説明

β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の製造方法

一般式(I)[式中、R3は、水素原子、又は炭素原子1〜18個を有する炭化水素基を意味する]のジケテンを脱離する化合物(1)を使用するβ−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の新規の製造法であって、前記一般式(I)のジケテンを、一般式−R1−NR22(II)[式中、R1は、酸素、硫黄及び窒素の群から選択されるヘテロ原子を有していてよい、炭素原子2〜10個を有する二価の有機基を意味し、R2は、水素原子、又は窒素原子を有していてよい、炭素原子1〜100個を有する有機基を意味し、但し、式(II)の基Aは、少なくとも1個の第一級アミノ基又は第二級アミノ基、好ましくは少なくとも1個の第一級アミノ基を有する]のSiに結合した基Aを分子1個当たりにつき少なくとも1個有する有機ケイ素化合物(2)と、第一級又は第二級のアミノ基とβ−ケトカルボニル化合物との反応を遅延する又は防止する有機化合物の存在で反応させる、β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の製造方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の製造方法に関する。
【0002】
US4,861,839には、アセト酢酸(チオ)エステル基又はアセト酢酸アミド基で置換されており、かつ金属触媒用のモノマーキレート配位子として使用されるアルコキシシランが記載される。
【0003】
高分子β−ケトエステルシロキサンは、US4,808,649から公知であり、同様に、その製造方法並びにポリ塩化ビニル用の安定化剤としての使用も公知である。
【0004】
アセトアセテート基を有する官能性ポリシロキサンが、US5,952,443に記載され、その際、官能基の一部は、官能基1個当たりにつき少なくとも2個のβ−ケトカルボニル基を有していなければならず、かつジメチルシロキシ単位の数は50より大きくない。さらに、塗料配合物中でのポリアミンとの架橋が記載されている。
【0005】
ジケテン及びその誘導体によるカルビノールポリシロキサン又はアミノポリシロキサンの変性が、US6,121,404に記載されている。生成物は、エラストマーフィルムの製造のために水溶液中でアミノポリシロキサンと一緒に使用される。
【0006】
本課題は、非ゲル化生成物が得られる、β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の製造法を提供することであった。
【0007】
上記課題は本発明によって解決される。
【0008】
本発明の対象は、一般式
【化1】

[式中、
3は、水素原子、又は炭素原子1〜18個を有する炭化水素基を意味し、好ましくは水素原子を意味する]のジケテンを脱離する化合物(1)を使用するβ−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の製造法であって、上記一般式(I)のジケテンを、
一般式
−R1−NR22 (II)
[式中、
1は、酸素、硫黄及び窒素の群から選択されるヘテロ原子を有していてよい、炭素原子2〜10個を有する二価の有機基、好ましくは、炭素原子2〜10個、有利には炭素原子2〜4個を有する炭化水素基を意味し、
2は、水素原子、又は窒素原子を有していてよい、炭素原子1〜100個を有する有機基、好ましくは、水素原子、又は炭素原子1〜30個を有するアルキル基、シクロアルキル基又はアミノアルキル基を意味し、
但し、式(II)の基は、少なくとも1個の第一級アミノ基及び場合により少なくとも1個の第二級アミノ基、好ましくは少なくとも1個の第一級のアミノ基を有する]のSiに結合した基Aを分子1個当たりにつき少なくとも1個有する有機ケイ素化合物(2)と、第一級又は第二級のアミノ基とβ−ケトカルボニル化合物との反応を遅延する又は防止する有機化合物(3)の存在で反応させる製造法である。
【0009】
有利には、式
【化2】

のジケテンを脱離する化合物(1)が用いられる。
【0010】
化合物(1)として、エノール化可能なケト化合物を有するジケテン付加物、有利には式
【化3】

のジケテン−アセトン付加物(2,2,6−トリメチル−4−オキソ−1,3−ジオキシンもしくは2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン)を使用してよい。化合物(1)は、標準条件下で十分に安定しており、一方で熱分解に供され、それによってジケテンが再び遊離され、続けて有機ケイ素化合物(2)と反応される。
【0011】
有機ケイ素化合物(2)として、シラン又はオリゴマーオルガノポリシロキサン又はポリマーオルガノポリシロキサンを使用してよい。有機ケイ素化合物(2)は、好ましくはSi原子1〜20000個、有利にはSi原子2〜5000個及び特に有利にはSi原子60〜3000個を有する。有機ケイ素化合物(2)は、線状、分枝鎖状、樹枝状又は環状であってよく、かつポリマー有機基、例えばポリエーテル基、ポリエステル基又はポリ尿素基も有していてよい。
【0012】
好ましくは、有機ケイ素化合物(2)として、一般式
【化4】

[式中、
Aは、一般式−R1−NR22 (II)の基を意味し、その際、R1及びR2は、これらについて上記の意味を有し、
Rは、基1個当たりにつき炭素原子1〜18個を有する、一価の、場合によっては置換された炭化水素基を意味し、
4は、水素原子、又は炭素原子1〜8個を有するアルキル基、有利には水素原子又はメチル基又はエチル基を意味し、
aは、0又は1であり、
cは、0、1、2又は3であり、かつ
dは、0又は1であり、
但し、総計a+c+d≦3であり、かつ平均して少なくとも1個の基Aが分子1個当たりにつき含まれている]の単位からのオルガノポリシロキサンが使用される。
【0013】
有機ケイ素化合物(2)の有利な例は、一般式
g3-gSiO(SiR2O)l(SiRAO)kSiR3-gg (IVa)及び
(R4O)R2SiO(SiR2O)n(SiRAO)mSiR2(OR4) (IVb)
[式中、A、R及びR4は、これらについて上記の意味を有し、
gは、0又は1であり、
kは、0又は1〜30の整数、有利には0であり、
lは、0又は1〜1000の整数、有利には50〜1000であり、
mは、1〜30の整数、有利には1〜5であり、かつ
nは、0又は1〜1000の整数、有利には50〜500であり、
但し、平均して少なくとも1個の基Aが分子1個当たりにつき含まれている]のオルガノポリシロキサンである。
【0014】
有機ケイ素化合物(2)のさらなる例は、一般式
ASiO3/2 (Va)及び
【化5】

の単位からのオルガノポリシロキサン、
一般式
AR2SiO1/2 (Vc)及び
【化6】

の単位からのオルガノポリシロキサン
及び一般式
ARSiO (Ve)及び
【化7】

2SiO (Vg)
の単位からのオルガノポリシロキサンであり、
その際、A及びRは、これらについて上記の意味を有し、
eは、1、2又は3であり、かつ
fは、0又は1である。
【0015】
本発明による方法に際して使用される有機ケイ素化合物(2)は、好ましくは25℃で1mPa.s〜1000000mPa.sの粘度、有利には25℃で100mPa.s〜100000mPa.sの粘度を有する。
【0016】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル基、5−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、1−プロペニル基、アリル基、3−ブテニル基及び4−ペンテニル基;アルキニル基、例えばエチニル基、プロパルギル基及び1−プロピニル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基;及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0017】
基R1の例は、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−、−CH2C(CH3)H−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH(CH3)−であり、その際、−CH2CH2CH2−基が好ましい。
【0018】
炭化水素基Rの例は、炭化水素基R2についても当てはまる。
【0019】
2のさらなる例は、水素及びN含有基、例えば−CH2CH2NH2、−CH2CH2NHCH3、−CH2CH2N(CH32、−CH2CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2N(CH32である。
【0020】
炭化水素基Rの例は、炭化水素基R3についても当てはまる。
【0021】
アルキル基R4の例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基である。
【0022】
基Aとして有利なのは、一般式
−R1−NH−(CH22−NH2 (VIa)又は
−R1−NH2 (VIa')
[式中、R1は、これについて上記の意味を有する]の基であり、
基Aとして特に有利なのは、式
−(CH23−NH−(CH22−NH2 (VIb)又は
−(CH23−NH2 (VIb')の基である。
【0023】
好ましくは、有機化合物(3)として、アミンと一緒に、多少なりとも固体の付加物を与える化合物が使用される。一種類の化合物(3)又は複数種の化合物(3)を使用してよい。化合物(3)の例は、アルデヒド及びケトンである。有利な例は、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンである。
【0024】
本発明による方法の場合、好ましくは、有機ケイ素化合物(2)がまず最初に有機化合物(3)と混合され、次いでジケテンを脱離する化合物(1)が添加される。
【0025】
本発明による方法の場合、有利には第1の段階において、有機ケイ素化合物(2)が有機化合物(3)と反応され、その際、化合物(3)は式(II)の基A中のアミノ基上に保護基を形成し、引き続き第2の段階において、保護されたアミノ基を有する第1の段階において得られた有機ケイ素化合物(2)((2)及び(3)からの反応生成物)は、化合物(1)から熱により遊離されるジケテンと反応される。
【0026】
ジケテンとの反応に際して、意想外にも、保護基は再び式(II)の基A中のアミノ基から脱離する。
【0027】
化合物(3)としてケトンが使用される場合、これらは有利には第一級アミノ基と反応する。この反応は、有利には0〜90℃で、特に有利には10〜60で行われ、すなわち、本発明による方法の第1の段階は、好ましくはこれらの温度で実施される。
【0028】
第1の段階における縮合反応は、大きく(2)及び(3)からの反応生成物の側にある平衡状態につながるので、非常に少ない第一級アミノ基がわずかに存在するのみである。
第1の段階において、縮合生成物として(2)及び(3)からの反応生成物に加えて水も形成され、これは遊離アミノ基の再生のために化合物(1)の計量供給後に再び必要とされる。平衡して存在する少ないアミノ基は化合物(1)からのジケテンと反応してβ−ケトアミドが形成され、これに対して改めて平衡が生じ、かつ、それによって持続的に僅かな量の遊離アミノ基が後形成されることが見出された。
副反応は、意想外にも、これらの僅かなアミン濃度によってほぼ完全に回避される。
【0029】
縮合水は、混合物中でそのままにしていてよく、可逆的に結合してよく、又は除去してよい。水が可逆的に結合される場合、水はジケテンの計量供給後に、適した措置によって再び遊離されなければならない。物理吸収の場合、これはたいてい加熱によって引き起こされ得る。しかし、水が反応混合物から除去される場合、水は化合物(1)の計量供給後に少なくとも同一量で、化合物(1)から遊離したジケテンとアミノ基との反応が完全に進行し得るように再び添加されなければならない。
【0030】
縮合水は、水を吸収し得る吸収剤に可逆的に結合され得る。この例は、ゼオライト、例えば3又はそれに4Åの孔径を有する、いわゆるモレキュラーシーブである。そのうえ縮合水は、"結晶水"としても、水不含で使用される無機塩、例えば硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウム中に結合され得る。
可逆的に結合された水は、反応混合物を適した温度に加熱することによって再び遊離され得、それにより遊離の第一級又は第二級のアミノ基の再生のために再び使用可能となる。
【0031】
縮合水は、吸収剤が例えば濾過によって除去される場合に、又はこれらが水を、それが反応適合性の方法によってもはや遊離され得ないぐらい強く結合する場合に、反応混合物から完全に除去してよい。水の永続的な除去は、真空によっても引き起こされ得る。これら全ての場合において、化合物(1)の添加後に、改めて水の添加も必要とされる。計量供給は、迅速に、緩慢に又は少量ずつ行ってもよい。
【0032】
本発明による方法に際して使用される有機化合物(3)は、生成物中に残留していてよく、又は例えば真空下での蒸留によって又は抽出によって除去してよい。
【0033】
有機化合物(3)は、有機ケイ素化合物(2)における一般式(II)の基A中のアミノ基(第一級及び第二級)1モル当たりにつき、好ましくは少なくとも1モル、特に有利には1.5モル、殊に1〜10モル、特に有利には1.5〜5モルの量で用いられる。
【0034】
本発明による方法の場合、ジケテンは、有機ケイ素化合物(2)における一般式(II)の基A中のアミノ基(第一級及び第二級)1モル当たりにつき、好ましくは1.0〜2.0モル、有利には1.0〜1.7モル、特に有利には1.0〜1.5モルの量で用いられる。
本発明の特別な一実施態様は、ジケテンを脱離する化合物(1)及びアミノ基の等モル使用である。
【0035】
本発明による方法は、好ましくは80〜180℃、有利には120〜160℃の温度で実施される。殊に、本発明による方法の第2の段階は、これらの温度で実施される。
さらに、本発明による方法は、好ましくは周囲雰囲気の圧力で実施されるが、しかし、より高い圧力及びより低い圧力でも実施してよい。
【0036】
本発明による方法に従って得られるβ−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物は、一般式
−N(−Z)− (VII)
の基を有するSiに結合した基Bを分子1個当たりにつき好ましくは少なくとも1個有し、その際、
Zは、式−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23の基を意味する。
【0037】
β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物として、有利には、Siに結合した基Bとして、一般式
−R1−NH(−Z) (VIII)
又は
−R1−NH1-x(−Z)x−(CH22−NH(−Z) (IX)
の基を分子1個当たりにつき少なくとも1個有する化合物が得られ、その際、Zは、これについて上記の意味を有し、かつ
xは、0又は1であり、
その際、式(IX)の基が特に好ましい。
【0038】
基Bとして特に有利なのは、式
−(CH23−NH1-x(−Z)x−(CH22−NH(−Z) (X)
の基であり、その際、Zは、これについて上記の意味を有する。
【0039】
それゆえ本発明の対象は、一般式
−R1−NH1-x(−Z)x−CH2CH2−NH(−Z) (IX)
のSiに結合した基を分子1個当たりにつき少なくとも1個有するβ−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物であり、その際、Zは、これについて上記の意味を有し、かつxは、0又は1である。
【0040】
好ましくは、β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物として、一般式
【化8】

[式中、B、R、R4、a、c及びdは、これらについて上記の意味を有し、但し、総計a+c+d≦3であり、かつ平均して少なくとも1個の基Bが分子1個当たりにつき含まれている]の単位からのオルガノポリシロキサンが得られる。
【0041】
−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の有利な例は、一般式
g3-gSiO(SiR2O)l(SiRBO)kSiR3-gg (XIIa)及び
(R4O)R2SiO(SiR2O)n(SiRAO)mSiR2(OR4) (XIIb)
[式中、B、R及びR4は、これらについて上記の意味を有し、
gは、0又は1であり、
kは、0又は1〜30の整数、有利には0であり、かつ
lは、0又は1〜1000の整数、有利には50〜1000であり、
mは、1〜30の整数、有利には1〜5であり、かつ
nは、0又は1〜1000の整数、有利には50〜500であり、
但し、平均して少なくとも1個の基Bが分子1個当たりにつき含まれている]のオルガノポリシロキサンである。
【0042】
−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物のさらなる例は、一般式
BSiO3/2 (XIIIa)及び
【化9】

の単位からのオルガノポリシロキサン、一般式
BR2SiO1/2 (XIVa)及び
【化10】

の単位からのオルガノポリシロキサン、及び一般式
BRSiO (XVa)及び
【化11】

2SiO (XVc)
の単位からのオルガノポリシロキサンであり、その際、B、R、e及びfは、これらについて上記の意味を有する。
【0043】
本発明による方法に際して得られるβ−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物は、好ましくは25℃で10mPa.s〜10000000mPa.sの粘度、有利には25℃で100mPa.s〜500000mPa.sの粘度を有する。
【0044】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物は、以下の目的で使用され得る:
a)pH依存性に基づいて制御可能であるアミノ基含有表面上へのケイ素化合物/シロキサンの固定
b)架橋にいたるまでのアミノ基含有の反応相手によるポリマー合成(線状、分枝鎖状)、その際、反応相手は、官能基密度に応じて、架橋剤として又は架橋されるべきポリマーとして作用する
c)金属イオン含有の基体上への固定、その際、金属イオンはキレート形成下で本発明による生成物に結合し、その際、結合強度はイオン型に依存する、
d)マイケル付加によるポリアクリレートを用いた架橋。
【0045】
実施例1:
22℃で、3−(アミノエチルアミノ)−プロピル末端基及び0.78mEq/gのアミン含量を有するジメチルポリシロキサン269gをアセトン24.4gと混合する。約4時間後にバッチを還流温度に加熱し、かつ計47.7gのジケテン−アセトン付加物を均一に、かつ適切に攪拌しながら計量供給する。軽度の発熱反応でも、アミン油の粘度が上昇する。さらになお2時間還流にて後反応させ、かつ添加及び脱離されたアセトンを真空中で70で除去する。ベントナイトによる濾過後に1970mm2/s(25℃)の粘度を有する澄明な油が得られる。1H−NMR−スペクトルは、形成されたβ−ケトアミドシロキサンの4.7のケト/エノール比を示し;アミン転化は完全である(>99%)。
【0046】
実施例2:
3−(アミノエチルアミノ)−プロピル−メチルシロキシ単位及びジメチルシロキシ単位及びメトキシ末端基からの、ならびに1130mm2/sの粘度で0.302mEq/gのアミン含量を有する市販のアミノシロキサン132.5gをアセトン4.7gと25℃で4時間撹拌する。その後、120℃に加熱し、かつジケテン−アセトン付加物9.1gの添加を行い、そのうえで軽度な温度増加が始まる。さらに2時間後にアセトンを70℃で真空中で除去する。ベントナイトによる濾過後に5800mm2/s(25℃)の粘度を有する澄明な油が得られる。1H−NMR−スペクトル中で、完全なアミン転化が識別可能である。β−ケトアミドシロキサンは、3.7のケト/エノール比を有する。第一級アミノ基ならびに第二級アミノ基をアセトアシル化した。
【0047】
US6,121,404に従った比較試験:
実施例2を、アセトンを添加せずに、すなわち、アミノ基に対してコンディショニング作用を有する化合物(3)を用いずに実施する。ジケテン−アセトン付加物の添加は、同様に発熱反応につながり、その際、しかし、粘度の増大がずっと激しく生じる。短時間後にバッチは不均質になる。
【0048】
部分ゲル化された生成物が得られ、それは部分的に僅かにしかトルエンに溶けない。粘度は、もはや測定可能ではない。
【0049】
実施例3:
0.092mEq/gの濃度及び1220mm2/sの粘度(25℃)においてアミノプロピル末端基を有する線状ポリジメチルシロキサン200gを、アセトン4.3gと一緒に3時間25℃で攪拌する。120℃への加熱後、ジケテン−アセトン付加物4.2gを計量供給する。さらに2時間同じ温度で反応し尽くし、その後、アセトンを真空中で除去する。ベントナイトによる濾過後に、アミン基の完全な転化に際して3040mm2/s(25℃)の粘度を有する澄明な油が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

[式中、R3は、水素原子、又は炭素原子1〜18個を有する炭化水素基を意味する]のジケテンを脱離する化合物(1)を使用するβ−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の製造法であって、前記一般式(I)のジケテンを、一般式
−R1−NR22 (II)
[式中、
1は、酸素、硫黄及び窒素の群から選択されるヘテロ原子を有していてよい、炭素原子2〜10個を有する二価の有機基を意味し、
2は、水素原子、又は窒素原子を有していてよい、炭素原子1〜100個を有する有機基を意味し、
但し、式(II)の基Aは、少なくとも1個の第一級アミノ基および場合により少なくとも1個の第二級アミノ基を有する]のSiに結合した基Aを分子1個当たりにつき少なくとも1個有する有機ケイ素化合物(2)と、第一級又は第二級のアミノ基とβ−ケトカルボニル化合物との反応を遅延する又は防止する有機化合物(3)の存在で反応させる、β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物の製造法。
【請求項2】
ジケテンを脱離する化合物(1)として、ジケテン−アセトン付加物を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の段階において
請求項1記載の有機ケイ素化合物(2)を請求項1記載の有機化合物(3)と反応させ、
かつ第2の段階において
請求項1記載のジケテンを脱離する化合物(1)を第1の段階において得られた(2)及び(3)とからの反応生成物に添加することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第1の段階において縮合に際して遊離する水を可逆的に結合し、かつジケテンを脱離する化合物(1)の添加後に再び遊離することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第1の段階において縮合に際して遊離する水を反応混合物から除去し、かつジケテンを脱離する化合物(1)の添加後に再び添加することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
有機化合物(3)として、アルデヒド又はケトンを使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
有機化合物(3)として、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンの群から選択される化合物を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
有機化合物(3)を、有機ケイ素化合物(2)における一般式(II)の基A中のアミノ基(第一級及び第二級)1モル当たりにつき少なくとも1モルの量で使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ジケテンを脱離する化合物(1)を、有機ケイ素化合物(2)における一般式(II)の基A中のアミノ基(第一級及び第二級)1モル当たりにつき少なくとも1.0〜2.0モルの量で使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記方法を80℃〜180℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基Aが式
−R1−NH−(CH22−NH2 (VIa)または
−R1−NH2 (VIa')
[式中、R1は、請求項1の中でこれについて記載された意味を有する]の基であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
一般式
−R1−NH1-X(−Z)x−CH2CH2−NH(−Z) (IX)
[式中、
Zは、式−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23の基を意味し、
R及びR3は、請求項1の中でこれについて記載された意味を有し、
かつxは、0又は1である]のSiに結合した基を分子1個当たりにつき少なくとも1個有する、β−ケトカルボニル官能性有機ケイ素化合物。
【請求項13】
一般式
BSiO3/2 (XIIIa)及び
【化2】

[式中、
Bは、一般式
−N(−Z)− (VII)
[式中、
Zは、式−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23の基を意味する]の基を有するSiに結合した基であり、
R及びR3は、請求項1の中でこれらについて記載された意味を有し、
かつeは、1、2又は3である]の単位からのβ−ケトカルボニル官能性オルガノポリシロキサン。
【請求項14】
一般式
BR2SiO1/2 (XIVa)及び
【化3】

[式中、Bは、請求項13中でこれについて記載された意味を有し、
Rは、請求項1の中でこれについて記載された意味を有し、かつ
fは、0又は1である]の単位からのβ−ケトカルボニル官能性オルガノポリシロキサン。
【請求項15】
基Bが、一般式
−R1−NH(−Z) (VIII)
又は
−R1−NH1-x(−Z)x−(CH22−NH(−Z) (IX)
[式中、Zは、請求項12の中でこれについて記載された意味を有し、
xは、0又は1であり、かつ
1は、請求項1の中でこれについて記載された意味を有する]
の基である、請求項13又は14記載のβ−ケトカルボニル官能性オルガノポリシロキサン。

【公表番号】特表2010−528141(P2010−528141A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508815(P2010−508815)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056102
【国際公開番号】WO2008/142041
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】