説明

かご型シルセスキオキサン化合物の製造方法

【課題】副反応による異性化や縮合の発生を抑制しつつ、効率良くヒロドシリル化反応を進行させることができるかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】不活性ガス雰囲気下で、
(DRSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q (1)
のかご型シルセスキオキサン化合物と反応触媒とを有する反応溶媒に、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を、ヒドロシリル化反応が進行し、且つ異性化及び縮合が生じない温度条件のもとで、滴下して、(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に不飽和炭化水素化合物を付加反応させ、
(ARSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q (2)
を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応により相補反応性官能基を付加したかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機−無機ハイブリッド材料の一つであるポリシルセスキオキサンは、無機シリカ[SiO]と有機シリコーン[(RSiO)]の中間的な物質であり、(RSiO3/2で表される。シロキサン結合をもつ無機構造部分は、優れた透明性、耐熱性、硬度、絶縁性等、無機材料としての特性を担う。一方、有機構造部分は、ケイ素原子に直接結合した有機官能基からなり、無機構造だけでは不足しがちな有機材料への溶解性や分散安定性、屈折率や誘電率の調整、光硬化性付与等の特性を担う。このように、ポリシルセスキオキサンは無機材料と有機材料の特性を兼ね備えている。
【0003】
ポリシルセスキオキサンはその構造により、ランダム構造、多面体構造、ラダー構造が知られている。その中でも、Si−O結合が三次元的に閉環した構造であるかご型シルセスキオキサン(多面体オリゴマーシルセスキオキサンもしくはPOSS)は、その特異的な三次元的構造ゆえに耐熱性、耐酸化性、耐薬品性及び高い機械的強度、絶縁性など、多くの優れた特徴を持ち、電子材料や光学材料への応用の期待が高まっている。
【0004】
かご型シルセスキオキサンからなるポリシルセスキオキサンは、かご型シルセスキオキサンに相補反応性官能基を付加させて導入し、相補反応性官能基によってかご型シルセスキオキサンを架橋反応させ、高分子化することによって、得ることができる。
【0005】
かご型シルセスキオキサンに相補反応性官能基を導入する方法の一つとして、Si−Hを有するかご型シルセスキオキサンの場合、Si−Hと不飽和結合の付加反応、すなわちヒドロシリル化反応を利用して、不飽和炭化水素化合物を相補反応性官能基としてかご型シルセスキオキサンに導入することが行なわれている(例えば、特許文献1〜4、非特許文献1〜2参照)。
【0006】
ここで、このような相補反応性官能基として不飽和炭化水素化合物を有するかご型シルセスキオキサンとしては、例えば、テトラキス(3−シクロヘキセニルエチルジメチルシロキシ)テトラキス(ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(TCHS)等が挙げられる。
【0007】
かご型シルセスキオキサンの合成において、出発物質として用いられている化合物は、入手容易でかつ安価な、Si−H基を有するオクタキス(ヒドリドジメチルシロキシ)シルセスキオキサン)([Si12][OSiMeH];OHSS)等が一般的である(本出願においてMeはメチル基(−CH)を示す)。そしてこのOHSSに4−ビニル−1−シクロヘキセン等の不飽和炭化水素化合物を添加し、OHSSのSi−Hと4−ビニル−1−シクロヘキセンの不飽和結合をヒドロシリル化反応させることによって、上記のTCHSを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−251121号公報
【特許文献2】特開2007−251122号公報
【特許文献3】特表2008−523165号公報
【特許文献4】特開2007−246880号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry 2005,15,3725−3744.
【非特許文献2】Polymer International 2007,56,1378−1391.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記のようにかご型シルセスキオキサンに不飽和炭化水素化合物をヒドロシリル化反応させるにあたって、工業的スケールで相補反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサンを製造する場合、わずかな副反応が生成物の純度の低下を招き、目的とする物性を得ることができないことが多発するものであった。すなわち、副反応によって、不飽和炭化水素化合物において炭素−炭素二重結合が異性化したり、調製された相補反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサンに縮合が発生したりするおそれがあった。
【0011】
例えば、上記のようにTCHSを調製する場合においては、不飽和炭化水素化合物の4−ビニル−1−シクロヘキセンのシクロヘキサン環の炭素−炭素二重結合が異性化し、生成物の純度の低下を招く場合がある。TCHSはシクロヘキサン環のヒドロシリル化反応で架橋させることによって、高分子化しつつ硬化させることができるものであり、炭素−炭素二重結合に異性化(転位)が生じていると、異性化ビニル基は反応性が乏しい為、架橋反応率が低下し、得られる硬化物の特性が低下することになる。例えば、硬化物の弾性率や靭性等が異性化量とともに低下し、最終製品の特性を低下させることになり、また架橋率の低下に伴なう靭性不足によって、成形プロセスで割れ等の問題を引き起こして歩留まり低減を来すことになるものであった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、副反応による異性化や縮合の発生を抑制しつつ、効率良くヒロドシリル化反応を進行させることができるかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法は、
一般式が
(DRSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q ・・・(1)
で表されるかご型シルセスキオキサン化合物に、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物をヒドロシリル化反応により付加させて、
一般式が
(ARSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q ・・・(2)
で表されるかご型シルセスキオキサン化合物を製造する方法に関するものである。
[式(1)〜(2)中、R1〜6は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはシクロアルキル基である。Aはヘテロ原子を含有しても良い炭素−炭素不飽和結合を有する基、Bは置換又は非置換の飽和アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基もしくは水酸基、Dは少なくとも1つが水素でそれ以外は置換又は非置換のアルキル基もしくは水酸基である。mは6、8、10、12、14から選ばれた数であり、nは0からm−1の整数、pは1からm−nの整数、qは0からm−n−pの整数を表す。]
一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物をヒドロシリル化反応で付加させる反応では、反応温度が高いと、不飽和炭化水素化合物が一般式(1)のシルセスキオキサン化合物に付加した後、不飽和炭素基の転位(異性化)が発生するおそれがあり、また炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物が付加した一般式(2)のシルセスキオキサン化合物がそのまま縮合反応して高分子化してしまうおそれもある。
【0014】
この不飽和炭化水素化合物における不飽和炭素基の転位はヒドロシリル化反応のための触媒の存在する系が高温に曝されることにより発生するものであり、検討の結果、転位は反応の雰囲気(空気中、不活性ガス中、真空中)によらず発生するものであった。そしてこの転位は、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物が一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に付加する前は、たとえ反応触媒の存在下で高温に曝されても起こらず、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物のみを反応触媒の存在下で加熱しても転位は起こらないものであった。つまり、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物は、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に付加反応した後に高温に曝されると、転位が発生するものである。従って、ヒドロシリル化反応による付加反応の温度を低下させることによって転位を抑制することが可能であるが、温度が低すぎると付加反応の速度が遅くなって反応効率が低下し、また未反応原料が残って工業上好ましくない。よって、転位を抑制しつつ効率よく一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を得るには、その反応の温度制御が重要であり、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に対する炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物の付加反応が効率良く進む温度以上で、かつ、付加後の不飽和炭素基の転位が起こらない温度以下で反応させることが必要になり、反応温度の制御は特にスケールが大きくなる工業化レベルにおいて重要である。炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に付加させる反応は発熱反応であり、工業レベルでスケールが大きい場合、この反応熱で系の温度が上昇し、転位が起こり易くなるのである。転位を抑制するため、系全体を冷却しつつ反応させることが考えられるが、これでは生産のエネルギー効率が悪くなるので好ましくない。
【0015】
そこで本発明は、エネルギー効率を損なうことなく、反応熱による発熱を抑制し、なおかつ効率よくヒドロシリル化反応による付加反応を進行させるために、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を滴下することによって、発熱を抑えながらヒドロシリル化反応を進めることが有効であることを見出して完成したものである。
【0016】
すなわち、本発明は、不活性ガス雰囲気下で、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物と反応触媒とを有する反応溶媒に、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を、ヒドロシリル化反応が進行し、且つ異性化及び縮合が生じない温度で、滴下して、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を付加反応させることを特徴とするものである。
【0017】
また請求項2の発明は、不活性ガス雰囲気下、70〜110℃の温度条件のもとで、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物と触媒を有する反応溶媒に、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を滴下して、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を付加反応させることによって、一般式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物を調製することを特徴とするものである。
【0018】
このようにヒドロシリル化反応の温度条件を70〜110℃の範囲に設定することによって、異性化及び縮合が生じない状態でヒドロシリル化反応を進行させて、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を付加反応させることができるものである。
【0019】
また請求項3の発明は、反応触媒が、白金触媒であることを特徴とするものである。
【0020】
このように白金触媒を用いることによって、ヒドロシリル化反応を効率高く進行させることができるものである。
【0021】
また請求項4の発明は、白金触媒が、白金(ジビニルシロキサン)錯体([Pt{Me(CH=CH)Si}O])、白金(ジシクロペンタジエン)錯体([(CPtCl])から選ばれるものであることを特徴とするものである。
【0022】
白金触媒としてこれらのものを用いることによって、ヒドロシリル化反応を効率高く進行させることができるものである。
【0023】
また請求項5の発明は、反応溶媒中の反応触媒の濃度が、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物1モルに対して10−8〜10−3モルの範囲であることを特徴とするものである。
【0024】
反応触媒の量をこの範囲に最適化することによって、転位や縮合を抑制しつつ高効率でヒドロシリル化反応を進行させて、一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を得ることができるものである。
【0025】
また請求項6の発明は、反応溶媒が、炭素数6〜10の脂肪族飽和炭化水素、ベンゼン、飽和アルキル基を含む炭素数7〜12の芳香族炭化水素から選ばれるものであることを特徴とするものである。
【0026】
このような反応溶媒を用いることによって、高効率でヒドロシリル化反応を進行させて、一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を得ることができるものである。
【0027】
また請求項7の発明は、上記の反応溶媒が、トルエン、キシレンから選ばれるものであることを特徴とするものである。
【0028】
このような反応溶媒を用いることによって、高効率でヒドロシリル化反応を進行させて、一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を得ることができるものである。
【0029】
また請求項8の発明は、一般式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物を調製した後、このかご型シルセスキオキサン化合物を貧溶媒にて晶析させるにあたって、貧溶媒として、水、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートから選ばれるものを用いることを特徴とするものである。
【0030】
これらの貧溶媒を用いて一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を晶析させることによって、調製された一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を容易に回収することができるものである。
【0031】
また請求項9の発明は、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物が、オクタキス(ヒドリドジメチルシロキシ)シルセスキオキサン(OHSS)であることを特徴とし、また請求項10の発明は、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物が、4−ビニル−1−シクロヘキセンであることを特徴とするものであり、一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物としてテトラキス(3−シクロヘキセニルエチルジメチルシロキシ)テトラキス(ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(TCHS)を得ることができるものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、異性化及び縮合が生じない状態でヒドロシリル化反応を進行させて、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を付加反応させることができ、副反応による異性化や縮合の発生を抑制しつつ、効率良く一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は実施例1で得たTCHSのIRスペクトル、(b)は実施例1で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図3】実施例3で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図4】実施例4で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図5】実施例5で得たTCHDSのC−NMRスペクトルである。
【図6】実施例7で得たTCHDSのC−NMRスペクトルである。
【図7】比較例1で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図8】比較例2で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図9】比較例3で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図10】比較例4で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【図11】比較例5で得たTCHSのC−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
本発明の方法で製造される相補反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサン化合物は、次の一般式(2)で示されるものである。
(ARSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q ・・・(2)
式(2)において、Aはヘテロ原子を含有しても良い炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ以上有する基を表すものであり、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を基の一部に含むものであればよく、特に限定はされない。このAが相補反応性官能基であり、鎖式又は脂環式アルケン、例えば、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−プロピニル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、シクロアルケニル基等や、脂環式不飽和炭化水素、例えば、シクロペンテニル基、3−シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
式(2)において、Bは置換又は非置換の飽和アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基もしくは水酸基を表す。これらの置換基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、立体的かさ高さの観点から炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。なお、一つの分子内に複数のB基を有する場合、すなわちq≧2の場合、それぞれのB基は同じであってもよく、異なっていても良い。
【0037】
式(2)において、R、R、R、R、R、Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはシクロアルキル基である。このアルキル基における炭素数は1から10が好ましく、任意の水素原子はハロゲン原子または炭素数1から10のアルキル基で置き換えられても良い。またアリール基における炭素数は6から10が好ましく、任意の水素原子はハロゲン原子または炭素数1から10のアルキル基で置き換えられても良い。またアリールアルキル基における炭素数は7から10が好ましく、任意の水素原子はハロゲン原子または炭素数1から10のアルキル基で置き換えられても良い。さらにシクロアルキル基における炭素数は3から10が好ましく、任意の水素原子はハロゲン原子または炭素数1から10のアルキル基で置き換えられても良い。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、立体的かさ高さの観点からメチル基、エチル基が好ましい。
【0038】
式(2)において、mは6、8、10、12、14から選ばれた数を表し、nは0からm−1の整数を表し、pは1からm−nの整数を表し、qは0からm−n−pの整数を表す。
【0039】
上記の一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物としては、例えば次の式(3)で表されるものを挙げることができる。
【0040】
【化1】

【0041】
式(3)の化合物は、一般式(2)において、m=8、n=4、p=4、q=0、R、R、R、Rがメチル基(Me)の化合物であり、ケイ素原子と酸素原子で形成された略6面体構造を構成する8つのケイ素原子のうち、4つのケイ素原子に、シロキサン結合を介して基Aが結合し、他の4つのケイ素原子にシロキサン結合を介して水素原子が結合した構造を有するものである。なお、式(3)の構造式は、略6面体構造を構成する8つのケイ素原子のうち4つのケイ素原子に(OSiMeA)が一つずつ結合し、他の4つのケイ素原子に(OSiMeH)が一つずつ結合していることを簡略化して表現している。
【0042】
次に、上記の一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を製造する方法を説明する。
【0043】
製造原料の一つは、次の一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物である。
(DRSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q ・・・(1)
式(1)において、Dは少なくとも1つが水素でそれ以外は置換又は非置換のアルキル基もしくは水酸基である。アルキル基としては上記に例示したものを用いることができる。また、B、R1〜6、m、n、p、qは上記と同じである。
【0044】
この一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物としては、例えば次の式(4)〜(8)で表されるものを挙げることができる。
【0045】
【化2】

【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

【0050】
式(4)はm=6の化合物、式(5)はm=8の化合物、式(6)はm=10の化合物、式(7)はm=12の化合物、式(8)はm=14の化合物である。ただし、式(4)〜(8)中のRは、一般式(1)のD、B、R、R、R、R、R、R、OHのいずれかを表す。
【0051】
また製造原料の他の一つは、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物である。
炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物は、炭素原子数が少なくとも4つ以上もつ脂肪族、芳香族、脂環式のいずれでも良い化合物であり、炭素−炭素二重結合の間には、ヘテロ原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはシクロアルキル基を含有していても良い。ヘテロ原子としては、酸素原子等;アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはシクロアルキル基としては、メチレン基、フェニレン基、ベンジル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらは置換基を有していても良い。
炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物の一例として、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ有する不飽和炭化水素化合物としては具体的に、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,4−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の脂肪族直鎖ジエン;ビニルシクロプロパン、シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン等の脂環式ジエン;モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、セスタテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40)等のテルペン類;1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジアリルベンゼン、1,3−ジアリルベンゼン、1,4−ジアリルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン等の芳香族系化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物中に、ヒドロシリル化の反応に直接関与しない酸素原子等のヘテロ原子を含有していても良い。この場合、例えば、ヘテロ原子が分子の末端に存在し、水素原子を持つ場合、ヒドロシリル化反応に関与するので好ましくない。以上、これらの中でも、不飽和炭化水素化合物中内の炭素−炭素二重結合はヒドロシリル化により反応性が異なる場合がより好ましく、例えば、4−ビニル−1−シクロヘキセン等が更に好ましい。
【0052】
そして、一般式(1)のかご型シルセスキオキサンに、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を反応させ、一般式(1)のかご型シルセスキオキサンのSi−H基と、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物の1つの炭素−炭素二重結合をヒドロシリル化反応させることによって、一般式(1)のかご型シルセスキオキサンに炭素−炭素二重結合を分子中に1つ以上有する不飽和炭化水素化合物が相補反応性官能基として付加した、一般式(2)のかご型シルセスキオキサンを得ることができるものである。
【0053】
ヒドロシリル化反応は、適切な溶媒に、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物、さらにヒドロシリル化反応のための触媒を溶解乃至分散させた状態で、この反応溶媒中で行なうことができる。
【0054】
この反応溶媒としては、炭素数6〜10の脂肪族飽和炭化水素、ベンゼン、飽和アルキル基を含む炭素数7〜12の芳香族炭化水素を用いることができる。脂肪族飽和炭化水素溶媒としてはヘキサンなどが、芳香族炭化水素溶媒としてはトルエンやキシレン(単一異性体もしくは混合物)などが好ましい。他の反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類も使用できる。具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用した混合溶媒として使用してもよい。
【0055】
またヒドロシリル化反応の反応触媒としては、一般にヒドロシリル化触媒として知られている白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びその他の貴金属の化合物を使用することができるものであり、例えば、カールステッド(Karstedt)触媒の様な白金オレフィン錯体も含まれる。また、貴金属そのものを使用しても良い。好ましいヒドロシリル化触媒としては、後述する実施例において使用するカールステッド触媒である白金(ジビニルシロキサン)錯体([Pt{Me(CH=CH)Si}O])や白金(ジシクロペンタジエン)錯体([(CPtCl];Pt(dcp)と略す)がある。これらの反応触媒は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0056】
反応触媒の使用量は特に制限されるものではないが、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物1モルに対して、10-8〜10-3モルの範囲で使用するのが好ましく、より好ましくは、10-6〜10-4モルの範囲で使用するのが良い。反応触媒の量が10-8モル未満と少ない場合は、ヒドロシリル化反応が十分に進行せず、未反応原料が残るおそれがある。また反応触媒の量が10-3モルを超えて多すぎると、反応触媒由来によるコストの増大を招く他、副反応が発生し易くなって、異性化や縮合が生じるおそれがあり、製品着色や透明性低下を招くおそれがある。
【0057】
炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物は、溶媒で希釈してもしなくても良いが、好ましくは反応溶媒と同じ溶媒で希釈して用いたほうが好ましい。溶媒で希釈する場合、25〜75質量%の濃度に希釈するのが好ましい。希釈して濃度が低くなりすぎるとコスト高や反応遅延を招くおそれがあり、濃度が高すぎると、反応熱の問題及びかご型シルセスキオキサンへの相補反応性官能基の導入が不均一になって、目的物の純度低下を招くおそれがある。
【0058】
そして本発明は、一般式(1)のかご型シルセスキオキサンに反応触媒の存在下で炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を加えて反応させるにあたって、反応溶媒に一般式(1)のかご型シルセスキオキサンと反応触媒とを溶解乃至分散させ、反応溶媒を攪拌しながら、この反応溶媒に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を滴下して添加するようにしたものである。
【0059】
炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を滴下する際の滴下速度は、滴下溶液の濃度、滴下溶液および被滴下溶液の温度にも依存するが、溶媒で希釈しても良い炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を0.2〜100時間をかけて均等に滴下するようにして調整するのが好ましい。滴下の時間は0.2〜8時間がより好ましく、さらに好ましくは0.2〜1時間である。滴下の時間が0.2時間より短い場合、滴下速度が速すぎて、均一性の問題から好ましくないものであり、局部的な発熱反応の進行で炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物の異性化や、生成物の縮合等が発生するおそれがある。また滴下の時間が8時間より長い場合、滴下速度が遅すぎて、コスト面、あるいは炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物の揮発性等の問題から好ましくない。尚、実験的規模から工業的規模にスケールアップするに伴い、単位容積当たりの伝熱面積は相対的に小さくなり、除熱効率は低下するので滴下速度はこれより遅くなる。
【0060】
上記のヒドロシリル化反応は不活性ガス雰囲気下で行なわれるが、反応温度(反応系の反応溶媒の液温)条件は、反応原料や反応触媒の種類等によって異なるが、ヒドロシリル化反応が十分に進行し、なおかつ、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物が異性化すること抑制できると共に反応生成物が縮合することを抑制する温度範囲に設定されるものである。この反応温度は、70〜110℃の範囲に設定するのが好ましい。より好ましくは、80〜100℃、さらに好ましくは80〜90℃である。反応温度が70℃未満の場合、異性化(転位)や縮合等の副反応は抑制できるものの、ヒドロシリル化反応の速度が遅くなり、収率低下を招き、また未反応原料が多くなると共に未反応原料の分離が困難になる。一方、反応温度が110℃を超える場合、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物の異性化や、生成物の縮合等の副反応が進行し、純度低下を招くおそれがある。特にTCHSの合成時は、反応温度は70℃〜100℃に設定するのが好ましく、より好ましくは85〜95℃に設定するのがよい。95℃を越えると転移が発生し易くなり、100℃を超えると転位は確実に起こる。
【0061】
反応時間は、反応原料や反応触媒の種類、反応溶媒中の濃度、及び反応温度に依存するものであり、特に限定されるものではないが、2〜4時間程度が好ましい。反応時間がこれ以上になると、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物の異性化(転位)や、生成物の縮合等の副反応が進行し、純度低下を招くおそれがある。例えば温度90℃でのTCHSの合成では、反応時間は3時間までにすることが望ましい。3時間以上反応させると転位及び生成物の縮合が発生するおそれがある。
【0062】
上記のように、反応溶媒中で、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物をヒドロシリル化反応により付加させることによって、一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を調製することができるものである。この一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物は反応溶媒中に生成されているが、この反応溶媒に貧溶媒を投入したり、貧溶媒にこの反応溶液を投入したりすることによって、生成された一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物を晶析させ、濾過して回収することができる。この晶析に使用可能な貧溶媒としては、一般式(2)のかご型シルセスキオキサン化合物が溶解しないものであれば、特に制限はなく用いることができるが、水、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートが好ましく、特にアセトニトリルが好ましい。これらは一種を単独で用いる他、二種類以上を併用することもできる。
【0063】
尚、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物としては、m=6、8、10、12、14の完全縮合型かご型シルセスキオキサン化合物の他に、m=7で表される式(9)のような不完全縮合型かご型シルセスキオキサン化合物を用いることも可能である。
【0064】
【化7】

【実施例】
【0065】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
尚、TCHSの純度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。分析条件は次の通りである。
【0067】
<GPC分析条件>
測定装置:東ソー社製GPC−8020
カラム:東ソー社製TSKgel G2000HXL、TSKgel G4000HXL
カラム温度:40℃
移動層:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.65mL/min
検出装置:RI
また、TCHSに含まれる4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性体は、炭素核磁気共鳴(C−NMR)により分析した。分析条件は以下の通りである。
【0068】
<C−NMR分析条件>
共鳴周波数:100MHz
測定温度:室温
積算回数:800〜1024回
溶媒及び測定濃度:TCHS300mg/重クロロホルム0.6mL
一般的にC−NMRにおいては、積分値が炭素の相対数を示さず定量性が無い為、上記測定条件で異性体由来の131.8ppmのシグナルの検出有無、及びTCHSのアルケンプロトン由来の126.6ppmのシグナルの相対的な強度比を目安に異性体有無を判断した。
【0069】
(OHSSの合成)
還流管と滴下ロートを取り付けた1000mLのフラスコに水酸化テトラメチルアンモニウム334mL、メタノール164mL、水123mLを投入して攪拌した。そして滴下ロートに179mLのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を装てんし、フラスコ全体を氷浴で約5℃になるまで冷却して、約5℃になった時点でTEOSを滴下した。滴下開始から約1時間で179mLのTEOSの滴下を完了させた。滴下完了後、10分間氷浴中での攪拌を継続した後、氷浴を取り除き、その後、室温で10時間攪拌して反応を進めた。10時間の室温攪拌を完了した後、反応生成物をろ過し、ろ液にオクタアニオン/メタノール溶液を得た。
【0070】
次いで、還流管と滴下ロートを取り付けた1000mLのフラスコに、ヘキサン895mL、ジメチルクロロシラン69.7mLを投入し、攪拌した。そして滴下ロートにオクタアニオン/メタノール溶液を装てんし、フラスコ内の溶液を約5℃になるまで冷却して、窒素雰囲気下で、約5℃になった時点でオクタアニオン/メタノール溶液を滴下した。滴下開始から約2時間で334mLのオクタアニオン/メタノール溶液の滴下を完了させた。滴下終了後、10分間氷浴中で攪拌し、攪拌を継続したまま、氷浴を取り除き、さらに室温で6時間攪拌して、反応を進行させた。6時間攪拌後、2Lの分液ロートにフラスコ内の溶液を移し、下層のメタノール層を取り出した。そして上層のヘキサン層を2Lの三角フラスコに移し、硫酸ナトリウムを加え、約10分間静置することにより、溶液中の水分を乾燥させた。また、下層のメタノール層にヘキサン100mLを加えて反応物の抽出を行なった後、静置して形成された上層のヘキサン層を、上記のヘキサン層を移した2L三角フラスコに移し、溶液中の水分の乾燥を行なった。次にこの乾燥し終えたヘキサン層を1Lナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて、溶液からヘキサンを揮発させ、系内から除去した。このヘキサンを揮発させた1Lナス型フラスコ中に残存している湿った白色固体を、真空ポンプを用いて、減圧下(133Pa(1mmHg),室温)でさらに乾燥した。そして白色固体の入っている1Lナス型フラスコにアセトニトリルを加え、白色固体を攪拌した後、吸引濾過瓶で固体をろ別した。次にこのろ別した白色固体を100mLビーカーに移し、さらにアセトニトリル100mLで洗浄し、吸引ろ過することで白色固体を取り出した。この洗浄操作を2回繰り返した後、真空ポンプを用いて減圧下で乾燥することによって、白色固体のオクタキス[ヒドリドジメチルシロキシ]シルセスキオキサン([Si12][OSiMeH];OHSS)を得た。収率は55%であった。
【0071】
このOHSSは、一般式(1)において、D=H、m=8、n=4、p=4、q=0、R、R、R、Rがメチル基(Me)のかご型シルセスキオキサン化合物であり、解析データを次に示す。
FT−IR(KBr,cm−1):2965(νC−H),2904(νC−H),2143(νSi−H),1423(νSi−CH),1095(νSi−O)
H−NMR δ(400MHz,ppm):0.25(d,48H,J=3Hz,Si−CH),4.73(sept,8H,J=3Hz,Si−H)
Si−NMR δ(79MHz,ppm):−108.7(Si−O),−1.3(SiMeH)
またTGAによる5%熱重量損失温度は215.6℃であった。
【0072】
(実施例1)
還流管と滴下ロートを取り付けた250mLフラスコフラスコに、上記のように合成したOHSSを20g(19.6mmol)投入し、このフラスコを真空下で加熱して水分を除去した後、窒素置換した。次にフラスコに、反応溶媒としてトルエンを50mL、反応触媒としてPt(dcp)の2mMトルエン溶液を0.2mL(OHSS1分子に対して20ppm)添加した。そしてこの混合溶液を200rpmで攪拌しながら、90℃に昇温させ、4−ビニル−1−シクロヘキセン8.5g(78.6mmol)とトルエン8.5gの混合溶液を30分かけて滴下した後、2.5時間、同温度を維持しながら攪拌を継続して反応させた。
【0073】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析した結果、反応マス中の未反応4−ビニル−1−シクロヘキセンは0.1%以下であった。さらに攪拌しながら反応液を30℃以下まで冷却した後、エバポレーターでトルエン含量が25質量%になるように濃縮した。次に、1000mLのフラスコにアセトニトリル400gを加えて300rpmで攪拌しながら、室温下で上記の濃縮液を1時間かけて滴下し、さらに0.5時間攪拌した後、ろ過・洗浄を行なった。そして30℃以下で真空乾燥することによって、白色結晶24.2g(16.7mol)を得た。収率は88%であった。
【0074】
このようにして、一般式(2)におけるAが4−ビニル−1−シクロヘキセン由来のシクロヘキセニル基、m=8、n=4、p=4、q=0、R、R、R、Rがメチル基(Me)である、テトラキス(3−シクロヘキセニルエチルジメチルシロキシ)テトラキス(ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(TCHS)を得た。
【0075】
そしてGPC分析で測定した純度は98.1%であった。また実施例1で得たTCHSのIRスペクトルを図1(a)に、C−NMRスペクトルを図1(b)に示し、C−NMRスペクトルの解析データを次に示す。
FT−IR(KBr,cm−1):3023(ν=C−H),2960(νC−H),2913(νC−H),2142(νSi−H),1436(νSi−CH),1093(νSi−O)
H−NMR δ(400MHz,ppm):0.13(s,24H,Si(CH),0.25(s,24H,Si(CH),0.62(m,8H,SiCH),1.1〜2.4(m,36H,Cy−H),4.73(sept,4H,J=3Hz,Si−H),5.65(s,8.4H,C=C−H)
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.41(SiCH),0.14(SiCH),14.7(SiCH),25.4,28.6,29.6,31.7,36.4,126.6(C=C),127.0(C=C)
C−NMRスペクトルにみられるように、4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性体は認められなかった。
【0076】
(実施例2)
反応溶媒として、トルエンの代わりにキシレンを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして、71%の収率でTCHSを得た。解析データを次に示す。
【0077】
そしてGPC分析で測定した純度は97.1%であった。また実施例2で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図2に示し、解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.28(SiCH),0.27(SiCH),14.8(SiCH),25.5,28.6,29.0,31.7,36.5,37.9,126.5(C=C),126.6(C=C)
C−NMRスペクトルにみられるように、4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性体は認められなかった。
【0078】
(実施例3)
4−ビニル−1−シクロヘキセンのトルエン混合溶液8.5g(78.6mmol)を、15分かけて滴下するようにした以外は、実施例1と同様にして、73%の収率でTCHSを得た。
【0079】
そしてGPC分析で測定した純度は97.0%であった。また実施例3で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図3に示し、解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.27(SiCH),0.29(SiCH),14.8(SiCH),25.5,28.6,29.7,31.7,36.4,126.6(C=C),126.9(C=C)
C−NMRスペクトルにみられるように、4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性体は認められなかった。
【0080】
(実施例4)
反応温度90℃を110℃に変更するようにした以外は、実施例1と同様にして、70%の収率でTCHSを得た。
【0081】
そしてGPC分析で測定した純度は97.0%であった。また実施例4で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図4に示し、解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.41(SiCH),0.10(SiCH),14.6(SiCH),25.4,28.5,29.6,31.6,36.4,126.7(C=C),127.0(C=C)
C−NMRスペクトルにみられるように、4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性体は認められなかった。
(実施例5)
反応触媒として、Pt(dcp)の代わりにカールステッド触媒の0.5mMトルエン溶液0.8mL(OHSS1分子に対して20ppm)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして、75%の収率でTCHSを得た。
【0082】
そしてGPC分析で測定した純度は97.1%であった。また実施例5で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図5に示し、解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.28(SiCH),0.29(SiCH),14.8(SiCH),25.5,28.6,29.7,31.7,36.4,126.6(C=C),126.9(C=C)
C−NMRスペクトルにみられるように、4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性体は認められなかった。
【0083】
(実施例6)
4−ビニル−1−シクロヘキセンの代わりに、1,4−シクロヘキサジエン6.3g(78.6mmol)を用いるようにした以外は、実施例1と同様の操作を行なった。その結果、テトラキス(2−シクロヘキセニルジメチルシロキシ)テトラキス(ヒドリドジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(TCHDS)を、81%の収率で得た。
【0084】
そしてGPC分析で測定した純度は96.0%であった。また実施例6で得たTCHDSのC−NMRスペクトルの解析データを次に示す。
FT−IR(KBr,cm−1):3015(ν=C−H),2950(νC−H),2910(νC−H),2152(νSi−H),1437(νSi−CH),1146(νSi−O)
C−NMR δ(100MHz,ppm):−1.4(SiCH),0.7(SiCH),23.0,23.4,25.6,27.8,126.6(C=C),127.1(C=C)
C−NMRスペクトルにみられるように、1,4−シクロヘキサジエンの異性体は認められなかった。
(実施例7)
還流管と滴下ロートを取り付けた10Lセパラブルフラスコに、実施例1に用いた化合物を全て40重量倍用いて同様の実験を行い、82%の収率でTCHSを得た。
【0085】
そしてGPC分析で測定した純度は97.1%であった。また実施例7で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図6に示し、解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.43(SiCH),0.13(SiCH),14.6(SiCH),25.5,28.5,29.6,31.6,36.4,37.8,126.7(C=C),127.0(C=C)
C−NMRスペクトルにみられるように、4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性体は認められなかった。
【0086】
(比較例1)
還流管と滴下ロートを取り付けた250mLフラスコフラスコに、上記のように合成したOHSSを20g(19.6mmol)投入し、このフラスコを真空下で加熱して水分を除去した後、窒素置換した。次にフラスコに、反応溶媒としてトルエンを50mL、反応触媒としてPt(dcp)の2mMトルエン溶液を0.2mL(Pt含量は0.4ppm)、4−ビニル−1−シクロヘキセン8.5g(78.6mmol)をそれぞれ加えた。この後、フラスコ内を90℃に昇温させ、この温度を維持しながら2.5時間攪して反応させた。
【0087】
後は実施例1と同様にして、冷却、濃縮、晶析、ろ過・洗浄、真空乾燥することによって、72%の収率でTCHSを得た。
【0088】
そしてGPC分析で測定した純度は94.3%であった。また比較例1で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図7に示し解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.29(SiCH),0.28(SiCH),14.7(SiCH),25.5,28.6,29.3,31.7,36.4,37.9,126.7(C=C),126.8(C=C),131.8
C−NMRスペクトルにみられるように、21.7及び125.2ppmのシグナルはトルエンのシグナルであるが、それ以外に、副生成物として37.9及び131.8ppmに異性体由来のシグナルが見られる。このシグナルにより、シクロヘキサン環の炭素−炭素二重結合が異性化していることが認められた。
【0089】
(比較例2)
反応温度90℃を40℃に変更するようにした他は、実施例1と同様の操作を行なった。その結果、TCHSを得たが、その収率は25%であり、未反応のOHSSは73%であった。反応終了マスから71%の4−ビニル−1−シクロヘキセンをGC分析で確認した。また反応終了後に濃縮すると、白色の未反応OHSSが晶析したのを確認した。
【0090】
そしてGPC分析で測定した純度は98.0%、TGAによる5%熱重量損失温度は220.6℃であった。また比較例2で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図8に示し、解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.45(SiCH),0.05(SiCH),14.6(SiCH),25.4,28.5,29.6,31.7,36.4,126.7(C=C),127.0(C=C)
4−ビニル−1−シクロヘキセンの異性化に由来するシグナルは見られないが、原料のOHSSが未反応として残存していることが確認される。
【0091】
(比較例3)
反応温度90℃を120℃に変更するようにした他は、実施例1と同様の操作を行なった。その結果、TCHSを得たが、その収率は60%であった。
【0092】
そしてGPC分析で測定した純度は93.0%であった。また比較例3で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図9に示し解析データを次に示すC−NMR δ(100MHz,ppm):−0.41(SiCH),0.07(SiCH),14.6(SiCH),25.4,28.6,29.6,31.6,36.4,37.8,126.7(C=C),127.0(C=C),132.0
21.6ppmのシグナルはトルエンのシグナルであるが、それ以外に、副生成物として37.8及び132.0ppmに異性体由来のシグナルが見られる。
(比較例4)
反応溶媒として、トルエンの代わりにウンデカンを用い、さらに反応温度を196℃に設定するようにした以外は、実施例1と同様に操作を行なった。その結果、TCHSを得たが、その収率は44%であった。
【0093】
そしてGPC分析で測定した純度は91.1%であった。また比較例4で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図10に示し解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.46(SiCH),0.05(SiCH),14.6(SiCH),25.4,28.5,29.6,31.6,36.4,37.8,126.7(C=C),127.0(C=C),132.0
21.4及び125.3ppmのシグナルはトルエンのシグナルであるが、それ以外に、副生成物として37.9及び131.8ppmに異性体由来のシグナルが見られる。
【0094】
(比較例5)
還流管と滴下ロートを取り付けた250mLフラスコフラスコに、トルエンを50mL、Pt(dcp)の2mMトルエン溶液を0.2mL(Pt含量は0.4ppm)、4−ビニル−1−シクロヘキセン8.5g(78.6mmol)をそれぞれ加えた。そしてこの混合溶液を200rpmで攪拌しながら、90℃に昇温させ、これに、上記のように合成したOHSS20g(19.6mmol)とトルエン20gの混合溶液を、30分をかけて滴下した。その後は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、TCHSを得たが、その収率は49%であった。
【0095】
そしてGPC分析で測定した純度は94.1%であった。また比較例5で得たTCHSのC−NMRスペクトルを図11に示し、解析データを次に示す。
C−NMR δ(100MHz,ppm):−0.28(SiCH),0.27(SiCH),14.8(SiCH),25.5,28.6,29.0,31.7,36.5,37.9,126.5(C=C),126.6(C=C),131.8
微量の副生成物として37.9及び131.8ppmに異性体由来のシグナルが見られる。
【0096】
各実施例及び比較例の結果を纏めて表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
各比較例のものでは、反応により副生成物が生じたり、未反応の原料が残存したりするものであり、工業的プロセスにおいてはこのような生成物や未反応原料の分離が困難になる。このため、相補性官能基を有するかご型シルセスキオキサンの本来の性能が低下し、必要な材料の物性を発揮させることができないが、各実施例のものは副反応を抑制することができるものであった、
本発明に係る相補性官能基を有するかご型シルセスキオキサンは、耐熱性、高硬度、透過性、耐摩耗性、プロセス容易性、耐酸素プラズマエッチング性、等が良好であり、半導体光装置、透明光学材料、プラズマディスプレイパネル等の用途の材料として期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式が
(DRSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q ・・・(1)
で表されるかご型シルセスキオキサン化合物に、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物をヒドロシリル化反応により付加させて、
一般式が
(ARSiOSiO1.5(RHSiOSiO1.5
(BRSiOSiO1.5(HOSiO1.5m−n−p−q ・・・(2)
で表されるかご型シルセスキオキサン化合物を製造するにあたって、
[式(1)〜(2)中、R1〜6は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはシクロアルキル基である。Aはヘテロ原子を含有しても良い炭素−炭素不飽和結合を有する基、Bは置換又は非置換の飽和アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基もしくは水酸基、Dは少なくとも1つが水素でそれ以外は置換又は非置換のアルキル基もしくは水酸基である。mは6、8、10、12、14から選ばれた数であり、nは0からm−1の整数、pは1からm−nの整数、qは0からm−n−pの整数を表す。]
不活性ガス雰囲気下で、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物と反応触媒とを有する反応溶媒に、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を、ヒドロシリル化反応が進行し、且つ異性化及び縮合が生じない温度条件のもとで、滴下して、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を付加反応させることを特徴とするかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項2】
不活性ガス雰囲気下、70〜110℃の温度条件のもとで、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物と触媒を有する反応溶媒に、炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を滴下して、一般式(1)のかご型シルセスキオキサン化合物に炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物を付加反応させることによって、一般式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物を調製することを特徴とする請求項1に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項3】
反応触媒が、白金触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項4】
白金触媒が、白金(ジビニルシロキサン)錯体([Pt{Me(CH=CH)Si}O])、白金(ジシクロペンタジエン)錯体([(CPtCl])から選ばれるものであることを特徴とする請求項3に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項5】
反応溶媒中の反応触媒の濃度が、一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物1モルに対して10−8〜10−3モルの範囲であることを特徴とする請求項1乃4のいずれか1項に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項6】
反応溶媒が、炭素数6〜10の脂肪族飽和炭化水素、ベンゼン、飽和アルキル基を含む炭素数7〜12の芳香族炭化水素から選ばれるものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項7】
反応溶媒が、トルエン、キシレンから選ばれるものであることを特徴とする請求項6に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物を調製した後、このかご型シルセスキオキサン化合物を貧溶媒にて晶析させるにあたって、貧溶媒として、水、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートから選ばれるものを用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(1)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物が、オクタキス(ヒドリドジメチルシロキシ)シルセスキオキサン(OHSS)であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項10】
炭素−炭素二重結合を分子中に2つ以上有する不飽和炭化水素化合物が、4−ビニル−1−シクロヘキセンであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のかご型シルセスキオキサン化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−153213(P2011−153213A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15455(P2010−15455)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(391010895)小西化学工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】