説明

おむつ汚れ検知器

【課題】
超音波を照射することにより、おむつ内部の汚れに直接に接触することなく、おむつ外部から間接的に汚れを検知できるおむつ汚れ検知器に係る。
【解決手段】
おむつに向って超音波を送信する送信部と、送信超音波のおむつ透過と共におむつ内部の汚れにより反射する反射波を受信する受信部と、受信部にて受信した反射波に基づいておむつ内部の音響インピーダンスを分析することにより、おむつ内部の汚れを検知する検知部とよりなるおむつ汚れ検知器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波を利用したおむつ汚れ検知器に関し、特に検知器をおむつに接触させることなく、おむつ内の汚れを検知するおむつ汚れ検知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老人の着用するおむつは、排尿、排便後にこまめに取替えて、衛生面、健康面での迅速な対応が必要であり、かかるおむつ取替えの迅速な対応は、老人等の看護の重要なケアの一つとされている。
【0003】
そこで、かかるおむつ取替えの時期を自動的に看護者が知り得るようにした汚れ測定器や汚れ報知器が開発され、これらの技術を応用したおむつも開発されている。例えば、典型的な技術として共振周波数原理を応用し、おむつ内部に設置した検知センサーで排尿等による濡れを検知する方法がある。
(たとえば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2001−325865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、おむつ内部の排尿、排便を検知するシステムは、いずれもおむつ内部に直接あるいは間接に排尿、排便を検知するセンサーを配置し、排尿、排便の検知にともなって変化するセンサーからの信号出力レベルを検知することにより排尿、排便を検知し、看護者におむつ取替えの時期を報知するようにしたものである。
【0005】
すなわち、従来のおむつ内部の汚れの検知技術は、おむつ内部、あるいはおむつ自体に直接に検知センサーを配置した技術である。従っておむつの着用時に検知センサーの設置作業が必要となり、あるいは予め検知センサーを装着した特殊なおむつを使用しなければならないため看護者の煩雑さや高価なおむつによる経済的不利が発生するという欠点があった。
【0006】
また、老人がおむつを着用する場合は、倫理的観点からおむつの上にズボン、スカート等の衣服を着用しているため、乳幼児と比較した場合に看護者にとっては、おむつ内の状態を正確に把握できないという看護上の問題点があった。
【0007】
本発明者は、このような現状に鑑み、看護者の煩雑さや高価なおむつによる経済的不利が発生することなく、おむつの着用者が衣服を着用した状態であっても的確におむつ内の汚れを検知することができるおむつ汚れ検知器を提供すべく開発を行うことにより本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明は、おむつに向って超音波を送信する送信部と、送信超音波のおむつ透過と共におむつ内部の汚れにより反射する反射波を受信する受信部と、受信部にて受信した反射波に基づいておむつ内部の音響インピーダンスを分析することにより、おむつ内部の汚れを検知する検知部とよりなるおむつ汚れ検知器を提供せんとするものである。
【0009】
また、請求項2に係る本発明は、検知部において反射波に基づいて音響インピーダンスを分析するに際し、おむつ内部の汚れの有無と共に汚れの程度も検知することを特徴とする請求項1に記載のおむつ汚れ検知器を提供せんとするものである。
【0010】
また、請求項3に係る本発明は、検知部において反射波に基づいて音響インピーダンスを分析して得たおむつ内部の汚れの有無あるいは程度を検知器本体の所定個所に設けた表示部によって表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のおむつ汚れ検知器を提供せんとするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、送信部から送信した超音波がおむつ内部に入射して透過する一方、音響インピーダンスに差がある境界で反射された超音波は受信部にて受信され、その反射波を分析して、おむつ内部の音響インピーダンスの変化にもとづく反射波の差異によりおむつ内部の汚れを検知するものであり、おむつに向って一定の距離を置いて間接的に超音波を発信することができるため、おむつを着用した着衣状態のままでもおむつ内部の状況を検知することができ、おむつ自体あるいはおむつ内部に汚れ検知センサーを特に設置する必要がないという効果があり、従って汎用おむつを使用しても手軽にかつ簡単に汚れを検知することができ、おむつの取替え時期を失することなく適確におむつ取替え作業ができる効果がある。
【0012】
請求項2の発明によれば、反射超音波の振幅及び、超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間を分析して、その汚れの程度まで検知することができるので、汚れの発生と度合の検知により、おむつ取替え時期を正確に知ることができる効果がある。
【0013】
請求項3の発明によれば、おむつ内部の汚れの発生または程度を表示部に表示することができるため、おむつ取替え時期を視覚的に容易に知ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態は、おむつに向って超音波を送信する送信部と、送信超音波のおむつ透過と共におむつ内部の汚れにより反射する反射波を受信する受信部と、受信部にて受信した反射波に基づいておむつ内部の音響インピーダンスを分析することにより、おむつ内部の汚れを検知することを特徴とするおむつ汚れ検知器を提供せんとするものである。
【0015】
また、検知部において検知対象からの反射波に基づいて、おむつ内部、及び衣服内部の音響インピーダンスを分析するに際し、おむつ内部の汚れの有無と共に汚れの程度も検知することにも特徴を有する。
【0016】
また、検知部において検知対象からの反射波に基づいて音響インピーダンスを分析して得たおむつ内部の汚れの有無あるいは程度を検知器本体の所定個所に設けた表示部によって表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のおむつ汚れ検知器を提供せんとするものである。
【0017】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明のおむつ汚れ検知器Aの説明図である。
【0019】
この図1において、符号aは検知器本体を示しており、同検知器本体aは箱型ケース1中に超音波を発信する超音波振動子2を収容しており、箱型ケース1の前面には同超音波振動子2からの超音波を前方へ発信するためのパルス発信部3と、検知対象たるおむつ内部を透過する一方、おむつ内部で反射してきた超音波(反射波)を受信するパルス受信部4とを設けている。
【0020】
なお、本実施例では、検知器本体aを箱型ケースにより構成しているが、これは検知器本体aの一例に過ぎず、その形状は任意に変更することが可能である。
【0021】
パルス受信部4には、受信した反射波に基づいておむつ内部の音響インピーダンスの変化を検出し分析する汚れ検出部5を連結しており、同汚れ検出部5はマイコン7により構成している(図2参照。)。
【0022】
また、マイコン7は、反射波の周波数及び振幅と、その反射波の反射対象である着衣、おむつ、汚物、人体とをそれぞれ対応させて記憶させたメモリを備えている。
【0023】
汚れ検出部5では、着衣、おむつ、汚物、人体のそれぞれを透過しながら音響インピーダンスに差がある境界で反射された複数種類の反射波をそれぞれ分析し、その分析結果とメモリに記憶させているデータとを比較演算すると共に、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間を計測することにより、汚物の有無及び汚物の量を検知する。
【0024】
そして、その検知結果は箱型ケース1の所定個所に設けた表示部12に視認できる状態で表示する。
【0025】
箱型ケース1に設けた表示部12には、排尿と排便との種別やそれぞれの量を表示するように構成されており、反射してきた超音波パルスを分析して、おむつ内部の音響インピーダンスの変化を検知することによって、おむつ内部の汚れの種類とその程度も判別できるようにしている。
【0026】
図1中の符号17は、超音波をトレースするためのレーザー光線照射部であり、ここから照射されるレーザー光線により検知対象物のどの部分を検知しているかを認識させるためのものである。
【0027】
また、符号18は超音波の周波数を調整するためのパルスコントローラーである。なお、このパルスコントローラー18はマイコン7により構成している。
【0028】
以下、このおむつ汚れ検知器Aの動作について、図2を参照して説明する。図2は、図1に示すおむつ汚れ検知器Aの内部を示す機能ブロック図である。
【0029】
おむつ内部の汚れを検知する際には、まず、おむつ汚れ検知器Aを検知対象であるおむつへ向けて超音波を発信する。
【0030】
このとき、おむつ汚れ検知器A内部の超音波振動子2がマイコン7の制御に基づいて振動して所定周波数(ここでは40KHz)の超音波を発生し、この超音波をパルス発信部3から発信する。
【0031】
発信された超音波はおむつ内部の音響インピーダンスに差がある境界で反射されてパルス受信部4で受信された後、増幅器10で増幅され、その後、マイコン7に入力されて分析される。
【0032】
具体的には、超音波の発信から受信までの時間と反射波の振幅とによりおむつ内部の状態を検知する。
【0033】
すなわち、超音波の発信から受信までの時間により、おむつ汚れ検知器Aからおむつ内部の汚れまでの距離や汚れの大きさ、汚れの程度などを検出することができる。
【0034】
また、尿や汚物の種別などにより音響インピーダンスはそれぞれ異なるので、音響インピーダンスの異なる対象物で反射した反射波は、その振幅が反射した対象物によってそれぞれ異なることとなり、この各反射波の振幅と、予めメモリ11に格納した汚れ種別毎の基準振幅とを比較演算することによって汚れの種別を検知する。
【0035】
検知された結果はLEDにより構成された表示部12に表示される。
【0036】
この表示部12は、図3に示すように、「おしっこ欄」13と「おしり欄」14の二種に分かれており、汚れの種別毎にランク目盛り13´14´を表示し汚れのランクを視認できるようにしている。なお、図3中の符号15は電源スイッチボタン、16は表示部12のクリアボタンを示す。
【0037】
また、本実施形態では、表示部12をLEDにより構成しているが、これに代えて、液晶表示装置により表示部12を構成することもできる。
【0038】
かかる超音波反射技術は、40KHz帯、80KHz帯、200KHz帯等の各種の低周波の超音波を対象物体に入射伝播させて対象物体の外表面や内部から反射してきた反射超音波(エコー)を受信して、反射対象における音響インピーダンスの変化を分析して内部の状況を検知する技術であり、おむつ内部にセンサーを設置することなく超音波によっておむつ内部の排尿、排便の状態を外部から検知できるようにしたものである。
【0039】
かかるおむつ汚れ検知器Aにおいて、超音波振動子2からの超音波は箱型ケース1内のパルス発信部3から直接に、あるいは一定の距離空間を保持して間接的におむつの表面または着衣の表面に対して発信させ、おむつまたは着衣からおむつ内部へ超音波を伝播させる。
【0040】
このとき、おむつから一定の距離空間を保持しておむつ内部の検知を行う場合には、おむつ汚れ検知器Aと検知対象であるおむつとの距離、及び、超音波を発信する角度を所定の最適距離、最適角度に保持しておく必要がある。
【0041】
そのため、この最適距離を予めマイコン7内部のメモリ11に記憶させておき、おむつ汚れ検知器Aをおむつに近づけた際、最適距離まで近接した場合にその旨を音により報知する出音装置を設けることにより最適距離での検知を行うことができる。
【0042】
また、最適角度に関しては、上記したレーザー光線照射部17から照射するレーザー光線の照射角度を調整することによって検出することができるようにしている。
【0043】
また、パルス発信部3から発信する超音波の周波数は、おむつへの超音波の照射角度、すなわちおむつへの入射角度や入射部位等によって最適な周波数を選択することが望ましい。
【0044】
そのため、このおむつ汚れ検知器Aでは、おむつ着用者の姿勢、たとえば立位状態、車椅子搭乗状態、横臥状態等によってパルスコントローラー18により発信する超音波の波周波数を調整することができるようにしている。
【0045】
図4は、尻模型に紙おむつを着用させ、紙おむつに擬似便を付着させた状態で、40KHzの超音波パルスを対象物から17.5cm離隔した位置より照射した場合に受信した反射波の振幅変化を示すグラフである。
【0046】
このグラフから判別することは、擬似便のない紙おむつだけの場合αと、擬似便が付着した場合βとでは反射波の波形が異なり、反射波の振幅が小さいもの程擬似便が存在していることになる。
【0047】
このように受信した反射波の振幅の差と、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間の差、すなわちおむつ内部の音響インピーダンスの変化の差によりおむつ内部の汚れの有無、量を検知し、表示部に表示するものである。
【0048】
なお、上記したおむつ汚れ検知器Aと紙おむつとの距離、及び検知に使用する超音波の周波数は一例に過ぎず、おむつ着用者が身に付けている衣服の種類やおむつ着用者の姿勢に応じて適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るおむつ汚れ検知器の説明図。
【図2】本発明に係る検知器の内部を示す機能ブロック図。
【図3】本発明に係る検知器における表示部の説明図。
【図4】本発明に係る検知器により受信した反射波とおむつ内部の汚れとの 関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0050】
A おむつ汚れ検知器
1 ケース
2 超音波振動子
3 パルス発信部
4 パルス受信部
5 周波数検出部
6 表示部
7 マイコン
10 増幅器
11 メモリ
12 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おむつに向って超音波を送信する送信部と、送信超音波のおむつ透過と共におむつ内部の汚れにより反射する反射波を受信する受信部と、受信部にて受信した反射波に基づいておむつ内部の音響インピーダンスを分析することにより、おむつ内部の汚れを検知する検知部とよりなるおむつ汚れ検知器。
【請求項2】
検知部において前記反射波に基づいて前記音響インピーダンスを分析するに際し、おむつ内部の汚れの有無と共に汚れの程度も検知することを特徴とする請求項1に記載のおむつ汚れ検知器。
【請求項3】
検知部において前記反射波に基づいて音響インピーダンスを分析して得たおむつ内部の汚れの有無あるいは程度を検知器本体の所定個所に設けた表示部によって表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のおむつ汚れ検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−250912(P2006−250912A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72103(P2005−72103)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(504371435)イーティエフ株式会社 (2)
【出願人】(501314363)有限会社エイ・アイ・テクノロジー (2)
【Fターム(参考)】