説明

いかの肝臓の加工食品

【課題】 いかの肝臓を調味料として使用するのに好適な、いかの肝臓の加工食品を提供することを目的とする。また、これにより、いかの肝臓の有効利用を図ることも目的とする。
【解決手段】 本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、少なくとも24時間以上魚醤に浸漬したいかの肝臓から構成されることを特徴としている。また、この場合において、前記魚醤が、いしる醤油であることを特徴としている。さらに、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、魚醤といかの肝臓とから構成されるいかの肝臓の加工食品であって、前記いかの肝臓が、少なくとも24時間以上魚醤に浸漬されており、このいかの肝臓を浸漬した魚醤が、いしる醤油であることも特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いかの肝臓の加工食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いかの肝臓は、「いかわた」等の通称でよく知られ、いかの塩辛に使用される等、我々日本人にとって、非常に馴染み深い食材の一つである。また、最近では、いかの肝臓は、調味料としても使用されるようになってきている。いかの肝臓を調味料として使用した料理は、いかの肝臓が持つ独特の風味が加味されるため、非常に美味であって、人気のあるメニューとなってきている。
【0003】
しかしながら、いかの肝臓は、そのままだと非常に腐敗しやすく、また、いかの身に比べると、使用の用途が非常に限られているため、現状として、いかの加工工場等においては、大量に廃棄されている状態にある。
【0004】
また、いかの肝臓は、調味料として使用されるようになってきてはいるが、いかの身から取り出すのに非常に手間がかかる上、前述の通り、非常に腐敗しやすいため、それ程広範には使用されてはいない。多くの場合、いかの肝臓は、いかを丸ごと一匹手に入れた際に、そのいかの身を使用した料理において、適宜添加される程度にしか使用されていないのが現状である。
【0005】
本発明者は、このような実情のもと、いかの肝臓を、有効利用でき、かつ、調味料としても好適に使用できる手段について、鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者は、いかの肝臓を魚醤に浸漬することによって得られるいかの肝臓の加工食品が、以上に説明したような問題点を解決できる、という知見を得、本発明を創作するに至った。
【0006】
なお、本発明を出願するにあたって、出願人において過去の特許文献等を調査したところ、いかの肝臓や魚醤を使用した加工食品に関する技術について、下記の文献を発見することができたが、本発明に係る技術的思想等を詳述したものについては、発見することができなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−191315号公報
【特許文献2】特開2002−335917号公報
【特許文献3】特開2005−143350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、いかの肝臓を調味料として使用するのに好適な、いかの肝臓の加工食品を提供することを目的とする。また、これにより、いかの肝臓の有効利用を図ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段として、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、少なくとも24時間以上魚醤に浸漬したいかの肝臓から構成されることを特徴としている。
【0010】
また、この場合において、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、前記魚醤が、いしる醤油であることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、魚醤といかの肝臓とから構成されるいかの肝臓の加工食品であって、前記いかの肝臓が、少なくとも24時間以上魚醤に浸漬されていることも特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、魚醤といかの肝臓とから構成されるいかの肝臓の加工食品であって、前記いかの肝臓が、少なくとも24時間以上魚醤に浸漬されており、このいかの肝臓を浸漬した魚醤が、いしる醤油であることも特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非常に、簡便且つ安価な手段によって、いかの肝臓を調味料として使用するのに好適な、いかの肝臓の加工食品を提供することができる。また、これにより、いかの肝臓の有効利用を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るいかの肝臓の加工食品を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
まず、スルメイカを用意し、このスルメイカから、内臓を取り出す。取り出した内臓から、さらに肝臓だけを抜き出して、これを、常温下(20℃±15℃:日本工業規格による)において、少なくとも24時間以上、いしる醤油(いしり醤油)に浸漬する。なお、この際、浸漬するいかの内臓は、丸ごとでも良いし、適当な大きさにカットしたり、ペースト状に潰しても良い。このようにして、本実施形態に係るいかの肝臓の加工食品を製造する。
【0016】
なお、本実施形態において、いかの肝臓の加工食品とは、以上のようにして製造した、魚醤といかの肝臓とから構成されるもの、及び、浸漬されていた魚醤より取り出したいかの肝臓そのもの、それぞれをいうものとする。
【0017】
また、本実施形態において、いかの肝臓をいしる醤油に浸漬する時間を、30日以上とすることで、いかの肝臓の熟成が進むため、よりコクと旨味のある、いかの肝臓の加工食品を得ることができる。さらには、これよりももっとコクと旨味が得られるよう、90日以上、いかの肝臓をいしる醤油に浸漬しても良い。
【0018】
また、以上の実施形態においては、いかの肝臓として、スルメイカの肝臓を使用しているが、いかであれば、スルメイカに限られず、あらゆる種類のいかを使用することができる。
【0019】
さらに、本実施形態においては、魚醤として、いしる醤油に浸漬しているが、いしる醤油以外の魚醤、例えば、しょっつるや、ナンプラー等に、いかの肝臓を浸漬しても構わない。ただし、本発明者の知見によれば、いしる醤油に浸漬することで、最も、コクと旨味に優れたいかの肝臓の加工食品を得られると認められる。この点は、必ずしも明らかでは無いが、いしる醤油でも、いかの肝臓が原料として使用されているため、いしる醤油に含まれているいかの肝臓に由来の成分が、浸漬したいかの肝臓に好適に作用することが原因と考えられる。
【0020】
また、以上の実施形態において、いかの肝臓をいしる醤油に浸漬する際は、いかの肝臓の腐敗を防止し、その熟成を最大限に進めるため、いかの肝臓が空気に触れないよう、いかの肝臓を、完全にいしる醤油の中に浸漬することが好ましい。
【0021】
さらに、以上の実施形態において、いかの肝臓の熟成を促進させ、また、いかの肝臓の加工食品に、コクと旨味を与えるため、ペースト状の海老味噌(オキアミを用いて作った「ハーチョン」等)を、いしる醤油に対して15〜25重量%加えることが好ましい。
【0022】
なお、本発明に類似する手段として、いかの肝臓を、塩漬けにしたり、又は、醤油漬にしたりして、いかの肝臓の加工食品を製造することが考えられるが、これらの手段によっては、本発明に係るいかの肝臓の加工食品と同等のコクや旨味を有するものを製造することはできないと認められる。それは、次のような理由による。
【0023】
まず、いかの肝臓を塩漬けした場合は、いかの肝臓中の水分がほぼ抜け出してしまい、いかの肝臓を好適に熟成させることができなくなってしまう。また、いかの肝臓を塩漬けにしたものは、塩分がきつく辛すぎるため、調味料としての使用には不向となってしまう。一方、いかの肝臓を魚醤に浸漬した際は、適度な水分量が保たれるため、いかの肝臓を非常に好適に熟成させることができる上、適度な塩分濃度となるため、これを調味料として好適に使用することができる。
【0024】
また、いかの肝臓を醤油漬にしたものは、魚醤に浸漬したものに比べると、コクや旨味の点で、数段劣ったものとなってしまう。この点は、必ずしも明らかでは無いが、いかの肝臓を熟成させたものは、大豆を原料とする醤油よりも、魚介類を原料とする魚醤に、ずっと近い成分を有するものと認められるため、これらの成分が近似することにより、いかの肝臓の加工食品に、より一層、コクと旨味を与えられるからであると考えられる。
【0025】
本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、調味料として使用することができる。一般的に、調味料は、匂いを抑えたりして、食品をまろやかに食べやすくすることが目的であるが、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、いかの肝臓が本来有している風味を備えることになるので、これを加える料理に、いかの肝臓に由来する独特の風味を与えることができる。
【0026】
また、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、魚醤に浸漬することで、高濃度の塩分を有することになるので、容易に腐敗することがない。そのため、加熱していない生の状態のいかの肝臓を使用しても、何ら問題なく製造することができる。
【0027】
また、本発明に係るいかの肝臓の加工食品は、調味料として、いかの身を使用した料理に関わらず、あらゆる料理、例えば、煮物、焼き物、炒め物の味付けや、鍋物のダシ、さらには、和食以外の料理にも、好適に使用することができる。この際、浸漬した魚醤から取り出したいかの肝臓のみを使用しても良いし、また、いかが浸漬されていた魚醤のみを使用しても良いし、さらには、いかの肝臓及び魚醤を、適宜混ぜ合わせて利用しても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも24時間以上魚醤に浸漬したいかの肝臓から構成されることを特徴とする、いかの肝臓の加工食品。
【請求項2】
前記魚醤が、いしる醤油であることを特徴とする、請求項1に記載のいかの肝臓の加工食品。
【請求項3】
魚醤といかの肝臓とから構成されるいかの肝臓の加工食品であって、前記いかの肝臓が、少なくとも24時間以上魚醤に浸漬されていることを特徴とする、いかの肝臓の加工食品。
【請求項4】
魚醤といかの肝臓とから構成されるいかの肝臓の加工食品であって、前記いかの肝臓が、少なくとも24時間以上魚醤に浸漬されており、このいかの肝臓を浸漬した魚醤が、いしる醤油であることを特徴とする、いかの肝臓の加工食品。

【公開番号】特開2009−254305(P2009−254305A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108567(P2008−108567)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(507376004)
【Fターム(参考)】