説明

β−アラニンの徐放のための組成物及び方法

筋肉及びその他の組織の無酸素運動能を増加する方法及び組成物を提供する。また、遊離β−アラニンの徐放用に製剤化された組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して製剤学及び生理学の分野に関し、さらに具体的には、遊離β−アラニンの徐放のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然食品サプリメントは一般に、現代のヒト及び動物の食餌で低下した栄養レベルを補うために設計されている。具体的には、有用なサプリメントは、摂取すると、組織の機能を増加する。通常の食餌に肉及び動物製品からしか取得できない栄養の不足が考えられるヒト及び特定クラスの動物(例えば、菜食主義のヒト、及び植物性食餌を摂取するその他の動物)の食餌を補うことは特に重要であろう。
【0003】
加えて、スポーツ及び運動競技界では、運動能力を専門に改善する天然食品サプリメント(レジャー又は職業目的で身体能力を促進又は増強するサプリメントなど)がますます重要になっている。別の例として、無酸素(例えば、乳酸産生性)ストレスは、加齢に伴って経験し得る疲労及び不快感を引き起こす可能性がある。無酸素ストレスはまた、筋肉内圧力の増加(例えば、ロッククライミング中)により局所循環が部分的又は完全に閉塞されるとき、長時間の最大下アイソメトリック・エクササイズによって、或いは、長時間の呼吸停止を含む運動(例えば、フリーダイビング又はシンクロナイズドスイミング)によっても起こりうる。過剰な乳酸の産生により細胞内環境の酸性化が起こる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの研究から、β−アラニン又はβ−アラニンの生物学的供給源(例えばカルノシン)の補充投与後、筋肉内でカモシンが有意に増加することが明らかにされた。しかし、このような投与に好ましい投薬スケジュール(すなわち、毎日8回)は、コンプライアンスの課題及び感覚異常を含む問題を招く。したがって、コンプライアンスを高め、しかも感覚異常事象を減少するために、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を徐放性製剤中に含む、改善されたサプリメントについてのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
2〜6グラムの遊離β−アラニンのボーラス単回用量(又は、化学的に等量の、β−アラニンの生物学的供給源である化合物、例えばカルノシン)を投与すると、感覚異常、すなわち、焼けるような、刺すような、又は「チクチクする」感覚などの異常な感覚を含む症状を伴う重大な副作用を引き起こす。直接又はβ−アラニンの生物学的供給源として作用しうる化合物からの遊離β−アラニンの徐放は、β−アラニンの血漿濃度の上昇を軽減することによって重度の副作用を未然に回避し、筋肉内におけるカルノシン生合成を安全かつ効率的に増加し、無酸素活動中の代謝性アシドーシス及び筋肉疲労を軽減する手段を提供することができる。
【0006】
本明細書中に、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源の徐放のための組成物及び方法を提供する。一実施形態では、上記組成物は、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源と、許容される担体とを含む医薬組成物であり、該組成物は遊離β−アラニンの徐放用に製剤化されている。別の実施形態では、上記組成物は、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む食用サプリメントである。
【0007】
また、筋肉及びその他の組織の無酸素運動能を増加する方法を提供する。このような方法は、遊離β−アラニンの徐放用に製剤化された組成物を用意し、筋肉又はその他の組織におけるカルノシンの合成を増加するのに有効な量で遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を投与することを含む。
【0008】
遊離β−アラニンの徐放用に製剤化された、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、経口投与できる錠剤、カプセル剤、又はマイクロビーズである。別の実施形態では、医薬組成物は、遊離β−アラニンの徐放用に製剤化された皮膚パッチ又は局所皮膚用化合物である。医薬組成物はヒト用に製剤化することができる。
【0009】
遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む食用サプリメントが提供される。一実施形態では、食用サプリメントはエネルギーバー、食用懸濁体又はその他の食品である。食用サプリメントはヒト用に製剤化することができる。
【0010】
医薬組成物は、約0.1〜200.0;約1.0〜9.0;約2.0〜8.0;約3.0〜7.0;若しくは約4.0〜6.0グラム(g)の遊離β−アラニン又はこれと等量のその生物学的供給源を含むことができる。医薬組成物はヒト用に製剤化することができ、約0.1〜200.0;約1.0〜9.0;約2.0〜8.0;約3.0〜7.0;若しくは約4.0〜6.0gの遊離β−アラニン又はこれと等量のその生体供給源を含むことができる。
【0011】
食用サプリメントは、約0.1〜200.0;約1.0〜9.0;約2.0〜8.0;約3.0〜7.0;若しくは約4.0〜6.0gの遊離β−アラニン又はこれと等量のその生物学的供給源を含むことができる。食用サプリメントは、ヒト用に製剤化することができ、約0.1〜200.0;約1.0〜9.0;約2.0〜8.0;約3.0〜7.0;若しくは約4.0〜6.0gの遊離β−アラニン又はこれと等量のその生物学的供給源を含むことができる。一実施形態において、食用サプリメントはエネルギーバー、食用懸濁液又はその他の食品である。一態様において、食用サプリメントは複数の供給分(serving)を含み、1供給分につき0.1〜10.0gのβ−アラニン又はこれと等量のその生物学的供給源を含む。食用サプリメントに含まれる遊離β−アラニンの総用量又はその生物学的供給源の等量は、約0.1〜200.0;約1.0〜8.0;約3.0〜7.0;若しくは約4.0〜6.0gの遊離β−アラニン、又はこれと等量のその生物学的供給源でよい。
【0012】
また、本発明では、医薬組成物に含まれる遊離β−アラニン又はこれと等量のその生物学的供給源の徐放用製剤も提供する。一態様では、遊離β−アラニン又はこれと等量のその生物学的供給源を含む医薬組成物を徐放用に製剤化し、錠剤、ゲル、又はマイクロビーズの形態で経口投与することができる。別の態様では、医薬組成物は、例えば、皮膚からの遊離β−アラニンの徐放用に製剤化されたヒドロゲルなどの局所皮膚製剤である。
【0013】
特定の作用機構に限定されるわけではないが、本明細書では、筋肉及びその他の組織の無酸素運動能を増加するための方法及び組成物を提供する。本明細書に開示される方法及び組成物は、β−アラニンが利用可能であることから、身体の組織内にカルノシンの蓄積をもたらす。本方法は、身体への徐放用に製剤化された遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む組成物を摂取又は注入することを含む。一態様では、本組成物は、ヒト及び動物組織におけるβ−アラニルヒスチジンペプチド(例えばカルノシン)の蓄積を増加することができる化合物の混合物である。この組成物は、身体に導入すると、ヒト又は動物の身体におけるβ−アラニルヒスチジンペプチドの合成及び蓄積を誘発することができる。
【0014】
本明細書に提供する組成物は、例えば、飲料、食用懸濁体若しくは食品を含む食用サプリメント、又はヒト若しくは動物用の医薬組成物の調製に用いることができる。本発明の組成物は、本発明の方法のいずれかに用いることができる。
【0015】
一態様では、組織の無酸素運動能を増加するための方法が提供される。この方法は、組織におけるカルノシン合成を増加するのに有効な量で遊離β−アラニンを血液又は血漿に供給するステップを含む。本明細書において組織と称するものは、骨格筋であり得る。
【0016】
したがって、例示的な一態様において、本発明はカルノシン生合成の増加によって筋肉組織の無酸素運動能を増加するために、医薬組成物又は食用サプリメントに含まれる遊離β−アラニンの徐放のための組成物及び方法を提供する。
【0017】
別途記載のない限り、本明細書で用いる技術及び科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に用いることもできるが、適切な方法及び材料は以下に記載する通りである。さらに、材料、方法、及び実施例は、例示であり、限定を意図するものではない。本明細書に挙げるすべての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、その全文を参照により本明細書に組み込むものとする。抵触の場合には、本明細書(定義を含む)に基づくものとする。
【0018】
本発明の1以上の実施形態の詳細を添付の図面及び以下の説明に記載する。本発明のその他の特徴、目的及び利点は、図面及び詳細な説明、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0019】
各図面において同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、遊離β−アラニンの徐放用の組成物を提供する。また、本明細書では、組織における、β−アラニルヒスチジンペプチド、特にカルノシンの合成を増加するのに有効な量で遊離β−アラニンを血液又は血漿に供給することにより、組織の無酸素運動能を増加する方法を提供する。β−アラニルヒスチジンペプチドとしては、β−アラニンのペプチド、例えば、カルノシン、アンセリン及びバレニンなどが挙げられる。遊離β−アラニンの徐放は、感覚異常などの好ましくない副作用を防止する上で望ましい。
【0021】
本明細書に開示されるβ−アラニン含有組成物はいずれも、組成物中唯一の薬学的に活性な成分として製剤化することができ、また、β−アラニンを他の活性成分と併用及び/又は共投与してもよい。例えば、別の活性成分は、カルノシン生合成を増加することにより、激しい運動中に発生する代謝性アシドーシスを軽減して、無酸素運動中の疲労の開始を遅らせるのに有益であることが一般技術で知られる別の薬剤でもよい。加えて、製剤の運動量増加効果を増強することから、クレアチンとの併用が望ましい。さらに、活性材料は、所望の作用を損なわない他の活性材料と、又は所望の作用を補助する材料(例えば、制酸剤、H2ブロッカー、及び利尿剤など)と混合することができる。
【0022】
本明細書で用いる「共投与」とは、臨床結果を改善するために、協調治療の過程で、2以上の治療薬を投与することを意味する。このような共投与は同時期でもよい;すなわち、重複した期間の間に行ってもよい。
【0023】
A.β−アラニンと筋肉
β−アラニンとL-ヒスチジン、及びそれらのメチル化類似体は、ヒト又は動物の体内でジペプチドを形成する。β−アラニンとヒスチジンから生成されるジペプチドには、カルノシン(β−アラニル-L-ヒスチジン)、アンセリン(β−アラニル-L-1-メチルヒスチジン)、又はバレニン(β−アラニル-L-3-メチルヒスチジン)など(本明細書では「β−アラニルヒスチジンペプチド」と総称する)がある。β−アラニルヒスチジンペプチドは、筋肉収縮の間の細胞内pHホメオスタシスの調節に関与し、したがって、筋肉疲労の進行に関与している。β−アラニルヒスチジンペプチドは、細胞内にpH感受性ヒスチジン残基を蓄積する効果的な手段を提供する。したがって、筋肉β−アラニルヒスチジンペプチド濃度の変動は筋肉の無酸素運動能に影響を与え、筋肉内のβ−アラニルヒスチジンペプチドが増加すると、筋肉が実行できる動作及び運動量に有利に影響する。
【0024】
β−アラニンとL-ヒスチジンは、体内で産生するか、又は食餌を介して利用可能になる。体内では、β−アラニンは筋肉などの組織に輸送される。一般的な給餌状態で、筋肉内のβ−アラニンの濃度は、L-ヒスチジンの濃度と比較して低いため、β−アラニンの濃度はβ−アラニルヒスチジンペプチドの合成を制限すると考えられる。ヒト又は動物の体内におけるβ−アラニルヒスチジンペプチドの合成及び蓄積は、β−アラニンの血液又は血漿濃度を増加することによって、β−アラニンとクレアチンの血液又は血漿濃度を増加することによって、或いは、β−アラニン、L-ヒスチジン及びクレアチン(すなわち、N-(アミノイミノメチル)-N-グリシン、N-アミジノサルコシン、N-メチル-N-グアニルグリシン、若しくはメチルグリコシアミン)の血液又は血漿濃度を増加することによって、増加することができる。
【0025】
持続的な激しい運動、又は局所低酸素の条件下で持続される運動の間、解糖中に形成されるヒドロニウムイオンの蓄積、及び嫌気的代謝による乳酸の蓄積は、細胞内pHを著しく低下することができる。pHが低下すると、クレアチン−ホスホリルクレアチン系の機能を害する恐れがある。また、細胞内pHの低下は、筋肉繊維の収縮性タンパク質の機能など、細胞内の他の機能に影響を及ぼしうる。個体にβ−アラニンを投与すると、筋肉β−アラニルヒスチジンペプチドレベルを高め、筋肉の総運動能を増加させる。加えて、β−アラニンの常用的な食餌補給は、筋肉β−アラニルヒスチジンペプチド濃度を増加し、その結果、筋肉内緩衝能を増加することができる。
【0026】
β−アラニン又はβ−アラニンの生物学的供給源である化合物(例えば、カルノシン、アンセリン、若しくはバラニン、並びにその塩及び化学誘導体)の供給は、β−アラニルヒスチジンペプチド生合成を増加することにより、激しい運動中に発生する代謝性アシドーシスを軽減し、その結果、無酸素運動中の疲労の開始を遅延させる有効な手段である。本明細書においてβ−アラニンの生物学的供給源である化合物とは、いずれかの経路(例えば、非経口、経口、局所)で体内に投与すると、1以上の化学又は酵素触媒反応ステップによりβ−アラニンに変換され、その後、該β−アラニンが血液、血漿若しくは血清中に現れ、筋肉及びその他の組織への取込みに利用可能になる化合物として定義される。
【0027】
組成物に含まれる遊離β−アラニンは、β−アラニン又はその類似体のあらゆる活性形態(例えば、エステル又は塩)で存在してもよい。組成物の遊離β−アラニン内容物を超微粉砕処理(例えば破砕、粉砕、粉末化など)に付した後、医薬組成物に組み込むことにより、得られる組成物の質感が、許容できないほど「ざらざら」にならないようにすることができる。
【0028】
B.医薬組成物
本明細書に提供される組成物は、徐放用に製剤化された、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源と薬学的に許容される担体との組合せを含む。送達の一様式は経口であるが、本発明の組成物の他の送達様式を用いることもできる。このようなものとして、粘膜送達、鼻内送達、眼からの送達、経皮送達、非経口送達、膣内送達、直腸送達、並びに子宮内送達が挙げられる。この組成物は、液体、半液体又は固体のいずれの形態でもよく、意図する投与経路に適した様式で製剤化することができる。
【0029】
典型的には、本明細書に記載の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む組成物は、当該技術分野で周知の技術及び手順を用いて、医薬組成物に製剤化することができる。例えば、Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第4版、1985、第126頁を参照されたい。遊離β−アラニン又はその生物学的供給源の投与に適した製薬担体又はビヒクルとして、特定の投与様式に適した当業者に公知の担体のいずれも包含される。
【0030】
適切な量の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む製剤として、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、粒剤、滅菌非経口溶液又は懸濁液、経口溶液又は懸濁液、水中油型乳剤、並びに、インプラント及びマイクロカプセル化送達系、及び、生物分解性、生体適合性ポリマー(コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸など)が挙げられる。これらの組成物を調製する方法は、当業者に公知である。
【0031】
経口送達用の製剤として、例えば、錠剤、カプセル剤、粒剤、及びバルク粉末を挙げることができる。経口錠剤の類型には、圧縮した、チュアブルタイプのトローチ剤及び腸溶コーティング、糖コーティング又はフィルムコーティングを施しうる錠剤などが挙げられる。カプセルは、硬質又は軟質ゼラチンカプセルであることができ、粒剤及び粉末剤は、当業者に公知の別の成分を併用した非発泡性又は発泡性形態で提供することができる。例として、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源は、例えば、炭酸プロピレン、植物油又はトリグリセリドに懸濁させてもよいし、ゼラチンカプセルに封入してもよい。このような溶液、並びにその調製及びカプセル化については、例えば、米国特許第4,328,245号;第4,409,239号;第4,410,545号に開示されている。
【0032】
例として、腸溶コーティング錠剤は、腸溶性コーティングによって、胃酸の作用に耐性であり、中性又はアルカリ性の腸内で溶解又は崩壊し;糖衣錠は、異なる薬学的に許容される物質の層が被覆された圧縮型錠剤であり;フィルムコーティング錠は、ポリマー又はその他の適当なコーティングが施された圧縮型錠剤であり;多重圧縮型錠剤は、既に既述した薬学的に許容される物質を用いて、2回以上の圧縮サイクルにより製造された圧縮型錠剤である。これら錠剤製剤のいずれも、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を送達するのに適当である。
【0033】
遊離β−アラニン又はその生物学的供給源は、液体の形態で経口投与してもよい。経口送達用の液体製剤としては、水溶液(例えば、エリキシル剤及びシロップ剤)、乳剤、懸濁液、溶液及び/又は懸濁液などが挙げられる。エリキシル剤は透明の、甘味を加えたヒドロアルコール製剤であり、エリキシル剤に用いる薬学的に許容される担体は一般に溶剤を含む。シロップ剤は、糖、例えば、ショ糖の濃縮水溶液であり、これに防腐剤を含有させてもよい。乳剤は、1種の液体が小球の形態で別の液体全体に分散している二相系である。乳剤に用いられる薬学的に許容される担体は、非水性液体、乳化剤及び防腐剤である。懸濁液には、薬学的に許容される懸濁剤及び防腐剤を用いる。
【0034】
溶液又は懸濁液の調製のために、例えば、水、或いは、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1,2-プロピレングリコール、ポリグリコール及びそれらの誘導体、脂肪族アルコール、グリセロールの部分エステル)、油(例:ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、アーモンド油、ヒマワリ油、ダイズ油、若しくはヒマシ油)、パラフィン、ジメチルスルホキシド、トリグリセリドなどの生理学的に許容される有機溶剤を用いることができる。液体製剤の場合には、安定化剤又は可溶化剤として次の物質を用いてもよい:2〜4個の炭素原子を有する低級脂肪族一価又は多価アルコール(エタノール、n-プロパノール、グリセロールなど)、分子量が200〜600のポリエチレングリコール(例えば、1〜40%水溶液)、アカシアガム、グアーガム、又はヒドロコロイドから選択されるその他の懸濁剤。
【0035】
経口送達用の液体製剤に加え、経口以外の(例えば、非経口、皮内、皮下、又は局所)送達に用いられる溶液又は懸濁液として、次の成分のいずれかを含むことができる:滅菌希釈剤(水、塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミド又はその他の合成溶剤など);抗菌剤(ベンジルアルコール及びメチルパラベンなど);酸化防止剤(アスコルビン酸及び亜硫酸水素ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩など);並びに張性の調節剤(塩化ナトリウム若しくはデキストロースなど)。非経口製剤は、ガラス、プラスチック又はその他の適当な材料からなるアンプル、使い捨て注射器又は単回若しくは複数回用量のバイアルに封入することができる。
【0036】
遊離β−アラニン又はその生物学的供給源が呈示する溶解度が不十分な場合には、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を可溶化する方法を用いてもよい。このような方法は当業者には公知であり、限定するものではないが、助溶剤(ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミドなど)の使用、TWEEN(登録商標)などの界面活性剤の使用、又はβ−アラニンの炭酸水素ナトリウム水溶液への溶解が挙げられる。
【0037】
一実施形態では、β−アラニン又はその生物学的供給源をヒト又は動物への送達用のリポソーム懸濁液(例えば、組織標的化リポソーム)中で製剤化することができる。リポソーム懸濁液は当業者には公知の方法に従い調製することができる。例えば、米国特許第4,522,811号を参照されたい。手短には、卵ホスファチジルコリンと脳ホスファチジルセリンとを(例えば、7:3のモル比で)フラスコ内部で乾燥させることにより、多重膜ビヒクル(MLV)などのリポソームを形成することができる。二価カチオンを欠くリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のβ−アラニン又はその生物学的供給源の溶液を添加し、脂質膜が分散するまでフラスコを振盪する。得られたビヒクルを洗浄して、封入されていないβ−アラニンを除去し、遠心分離によりペレット化した後、PBS中に再懸濁する。
【0038】
薬学的に許容される担体は当分野において公知であり、その選択は通常、意図する送達経路に依存する。本明細書に提供する組成物及び方法による固体及び水性分散液に有用な担体の例として、限定するものではないが、次のものが挙げられる:水溶性ポリマー(グアーガム、グルコマンナン、オオバコ、アカシアガム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、及びその他のセルロースエーテル(メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなど)。液体組成物用の別の担体として、例えば、水、塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどが挙げられる。
【0039】
β−アラニン又はその生物学的供給源と一緒に、組成物は任意数の追加の成分を含んでもよい。例えば、β−アラニンを含む組成物は、以下に挙げるものを含むことができる:希釈剤(乳糖、ショ糖、リン酸二カルシウム又はカルボキシメチルセルロースなど);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びタルクなど);及び/又は結合剤(デンプン、天然ゴム(例えばアカシアゼラチンガム)など)、グルコース、廃糖蜜、ポリビニルピロリジン、セルロース及びその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、並びに当業者に公知の他の結合剤。本発明の組成物はさらに、崩壊剤、着色剤(例えば、認可及び保証された水溶性FD&C染料のいずれか)、香味剤、及び湿潤剤を含むことができる。香味剤及び甘味剤は、防腐剤、安定化剤、緩衝物質及び酸化防止剤と同様に有用である。
【0040】
本明細書に開示する医薬組成物はまた、別の物質、例えば、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤など(例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、並びに他の類似薬剤)を含んでもよい。溶剤として、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール及びシロップ;防腐剤の例として、グリセリン、メチル及びプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム及びアルコール;乳剤に用いられる非水性液体の例として、鉱油及び綿実油;乳化剤の例として、ゼラチン、アカシアガム、トラガカントガム、ベントナイト、及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどの界面活性剤;懸濁剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカントガム、ビーガム及びアカシアガム;甘味剤として、ショ糖、シロップ、グリセリン、及びサッカリンなどの人工甘味剤;並びに湿潤剤として、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、ジモノラウリン酸ジエチレングリコール及びポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0041】
薬学的に投与可能な液体組成物は、例えば、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源と随意の医薬アジュバントとを担体(例えば、水、塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなど)に溶解、分散、もしくは混合することによって、溶液又は懸濁液を形成させることにより調製することができる。加えて、錠剤及びカプセル製剤は、活性成分の溶解を改変又は持続するために、当業者に公知のようにコーティングしてもよい。したがって、例えば、これらを慣用のコーティング(フェニルサリチレート、蝋及び酢酸フタル酸セルロース)、又は胃の中でその完全性を維持し、β−アラニンの徐放を提供する別の腸溶性コーティングで被覆してもよい。医薬組成物の調製方法は当業者に公知であるか、又は明らかであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa.,1975年第15版)を参照されたい。
【0042】
C.徐放性製剤
本明細書に記載する遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む組成物に好ましい製剤は徐放性製剤である。本発明の目的のために、次の用語は、「徐放」と実質的に同等であるとみなしてよい:連続的放出、制御放出、遅延放出、デポー、漸進的放出、長期的放出、プログラムされた放出、延長された放出、比例放出、遷延性放出、持続性、遅滞、緩効性放出、分散放出、時間コーティング、タイミング放出(timed release)、遅延作用、延長作用、多層時間作用(layered time action)、長期作用、延長作用、反復作用、緩効作用、持続作用、持続作用性投薬、並びに延長放出。これら用語についてのさらなる議論は、Lesczek Krowczynski, Extended-Release Dosage Forms, 1987 (CRC Press, Inc.)中で見出すことができる。
【0043】
本明細書に開示する組成物中の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源の濃度は、筋肉及びその他の組織におけるβ−アラニルヒスチジンペプチド、特にカルノシンの合成を増加するのに有効な量で遊離β−アラニンを血液又は血漿に供給することにより、組織の無酸素運動能を増加する上で有効である。β−アラニンの徐放性製剤は、激しい運動中に発生する代謝性アシドーシスを軽減し、それにより、感覚異常の症状を誘発せずに、無酸素運動中の疲労の開始を遅らせるのに有効な量で投与する。
【0044】
医薬組成物中の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源の濃度は、具体的な製剤、吸収速度、β−アラニンの不活性化及び排出速度、β−アラニンの物理化学的特徴、及び投与スケジュール、並びに当業者に公知の他の要因に左右される。しかし、意図する組成物は、0.001%〜100%の(例えば、0.1〜85%又は75〜95%の)遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含んでもよい。
【0045】
遊離β−アラニン又はその生物学的供給源は、望ましくない副作用なく、治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で、薬学的に許容される担体に含まれる。治療上有効な濃度は、本明細書に記載するようなin vitro及びin vivo系でβ−アラニンの量を試験し、次にヒトへの用量についてそこから推論することにより、経験的に決定することができる。
【0046】
典型的には、治療に有効な用量は、筋肉又はその他の組織に対し、約0.1μg/ml〜約50〜100μg/mlのβ−アラニン又はこれと等量のその生物学的供給源の血液、血漿若しくは血清濃度を生じるものとする。医薬組成物は、一般に、1日につき体重1kg当たり約0.001mg〜約2,000mg用量のβ−アラニンを供給するものとする。医薬単位投与剤形は、1単位投与剤形当たり約1mg〜約10,000mg(約10〜約5,000mg)のβ−アラニンを供給するように調製する。
【0047】
遊離β−アラニン用量は、体重1kg当たり約1ミリグラム(mg)〜約200mgであることができ、或いは、その生物学的供給源(例えば、β−アラニンのペプチド(例えばカルノシン))の用量は、体重1kg当たり約2.5mg〜約500mgであることができる。例として、体重80kgの人に好適な1日当たりの制御放出用量は、0.08グラム〜16.0グラムの遊離β−アラニン又はこれと等量のβ−アラニンの生物学的供給源であることができる。一態様では、1日当たり制御放出用量で投与される遊離β−アラニンの総量は、ヒトの場合、1日当たり少なくとも200mg 、200mg〜5g、5g〜10g、若しくは5g〜16g又はそれ以上であることができる。活性成分、例えば、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源の単回用量は、約200、400、800、1,600、3,200、6,400mg又はそれ以上の量になるように製剤化することができる。
【0048】
ヒト及び動物の場合、本明細書に開示した組成物は、例えば、(a)1%〜99重量%の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源、及び0%〜98重量%の水;(b)1%〜98重量%の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源、及び0%〜97重量%の水;(c)1%〜20重量%の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源、9%〜99重量%のグルコース若しくはその他の単純炭水化物、及び0%〜60重量%の水;或いは(d)1%〜20重量%の遊離β−アラニン又は1%〜20重量%のβ−アラニンのペプチド、9%〜99重量%のグルコース若しくはその他の単純炭水化物及び0%〜60重量%の水であることができる。
【0049】
β−アラニンの特定の用量を単回用量で投与してもよいし、或いは、複数の少用量に分割し、特定の時間間隔で投与してもよい。濃度及び用量の値も、軽減しようとする症状の重症度に応じて変動しうることに留意すべきである。さらに、特定の被検者によっては、個々のニーズ、及び組成物を投与する又は組成物の投与を指示する人の専門的判断に従って、具体的な投薬計画を長期にわたり調整すべきであること、及び、本明細書に記載する濃度は、例として挙げるにすぎず、本発明に係る組成物の範囲若しくは実施を限定する意図ではないことを理解されたい。
【0050】
薬学的に治療上活性な遊離β−アラニン、β−アラニンの生物学的供給源、及びその誘導体、類似体若しくはコンジュゲートは、一般に、単位投与剤形又は複数回投与剤形に製剤化され、投与される。本明細書で用いる「単位投与剤形」とは、ヒト及び動物被検体に適した物理的に個別の単位であって、当分野で公知のように個々にパッケージングされたものを指す。各単位用量は、必要な製薬担体、ビヒクル若しくは希釈剤と共同して、所望の治療効果を生成するのに十分な規定量の治療上活性なβ−アラニンを含む。単位投与剤形は、分割して、又は複数投与してもよい。複数回投与剤形は、一般に、単一容器中にパッケージングされた、分離した単位投与剤形で投与されるべき複数の同一の単位投与剤形である。単位投与剤形の例として、アンプル及び注射器、個々にパッケージングされた錠剤若しくはカプセル剤が挙げられ、複数回投与剤形の例としては、バイアル、錠剤若しくはカプセル剤のボトル、並びにパイント若しくはガロン単位のボトルが挙げられる。
【0051】
本明細書で用いる「徐放」とは、多数の延長放出剤形のいずれか一つを意味しうる。多様な徐放技術は、非常に広い範囲の薬剤剤形に及ぶ。徐放技術として、限定するものではないが、物理系及び化学系が挙げられる。
【0052】
物理系としては、限定するわけではないが、以下のものが挙げられる:速度制御膜を用いるレザバー系(reservoir system)、例えば、カプセル化(例えばマイクロ及びマクロ)及び膜系;速度制御膜を用いないレザバー系(中空繊維、超微孔質三酢酸セルロース、並びに多孔質ポリマー基質及び発泡体など);モノリシック系(非多孔、ポリマー又はエラストマーマトリックス(例えば非浸食性、浸食性、環境要因移入(environment agent ingression)及び分解性)に物理的に溶解する系及び非多孔、ポリマー又はエラストマー基質(例えば非浸食性、浸食性、環境要因移入及び分解性)に物理的に分散した材料を含む);層状構造(外側制御層と化学的に類似した又は非類似のレザバー層を含む);並びにその他の物理的方法(浸透圧ポンプ又はイオン交換樹脂への吸着など)。
【0053】
化学系としては、限定するわけではないが、ポリマーマトリックスの化学的浸食(例えば不均質又は均質浸食)又はポリマーマトリックスの生物学的浸食(例えば不均質又は均質)が挙げられる。また、「Controlled Release Systems:Fabrication Technology」 第2巻、第3章;ページ41〜60;「Gels For Drug Delivery」、Haieh, D.編に記載されているように、ヒドロゲルを用いてもよい。
【0054】
多数の徐放性製剤が開発されている。これらの製剤として、限定するわけではないが、以下のものが挙げられる:マイクロカプセル化粉末;浸透圧制御型胃腸送達系;流体力学的圧力制御型胃腸送達系;膜透過制御型胃腸送達系(微孔性膜透過制御型胃腸送達デバイスを含む);ゲル拡散制御型胃腸送達系;並びに、イオン交換制御型胃腸送達系(カチオン及びアニオン薬剤を含む)。一実施形態では、徐放系は、油−マイクロカプセル化徐放粉末剤形であり、これを液体と混合して、混合飲料として摂取することができる。また、Rohm Hass(Philadelphia, PA)により開発された徐放性製剤、並びに、徐放性製剤を開示する代表的な米国特許(例えば、米国特許第6,696,500号;第6,756,049号;第6,919,372号;第6,992,065号;及び第7,048,947号)も参照されたい。
【0055】
さらに、慣用の医薬結合剤、賦形剤及び添加剤の多くは、十分な量用いると、徐放性ポリマーとして作用し、徐放効果を生み出すことができる。これらの例を以下に挙げるが、これらに限定されるわけではない:ゼラチン、粗糖若しくは乳糖などの天然糖、レシチン、粘液、植物ゴム、ペクチン若しくはペクチン誘導体、藻類多糖、グルコマンナン、寒天及びリグニン、グアーガム、ローストビーンガム、アカシアガム、キサンタンガム、カラジーナンガム、カラヤガム、トラガカントガム、ガティガム、デンプン(例えばコーンスターチ若しくはアミロース)、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、アラビアガム、アルギン酸、チロース、タルク、セキショウシ、シリカゲル(例えばコロイド状)、セルロース及びセルロース誘導体(例えばセルロースエーテル、低級飽和脂肪族アルコール及び/又は低級飽和脂肪族オキシアルコールでセルロースヒドロキシ基が部分的にエーテル化されたセルロースエーテル;例えば、メチルオキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、高分子量ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カルボキシメチル−セルロース、低分子量ヒドロキシプロピルメチルセルロース、中粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルキルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース(低、中若しくは高分子量)、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、三酢酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オルヒドロキシプロピルメチルセルロース)、脂肪酸、ならびに炭素数12〜22の脂肪酸のマグネシウム、カルシウム若しくはアルミニウム塩、特に飽和脂肪酸(例えば、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸塩)、多カルボン酸、乳化剤、油及び脂肪、特に植物性(例えばピーナッツ油、ヒマシ油、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、コムギ胚芽油、ヒマワリ種子油、タラ肝油、各々随意に水和される);飽和脂肪酸のグリセロールエステル及びポリグリセロールエステル(例えばC12H24O2〜C18H36O2)並びにそれらの混合物(ここで、グリセロールヒドロキシ基を完全にもしくは部分的にエステル化してもよい(例えばモノ−、ジ−及びトリグリセリド));マイクロカプセル化に適した高融点水素化植物油;薬学的に許容される一価又は多価アルコール、及びポリエチレングリコールなどのポリグリコール、並びにそれらの誘導体、脂肪族飽和又は不飽和脂肪酸(例えば炭素数2〜22、例えば10〜18)と一価脂肪族アルコール(例えば炭素数1〜20)又は多価アルコール(グリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ペンタクリストリトール、ソルビトール、マンニトールなど)とのエステル(これらは随意にエーテル化してもよい)、クエン酸と第一級アルコール、酢酸、尿素、安息香酸ベンジル、ジオキソラン、グリセロホルムアルデヒド(glyceroformal)、テトラヒドロフルフリルアルコールとのエステル;C1〜C12アルコールとのポリグリコールエーテル、ジメチルアセトアミド、ラクタミド、ラクタート、炭酸エチル、シリコーン(例えば中粘度ポリジメチルシルオキサン)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなど。
【0056】
加えて、コーティング剤を用いて、医薬組成物の徐放特性を創造又は増強することもできる。例えば、コーティング剤として有用な可塑剤として、限定するわけではないが、以下のものが挙げられる:クエン酸及び酒石酸エステル(アセチル−トリエチルシトレート、アセチルトリブチル−、トリブチル−、トリエチル−シトレート);グリセロール及びグリセロールエステル(グリセロールジアセテート、−トリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ヒマシ油);フタル酸エステル(ジブチル−、ジアミル−、ジエチル−、ジメチル−、ジプロピル−フタレート)、ジ−(2-メトキシ-又は2-エトキシエチル)-フタレート、エチルフタリルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート及びブチルグリコレート;アルコール(様々な鎖長のプロピレングリコール、ポリエチレングリコール);アジピン酸エステル(ジエチルアジペート、ジ(2-メトキシ-又は2-エトキシエチル)-アジペート);ベンゾフェノン;ジエチル−及びジブチルセバケート;ジブチルスクシネート;ジブチルタルトレート;ジエチレングリコールジプロピオネート;エチレングリコールジアセテート、−ジブチレート、−ジプロピオネート;リン酸トリブチル、トリブチリン;ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート;Polysorbar 50などのポリソルベート;及びソルビタンモノオレエート。
【0057】
徐放性医薬組成物を製造する方法は当分野では公知である。例えば、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのコーティング剤を一緒に混合し、流動床造粒機中でβ−アラニン又はその生物学的供給源に噴霧する。徐放性医薬組成物を製造する別の方法では、エチルセルロースなどのセルロースエーテルと、高温融解植物油(例えば、最大ヨウ素価が約5で、融点が約145°F)との混合物を用いる。この混合物は垂直又は水平強力ミキサー又はブレンダーで処理することができる。このミキサー又はブレンダーは、ジャケットを備え、これによって湯浴がミキサーの周囲を循環し、油の温度を融点まで上昇させることができる。次に、粉末化β−アラニン又はその生物学的供給源を溶融油と混合し、完全な被覆を達成した(約5〜10分)後、冷却し、粒子にエチルセルロースを噴霧する。仕上げられた生成物は、マイクロカプセル化された、フリーフロー型の徐放性粉末であり、徐放性プロフィールを有する。さらに、カプセル化生物活性物質の制御放出を記載している方法については、米国特許第6,835,397号;第6,013,286号;及び第5,190,775号を参照されたい。
【0058】
本組成物では、有効な濃度の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を好適な製薬担体又はビヒクルと混合する。遊離β−アラニン又はその生物学的供給源は、当分野で公知のように、製剤化の前に、対応する塩、エステル、エノールエーテル若しくはエステル、酸、塩基、溶媒化合物、水和物又はプロドラッグとして誘導体化してもよい。
【0059】
D.食用サプリメント
遊離β−アラニン又はその生物学的供給源の徐放用に製剤化された食用サプリメントを提供する。食用サプリメントには、食品又は液体製品が含まれうる。
【0060】
1.固形食品
食品として製剤化される食用サプリメントは、固形又は食用懸濁体であることができる。固形食品としては、チュアブル若しくは食用バー、クッキー、ビスケット、トローチ、チューイングガム、又は食用懸濁体などを挙げることができる。一実施形態では、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む食用サプリメントは、ガラクトース物質を含む高エネルギー多糖類食用バーの形態をした固形食品である。
【0061】
一実施形態では、食用バーは、3〜37%重量/重量(w/w)のガラクトースを含む糖類成分と、0.1〜75%w/wの遊離β−アラニン又はその生物学的供給源と、アミノ酸、炭水化物、繊維及び脂肪、並びにクレアチン及びβ−アラニルヒスチジンペプチド(例えば、カルノシン、アンセリン、及び/又はバレニン)などの他の成分からなる随意の追加の成分とを含む。ガラクトースの量は、例えば、5〜20%w/w(例えば、5〜15%w/w)であることができる。糖類成分はまた、グルコースを含むことができる。一実施形態では、等量のグルコースとガラクトースとを含有させる。別の実施形態では、ガラクトースの量の方がグルコースの量より多い。
【0062】
本発明は一般に、グルコース含量が低く、低い血糖指数を有しうるバー、飲料若しくはその他のタイプの食品を提供するように、遊離β−アラニン又はその生物学的生体供給源をその他の成分と共に含有させることを含む。ガラクトースを使用すると、いくつかの利点がもたらされる。例えば、ガラクトースはインスリン産生性ではない。すなわち、ガラクトースはそれ自体ではインスリン応答を誘発しない。したがって、ガラクトースの使用は、等価質量のグルコースよりも低いインスリン応答に結びつく。本発明の製品は、糖尿病患者又は乳糖アレルギーの人が使用してもよい。ガラクトースは、グリコーゲン又はグルコースの合成のために肝臓によって速やかに使用され、他の糖より歯牙侵食症を引き起こしにくい。
【0063】
遊離β−アラニンを含む固形食品組成物の一部の実施形態は、0.1〜50%の遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を組み入れる。好ましくない副作用を防止するために、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源が食品からの徐放又は遅延放出を呈示することが望ましい。例えば、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を、例えば、層状に製剤化することによって、食品中に含有させ、あらゆる高湿成分から分離することができる。あるいは、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源は食品自体のマトリックス中に組み込むことができ、その際、該マトリックスの性質が胃における食品の分解を遅延させる。これ以外にも、乾燥した不透水性シェル中にβ−アラニンを顆粒又は粉末としてカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)して、食品に使用することも可能である。このようにして、遊離β−アラニンは、分解により胃でゆっくりと放出することができる。
【0064】
食品(例えば、エネルギーバー)に繊維を使用すると、様々な繊維産物が、糖の放出に影響を与え、様々な成分の結合に作用し、消化を有利に遅らせるため、有利である。0〜5%(又はそれ以上)w/wの量の糖を、β−アラニン又はその生物学的供給源を含む食品に用いることができる。さらに、β−アラニン又はその生物学的供給源を含む組成物を繊維に吸収させた後、食品を製造してもよい。このようにして、β−アラニンの体内への吸収を遅らせることができる。
【0065】
層状構造(layered arrangement)の場合には、遊離β−アラニン粉末又は凝集体を硬い乾燥糖層で被覆してもよい。これに代えて、又は加えて、チョコレート含有層を防湿バリアとして用いてもよい。遊離β−アラニン含有層を積層円筒形層として用意し、これを内側層としてバー内部に配置することもできる。これに代えて、又は加えて、繊維、堅果類及びドライフルーツなどの成分を遊離β−アラニン含有層上に重ねることにより、積層を形成してもよい。このような層にシロップを組み込み、複合型層を形成してもよい。
【0066】
別の食品では、遊離β−アラニン粉末又は凝集体を硬い糖混合物、チョコレート又はその両方で被覆することにより、質量が100〜500mgの粒子を形成してもよい。これらを残りの成分と組み合わせ、マトリックス中に分散単位(例えば、クッキー中にチョコレートチップとして)を形成することもできる。このようなカプセル化構造に、前述のような層を組み込んでもよい。
【0067】
2.食用懸濁体
別の実施形態では、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を含む食用サプリメントは、遊離β−アラニン又はその生物学的供給源を食用支持マトリックス中に懸濁させて、食用懸濁体を形成する食品である。ここで、用語「懸濁体」とは、本明細書に記載する遊離β−アラニン又はβ−アラニンの生物学的供給源を含む組成物が、典型的には固体β−アラニンの沈殿(重力の影響下で)を阻害又は防止するように、食用の粘性液体若しくは半液体、又は固体の支持マトリックスに分散させた固体形態(例えば、結晶、粉末など)の遊離β−アラニンを含むことを意味するものとする。
【0068】
本組成物は、固体、液体もしくは半液体形態(例えば、飲料、スープ若しくはヨーグルト)の形態で提供することができる。好ましくは、遊離β−アラニンは、支持マトリックス全体にほぼ均一に分散しており(例えば、攪拌、混合など、いくつかの様式での均質化により)、これは、手動で(例えば、消費者により)及び/又は組成物の製造時に機械的に達成することができる。
【0069】
一方、食品が、β−アラニンが食料中に懸濁した状態になるように遊離β−アラニン又はβ−アラニンの生物学的供給源が補充された慣用の食品であることは好都合である。本発明の組成物に適当な支持マトリックスとなりうる食料の例としては、展開可能な(spreadable)固体、例えば、乳製品又はチーズスプレッド、マーガリン、肉及び魚ペースト及びスプレッドなどが挙げられる。その他の好都合な支持マトリックスとして、以下のものが挙げられる:糖又はその他の炭水化物を含むもの、例えば、液体(「流れやすい」)又は固体の(「凝固した」)ハチミツ、廃糖蜜、シロップ(例えばトウモロコシシロップ、グルコースシロップ)、あらゆる種類の糖蜜又はゲル、冷却により粘性にした食品(例えば、アイスクリーム)、並びに、調理及びベーキングにより粘性にした食品(例えば、マフィン、パイ、タルト、ケーキ、ビスケット及びシリアルフレーク)。
【0070】
所望であれば、増粘剤、ゲル化剤などの添加により、食用マトリックス及び/又は組成物全体の粘度を増加させてもよい。このような成分は食品産業ではよく知られており、例として、植物由来の多糖、ガムなど、例えば、ガラクトマンナン、デキストラン、グアーガム、ローストビーンガムなどが挙げられる。所望であれば、このような増粘剤、ゲルなどが、支持マトリックスを形成してもよい。代表的食用マトリックスの1つは、濃縮したアロエベラエキス(滑らかなクリーム状ペースト)から調製されるゲルを含み、これは、例えば、スクィーズチューブにパッケージングすることができる。
【0071】
本組成物は、その美味性、安定性、香味又は栄養品質を改善するために1以上の別の成分を含んでもよい。これら別の成分として、以下のものを挙げることができる:電解質、ビタミン(例えば、ビタミンE、ビタミンC、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、及びパントテン酸)、脂質、炭水化物(例えばデンプン及び/又は糖、例えば、グルコース、フルクトース、ショ糖及びマルトース)、アミノ酸、微量元素、着色剤、香味剤、人工甘味剤、天然の健康改善物質、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤、ならびに緩衝剤。本組成物に香味を付けなくてもよいし、通常のマトリックスの香味を付けてもよい。あるいは、1以上の香味剤を添加してもよい(例えば、フルーツ、チーズもしくは魚風味)。
【0072】
本明細書に開示する徐放性β−アラニン組成物に含有させることができる他の成分として、例えば、以下のものが挙げられる:酸化防止剤、αリポ酸、トコトリエノール、N-アセチルシステイン、コエンザイムQ-10、ローズマリーエキス(カルノゾル(carnosol)など)、植物性酸化防止剤(緑茶ポリフェノールなど)、ブドウ種子エキス、COX-1型インヒビター(レスベラトロールなど)、イチョウ、及びニンニクエキス。L-システイン又はL-シトルリンなどの他のアミノ酸を添加してもよい。例えば、血管拡張を増大するために、塩化コリン又はホスファチジルコリンなどのアセチルコリン前駆体との併用が望ましい場合もある。このような併用療法が、本明細書に記載する組成物及び治療方法の別の態様を構成することは理解すべきである。
【0073】
用いることのできる人工甘味剤としては、アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン及びチクロなどが挙げられる。ベリー、レモン、オレンジ、パパイヤ及びグレープフルーツなどの果実風味など、所望の香味料はほぼすべて添加することができる。クエン酸を酸味料として、またクエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)を緩衝剤として用いてもよい。また、その他の天然の健康改善物質、例えば、Pau D’Arco茶、高麗ニンジン、スマ茶、イチョウ、ミツバチ花粉及びミルラを生理学的に活性な量で添加してもよい。安息香酸カリウム及び/又はソルビン酸カリウムなどの防腐剤を含有させることもできる。冷水可溶性着色剤(βカロチンなど)などの着色剤を含有させることもできる。しかし、その他の適当な着色剤は、当業者に明らかであろう。所望であれば、組成物の外観を改善するため、不透明化剤(clouding agent)を添加してもよい。
【0074】
また、ヒトの摂取に適していれば、どのような種類又は形態の無機及び微量元素を添加してもよい。カルシウム及びカリウムをそれらのグルコン酸塩、リン酸塩若しくはリン酸水素塩の形態で、マグネシウムを酸化物又は炭酸塩として、クロミウムをピコリン酸クロミウムとして、セレンを亜セレン酸ナトリウム又はセレン酸ナトリウムとして、そして亜鉛をグルコン酸亜鉛として提供するのが好都合である。典型的な量として、ナトリウム400 mg/リットル、カルシウム100 mg/リットル、塩化物600 mg/リットル、カリウム200 mg/リットル、マグネシウム75 mg/リットル、リン50 mg/リットル、クロム125μg/リットル、セレン125μg/リットル及び亜鉛15 mg/リットルが挙げられる。
【0075】
本発明に従い、当業者に周知である慣用の分子生物学、微生物学、生化学、及び組換えDNA技術を用いることもできる。このような技術については文献において十分に説明されている。以下の実施例で本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0076】
実施例1.遊離β−アラニンの徐放用の食用ゲル製剤
遊離β−アラニンを含む食用ゲルを調製するために、市販のイチゴ風味ゼラチンゲル2パックの内容物を200mlの沸騰水に溶解させた。ゲルが完全に溶解するまで、内容物を継続的に攪拌した。ゼラチンカプセル1サッシェの添加により、ゲルをさらに強化した。これに、80gの遊離β−アラニンを添加した(最終量約300ml)。濃縮ゲル溶液を12×12cmの平らな鋳型に深さ約2cmまで注ぎ込み、4℃で硬いゲルになるまで硬化させた。1つの正方形ゲル片(サイズ約2×2×2cm)は約2gのβ−アラニンを含んでいた。
【0077】
約2gのβ−アラニンを含むゲル片を摂取する(半分のゲル片を2つとして)と、その後20分間感覚異常の症状は軽度であり、何人かの被検者には全く検出されなかった。対照的に、水に溶解させた2gの遊離β−アラニンを摂取した被検者には錯感覚の症状が検出された。したがって、遊離β−アラニンの徐放によって、等量を単回ボーラス用量で投与した場合に感じられる感覚異常の症状を緩和する。
【0078】
実施例2.β−アラニンカプセルの溶解
サンプル:Balchem Encapsulates(New Hampton, NW;例えば、米国特許第6,835,397号を参照)により製造されたβ−アラニンカプセルに、β−アラニンの脂質コーティング顆粒を充填した。サンプルは、存在するβ−アラニンの量に基づき、RIA-1743 60%、70%、80%、90%及びRIA-1744 60%、70%、80%、90%として識別した。
【0079】
実験による試験:試験は、Logan Instruments DISSO III、USP試験装置3を用いて、Natural Alternative Inc.’s Research & Development Laboratoryにより実施した。溶解は、0.1 N塩酸中で6時間にわたって行なった。サンプルを1、2、3及び6時間の時点で採取した。
【0080】
第1の分析に用いたふるいは、上部及び底部キャップ用の単一サイズの40メッシュであった。RIA-1744を用いた第2の分析では、上部及び底部キャップに2種類のメッシュふるいを利用した:すなわち、40メッシュサイズのふるいと第2のメッシュふるい(孔径がやや大きい)とを組み合わせた。メッシュふるいは、往復式シリンダー内に顆粒を含むように組み合わせた。顆粒は、カプセルシェルの崩壊後、カプセルから放出された。蒸発光散乱検出を含むHPLC分析を用いて定量を実施した。
【0081】
結果:表1及び2は、メッシュサイズ40の単一ふるいを用いた結果を示し、表3は、二重メッシュふるいによるRIA-1744の分析を示す。データは、RIA-1743及びRIA-1744の両製剤の80%及び90%サンプルが徐放特性をほとんど呈示しないことを示す。RIA-1744 60%及び70%製剤は、いずれの分析でも徐放特性を呈示した。60%製剤の方が6時間後に溶解したβ−アラニンは少なかった。
【表1】

【表2】

【表3】

【0082】
実施例3−非徐放性製剤と比較した徐放性製剤
二人の被検者に、水に溶解させた1.75gのβ−アラニン(飲料として製剤化)又は5カプセル(各々、遅延放出性製剤中に0.35gのβ−アラニンを含む)を投与した。1.75gのβ−アラニンを飲料で投与された被検者は、顔、頭皮、頚部、腕、手及び臀部に感覚異常の症状を報告したが、1.75gを遅放性カプセル製剤で投与された被検者は報告しなかった。結果(平均±SE)を図1に示す。
【0083】
実施例4−徐放性製剤
400mgのβ−アラニンを含むが、100%、90%、80%、70%及び60%β−アラニンからなり、残りは溶解を遅延させる脂質混合物を含む製剤として、カプセルを被検者に投与した。2つの異なる脂質混合物を用い、ここではそれぞれ混合物「A」及び「B」と呼ぶ。
【0084】
図2は、感覚異常の症状が記録されなかった最も高いβ−アラニン濃度を含む「A」及び「B」の組成物を示す。図中の縦列(上から下に)はそれぞれ、被検者番号;性別;体重(kg);及び摂取した400mgカプセルの数を示す。
【0085】
被検者1〜6は、カプセルが完全に(すなわち、100%)β−アラニンであったときでさえ感覚異常の症状を記録しなかった。被検者1〜4は、各投与時に5カプセル服用し、被検者5〜6は、各投与時に4カプセル服用した。被検者7〜10は、β−アラニン%が低くなった後、感覚異常の症状が完全に消失したが、これは、混合物Aと比較して混合物Bの服用時の方がはっきりしていた。被検者7〜10はそれぞれ、各投与時に4カプセル服用した。被検者11〜14は、他の被検者よりβ−アラニンの感覚異常作用に対する感受性が高く、100%β−アラニンで最高等級の症状を記録した。被検者11は、混合物「A」又は「B」のいずれでも60%β−アラニンによって感覚異常の症状を呈示しなかった。被検者12〜13は、いずれの混合物でも60%β−アラニンで軽度の感覚異常症状を依然として呈示したことから、いずれの混合物でも50%では無症状であると推定された。被検者13及び14は、各投与時に3カプセルだけ服用した。
【0086】
その他の実施形態
詳細な説明と共に本発明を説明してきたが、以上の記載が、本発明を説明し、本発明の範囲の限定するものではなく、本発明の範囲が特許請求の範囲により定められることは理解すべきである。その他の形態、利点、及び改変も添付の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、β−アラニン飲料又はβ−アラニン徐放性カプセルのいずれかを摂取した後の個体におけるβ−アラニンの血漿レベルを示すグラフである。
【図2】図2は、2つの異なる徐放性β−アラニン製剤の摂取後の個体におけるβ−アラニンの血漿レベルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離β−アラニンと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、該組成物はβ−アラニンの徐放用に製剤化されている、上記医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物は、単回用量に、約0.1g〜約10.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物は、単回用量に、約1.0g〜約10.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物は、単回用量に、約2.0g〜約8.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物は、単回用量に、約3.0g〜約7.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物は、単回用量に、約4.0g〜約6.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記担体は、藻類多糖、キトサン、ペクチン、グルコマンナン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ケラチン、ラミナラン、カラジーナン、セルロース、セルロースエーテル誘導体;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースなどの改変セルロース物質、カルボキシポリメチレン、アクリル樹脂ポリマー、ポリアクリル酸及びその同属化合物、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリビニルピロリジン、ポリアクリルアミド、寒天、ゼイン、ステアリン酸、高融点油、蝋、ゼラチン、又はそれらの組合せを含む徐放剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物は経口投与用に製剤化されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記製剤は固体剤形である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記固体剤形は、錠剤、丸剤、カプセル剤、又はトローチ剤である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記製剤は液体又は半液体形態である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物は局所投与用に製剤化されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記製剤はローション、ヒドロゲル、又は皮膚パッチである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
遊離β−アラニンを含む食用サプリメントであって、β−アラニンの徐放用に製剤化されている、上記食用サプリメント。
【請求項15】
単回供給分に約0.1g〜約10.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項16】
単回供給分に約1.0g〜約10.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項17】
単回供給分に約2.0g〜約8.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項18】
単回供給分に約3.0g〜約7.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項19】
単回供給分に約4.0g〜約6.0gの遊離β−アラニンを含む、請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項20】
食品である請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項21】
前記食品は、ガラクトース、遊離β−アラニン、糖類、繊維を含む高エネルギー多種糖食用バーであり、ここで、遊離β−アラニンは、β−アラニンの徐放用に製剤化された乾燥不透水性シェルに封入された顆粒又は粉末からなる、請求項20に記載の食用サプリメント。
【請求項22】
ビタミン、脂質、炭水化物、アミノ酸、微量元素、着色剤、香味剤、人工甘味剤、天然の健康改善物質、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤及び緩衝剤からなる群より選択される1種以上の追加の成分をさらに含む、請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項23】
前記遊離β−アラニンは、食品の他の成分から独立した層内に含まれる、請求項14に記載の食用サプリメント。
【請求項24】
前記食品は、β−アラニンの徐放用に製剤化された食用支持マトリックスに懸濁させた遊離β−アラニンを含む、請求項20に記載の食用サプリメント。
【請求項25】
ビタミン、脂質、炭水化物、アミノ酸、微量元素、着色剤、香味剤、人工甘味剤、天然の健康改善物質、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤及び緩衝剤からなる群より選択される1種以上の追加の成分をさらに含む、請求項24に記載の食用サプリメント。
【請求項26】
前記食用支持マトリックスが、ハチミツ、シロップ、廃糖蜜、糖蜜、及び濃縮アロエベラゲルからなる群より選択される成分を含む、請求項25に記載の食用サプリメント。
【請求項27】
組織の無酸素運動能を増加する方法であって、組織におけるβ−アラニルヒスチジンペプチドの合成を増加するのに有効な量で、遊離β−アラニンを徐放性製剤において血液又は血漿に供給し、該組織を血液又は血漿に暴露し、これにより、β−アラニルヒスチジン濃度を該組織で増加させることを含む、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−542282(P2008−542282A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513675(P2008−513675)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/020104
【国際公開番号】WO2007/073398
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(505379652)ナチュラル オータナティブス インターナショナル (3)
【出願人】(507387491)
【Fターム(参考)】