織学的および/もしくは行動的)を治癒もしくは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、こうした疾患に罹っていることが疑われるもしくは既に罹っている患者に投与する。
【0145】
いくつかの方法において、作用物質の投与は、特徴的なアルツハイマー病の病状を未だ発症していない患者における筋認識障害を低下もしくは排除する。治療的もしくは予防的処置を達成するのに十分な量を治療的もしくは予防的有効用量と定義する。予防的および治療的双方のレジメンにおいて、作用物質は通常、十分な免疫応答が達成されるまでいくつかの投薬量で投与する。「免疫応答」もしくは「免疫学的応答」という用語は、レシピエント被験体中の抗原に対し向けられる体液性(抗体媒介性)および/または細胞性(抗原特異的T細胞もしくはそれらの分泌産物により媒介される)応答の発生を包含する。こうした応答は能動的応答(すなわち免疫原の投与により誘導される)あるいは受動的応答(すなわち免疫グロブリンもしくは抗体またはプライミングされたT細胞の投与により誘導される)であり得る。典型的には、免疫応答をモニターし、そして免疫応答が衰え始めた場合に反復投薬量を投与する。
【0146】
上述された状態の処置のための本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかもしくは動物であるか、投与される他の医薬、および処置が予防的であるかもしくは治療的であるかを包含する多くの異なる因子に依存して変動する。通常、患者はヒトであるがしかしトランスジェニック哺乳動物を包含する非ヒト哺乳動物もまた治療し得る。処置投薬量は安全性および有効性を至適化するように力価測定される必要がある。
【0147】
抗体での受動免疫のためには、投薬量は約0.0001から100mg/kgまで、およびより通常は0.01ないし5mg/kg(例えば0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)宿主体重の範囲にわたる。例えば、投薬量は、1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、または1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは最低1mg/kgであり得る。上の範囲の中間の用量もまた本発明の範囲内であることを意図している。被験体はこうした用量を毎日、1日おき、毎週、もしくは経験的分析により決定されるいずれかの他のスケジュールに従って投与され得る。例示的一処置は例えば最低6か月の長期間にわたる複数の投薬量での投与を伴う。付加的な例示的処置レジメンは2週間ごとあたり1回もしくは1か月に1回もしくは3ないし6か月ごとに1回の投与を伴う。例示的投薬スケジュールは連続する日に1〜10mg/kgもしくは15mg/kg、1日おきに30mg/kgまたは毎週60mg/kgを包含する。いくつかの方法においては、異なる結合特異性をもつ2種もしくはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合は投与される各抗体の投薬量が示された範囲内にある。
【0148】
抗体は通常複数の時点で投与される。単一の投与の間の間隔は週単位、月単位もしくは年単位であり得る。間隔はまた患者中のAβに対する抗体の血液レベルを測定することにより示されるような不規則でもあり得る。いくつかの方法において、1〜1000μg/mlおよびいくつかの方法では25〜300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように投薬量を調節する。あるいは、抗体を徐放性製剤として投与し得、この場合はより少なく頻繁な投与が必要とされる。投薬量および頻度は患者中の抗体の半減期に依存して変動する。一般にヒト化抗体が最長の半減期を示し、次いでキメラ抗体および非ヒト抗体である。
【0149】
投薬量および投与の頻度は該処置が予防的であるかもしくは治療的であるかに依存して変動し得る。予防的応用において、患者の抵抗性を高めるために、本抗体もしくはそれらのカクテルを含有する組成物を既に疾患状態ではない患者に投与する。こうした量を「予防的有効用量」であると定義する。この使用で正確な量は再度、患者の健康状態および全身性免疫に依存するが、しかし一般に投与あたり0.1から25mgまで、とりわけ投与あたり0.5ないし2.5mgの範囲にわたる。相対的に低い投薬量を相対的に短い間隔で長期にわたって投与する。若干の患者は彼らの生涯の残りの間処置を受領し続ける。
【0150】
治療的応用においては、疾患の進行が低下もしくは停止されるまで、および好ましくは患者が疾患の症状の部分的もしくは完全な軽減を示すまで比較的短い間隔での比較的高投薬量(例えば投与あたり約1から200mgまでの抗体、5から25mgまでの投薬量をより普遍的に使用する)がときに必要とされる。その後、患者に予防的レジメンを投与し得る。
【0151】
抗体をコードする核酸の用量は、患者あたり約10ngから1gまで、100ngないし100mg、1μgないし10mgもしくは30〜300μgのDNAの範囲にわたる。感染性ウイルスベクターの用量は、投与あたり10から100もしくはそれ以上のビリオンまで変動する。
【0152】
治療薬は、予防的および/もしくは治療的処置のため非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内もしくは筋肉内の手段により投与し得る。免疫原性作用物質の最も典型的な投与経路は皮下であるとは言え、他の経路が等しく有効であり得る。次に最も普遍的な経路は筋肉内注入である。この型の注入は腕もしくは脚の筋肉中で最も典型的に実施される。いくつかの方法において、作用物質は、沈着物が蓄積している特定の組織に直接注入する(例えば頭蓋内注入)。筋肉内注入もしくは静脈内注入が抗体の投与に好ましい。いくつかの方法においては特定の治療的抗体を頭蓋中に直接注入する。いくつかの方法においては、抗体を徐放性組成物もしくはメディパッド[Medipad]TM装置のような装置として投与する。
【0153】
本発明の作用物質は、場合によっては、アミロイド原性疾患の処置において少なくとも部分的に有効である他の作用物質とともに投与し得る。アミロイド沈着物が脳中に存在するアルツハイマー病およびダウン症候群の場合、本発明の作用物質は、血液脳関門を横断する本発明の作用物質の通過を増大させる他の作用物質とともにもまた投与し得る。本発明の作用物質はまた、標的細胞もしくは組織への該治療薬の接近を高める他の作用物質、例えばリポソームなどとともにも投与し得る。こうした作用物質の共投与は所望の効果を達成するのに必要とされる治療薬(例えば治療的抗体もしくは抗体鎖)の投薬量を減少させ得る。
C.製薬学的組成物
本発明の作用物質は、しばしば、有効な治療薬、すなわち、および多様な他の製薬学的に許容できる成分を含んでなる製薬学的組成物として投与される。Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、マック パブリッシング カンパニー(Mack Publishing Company)、ペンシルバニア州イーストン(1980))を参照されたい。好ましい形態は意図される投与様式および治療の応用に依存する。該組成物は、所望の製剤に依存して製薬学的に許容できる非毒性の担体もしくは希釈剤(動物もしくはヒト投与のための製薬学的組成物を処方するのに普遍的に使用されるベヒクルと定義される)もまた包含し得る。希釈剤は組合せ剤の生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。こうした希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理的食塩水、リンゲル液、D−ブドウ糖溶液およびハンクス液である。加えて、該製薬学的組成物もしくは製剤は他の担体、補助物質もしくは非毒性の非治療的非免疫原性安定剤などもまた包含してよい。
【0154】
製薬学的組成物はまた、タンパク質、キトサンのような多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸および(ラテックス官能性化セファロース(TM)、アガロース、セルロースなどのような)コポリマー、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマーならびに(油滴もしくはリポソームのような)脂質凝集物のような大型のゆっくりと代謝される巨大分子も包含し得る。加えてこれらの担体は免疫賦活剤(すなわちアジュバント)として機能し得る。
【0155】
非経口投与のためには、本発明の作用物質を水、油、生理的食塩水、グリセロールもしくはエタノールのような無菌の液体であり得る製薬学的担体を含む生理学的に許容できる希釈剤中の物質の溶液もしくは懸濁剤の注入可能な投薬量として投与し得る。加えて、湿潤剤もしくは乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などのような補助物質が組成物中に存在し得る。製薬学的組成物の他の成分は、石油、動物、植物もしくは合成起源のもの、例えばラッカセイ油、ダイズ油および鉱物油である。一般にプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのようなグリコールがとりわけ注入可能な溶液に好ましい液体担体である。抗体は、有効成分の持続性放出を可能にするような様式で処方し得るデポー注射剤もしくは埋込製剤の形態で投与し得る。例示的組成物は、HClでpH6.0に調節された50mM L−ヒスチジン、150mM NaClよりなる水性緩衝液中で処方された5mg/mLのモノクローナル抗体を含んでなる。
【0156】
典型的には、組成物は、注入可能製剤として、液体の溶液もしくは懸濁剤のいずれかとして製造され;注入前の液体ベヒクル中の溶解もしくは懸濁に適する固体の形態もまた製造し得る。該製剤はまた、上で論考されたところの高められたアジュバント効果のためのポリラクチド、ポリグリコリドもしくはコポリマーのようなリポソームもしくは微小粒子中に乳化もしくは被包化もし得る(Langer、Science 249:1527(1990)およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28:97(1997)を参照されたい)。本発明の作用物質は、有効成分の持続性もしくは拍動性の放出を可能にするような様式で処方し得るデポー注射剤もしくは埋込製剤の形態で投与し得る。
【0157】
他の投与様式に適する付加的な製剤は、経口、鼻内および肺製剤、坐剤ならびに経皮適用を包含する。坐剤に関して、結合剤および担体は例えばポリアルキレングリコールもしくはトリグリセリドを包含し;こうした坐剤は0.5%ないし10%、好ましくは1%〜2%の範囲の有効成分を含有する混合物から成形し得る。経口製剤は、製薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムのような賦形剤を包含する。これらの組成物は溶液、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤もしくは散剤の形態をとり、そして10%〜95%の有効成分、好ましくは25%〜70%を含有する。
【0158】
局所適用は経皮もしくは皮内送達をもたらし得る。局所投与は、コレラトキシンまたはその解毒誘導体もしくはサブユニットあるいは他の類似の細菌のトキシンとの該作用物質の共投与により助長され得る(Glennら、Nature 391、851(1998)を参照されたい)。共投与は混合物または化学的架橋もしくは融合タンパク質としての発現により得られる結合分子として成分を使用することにより達成し得る。
【0159】
あるいは、経皮送達は皮膚経路を使用してもしくはトランスフェロソーム(transferosome)(Paulら、Eur.J.Immunol.25:3521(1995);Cevcら、Biochem.Biophys.Acta 1368:201−15(1998))を使用して達成し得る。
III.処置の経過のモニタリング
本発明は、アルツハイマー病に罹っているもしくは罹りやすい患者における処置のモニタリング方法すなわち患者に投与されている処置の経過のモニタリング方法を提供する。該方法を使用して、症候性の患者での治療的処置および無症候性の患者での予防的処置の双方をモニターし得る。とりわけ、該方法は受動免疫感作のモニタリング(例えば投与された抗体のレベルを測定する)に有用である。
【0160】
いくつかの方法は、一投薬量の作用物質を投与する前に例えば患者の抗体のレベルもしくはプロファイルの基礎値を測定すること、およびこれを処置後のプロファイルもしくはレベルの値と比較することを伴う。レベルもしくはプロファイルの値の有意の増大(すなわちこうした測定値の平均からの一標準偏差の逸脱として表される同一のサンプルの反復測定値の実験誤差の典型的な許容範囲より大きい)は正の処置結果(すなわち該作用物質の投与が所望の応答を達成したこと)を知らせる。免疫応答の値が有意に変化しないかもしくは減少する場合は負の処置結果を示す。
【0161】
他の方法においては、レベルもしくはプロファイルの対照値(すなわち平均および標準偏差)を対照集団について決定する。典型的には、対照集団の個体は以前の処置を受領したことがない。その後、治療薬を投与した後の患者でのレベルもしくはプロファイルの測定値を対照値と比較する。対照値に関して有意の増大(例えば平均から1標準偏差より大きい)は正のすなわち十分な処置結果を知らせる。有意の増大の欠如もしくは減少は負のすなわち不十分な処置結果を知らせる。レベルが対照値に関して増大している間は作用物質の投与を一般に継続する。前のとおり、対照値に関してプラトーの達成は、処置の投与を中断または投薬量および/もしくは頻度を低下し得ることの指標である。
【0162】
他の方法において、レベルもしくはプロファイルの対照値(例えば平均および標準偏差)を、ある治療薬での処置を受けたことがありかつそのレベルもしくはプロファイルが処置に応答してプラトーに達している個体の対照集団から決定する。患者でのレベルもしくはプロファイルの測定値を対照値と比較する。患者で測定されたレベルが対照値と有意に異なる(例えば一標準偏差より大きい)でない場合、処置を中断し得る。患者でのレベルが対照値より有意に下である場合、作用物質の継続投与が正当化される。患者でのレベルが対照値より下で持続する場合には、処置の変更が指示されるかもしれない。
【0163】
他の方法において、現在処置を受領していないがしかし以前の1クールの処置を受けたことがある患者を抗体レベルもしくはプロファイルについてモニターして、処置の再開が必要とされているかどうかを決定する。患者で測定されたレベルもしくはプロファイルを、以前の1クールの処置後に該患者で以前に達成された値と比較し得る。以前の測定値に関する有意の減少(すなわち同一サンプルの反復測定値の誤差の典型的な許容範囲より大きい)は処置を再開し得ることの表示である。あるいは、患者での測定値を、1クールの処置を受けた後の患者集団で決定された対照値(平均+標準偏差)と比較し得る。あるいは、患者での測定値を、疾患の症状を伴わないままである予防的に治療した患者の集団もしくは疾患の特徴の軽減を示す治療的に治療した患者の集団での対照値と比較し得る。これらの場合の全部において、対照レベルに関して有意の減少(すなわち一標準偏差より大きい)は、処置を患者で再開すべきであることの指標である。
【0164】
分析のための組織サンプルは、典型的には患者からの血液、血漿、血清、粘液もしくは脳脊髄液である。サンプルは例えばAβペプチドに対する抗体のレベルもしくはプロファイル、例えばヒト化抗体のレベルもしくはプロファイルについて分析する。Aβに特異的な抗体のELISA検出方法を実施例の節に記述する。いくつかの方法において、投与された抗体のレベルもしくはプロファイルは、除去アッセイを使用して、例えば本明細書に記述されるところのin vitro貪食作用アッセイで測定する。こうした方法においては、試験されている患者からの組織サンプルを(例えばPDAPPマウスからの)アミロイド沈着物およびFc受容体をもつ貪食細胞と接触させる。その後、アミロイド沈着物のその後の除去をモニターする。除去応答の存在および程度は、試験中の患者の組織サンプル中のAβを除去するのに有効な抗体の存在およびレベルの表示を提供する。
【0165】
受動免疫感作後の抗体プロファイルは、典型的には抗体濃度のすぐのピーク、次いで指数的減衰を示す。さらなる投薬なしに、該減衰は投与された抗体の半減期に依存して数日ないし数か月の期間内に処置前のレベルに近づく。
【0166】
いくつかの方法において、患者中のAβに対する抗体の基礎測定を投与前に行い、第二の測定をその直後に行ってピーク抗体レベルを決定し、そして1回もしくはそれ以上のさらなる測定を間をおいて行って抗体レベルの減衰をモニターする。抗体のレベルが基礎もしくは基礎より低いピークの予め決められたパーセント(例えば50%、25%もしくは10%)まで減少した場合は、抗体のさらなる一投薬量の投与を投与する。いくつかの方法においては、ピークもしくはバックグラウンドより低いその後の測定されたレベルを、以前に決定された参照レベルと比較して、他の患者での有益な予防的もしくは治療的処置レジメンを構成する。測定された抗体レベルが参照レベルより有意により低い(例えば処置によって利益を得る患者の集団における参照値の平均−一標準偏差より低い)場合は、付加的な投薬量の抗体の投与を指示する。
【0167】
付加的な方法は、処置の経過にわたってアミロイド原性疾患(例えばアルツハイマー病)を診断もしくはモニターするために研究者もしくは医師により慣例に頼られるいずれかの技術に認識された生理学的症状(例えば肉体的もしくは精神的症状)のモニタリングを包含する。例えば認識障害をモニターし得る。後者はアルツハイマー病およびダウン症候群の一症状であるが、しかしこれらの疾患のいずれかの他の特徴を伴わずにもまた発生し得る。例えば、認識障害は、処置の経過全体で規約に従ってミニ精神状態試験(Mini−Mental State Exam)で患者スコアを決定することによりモニターし得る。
C.キット
本発明はさらに上述されたモニタリング方法を実施するためのキットを提供する。典型的には、こうしたキットはAβに対する抗体に特異的に結合する作用物質を含有する。該キットは標識もまた包含し得る。Aβに対する抗体の検出のため、標識は典型的には標識抗イディオタイプ抗体の形態にある。抗体の検出のため、作用物質はマイクロタイター皿のウェルのような固相に予め結合して供給し得る。キットはまた、典型的には該キットの使用のための説明を提供するラベル(labeling)も含有する。該ラベルは測定された標識のレベルをAβに対する抗体のレベルと相互に関連付けるチャートもしくは他の対応制度もまた包含してよい。ラベルという用語はその製造、輸送、販売もしくは使用の間のいずれかの時点でキットに添付される(attached)もしくは別の方法で添付する(accompany)いかなる記載または記録された資材も指す。例えばラベルという用語は広告用ちらしおよびパンフレット、包装資材、説明書、オーディオまたはビデオカセット、コンピュータディスク、ならびにキットに直接刻み込まれた文章を包含する。
【0168】
本発明はまた診断キット、例えば研究、検出および/もしくは診断キット(例えばin vivo画像化を実施するための)も提供する。こうしたキットは、典型的には、好ましくは残基1−10内のAβの1エピトープに結合するための抗体を含有する。好ましくは、該抗体は標識されているか、もしくは二次標識試薬がキットに包含される。好ましくは、該キットは意図される応用を実施するための、例えばin vivo画像化アッセイを実施するための説明でラベル付けされている。例示的抗体は本明細書に記述されるものである。
D.in vivo画像化
本発明は患者中のアミロイド沈着物のin vivo画像化方法を提供する。こうした方法はアルツハイマー病を診断またはその診断もしくはそれへの罹患性を確認するのに有用である。例えば、該方法は痴呆の症状を伴って診察を受けに来る患者で使用し得る。患者が異常なアミロイド沈着物を有する場合には、該患者がアルツハイマー病に罹っていることがありそうである。該方法は無症候性の患者でもまた使用し得る。アミロイドの異常な沈着物の存在は今後の症候性疾患への罹患性を示す。該方法はまた、アルツハイマー病を伴うと以前に診断された患者における疾患の進行および/もしくは処置に対する応答のモニタリングにも有用である。
【0169】
該方法は、Aβに結合する抗体のような試薬を患者に投与すること、およびその後、それが結合した後に該作用物質を検出することにより機能する。好ましい抗体は完全長のAPPポリペプチドに結合することなく患者中のAβ沈着物に結合する。アミノ酸1−10内のAβの1エピトープに結合する抗体がとりわけ好ましい。いくつかの方法において、抗体はAβのアミノ酸7−10内の1エピトープに結合する。こうした抗体は典型的に、実質的な除去応答を誘導することなく結合する。他の方法において、抗体はAβのアミノ酸1−7内の1エピトープに結合する。こうした抗体は典型的にAβに結合しかつそれに対する除去応答を誘導する。しかしながら、除去応答はFabのような完全長の定常領域を欠く抗体フラグメントを使用することにより回避し得る。いくつかの方法において同一の抗体が処置および診断試薬の双方としてはたらき得る。一般に、Aβの残基10に対しC末端のエピトープに結合する抗体は、おそらくC末端エピトープがアミロイド沈着物中で接近不可能であるために残基1−10内のエピトープに結合する抗体ほど強いシグナルを示さない。従って、こうした抗体はより少なく好ましい。
【0170】
診断試薬は、患者の体内への静脈内注入により、または頭蓋内注入もしくは頭蓋骨を通してドリルで穴を開けることにより直接脳中に投与し得る。試薬の投薬量は、処置方法についてと同一の範囲内にあるべきである。典型的には試薬は標識されているが、とは言えいくつかの方法においてはAβに対する親和性をもつ一次試薬は未標識であり、そして二次標識剤を使用して一次試薬に結合させる。標識の選択は検出の手段に依存する。例えば視覚的検出には蛍光標識が適する。外科的介入を伴わない断層X線撮影検出には常磁性標識の使用が適する。放射活性標識はまたPETもしくはSPECTを使用しても検出し得る。
【0171】
診断は、標識された病巣の数、大きさおよび/もしくは強度を対応する基礎値と比較することにより実施する。基礎値は疾患に罹っていない個体の集団における平均レベルを表し得る。基礎値はまた同一患者で測定された以前のレベルも表し得る。例えば、ある患者で処置を開始する前に基礎値を測定し得、そしてその後の測定値を該基礎値と比較し得る。基礎シグナルに関しての値の減少は処置に対する正の応答を知らせる。
【0172】
本発明は以下の制限しない実施例によりより完全に記述されるであろう。
【実施例】
【0173】
免疫グロブリン鎖の可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を指すのに、実施例の節を通じて以下の配列識別子を使用する。
【0174】
【表2】

【0175】
本明細書で使用されるところの、配列番号1〜12もしくは29〜38のいずれか1つで示されるところのVLおよび/もしくはVH配列を含んでなる抗体もしくは免疫グロブリン配列は、完全な配列を含み得るか、または成熟配列(すなわちシグナルもしくはリーダーペプチドを含まない成熟ペプチド)を含み得るかのいずれかである。
実施例I.マウス12B4可変領域のクローニングおよびシークェンシング
12B4 VHのクローニングおよび配列分析。ハイブリドーマ細胞からの12B4のVHおよびVL領域を、ハイブリドーマ細胞からのmRNAを使用するRT−PCTおよび5’RACEならびに標準的クローニングの方法論によりクローン化した。推定される12B4 VHドメインをコードする2個の独立したcDNAクローン由来のヌクレオチド配列(配列番号3)および推定されるアミノ酸配列(配列番号4)をそれぞれ表2および表3に示す。
【0176】
【表3】

【0177】
12B4 VLのクローニングおよび配列分析。12B4のL鎖可変VL領域をVH領域と類似の様式でクローン化した。推定される12B4 VLドメインをコードする2個の独立したcDNAクローン由来のヌクレオチド配列(配列番号1)および推定されるアミノ酸配列(配列番号2)をそれぞれ表4および表5に示す。
【0178】
【表4】

【0179】
12B4 VLおよびVH配列は、それらが開始メチオニンからC領域までの連続する1ORFを含有しかつ免疫グロブリンV領域遺伝子の保存された残基の特徴を共有する限りにおいて機能的V領域の基準に合致する。N末端からC末端まで、LおよびH鎖双方はドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。各ドメインへのアミノ酸の割り当てはKabatら、上記の番号付けの規約に従う。
実施例II:キメラ12B4抗体の発現
キメラ12B4抗体の発現:可変HおよびL鎖領域を、それぞれのVDJもしくはVJ接合部の下流のスプライスドナー配列をコードするように再工作し、そしてH鎖について哺乳動物発現ベクターpCMV−hγ1およびL鎖についてpCMV−hκ1にクローン化した。これらのベクターは挿入された可変領域カセットの下流にエキソンフラグメントとしてヒトγ1およびCk定常領域をコードする。配列の確認後にH鎖およびL鎖発現ベクターをCOS細胞にコトランスフェクトした。多様なH鎖クローンを異なるキメラL鎖クローンと独立にコトランスフェクトして結果の再現性を確認した。馴化培地をトランスフェクション48時間後に収集し、そして抗体産生についてウェスタンブロットもしくはAβ結合についてELISAによりアッセイした。複数のトランスフェクタントは全部、ウェスタンブロットでヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体により認識されるH鎖+L鎖の組合せを発現した。
【0180】
Aβへのキメラ12B4抗体の直接結合をELISAアッセイにより試験した。図5は、キメラ12B4が、キメラおよびヒト化3D6により示されたもの(図5)に類似の高親和性でAβに結合することが見出されたことを示す。(3D6のクローニング、特徴付けおよびヒト化は米国特許出願第10/010,942号明細書(その内容全体はこの引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されている。)さらに、ELISAに基づく競合阻害アッセイは、キメラ12B4およびマウス12B4抗体が、Aβへの結合において、ビオチニル化マウスおよびキメラ3D6ならびに10D5(12B4と同一のエピトープを認識するIgGγ1アイソタイプのマウスモノクローナル抗体)と等しく競合したことを示した。図6は、キメラ12B4(破線、白三角)がAβ 1−42ペプチドへのビオチニル化マウス12B4の結合についてその非ビオチニル化マウス対蹠物(実線、黒三角)と等しい効力で競合することを示す。
実施例III:PDAPPマウスにおける多様な神経病理学的エンドポイントに対するmAb 12B4の有効性
本実施例は多様な神経病理学的エンドポイントに対するマウスmAb 12B4の有効性を記述する。2種のmAb、12B4および3D6の比較を記述する。双方のmAbはIgG2aアイソタイプのものであり、また、双方はAβペプチドのN末端内の1エピトープを結合する。
免疫感作
PDAPPマウスをmAb 12B4(Aβ 3−7を認識する)もしくはmAb 3D6(Aβ 1−5を認識する)(双方ともIgGγ2aアイソタイプのもの)のいずれかで受動免疫した。12B4は10mg/kgで試験した。3D6は3種の異なる用量すなわち10mg/kg、1mg/kgおよび10mg/kg月1回(1×4)で投与した。無関係のIgGγ2a抗体(TY 11/15)およびPBS注入が対照としてはたらいた。Aβペプチドでの能動免疫感作が比較としてはたらいた。20と35匹との間の動物を各群で分析した。
【0181】
アッセイした神経病理学的エンドポイントはアミロイド負荷量および神経炎性負荷量を包含する。
アミロイド負荷量
アミロイド沈着物により占有される前頭皮質の程度を3D6での免疫染色、次いで定量的画像解析により決定した。この分析の結果を表6に示す。免疫療法(例えば12B4、3D6(試験された全用量)およびAβペプチドでの免疫感作)の全部がアミロイド負荷量の有意の減少につながった。
神経炎性負荷量
以前に、10D5が神経炎性負荷量を有意に低下させることが不可能であったことが観察されており、IgGγ2aアイソタイプの抗体がアルツハイマー病の動物モデルで神経炎性負荷量を低下させることが可能であるが他のアイソタイプは可能でないことを示唆する(データは示されない)。従って、3D6に対する12B4(双方ともIgGγ2aアイソタイプのもの)での受動免疫感作後の神経炎性負荷量を、抗APP抗体8E5での脳切片の免疫染色、次いで定量的画像解析によりPDAPPマウスで測定した。神経炎性ジストロフィーは、アミロイド斑の直ぐ近傍に位置するジストロフィー性神経突起(例えば球状の外見をもつ神経突起)の出現により示される。本分析の結果を表7に示す。これらのデータは、12B4での処置が神経炎性負荷量を最も有意に低下させたことを示す。対照的に、3D6は神経炎性負荷量を有意に低下させなかった。
【0182】
【表5】

【0183】
上の結果は、IgGγ2aアイソタイプのAβ抗体での処置が神経炎性負荷量を低下させるのに必要であるかもしれないがしかし十分でないかもしれないことを示す。別個のエピトープ(すなわちAβ 3−7)を介してAβを結合することもまた、PDAPPマウスにおいてこの病状を低下させるために不可欠であるかもしれない。
【0184】
アルツハイマー病のPDAPPマウスモデルにおける多様な神経病理学的エンドポイントの特徴付けは、適切なヒトの治療的免疫感作プロトコルの設計において当業者により使用されるべき価値のある情報を提供する。例えば、神経炎性負荷量の低減は、Aβの残基3−7内の1エピトープに結合するIgG1サブタイプの12B4のヒト化バージョン(すなわちマウスにおけるIgGγ2Aサブタイプのヒト同等物)を使用してヒト被験体で達成されるかもしれない。
実施例IV:アミロイド沈着物に対する抗体の活性についてのex vivoスクリーニングアッセイ
斑の除去に対する抗体の影響を検査するため、初代小グリア細胞をPDAPPマウスもしくはヒトのAD脳のいずれかの未固定クライオスタット切片とともに培養したex vivoアッセイを利用した。小グリア細胞は新生DBA/2Nマウス(1〜3日)の大脳皮質から得た。皮質を50μg/mlのDNアーゼI(シグマ(Sigma))を含むHBSS−−(ハンクス平衡塩類溶液、シグマ(Sigma))中で機械的に解離した。解離させた細胞を100μm細胞濾過器(ファルコン(Falcon))を用いて濾過し、そして1000rpmで5分間遠心分離した。ペレットを成長培地(高グルコースDMEM、10%FBS、25ng/ml組換えマウスGM−CSF(rmGM−CSF)に再懸濁し、そして細胞をT−75プラスチック製培養フラスコあたり2個の脳の密度でプレーティングした。7〜9日後にフラスコをオービタルシェーカー上200rpmで37℃で2時間回転した。細胞懸濁液を1000rpmで遠心分離しかつアッセイ媒体に再懸濁した。
【0185】
PDAPPマウスもしくはヒトのAD脳(死後間隔<3時間)の10μmのクライオスタット切片を、ポリリシン被覆した円形ガラス製カバーガラス上に融解マウントし、そして24ウェル組織培養プレートのウェル中に入れた。カバーガラスを、1%FBS、グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび5ng/ml rmGM−CSF(R&D)を含むH−SFM(ハイブリドーマ無血清培地、ギブコ BRL(Gibco BRL))よりなるアッセイ媒体で2回洗浄した。対照もしくは抗Aβ抗体(12B4)を2×濃度(最終5μg/ml)で1時間添加した。その後、小グリア細胞をアッセイ媒体1mlあたり0.8×10細胞の密度で接種した。培養物は加湿インキュベータ(37℃、5%CO)中に24時間もしくはそれ以上維持した。インキュベーションの終了時に培養物を4%パラホルムアルデヒドで固定し、そして0.1%トリトン(Triton)−X100で浸透化した。切片をビオチニル化3D6、次いでストレプトアビジン/Cy3複合体(ジャクソン イムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch))で染色した。外因性の小グリア細胞は核染色(DAPI)により可視化した。培養物を倒立蛍光顕微鏡(ニコン(Nikon)、TE300)で観察し、そしてSPOTソフトウェア(ダイアグノスティック インストゥルメンツ(Diagnostic instruments))を使用してSPOTディジタルカメラを用いて顕微鏡写真を撮影した。
【0186】
in vivo有効性を有しない対照抗体の存在下でPDAPP脳切片を用いてアッセイを実施した場合、β−アミロイド斑は無傷のままであり、また、貪食作用は観察されなかった。対照的に、隣接する切片を3D6もしくは12B4の存在下で培養した場合、アミロイド沈着物はほとんど消失し、また、小グリア細胞はAβを含有する多数の貪食小胞を示した(図7)。類似の結果がAD脳の切片で得られ;3D6(ヒト化バージョン)およびキメラ12B4はAD斑の貪食作用を誘導した一方、対照IgG1は無効であった(図8A−B)。
【0187】
実施例IIおよびIIIに提示されるデータはクローン化した12B4可変領域の機能を確認する。
実施例V.12B4のヒト化
A.12B4ヒト化抗体、バージョン1
相同性/分子モデル化。マウス12B4抗体中の重要な構造的枠組み残基を同定するために、最も近いマウス抗体に基づきHおよびL鎖について三次元モデルを生成させた。この目的上、2PCPと称される抗体を12B4のL鎖のモデル化のための鋳型として選び(PDB ID:2PCP、Limら(1998)J.Biol.Chem.273:28576)、また、1ETZと称される抗体をH鎖のモデル化のための鋳型として選んだ。(PDB ID:1ETZ、Guddatら(2000)J..Mol.Biol.302:853)。これらの抗体のL鎖およびH鎖との12B4のアミノ酸配列アライメントは、2PCPおよび1ETZ抗体が12B4と有意の配列の相同性を共有することを示した。加えて、選択された抗体のCDRループは、12B4のCDRループが入ると同一の正準Chothia構造分類に入る。従って、12B4の相同性モデル化のための解明された構造の抗体として、2PCPおよび1ETZを最初に選択した。
【0188】
上に示された抗体に基づく12B4の可変領域の初回通過相同性(first pass homology)モデルを、Look & SegMod Modules GeneMine(v3.5)ソフトウェアパッケージを使用して構築した。本ソフトウェアはモレキュラー アプリケーションズ グループ(Molecular Applications Group)(カリフォルニア州パロアルト)から永久ライセンス下に購入した。Michael LevittおよびChris Lee博士により創始された本ソフトウェアパッケージは、配列の相同性に基づく既知の構造の鋳型での一次配列の構造モデル化に関与する段階を自動化することにより分子モデル化の過程を助長する。UNIX環境下のSilicon Graphics IRISワークステーションで作業して、モデル化した構造は一連のエネルギー最小化段階により自動的に精緻にされて好ましくない原子接触を解放しかつ静電的およびファンデルワールス相互作用を至適化する。さらなる精緻化されたモデルを、Quanta(R)のモデル化能力を使用して構築した。
【0189】
ヒトアクセプター抗体配列の選択。適するヒトアクセプター抗体配列を、マウス可変領域のアミノ酸配列の既知のヒト抗体の配列とのコンピュータ比較により同定した。該比較は12B4 HおよびL鎖について別個に実施した。とりわけ、その枠組み配列がマウスVLおよびVH枠組み領域との高程度の配列の同一性を表したヒト抗体からの可変ドメインは、それぞれのマウス枠組み配列を用いるNCBI BLAST(国立保健研究所(National Institutes of Health)NCBIのインターネットサーバを通じて公的にアクセス可能)を使用するKabatデータベースのクエリにより同定した。
【0190】
2個の候補配列を、以下の基準、すなわち(1)主題の配列との相同性;(2)ドナー配列と正準CDR構造を共有すること;および(3)枠組み領域中のいかなる稀なアミノ酸残基も含有しないことに基づいてアクセプター配列として選んだ。VLの選択されたアクセプター配列はKabat ID番号(KABID)005036(ジェンバンク(GenBank)受託番号X67904)であり、また、VHについてはKABID 000333(ジェンバンク(GenBank)受託番号X54437)である。第一のバージョンのヒト化3D6抗体はこれらの選択されたアクセプター抗体配列を利用する。
【0191】
アミノ酸残基の置換。上に示されたとおり、本発明のヒト化抗体は、実質的にヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリン)からの可変枠組み領域および実質的に12B4と命名されたマウス免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)からの相補性決定領域を含んでなる。12B4の相補性決定領域および適切なヒトアクセプター免疫グロブリンを同定すれば、次の段階は、生じるヒト化抗体の特性を至適化するためにこれらの成分からのどの残基(あれば)を置換するかを決定することであった。
形を変えられた(reshaped)L鎖V領域:
形を変えられたL鎖のV領域のアミノ酸アライメントを図1に示す。アクセプター枠組みの選択(Kabid 005036)は、マウスのV領域に対応するものが異常な枠組み残基を有さずかつCDRが同一のChothia正準構造群に属するため、同一のヒトサブグループからである。この残基が正準分類に入るため、単一の逆突然変異(I2V)が指図される。形を変えられたVLのバージョン1は完全に生殖系列である。
形を変えられたH鎖V領域:
形を変えられたH鎖のV領域のアミノ酸アライメントを図2に示す。アクセプター枠組みの選択(Kabid 000333)は、マウスのV領域に対応するものが異常な枠組み残基を有さずかつCDRが同一のChothia正準群に属するため、同一のヒトサブグループからである。マウス配列へのKabid 000333のアミノ酸アライメントとともにのマウスVH鎖の構造のモデル化は、形を変えられたH鎖のバージョン1(v1)中の9個の逆突然変異、すなわちL2V、V24F、G27F、I29L、I48L、G49A、V67L、V71KおよびF78V(Kabatの番号付け)を指図する。該逆突然変異は図2に示されるアミノ酸アライメント中で*印により強調されている。
【0192】
該9個の逆突然変異のうち、4個は、該残基が正準残基(濃い黒囲みにより示されるV24F、G27F、I29LおよびV71K)すなわちCDR残基の近接によって抗原結合に寄与しているとみられる枠組み残基であるため、該モデルにより指図される。次の最も重要な分類の残基すなわちVH−VL充填相互作用に関与する界面残基(白囲みにより示される)中に必要な逆突然変異は存在しない。逆突然変異の標的とされた残存する5残基(L2V、I48L、G49A、V67L、F78V、Kabatの番号付け)は全部補助装置分類(CDRのコンホメーションへの間接的寄与、図2中の太く点彩された囲み)に入る。
【0193】
バージョン2は最少数の非CDRのマウス残基を保持するように設計した。L2V逆突然変異は非生殖系列変化を導入し(生殖系列参照としてVH4−61を使用する場合)、そしてこの逆突然変異はそれを生殖系列に復帰させるようにバージョン2のH鎖で排除されている。残存する4個の補助装置分類の逆突然変異もまたバージョン2のH鎖で復帰される(I48L、G49A、V67L、F78V)。従ってバージョン2は合計5個の非CDRマウス残基(VL中1個、VH中に4個)を含有する。バージョン3は5個の補助装置残基のうち2個(I48LおよびF78V)を復帰させるよう設計し、該モデルが示すものはより重要な補助装置残基であるかもしれない。これゆえにバージョン3は合計7個の非CDRマウス残基を含有する。
【0194】
ヒト化12B4のバージョン1、2および3に組み込まれた変化の要約を表8に提示する。
【0195】
【表6】

【0196】
表10および11はそれぞれ多様なLおよびH鎖のKabatの番号付けの要所を示す。
【0197】
【表7】

【0198】
【表8】

【0199】
【表9】

【0200】
【表10】

【0201】
【表11】

【0202】
【表12】

【0203】
【表13】

【0204】
【表14】

【0205】
ヒト化抗体は、好ましくは最低10、10、10もしくは1010−1のAβに対する特異的結合親和性を表す。通常、Aβに対するヒト化抗体の結合親和性の上限は12B4のものの3、4もしくは5の係数内(すなわち約10−1)にある。しばしば、結合親和性の下限もまた12B4のものの3、4もしくは5の係数内にある。
【0206】
ヒト化12B4 VHおよびVL(バージョン1)の集成および発現 図9aはヒト化VL.v1のPCR媒介性の集成のための戦略の図解である。図9bはヒト化VH.v1のPCR媒介性の集成のための戦略の図解である。表11は12B4v1のPCR媒介性の集成に使用したプライマーを示す。
【0207】
【表15】

【0208】
【表16】

【0209】
【表17】

【0210】
等モル比のVHv1A+VHv1BおよびVHv1C+VHv1Dの合成フラグメントを、標準的手順を使用して別個の反応チューブ中で対としてアニーリングした。A+Bのアニーリング反応は、60℃アニーリング、25周期でプライマーA+B forおよびA+B backを用いるPCRを使用して集成した(for=フォワードおよびback=バックワード、あるいはrevすなわちリバース)。同様に、C+Dアニーリング反応を、同一条件下でPCRプライマーC+DforおよびC+Dbackを使用して集成した。PCRで集成した5’のA+Bの半分および3’のC+D半分を最終的なPCR媒介性の集成のためゲル精製した。完全なV領域の集成は、V領域のA+B集成された5’の半分をC+Dの3’の半分と混合すること、アニーリング、ならびにVHv1A+B forプライマーおよびVHv1C+D backプライマーを使用するPCRにより伸長することにより遂げた。この様式で集成した完全長のVHおよびVL領域をゲル精製し、そしてDNA配列の検証のためpCRScriptにクローン化した。
【0211】
ヒト化12B4VL(バージョン1)(配列番号5)および12B4VH(バージョン1)(配列番号7)のヌクレオチド配列をそれぞれ表12および13として下に列挙する。
【0212】
【表18】

【0213】
B.ヒト化12B4バージョン2抗体
残基2のL→V置換、残基48のI→L置換、残基49のG→A置換、残基67のV→L置換および残基78のF→V置換を除き、バージョン1について示された置換のそれぞれを有する第二のバージョンのヒト化12B4を創製した。ヒト化3D6バージョン2のLおよびH鎖のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号9および11に示す。ヒト化3D6バージョン2のLおよびH鎖のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号1および9に示す。ヒト化3D6バージョン2のLおよびH鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および10に示す。
C.ヒト化12B4バージョン3抗体
残基2のL→V置換、残基49のG→A置換および残基67のV→L置換を除き、バージョン1について示された置換のそれぞれを有する第三のバージョンのヒト化12B4を創製した。ヒト化3D6バージョン2のLおよびH鎖のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号1および9に示す。ヒト化3D6バージョン3のLおよびH鎖のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号1および11に示す。ヒト化3D6バージョン3のLおよびH鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および12に示す。
実施例VI.ヒト被験体の予防および処置
単回投与フェーズI試験をヒトにおける安全性を決定するために実施する。治療薬は、異なる患者に対し、約0.01(想定される有効性のレベル)から出発しかつ有効マウス投薬量の約10倍のレベルに達するまで3の係数により増大させる増大する投薬量で投与する。
【0214】
フェーズII試験は治療的有効性を決定するために実施する。まず確実なADについてのアルツハイマー病および関連障害協会(Alzheimer’s disease and Related Disorders Association)(ADRDA)の基準を使用して定義される早期ないし中期のアルツハイマー病を伴う患者を選択する。適する患者は、ミニ精神状態試験(Mini−Mental State Exam)(MMSE)で12〜16の範囲のスコアとなる。他の選択基準は、患者が試験の期間を生き延びかつ妨害するとみられる併用薬の使用のような複雑にする問題を欠くことがありそうであることである。MMSEおよびADAS(アルツハイマー病の状態および機能を伴う患者を評価するための包括的尺度である)のような古典的精神測定学的手段を使用して、患者の機能の基礎評価を行う。これらの精神測定学的尺度はアルツハイマー病の状態の進行の尺度を提供する。適する質のよい生活(qualitative life)の尺度もまた処置をモニターするのに使用し得る。疾患の進行はMRIによってもまたモニターし得る。免疫原特異的抗体およびT細胞応答のアッセイを包含する患者の血液プロファイルもまたモニターし得る。
【0215】
基礎測定後に患者は処置の受領を開始する。彼らを無作為化し、そして盲検化様式で治療薬もしくはプラセボのいずれかで治療する。患者を最低6か月ごとにモニターする。有効性はプラセボ群に関しての処置群の進行の有意の低下により決定する。
【0216】
第二のフェーズII試験は、ときに加齢性記憶障害(AAMI)もしくは軽度認識障害(MCI)と称されるアルツハイマー病の早期の記憶喪失から、ADRDA基準によるように定義されるところのかなり確実なアルツハイマー病までの患者の転換を評価するために実施する。アルツハイマー病への転換の高リスクを伴う患者は、前アルツハイマー病症候学と関連する記憶喪失もしくは他の障害の初期兆候、アルツハイマー病の家族歴、遺伝的危険因子、齢、性別およびアルツハイマー病の高リスクを予測することが見出された他の特徴について参照集団をスクリーニングすることにより非臨床集団から選択する。より正常な集団を評価するために設計された他の測定基準と一緒にMMSEおよびADASを包含する適する測定基準での基礎スコアを収集する。これらの患者集団を、該作用物質を含む代替を投与することに対するプラセボ比較を用いる適する群に分割する。これらの患者集団を約6か月の間隔で経過観察し、そして、各患者のエンドポイントは、彼もしくは彼女が観察期間の終了時にADRDA基準により定義されるところのほぼ確実なアルツハイマー病に転換するかどうかである。
【0217】
前述の発明は理解の明快性の目的上詳細に記述したとは言え、付属として付けられる請求の範囲の範囲内である種の改変を実施してよいことが明らかであろう。本明細書で引用される全部の刊行物および特許文書、ならびに図面および配列表中に出現する本文は、これによりそれぞれがそのように個別に表示されたかのように同一の程度まで全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる。
【0218】
前述から本発明が多数の用途を提供することが明らかであろう。例えば、本発明は、アミロイド原性疾患の処置、予防もしくは診断、またはそれにおける使用のための医薬もしくは診断組成物の製造における上述されたAβに対する抗体のいずれかの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1A−B】マウス12B4(成熟ペプチド、配列番号2)、ヒト化12B4(成熟ペプチド、配列番号6)、Kabat ID 005036(成熟ペプチド、配列番号32)および生殖系列A19(X63397、成熟ペプチド、配列番号30)抗体のL鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。CDR領域は点描しかつ下線を付ける。ヒト→マウス残基の単一逆突然変異は*印により示す。網掛け残基の重要性を説明に示す。第一のメチオニンから番号付けする(Kabatの番号付けではない)。
【図2A−B】マウス12B4(成熟ペプチド、配列番号4)、ヒト化12B4(バージョン1)(成熟ペプチド、配列番号8)、Kabat ID 000333(成熟ペプチド、配列番号34)、ならびに生殖系列VH4−39およびVH4−61抗体(成熟ペプチド、それぞれ配列番号38および36)のH鎖のアミノ酸配列のアライメントを描く。注釈は図1と同一である。第一のメチオニンから番号付けする(Kabatの番号付けではない)。
【図3A−D】キメラ12B4VL(マウス12B4VLに同一の可変領域配列、それぞれ配列番号1および2);生殖系列A19配列(それぞれ配列番号29および30);ならびにKabid ID 005036(それぞれ配列番号31および32)に比較したヒト化12B4VLv1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を描く。
【図4A−D】キメラ12B4VH(マウス12B4VHに同一の可変領域配列、それぞれ配列番号3および4);Kabat ID 000333(それぞれ配列番号33および34);ならびに生殖系列VH4−61(それぞれ配列番号35および36)に比較したヒト化12B4VHv1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を描く。
【図5】キメラ12B4、3D6およびキメラ3D6のAβへの結合(それぞれ図AおよびB)を測定する2回の独立した実験からのELISAの結果をグラフで描く。
【図6】3D6、キメラ3D6および10D5に比較した12B4およびキメラ12B4の機能的活性を確認する競合的ELISA結合をグラフで描く。キメラ12B4(白三角)は、ビオチニル化マウス12B4のAβ1−42ペプチドへの結合について、その非ビオチニル化マウス対蹠物(白逆三角)と等しい効力で競合する。
【図7】PDAPP脳切片上の小グリア細胞によるAβの取り込みを媒介するキメラ12B4、3D6およびヒトIgG1の能力を試験するex vivo貪食作用アッセイをグラフで描く。
【図8】AD脳切片上の小グリア細胞によるAβの取り込みを媒介するキメラ12B4、ヒト化3D6およびヒトIgG1の能力を試験する2回の独立したex vivo貪食作用アッセイからの結果(それぞれ図AおよびB)をグラフで描く。
【図9】ヒト化12B4、バージョン1のPCR媒介性の集成の図解である。
【図9A】VL領域の集成を描く。
【図9B】VH領域の集成を描く。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図5A−5B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示される12B4免疫グロブリンL鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)を含んでなり、かつ、ヒトアクセプター免疫グロブリンL鎖配列からの可変枠組み領域を含んでなるが、但し、少なくとも1個の枠組み残基がマウス12B4 L鎖可変領域配列からの対応するアミノ酸残基で置換され、該枠組み残基が:
(a)抗原を直接非共有結合する残基;
(b)CDRに隣接する残基;
(c)CDRと相互作用する残基;および
(d)VL−VH界面に参画する残基
よりなる群から選択される、ヒト化免疫グロブリンL鎖。
【請求項2】
配列番号4に示される12B4免疫グロブリンH鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)を含んでなり、かつ、ヒトアクセプター免疫グロブリンH鎖からの可変枠組み領域を含んでなるが、但し、最低1個の枠組み残基がマウス12B4 H鎖可変領域配列からの対応するアミノ酸残基で置換され、該枠組み残基が:
(a)抗原を直接非共有結合する残基;
(b)CDRに隣接する残基;
(c)CDRと相互作用する残基;および
(d)VL−VH界面に参画する残基
よりなる群から選択される、ヒト化免疫グロブリンH鎖。
【請求項3】
CDRと相互作用する残基が、12B4 L鎖と最低70%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンL鎖の解明された構造に基づき12B4 L鎖をモデル化することにより同定される、請求項1記載のL鎖。
【請求項4】
CDRと相互作用する残基が、12B4 L鎖と最低80%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンL鎖の解明された構造に基づき12B4 L鎖をモデル化することにより同定される、請求項1記載のL鎖。
【請求項5】
CDRと相互作用する残基が、12B4 L鎖と最低90%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンL鎖の解明された構造に基づき12B4 L鎖をモデル化することにより同定される、請求項1記載のL鎖。
【請求項6】
CDRと相互作用する残基が、12B4 H鎖と最低70%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンH鎖の解明された構造に基づき12B4 H鎖をモデル化することにより同定される、請求項2記載のH鎖。
【請求項7】
CDRと相互作用する残基が、12B4 H鎖と最低80%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンH鎖の解明された構造に基づき12B4 H鎖をモデル化することにより同定される、請求項2記載のH鎖。
【請求項8】
CDRと相互作用する残基が、12B4 H鎖と最低90%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンH鎖の解明された構造に基づき12B4 H鎖をモデル化することにより同定される、請求項2記載のH鎖。
【請求項9】
配列番号2に示される12B4免疫グロブリンL鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)を含んでなり、かつ、ヒトアクセプター免疫グロブリンL鎖配列からの可変枠組み領域を含んでなるが、但し、最低1個の枠組み残基がマウス12B4 L鎖可変領域配列からの対応するアミノ酸残基で置換され、該枠組み残基が該可変領域の三次元モデルの解析により同定されるところのL鎖可変領域のコンホメーションもしくは機能に影響を及ぼすことが可能な残基である、ヒト化免疫グロブリンL鎖。
【請求項10】
配列番号4に示される12B4免疫グロブリンH鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)を含んでなり、かつ、ヒトアクセプター免疫グロブリンH鎖からの可変枠組み領域を含んでなるが、但し、最低1個の枠組み残基がマウス12B4 H鎖可変領域配列からの対応するアミノ酸残基で置換され、該枠組み残基が該可変領域の三次元モデルの解析により同定されるところのH鎖可変領域のコンホメーションもしくは機能に影響を及ぼすことが可能な残基である、ヒト化免疫グロブリンH鎖。
【請求項11】
枠組み残基が、抗原と相互作用することが可能な残基、抗原結合部位に近接の残基、CDRと相互作用することが可能な残基、CDRに隣接する残基、CDR残基の6Å以内の残基、正準残基、補助装置領域残基、鎖間充填残基、稀な残基、および構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基よりなる群から選択される、請求項9記載のL鎖。
【請求項12】
枠組み残基が、抗原と相互作用することが可能な残基、抗原結合部位に近接の残基、CDRと相互作用することが可能な残基、CDRに隣接する残基、CDR残基の6Å以内の残基、正準残基、補助装置領域残基、鎖間充填残基、異常な残基、および構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基よりなる群から選択される、請求項10記載のH鎖。
【請求項13】
枠組み残基が、12B4 L鎖と最低70%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンL鎖の解明された構造に基づき12B4 L鎖をモデル化することにより同定される、請求項9もしくは11記載のL鎖。
【請求項14】
枠組み残基が、12B4 L鎖と最低80%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンL鎖の解明された構造に基づき12B4 L鎖をモデル化することにより同定される、請求項9もしくは11記載のL鎖。
【請求項15】
枠組み残基が、12B4 L鎖と最低90%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンL鎖の解明された構造に基づき12B4 L鎖をモデル化することにより同定される、請求項9もしくは11記載のL鎖。
【請求項16】
枠組み残基が、12B4 H鎖と最低70%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンH鎖の解明された構造に基づき12B4 H鎖をモデル化することにより同定される、請求項10もしくは12記載のH鎖。
【請求項17】
枠組み残基が、12B4 H鎖と最低80%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンH鎖の解明された構造に基づき12B4 H鎖をモデル化することにより同定される、請求項10もしくは12記載のH鎖。
【請求項18】
枠組み残基が、12B4 H鎖と最低90%の配列の同一性を共有するマウス免疫グロブリンH鎖の解明された構造に基づき12B4 H鎖をモデル化することにより同定される、請求項10もしくは12記載のH鎖。
【請求項19】
モノクローナル抗体12B4 L鎖からの相補性決定領域(CDR)および可変領域枠組み残基L2(Kabatの番号付け規約)を含んでなり、残部がヒト免疫グロブリンからであるL鎖。
【請求項20】
モノクローナル抗体12B4 H鎖からの相補性決定領域(CDR)ならびに可変枠組み残基H2、H24、H27、H29、H48、H49、H67、H71およびH78(Kabatの番号付け規約)を含んでなり、残部がヒト免疫グロブリンからであるH鎖。
【請求項21】
モノクローナル抗体12B4 H鎖からの相補性決定領域(CDR)ならびに可変枠組み残基H24、H27、H29およびH71(Kabatの番号付け規約)を含んでなり、残部がヒト免疫グロブリンからであるH鎖。
【請求項22】
モノクローナル抗体12B4 H鎖からの相補性決定領域(CDR)ならびに可変枠組み残基H24、H27、H29、H48、H71およびH78(Kabatの番号付け規約)を含んでなり、残部がヒト免疫グロブリンからであるH鎖。
【請求項23】
先行する請求項のいずれか1つ記載のL鎖、および先行する請求項のいずれか1つ記載のH鎖、もしくは前記免疫グロブリンの抗原結合フラグメントを含んでなるヒト化免疫グロブリン。
【請求項24】
最低10−7Mの結合親和性でβ−アミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項25】
最低10−8Mの結合親和性でβ−アミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項26】
最低10−9Mの結合親和性でβ−アミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項27】
H鎖のアイソタイプがγ1である、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項28】
可溶性β−アミロイドペプチド(Aβ)に結合する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項29】
凝集したβ−アミロイドペプチド(Aβ)に結合する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項30】
β−アミロイドペプチド(Aβ)の残基3−7内のエピトープに結合する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項31】
β−アミロイドペプチド(Aβ)の貪食作用を媒介する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項32】
被験体の血液脳関門を横断する、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項33】
被験体中のβ−アミロイドペプチド(Aβ)斑負荷量を低下させる、請求項23記載の免疫グロブリンもしくは抗原結合フラグメント。
【請求項34】
配列番号2として示される12B4可変L鎖配列の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含んでなるヒト化抗体。
【請求項35】
配列番号4として示される12B4可変H鎖配列の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含んでなるヒト化抗体。
【請求項36】
マウス12B4抗体からの相補性決定領域(CDR)に対応するCDRを含んでなる可変領域を含んでなる、β−アミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合するヒト化抗体もしくはその抗原結合フラグメント。
【請求項37】
Fabフラグメントである、請求項36記載のフラグメント。
【請求項38】
実質的に配列番号2もしくは4に示される可変領域配列を含んでなりかつヒト免疫グロブリンからの定常領域配列を含んでなるキメラ免疫グロブリン。
【請求項39】
有効投薬量の先行する請求項のいずれか1つ記載のヒト化免疫グロブリンを患者に投与することを含んでなる、患者におけるアミロイド原性疾患の予防もしくは治療方法。
【請求項40】
有効投薬量の先行する請求項のいずれか1つ記載のヒト化免疫グロブリンを患者に投与することを含んでなる、患者におけるアルツハイマー病の予防もしくは治療方法。
【請求項41】
ヒト化免疫グロブリンの有効投薬量が1mg/kg体重である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
ヒト化免疫グロブリンの有効投薬量が10mg/kg体重である、請求項40記載の方法。
【請求項43】
先行する請求項のいずれか1つ記載の免疫グロブリンおよび製薬学的担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項44】
配列番号2のアミノ酸43−58、配列番号2のアミノ酸74−80および配列番号2のアミノ酸113−121よりなる群から選択される配列番号2のフラグメントを含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項45】
配列番号2のアミノ酸43−48、配列番号2のアミノ酸74−80および配列番号2のアミノ酸113−121を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項46】
配列番号4のアミノ酸50−56、配列番号4のアミノ酸71−86および配列番号4のアミノ酸118−131よりなる群から選択される配列番号4のフラグメントを含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項47】
配列番号4のアミノ酸50−56、配列番号4のアミノ酸71−86および配列番号4の118−131を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項48】
配列番号2および配列番号6よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項49】
配列番号4、配列番号8、配列番号10および配列番号12よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項50】
最低1個の保存的アミノ酸置換を含んでなり、最低10−7Mの結合親和性でのβ−アミロイドペプチド(Aβ)への特異的結合を導く能力を保持する、請求項48記載のポリペプチドのバリアント。
【請求項51】
最低1個の保存的アミノ酸置換を含んでなり、最低10−7Mの結合親和性でのβ−アミロイドペプチド(Aβ)への特異的結合を導く能力を保持する、請求項49記載のポリペプチドのバリアント。
【請求項52】
配列番号2のアミノ酸残基20−131を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項53】
配列番号4のアミノ酸残基20−142を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項54】
配列番号6のアミノ酸残基21−132を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項55】
配列番号8のアミノ酸残基20−142を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項56】
配列番号10のアミノ酸残基20−142を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項57】
配列番号12のアミノ酸残基20−142を含んでなる単離されたポリペプチド。
【請求項58】
請求項52−57のいずれか1つ記載のポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項59】
先行する請求項のいずれか1つ記載のL鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項60】
先行する請求項のいずれか1つ記載のH鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項61】
先行する請求項のいずれか1つ記載の免疫グロブリンをコードする単離された核酸分子。
【請求項62】
配列番号1および配列番号5よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。
【請求項63】
配列番号3、配列番号7、配列番号9および配列番号11よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。
【請求項64】
先行する請求項のいずれか記載の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項65】
先行する請求項のいずれか記載の核酸分子を含んでなる宿主細胞。
【請求項66】
先行する請求項のいずれか記載の核酸分子によりコードされるポリペプチドを発現するトランスジェニック動物。
【請求項67】
ポリペプチドが前記動物の乳中に発現される、請求項66記載のトランスジェニック動物。
【請求項68】
抗体もしくはフラグメントが産生されるような条件下で請求項51記載の宿主細胞を培養すること、および前記抗体を宿主細胞もしくは培養物から単離することを含んでなる、抗体もしくはそのフラグメントの製造方法。
【請求項69】
抗体もしくはそのフラグメントが産生されるような条件下で該抗体もしくはフラグメントをコードする核酸分子を含んでなる宿主細胞を培養すること、および前記抗体を宿主細胞もしくは培養物から単離することを含んでなる、配列番号2のアミノ酸43−58、配列番号2のアミノ酸74−80および配列番号2のアミノ酸113−121よりなる群から選択される配列番号2のフラグメントを含んでなる前記抗体もしくはそのフラグメントの製造方法。
【請求項70】
抗体もしくはそのフラグメントが産生されるような条件下で該抗体もしくはフラグメントをコードする核酸分子を含んでなる宿主細胞を培養すること、および前記抗体を宿主細胞もしくは培養物から単離することを含んでなる、配列番号4のアミノ酸50−56、配列番号4のアミノ酸71−86および配列番号4のアミノ酸118−131よりなる群から選択される配列番号4のフラグメントを含んでなる前記抗体もしくはそのフラグメントの製造方法。
【請求項71】
解明された免疫グロブリンの構造に基づきマウス12B4可変領域の三次元構造をモデル化すること、および12B4免疫グロブリン可変領域のコンホメーションもしくは機能に影響を及ぼすことが可能な残基について前記モデルを分析して、その結果置換の影響を受けやすい残基が同定されることを含んでなる、ヒト化12B4免疫グロブリン可変枠組み領域中の置換の影響を受けやすい残基の同定方法。
【請求項72】
12B4免疫グロブリン、12B4免疫グロブリン鎖もしくはそれらのドメインの三次元像の製作における配列番号2もしくは配列番号4として示される可変領域配列またはそれらのいずれかの部分の使用。
【請求項73】
Aβに特異的に結合する作用物質を患者に投与すること、およびAβに結合された抗体を検出することを含んでなる、患者の脳中のアミロイド沈着物の画像化方法。
【請求項74】
作用物質が、配列番号2に示されるところのL鎖可変配列、および配列番号4に示されるところのH鎖可変領域配列、もしくは前記抗体の抗原結合フラグメントを含んでなる抗体である、請求項73記載の方法。
【請求項75】
抗原結合フラグメントがFabフラグメントである、請求項73記載の方法。
【請求項76】
アミロイド原性疾患を有する患者に、免疫グロブリン鎖が発現されるような条件下で配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる免疫グロブリンL鎖をコードする核酸分子、および配列番号8のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列もしくは配列番号12のアミノ酸配列を含んでなる免疫グロブリンH鎖をコードする核酸分子を投与してその結果前記患者において有益な治療応答が生成されることを含んでなる、前記アミロイド原性疾患の治療方法。
【請求項77】
有効投薬量の先行する請求項のいずれか1つ記載のヒト化免疫グロブリンを患者に投与することを含んでなる、患者の脳中のAβのアミロイド沈着物を伴う疾患の予防もしくは治療方法。
【請求項78】
疾患が認識障害を特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項79】
疾患がアルツハイマー病である、請求項1記載の方法。
【請求項80】
疾患がダウン症候群である、請求項1記載の方法。
【請求項81】
疾患が軽度認識障害である、請求項1記載の方法。
【請求項82】
抗体がヒトアイソタイプIgG1である、請求項1記載の方法。
【請求項83】
患者がヒトである、先行する請求項のいずれか記載の方法。
【請求項84】
投与後に抗体が患者中のアミロイド沈着物に結合しかつアミロイド沈着物に対する除去応答を誘導する、請求項77〜83のいずれか1つ記載の方法。
【請求項85】
除去応答がFc受容体媒介性の貪食作用応答である、請求項84記載の方法。
【請求項86】
除去応答をモニタリングすることをさらに含んでなる、請求項84もしくは85記載の方法。
【請求項87】
投与後に抗体が患者中の可溶性Aβに結合する、請求項77〜83のいずれか1つ記載の方法。
【請求項88】
投与後に抗体が患者の血清、血液もしくは脳脊髄液中の可溶性Aβに結合する、請求項77〜83のいずれか1つ記載の方法。
【請求項89】
患者が無症候性である、請求項77〜88のいずれか1つ記載の方法。
【請求項90】
患者が年齢50歳以下である、請求項77〜89のいずれか1つ記載の方法。
【請求項91】
患者がアルツハイマー病に対する罹患性を示す遺伝的危険因子を有する、請求項77〜90のいずれか1つ記載の方法。
【請求項92】
抗体の投薬量が最低1mg/kg患者体重である、請求項77〜91のいずれか1つ記載の方法。
【請求項93】
抗体の投薬量が最低10mg/kg患者体重である、請求項77〜91のいずれか1つ記載の方法。
【請求項94】
抗体が製薬学的組成物として担体とともに投与される、請求項77〜93のいずれか1つ記載の方法。
【請求項95】
抗体が、腹腔内で、経口で、鼻内に、皮下に、筋肉内に、局所でもしくは静脈内に投与される、請求項77〜94のいずれか1つ記載の方法。
【請求項96】
有効投薬量の先行する請求項のいずれか1つ記載のヒト化免疫グロブリンを患者に投与することを含んでなる、それの必要な被験体における斑負荷量の低下方法。
【請求項97】
投与後に抗体が患者中のアミロイド沈着物に結合しかつアミロイド沈着物に対する除去応答を誘導する、請求項96記載の方法。
【請求項98】
除去応答がFc受容体媒介性の貪食作用応答である、請求項97記載の方法。
【請求項99】
除去応答をモニタリングすることをさらに含んでなる、請求項97もしくは98記載の方法。
【請求項100】
投与後に抗体が患者中の可溶性Aβに結合する、請求項96記載の方法。
【請求項101】
投与後に抗体が患者の血清、血液もしくは脳脊髄液中の可溶性Aβに結合する、請求項96記載の方法。
【請求項102】
変えられたエフェクター機能を有するFc領域を含んでなる、先行する請求項のいずれか1つ記載のヒト化免疫グロブリン。
【請求項103】
有効用量のβ−アミロイドペプチド(Aβ)のアミノ酸3−7内のエピトープに結合するヒト化抗体を被験体に投与すること(該抗体はIgG1アイソタイプのものである)を含んでなる、それの必要な被験体における神経炎性負荷量の低下方法。
【請求項104】
被験体がアミロイド原性疾患を有する、請求項103記載の方法。
【請求項105】
アミロイド原性疾患がアルツハイマー病である、請求項104記載の方法。
【請求項106】
有効用量の患者中のβ−アミロイドペプチド(Aβ)負荷量および神経炎性ジストロフィーを低下させることが可能なヒト化抗体を患者に投与すること(該抗体はAβのアミノ酸3−7内のエピトープに結合しかつIgG1アイソタイプのものである)を含んでなる、患者におけるアミロイド原性疾患の治療方法。
【請求項107】
アミロイド原性疾患がアルツハイマー病である、請求項106記載の方法。
【請求項108】
有効用量のβ−アミロイドペプチド(Aβ)負荷量および神経炎性ジストロフィーを低下させることが可能なヒト化抗体を哺乳動物に投与すること(該抗体はAβのアミノ酸3−7内のエピトープに結合しかつIgG1アイソタイプのものである)を含んでなる、哺乳動物におけるβ−アミロイドペプチド(Aβ)負荷量および神経炎性ジストロフィーの低下方法。
【請求項109】
哺乳動物がヒトである、請求項108記載の方法。
【請求項110】
哺乳動物がアミロイド原性疾患を有する、請求項108もしくは109記載の方法。
【請求項111】
アミロイド原性疾患がアルツハイマー病である、請求項110記載の方法。
【請求項112】
β−アミロイドペプチド(Aβ)のアミノ酸3−7内のエピトープに結合するIgG1アイソタイプのヒト化抗体(該抗体は被験体における神経炎性負荷量を低下させることが可能である)を含んでなる治療的組成物。
【請求項113】
有効用量の患者中の可溶性β−アミロイドペプチド(Aβ)に結合しかつ神経炎性ジストロフィーを低下させるヒト化抗体を患者に投与すること(該抗体はAβのアミノ酸3−7内のエピトープに結合しかつIgG1アイソタイプのものである)を含んでなる、患者におけるアミロイド原性疾患の治療方法。
【請求項114】
アミロイド原性疾患がアルツハイマー病である、請求項113記載の方法。
【請求項115】
可溶性β−アミロイドペプチド(Aβ)に結合するIgG1アイソタイプのヒト化抗体(該抗体はAβのアミノ酸3−7内のエピトープに結合しかつ被験体における神経炎性負荷量を低下させることが可能である)を含んでなる治療的組成物。

【図6】
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【図7】
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【図8A−8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2006−503549(P2006−503549A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−575912(P2003−575912)
【出願日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/007715
【国際公開番号】WO2003/077858
【国際公開日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
UNIX
【出願人】(501457567)ニユーララブ・リミテツド (5)
【出願人】(598014180)
【Fターム(参考)】