かじり傷を低減するための逃げを持つ管継ぎ手
【課題】かじりを低減。
【解決手段】管端を受け入れるための円筒形の穴を有し、テーパ付き口を含む取付具本体とのねじ接続部を有し且つフエルール駆動面を有する駆動部材はテーパ付き第一の端部を有し且つ第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部が付いた第二の端部を有する。管端に取り付けられる時に管端周囲に密着する連続円筒内壁と、テーパ付き凹部の中に挿入可能なテーパ付きのノーズ部と、取付具の引抜きの際に前記フエルール駆動面に係合する後端部上の被駆動面とを有する第二のフエルールを具備し、全表面が表面硬化され、取付具の完全な引抜きの後におけるような形状を有し、テーパ付ノーズ部の前縁を生じるように変形され、前記円筒内壁の後部は前記管端外面から半径方向に間隔を置き、長手方向部分の円筒内壁の凸部を形成するよう変形され、凸部は、前縁から軸方向後方にあり、すえ込み領域が円筒内壁により前記管端外面に作られる。
【解決手段】管端を受け入れるための円筒形の穴を有し、テーパ付き口を含む取付具本体とのねじ接続部を有し且つフエルール駆動面を有する駆動部材はテーパ付き第一の端部を有し且つ第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部が付いた第二の端部を有する。管端に取り付けられる時に管端周囲に密着する連続円筒内壁と、テーパ付き凹部の中に挿入可能なテーパ付きのノーズ部と、取付具の引抜きの際に前記フエルール駆動面に係合する後端部上の被駆動面とを有する第二のフエルールを具備し、全表面が表面硬化され、取付具の完全な引抜きの後におけるような形状を有し、テーパ付ノーズ部の前縁を生じるように変形され、前記円筒内壁の後部は前記管端外面から半径方向に間隔を置き、長手方向部分の円筒内壁の凸部を形成するよう変形され、凸部は、前縁から軸方向後方にあり、すえ込み領域が円筒内壁により前記管端外面に作られる。
【発明の詳細な説明】
【関連出願書との相互参照】
【0001】
本出願書は1998年4月2日付け米国特許出願一連番号09/054,186の部分的継続であり、前記09/054,186は1997年4月15日付け米国特許出願一連番号08/834,255、現米国特許第5,882,050号の部分的継続である。これらの全開示内容は参考用として本出願書に完全に組み込まれている。
【発明の背景】
【0002】
本発明はフエルール形管継ぎ手又は管取付具の分野を目指している。とりわけ、本発明は2個のフエルールによる管継ぎ手で、後部フエルールが関連ナットを回すのに必要なトルクを低減し、さらに、後部フエルールと駆動・ナットの内面の間のかじり傷を低減するように設計されている。さらに、本発明は1個のフエルールによる継ぎ手にも適用しうる。
【0003】
商用的に入手でき、非常に成功していて、配管に用いられている2個のフエルールによる管継ぎ手を図1および図1Aに示す。図1は継ぎ手要素を最終締め付けまでの準備となる指で締めた位置で示している。一方、図1Aは最終締め付け後の継ぎ手を示している。示されているように、継ぎ手は、管端13を受け入れるために穴ぐりをした円筒開口部12を有する本体10を含んでいる。テーパ付き切頭円錐形案内(camming)口14が穴ぐり部の軸方向の外端に位置している。前部フエルール16は円滑な円筒内壁18を有し、管上に密に受け入れられている。前部フエルールは案内口内に受け入れられるように切頭円錐形の外面20を有している。
【0004】
前部フエルール16と関連して、また、そこから軸方向外側に位置した後部フエルール22が、図示されているように、テーパ付きノーズ部分24、および、テーパ付き端面28を有する後部フランジ26を有している。後部フエルール22のテーパ付き端面は、当該分野の技術者には明らかなように、端面に作用する引き寄せ力の軸方向成分だけでなく半径方向成分も与えている。テーパ付きノーズ24が前部フエルールの後面内のテーパ付き案内面に入る。
【0005】
フエルール16、22は本体10にねじ込まれた駆動・ナット部材30により囲まれている。継ぎ手の締め付けおよび組立の間に、ナットの内側端面、フランジないし肩32が後部フエルールの後壁端面28に対して作用し、フエルールを図1Aに示す完全嵌め合い位置に向かって前方に押す。
【0006】
後部フエルールの小径部ないしノーズが継ぎ手の組立て中に塑性変形するような寸法になっている。この作用は管の外壁を緊密に把握保持するので望ましい。ノーズ部分の厚みは後部フエルールの変形が大きくなりすぎる程度にまで減らすことはできず、後部フエルールが配管の外壁を適切に把握するだけにする。即ち、この2個のフエルールのアセンブリーが商用的に成功した製品となる把握・密封機能となるには、2個のフエルールのアセンブリーで、前部と後部の両方のフエルールが望ましい変形をする必要がある。他方、後部フエルールのノーズ厚みは、硬すぎて、希望の後部フエルールの変形を生じないような構造状態になる程度まで大きくはできない。
【0007】
テーパ付き後面および前部と後部のフエルールの相互作用から生じる、従来の2個のフエルールを用いた段階的制御による一連の把握作用についてのより完全な説明と理解はLennonらが開示した特許文献1に示されている。その全開示が参考用として本出願書に完全に組み込まれている。
【0008】
従って、後部フエルールのノーズの指定壁厚により、管を把握・密封するという希望の目標を達成するように、管の希望の把握を達成し、かつ、前部フエルールと連携することが望まれていることは、当該分野の技術者であれば理解するであろう。
【0009】
さらに、流体系統の運用者が系統の定格圧力より適当な倍率まで系統を加圧することにより、生産運転前に系統を試験することも認識されている。この方法で、運用者は流体系統が密封されているか、即ち、漏洩がないかを容易に検出できる。この知識を用いて、製造業者は後部フエルールのノーズが高い試験圧力により追加の塑性変形をしないような継ぎ手を供給できる。従って、希望のノーズ変形量を達成し、前部と後部のフエルールが管の外壁を適切に把握・密封できるように、高い試験圧力を用いて、後部フエルールのノーズ部分の希望壁厚を決定する。
【0010】
ときどき、駆動・ナットの内側端面と後部フエルールの後壁の間の駆動面の接触領域で駆動・ナットのかじり傷を生じることも認められている。解析の後で、前部と後部のフエルールの間の軸方向スラストないし引き寄せ力が基本的に継ぎ手の軸に平行であると信じられている。この軸方向のスラストにより、後部フエルールの後部コーナー領域が、ナット内部の駆動面に、特に局部的領域に引き寄せ応力を選択的に集中させて、かじり傷を生じる。さらに、かじり傷がない場合でも、このことが組立て中に経験するナットのトルクによる力を顕著に高める。従って、スラスト力が高い局部荷重を、その結果としてかじり傷および高いトルクによる力を生じないように設計をすることが非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,103,373号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のひとつの実施例に基づくと、管継ぎ手には、管端を受け入れる円筒穴を有し、また、その穴の一端にあるテーパ付き口を含む継ぎ手本体、本体とねじ込み接続をし、フエルール駆動面を有する駆動部材、継ぎ手本体のテーパ付き口に伸びているテーパ付き第一の端部を有し、かつ、第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部を伴う第二の端部を有する第一のフエルール、円筒内壁、第一のフエルールのテーパ付き凹部に伸びているテーパ付き第一の端部を有し、駆動部材のフエルール駆動面に接触するその第二の端部上に輪郭成形をした面を有する第二フエルール、第二のフエルールの第一と第二の端部の間に位置する円周方向の凹部を有する第二フエルールの内壁、継ぎ手を組立てたときに駆動部材の駆動面上の応力集中を減らしている凹部および輪郭成形をした面が含まれる。
【0013】
本発明の他の側面には、後部フエルールの前端ないしノーズ端で第一の直径、および、そのフエルールの後端で第二の直径を有し、その第二の直径が第一の直径より大きくし、例えば、単一工具を用いて円周方向の凹部および円筒壁を形成できるようにようにした円筒内面を持つ後部フエルールを形成することが含まれる。さらに、本発明の別の側面には、第二フエルールの第一と第二の端部を結合するフエルール本体の外径に切り欠きを形成することが含まれている。本発明の他の側面は、後部フエルールの第二の端部上でなくて駆動部材上に輪郭成形をした駆動面を設けている。さらに、本発明は以前のフエルールよりも硬いベースメタルから作られたフエルールにより実施しうる。さらに、本発明はフエルールの面全体をまたは選択的に表面硬化したフエルールにより実施しうる。一般的に、本発明は1個のフエルールによる継ぎ手にも適用しうる。
【0014】
本発明のこれらおよび他の側面は、添付図面を見て、以下の好ましい実施例の説明から当該分野の技術者には明らかであろう。
【0015】
本発明は、本明細書に詳細に示され、本明細書の一部になっている添付図面に示されている特定部品、部品の配置、好ましい実施例および方法の中に物的形態をとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】良く知られた従来技術の2個のフエルールによるスエージ形継ぎ手の長手方向の断面図である。
【図1A】組立て状態で従来技術の継ぎ手を示している図1の円で囲んだ部分の拡大図である。
【図2】図1に類似した図であるが、後部フエルールを通じた反力伝達を改善するように設計された改良した後部フエルールを組み込んだ継ぎ手の好ましい実施例を示している。
【図3】図2の円で囲んだ部分を大きく拡大して示している。
【図4】好ましい形の後部フエルールの詳細な部分断面図である。
【図5】図4に類似した断面図であるが、第二の好ましい形の後部フエルールを示している。
【図6】図1の継ぎ手の断面図で、特に、最初の組立て時の前部フエルールとナットの間に位置する後部フエルールを示す。
【図7】組立て状態で、応力集中を示す図6の継ぎ手の図面である。
【図8】本発明の教示に基づいて改良した後部フエルールを含めた最初の組立て時の継ぎ手断面図である。
【図9】組立て状態で、応力集中を示す図8の継ぎ手の図面である。
【図10】本発明の教示に基づいて改良した後部フエルールを含めた最初の組立て時の継ぎ手断面図である。
【図11】組立て状態で、応力集中を示す図10の継ぎ手の図面である。
【図12】本発明の教示に基づいて改良した後部フエルールを含めた最初の組立て時の継ぎ手断面図である。
【図13】組立て状態で、応力集中を示す図12の継ぎ手の図面である。
【図14】後部フエルール構造の種々の変形に関する表である。
【図15】2個のフエルールによる継ぎ手の代替実施例の断面図である。
【図16】図15の実施例のフエルール領域の拡大図である。
【図17】本発明の一側面に基づく輪郭成形をした面を持つ後部フエルールの部分図である。
【図18】引き寄せ前で前部フエルールおよび駆動・ナットとの接触位置で示した輪郭成形をした後部フエルールに関する断面図である。
【図19】引き寄せ状態で応力分布を示す図18の実施例の図である。
【図20】本発明の他の実施例である。
【図21】輪郭成形をした後部フエルールを用いない2個のフエルールによる継ぎ手の応力分布を示している。
【図22】円周方向の凹部を組み込んだ後部フエルールの設計の他の実施例を示す。
【図23A】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23B】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23C】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23D】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23E】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23F】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図24A】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24B】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24C】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24D】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24E】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24F】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24G】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図25】2種の直径から成る内側円筒穴を有するフエルールの別の代替的実施例を示す。
【図26】フエルール本体に外側の切り欠きまたは凹部を有するフエルールの別の代替的実施例を示す。
【図27】切り欠きを設けた内側の穴、輪郭成形をした後面、外側の切り欠き、フエルールのノーズ領域のクラウン部分を有するフエルールに関する本発明の別の代替的実施例を示す。
【図28】高摩擦による管の把握領域が、フエルールのノーズに生じた応力上昇部から軸方向に離れていることに関する本発明の一側面を示す有限要素解析である。
【実施例】
【0017】
ここで図面を参照するが、本発明の好ましい実施例のみを示す目的で示していて、本発明を制限する目的ではない。図2−4は本発明を取り入れた継ぎ手の全体配置を示している。ここに示したフエルールの輪郭に関する図面の多くで、理解を明確にし、容易にするために、特に断面図でフエルール全体の一部を示す必要がある場合にフエルールの形状と輪郭を示すために、フエルールを部分断面図で示していることに留意すべきである。図2−4の実施例は主要部分を図1および図1Aの従来技術の装置の説明で用いたのと同じ参照番号で特定している。図1の要素の説明は他に指定がない限り、対応する番号の図2−4の要素にも等しく適用できると理解すべきである。特に、図2−4の実施例では、前部フエルールから後部フエルールを介してナットへ作用する反力が半径方向外側を向く有意な力成分を生じるように後部フエルール22’を改良している。これは、図1および1Aの実施例で、対象となる力成分が大きな軸方向成分を有しているのと対照的になっている。特に、図4に示すように、力成分Aは一般に後部フエルール22’の軸方向に伸び、フエルールの面28’の半径方向で内側になる面およびナットのフランジ32’に加えられる荷重を高める。以前に論じたように、この領域の高い局部荷重ないし応力集中が高いトルクとかじり傷を生じる。
【0018】
本発明はここで、2個のフエルールによるシステムを特に参照して述べているけれども、そのような説明は本質的に例示的であり、制限する意味で解釈すべきでない。本発明の種々の側面は1個のフエルールによる継ぎ手にも適用できることを見いだすであろう。
【0019】
本発明のひとつの実施例では、フエルール22’の内面全周に亘る円周方向の凹部40を設けることにより反力の方向変更を実現している。凹部40は一般にフエルール22’の両端の間の中間に位置している。これにより、後部フエルールの内面が2個所の軸方向に比較的狭くて、基本的に円筒形で、連続した接触領域42および44に縮小する。そのように後部フエルールを改良することにより、前部フエルールから後部フエルールを介してナットの面ないしフランジ32’に伝わる力が、図4の力の線Bで略図的に示すように半径方向外向きに向く傾向になる。
【0020】
この実施例では、全体的に平坦な接触領域42および44が基本的に同じ直径である。しかしながら、代替的実施例では、これら2領域が異なる直径で、例えば、ある用途には、後部平坦領域42の直径が前部平坦領域44の直径より、例えば、千分の数インチ、より好ましくは千分の1ないし3インチだけ僅かに大きくしている。別の代替的実施例では、この領域に穴ぐり部を設けることにより、接触領域としての後部平坦領域42を無くすことがある。特に、フエルールのサイズが大きい場合、後部フエルールのノーズ部分に平坦部が1個所あれば、取付中に配管上のフエルールの位置合わせを適切に維持するのに十分であろう。これらの代替例は以後で十分に説明している。
【0021】
本発明の他の重要な特徴は、図1の後部フエルール22を図2−4の実施例の後部フエルール22’と比較することにより良く例示されている。特に、後部フエルール22’の外半径方向50には、前部ノーズ部分52から伸びると共に半径方向の寸法が大きくなっている円錐部分が含まれ、前部フエルールの後部面取り領域53内に、後部フランジ26’まで受け入れられる。従来技術の配置(図1および1A)では、後部フエルールは円筒形貫通穴およびこの領域で貫通穴を形成している内面に平行に伸びている外径一定の壁を有している。言い換えると、後部フエルールは一定の環状壁厚“t”を有している。図2−4の実施例では、外壁が円錐形ないしテーパ付き構造で、改良した後部フエルールに凹部が組み込まれたとき、十分な壁厚“t”を持ち、ノーズ部分の変形を抑制する。好ましくは、外壁50は全体として均一な角度または傾斜になっていて、前部フエルールの案内口に受け入れられる小さな径のノーズ領域52と大きな径の後部フランジ26’の間に伸びている。ここでも、これにより、管の外壁を把握し、密封接触する面44に沿って、領域52が半径的に内側で塑性変形をするように、後部フエルールが変形するのを抑制して
いる。図4で、凹部40が、その寸法“t”が一定に見えるような形状になっているけれども、そうなる必要がないことに留意されたい。例えば、図14、17、18の図面の多くのように凹部40が形成された場合、テーパ付き外壁50は、後部フエルールのノーズ52と後部フランジ26’の間で不均一な厚み“t”になる。
【0022】
壁厚“t”と後部フエルール22’の形状と構成は、特定用途に対して、配管上でフエルール22’をバランスさせ、適切な位置合わせになるように、また、配管上で適切に密封できるように、引き寄せ中に望ましい段階的制御による一連の把握作用を実現するように選定される。継ぎ手の引き寄せ中に、後部フエルール22’は、管端13の外面に軸成分と半径成分の両方を有するベクトル力を加える。この半径成分の力が優れた把握・密封作用を生じるような管表面への軸方向摩擦力を可能にする。この軸方向の摩擦力が管13からの管把握による軸方向反力とバランスする。
【0023】
凹部40と共にテーパ付き外壁50を組み合わせた形状が、後部フエルールのノーズ部分52の「ヒンジ効果」を生じる。選定した形状および構成は、継ぎ手要素に用いた材料、管の材料と壁厚、継ぎ手の使用圧力、後部フエルールを表面硬化しているかどうか等を含む要因によるが必ずしもそれに限定されない。組立て中の一連の把握作用を適切に維持するために、後部フエルール22’のノーズ部分52が早めにつぶれないことが重要である。そうでないと、前部フエルール16が管壁上で十分な把握力を生ぜず、または、前部フエルール16とテーパ付き案内口14の間の密封力が不適切になることがある。後部フエルール22’のつぶれが前部フエルールに比較して遅すぎる場合、後部フエルール22’は管13の壁上の把握力が適切にならないことがある。
【0024】
後部フエルール22’のヒンジ効果により、後部フエルールがノーズ部分52で管壁に加える力を管面から有意な半径方向のベクトル角にする。それゆえ、このフエルールが加える力のベクトルBは有意な半径方向成分を有する一方で、有意な軸方向摩擦力を可能にする。それゆえ、図1および1Aの従来技術におけるように、加えられる力が基本的に軸方向である時とは対照的に、駆動部材30により加えられる軸方向成分の力が小さくても、軸方向の管把握による反力に十分対抗している。それゆえ、後部フエルール22’による管13の把握はトグル状ヒンジ作用に近い。軸方向成分の力が小さいので、同じ管把握を実現するためのナット30の引き寄せトルクが低くなる。
【0025】
さらに、継ぎ手の引き寄せの間に、このヒンジ特性により、管の反力は一般的に後部フエルール22’を介して、ナットの肩32’の駆動面に接触する後部フエルールの被駆動面28’の中央領域を向く。これにより、反力は後部フエルール22’の被駆動面28’への分布がより均一になり、高い応力集中が避けられ、または、低減する。それゆえ、かじり傷が低減ないし解消し、管の把握力が喪失しないで、引き寄せトルクを低減する。多くの場合、後部フエルールの後面28’に全体として垂直な方向を向いている。さらに、加えられた半径方向の力により管の把握力が高まることは管13への後部フエルール22’のノーズ部分の侵入ないし押込みを大きくする。これにより、加えるトルクが低くても優れた管の把握・密封を行える。さらに、後部フエルール22’のノーズ前端で生じる管の応力上昇部の後方(即ち軸方向の後方)に押込みによる高い把握圧の領域を生じることにより振動疲労への抵抗を高くする。図28はこの結果を示していて、管壁13にノーズが侵入している応力上昇領域400が、フエルールノーズと管壁の間での高い摩擦接触を生じる押込み領域402より軸方向前方になっている。高摩擦領域または押込み部がコレット効果を生じて、管壁上にフエルールを固定し、応力上昇部400を振動から守る。後部フエルールノーズ部分の前方平坦部分44による管上への把握作用が良好であることが、後部フエルールの平坦部分42の間の全ての接触圧力とは対照的に、継ぎ手の全体性能にとって重要である。多くの場合に、部分42と管13の間で接触する必要はない。
【0026】
本発明のかじり傷の減少および引き寄せトルクの低下から得られる他の利点は、継ぎ手の改修が容易なことである。「改修」とは、ある用途で、ユーザーが配管継ぎ手を設置後に、多分、弁、配管を交換するために、または、他の日常的保守および修理を行うために、分離してから、フエルールおよび(または)ナットまたは本体を交換せずに同じ継ぎ手を再取り付けしたいと希望することを単純に意味している。後部のフエルールおよび駆動・ナットにかじり傷が付くと、継ぎ手の改修に必要なトルクが著しく大きくなりまたは不可能になることがある。または、継ぎ手が適切に再密封しないことがある。本発明を用いることにより、かじり傷を有意に減らすか、解消し、また、引き寄せトルクを低減するので、改修が容易になる。
【0027】
本発明は多くの異なる材料と共に使用できるけれども、ステンレス鋼の継ぎ手と配管と共に用いるとき、特に利点がある。それには316および316Lステンレス配管を含むがそれに限定されない。しかし、他の合金に加えてハステロイ、インコネル、モネル合金400および500、254SMOおよびスチール、および、例えば、SAF2507のようなデュープレックス・ステンレス鋼が含まれる。本発明は必要に応じてフエルールの表面の全部または一部に表面硬化を施し、または、施さないで使用できる。
【0028】
表面硬化されたフエルールまたは316Lステンレス鋼より本質的に硬い材料で作られたフエルールの場合、本発明により継ぎ手10が、望ましい段階的制御による一連の管壁把握で、適切に引き寄せることができる。従来のフエルール、特に後部フエルールの表面硬化をし、または、非常に硬い材料で作った場合、フエルールは管壁を適切に密封・把握するには硬すぎるだろう。しかしながら、本発明は硬質材料のフエルール、または、その表面の一部または全部を表面硬化したフエルールの使用を容易にしている。本明細書での表面硬化とは、当該分野の技術者に知られているように、根底のベース・メタルと比較してフエルール本体を実質的に硬くする炭素または窒素リッチの表面になるようにフエルールを処理することを言う。
【0029】
図5は、凹部40が2種の異なる角度(鈍角三角形)により形成されている後部フエルールの別の好ましい実施例を示している。例えば、内面に形成された小さい方の第一の角は、面44から後部フランジ26’に向けて後方に伸びると共に大きくなる。大きい方の第二の角(第一の角の角度の大きさの約2倍)は面42からノーズ領域に向けて前方に伸びると共に大きくなる。それゆえ、これらの角が交差する軸方向位置は、外壁50と後部フランジの交点の下になる。従って、後面28’に分布する応力が均一になる。
【0030】
図6および7に移ると、図1の従来技術の配置による後部フエルールが、フエルールの組立の前と後について示されている。継ぎ手の有限要素解析を行った。その結果は、図7で特に明らかにされている。そこでは、後部フエルールの後部フランジとナットの斜線領域が、継ぎ手の組立て時に遭遇する力と応力集中を明らかにしている。特に応力集中が高い領域を領域60と指定している。応力集中が次第に低くなる領域を数字62、64、66、68、70により示している。それで、後面28’の半径的に内側の位置で応力集中が大きいことにより、組立て中のトルクおよびナットのかじり傷の可能性を高める。
【0031】
図8および9は本発明の教示に基づき別の改良をした後部フエルールを示す。この後部フエルールは図5に示したものと同じである。特に図9で明らかなように、図7と比較したとき、応力集中が高い領域のサイズが実質的に減少している。このことは、後部フエルールのフランジの後面への応力分布が均一になっていることを示している。それゆえ、トルクが低下し、かじり傷の可能性も同様に低下している。
【0032】
図10および11は図4で図示し、説明している後部フエルールを示している。ここでは、有限要素解析により後面では応力集中が高い領域が実質的に無くなっていて、より均
一な応力分布が得られている。ここでも、組立てに伴うトルクの力が減少し、それゆえ、対応して局部的応力集中が低減している。凹部と円錐形外壁により継ぎ手に生じた力に半径方向成分が生じ、後部フエルールを介して伝達される。その一方で、依然として管の望ましい把握・密封を生じている。
【0033】
図12および13の実施例も、これらの同じ目標を達成している。凹部は僅かに異なった構造である。即ち、凹部が後部フエルールの内壁内で、より鋭く形成されている。さらに、それを僅かに前方に移していて、凹部の最深部は後部フエルールの前の方に位置している。しかしながら、外壁は依然として円錐形状になっていて、凹部と組み合わせることで、後部フエルールの後面に沿った応力を分散している。
【0034】
前記の種々の実施例で明らかなように、継ぎ手を組立てる場合の応力分布と低トルクを実現するために、凹部とテーパ付き外壁には特別の整合性を必要としない。実際に、代替実施例の提案のいくつかを図14の表の形で示している。例えば、第一列の形状は、凹部の後端の軸方向位置が外壁と拡大フランジの交点の下になるように全体的に形成されている標準位置を有している。涙滴、直角三角形、長方形、楕円形、角張った円、鈍角三角形、曲線、複合曲線が、凹部として採用できる種々の形状である。さらに、凹部は前の位置(第二列)、または、後ろの位置に置ける。後ろの位置の場合、凹部の最深部の位置が拡大フランジの下になる(第三列)けれども、依然として種々の形状を採用しうる。さらに、形状の向きは、第四列または第六列の種々の形状により示されているように、反転できる。または、凹部は第五列または第八列の形状で示されているように、複合凹部により形成しうる。その代わりに、第七列と第八列に示すように、凹部を拡大できる。従って、本発明は前記の図2−13の実施例で図示し、説明した特定形状に限定されず、他の形状を選んで組み込める。
【0035】
図15−20を参照して、本発明の他の実施例が示されている。既に示したように、後部フエルール22の凹部40を用いることは、引き寄せ力に半径方向成分を加えることにより、駆動・ナット30の駆動面32での応力集中を有意に低減する。さらに、テーパ付き外壁50を設けることが、引き寄せ中の後部フエルール22の変形抑制だけでなく半径方向成分および応力分布に寄与できる。図15−20の実施例に基づいて、後部フエルールが輪郭成形をした駆動面と共に提供されていて、駆動・ナット30と後部フエルール22の間の接触領域に生じる応力集中をさらに低減している。
【0036】
図21は駆動・ナットの駆動面32および後部フエルールの被駆動面28での典型的な引き寄せ応力の分布を例示的な形で、典型的に、前記の後部フエルール内の凹部40タイプの構造を組み込んだ場合について示している。これらの応力集中は矢印200により示されている。図21の応力分布と図7の応力集中を比較すると(図7は凹部タイプないし切り欠き構造40を含まない後部フエルールを示している)、凹部40のコンセプトを提供することで前記のように駆動・ナットの駆動面32上の応力集中を有意かつ本質的に低減することが明らかである。このように応力集中を低減することは、図7を図9、11、13と比較することにより、さらに明らかになる。
【0037】
図21はFEA(有限要素解析)の表示では無いけれども、凹部40を用いることが、全ての場合で、後部フエルールの後面での応力集中を完全に無くすのではないという点を示している(ただし、凹部ないし切り欠き40を用いることが、切り欠きないし凹部を含まない後部フエルールと比較して、大きく応力集中を低減している)。図21の単純化した表示で、応力集中は、例えば、後部フエルールのフランジ26の半径的に内側と外側の部分で存在することがある(それらは2領域の応力集中として生じる必要は無いけれども、生じる可能性があるので、ここでは、両モードの応力集中と呼ぶ)。これらのいくぶん高くなる両モードの応力集中は図21で太い矢印で表示されている。それゆえ、本発明は
そのような応力集中をさらに低下することを目指していて、その結果は図19に示している。図19では、改良した後部フエルールの駆動面と凹部の内側半径方向部を用いて引き寄せ力の集中を実質的に無くしたことを矢印が示している。
【0038】
本発明のこの別の側面に基づくと、示している2個のフエルールによる継ぎ手は、駆動・ナット30の駆動面32に接触している後面に沿って応力集中を本質的に分散することにより、引き寄せによる応力集中をさらに減少するように改良した後部フエルールを有している。図15−18に示すように、対応する継ぎ手要素を最終締め付けまでの準備となる指で締めた位置で示している。
【0039】
図15および16を特に参照すると、継ぎ手は、穴ぐり部112aに達する管端113を受け入れるために円筒開口部112を有する本体110を含んでいる。テーパ付き切頭円錐形案内口114は開口部112の軸方向後ろ側ないし受入端に位置している。前部フエルール116は滑らかな円筒形で、半径的に内側の壁118を有し、管113上に密に受け入れられている。前部フエルール116は、本体110のテーパ付き口114に接触したテーパ付き外面120を有している。
【0040】
後部フエルール122は前部フエルール116と関連していて、軸方向で隣接した位置にあり(即ち、継ぎ手の長軸に同心で後ろ側)、後ろ側にテーパ付き面127を有するテーパ付きノーズ部分124で構成されている。さらに、後部フエルール122には輪郭成形をした端面128を有し、半径方向に伸びた後部フランジ126が含まれている。輪郭成形をした面128には、駆動・ナット130のそれぞれの駆動面132が接触している後ろ向きの被駆動面129が含まれる。
【0041】
後部フエルール122のテーパ付きノーズ面127は、前部フエルール116の後部のテーパ付き案内面125と接し、それとほぼ同じ角度を有しているが、必須ではない。ノーズ部分124は好ましくテーパ付き外壁131によりフランジ126と結合している。示されている実施例では、壁131が軸方向後ろの方で半径方向の寸法が大きくなる傾斜になっている。さらに、後面129への応力集中をさらに減少しやすくするために傾斜になっていることが好ましいが、外壁131は円筒にもできる。
【0042】
フエルール116および122は、ねじ付き駆動・ナット部材130により囲まれている。駆動・ナット部材129には後部フエルール122の輪郭成形をした面129に接した駆動面132が含まれている。ナット部材130は本体110のねじ部にねじ込み可能に嵌め込まれている。継ぎ手の締め付けと組立ての間にナット130の駆動面132が後部フエルール122の輪郭成形をした面129に引き寄せ力を加えて、両方のフエルールを軸方向前方に(図16に示すように右に)図19に示す完全嵌め込み位置まで押す。後部フエルールは、テーパ付き案内面125と強制嵌め込みをする際に、ノーズ部分124が半径方向内向きに変形する構造になっている。この作用は、後部フエルール122の内側円筒壁と管113の壁の外面とで緊密な把握接触を生じるので望ましい。
【0043】
図15−20に示した実施例で、後部フエルール122の輪郭成形をした面128は、丸め、曲げ、アーチ形、または、弓状曲げ、または、他の曲線形、または、そのような形状の組合せにしうる。好ましいが、必須でないこととして、面128は半径Rの凸形形状の曲面部分を有している。例えば、図18に示すように、半径の中心をフエルール本体内部にできる。しかしながら、当該分野の技術者はその円弧面129の原点は後部フエルール構造に対してどこにでも位置できることをすぐに理解できよう。図18の図面は例示目的にのみ示されている。輪郭成形をした面128のひとつの側面は、凸形形状の被駆動面129と共に、線接触129b(または、小さな面対面の放射状接触)が最初にナットの駆動面132により、フランジ126の半径的に内側と外側の部分の間の領域に形成され
る。さらに好ましくは、以前に既に述べたように、後部フエルールには任意の構造としうる凹部140が含まれる。代わりに、図20に示すように、凹部140を省略した後部フエルール構造と共に、輪郭成形をした後面128を使用できる。
【0044】
輪郭成形をした面128に、ある半径または他の曲線の面を用いることが望ましいけれども、その半径をどの程度小さくできるかには実際的限界がある。曲面の半径が小さすぎると、多分、輪郭成形をした面128の中央領域に好ましくない応力集中を発生する可能性がある。
【0045】
輪郭成形をした後部フエルール122の明確な利点は、ナットの駆動面132と後部フエルール122の輪郭成形をした面128の間の引き寄せ応力が後部フエルールの表面128に、より均一に分散され、それゆえ、応力集中を低減し、実質的に解消することである。駆動・ナット130上の応力集中がこのようにさらに低減したことで、引き寄せトルクを低減し、かじり傷を減少するので、継ぎ手の改修を容易にする。
【0046】
例示した実施例では、後部フエルール122と駆動・ナット130の間の最初の接触が一般的に輪郭成形をした面128の中央として示されているが、これは全ての用途で必要ではないことに留意することは重要である。最初の接触点は、テーパ付き壁131の形状、凹部140、ノーズ部分127、前部フエルール116の構造等を含めて継ぎ手の全体設計の関数である。しかしながら、本発明の一般的側面を維持することで、輪郭成形をした面128は凸形に、または、フランジ126の半径的に内側と外側の部分の間の領域で軸方向に変形させて、駆動・ナット132に作用する引き寄せ力を均一に分布するようにし、実質的に平坦で、輪郭成形をしない被駆動面128を有する従来の後部フエルール設計と比較して、かじり傷および引き寄せトルクを低減している。
【0047】
図20は、後部フエルール122’が実質的に円筒形の内壁150’を有しているが、それ以外では、輪郭成形をした被駆動面128’を有するフランジ126’および前部傾斜127付きのノーズ部分124’およびテーパ付き外壁131’が含まれる本発明の実施例を示している。
【0048】
図22は、後部フエルール22’の設計で凹部40’が軸方向後方に移動し、全体としてフランジ26’の軸方向寸法以内に入ることができるようにした本発明の他の実施例を示す。
【0049】
図23A−Fを参照して、我々は、輪郭成形をした端面128のいくつかの変形を示している。図23Aでは、面128を楕円形輪郭に成形されている。図23Bでは、面128は部分128a、128b、128cのような多数の円弧を一体にしたことにより形成されている(図面の点は円弧の交点を示し、端面の物的形態ではない)。図23Cでは、端面128に第一半径の輪郭を有する中央部分128aと第二半径の輪郭により形成された外側部分128bが含まれている。図23Dでは、端面128は、ある半径で形成された輪郭を有する中央部分128a、直線的面(円錐面の形状になっているが、部分的表面が直線的に見える)で形成された外側部分128bおよび128cが含まれる。図23Eで、端面128には楕円形の部分128aおよび直線的部分128bが含まれる。また、図23Fでは、端面128が楕円形状128a、直線部分128b、円弧部分128cの3形状で形成された輪郭を持つ。図23A−Fの全ての例では、示されている点は前記の実施例と同様に、輪郭成形をした端面128に対して選んだ輪郭と形状は、後部フエルール122のヒンジ状ノーズが望ましい塑性変形をして、優れた管の把握を達成し、その一方で、前部フエルールと共に適切な一連の引き寄せ作用を維持するように設計される。
【0050】
図24A−Fを参照すると、本発明はナット130の駆動面128に輪郭成形をした輪
郭を組み込むことによっても実現できる。これらの実施例で、後部被駆動面128は円錐形である。代わりに、駆動面132と被駆動面128の両方に輪郭成形をすることができる。図24A−Fは駆動・ナットの面132に用いられる輪郭成形をした形に関して図23A−Fに対応している。それで、図24Aは楕円の輪郭を示している。図24Bは複合円の輪郭を示している。図24Cは2個の半径による面を示している。図24Dは1個の円弧の面と2個の直線部分を示している。図24Eは楕円の輪郭と直線部分を示している。図24Fは円弧、直線、楕円の各部分の組合せを示す。図24Gの別の実施例では、ナットの駆動面132を頂点129Dで結合する2個の直線部分から形成できる。
【0051】
図25を参照すると、別の実施例で、後部フエルール522には内側の円筒壁内の凹部540が含まれる。しかしながら、この実施例では、フエルール522の本体内で、後部平坦部分542が、前部平坦部分544を形成している穴径と比較して大きな穴径により形成されている。大きな直径により後部の面542を形成することにより、単一の工具を用いて、切り欠き540およびフエルール522を貫通する中心穴を形成できる。2直径の差は図25の寸法Dにより示されている。切り欠きまたは凹部540はフエルール522の本体の後方部分に位置していることに留意されたい。これにより軸方向に伸びた前部の面544が得られるが、後部の部分542が管を密に囲まないので、この伸びた前部の面が組立て中にフエルールの位置合わせを維持するのに役立つ。しかしながら、当該分野の技術者であれば、直径を大きくした後部の部分542は、複合型切り欠きの設計を含めて本明細書その他に示された切り欠き40の形状の多くと共に使用できることを容易に理解するであろう。後部フエルール522にも前記の実施例と同様に輪郭成形をした後部壁を含められる。
【0052】
図26は後部フエルール22’の別の実施例を示している。この実施例では、中央貫通穴内の二重切り欠き40’に加えて、フエルールには、フエルールの外径面50’内の切り欠きないし凹部300が含まれている。引き寄せ中にフエルールノーズ部分52’の塑性変形をさらに抑制するために、この切り欠き300を「ヒンジ」設計の一部として使用できる。図27は、中央の凹部640,外径側凹部ないし切り欠き300’を有するテーパ付き外径部650、輪郭成形をした、または、円弧の被駆動面628を持つ大径の後部部分ないしラジアル・フランジ642を組み込んだ後部フエルール622の別の実施例を示している。本明細書の他の例と同様に、後部の面642が前部の面644より僅かに径が大きく、寸法D’’により示している。実際の寸法および輪郭の全てが、管表面に対して希望の荷重でフエルール622が塑性変形をして、ナットの駆動面への荷重の集中を最小限にし、さらに、前部フエルールへの押しつけ力を適切にするように選択しうる。本明細書で示した他の各種後部フエルールの設計と同様に、後部フエルールの設計の各種コンセプトを1個のフエルールによる継ぎ手に使用できる。
【0053】
図27で示すフエルールには外側の切り欠き300’が含まれている。図28のFEA(有限要素解析)表示は、この外側の切り欠き300’が後部フエルールのノーズ部分652で有意なヒンジ効果をどのように生じるかを劇的に示している。外側の切り欠き300は半径方向に伸びているクラウン302と結合している。管が薄肉であるか、そうでなくても、継ぎ手の組立て中に変形しやすい時、このクラウン302は後部フエルール22’のノーズが前部フエルールの下に滑り込む(例えば、伸縮する形で)のを防止するように機能する。クラウン302が無ければ、薄い管壁がつぶれると、後部フエルールのノーズが前部フエルールの案内口の外に押されて前部フエルールの下に滑り込み、適切な一連の引き寄せが阻止され、両フエルールによる把握が不十分になることがありうる。好ましくは、引き寄せ中にクラウン302が前部フエルールの内側案内口との接触を維持する。
【0054】
本発明は好ましい実施例を参照しながら説明されている。明らかに、本明細書
を読み、理解すれば、他の者でも、変更と修正を行える。添付した請求項または
その同等内容の範囲内である限り、そのような全ての修正と変更は含まれるとい
うことを意図している。
【関連出願書との相互参照】
【0001】
本出願書は1998年4月2日付け米国特許出願一連番号09/054,186の部分的継続であり、前記09/054,186は1997年4月15日付け米国特許出願一連番号08/834,255、現米国特許第5,882,050号の部分的継続である。これらの全開示内容は参考用として本出願書に完全に組み込まれている。
【発明の背景】
【0002】
本発明はフエルール形管継ぎ手又は管取付具の分野を目指している。とりわけ、本発明は2個のフエルールによる管継ぎ手で、後部フエルールが関連ナットを回すのに必要なトルクを低減し、さらに、後部フエルールと駆動・ナットの内面の間のかじり傷を低減するように設計されている。さらに、本発明は1個のフエルールによる継ぎ手にも適用しうる。
【0003】
商用的に入手でき、非常に成功していて、配管に用いられている2個のフエルールによる管継ぎ手を図1および図1Aに示す。図1は継ぎ手要素を最終締め付けまでの準備となる指で締めた位置で示している。一方、図1Aは最終締め付け後の継ぎ手を示している。示されているように、継ぎ手は、管端13を受け入れるために穴ぐりをした円筒開口部12を有する本体10を含んでいる。テーパ付き切頭円錐形案内(camming)口14が穴ぐり部の軸方向の外端に位置している。前部フエルール16は円滑な円筒内壁18を有し、管上に密に受け入れられている。前部フエルールは案内口内に受け入れられるように切頭円錐形の外面20を有している。
【0004】
前部フエルール16と関連して、また、そこから軸方向外側に位置した後部フエルール22が、図示されているように、テーパ付きノーズ部分24、および、テーパ付き端面28を有する後部フランジ26を有している。後部フエルール22のテーパ付き端面は、当該分野の技術者には明らかなように、端面に作用する引き寄せ力の軸方向成分だけでなく半径方向成分も与えている。テーパ付きノーズ24が前部フエルールの後面内のテーパ付き案内面に入る。
【0005】
フエルール16、22は本体10にねじ込まれた駆動・ナット部材30により囲まれている。継ぎ手の締め付けおよび組立の間に、ナットの内側端面、フランジないし肩32が後部フエルールの後壁端面28に対して作用し、フエルールを図1Aに示す完全嵌め合い位置に向かって前方に押す。
【0006】
後部フエルールの小径部ないしノーズが継ぎ手の組立て中に塑性変形するような寸法になっている。この作用は管の外壁を緊密に把握保持するので望ましい。ノーズ部分の厚みは後部フエルールの変形が大きくなりすぎる程度にまで減らすことはできず、後部フエルールが配管の外壁を適切に把握するだけにする。即ち、この2個のフエルールのアセンブリーが商用的に成功した製品となる把握・密封機能となるには、2個のフエルールのアセンブリーで、前部と後部の両方のフエルールが望ましい変形をする必要がある。他方、後部フエルールのノーズ厚みは、硬すぎて、希望の後部フエルールの変形を生じないような構造状態になる程度まで大きくはできない。
【0007】
テーパ付き後面および前部と後部のフエルールの相互作用から生じる、従来の2個のフエルールを用いた段階的制御による一連の把握作用についてのより完全な説明と理解はLennonらが開示した特許文献1に示されている。その全開示が参考用として本出願書に完全に組み込まれている。
【0008】
従って、後部フエルールのノーズの指定壁厚により、管を把握・密封するという希望の目標を達成するように、管の希望の把握を達成し、かつ、前部フエルールと連携することが望まれていることは、当該分野の技術者であれば理解するであろう。
【0009】
さらに、流体系統の運用者が系統の定格圧力より適当な倍率まで系統を加圧することにより、生産運転前に系統を試験することも認識されている。この方法で、運用者は流体系統が密封されているか、即ち、漏洩がないかを容易に検出できる。この知識を用いて、製造業者は後部フエルールのノーズが高い試験圧力により追加の塑性変形をしないような継ぎ手を供給できる。従って、希望のノーズ変形量を達成し、前部と後部のフエルールが管の外壁を適切に把握・密封できるように、高い試験圧力を用いて、後部フエルールのノーズ部分の希望壁厚を決定する。
【0010】
ときどき、駆動・ナットの内側端面と後部フエルールの後壁の間の駆動面の接触領域で駆動・ナットのかじり傷を生じることも認められている。解析の後で、前部と後部のフエルールの間の軸方向スラストないし引き寄せ力が基本的に継ぎ手の軸に平行であると信じられている。この軸方向のスラストにより、後部フエルールの後部コーナー領域が、ナット内部の駆動面に、特に局部的領域に引き寄せ応力を選択的に集中させて、かじり傷を生じる。さらに、かじり傷がない場合でも、このことが組立て中に経験するナットのトルクによる力を顕著に高める。従って、スラスト力が高い局部荷重を、その結果としてかじり傷および高いトルクによる力を生じないように設計をすることが非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,103,373号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のひとつの実施例に基づくと、管継ぎ手には、管端を受け入れる円筒穴を有し、また、その穴の一端にあるテーパ付き口を含む継ぎ手本体、本体とねじ込み接続をし、フエルール駆動面を有する駆動部材、継ぎ手本体のテーパ付き口に伸びているテーパ付き第一の端部を有し、かつ、第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部を伴う第二の端部を有する第一のフエルール、円筒内壁、第一のフエルールのテーパ付き凹部に伸びているテーパ付き第一の端部を有し、駆動部材のフエルール駆動面に接触するその第二の端部上に輪郭成形をした面を有する第二フエルール、第二のフエルールの第一と第二の端部の間に位置する円周方向の凹部を有する第二フエルールの内壁、継ぎ手を組立てたときに駆動部材の駆動面上の応力集中を減らしている凹部および輪郭成形をした面が含まれる。
【0013】
本発明の他の側面には、後部フエルールの前端ないしノーズ端で第一の直径、および、そのフエルールの後端で第二の直径を有し、その第二の直径が第一の直径より大きくし、例えば、単一工具を用いて円周方向の凹部および円筒壁を形成できるようにようにした円筒内面を持つ後部フエルールを形成することが含まれる。さらに、本発明の別の側面には、第二フエルールの第一と第二の端部を結合するフエルール本体の外径に切り欠きを形成することが含まれている。本発明の他の側面は、後部フエルールの第二の端部上でなくて駆動部材上に輪郭成形をした駆動面を設けている。さらに、本発明は以前のフエルールよりも硬いベースメタルから作られたフエルールにより実施しうる。さらに、本発明はフエルールの面全体をまたは選択的に表面硬化したフエルールにより実施しうる。一般的に、本発明は1個のフエルールによる継ぎ手にも適用しうる。
【0014】
本発明のこれらおよび他の側面は、添付図面を見て、以下の好ましい実施例の説明から当該分野の技術者には明らかであろう。
【0015】
本発明は、本明細書に詳細に示され、本明細書の一部になっている添付図面に示されている特定部品、部品の配置、好ましい実施例および方法の中に物的形態をとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】良く知られた従来技術の2個のフエルールによるスエージ形継ぎ手の長手方向の断面図である。
【図1A】組立て状態で従来技術の継ぎ手を示している図1の円で囲んだ部分の拡大図である。
【図2】図1に類似した図であるが、後部フエルールを通じた反力伝達を改善するように設計された改良した後部フエルールを組み込んだ継ぎ手の好ましい実施例を示している。
【図3】図2の円で囲んだ部分を大きく拡大して示している。
【図4】好ましい形の後部フエルールの詳細な部分断面図である。
【図5】図4に類似した断面図であるが、第二の好ましい形の後部フエルールを示している。
【図6】図1の継ぎ手の断面図で、特に、最初の組立て時の前部フエルールとナットの間に位置する後部フエルールを示す。
【図7】組立て状態で、応力集中を示す図6の継ぎ手の図面である。
【図8】本発明の教示に基づいて改良した後部フエルールを含めた最初の組立て時の継ぎ手断面図である。
【図9】組立て状態で、応力集中を示す図8の継ぎ手の図面である。
【図10】本発明の教示に基づいて改良した後部フエルールを含めた最初の組立て時の継ぎ手断面図である。
【図11】組立て状態で、応力集中を示す図10の継ぎ手の図面である。
【図12】本発明の教示に基づいて改良した後部フエルールを含めた最初の組立て時の継ぎ手断面図である。
【図13】組立て状態で、応力集中を示す図12の継ぎ手の図面である。
【図14】後部フエルール構造の種々の変形に関する表である。
【図15】2個のフエルールによる継ぎ手の代替実施例の断面図である。
【図16】図15の実施例のフエルール領域の拡大図である。
【図17】本発明の一側面に基づく輪郭成形をした面を持つ後部フエルールの部分図である。
【図18】引き寄せ前で前部フエルールおよび駆動・ナットとの接触位置で示した輪郭成形をした後部フエルールに関する断面図である。
【図19】引き寄せ状態で応力分布を示す図18の実施例の図である。
【図20】本発明の他の実施例である。
【図21】輪郭成形をした後部フエルールを用いない2個のフエルールによる継ぎ手の応力分布を示している。
【図22】円周方向の凹部を組み込んだ後部フエルールの設計の他の実施例を示す。
【図23A】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23B】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23C】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23D】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23E】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図23F】種々の代替的後部フエルールの被駆動面の曲面を示す。
【図24A】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24B】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24C】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24D】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24E】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24F】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図24G】本発明の代替的実施例を示し、ナットの駆動面に輪郭成形をした面が設けられている。
【図25】2種の直径から成る内側円筒穴を有するフエルールの別の代替的実施例を示す。
【図26】フエルール本体に外側の切り欠きまたは凹部を有するフエルールの別の代替的実施例を示す。
【図27】切り欠きを設けた内側の穴、輪郭成形をした後面、外側の切り欠き、フエルールのノーズ領域のクラウン部分を有するフエルールに関する本発明の別の代替的実施例を示す。
【図28】高摩擦による管の把握領域が、フエルールのノーズに生じた応力上昇部から軸方向に離れていることに関する本発明の一側面を示す有限要素解析である。
【実施例】
【0017】
ここで図面を参照するが、本発明の好ましい実施例のみを示す目的で示していて、本発明を制限する目的ではない。図2−4は本発明を取り入れた継ぎ手の全体配置を示している。ここに示したフエルールの輪郭に関する図面の多くで、理解を明確にし、容易にするために、特に断面図でフエルール全体の一部を示す必要がある場合にフエルールの形状と輪郭を示すために、フエルールを部分断面図で示していることに留意すべきである。図2−4の実施例は主要部分を図1および図1Aの従来技術の装置の説明で用いたのと同じ参照番号で特定している。図1の要素の説明は他に指定がない限り、対応する番号の図2−4の要素にも等しく適用できると理解すべきである。特に、図2−4の実施例では、前部フエルールから後部フエルールを介してナットへ作用する反力が半径方向外側を向く有意な力成分を生じるように後部フエルール22’を改良している。これは、図1および1Aの実施例で、対象となる力成分が大きな軸方向成分を有しているのと対照的になっている。特に、図4に示すように、力成分Aは一般に後部フエルール22’の軸方向に伸び、フエルールの面28’の半径方向で内側になる面およびナットのフランジ32’に加えられる荷重を高める。以前に論じたように、この領域の高い局部荷重ないし応力集中が高いトルクとかじり傷を生じる。
【0018】
本発明はここで、2個のフエルールによるシステムを特に参照して述べているけれども、そのような説明は本質的に例示的であり、制限する意味で解釈すべきでない。本発明の種々の側面は1個のフエルールによる継ぎ手にも適用できることを見いだすであろう。
【0019】
本発明のひとつの実施例では、フエルール22’の内面全周に亘る円周方向の凹部40を設けることにより反力の方向変更を実現している。凹部40は一般にフエルール22’の両端の間の中間に位置している。これにより、後部フエルールの内面が2個所の軸方向に比較的狭くて、基本的に円筒形で、連続した接触領域42および44に縮小する。そのように後部フエルールを改良することにより、前部フエルールから後部フエルールを介してナットの面ないしフランジ32’に伝わる力が、図4の力の線Bで略図的に示すように半径方向外向きに向く傾向になる。
【0020】
この実施例では、全体的に平坦な接触領域42および44が基本的に同じ直径である。しかしながら、代替的実施例では、これら2領域が異なる直径で、例えば、ある用途には、後部平坦領域42の直径が前部平坦領域44の直径より、例えば、千分の数インチ、より好ましくは千分の1ないし3インチだけ僅かに大きくしている。別の代替的実施例では、この領域に穴ぐり部を設けることにより、接触領域としての後部平坦領域42を無くすことがある。特に、フエルールのサイズが大きい場合、後部フエルールのノーズ部分に平坦部が1個所あれば、取付中に配管上のフエルールの位置合わせを適切に維持するのに十分であろう。これらの代替例は以後で十分に説明している。
【0021】
本発明の他の重要な特徴は、図1の後部フエルール22を図2−4の実施例の後部フエルール22’と比較することにより良く例示されている。特に、後部フエルール22’の外半径方向50には、前部ノーズ部分52から伸びると共に半径方向の寸法が大きくなっている円錐部分が含まれ、前部フエルールの後部面取り領域53内に、後部フランジ26’まで受け入れられる。従来技術の配置(図1および1A)では、後部フエルールは円筒形貫通穴およびこの領域で貫通穴を形成している内面に平行に伸びている外径一定の壁を有している。言い換えると、後部フエルールは一定の環状壁厚“t”を有している。図2−4の実施例では、外壁が円錐形ないしテーパ付き構造で、改良した後部フエルールに凹部が組み込まれたとき、十分な壁厚“t”を持ち、ノーズ部分の変形を抑制する。好ましくは、外壁50は全体として均一な角度または傾斜になっていて、前部フエルールの案内口に受け入れられる小さな径のノーズ領域52と大きな径の後部フランジ26’の間に伸びている。ここでも、これにより、管の外壁を把握し、密封接触する面44に沿って、領域52が半径的に内側で塑性変形をするように、後部フエルールが変形するのを抑制して
いる。図4で、凹部40が、その寸法“t”が一定に見えるような形状になっているけれども、そうなる必要がないことに留意されたい。例えば、図14、17、18の図面の多くのように凹部40が形成された場合、テーパ付き外壁50は、後部フエルールのノーズ52と後部フランジ26’の間で不均一な厚み“t”になる。
【0022】
壁厚“t”と後部フエルール22’の形状と構成は、特定用途に対して、配管上でフエルール22’をバランスさせ、適切な位置合わせになるように、また、配管上で適切に密封できるように、引き寄せ中に望ましい段階的制御による一連の把握作用を実現するように選定される。継ぎ手の引き寄せ中に、後部フエルール22’は、管端13の外面に軸成分と半径成分の両方を有するベクトル力を加える。この半径成分の力が優れた把握・密封作用を生じるような管表面への軸方向摩擦力を可能にする。この軸方向の摩擦力が管13からの管把握による軸方向反力とバランスする。
【0023】
凹部40と共にテーパ付き外壁50を組み合わせた形状が、後部フエルールのノーズ部分52の「ヒンジ効果」を生じる。選定した形状および構成は、継ぎ手要素に用いた材料、管の材料と壁厚、継ぎ手の使用圧力、後部フエルールを表面硬化しているかどうか等を含む要因によるが必ずしもそれに限定されない。組立て中の一連の把握作用を適切に維持するために、後部フエルール22’のノーズ部分52が早めにつぶれないことが重要である。そうでないと、前部フエルール16が管壁上で十分な把握力を生ぜず、または、前部フエルール16とテーパ付き案内口14の間の密封力が不適切になることがある。後部フエルール22’のつぶれが前部フエルールに比較して遅すぎる場合、後部フエルール22’は管13の壁上の把握力が適切にならないことがある。
【0024】
後部フエルール22’のヒンジ効果により、後部フエルールがノーズ部分52で管壁に加える力を管面から有意な半径方向のベクトル角にする。それゆえ、このフエルールが加える力のベクトルBは有意な半径方向成分を有する一方で、有意な軸方向摩擦力を可能にする。それゆえ、図1および1Aの従来技術におけるように、加えられる力が基本的に軸方向である時とは対照的に、駆動部材30により加えられる軸方向成分の力が小さくても、軸方向の管把握による反力に十分対抗している。それゆえ、後部フエルール22’による管13の把握はトグル状ヒンジ作用に近い。軸方向成分の力が小さいので、同じ管把握を実現するためのナット30の引き寄せトルクが低くなる。
【0025】
さらに、継ぎ手の引き寄せの間に、このヒンジ特性により、管の反力は一般的に後部フエルール22’を介して、ナットの肩32’の駆動面に接触する後部フエルールの被駆動面28’の中央領域を向く。これにより、反力は後部フエルール22’の被駆動面28’への分布がより均一になり、高い応力集中が避けられ、または、低減する。それゆえ、かじり傷が低減ないし解消し、管の把握力が喪失しないで、引き寄せトルクを低減する。多くの場合、後部フエルールの後面28’に全体として垂直な方向を向いている。さらに、加えられた半径方向の力により管の把握力が高まることは管13への後部フエルール22’のノーズ部分の侵入ないし押込みを大きくする。これにより、加えるトルクが低くても優れた管の把握・密封を行える。さらに、後部フエルール22’のノーズ前端で生じる管の応力上昇部の後方(即ち軸方向の後方)に押込みによる高い把握圧の領域を生じることにより振動疲労への抵抗を高くする。図28はこの結果を示していて、管壁13にノーズが侵入している応力上昇領域400が、フエルールノーズと管壁の間での高い摩擦接触を生じる押込み領域402より軸方向前方になっている。高摩擦領域または押込み部がコレット効果を生じて、管壁上にフエルールを固定し、応力上昇部400を振動から守る。後部フエルールノーズ部分の前方平坦部分44による管上への把握作用が良好であることが、後部フエルールの平坦部分42の間の全ての接触圧力とは対照的に、継ぎ手の全体性能にとって重要である。多くの場合に、部分42と管13の間で接触する必要はない。
【0026】
本発明のかじり傷の減少および引き寄せトルクの低下から得られる他の利点は、継ぎ手の改修が容易なことである。「改修」とは、ある用途で、ユーザーが配管継ぎ手を設置後に、多分、弁、配管を交換するために、または、他の日常的保守および修理を行うために、分離してから、フエルールおよび(または)ナットまたは本体を交換せずに同じ継ぎ手を再取り付けしたいと希望することを単純に意味している。後部のフエルールおよび駆動・ナットにかじり傷が付くと、継ぎ手の改修に必要なトルクが著しく大きくなりまたは不可能になることがある。または、継ぎ手が適切に再密封しないことがある。本発明を用いることにより、かじり傷を有意に減らすか、解消し、また、引き寄せトルクを低減するので、改修が容易になる。
【0027】
本発明は多くの異なる材料と共に使用できるけれども、ステンレス鋼の継ぎ手と配管と共に用いるとき、特に利点がある。それには316および316Lステンレス配管を含むがそれに限定されない。しかし、他の合金に加えてハステロイ、インコネル、モネル合金400および500、254SMOおよびスチール、および、例えば、SAF2507のようなデュープレックス・ステンレス鋼が含まれる。本発明は必要に応じてフエルールの表面の全部または一部に表面硬化を施し、または、施さないで使用できる。
【0028】
表面硬化されたフエルールまたは316Lステンレス鋼より本質的に硬い材料で作られたフエルールの場合、本発明により継ぎ手10が、望ましい段階的制御による一連の管壁把握で、適切に引き寄せることができる。従来のフエルール、特に後部フエルールの表面硬化をし、または、非常に硬い材料で作った場合、フエルールは管壁を適切に密封・把握するには硬すぎるだろう。しかしながら、本発明は硬質材料のフエルール、または、その表面の一部または全部を表面硬化したフエルールの使用を容易にしている。本明細書での表面硬化とは、当該分野の技術者に知られているように、根底のベース・メタルと比較してフエルール本体を実質的に硬くする炭素または窒素リッチの表面になるようにフエルールを処理することを言う。
【0029】
図5は、凹部40が2種の異なる角度(鈍角三角形)により形成されている後部フエルールの別の好ましい実施例を示している。例えば、内面に形成された小さい方の第一の角は、面44から後部フランジ26’に向けて後方に伸びると共に大きくなる。大きい方の第二の角(第一の角の角度の大きさの約2倍)は面42からノーズ領域に向けて前方に伸びると共に大きくなる。それゆえ、これらの角が交差する軸方向位置は、外壁50と後部フランジの交点の下になる。従って、後面28’に分布する応力が均一になる。
【0030】
図6および7に移ると、図1の従来技術の配置による後部フエルールが、フエルールの組立の前と後について示されている。継ぎ手の有限要素解析を行った。その結果は、図7で特に明らかにされている。そこでは、後部フエルールの後部フランジとナットの斜線領域が、継ぎ手の組立て時に遭遇する力と応力集中を明らかにしている。特に応力集中が高い領域を領域60と指定している。応力集中が次第に低くなる領域を数字62、64、66、68、70により示している。それで、後面28’の半径的に内側の位置で応力集中が大きいことにより、組立て中のトルクおよびナットのかじり傷の可能性を高める。
【0031】
図8および9は本発明の教示に基づき別の改良をした後部フエルールを示す。この後部フエルールは図5に示したものと同じである。特に図9で明らかなように、図7と比較したとき、応力集中が高い領域のサイズが実質的に減少している。このことは、後部フエルールのフランジの後面への応力分布が均一になっていることを示している。それゆえ、トルクが低下し、かじり傷の可能性も同様に低下している。
【0032】
図10および11は図4で図示し、説明している後部フエルールを示している。ここでは、有限要素解析により後面では応力集中が高い領域が実質的に無くなっていて、より均
一な応力分布が得られている。ここでも、組立てに伴うトルクの力が減少し、それゆえ、対応して局部的応力集中が低減している。凹部と円錐形外壁により継ぎ手に生じた力に半径方向成分が生じ、後部フエルールを介して伝達される。その一方で、依然として管の望ましい把握・密封を生じている。
【0033】
図12および13の実施例も、これらの同じ目標を達成している。凹部は僅かに異なった構造である。即ち、凹部が後部フエルールの内壁内で、より鋭く形成されている。さらに、それを僅かに前方に移していて、凹部の最深部は後部フエルールの前の方に位置している。しかしながら、外壁は依然として円錐形状になっていて、凹部と組み合わせることで、後部フエルールの後面に沿った応力を分散している。
【0034】
前記の種々の実施例で明らかなように、継ぎ手を組立てる場合の応力分布と低トルクを実現するために、凹部とテーパ付き外壁には特別の整合性を必要としない。実際に、代替実施例の提案のいくつかを図14の表の形で示している。例えば、第一列の形状は、凹部の後端の軸方向位置が外壁と拡大フランジの交点の下になるように全体的に形成されている標準位置を有している。涙滴、直角三角形、長方形、楕円形、角張った円、鈍角三角形、曲線、複合曲線が、凹部として採用できる種々の形状である。さらに、凹部は前の位置(第二列)、または、後ろの位置に置ける。後ろの位置の場合、凹部の最深部の位置が拡大フランジの下になる(第三列)けれども、依然として種々の形状を採用しうる。さらに、形状の向きは、第四列または第六列の種々の形状により示されているように、反転できる。または、凹部は第五列または第八列の形状で示されているように、複合凹部により形成しうる。その代わりに、第七列と第八列に示すように、凹部を拡大できる。従って、本発明は前記の図2−13の実施例で図示し、説明した特定形状に限定されず、他の形状を選んで組み込める。
【0035】
図15−20を参照して、本発明の他の実施例が示されている。既に示したように、後部フエルール22の凹部40を用いることは、引き寄せ力に半径方向成分を加えることにより、駆動・ナット30の駆動面32での応力集中を有意に低減する。さらに、テーパ付き外壁50を設けることが、引き寄せ中の後部フエルール22の変形抑制だけでなく半径方向成分および応力分布に寄与できる。図15−20の実施例に基づいて、後部フエルールが輪郭成形をした駆動面と共に提供されていて、駆動・ナット30と後部フエルール22の間の接触領域に生じる応力集中をさらに低減している。
【0036】
図21は駆動・ナットの駆動面32および後部フエルールの被駆動面28での典型的な引き寄せ応力の分布を例示的な形で、典型的に、前記の後部フエルール内の凹部40タイプの構造を組み込んだ場合について示している。これらの応力集中は矢印200により示されている。図21の応力分布と図7の応力集中を比較すると(図7は凹部タイプないし切り欠き構造40を含まない後部フエルールを示している)、凹部40のコンセプトを提供することで前記のように駆動・ナットの駆動面32上の応力集中を有意かつ本質的に低減することが明らかである。このように応力集中を低減することは、図7を図9、11、13と比較することにより、さらに明らかになる。
【0037】
図21はFEA(有限要素解析)の表示では無いけれども、凹部40を用いることが、全ての場合で、後部フエルールの後面での応力集中を完全に無くすのではないという点を示している(ただし、凹部ないし切り欠き40を用いることが、切り欠きないし凹部を含まない後部フエルールと比較して、大きく応力集中を低減している)。図21の単純化した表示で、応力集中は、例えば、後部フエルールのフランジ26の半径的に内側と外側の部分で存在することがある(それらは2領域の応力集中として生じる必要は無いけれども、生じる可能性があるので、ここでは、両モードの応力集中と呼ぶ)。これらのいくぶん高くなる両モードの応力集中は図21で太い矢印で表示されている。それゆえ、本発明は
そのような応力集中をさらに低下することを目指していて、その結果は図19に示している。図19では、改良した後部フエルールの駆動面と凹部の内側半径方向部を用いて引き寄せ力の集中を実質的に無くしたことを矢印が示している。
【0038】
本発明のこの別の側面に基づくと、示している2個のフエルールによる継ぎ手は、駆動・ナット30の駆動面32に接触している後面に沿って応力集中を本質的に分散することにより、引き寄せによる応力集中をさらに減少するように改良した後部フエルールを有している。図15−18に示すように、対応する継ぎ手要素を最終締め付けまでの準備となる指で締めた位置で示している。
【0039】
図15および16を特に参照すると、継ぎ手は、穴ぐり部112aに達する管端113を受け入れるために円筒開口部112を有する本体110を含んでいる。テーパ付き切頭円錐形案内口114は開口部112の軸方向後ろ側ないし受入端に位置している。前部フエルール116は滑らかな円筒形で、半径的に内側の壁118を有し、管113上に密に受け入れられている。前部フエルール116は、本体110のテーパ付き口114に接触したテーパ付き外面120を有している。
【0040】
後部フエルール122は前部フエルール116と関連していて、軸方向で隣接した位置にあり(即ち、継ぎ手の長軸に同心で後ろ側)、後ろ側にテーパ付き面127を有するテーパ付きノーズ部分124で構成されている。さらに、後部フエルール122には輪郭成形をした端面128を有し、半径方向に伸びた後部フランジ126が含まれている。輪郭成形をした面128には、駆動・ナット130のそれぞれの駆動面132が接触している後ろ向きの被駆動面129が含まれる。
【0041】
後部フエルール122のテーパ付きノーズ面127は、前部フエルール116の後部のテーパ付き案内面125と接し、それとほぼ同じ角度を有しているが、必須ではない。ノーズ部分124は好ましくテーパ付き外壁131によりフランジ126と結合している。示されている実施例では、壁131が軸方向後ろの方で半径方向の寸法が大きくなる傾斜になっている。さらに、後面129への応力集中をさらに減少しやすくするために傾斜になっていることが好ましいが、外壁131は円筒にもできる。
【0042】
フエルール116および122は、ねじ付き駆動・ナット部材130により囲まれている。駆動・ナット部材129には後部フエルール122の輪郭成形をした面129に接した駆動面132が含まれている。ナット部材130は本体110のねじ部にねじ込み可能に嵌め込まれている。継ぎ手の締め付けと組立ての間にナット130の駆動面132が後部フエルール122の輪郭成形をした面129に引き寄せ力を加えて、両方のフエルールを軸方向前方に(図16に示すように右に)図19に示す完全嵌め込み位置まで押す。後部フエルールは、テーパ付き案内面125と強制嵌め込みをする際に、ノーズ部分124が半径方向内向きに変形する構造になっている。この作用は、後部フエルール122の内側円筒壁と管113の壁の外面とで緊密な把握接触を生じるので望ましい。
【0043】
図15−20に示した実施例で、後部フエルール122の輪郭成形をした面128は、丸め、曲げ、アーチ形、または、弓状曲げ、または、他の曲線形、または、そのような形状の組合せにしうる。好ましいが、必須でないこととして、面128は半径Rの凸形形状の曲面部分を有している。例えば、図18に示すように、半径の中心をフエルール本体内部にできる。しかしながら、当該分野の技術者はその円弧面129の原点は後部フエルール構造に対してどこにでも位置できることをすぐに理解できよう。図18の図面は例示目的にのみ示されている。輪郭成形をした面128のひとつの側面は、凸形形状の被駆動面129と共に、線接触129b(または、小さな面対面の放射状接触)が最初にナットの駆動面132により、フランジ126の半径的に内側と外側の部分の間の領域に形成され
る。さらに好ましくは、以前に既に述べたように、後部フエルールには任意の構造としうる凹部140が含まれる。代わりに、図20に示すように、凹部140を省略した後部フエルール構造と共に、輪郭成形をした後面128を使用できる。
【0044】
輪郭成形をした面128に、ある半径または他の曲線の面を用いることが望ましいけれども、その半径をどの程度小さくできるかには実際的限界がある。曲面の半径が小さすぎると、多分、輪郭成形をした面128の中央領域に好ましくない応力集中を発生する可能性がある。
【0045】
輪郭成形をした後部フエルール122の明確な利点は、ナットの駆動面132と後部フエルール122の輪郭成形をした面128の間の引き寄せ応力が後部フエルールの表面128に、より均一に分散され、それゆえ、応力集中を低減し、実質的に解消することである。駆動・ナット130上の応力集中がこのようにさらに低減したことで、引き寄せトルクを低減し、かじり傷を減少するので、継ぎ手の改修を容易にする。
【0046】
例示した実施例では、後部フエルール122と駆動・ナット130の間の最初の接触が一般的に輪郭成形をした面128の中央として示されているが、これは全ての用途で必要ではないことに留意することは重要である。最初の接触点は、テーパ付き壁131の形状、凹部140、ノーズ部分127、前部フエルール116の構造等を含めて継ぎ手の全体設計の関数である。しかしながら、本発明の一般的側面を維持することで、輪郭成形をした面128は凸形に、または、フランジ126の半径的に内側と外側の部分の間の領域で軸方向に変形させて、駆動・ナット132に作用する引き寄せ力を均一に分布するようにし、実質的に平坦で、輪郭成形をしない被駆動面128を有する従来の後部フエルール設計と比較して、かじり傷および引き寄せトルクを低減している。
【0047】
図20は、後部フエルール122’が実質的に円筒形の内壁150’を有しているが、それ以外では、輪郭成形をした被駆動面128’を有するフランジ126’および前部傾斜127付きのノーズ部分124’およびテーパ付き外壁131’が含まれる本発明の実施例を示している。
【0048】
図22は、後部フエルール22’の設計で凹部40’が軸方向後方に移動し、全体としてフランジ26’の軸方向寸法以内に入ることができるようにした本発明の他の実施例を示す。
【0049】
図23A−Fを参照して、我々は、輪郭成形をした端面128のいくつかの変形を示している。図23Aでは、面128を楕円形輪郭に成形されている。図23Bでは、面128は部分128a、128b、128cのような多数の円弧を一体にしたことにより形成されている(図面の点は円弧の交点を示し、端面の物的形態ではない)。図23Cでは、端面128に第一半径の輪郭を有する中央部分128aと第二半径の輪郭により形成された外側部分128bが含まれている。図23Dでは、端面128は、ある半径で形成された輪郭を有する中央部分128a、直線的面(円錐面の形状になっているが、部分的表面が直線的に見える)で形成された外側部分128bおよび128cが含まれる。図23Eで、端面128には楕円形の部分128aおよび直線的部分128bが含まれる。また、図23Fでは、端面128が楕円形状128a、直線部分128b、円弧部分128cの3形状で形成された輪郭を持つ。図23A−Fの全ての例では、示されている点は前記の実施例と同様に、輪郭成形をした端面128に対して選んだ輪郭と形状は、後部フエルール122のヒンジ状ノーズが望ましい塑性変形をして、優れた管の把握を達成し、その一方で、前部フエルールと共に適切な一連の引き寄せ作用を維持するように設計される。
【0050】
図24A−Fを参照すると、本発明はナット130の駆動面128に輪郭成形をした輪
郭を組み込むことによっても実現できる。これらの実施例で、後部被駆動面128は円錐形である。代わりに、駆動面132と被駆動面128の両方に輪郭成形をすることができる。図24A−Fは駆動・ナットの面132に用いられる輪郭成形をした形に関して図23A−Fに対応している。それで、図24Aは楕円の輪郭を示している。図24Bは複合円の輪郭を示している。図24Cは2個の半径による面を示している。図24Dは1個の円弧の面と2個の直線部分を示している。図24Eは楕円の輪郭と直線部分を示している。図24Fは円弧、直線、楕円の各部分の組合せを示す。図24Gの別の実施例では、ナットの駆動面132を頂点129Dで結合する2個の直線部分から形成できる。
【0051】
図25を参照すると、別の実施例で、後部フエルール522には内側の円筒壁内の凹部540が含まれる。しかしながら、この実施例では、フエルール522の本体内で、後部平坦部分542が、前部平坦部分544を形成している穴径と比較して大きな穴径により形成されている。大きな直径により後部の面542を形成することにより、単一の工具を用いて、切り欠き540およびフエルール522を貫通する中心穴を形成できる。2直径の差は図25の寸法Dにより示されている。切り欠きまたは凹部540はフエルール522の本体の後方部分に位置していることに留意されたい。これにより軸方向に伸びた前部の面544が得られるが、後部の部分542が管を密に囲まないので、この伸びた前部の面が組立て中にフエルールの位置合わせを維持するのに役立つ。しかしながら、当該分野の技術者であれば、直径を大きくした後部の部分542は、複合型切り欠きの設計を含めて本明細書その他に示された切り欠き40の形状の多くと共に使用できることを容易に理解するであろう。後部フエルール522にも前記の実施例と同様に輪郭成形をした後部壁を含められる。
【0052】
図26は後部フエルール22’の別の実施例を示している。この実施例では、中央貫通穴内の二重切り欠き40’に加えて、フエルールには、フエルールの外径面50’内の切り欠きないし凹部300が含まれている。引き寄せ中にフエルールノーズ部分52’の塑性変形をさらに抑制するために、この切り欠き300を「ヒンジ」設計の一部として使用できる。図27は、中央の凹部640,外径側凹部ないし切り欠き300’を有するテーパ付き外径部650、輪郭成形をした、または、円弧の被駆動面628を持つ大径の後部部分ないしラジアル・フランジ642を組み込んだ後部フエルール622の別の実施例を示している。本明細書の他の例と同様に、後部の面642が前部の面644より僅かに径が大きく、寸法D’’により示している。実際の寸法および輪郭の全てが、管表面に対して希望の荷重でフエルール622が塑性変形をして、ナットの駆動面への荷重の集中を最小限にし、さらに、前部フエルールへの押しつけ力を適切にするように選択しうる。本明細書で示した他の各種後部フエルールの設計と同様に、後部フエルールの設計の各種コンセプトを1個のフエルールによる継ぎ手に使用できる。
【0053】
図27で示すフエルールには外側の切り欠き300’が含まれている。図28のFEA(有限要素解析)表示は、この外側の切り欠き300’が後部フエルールのノーズ部分652で有意なヒンジ効果をどのように生じるかを劇的に示している。外側の切り欠き300は半径方向に伸びているクラウン302と結合している。管が薄肉であるか、そうでなくても、継ぎ手の組立て中に変形しやすい時、このクラウン302は後部フエルール22’のノーズが前部フエルールの下に滑り込む(例えば、伸縮する形で)のを防止するように機能する。クラウン302が無ければ、薄い管壁がつぶれると、後部フエルールのノーズが前部フエルールの案内口の外に押されて前部フエルールの下に滑り込み、適切な一連の引き寄せが阻止され、両フエルールによる把握が不十分になることがありうる。好ましくは、引き寄せ中にクラウン302が前部フエルールの内側案内口との接触を維持する。
【0054】
本発明は好ましい実施例を参照しながら説明されている。明らかに、本明細書
を読み、理解すれば、他の者でも、変更と修正を行える。添付した請求項または
その同等内容の範囲内である限り、そのような全ての修正と変更は含まれるとい
うことを意図している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管端を受け入れるための円筒形の穴を有し、前記の穴の一端にテーパ付き口を含む取付具本体;
前記本体とのねじ接続部を有し且つフエルール駆動面を有する駆動部材;
前記取付具本体のテーパ付き口の中に挿入可能なテーパ付き第一の端部を有し且つ前記第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部が付いた第二の端部を有する第一のフエルール;および、
管端に取り付けられる時に管端周囲に密着する連続円筒内壁と、前記第一のフエルールの前記のテーパ付き凹部の中に挿入可能なテーパ付きのノーズ部と、取付具の引抜きの際に前記フエルール駆動面に係合する後端部上の被駆動面とを有する第二のフエルールを具備し;
前記の第二のフエルールは全表面が表面硬化されており、前記第二のフエルールは、取付具の完全な引抜きの後におけるような形状を有し、前記第二のフエルールは、管端の外面を通過するよう前記テーパ付ノーズ部の前縁を生じるように変形され、前記円筒内壁の後部は前記管端外面から半径方向に間隔を置いており、前記第二のフエルールは、長手方向部分の前記円筒内壁の凸部を形成するように変形され、該凸部は、前記前縁から軸方向後方にあり、すえ込み領域が前記円筒内壁によって前記管端外面に作られることを特徴とする管継ぎ手。
【請求項2】
前記第二フエルールは、全表面に亘って表面硬化されている請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項3】
前記第二のフエルールのテーパ付ノーズ部は円錐台形である請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項4】
前記第一のフエルールのテーパ付ノーズ部は円錐台形である請求項3記載の管継ぎ手。
【請求項5】
前記第二のフエルールのテーパ付ノーズ部は、長手方向断面で見る時に直線である請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項6】
前記第一のフエルールのテーパ付ノーズ部は、長手方向断面で見る時に直線である請求項5記載の管継ぎ手。
【請求項7】
前記変形がヒンジング作用から成る請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項8】
前記凸部が、前記テーパ付ノーズ部分から軸方向に間隔を置いて隔たっている請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項9】
管端を受け入れるための円筒形の穴を有し、前記の穴の一端にテーパ付き口を含む取付具本体;
前記本体とのねじ接続部を有し且つフエルール駆動面を有する駆動部材;
前記取付具本体のテーパ付き口の中に挿入可能なテーパ付き第一の端部を有し且つ前記第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部が付いた第二の端部を有する第一のフエルール;および、
管端に取り付けられる時に管端周囲に密着する連続円筒内壁と、前記第一のフエルールの前記のテーパ付き凹部の中に挿入可能なテーパ付きのノーズ部と、取付具の引抜きの際に前記フエルール駆動面に係合する後端部上の被駆動面とを有する第二のフエルールを具備し;
前記の第二のフエルールは取付具の完全な引抜きの後におけるような形状を有し、前記第二のフエルールは、管端の外面を通過するよう前記テーパ付ノーズ部の前縁を生じるように変形され、前記円筒内壁の後部は前記管端外面から半径方向に間隔を置いており、前
記第二のフエルールは、長手方向部分の前記円筒内壁の凸部を形成するように変形され、該凸部は、前記前縁から軸方向後方にあり、すえ込み領域が前記円筒内壁によって前記管端外面に作られることを特徴とする管継ぎ手。
【請求項10】
前記第二フエルールは、全表面に亘って表面硬化されている請求項9記載の管継ぎ手。
【請求項11】
前記凸部が前記円筒内壁の中央領域に形成されている請求項9記載の管継ぎ手。
【請求項12】
フエルールの中心を通る略円筒の内壁を有し、フエルールが金属管端に取り付けでき、該内壁は第一及び第二円筒部分を有し、該第一円筒部分はフエルールの前縁に軸方向に隣接し且つフエルールの最小内壁直径を有し、該第二円筒部分は第一円筒部分よりも大きな直径を有している、金属管継ぎ手のための管握持用のフエルール。
【請求項13】
前記フエルールは、全表面に亘って表面硬化されている請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項14】
前記フエルールはフエルールの前部が金属管端の外面に食いつくように完全に引抜かれる時に破壊されることのないように塑性変形される請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項15】
前記フエルール第二円筒部分の後部は、前記フエルールが取付け具内に完全に引抜かれた後に管端から半径方向に隔てられている請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項16】
前記フエルールが金属から成る請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項17】
前記フエルール及び前記管端がステンレス鋼から成る請求項14記載の管握持用のフエルール。
【請求項18】
前記前部部分は、取付具の引抜きにおいて内方にヒンジ止めされ且つ管端がコレット加工されている請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項19】
管端の外面に取付けられる管継ぎ手のフエルールであって、管端を密接して取り囲む、取付具が完全に引上げられる前は略円筒形の内壁を有するフエルール本体と、取付具のカム面と係合するテーパー付ノーズ部と、フエルール駆動面と係合するフエルール本体の後端の従動面とを備え、
前記フエルール本体は、フエルール本体の前縁に隣接する少なくとも円筒形前部部分を設けるように前記円筒形内壁の少なくとも1つの溝と、前記フエルール本体の後端と隣接する円筒形後部部分とを有し、管端取付具の完全な引上げの後に、前記テーパー付ノーズ部の前縁が管端の外面を貫通し、前記後端に隣接する後部部分の少なくとも一部は管端外面から径方向に隔てて配置され、前記前部部分の少なくとも一部は縦方向の断面において見る時に凸形であり、該凸形の部分は、前記前縁から軸方向に隔てられた少なくとも一部と、前記管端の外面のすえ込み部とを有していること特徴とするフエルール。
【請求項20】
前記フエルール本体がステンレス鋼から成り、全面が表面硬化されている請求項19記載のフエルール。
【請求項21】
前記凸部は、前記すえ込みされた部分の少なくとも一部である請求項19記載のフエルール。
【請求項22】
前記前部部分と後部部分は異なった直径を有している請求項19記載のフエルール。
【請求項23】
前記後部部分は、前部部分よりも大きな直径を有している請求項21記載のフエルール。
【請求項1】
管端を受け入れるための円筒形の穴を有し、前記の穴の一端にテーパ付き口を含む取付具本体;
前記本体とのねじ接続部を有し且つフエルール駆動面を有する駆動部材;
前記取付具本体のテーパ付き口の中に挿入可能なテーパ付き第一の端部を有し且つ前記第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部が付いた第二の端部を有する第一のフエルール;および、
管端に取り付けられる時に管端周囲に密着する連続円筒内壁と、前記第一のフエルールの前記のテーパ付き凹部の中に挿入可能なテーパ付きのノーズ部と、取付具の引抜きの際に前記フエルール駆動面に係合する後端部上の被駆動面とを有する第二のフエルールを具備し;
前記の第二のフエルールは全表面が表面硬化されており、前記第二のフエルールは、取付具の完全な引抜きの後におけるような形状を有し、前記第二のフエルールは、管端の外面を通過するよう前記テーパ付ノーズ部の前縁を生じるように変形され、前記円筒内壁の後部は前記管端外面から半径方向に間隔を置いており、前記第二のフエルールは、長手方向部分の前記円筒内壁の凸部を形成するように変形され、該凸部は、前記前縁から軸方向後方にあり、すえ込み領域が前記円筒内壁によって前記管端外面に作られることを特徴とする管継ぎ手。
【請求項2】
前記第二フエルールは、全表面に亘って表面硬化されている請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項3】
前記第二のフエルールのテーパ付ノーズ部は円錐台形である請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項4】
前記第一のフエルールのテーパ付ノーズ部は円錐台形である請求項3記載の管継ぎ手。
【請求項5】
前記第二のフエルールのテーパ付ノーズ部は、長手方向断面で見る時に直線である請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項6】
前記第一のフエルールのテーパ付ノーズ部は、長手方向断面で見る時に直線である請求項5記載の管継ぎ手。
【請求項7】
前記変形がヒンジング作用から成る請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項8】
前記凸部が、前記テーパ付ノーズ部分から軸方向に間隔を置いて隔たっている請求項1記載の管継ぎ手。
【請求項9】
管端を受け入れるための円筒形の穴を有し、前記の穴の一端にテーパ付き口を含む取付具本体;
前記本体とのねじ接続部を有し且つフエルール駆動面を有する駆動部材;
前記取付具本体のテーパ付き口の中に挿入可能なテーパ付き第一の端部を有し且つ前記第一の端部に向かって軸方向に伸びているテーパ付き凹部が付いた第二の端部を有する第一のフエルール;および、
管端に取り付けられる時に管端周囲に密着する連続円筒内壁と、前記第一のフエルールの前記のテーパ付き凹部の中に挿入可能なテーパ付きのノーズ部と、取付具の引抜きの際に前記フエルール駆動面に係合する後端部上の被駆動面とを有する第二のフエルールを具備し;
前記の第二のフエルールは取付具の完全な引抜きの後におけるような形状を有し、前記第二のフエルールは、管端の外面を通過するよう前記テーパ付ノーズ部の前縁を生じるように変形され、前記円筒内壁の後部は前記管端外面から半径方向に間隔を置いており、前
記第二のフエルールは、長手方向部分の前記円筒内壁の凸部を形成するように変形され、該凸部は、前記前縁から軸方向後方にあり、すえ込み領域が前記円筒内壁によって前記管端外面に作られることを特徴とする管継ぎ手。
【請求項10】
前記第二フエルールは、全表面に亘って表面硬化されている請求項9記載の管継ぎ手。
【請求項11】
前記凸部が前記円筒内壁の中央領域に形成されている請求項9記載の管継ぎ手。
【請求項12】
フエルールの中心を通る略円筒の内壁を有し、フエルールが金属管端に取り付けでき、該内壁は第一及び第二円筒部分を有し、該第一円筒部分はフエルールの前縁に軸方向に隣接し且つフエルールの最小内壁直径を有し、該第二円筒部分は第一円筒部分よりも大きな直径を有している、金属管継ぎ手のための管握持用のフエルール。
【請求項13】
前記フエルールは、全表面に亘って表面硬化されている請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項14】
前記フエルールはフエルールの前部が金属管端の外面に食いつくように完全に引抜かれる時に破壊されることのないように塑性変形される請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項15】
前記フエルール第二円筒部分の後部は、前記フエルールが取付け具内に完全に引抜かれた後に管端から半径方向に隔てられている請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項16】
前記フエルールが金属から成る請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項17】
前記フエルール及び前記管端がステンレス鋼から成る請求項14記載の管握持用のフエルール。
【請求項18】
前記前部部分は、取付具の引抜きにおいて内方にヒンジ止めされ且つ管端がコレット加工されている請求項12記載の管握持用のフエルール。
【請求項19】
管端の外面に取付けられる管継ぎ手のフエルールであって、管端を密接して取り囲む、取付具が完全に引上げられる前は略円筒形の内壁を有するフエルール本体と、取付具のカム面と係合するテーパー付ノーズ部と、フエルール駆動面と係合するフエルール本体の後端の従動面とを備え、
前記フエルール本体は、フエルール本体の前縁に隣接する少なくとも円筒形前部部分を設けるように前記円筒形内壁の少なくとも1つの溝と、前記フエルール本体の後端と隣接する円筒形後部部分とを有し、管端取付具の完全な引上げの後に、前記テーパー付ノーズ部の前縁が管端の外面を貫通し、前記後端に隣接する後部部分の少なくとも一部は管端外面から径方向に隔てて配置され、前記前部部分の少なくとも一部は縦方向の断面において見る時に凸形であり、該凸形の部分は、前記前縁から軸方向に隔てられた少なくとも一部と、前記管端の外面のすえ込み部とを有していること特徴とするフエルール。
【請求項20】
前記フエルール本体がステンレス鋼から成り、全面が表面硬化されている請求項19記載のフエルール。
【請求項21】
前記凸部は、前記すえ込みされた部分の少なくとも一部である請求項19記載のフエルール。
【請求項22】
前記前部部分と後部部分は異なった直径を有している請求項19記載のフエルール。
【請求項23】
前記後部部分は、前部部分よりも大きな直径を有している請求項21記載のフエルール。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図23E】
【図23F】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図24G】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図23E】
【図23F】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図24G】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2011−153711(P2011−153711A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55835(P2011−55835)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2001−571019(P2001−571019)の分割
【原出願日】平成12年12月20日(2000.12.20)
【出願人】(500120266)スウエイジロク・カンパニー (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2001−571019(P2001−571019)の分割
【原出願日】平成12年12月20日(2000.12.20)
【出願人】(500120266)スウエイジロク・カンパニー (30)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]