説明

β−ラクタマーゼ検出用プライマー

所定のβ-ラクタマーゼ遺伝子に特徴的な核酸に対して特異的であるオリゴヌクレオチド・プライマーを提供する。これらのプライマーは、サンプルにおける、特にグラム陰性菌の臨床分離株におけるファミリー特異的な(さらにグループ特異的な)β-ラクタマーゼに特徴的な核酸を同定する方法に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
β-ラクタム抗生物質(例えば、ペニシリン及びセファロスポリン)の使用、及び過剰使用の支障を来たす結果は、β-ラクタマーゼの発達と拡がりである。β-ラクタマーゼは、ペニシリン、セファロスポリン、及び関連化合物のβ-ラクタム環を開いてその抗生物質を不活性化する酵素である。β-ラクタマーゼの産生は、グラム陰性菌におけるβ-ラクタム抗生物質への耐性の重要なメカニズムである。
【0002】
拡張スペクトル・セファロスポリンは、TEM 1, 2及びSHV-1などの従前の広域(broad-spectrum)β-ラクタマーゼによる劣化に対抗するために特に設計された。拡張スペクトル・セファロスポリンに対する微生物の応答は、拡張型β-ラクタマーゼ(ESBLs)と呼ばれる従前の広域β-ラクタマーゼの突然変異型を生み出すことであった。ESBLを産生する腸内細菌科(Enterobacteriaceae)は1983年と1984年に初めてヨーロッパで報告されたが、現在ではESBLsは南極を除くすべての大陸における患者から集められた多様な属の生物に見つかっている。ESBLを産生する生物の出現は、ヨーロッパに多いタイプ(TEM-3)、米国に多いタイプ(TEM-10, TEM-12及びTEM-26)、さらに世界中で見られるタイプ(SHV-2及びSHV-3)と多様である。
【0003】
さらに、CTX-M β-ラクタマーゼが北米全体に拡がっており、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)属の多様な分離株に見出されている。CTX-M β-ラクタマーゼを産生する生物は、典型的に、セフォタキシムに耐性があり、セフタジジムに対する最小発育阻止濃度(MIC)値が低く、セフェピムに対するMIC値が高くなる。しかし、これらの酵素は、新しいセファロスポリン及びアズトレオナムを加水分解できる。さらに、大腸菌(E. coli)及びキレブシエラ(Klebsiella)spp.におけるESBL検出に関する米国臨床検査標準協議会(NCCLS)ガイドラインが、セフポドキシム、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソム、又はアズトレオナムによる初期スクリーニングとそれに続くセフォタキシムとセフタジジムの両方をクラブラン酸塩と組み合わせて用いる確認テストを含めていること(抗菌剤及び薬剤感受性検査に関するNCLLS成績基準;12th情報サプリメント、M100-S12 (2002))、そしていくつかの臨床検査室における実際のやり方はセフタジジムを初期スクリーニングに用いてセフタジジムをクラブラン酸塩と組み合わせて確認テストに用いるというものである(Brenwald等., J. Antimicrob. Chemother., 51: 195-196 (2003); Dandekar等., Diagn. Microbiol. Infect. Dis., 49; 37-39 (2004))ことが問題である。しかし。ある研究では、セフタジジムを初期スクリーニングに用いた場合、ESBL産生株の約14%が検出されず、セフタジジムとクラブラン酸塩の組み合わせが唯一の確認テストである場合、ESBL産生株の約35%だけしかESBL陽性と報告されなかったことを示している。
【0004】
さらに、β-ラクタマーゼをコードする遺伝子がしばしば大きなプラスミド上にあり、それはまた、アミノグリコシド、テトラサイクリン、スルフォンアミド、トリメトプリム、及びクロラムフェニコールなど、他の抗生物質のクラスに対する耐性遺伝子を含んでいるということも問題である。さらに、病原体が複数のβ-ラクタマーゼを産生するという傾向も増えてきている。このような変化による進展で、グラム陰性病原菌がますます複雑な抗生物質耐性獲得メカニズムを利用できるようになっている。臨床的には、このことが、感染した患者に効果的な治療法を見つけることをますます難しくしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、例えば臨床的な分離株、又はサンプル、に存在するβ-ラクタマーゼのタイプを迅速かつ正確に同定する方法が必要とされている。このような性質のサーベイランス研究は、病院という背景で用いられる抗生物質の選択に大きな意味をもち、バクテリア感染症の治療に大きな影響を及ぼすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
本発明は、所定のβ-ラクタマーゼに特徴的な核酸(典型的に、それをコードする遺伝子)に特異的なオリゴヌクレオチド・プライマーの利用に関する。より詳細には、本発明は、本発明のプライマーを用いて、サンプルにおける、特にグラム陰性菌の臨床分離株における系統特異的なβ-ラクタマーゼ核酸(典型的に、遺伝子)を同定する。更により詳細には、本発明はCTX-M β-ラクタマーゼ系統内のグループを特異的に同定するプライマーを提供する。
【0007】
1つの観点では、本発明は次の群から選択されるプライマーに関する:5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1); 5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2); 5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3); 5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4); 5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5); 5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6); 5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7); 及び5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖。
【0008】
更なる観点では、本発明は、一方のプライマーが次の群から選択されるプライマー対に関する:5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1); 5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2); 5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3); 5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4); 5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5); 5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6); 5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7); 及び5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖。
【0009】
またさらに別の観点では、本発明は、次の群から選択されるプライマー:5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1); 5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2); 及びそれらの全長相補鎖;次の群から選択されるプライマー:5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3); 5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4); 及びそれらの全長相補鎖;次の群から選択されるプライマー:5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5); 5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6); 及びそれらの全長相補鎖;及び次の群から選択されるプライマー:5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7); 及び5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖; に関する。
【0010】
本明細書で用いる場合、β-ラクタマーゼ酵素に特徴的な核酸は遺伝子又はその一部を含む。本明細書で用いる場合、“遺伝子”とは、あるペプチド(例えば、ポリペプチド及び/又は蛋白質)の産生に関与する核酸(例えば、DNA分子)のセグメント又は断片である。遺伝子は、あるコーディング領域に先行する(上流側)領域及び後続する(下流側)領域(すなわち、調節エレメント)、並びに個々のコーディング・セグメント(エクソン)の間に介在する配列(イントロン、例えば、非コーディング領域)を含むことができる。“コーディング領域”という用語は、本明細書では広く、転写されてRNAを形成することができる領域を意味するように用いられ、転写されたRNAはさらに処理されてmRNAを生ずることができるが、必ずしもそうである必要はない。
【0011】
さらに、臨床サンプルにおいてβ-ラクタマーゼを同定する方法が提供される。好適には、提供されるサンプルは、β-ラクタム抗生物質に対する耐性を有するグラム陰性菌として特徴づけられる。1つの観点では、臨床サンプルにおいてβ-ラクタマーゼを同定する本発明の方法は、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の一つ以上のグループに特異的な一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを提供するステップ、ここで対の一方のプライマーはセンス鎖におけるβ-ラクタマーゼ核酸の少なくとも一部と相補的であり、各対の他方のプライマーはアンチセンス鎖におけるβ-ラクタマーゼ核酸の少なくとも一部と相補的である;プライマーをβ-ラクタマーゼ核酸にアニールするステップ;同時に、アニールされたプライマーを各プライマーの3’-末端から延長して、各プライマーにアニールされた核酸鎖と相補的な延長生成物を合成するステップ、ここで各延長生成物はβ-ラクタマーゼ核酸から分離された後に各対の他方のプライマー延長生成物を合成するためのテンプレートとして役立つ;増幅された生成物を分離するステップ;及び分離された増幅生成物を分析してβ-ラクタマーゼに特徴的な領域を探すステップ;を含む。以下で述べるように、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリーは、ファミリー内のβ-ラクタマーゼのいくつかのグループを含む。本発明はCTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の一つ以上のグループを同定する方法を提供する。
【0012】
上述の方法は、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の一つ以上のグループに特異的なオリゴヌクレオチド・プライマー対を用いる、特に、グループ1:CTX-M-1, 3, 10-12, 15 (UOE-1とも呼ばれる), 22, 23, 28, 29, 及び30;グループ2:CTX-M-2, 4-7, 20, 及びTOHO-1、グループ3:CTX-M-8;及びグループ4:CTX-M-9, 13, 14, 16-19, 21, 27, 及びTOHO-2;などのCTX-M β-ラクタマーゼの一つ以上のグループに特異的なプライマー対、を用いる。プライマーはまた、グループ5:CTX-M-25及び26、のβ-ラクタマーゼの核酸に対しても特異的であり得る。プライマー対は、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の一つのグループに特異的であることも、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の2つ以上のグループに特異的であること(例えば、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の二つのグループに特異的であるプライマー対)もあり得る;しかし、本発明のプライマー対は、いずれも、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリーのすべてのグループに対して特異的ではない(すべてのグループに特異的である場合、それはファミリー特異的であって、グループ特異的ではない)。すなわち、本発明のプライマー対はCTX-M β-ラクタマーゼを別のβ-ラクタマーゼ・ファミリーから(例えば、TEM, SHV, 又はOXAファミリー)から識別できるけれども、本発明のプライマー対はまた、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の異なるグループを識別することができる。
【0013】
リアルタイムのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、以下でもっと詳しく説明するように従来のPCRに比べて利点がある有用な手段であると当業者には認識されている。したがって、さらに別の観点では、本発明はまた、臨床サンプルにおけるβ-ラクタマーゼを同定する方法に関し、この方法は:
次のグループ:5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1); 5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2); 5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3); 5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4); 5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5); 5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6); 5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7); 及び5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-(SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、から選択される一方のプライマーを含むプライマー対を提供するステップ:及びそのプライマー対に対してリアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応分析を行うステップ;を含む。
【0014】
本発明はさらに、臨床サンプルにおいて注目のβ-ラクタマーゼを検出するのに有用なキットを提供する。ある観点では、本発明は、CTX-M β-ラクタマーゼを検出する診断キットであって:CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリーのグループ1−5のメンバーのグループから選択されるβ-ラクタマーゼ核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも一つのプライマー対;陽性及び陰性コントロール;及び注目のβ-ラクタマーゼ核酸を同定するプロトコール;を別々にパッケージして含むパッケージングを含み、該少なくとも一つのプライマー対がCTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の一つ以上のグループに特異的であることを特徴とする診断キットを提供する。
【0015】
別の観点では、本発明はCTX-M β-ラクタマーゼのファミリーを検出する診断キットに関し、この診断キットは、注目のβ-ラクタマーゼ核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも一つのプライマー対;陽性及び陰性コントロール;及び注目のβ-ラクタマーゼ核酸を同定するプロトコール;を別々にパッケージして含むパッケージングを含み、該プライマーが次のグループ:5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1); 5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2); 5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3); 5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4); 5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5); 5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6); 5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7); 及び5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、から選択される。
【0016】
また更に本発明の別の観点では、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応を用いてCTX-M β-ラクタマーゼのファミリーを検出する診断キットに関し、この診断キットは:注目のβ-ラクタマーゼ核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも一つのプライマー対;陽性及び陰性コントロール;及び注目のβ-ラクタマーゼ核酸を同定するプロロコール;を別々にパッケージして含むパッケージングを含み、該プライマー対の一方のプライマーは、次のグループ:5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1); 5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2); 5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3); 5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4); 5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5); 5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6); 5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7); 及び5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、サンプル(例えば、グラム陰性菌の臨床分離株)中のファミリー特異的なβ-ラクタマーゼ核酸に特徴的な核酸(例えば、それをコードする遺伝子の少なくともあるセグメント)の検出に関する。詳細には、本発明は、独特のプライマーとポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いるβ-ラクタマーゼ核酸(好適には、遺伝子又は遺伝子の少なくともあるセグメント)の検出に関する。本発明のプライマーと方法を用いて、例えば、CTX-Mファミリーに属するβ-ラクタマーゼ(例えば、上記のグループ1−5のβ-ラクタマーゼ)を同定することができる。
【0018】
より詳細には、本発明は、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内のグループを特異的に同定するプライマーを提供する。したがって、本発明のプライマーと方法を用いて、CTX-Mファミリーに属するβ-ラクタマーゼを他のβ-ラクタマーゼから識別できるだけでなく、CTX-Mファミリー内の多様なグループ(例えば、上記のグループ1−5のβ-ラクタマーゼ)を同定することができる。しかし、これは任意の一つのプライマー対もファミリー内の一つのグループだけに特異的であるということの方が好ましいが、そういうことを意味しない。例えば、所定のプライマーは、全部ではないが二つ(以上)のグループに特異的である。それでもこれはグループ同定を狭めることになるので都合がよい。
【0019】
CTX-M β-ラクタマーゼを産生する生物を特徴づけるために用いられる遺伝子のPCR増幅と配列決定は、例えばEdelstein 等. (Antimicrob. Agents Chemother., 47: 3724-3732 (2003))に記載されているようなCTX-M遺伝子の存在に関してESBL陽性な生物をスクリーニングする分子的アプローチなどは、当業界で公知である。このアプローチでは、その時点で、当業界で公知であるblaCTX-Mのすべての変異型遺伝子を認識するコンセンサス・プライマー(すなわち、“ユニバーサル”プライマー)を用いて544塩基対の増幅産物を生成する。この反応に続いて、制限断片長多型(RELP)を用いてblaCTX-M遺伝子の特異的グループが同定される。本発明は、上記のアプローチに比べて、特異的プライマー・セットを用いて多様なCTX-M β-ラクタマーゼ遺伝子及び/又はCTX-M β-ラクタマーゼ遺伝子のグループを検出し、追加の同定ステップを実行する必要を(少なくともほとんどの態様に関して)なくしているという利点がある。すなわち、本発明のほとんどの態様に関して、追加の同定ステップは必ずしも必要でないが、望むならば、特にプライマーが二つ以上のグループに特異的であり、それらのグループを区別したい、又は特定のCTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー・メンバーを同定したいという場合、そのようなステップを用いることもできることは言うまでもない。
【0020】
本発明は、CTX-M β-ラクタマーゼ遺伝子に関する単一DNA断片の増幅であって、結果の簡単な解釈を可能にする、CTX-M β-ラクタマーゼ遺伝子が存在するかどうか多数の分離株をスクリーニングするために標準検査室で用いるように適合させることができる増幅手段を提供する。例えば、あるサンプルに含まれる注目のβ-ラクタマーゼ、例えばCTX -M-14 β-ラクタマーゼ、を同定するには、選ばれた本発明のプライマー対(例えば、CTX-M-14 β-ラクタマーゼ用のSEQ ID NO: 5とSEQ ID NO: 6)を用いて増幅産物を生成すると、増幅産物のゲル電気泳動分析によって、注目のβ-ラクタマーゼ(すなわち、CTX-M-14 β-ラクタマーゼ)の同定が単一ステップで可能になる。すなわち、注目のβ-ラクタマーゼを同定するために何も追加の同定ステップ、例えばRFLP、WAVE分析、配列同定(Gold Standard)、又は一本鎖コンフォメーション多形分析(SSCP)、など、は必要とされない。ただし、望む場合、そのような追加分析を行うことはできるであろう。このように、本発明は、Edelstein 等.の方法とは、Edelstein 等.の方法は追加のRFLP分析を必要とし、RFLP分析の先にさらに別の同定ステップの使用も必要とすることがあるという点で、異なっている。
【0021】
さらに、本発明の特許請求の範囲で記載されているような分離された増幅産物を分析するステップは、増幅産物のゲル電気泳動によって生成されるゲルの目視検査を含む。本発明の方法で生成されるゲルは典型的に、明確で曖昧さがないバンドを生ずる;したがって、本発明のプライマーと方法は、訓練及び/又は経験が少ない人でも実行することができ、正確な結果が得られる。しかし、Edelstein等.の方法は、典型的に、本発明の方法ほど明確な生成物が得られず、RFLP分析の結果はしばしば解釈することが難しく、本発明のプライマーと方法で得られるような単一バンドの結果は得られない。このように、Edelstein等の方法は、本発明の方法に比べて曖昧な結果を与え、典型的に、訓練されていない人がそれを正しく解釈することは困難である。
【0022】
さらに、本発明の方法はCTM-X β-ラクタマーゼ・ファミリー内の一つ以上のグループに特異的なプライマー対を提供する。これは、本明細書では、一つのグループ(例えば、CTM-Xファミリーのグループ1で見出されるβ-ラクタマーゼ)に特異的なプライマー対と、二つ以上のグループ(例えば、CTM-Xファミリーのグループ3と5で見出されるβ-ラクタマーゼ)に特異的なプライマー対を含むと定義される;しかし、プライマー対はすべてのβ-ラクタマーゼ・ファミリー・グループに対して特異的ではない。すなわち、本発明は、β-ラクタマーゼの別のファミリー(例えば、OXAファミリー)に含まれるβ-ラクタマーゼに比べてCTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリーに含まれるβ-ラクタマーゼを単一ステップで同定する方法を提供し、かつ、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリーの一つのグループをCTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリーの別のグループに対して識別する方法を提供する。これが、例えばEdelstein等の方法と区別される点である。Edelstein等の方法は、CTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内のグループの間で識別せず、特にワンステップで識別しない。Edelstein 等は、ユニバーサル・プライマーをPCRで用いて増幅産物を得る方法を提供し、そこには他のβ-ラクタマーゼからのすべてのCTX-M β-ラクタマーゼが含まれてよい。その後、サンプル中のβ-ラクタマーゼを決定するためにさらに同定ステップが必要である。本発明は、臨床サンプル中のCTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリーの一つのグループの存在を単一ステップで別のグループに対比して同定する能力を好都合に提供する。
【0023】
本発明の方法は、新しいプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)配列増幅法の利用に関する。米国特許No.4,683,195(Mullis等.)は、核酸を増幅、検出、及び/又はクローニングする工程を発表している。好適には、この増幅方法は、バクテリア、特にグラム陰性菌からの注目の核酸(典型的に、DNA)を含むサンプルのモル過剰なオリゴヌクレオチド・プライマー対による処理に関し、注目の核酸を含むサンプルを加熱して二本の相補的一本鎖核酸を生成し、この核酸の鎖を含むサンプルにプライマー対を加え、ハイブリダイゼーションを可能にする適当な温度条件の下で各プライマーを特定の鎖にアニールさせ、モル過剰な三リン酸核酸とポリメラーゼを加えて各プライマーを延長させて所望の核酸の増幅に用いることができる相補的な延長産物を形成し、増幅された核酸を検出し、増幅された核酸を分析して注目の特定β-ラクタマーゼに特徴的なサイズ特異的アンプリコン(以下で説明する)を調べる。この加熱、アニーリング、及び合成の工程は多数回繰り返され、各サイクルの度に所望の核酸の存在量が増加する。短時間のうちに、特定の核酸、例えばDNA、を得ることができ、それを容易に精製し同定することができる。
【0024】
SEQ ID NO: 1からSEQ ID NO: 8までの群から選択される少なくとも一つのプライマーを含むオリゴヌクレオチド・プライマー対は、その核酸のセンス鎖の少なくとも一部分と実質的に相補的な一つのプライマーと、その核酸のアンチセンス鎖の少なくとも一部分と実質的に相補的な一つのプライマーを含み得る。延長産物を形成する工程は、好適には、アニールされたプライマーを各プライマーの3’末端から同時に延長させて各プライマーにアニールされた核酸鎖と相補的な延長産物を合成することを含み、各延長産物はそのβ-ラクタマーゼ核酸から分離された後に各対の他方のプライマーの延長産物を合成するためのテンプレートの役目をする。増幅産物は、好適にはゲル電気泳動を用いてサイズ分別によって検出される。この方法のバリエーションは米国特許 No. 4,683,194 (Saiki等) に発表されている。ポリメラーゼ連鎖反応配列増幅法は、また、Saiki等., Science, 230, 1350-1354 (1985) にも発表されている。
【0025】
本明細書で用いられる場合、“オリゴヌクレオチド”とは、任意の長さのヌクレオチド、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド、のポリマー形態を指す。オリゴヌクレオチドという用語は、特に一次構造を指し、二本鎖及び一本鎖DNA分子、並びに二本鎖及び一本鎖RNA分子を含む。
【0026】
本明細書で用いられる場合、“プライマー”とは、注目の核酸の少なくとも一部分と相補的であり、その核酸とのハイブリダイゼーションの後にポリメラーゼ連鎖反応の出発点として用いられ得るオリゴヌクレオチドである。本明細書で用いられる場合、“プライマー”又は“オリゴヌクレオチド・プライマー”はさらに、注目の核酸の少なくとも一部分と高度の核酸配列類似性を有するヌクレオチド配列を有するプライマーを指す。“高度”の配列類似性とは、典型的に、少なくとも約80%の核酸配列類似性を有する、好適には約90%の核酸配列類似性を有するプライマーを指す。配列類似性は、例えばGCG FastA (Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin)、Mac Vector 4.5 (Kodak/IBI ソフトウエア・パッケージ) 又はその他の当業界で公知の適当な配列決定プログラム又は方法、などの配列決定法を用いて決定できる。
【0027】
本明細書で用いられる場合、“相補鎖”及び“相補的”という用語は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で特定の核酸とハイブリダイズできる核酸を指す。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、約50℃から約60℃までの温度、及び約1.5ミリモル(mM)から約2.0ミリモル(mM)までのマグネシウム(Mg)濃度、などである。したがって、ある特定DNA分子は典型的に、もしもその特定DNA分子とある核酸の間でハイブリダイゼーションが起こる場合、その核酸に対して“相補的”である。さらに、“相補的”とは、プリンとピリミジン・ヌクレオチドが二本鎖核酸分子において水素結合によって結びつく能力を指す。以下の塩基対は相補的である:グアニンとシトシン、アデニンとチミン、及びアデニンとウラシル。
【0028】
本明細書で用いられる場合、“増幅された分子”、“増幅された断片”及び“アンプリコン”という用語は、核酸分子の少なくとも一部分及びその相補配列のコピーである核酸分子(典型的に、DNA)を指す。コピーは、ヌクレオチド配列で、元の分子及びその相補配列に対応する。アンプリコンは、いろいろな方法によって検出し分析できる。例えば、ゲル電気泳動、一本鎖コンフォメーショナル多形分析(SSCP)、制限断片長多形(RFLP)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、などである。好適には、本発明の方法及びプライマーを用いて、当業者に公知の方法によって、ゲル電気泳動と適当なサイズのマーカーを用いてアンプリコンを検出し、それにより、β-ラクタマーゼのタイプを同定することができる。
【0029】
プライマーは、合成された又は天然のオリゴヌクレオチドであって、注目のβ-ラクタマーゼを含むDNA分子の領域と相補的な産物の合成を開始する点として作用することができるものである。プライマーは、次のグループ、すなわち:CTX-M-1, CTX-M-2, CTX-M-3, CTX-M-4, CTX-M-5, CTX-M-6, CTX-M-7, CTX-M-8, CTX-M-9, CTX-M-10, CTX-M-11, CTX-M-12, CTX-M-13, CTX-M-14, CTX-M-15 (UOE-1としても知られる), CTX-M-16, CTX-M-17, CTX-M-18, CTX-M-19, CTX-M-20, CTX-M-21, CTX-M-22, CTX-M-23, CTX-M-25, CTX-M-26, CTX-M-27, CTX-M-28, CTX-M-29, CTX-M-30, TOHO-1, TOHO-2, 及びこれらのβ-ラクタマーゼの組み合わせ、から成るグループから選択されるβ-ラクタマーゼの核酸分子の少なくとも一方の鎖の少なくとも一部分とストリンジェントな条件の下でハイブリダイズできるヌクレオチドを含む。
【0030】
好適には、本発明のプライマーは典型的に、少なくとも約15ヌクレオチド、好適には少なくとも約18ヌクレオチド、より好適には少なくとも約20ヌクレオチドを有する。典型的に、プライマーは約30ヌクレオチド以下、好適には約28ヌクレオチド以下、より好適には約26ヌクレオチド以下、またより好適には約24ヌクレオチド以下、それよりさらに好適には約22ヌクレオチド以下、である。プライマーは、好適には少なくとも約300塩基対、かつ好適には約600塩基対以下、より好適には約500塩基対以下の主要な産物を産するように選ばれる。
【0031】
任意に、本発明に従って用いられるプライマーはラベル成分を含む。ラベル成分は、同位元素ラベル、蛍光ラベル、ポリペプチド・ラベル、及び色素放出化合物の群から選ぶことができる。ラベル成分は、典型的に、ラベルが付着したヌクレオチドを含めることによってプライマーに組み込まれる。同位元素ラベルは、好適には、ベータ、ガンマ、又はアルファ放出体である化合物などであり、さらに好適には、同位元素ラベルは32P、35S、及び125Iのグループから選ばれる。蛍光ラベルは、典型的に、高い電子状態から低い電子状態へ移るときに可視放射を放出する色素化合物であり、典型的に、エネルギーの吸着から放出までの時間間隔は比較的短く、一般に約10-8から約10-3秒までのオーダーである。利用できる適当な蛍光化合物としては、例えば、フルオロセインやロダミンなどがある。本発明に従って利用できる適当なポリペプチド・ラベルとしては、抗原(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、など)及び酵素(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ)を含む。色素放出化合物は、典型的に、システム成分の化学反応によって吸収したエネルギーの放出(典型的に、光として)と定義される化学発光システムなどであり、酸素を含む化学反応によって光が放出されるオキシルミネッセンスを含む。
【0032】
テンプレート分子の増倍を繰り返すことによるPCRは高感度できわめて有用な分析手段であるが、このような繰り返し増倍はまた、テンプレート中の小さな差異が生成物の量に大きな差を生ずるという欠点がある。この問題に対する一つの解答は、“リアルタイム”PCRを用いることである。すなわち、上述したPCR(すなわち、“従来の”PCR)の利用の他に、本発明のプライマー、方法、及びキットはまた、リアルタイムPCRを実行する場合にも有用であり得る。
【0033】
リアルタイムPCRは、PCR反応の際に放出される蛍光をPCRサイクルでのアンプリコン産生の指標として(即ち、リアルタイムで)モニターして、反応の指数的段階で集められるデータを与える。他方、従来のPCRは、反応の終点でしか増幅された産物の量についてのデータを与えない。
【0034】
リアルタイムPCRは、蛍光レポーター、又は例えば増幅されたPCR産物へのSYBR(商標)Greenなどの蛍光色素の挿入、の検出と定量に基づいている。信号は反応物の中のPCR産物の量に正比例して増加し、各サイクルにおける蛍光放出の量を記録することによってPCR反応を指数的段階でモニターすることができる。さらに、リアルタイムPCRは、PCR産物のPCR後の処理の必要を実質的になくし、それによって生産性を高め汚染の繰り越しの可能性を減ずる。さらに、従来のPCRに比べて、リアルタイムPCRは、分析のダイナミックレンジ(すなわち、標的濃度がどれほど変化させて、なおかつ定量できるか)を広げ、PCR産物の定量における精度を高める。リアルタイムPCRは、また、従来のPCRでは効果的でない用途にも用いることができる(Dorak, Real-Time PCR, http//dorakmt.tripod.com/genetics/realtime.html, 2004, World Wide Webで入手できる)。
【0035】
リアルタイムPCR法は、典型的に、従来のPCR法で用いられるものより短いプライマーを用いる;しかし、一般に得られるアンプリコンは小さく、典型的に、少なくとも約150塩基対、さらに好適には少なくとも約100塩基対、であり、そして好適には約200塩基対以下である。短い産物の増幅は、リアルタイムPCRで得られる利点を強める。すなわち、産物がより長いほど、増幅により長い時間がかかり、“リアルタイム”分析は損なわれる。
【0036】
リアルタイムPCRを本発明のプライマーと方法で用いることができる。この場合、用いられるプライマー対は、SEQ ID NO: 1からSEQ ID NO: 8までのプライマーから選択される一つのプライマーともう一つのプライマーを含み、得られるアンプリコンは典型的に、約100塩基対以上かつ約250塩基対以下である。さらに、本発明はリアルタイムPCRで用いるためのキットを提供し、このキットはプライマー対を含み、プライマー対の一つのプライマーはSEQ ID NO: 1からSEQ ID NO: 8までの群から選択される。
【0037】
所定のβ-ラクタマーゼに特異的な本発明のプライマーの好適な例は以下の通りであり、ここで“F”は5’上流プライマーを指し、そして“R”は3’下流プライマーを指す。好適なプライマーとして以下に挙げた二つ以上の上流プライマーと二つ以上の下流プライマーを有するβ-ラクタマーゼのために、いろいろな組み合わせを用いることができる。典型的に、本発明のプライマーを用いるハイブリダイゼーション条件は、例えば、少なくとも約50℃以上、且つ約62℃以下のハイブリダイゼーション温度、及び少なくとも約1.5 mM(ミリモーラー)、且つ約2,0 mM以下のMg濃度を含む。より低温度及びより高Mg濃度を用いることもできるが、これはプライマーの特異性の減少をもたらし得る。
【0038】
以下のプライマーは、CTX-M-1, 3, 10-12, 15 (UOE-1), 22, 23, 28, 29, 及び30 β-ラクタマーゼ酵素に特徴的な核酸に対して特異的である。
【0039】
プライマー・ネーム: CTXM1-F3
プライマー配列: 5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1)
【0040】
プライマー・ネーム: CTXM1-R2
プライマー配列: 5’- AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2)
【0041】
SEQ ID NO: 1とSEQ ID NO: 2のプライマー配列を含むプライマー対を、CTX-M-1, 3, 10-12, 15 (UOE-1), 22, 23, 28, 29 及び/又は30β-ラクタマーゼ(グループ1 CTX-M β-ラクタマーゼ)を含むサンプルに対して用いると、典型的に、499塩基対のサイズ特異的アンプリコンが得られる。
【0042】
以下のプライマーはCTX-M-2, 4, 5, 6, 7, 及び20β-ラクタマーゼ酵素、並びにTOHO-1β-ラクタマーゼ、に特徴的な核酸に対して特異的である。
【0043】
プライマー・ネーム: TOHO 1-2F
プライマー配列: 5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3)
【0044】
プライマー・ネーム: TOHO 1-1R
プライマー配列: 5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4)
【0045】
SEQ ID NO: 3とSEQ ID NO: 4のプライマー配列を含むプライマー対を、CTX-M-2, 4, 5, 6, 7, 及び/又は20β-ラクタマーゼ、及び/又はTOHO-1 β-ラクタマーゼ(グループ2 CTX-M β-ラクタマーゼ)を含むサンプルに対して用いると、典型的に、351塩基対のサイズ特異的アンプリコンが得られる。
【0046】
以下のプライマーはCTX-M-9, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 21, 及び27β-ラクタマーゼ酵素、並びにTOHO-2β-ラクタマーゼ、に特徴的な核酸に対して特異的である。
【0047】
プライマー・ネーム: CTXM 914F
プライマー配列: 5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5)
【0048】
プライマー・ネーム: CTXM 914R
プライマー配列: 5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6)
【0049】
SEQ ID NO: 5とSEQ ID NO: 6のプライマー配列を含むプライマー対を、CTX-M-9, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 21, 及び/又は27β-ラクタマーゼ、及び/又はTOHO-2 β-ラクタマーゼ(グループ4 CTX-M β-ラクタマーゼ)を含むサンプルに対して用いると、典型的に、474塩基対のサイズ特異的アンプリコンが得られる。
【0050】
以下のプライマーはCTX-M-8, 25, 26β-ラクタマーゼ酵素に特徴的な核酸に対して特異的である。
【0051】
プライマー・ネーム: CTXM 825F
プライマー配列: 5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7)
【0052】
プライマー・ネーム: CTXM 825R
プライマー配列: 5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);
【0053】
SEQ ID NO: 7とSEQ ID NO: 8のプライマー配列を含むプライマー対を、CTX-M-8, 25, 及び/又は26 -ラクタマーゼ(グループ3又はグループ5 CTX-M β-ラクタマーゼ)を含むサンプルに対して用いると、典型的に、307塩基対のサイズ特異的アンプリコンが得られる。
【0054】
他の多様なプライマー、又は上述のプライマーのバリエーション、も本発明の方法に従って調製し使用できる。例えば、高いG/C含有量(すなわち、グアニンとシトシン残基のパーセンテージ)を有する領域を含むことが公知である又は考えられている標的β-ラクタマーゼ遺伝子に基づいて代替プライマーを設計することができる。本明細書で用いられる場合、標的核酸における“高いG/C含有量”は、典型的に、グアニンとシトシン残基のパーセンテージが約60%乃至約90%である領域を含む。調製されるプライマーの変化は、例えば、プライマーのハイブリダイゼーション又はアニーリング温度、用いるプライマーのサイズ、及び同定される特異的耐性遺伝子又は核酸の配列、を変える。したがって、プライマー又はプライマー対のG/C含有量を操作すること、例えば増加又は減少させること、がこの方法の検出感度を高めるのに有益であり得る。
【0055】
本発明のオリゴヌクレオチドは当業界で公知の方法によって容易に合成できる(例えば、Crea等., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 75:5765 (1978)参照)。
【0056】
一度プライマーが設計されたら、その特異性を次のような方法を用いてテストすることができる。臨床的に注目の標的核酸に応じて、その耐性遺伝子を発現する又は含むことが知られているコントロール菌株から核酸が単離される。このコントロール株は、本明細書で用いられる場合、“陽性コントロール”核酸(典型的に、DNA)を指す。さらに、“陰性コントロール”核酸(典型的に、DNA)を、注目の標的遺伝子以外の耐性遺伝子を発現することが知られている一つ以上の菌株から単離することができる。ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、設計されたプライマーが上述のような検出法で用いられ、陽性及び陰性コントロール・サンプル及び注目の耐性遺伝子を含むと思われる少なくとも一つのテスト・サンプルで用いられる。陽性及び陰性コントロールは、テスト臨床サンプルに注目の遺伝子が存在するかどうかを確定するための効果的かつ定性的な(又は、粗い定量的な)手段を提供する。小さなパーセンテージのプライマー対で、他のβ-ラクタマーゼ遺伝子との可能な交差反応性が観測される可能性があるということを認識しておかなければならない。しかし、任意の交差反応による増幅産物のサイズ及び/又は強度はかなり異なっており、したがって、容易に評価して陰性な結果として捨てることができる。
【0057】
本発明はまた、PCR分析によってファミリー特異的なβ-ラクタマーゼ酵素を同定するためのキットに関する。本発明のキットは、典型的に、注目のβ-ラクタマーゼに特異的な一つ以上のプライマー対、一つ以上の陽性コントロール、一つ以上の陰性コントロール、及びポリメラーゼ連鎖反応を用いて注目のβ-ラクタマーゼを同定するプロトコル、を含む。
【0058】
本発明のキットで用いることができるプライマー対は、SEQ ID NO: 1からSEQ ID NO: 8の群から選択されるものを含む。さらに、リアルタイムPCR法で使用できるキットは、プライマー対の一方がSEQ ID NO: 1からSEQ ID NO: 8の群から選択されるプライマー対を含む。陰性コントロールは、注目のβ-ラクタマーゼ遺伝子以外の耐性β-ラクタマーゼ遺伝子をコードする核酸(典型的に、DNA)分子を含む。陰性コントロール核酸は、裸の核酸(典型的に、DNA)分子であっても、バクテリア細胞に挿入されていても良い。好適には、陰性コントロール核酸は二本鎖である;しかし、一本鎖核酸を用いることもできる。陽性コントロールは、注目のβ-ラクタマーゼ遺伝子ノファミリーからのβ-ラクタマーゼ遺伝子をコードする核酸(典型的に、DNA)分子を含む。陽性コントロール核酸は、裸の核酸(典型的に、DNA)分子であっても、バクテリア細胞に挿入されていても良い。好適には、陽性コントロール核酸は二本鎖である;しかし、一本鎖核酸を用いることもできる。典型的に、核酸はバクテリア溶解物から得られる。
【0059】
したがって、本発明はファミリー特異的なβ-ラクタマーゼ遺伝子を特徴付け同定するための一般的に適用できるキットを提供する。好適には、このキットはポリメラーゼ(典型的に、DNAポリメラーゼ)酵素、例えばTaqポリメラーゼなど、を含む。本発明のキットはまた、好適には、あるβ-ラクタマーゼに特異的な少なくとも一つのプライマー対を含む。ポリメラーゼ酵素と両立するバッファー・システムも含まれ、これは当業界で周知である。任意に該少なくとも一つのプライマー対はラベル成分、蛍光ラベル、ポリペプチド・ラベル、及び色素放出化合物、を含んでよい。キットはさらに、少なくとも一つの内部サンプル・コントロールを、PCR分析に必要な、反応容器など、一つ以上の別の手段の他に含んでよい。必要なら、バクテリア・サンプルからの核酸を単離した後、提供された本発明のプライマー・セットを用いてPCR分析を行うことができる。
【0060】
別の態様では、グラム陰性菌を含む臨床サンプル中のファミリー特異的なβ-ラクタマーゼ遺伝子を、ここで“マイクロチップ”検出法で発表されるプライマーによって検出できる。マイクロチップ検出法では、核酸、例えば臨床サンプル中の多数のβ-ラクタマーゼの遺伝子を、人手をほとんど必要としないで検出できる。マイクロエレクトロニクス産業から借りる手法がこの目的に特に適している。例えば、マイクロ機械加工及びフォトリソグラフィー手順は、多数の平行な顕微鏡スケールのコンポーネントを単一のチップ基板に作成することができる。材料は大量生産することができ、再現性はきわめて高い。顕微鏡的なサイズは材料の必要を最小にする。こうして、複数の本発明のプライマーをマイクロチップ表面に固定することができるマイクロチップ・タイプの表面をデザインすることによって、人間による操作を最小にすることができる。
【0061】
したがって、本発明の一つの目的は、多数のシリアル反応が複数の平行なサンプル・ウェルにおいて、検出しようとする複数の核酸鎖の各々について一つの反応ウエル内で自動的に個別に行われる平行スクリーニング方法を提供することである。これらのシリアル反応は、装置の多数の平行レーンの各々の内部で同時に行われる。ここで用いられる場合、“平行”とは、機能において同一のウエルを意味する。“同時”とは、予めプログラムされた一回のランの中でという意味である。同じ装置内で自動的に行われる多数の反応は、サンプル操作と労力を最小にする。
【0062】
すなわち、本発明は、マイクロチップ上の多数の反応ウエルであって、反応ウエルは反応チャンバであり、各反応ウエルが、あるβ-ラクタマーゼ遺伝子を検出するために用いられる個別アレイを含み、それらが与えられた基板、反応条件及びそのウエルでの反応のシーケンスによって特有に定められる多数の反応ウエルを提供する。したがって、このチップは臨床サンプルにおけるβ-ラクタマーゼ遺伝子を同定する方法として用いることができる。
【0063】
本発明の目的と利点は以下の実施例によってさらに詳しく説明されるが、それらの実施例で述べられる具体的な物質及び量、並びにその他の条件や細部、は、本発明を不当に制限するように解釈してはならない。
【実施例1】
【0064】
CTX-Mファミリー特異的なプライマーを用いる腸内細菌科(Enterobacteriaceae)におけるCTX-Mタイプ特異的同定
【0065】
方法:
大腸菌(E.coli)(Ec)、シトロバクター・フロインディー(Citrobacter freundii)(Cf)、及びC.koseri(Ck)を代表する22の分離株が研究された。これらの株はすべてMICsが、セフォタキシムでは1ミリリットルあたり32マイクログラム(mg/ml)より大きく、そしてセフェピムでは16 mg/mlより大きく、セフタジジムでは1乃至8 mg/mlの範囲であった。遺伝子バンクに寄託されたCTX-M遺伝子のデンドログラム分析が行われ、その分析に基づいて、公知のCTX-M遺伝子が4つのファミリーに分けられた。それらのファミリーに基づいて、4セットのファミリー特異的プライマーが設計された。プライマーの特異性が22の分離株すべてでテストされた。
【0066】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅が、図2に示されているような条件の下で行われた。これは、診断プライマー・セットとPCR条件を示し、ハイブリダイゼーション温度は摂氏温度と1.5ミリモル(mM)のMgCl2濃度で示されている。次に選ばれたPCR産物の配列決定が行われてファミリー特異性が検証された。
【0067】
結果:
すべての株からのDNAが、すべてのプライマー・セットでテストされた。分離株の77パーセント(17/22)がCTX-M遺伝子を担持することが同定された。そのうち、68% (15/22)は大腸菌(E. coli) 、そして5% (1/22)はシトロバクター・フロインディー(Citrobacter freundii)であった、C. koseri 分離株ではCTX-M遺伝子は何も同定されなかった。陽性CTX-Mの大腸菌(E. coli)分離株のうち60% (9/15)はCTX-M-14様であり、そして40% (6/15)はCTX-M-1様であった。シトロバクター・フロインディー(Citrobacter freundii)分離株はCTX-M-1様遺伝子をもっていた。選ばれたアンプリコンの配列決定によって、アンプリコンはCTX-M遺伝子のCTX-M-14又はCTX-M-1グループに属することが検証された。他の二つのファミリー特異的プライマー・セットでは増幅産物は何も見られなかった。
【0068】
結論:
感受性(susceptibility)プロファイルだけでは、CTX-M産生生物を予測できない。同じようなMICプロファイルの分離株の23パーセントはCTX-M様遺伝子に関して陰性であった。CTX-M産生菌の正確な調査のためには、感受性プロファイルをファミリー特異的なプライマー・セットを用いる診断的PCRと組み合わせる必要があるだろう。
【実施例2】
【0069】
CTX-Mファミリー特異的プライマーを用いる拡張型β-ラクタマーゼを産生する臨床株におけるβ-ラクタマーゼ遺伝子の同定
【0070】
方法:
全部で175の大腸菌(E.coli)(n=168)、k.ニューモニエ(K. pneumoniae)(n=7)を代表する分離株が研究された。以下の薬に対する最小発育阻止濃度(MICs)が、Vitek (Vitek AMS; bioMerieux Vitek 5 Systems Inc., Hazelwood, MO)によって決定された:ピペラシリン(PIP)、 ピペラシリン/タゾバクタム(TZP)、セフポドキシム(CPD)、セフォタキシム(CTX)、セフタジジム(CAZ)。この研究のために用いられた品質コントロール株は、大腸菌(E.coli) ATCC25922、大腸菌(E.coli) 35218、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC 27853、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 29213、及びk.ニューモニエ(K. pneumoniae)ATCC 700603であった。 この研究全体にわたって、結果は、液体希釈に関する臨床検査基準委員会(NCCLS)規準によって解釈された。
【0071】
ESBLsの存在が、コントロール株と最近の臨床分離株の両方について評価された。スクリーニングは、Vitek (Vitek AMS; bioMerieux Vitek 5 Systems Inc., Hazelwood, MO)によって、1μg/mlのCPD, CAZ, 及びCTXを用いて行われた。CTX (30μg)とCAZ (30μg)ディスクを10μgクラブラン酸塩(CLA)と組み合わせて用いたスクリーニングとディスク確認テストが行われ、ESBLスクリーニング及びディスク確認テストに関するNCCLS規準を用いて解釈された。ESBL確認テストのためのディスクはOxoid Inc. (Nepean, Ontario, Canada) から入手した。k.ニューモニエ(K. pneumoniae)ATCC 700603及び大腸菌(E.coli)ATCC 25922が、それぞれ、陽性及び陰性コントロールとして用いられた。
【0072】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅は、Thermal Cycler 9600装置(Applied Biosystems, Norwalk, CT)で、実施例1で述べたように行われた。予期される増幅産物のサイズ、及びPCRで用いたアニーリング温度は図1に挙げられている。すべてのPCR反応で塩化マグネシウム濃度は1.5 mMであった。
【表1】

【0073】
結果:
設計されたプライマーの特異性が、特定CTX-Mβ-ラクタマーゼを産生することが知られているコントロール株又はCTX-Mβ-ラクタマーゼ以外のESBLsを産生する株から調製されたDNAテンプレートを用いて別々のPCR反応によってテストされた(表1及び2,図3)。CF2, VER-1, Cfr2525/96, Eco3553/98, 及びEC97/38582株から調製されたDNAテンプレートのPCR増幅は、CTX-Mグループ1プライマーを用いた場合、449塩基対(bp)の単一増幅産物を生じた。表1の他のコントロール株からのDNAテンプレートがPCR増幅で用いられたときには、このプライマー・セットで何も増幅産物は同定されなかった。グループIIプライマーは、DNAテンプレートがコントロール株Rio-4, 34, 及びCT1から調製されたとき、361 bpの単一断片を増幅した。他のすべてのコントロール株DNAテンプレートは、このプライマー・セットで何も増幅産物を生じなかった。
【表2】

【表3】

【0074】
グループIVプライマーは、株785D, EC984167, CF1, Rio-6, BM4493, ILT-2, 及びILT-3から調製されたDNAからの474 bpの産物を増幅した。このプライマー・セットも非常に特異的であり、他のコントロール株からテンプレートが調製されたときにはDNAの増幅を何も生じなかった。グループIIIのプライマー・セットを用いると、ただ一つの株Rio-3から調製されたDNAの増幅を生じた。これは、CTX-M-8を産生した。CTX-M-25を産生する分離株を要求したが、入手できなかった。したがって、グループIIIプライマー・セットがbla CTX-M-25を増幅する能力を試験することはできなかった。プライマー対の特異性を示す代表的ゲルが図2に示されている。これらのデータは、これらのグループ特異的なプライマー対の高い特異性レベルを示している。
【0075】
ESBLを産生するすべての大腸菌(E.coli)及びキレブシエラ(Klebsiella)spp.が、bla CTX-M遺伝子の存在に関して調べられた。研究期間に分離された168の大腸菌(E.coli)サンプルのうち、24 (14%)がCTX-M-1グループからのbla CTX-M遺伝子に関して陽性で、CTX-M-1様β-ラクタマーゼを示した。93 (55%)はCTX-M-IVグループからのbla CTX-M遺伝子に関して陽性で、CTX-M-14様β-ラクタマーゼを示し、そして残り51 (31%)のサンプルはbla CTX-M遺伝子の存在に関して陰性であった(表4)。研究期間に分離された7つのk.ニューモニエ(K. pneumoniae)サンプルのうち、2つ (29%)はCTX-M-IVグループからのbla CTX-M遺伝子に関して陽性であり、残る5つ (71%)はbla CTX-M遺伝子の存在に関して陰性であった(表3)。
【表4】

【実施例3】
【0076】
ESBL産生大腸菌(E.coli)感染の集団ベース・サーベイランス
【0077】
方法:
全部で157分離株がESBL産生大腸菌(E.coli)感染の集団ベース・サーベイランスで集められた。大腸菌(E.coli)は標準的な方法で分離され、抗菌物質に対する感受性はVitek AMS(bioMerieux Vitek Systems)を用いて決定された。ESBLの存在は、NCCLSガイドラインに基づいて確定された。セフポドキシムのMICが≧8 μg/mLであるすべての株で、セフォタキシム(CTX; 30μg)とセフタジジム(CAZ; 30μg)ディスクを10μgのクラブラン酸塩(CLA)と組み合わせたNCCLSディスク確認テストを行った。結果はNCCLS規準を用いて解釈された。
【0078】
PCR増幅は、Thermal Cycler 9600装置(Applied Biosystems, Norwalk, CT)を用いて、標準的なPCR条件で、実施例1で述べたように上でSEQ ID NO: 1からSEQ ID NO: 8までとして及び図1で示したCTX-M グループ1-5β-ラクタマーゼに対するプライマー対を用いて行われた。
【0079】
すべての分析は、Stata統計ソフトウエア、バージョン8.0 (Stata Corp., College Station, TX)を用いて行われた。カテゴリカル・データの間の比率の差は、Fisherの厳密検定法によって評価された。発生率は、地域人口統計データを分母として用いて計算され、Poisson分布によるカウントと比較された。カテゴリー特異的なリスクが、Laupland等., J. Infect. Dis. , 187:1452-1459 (2003)に発表されているように計算され、95% CIsと共に報告された。blaCTX-M遺伝子の存在に関連した因子を評価するために多変数ロジスティック回帰モデルが開発された。最初のモデルにおける変数は、単変量解析でP<0.1まで有意なすべての変数、年齢、性別、及びコミュニティー/院内発生、を含んでいた。ステップワイズ変数減少を実行して最終モデルを導出した。校正と判別は、それぞれ、Hosmer-Lemeshowの適合度テストと受診者-操作者 曲線(ROC)下面積を用いて評価された。結果は、Orsと95% CIsで報告された。
【0080】
結果:
ESBLを産生するすべての大腸菌(E.coli)サンプルが、blaCTX-M遺伝子が存在するかどうかPCRによって調べられた。157のサンプルのうち、23 (15%)はCTX-M-IサブグループからのblaCTX-M遺伝子の存在に関して陽性であり(CTX-M-1様β-ラクタマーゼと呼ぶ)、87 (55%)はCTX-M-IIIサブグループからのblaCTX-M遺伝子の存在に関して陽性であり(CTX-M-14様β-ラクタマーゼと呼ぶ)、残り47 (30%)はblaCTX-M遺伝子の存在に関して陰性であった(CTX-M陰性)。
【0081】
本明細書で引用された特許、特許文書、及び刊行物の完全な開示は参照によってその全体が、個別に組み込まれたと同様に本明細書に組み込まれる。本発明に対するいろいろな修正や変更は、本明細書範囲と精神から逸脱することなく当業者には明らかになるであろう。本発明はここで説明された態様や実施例によって不当に制限されないことは言うまでもなく、それらの実施例や態様は例として示されたものであり、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明のプライマーである。
【0083】
【図2】図2は、本発明のプライマーである。
【0084】
【図3】図3は、blaCTXM遺伝子のグループを表す4つのプライマー・セットのCTX-M PCRである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されるプライマー。
【請求項2】
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択される一つのプライマーを含むプライマー対。
【請求項3】
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);及び
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されるプライマー。
【請求項4】
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);及び
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されるプライマー。
【請求項5】
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);及び
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);及びそれらの全長相補鎖、
から成るグループから選択されるプライマー。
【請求項6】
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成るグループから選択されるプライマー。
【請求項7】
臨床サンプルにおいてβ-ラクタマーゼを同定する方法であって:
CTX-Mβ-ラクタマーゼ・ファミリーの一つ以上のグループに特異的な核酸に特異的なオリゴヌクレオチド・プライマーの対を提供するステップ、ここで該対の一方のプライマーはセンス鎖の該β-ラクタマーゼ核酸の少なくとも一部分と相補的であり、且つ各対の他方のプライマーはアンチセンス鎖の該β-ラクタマーゼ核酸の少なくとも一部分と相補的である;
該プライマーを該β-ラクタマーゼ核酸にアニールさせるステップ;
該アニールされたプライマーを各プライマーの3’末端から同時に延長させて各プライマーにアニールされた核酸鎖と相補的である延長産物を合成するステップ、ここで各延長産物は、該β-ラクタマーゼ核酸から分離した後、各対の他方のプライマーの延長産物の合成のためのテンプレートとして働く;
増幅産物を分離するステップ;及び
分離された増幅産物を該β-ラクタマーゼに特徴的な領域について分析するステップ;
を含む方法。
【請求項8】
該分離された増幅産物を分析するステップが、該分離された増幅産物のゲル電気泳動から得られたゲルの目視検査を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、該臨床サンプルにおけるβ-ラクタマーゼをさらに同定するための少なくとも一つの追加アッセイを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該少なくとも一つの追加アッセイが、制限断片長多形分析(RFLP)、WAVE分析、配列同定(Gold Standard)、一本鎖DNA高次構造多形(SSCP)、及びそれらの組み合わせ、から成る群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該オリゴヌクレオチド・プライマーの対がCTX-Mβ-ラクタマーゼ・ファミリーの一つのグループに特徴的な核酸に対して特異的であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
該オリゴヌクレオチド・プライマーの対がCTX-Mβ-ラクタマーゼ・ファミリーの二つのグループに特徴的な核酸に対して特異的であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
該プライマーが、CTX-M 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15 (UOE-1), 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 25, 26, 27, 28, 29, 30, TOHO-1, TOHO-2, 及びそれらの組み合わせ、から成る群から選択される少なくとも一つのβ-ラクタマーゼ酵素に特徴的な核酸に対して特異的であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
該プライマーが:
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
該オリゴヌクレオチド・プライマーの対が、CTX-M-1, 3, 10-12, 15 (UOE-1), 22, 23, 28, 29, 及び30 β-ラクタマーゼ酵素に特徴的な少なくとも一つの核酸に対して特異的であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項16】
該プライマーが:
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);及び
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該オリゴヌクレオチド・プライマーの対が、CTX-M-2, 4, 5, 6, 7, 20, 及びTOHO-1 β-ラクタマーゼ酵素に特徴的な少なくとも一つの核酸に対して特異的であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項18】
該プライマーが:
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);及び
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該オリゴヌクレオチド・プライマーの対が、CTX-M-9, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 21, 27, 及びTOHO-2 β-ラクタマーゼ酵素に特徴的な少なくとも一つの核酸に対して特異的であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項20】
該プライマーが:
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);及び
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該オリゴヌクレオチド・プライマーの対が、CTX-M-8, 25, 及び26 β-ラクタマーゼ酵素に特徴的な少なくとも一つの核酸に対して特異的であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項22】
該プライマーが:
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
臨床サンプルにおいてβ-ラクタマーゼを同定する方法であって:
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成るグループから選択される一つのプライマーを含むプライマー対を提供するステップ;並びに
該プライマー対をリアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応アッセイにかけるステップ;
を含む方法。
【請求項24】
CTX-M β-ラクタマーゼを検出するための診断キットであって、別々にパッケージした形で:
(a)CTX-X β-ラクタマーゼ・ファミリーのグループ1−5のメンバーから成る群から選択されるβ-ラクタマーゼ核酸とハイブリダイズできる少なくとも一つのプライマー対;
(b)陽性及び陰性コントロール;並びに
(c)注目のβ-ラクタマーゼ核酸を同定するためのプロトコル;
を含むパッケージングを含み、該プライマー対がCTX-M β-ラクタマーゼ・ファミリー内の一つ以上のグループに対して特異的であることを特徴とする診断キット。
【請求項25】
該プライマーが:
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の診断キット。
【請求項26】
CTX-M β-ラクタマーゼを検出するための診断キットであって、別々にパッケージした形で:
(a)注目のβ-ラクタマーゼ核酸とハイブリダイズできる少なくとも一つのプライマー対;
(b)陽性及び陰性コントロール;並びに
(c)注目のβ-ラクタマーゼ核酸を同定するためのプロトコル;
を含むパッケージングを含み、該プライマーが:
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする診断キット。
【請求項27】
リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応を用いてCTX-M β-ラクタマーゼを検出するための診断キットであって、別々にパッケージした形で:
(a)注目のβ-ラクタマーゼ核酸とハイブリダイズできる少なくとも一つのプライマー対;
(b)陽性及び陰性コントロール;並びに
(c)注目のβ-ラクタマーゼ核酸を同定するためのプロトコル;
を含むパッケージングを含み、該プライマー対の一方のプライマーが:
5’-GAC GAT GTC ACT GGC TGA GC-3’ (SEQ ID NO: 1);
5’-AGC CGC CGA CGC TAA TAC A-3’ (SEQ ID NO: 2);
5’-GCG ACC TGG TTA ACT ACA ATC C-3’ (SEQ ID NO: 3);
5’-CGG TAG TAT TGC CCT TAA GCC-3’ (SEQ ID NO: 4);
5’-GCT GGA GAA AAG CAG CGG AG-3’ (SEQ ID NO: 5);
5’-GTA AGC TGA CGC AAC GTC TG-3’ (SEQ ID NO: 6);
5’-CGC TTT GCC ATG TGC AGC ACC-3’ (SEQ ID NO: 7);及び
5’-GCT CAG TAC GAT CGA GCC-3’ (SEQ ID NO: 8);及びそれらの全長相補鎖、
から成る群から選択されることを特徴とする診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504829(P2007−504829A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526342(P2006−526342)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/029695
【国際公開番号】WO2005/024045
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506083040)クレイトン ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】