説明

うつ病の治療

【課題】うつ病の治療又は軽減のための化合物を提供する。
【解決手段】本化合物はトラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うつ病の治療のための薬剤と治療方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)の最近の調査によると、うつ病は障害の10大原因の1つとなっている。WHOの研究(WHO2001)は、うつ病が2020年までに全世界の保健負担の2番目に大きな原因となると推定している。すでに1億2千万人超が治療を必要とする抑鬱障害を現在、患っている。多くの人は一生のどこかの時点で抑鬱障害に苦しめられる。WHOは全ての男性と女性の17%が一生の間に抑鬱障害を患うであろうと推定している。女性の方が男性よりうつ病を患う率が高い。どの年も全男性の6%と全女性の9.5%が抑鬱障害を患うであろうと推定されている。
【0003】
また、実際にはうつ病を患っている多くの人が正しく臨床的にうつ病であると診断されていないと推定されている。2001年に西洋諸国と日本において、うつ病の治療を必要としている患者の約40%だけが正しくうつ病であると診断されたと推定されている(非特許文献1)。これらの推定はうつ病の性質と機構についてのある程度の不確かさを反映している。用語「うつ病」は、仕事を続け高いレベルで働くことができる人々から、食べることも飲むこともせず話すことも動くこともしない緊急電気痙攣療法の対象になりそうな人々まで、非常に広い範囲の症状を指すことがある。
【0004】
うつ病の機構の古い説明のほとんど全ては異常な脳内化学作用に関連する。それらの説明は、患者の気分に関与する中央脳システム内における神経刺激伝達物質の放出の濃度又はパターンの変化を含む。これらの説明では、患者の行動は気分を制御する中央脳システム内の異常な働きの結果である。
【0005】

Central mood systems:中央気分システム
Malfunction:異常動作
Behaviour:行動
【0006】
治療は、異常動作している気分を制御する中央脳システム内の神経刺激伝達物質系への介入として同様に説明される。
【0007】

Central mood systems:中央気分システム
Malfunction:異常動作
Treatment:治療
Behaviour:行動
【0008】
しかし、より最近のうつ病の説明は、うつ病を起こすのに係る脳システムとプロセスとのより複雑な理解に関係している(例えば、非特許文献2)。これらの説明では、大うつ病性障害のある患者の行動特徴と適応疾病行動の行動特徴との間の非常に密接な類似性が述べられている。この類似性は、最初に動物について報告された。両者は、疲労、嗜眠、精神運動遅滞、認知機能障害、及び正常な活力と欲望に関する意欲喪失を含む。疾病行動の場合、これらの行動の適応機能は、当該動物のエネルギーが保存され、更なる損傷の可能性が最小化され、免疫システムの働きが向上した状態を得ることであると説明される。そして、この行動を起こすのに係る脳システムの障害が人々の抑鬱行動の原因であることが示唆されていると説明される。うつ病のこれらの最近の説明において、重要なシステム群は次のように特徴を表現することができる。
【0009】

Sensory input, e.g.pain:感覚入力、例えば痛み
Perception of pain or “illness”:痛み又は疾患の認識
Central mood systems:中央気分システム
Behaviour行動
【0010】
このシステム群は複数の異なる状態を取ることができる。第1の例では、痛み入力が無く、痛みの認識を担当するシステムは痛みが無いことを正しく知らせ、中央気分システムは影響を受けず、正常な行動が出力される。第2の例では、感覚入力に痛みが通知され、認識システムはこの痛みを正しく通知し、中央気分システムはうつ状態になり、適切なエネルギー保存最小化行動が出力される。第3の例では、感覚入力に痛みの通知はないが、認識システムが異常動作し痛み状態を中央気分システムに通知し、中央気分システムはうつ状態になり、異常動作によるうつ行動が出力される。第4の例では、古いうつ病モデルと同じであり、感覚入力と痛みの認識は正常であるが、中央気分システムが異常動作し、不適切なうつ行動が出力される。第5の例では、感覚入力は正常であるが、痛みの認識を担当するシステムと中央気分システムの両方が異常動作し、不適切なうつ行動が出力される。
【0011】
治療方法は、これらのシステムの可能な動作と異常動作の上記並べ換えの結果である。全てのシステムが正常に動作し、痛み入力が無い場合は、治療は必要ない。末梢疾患が痛み入力を生成し、他のシステムがそれを正しく解釈している場合、その末梢疾患を(可能であれば)治療するべきである。中央気分システムだけに障害がある場合は、従来の抗うつ薬が推奨されてもよい。しかし、他の全ての場合、適切な治療には、上記システムの最初の2つの構成要素の異常動作(又は末梢の手に負えない痛み入力)を治療するための鎮痛薬と、中央気分システムの異常動作を治療するための抗うつ薬とを同時に使用してうつ病に対処することが不可欠である。このことを下記に図で示す。
【0012】

Sensory input, e.g.pain:感覚入力、例えば痛み
Malfunction:異常動作
Perception of pain or “illness”:痛み又は疾患の認識
Central mood systems:中央気分システム
Behaviour行動
Analgesia:鎮痛薬
Antidepressnt:抗うつ薬
Analgestic antidepressant for depression:うつ病の鎮痛薬抗うつ薬治療
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ディシジョン・リソーシズ社、精神障害研究1、2002年11月
【非特許文献2】Charlton B.G. “Psychiatry and the human condition”, Radcliffe Medical Press: Oxford, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、うつ病の効果的な治療方法であって、その作用機構がうつ病を起こすのに係る脳の幾つかのシステム、感覚、認識、及び気分システム、への複数の介入を含む治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
我々は、うつ病を起こすのに係る脳の幾つかのシステム、感覚、認識、及び気分システム、への複数の介入を行うことで、うつ病の治療に効き目があるという驚くべき効果を有する一群の化合物を見つけた。
【0016】
従って、第1の態様によれば、本発明はうつ病の治療又は軽減のためにトラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された化合物を提供する。
【0017】
本発明は、特に痛みが原因の1つ又は原因であるうつ病の治療又は軽減のために上記の化合物を提供する。
【0018】
本発明の上記化合物はそれぞれ、うつ病も治療しながら痛みの治療又は軽減に効き目がある点において特に有利である。従って、本発明の化合物は鎮痛抗うつ薬として有用である。
【0019】
本発明の上記化合物はそれぞれ、痛みとうつ病を別々に、又は同時に、又は順に治療する場合がある。
【0020】
本発明の好適な化合物は、トラマドール、レスベラトロル、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された化合物である。
【0021】
従って、本発明の追加の態様によれば、本発明はうつ病の治療又は軽減のための薬剤の製造におけるトラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された化合物の使用を提供する。
【0022】
また、本発明は、痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のための薬剤の製造における上記の化合物の使用を提供する。
【0023】
これらの例示の化合物は、中枢神経系内の特定のタンパク質に影響することで鎮痛薬と抗うつ薬の両方の効果を奏する。研究の結果、シクロオキシゲナーゼ、オキシドレダクターゼ、ヒスタミン放出タンパク質、インドール−3−アセトアルデヒド酸化酵素、プロリルアミノペプチダーゼ、オピオイドδ受容体、オピオイドκ受容体、オピオイドμ受容体、及びコルチコトロピン放出因子を含むタンパク質が痛み信号の抑制の仲介に係っていることが示された。研究の結果、2−ハロ脂肪酸デハロゲナーゼ、アセチルコリン受容体と代謝酵素、アドレナリン受容体と代謝酵素、ドーパミン受容体と代謝酵素、5−ヒドロキシトリプタミン受容体と代謝酵素、モノアミン受容体と代謝酵素、及びCCケモカイン2受容体を含むタンパク質が中央気分状態及び変化の仲介に係っていることが示された。これらの例示の化合物は、痛み信号の抑制の仲介に係る1つ以上の特定のタンパク質の機能と、中央気分状態及び変化の仲介に係る1つ以上の特定のタンパク質の機能とに影響することで鎮痛薬と抗うつ薬の両方の効果を奏する。
【0024】
本明細書で使用する用語「誘導体」は特に溶媒化合物を含む。記載された使用/方法のいずれかにおいて使用される本明細書に記載した化合物の対応する溶媒化合物を調製、精製、及び/又は処理するのが便利又は望ましい場合がある。用語「溶媒化合物」は本明細書において化合物又は化合物塩等の溶質と溶媒との複合物を指す。溶媒が水である場合、溶媒化合物は水和物、特に基体の分子当りの水分子の数に依って、例えば一水和物、二水和物、三水和物などと呼ばれる。
【0025】
本発明の追加の態様によれば、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにトラマドール及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0026】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにレスベラトロル及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0027】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにアセトアミノフェン及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0028】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにキソルファノール及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0029】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにシンフェノアク及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0030】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにフルクロプロフェン及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0031】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のために次サリチル酸ビスマス及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0032】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにエノフェラスト及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0033】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにトリフルサール及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0034】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにケトルファノール及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0035】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにインドリリン及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0036】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにフロフェナク及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0037】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにシゾリルチン及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0038】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにダセマジン及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0039】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにデメルベリン及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0040】
また、本発明はうつ病の治療又は軽減、特に痛みが原因又は原因の1つであるうつ病の治療又は軽減のためにフェネタジン及び/又はその誘導体又は異性体を提供する。
【0041】
従って、1つの実施形態では、本発明はうつ病の治療のための薬剤の製造におけるトラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体のうちいずれか1つの使用を提供する。
【0042】
また、第2の態様においては、本発明はトラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された1つ以上の化合物の治療上効果的な量の投与を含むうつ病を患う患者の治療方法を提供する。
【0043】
本発明の方法は、特に痛みが原因の1つ又は原因であるうつ病を患う患者の治療方法を提供する。
また、本発明は、任意の種類の痛み又は任意の種類の痛みの誤認識が原因の1つ又は原因であるうつ病を治療する方法であって、治療上効果的な量の上記化合物及びその誘導体及び/又は組合せを投与するステップを含む方法を含む。
【0044】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がトラマドール及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0045】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がレスベラトロル及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0046】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がアセトアミノフェン及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0047】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がキソルファノール及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0048】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がシンフェノアク及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0049】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がフルクロプロフェン及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0050】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物が次サリチル酸ビスマス及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0051】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がエノフェラスト及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0052】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がトリフルサール及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0053】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がケトルファノール及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0054】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がインドリリン及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0055】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がフロフェナク及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0056】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がシゾリルチン及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0057】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がダセマジン及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0058】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がデメルベリン及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0059】
本発明の追加の態様によれば、本発明は、該化合物がフェネタジン及び/又はその誘導体又は異性体である上記の方法を提供する。
【0060】
トラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された化合物はそれ自体は既知であり、当業者に既知の方法を使用して調製されても、市販のものを入手してもよい。
【0061】
好適な化合物のグループは、トラマドール、レスベラトロル、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループである。
【0062】
本発明の使用及び/又は方法においては、有利にも上記化合物及び/又はそれらの誘導体及び/又は組合せは経口又は静脈内投与されてよい。
【0063】
本発明の化合物及び/又はそれらの誘導体及び/又は組合せは、それ自体は既知の1つ以上の他の薬剤と組合せて投与することができる。例えば、本発明の化合物及び/又はそれらの誘導体及び/又は組合せは、精神病又は他の精神障害のための1つ以上の薬剤と組合せて(障害の因子の組合せがそのような薬剤の組合せを要求する場合に)投与することができる。そのような組合せ治療法は、本発明の化合物を精神病又はうつ病を含む他の精神障害のための薬剤と別々に、又は同時に、又は順に投与することを含む。
【0064】
うつ病の治療又は軽減に効き目があることが知られている他の薬剤の例は、これらに限定されないが、三環系薬剤、例えばアミトリプチリン又はオミプラミン;モノアミン酸化酵素阻害薬、例えばフェネルジン、イソカルボキサジド、トラニルシプロミン、及びモクロベミド;及び選択的セロトニン再取り込み阻害薬、例えばフルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、及びエスシタロプラムを含む。
【0065】
本発明の主題を成す上記化合物の医薬組成物は一般に知られている。しかし、併用療法を構成する医薬組成物はそれ自体、新規である可能性があり、従って本発明の追加の態様を形成する。
【0066】
本発明の追加の態様によれば、うつ病の治療又は軽減のためにトラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体から成るグループの1つ以上の化合物を医薬的に許容される補助薬、希釈剤、又は基材との混合物として含む医薬組成物が提供される。
【0067】
更に、トラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体から成るグループの1つ以上の化合物と、精神病又は他の精神障害の治療又は軽減のための薬剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0068】
従って、本発明の使用、方法、及び/又は組成物において、上記グループAの各化合物は、錠剤、カプセル、ドラジェ、座薬、懸濁液、溶液、注射液、例えば静脈内、筋肉内、又は腹膜内、インプラント、局所(例えば経皮)剤、例えばゲル、クリーム、軟膏、エアロゾル、又は重合体システム、または吸入形態、例えばエアロゾル剤又は粉末剤として調製されてよい。
【0069】
経口投与に適切な組成物は、錠剤、カプセル、ドラジェ、懸濁液、溶液、及びシロップ剤を含む。皮膚への局所投与に適切な組成物は、クリーム、例えば水中油乳濁液、油中水乳濁液、軟膏、又はゲルを含む。上記補助薬、希釈剤、又は基材の例は、錠剤とドラジェの場合は、充填剤、例えば乳糖、でんぷん、微晶質セルロース、滑石、及びステアリン酸;潤滑剤/流動促進剤、例えばステアリン酸マグネシウム、及びコロイド状二酸化シリコン;錠剤分解物質、例えばグリコール酸ナトリウムでんぷん、及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムであり、カプセルの場合は、アルファでんぷん又は乳糖であり、経口または注射可能溶液、又は浣腸剤の場合は、水、グリコール、アルコール、グリセリン、及び野菜油であり、座薬の場合は、天然または硬化油又はろうである。
【0070】
本発明の化合物及び/又はそれらの誘導体及び/又は組合せ、又は上記のいずれかの組合された薬剤を、例えば経皮送達手段、又は制御された送達のためにパッチに組込まれる軟膏基材に入れるなどの適切な手段を介して経皮で投与することが可能である。このような手段は、例えば経口又は静脈薬剤と比べて長期の治療を可能にするので有利である。
【0071】
経皮送達手段の例は、患者の皮膚を通して化合物又は薬物を放出するのに適合した、例えばパッチ、ガーゼ類、包帯、又は絆創膏を含んでよい。当業者は化合物又は薬物を経皮送達するために使用できる材料と技法を熟知しているであろう。好例の経皮送達手段は英国特許第2185187号、米国特許第3249109号、米国特許第3598122号、米国特許第4144317号、米国特許第4262003号、及び米国特許第4307717号によって提供される。
【0072】
追加の実施形態では、本明細書に記載した方法及び薬剤は、任意の種類の痛み又は任意の種類の痛みの誤認識が原因の1つ又は原因であるうつ病を含むうつ病の発症を防ぐための手段として予防的に使用することができる。予防使用のための薬剤及び/又は方法は、任意の種類の痛み又は任意の種類の痛みの誤認識が原因の1つ又は原因であるうつ病を含むうつ病を発症する危険性のある人に投与又は適用することができる。
【0073】
男性の場合、推奨される1日の総投与量は異なる可能性があるが、1mgから3000mgの範囲、好ましくは5mgから500mgの範囲である。分割された投与量で1日に1〜6回または持続的放出形態で投与されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明を実施例により下記に説明する。
【実施例】
【0075】
<実施例1>
大うつ病性障害(MDD)の治療におけるトラマドールの抗うつ薬活性を評価するための単一施設非盲検比較並行パイロット試験。
=計画概要=
<試験薬>
トラマドール(一般名)
<投与量/投与形態/ROA>
試験薬は錠剤の形態で初期投与量200mg/1日を2週間経口投与し、次に200〜400mg/1日を更に14週間続けた。
<試験患者個体群>
18〜65歳のMDD患者。
<目的>
トラマドールで治療した場合のMDD患者のHam−Dスコアの変化をアミトリプチリンの場合と比べることでトラマドールの抗うつ薬活性を評価する。
<有効性の評価項目>
寛解は、試験8週終了直後、17項目Ham−D尺度で7以下と定義する。反応は、試験8週終了直後、17項目Ham−D尺度でベースラインから50%以上の減少と定義する。部分的反応は、17項目Ham−D尺度でベースラインから50%未満25%以上の減少と定義する。治癒は、DSM−IV−TR基準に従って診断されるように、8週間以上うつがないと定義する。
<試験構成>
これは、試験個体群の半分がトラマドールの投与を受け、残り半分がアミトリプチリンの投与を受ける比較単一施設並行非盲検ランダム試験であった。
<主要評価項目>
主要評価項目は、Ham−D17項目尺度(ハミルトンMA)で測定される各被験者の治療反応である。試験参加は15以上のHam−Dスコアを必要とする。寛解の達成には7以下の境界スコアを適用する。反応は、スコアの50%以上の減少と定義し、部分的反応は、スコアの50%未満25%以上の減少と定義する。治癒は、DSM−IV−TR基準に従って診断されるように、8週間以上大うつがないと定義する。
<結果>
(進行中の試験の初期臨床データの要約)
トラマドールとアミトリプチリンとによる大うつ病性障害の治療を比較する非盲検試験において、16人の患者が登録され、5人が試験計画を終えた。これら5人のうち3人がトラマドールの投与を受け、2人がアミトリプチリンの投与を受けた。全てのケースで、Ham−D評価尺度を使って測定して、患者のうつに臨床上有意な減少が観察された。追加の8人の患者は良好な治療反応を示している。これまで3人が脱落した。最初の12人の患者の治療反応に関する情報を下記にまとめる。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
うつ病の治療又は軽減のための、トラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された化合物。
【請求項2】
前記化合物は痛みが原因の1つ又は原因であるうつ病の治療又は軽減のためのものである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、痛みとうつ病を同時に、又は順に、又は別々に治療又は軽減するためのものである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、予防のための投与のためのものである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、トラマドール、レスベラトロル、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は、トラマドール、及び/又はその誘導体である請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
トラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された1つ以上の化合物の治療上効果的な量の投与を含む、うつ病を患う患者の治療又は軽減方法。
【請求項8】
前記うつ病は痛みが原因の1つ又は原因である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
痛みとうつ病を同時に、又は順に、又は別々に治療又は軽減することを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
トラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択された1つ以上の化合物の治療上効果的な量の予防のための投与を含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は、トラマドール、レスベラトロル、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体及び/又は組合せから成るグループから選択される請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は、トラマドール、及び/又はその誘導体又は異性体である請求項に記載の方法。
【請求項13】
うつ病の治療又は軽減のための、トラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体から成るグループの1つ以上の化合物を医薬的に許容される補助薬、希釈剤、又は基材との混合物として含む医薬組成物。
【請求項14】
トラマドール、レスベラトロル、アセトアミノフェン、キソルファノール、シンフェノアク、フルクロプロフェン、次サリチル酸ビスマス、エノフェラスト、トリフルサール、ケトルファノール、インドリリン、フロフェナク、シゾリルチン、ダセマジン、デメルベリン、フェネタジン、及びこれらの誘導体から成るグループの1つ以上の化合物と、精神病又は他の精神障害の治療又は軽減のための薬剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
前記薬剤は、三環系薬剤、モノアミン酸化酵素阻害薬、及び選択的セロトニン再取り込み阻害薬のうち1つ以上から選択される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
添付の例を参照して上記で実質的に説明された化合物、方法、又は組成物。

【公表番号】特表2010−530867(P2010−530867A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512766(P2010−512766)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002092
【国際公開番号】WO2009/001040
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509137881)
【氏名又は名称原語表記】E−THERAPEUTICS PLC
【Fターム(参考)】