説明

かつら及びその製造方法

【課題】 爽快感や清涼感などの快適な装着感が得られ、細菌の繁殖を防止することができ自然な外観を呈する、かつら及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 頭部に接する内側に配置した第1のベース部材11及びその外側に配置した第2のベース部材12でかつらベース13を構成し、第1のベース部材11が、親水性物質及び抗菌剤16を表面に付着させた合成繊維15と合成繊維15を被覆する樹脂薄膜18とからなる。さらに、第1のベース部材11には、芳香剤を内包したマイクロカプセル17を付着させてもよい。樹脂薄膜18の被覆により、親水性物質及び抗菌剤16とマイクロカプセル17の保持と共にかつらベースの型保持が可能であり、さらに吸湿・放湿効果と抗菌効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重構造のかつらベースを有し、爽快感や清涼感など快適な装着感を呈し得るかつら及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、かつらは、かつらベースとこのかつらベースに取り付けた人毛又は人工毛髪でなる毛髪とで構成されている。このかつらベースとしては、人工皮膚やネットを用いた単層構造のものと、2枚のネットからなる二重構造がある。
特許文献1には、人体の頭部に被着するキャップ状の内側ネットキャップの外側に毛髪取付キャップを一体に固定すると共に、その内側ネットキャップと毛髪取付キャップとの間に空洞部を形成し、毛髪取付キャップの外側に毛髪を取り付ける2枚のネットからなるかつらが開示されていて、空洞部により通気性が改善されることが記載されている。
【0003】
また、かつらを装着することによる頭皮の細菌発生を防ぐために、防臭加工が行なわれている。特許文献2には、かつらベース中及び塗膜体に抗菌剤としてゼオライト粉末を混在させ、頭皮にネットベース及び塗膜体が直接接触しても、かつら使用中は、頭皮常在細菌が発生するのを極力抑えることができるかつらが開示されている。
【0004】
特許文献3には、人工毛髪とこれを植設するかつらベースの何れか一方又は両方に、親水性物質を含有させた合成繊維や、芳香成分を含有させたかつらが開示されていて、ジャスミン等の芳香成分を合成樹脂として包みこんで、繊維表面に付着させることなどが開示されている。
【0005】
一方、合成繊維への親水性の付与としては、例えば絹繊維に含有されている蛋白質であるセリシンを用いた合成繊維の改質加工方法が、特許文献4に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−275720号公報
【特許文献2】特開平6−173106号公報
【特許文献3】特開2002−88551号公報
【特許文献4】特許第2588445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かつらベースに使用する素材として、従来からポリエステルが多用されている。これはポリエステルは吸湿性が無く、またある程度の硬さやハリがあるので、頭部形状に成形した形状保持性が良好であるなどの理由による。しかし、ポリエステルは吸湿性が無いために、かつらの装着時にかいた汗は殆どがそのままの状態でかつらベースと頭部との間に保持されて、ムレが生じて不快感が増し、さらにそれにより雑菌が繁殖して不快臭が発生し易いという課題がある。とくに、合成樹脂製の繊維によるアレルギーがある場合には、痒みや発疹が起り易い課題もある。
【0008】
また、かつらの繰り返しの使用で、かつらに汗、皮脂、頭部自毛に付けた整髪料などで不快臭が増長され、このような臭気に対しては、かつらに抗菌、消臭加工等を施したり、消臭スプレーなどを噴霧して対応せざるを得ない。
【0009】
上記した従来の二重ネットを用いたかつらにおいて、装着者へ接触する側のネットベースは、かつら装着者の頭部形状に合わせるための加熱成形を行なう。そのため、芳香剤などを内包したマイクロカプセルをネットベースの材料となる繊維生地に予め付着させていた場合には、ネットベースの加熱成形時の高温の加熱により破れたり、変性したり、あるいは繊維生地に着色した色が変色したり退色するという課題がある。
【0010】
さらに、従来の二重ネットを用いたかつらにおいて、親水性物質を含有させると共に、上記マイクロカプセルなど付着させた場合に、長期間の使用や、繰り返しの洗濯などにより、これら親水性物質やマイクロカプセルが剥離又は脱落し易く、耐久性に劣るという課題がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑み、頭皮に接する側のベース部材に親水性物質、抗菌性物質を付着させ、長時間の装着でもベタつくことがなく、爽快感や清涼感など快適な装着感が得られ、細菌の繁殖を防止することができ自然な外観を呈する、耐久性のあるかつら及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、かつらベースとかつらベースに植設した毛髪とでなるかつらであって、かつらベースの少なくとも頭部に接する側に、親水性物質及び抗菌剤が付着され、かつらベースの少なくとも頭部に接する側に親水性物質及び抗菌剤を被覆する樹脂薄膜が形成されてなることを特徴とする。
本発明の別のかつらは、頭部に接する内側に配置した第1のベース部材及びその外側に配置した第2のベース部材で構成したかつらベースと、第2のベース部材に植設した毛髪とで構成され、第1のベース部材が、親水性物質及び抗菌剤を表面に付着させた合成繊維と合成繊維を被覆する樹脂薄膜とからなることを特徴とする。
上記構成において、好ましくは樹脂薄膜はμmオーダー厚みのウレタン樹脂でなる。かつらベースには、さらに、芳香剤を内包したメラミン樹脂からなるマイクロカプセルが付着され得る。好ましくは、親水性物質はセリシンでなり、抗菌剤が脱アセチル化キチンでなる。第1のベース部材と第2のベース部材との周縁部同士は、接着、縫着、樹脂塗布等にて接続されていることが好ましい。
また、好ましくは、第1のベース部材はオーガンジー生地でなり、生地の繊維の直径が27〜500μmで、メッシュ数が10〜420本/インチである。オーガンジー生地の少なくとも一面側に図柄をプリントしてもよい。上記オーガンジー生地にはセリシンと脱アセチル化キチンとが1:0.1〜10の割合で付着していることが好ましい。
また、好ましくは、オーガンジー生地には、芳香剤を内包した直径0.1〜20μmの球状のマイクロカプセルが、オーガンジー生地の単位面積(1平方インチ)当り10万から500億個付着している。このオーガンジー生地はポリエステル繊維からなっていてよい。
【0013】
上記構成によれば、第1のベース部材には親水性物質及び抗菌剤を付着させており、この親水性物質及び抗菌剤を被覆する樹脂薄膜の厚さを頭皮側からの水分が浸透するように、μmオーダーとしているので、第1のベース部材がポリエステルのような吸湿性の無い材料であっても、親水性物質による吸湿効果と、抗菌剤による抗菌防臭効果とを十分に発揮することができる。
また、第1のベース部材には芳香剤を内包したマイクロカプセルを付着しているので、かつらの使用により徐々にマイクロカプセルが潰れることで芳香が持続するので、女性が香水を付けるのと同様の感覚でかつらの内側から長期間にわたって芳香が溢れ出し、高級感を呈する。
【0014】
さらに、本発明の別の態様では、頭部に接する第1のベース部材とその外側に配置した第2のベース部材とで構成したかつらベースと、かつらベースに植設した毛髪とでなるかつらの製造方法において、親水性物質及び抗菌剤を付着させた合成繊維に熱硬化性樹脂溶液を塗布し頭部形状に保持して乾燥することにより、第1のベース部材を成形し、第1のベース部材と同様の頭部形状に保持して人工皮膚材又はネット材の第2のベース部材を成形し、第1のベース部材に上記第2のベース部材を重合して、すなわち、両部材の周囲が揃うように重ね合わせて配置し、好ましくはこれらの周囲を縫着、接着等によって連結したうえで、第2のベース部材に毛髪を植設することを特徴とする。
また、本発明のさらに別の態様では、頭部に接する第1のベース部材とその外側に配置した第2のベース部材とで構成したかつらベースと、かつらベースに植設した毛髪とでなるかつらの製造方法において、親水性物質及び抗菌剤を付着させた合成繊維生地を頭部形状の雄型に固定し、生地に熱硬化性樹脂溶液を塗布して乾燥することにより、頭部形状の第1のベース部材を成形する工程と、人工皮膚材にて又は雄型にネット材を固定して熱硬化性樹脂溶液を塗布して乾燥することにより、頭部形状の第2のベース部材を成形する工程と、上記第1のベース部材上に上記第2のベース部材を重合し、重合した周縁部を接着、縫着、樹脂塗布等にて接続することでかつらベースを作製する工程と、第2のベース部材に毛髪を植設する工程と、を含むことを特徴とする。
第1のベース部材の成形工程において、さらに、芳香剤を内包したマイクロカプセルを合成繊維生地に付着させることが好ましい。
上記構成において、好ましくは、第1のベース部材の成形工程において、親水性物質としてセリシンと、抗菌剤として脱アセチル化キチンと、無機酸又は有機酸と、水とを含む処理溶液に合成繊維生地を浸漬後、乾燥及び加熱処理して、セリシン及び脱アセチル化キチンを生地に付着させる工程と、さらに、芳香剤を内包したマイクロカプセルとバインダーと水とを含む処理液に浸漬後、乾燥及び加熱処理して、芳香剤を内包したマイクロカプセルを上記生地に付着させる工程と、を含む。
【0015】
上記製造方法によれば、合成繊維からなる第1のベース部材を頭部形状に合わせる成形加工において、固定した合成繊維からなる生地に熱硬化性樹脂溶液を塗布し、乾燥して頭部形状に成形するので、用いる合成繊維の軟化温度よりも十分に低い温度で成形することができる。このため、予め、第1のベース部材の表面に付着させた親水性物質、抗菌剤及びマイクロカプセルを損傷を与えたり、生地の変色等を与えないようにできる。
しかも、熱硬化性樹脂溶液が乾燥した後の樹脂薄膜を、親水性物質及び抗菌剤及びマイクロカプセルの保護膜とすることができる。そして、この樹脂薄膜の厚さを頭皮側からの水分が浸透するように、μmオーダーとすることにより、第1のベース部材に付着させた親水性物質による吸湿効果と、抗菌剤による抗菌防臭効果とを十分に発揮できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のかつら及びその製造方法によれば、第1のベース部材には、親水性物質及び抗菌剤を付着させているので、第1のベース部材がポリエステルのような吸湿性が無い材料であっても、親水性物質による吸湿効果と、抗菌剤による抗菌防臭効果とが得られる。
また、第1のベース部材には芳香剤を内包したマイクロカプセルを付着して場合には、かつらの使用により徐々にマイクロカプセルが潰れることで芳香が持続するので、女性が香水を付けるのと同様の感覚でかつらの内側から芳香が溢れ出し、高級感を呈する。
よって、本発明によれば、爽快感や清涼感などの快適な装着感を呈し得るかつらを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に示した実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
最初に、本発明のかつらについて、図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明のかつら10の構成を模式的に示す部分拡大断面図であり、図2はかつらベース13の毛髪側から見た模式的な平面図である。
先ず、かつらベース13は、本実施例では、図に示すように、頭部に接する側に取り付けられる第1のベース部材11と、この第1のベース部材11の表側(図の上側)、すなわち、外側に取り付けられる第2のベース部材12と、第2のベース部材12の表面側に延びるように取り付けられた毛髪14と、で構成されている。
【0018】
図3は、本発明のかつら10で使用される第1のベース部材11の拡大平面図であり、図4は図3のA−Aに沿う断面図である。使用者の頭部側に配設される第1のベース部材11は、合成繊維15と、この合成繊維15の表面に付着させる所定量の親水性物質及び抗菌剤16と、合成繊維15に付着させた芳香剤を内包するマイクロカプセル17と、これらを被覆する樹脂薄膜18とからなっている。そして、毛髪14を植設する第2のベース部材12は、人工皮膚又はネット部材から構成されることができる。かつらベース13は、頭部の寸法などにより標準化したものから選択した頭部形状類似のものや、使用者の頭部形状に合わせて型取りして形成される。
なお、図4に示す第1のベース部材11に用いる合成繊維の断面形状は、円形の場合を示しているが、円形に限らず、任意の形状でよい。
【0019】
第1のベース部材11としては、合成繊維の布地からなる生地15を用いることができる。このようなベース部材11としては、細い番手の繊維からなる平織り布地で、麻に似たしゃり感や光沢を与える加工、所謂擬麻加工した半透明の薄布地を好適に使用することができる。この合成繊維の原料糸としては、レーヨン糸、ナイロン糸、ポリエステル糸などで作られたオーガンジーを用いれば高級感を呈し好適である。
第1のベース部材11となるオーガンジー生地15には、繊維の直径が27〜500μm、より好ましくは40〜120μmであり、メッシュ数が10〜420本/インチ(ここで、1インチ=2.54cm)、より好ましくは、80〜200本/インチのオーガンジー生地を使用することができる。
この繊維の直径が500μm以上で、メッシュ数が10本/インチ未満であると、透明感が高いばかりか、生地の厚みが厚くなってしまうのでかつら10全体の厚みが厚くなってしまい好ましくない。逆に、繊維の直径が27μm以下で、メッシュ数が、420本/インチを越えると、透明感がなくなってかつら10と自毛との境目が目立ってしまい、かつら装着時の自然さが減少するので好ましくない。
上記のオーガンジー生地15は極薄で、且つハリがあるので、形態安定性が高く、単に毛髪が植設された通常のかつらを装着する時と差がなくフィット感・安定感が得られる。また、オーガンジー生地15は、擬麻加工が施されており、しゃり感があり、ドライな触感であるために長時間の装着でもベタつくことがなく、快適な装着感が得られる。
【0020】
また、第1のベース部材11となる生地15を、所定の繊維径やメッシュ数にすることで、後述する毛髪14の毛戻りやかつら10の厚み及び快適な装着感が得られる。ファッション性を高めるために、草花等の図柄を一般公知の手法を用いてプリントしてもよい。通常、かつらは、装着時の自然さが求められており、かつらに植設する毛髪の色、長さ、方向、艶、かつらと自毛の境目の自然さ、かつらベース露見時の迷彩など、外観を重視される。一方、かつら裏面は無味無乾燥であったものを、草花などの図柄をプリントすることで、かつらの内側からのファッション性を実現でき、おしゃれ感や高級感を増すことができる。
【0021】
親水性物質及び抗菌剤16は、合成材料ではなく、頭皮へのアレルギー反応などを引き起こさない天然由来の材料が好ましく、繭から得られる蛋白質であるセリシンなどを好適に用いることができる。また、抗菌剤としては、例えば、脱アセチル化キチン(キトサン)を用いることができる。
ここで、第1のベース部材11には、セリシン及び脱アセチル化キチン16とを、1:0.1〜10の割合で付着させることが望ましい。脱アセチル化キチンが0.1以下になれば抗菌作用が低下するので、好ましくない。逆に、10以上では、抗菌作用の効果が十分にあるのでこれ以上の添加は不要である。
【0022】
芳香剤を含有させるマイクロカプセル17は、メラミン樹脂などの合成樹脂からなり、所定量の芳香剤を内包している。この場合、かつら10の装着者が、第1のベース部材11に触れてマイクロカプセル17を潰したときに、芳香を発する。
この芳香剤を内包したマイクロカプセル17の直径は0.1〜20μmとすればよい。直径が0.1μm以下では、マイクロカプセルに内包する芳香剤の量が少なすぎて芳香が十分に得られず、逆に、直径20μm以上では、第1のベース部材11に付着させたときにマイクロカプセルによるザラツキ感が生じるので好ましくない。
また、マイクロカプセル17の第1のベース部材11への付着量は、単位面積(1平方インチ)当り10万から500億個付着していることが好ましい。単位面積当り10万以下では、長期間の使用するには数が少なすぎるので好ましくない。逆に500億個以上では、芳香効果が強すぎて好ましくない。
このため、かつら10の使用により徐々にマイクロカプセル17が潰れることで芳香が持続するので、女性が香水を付けるのと同様の感覚でかつらの内側から芳香が溢れ出し、高級感を呈する。したがって、従来のかつらのように、汗、皮脂、頭部自毛に付けた整髪料などにより発生する臭気に対して、消臭スプレーなどを噴霧する必要がなくなる。
【0023】
第1のベース部材11となるオーガンジー生地などの合成繊維15を被覆する樹脂薄膜18は、一義的には低温での頭部形状に成形することを容易にするものであるが、合成繊維15の表面に付着させた親水性物質及び抗菌剤16とマイクロカプセル17の脱落や剥離を防止する作用もある。この樹脂薄膜18の厚さは、親水性物質の吸湿性や抗菌剤の抗菌作用、並びにマイクロカプセル17の芳香作用を阻害しないように、水分が透過する程度にμmオーダーの厚さで被覆する。第1のベース部材11をポリエステルからなるオーガンジーのような平織り生地を用いた場合には、樹脂薄膜18としては、ウレタン樹脂などを用いることができる。
【0024】
このように第1のベース部材11には、親水性物質及び抗菌剤16を付着し、さらに、頭皮側からの水分が浸透するように、μmオーダーの樹脂薄膜18で被覆しているので、第1のベース部材11に付着させた親水性物質による吸湿性や抗菌剤による抗菌作用、並びにマイクロカプセル17の芳香作用が得られる。
さらに、親水性物質及び抗菌剤16を天然由来の材料とすれば、第1のベース部材11を合成繊維とした場合には、それによるアレルギーの防止効果が最大限に発揮される。また、親水性物質を天然由来のタンパク質であるセリシンとすれば、頭部にも優しく、安全性が高い。
【0025】
また、第2のベース部材12としては、軟質合成樹脂による人工皮膚部材を用いてもよいが、本発明実施例では特にネット部材を用いて説明する。
網目をもったネット部材の材料としては、ナイロンあるいはポリエステルのモノフィラメントにて、所定間隔をあけて織成又は編成したものが使用できる。このネット部材12のメッシュ、すなわち網目は、例えば30〜60メッシュ本/インチとし、ネット部材12を構成するフィラメントの太さ(直径)は、例えば80〜120μm(0.08〜0.12mm)とすることができる。
【0026】
また、第2のベース部材12の裏面への第1のベース部材11の連結は、第2のベース部材12の周縁部だけに限定してもよい。周縁部同士を、接着、縫着、樹脂塗布等にて接続する場合、第1のベース部材11を、第2のベース部材12の周縁部だけに連結することで、かつらベース13において、第1及び第2のベース部材11,12の間には図示しない僅かな隙間が生じる。このため、かつら10の装着時に頭部で発生する熱のこもりが減少し、生じる熱は第1のベース部材11を通して、上記の隙間に移動して、毛髪14が植設された第2のベース部材12の表面から発散できるので、快適な装着感を得ることができる。
【0027】
このように、かつらベースが13が、第1及び第2のベース部材11,12からなる二重構造で、第1のベース部材11として合成繊維15からなる薄生地を使用しているので、第2のベース部材12の裏面に植設した毛髪14の針足部分が頭部に接触することがないため、針足部分による痛みや違和感が軽減又は生じない。
また、第2のベース部材12がネット状の場合、装着時または繰り返しの使用で、かつら10に植設した毛髪14がネット目に入り込んでかつら裏面に毛髪14が出てくる現象、所謂毛戻りが発生し易いが、二重構造にすることで毛戻りを防止することができる。
【0028】
上記毛髪14は、人毛又はナイロンやポリエステルなどで作った人工毛からなっており、40〜100μm程度のヒトの頭髪と同程度の直径に形成される。この毛髪14は第2のベース部材12としてのネット部材の縦横のフィラメント又はその交点に対して取り付けられる。
【0029】
本発明のかつら10は以上のように構成されており、第1のベース部材11には、親水性物質及び抗菌剤16を付着し、頭皮側からの水分が浸透するように、μmオーダーの樹脂薄膜18で被覆しているので、第1のかつらベース部11がポリエステルのような吸湿性が無い材料であっても、親水性物質による吸湿効果と、抗菌剤による抗菌防臭効果と、が得られる。
また、第1のベース部材11には芳香剤を内包したマイクロカプセル17を付着している場合には、かつら10の使用により徐々にマイクロカプセル17が潰れることで芳香が持続するので、女性が香水を付けるのと同様の感覚でかつら10の内側から芳香が長期間にわたって溢れ出し、高級感を呈する。
【0030】
次に、本発明に係るかつらの製造方法について説明する。
本発明のかつら10は、以下のようにして製造することができる。
最初に、頭部に接する第1のベース部材11を、親水性物質及び抗菌剤16を付着させた合成繊維15に熱硬化性樹脂溶液を塗布し頭部形状に保持して乾燥することにより成形する。
次に、第1のベース部材11と同様の頭部形状に保持して人工皮膚材又はネット材の第2のベース部材12を成形する。
次に、第1のベース部材11に第2のベース部材12を重合して、第2のベース部材12に毛髪14を植設することで製造することができる。
【0031】
具体的には、例えば、第1の工程として、第1のベース部材11を、頭部形状の雄型に後述する工程により予め親水性物質及び抗菌剤16などを表面に付着させたオーガンジー生地15のような合成繊維からなる生地を張って固定し、固定したオーガンジー生地15に熱硬化性樹脂溶液を塗布し、加熱乾燥して頭部形状に成形し、第1のベース部材11を作製する。この熱硬化性樹脂溶液が乾燥すると合成繊維15を被覆する樹脂薄膜18となる。
【0032】
第2の工程として、人毛または人工毛髪14を植設する第2のベース部材12を作製する。この場合、装着者の頭部形状を模した雄型に軟質合成樹脂溶液を塗布した後に乾燥して第2のベース部材12を成形する。または、ネットを上記頭部形状の雄型に張って固定した後、熱硬化性樹脂溶液塗布し、加熱乾燥して頭部形状の第2のベース部材を作製してもよい。
【0033】
第3の工程として、頭部形状に成形した第2のベース部材12の裏面に頭部形状に成形したオーガンジー生地15、すなわち、第1のベース部材11を重ね合わせて、その周縁部だけを固定し、かつらベース13を作製する。このかつらベース13の周縁部の接続は接着、縫着、樹脂塗布等にて行なえばよい。
【0034】
第4の工程として、第2のベース部材12に、所定の人毛または人工毛髪14を植設し、かつら10を製作することができる。
なお、第1の工程と第2の工程とは順序を置換してよいことは明らかであり、また、予め第2のベース部材に毛髪を植設しているものを第3の工程に従って作業するようにしてもよいことは勿論である。
【0035】
次に、上記第1の工程で用いるオーガンジーのような合成繊維からなる生地15の加工方法について説明する。
最初に、必要に応じてオーガンジー生地の少なくとも一面側に所定の図柄をプリントする。この図柄は、かつら10のファッション性を考慮して、草花などの適宜なデザインとすればよい。
次に、オーガンジー生地15を、親水性物質及び抗菌剤16と、無機酸又は有機酸及び水を含む処理溶液に浸漬した後に乾燥及び加熱処理して、オーガンジー生地15に親水性物質及び抗菌剤16を付着させる。この浸漬工程は、パッドドライや噴霧による方法でもよい。
次に、芳香成分を包み込んだマイクロカプセル17と、バインダー及び水と、を含んだ処理液に浸漬し、乾燥及び加熱処理して、親水性物質及び抗菌剤16を付着したオーガンジー生地15にマイクロカプセル17をその繊維表面に付着させる。この工程により、芳香成分を内包するマイクロカプセル17を、オーガンジー生地15の両面に付着させることができる。ここで、親水性物質及び抗菌剤16としては、それぞれ、セリシン、脱アセチル化キチンを好適に使用することができる。
上記工程により、オーガンジー生地15に親水性物質及び抗菌剤16と、芳香成分を内包したマイクロカプセル17を付着させることができる。
【0036】
本発明のかつら10の製造方法によれば、合成樹脂からなる第1のベース部材11を頭部形状に合わせる成形加工において、固定した合成樹脂からなる生地15に熱硬化性樹脂溶液を塗布し、乾燥して頭部形状に成形するので、用いる合成樹脂の軟化温度よりも十分に低い温度で成形することができる。このため、第1のベース部材11に予め付着させた親水性物質及び抗菌剤16やさらに付着させたマイクロカプセル17に損傷を与えたり、生地の変色等を与えないようにできる。しかも、熱硬化性樹脂溶液が乾燥した後の樹脂薄膜18を、親水性物質及び抗菌剤16及びマイクロカプセル17の保護膜とすることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
最初に、ポリエステル100%からなる織物(織組織:オーガンジー、繊維の直径:50μm、生地密度:100メッシュ本/インチ、目付:25g/m2 )に、セリシン及び脱アセチル化キチン16を付着した。
最初に、セリシンとして、生糸からなる絹織物を50倍量の0.2重量%炭酸ナトリウム水溶液中、95℃で2時間処理し、加水分解セリシンを抽出した。得られた抽出液(加水分解セリシン濃度約1重量%)を、分画分子量10万のポリスルホン系限外濾過膜を用いて脱塩、濃縮精製し、分子量10万以上の加水分解セリシンを除去した。
次いで、分画分子量2万のポリスルホン系限外濾過膜を用いて漉縮精製し、加水分解セリシンの濃度5重量%の水溶液を得た。加水分解セリシンの平均分子量は4万(分子量分布5千〜5万)、セリシン含有量は33モル%であった。
セリシン及び脱アセチル化キチン16を付与するに当たっては、通常のバディング法を採用した。すなわち、加水分解セリシン水溶液(濃度5重量%)を10重量%、脱アセチル化キチン(固形分100重量%)を0.5重量%、乳酸(濃度90重量%)を0.5重量%、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(固形分100重量%)を0.01重量%、水88.99重量%からなる処理液(表1参照)に浸漬し、マングルにより絞り率96%に調整した後、150℃で1分30秒乾燥した。
【表1】

【0038】
次に、セリシン及び脱アセチル化キチン16を付着したポリエステル100%よりなるオーガンジー15に、付与したいバラやラベンダーなどの芳香に合わせて、マイクロカプセルから成る芳香加工剤17を用いて、芳香加工を実施した。
具体的には、付与したい芳香がバラの場合、芳香剤(固形分23重量%、三木理研工業(株)製リケンレジンRMC−RM)を1重量%、バインダー(固形分30重量%、三木理研工業(株)製リケンゾールA−605)を0.5重量%、水98.5重量%からなる処理液に浸漬し、それぞれマングルにより絞り率96%に調整した後、150℃で1分30秒乾燥し、本発明で使用するポリエステル織物を得た(表2参照)。
【表2】

【0039】
次に、かつら装着者の頭部形状を模した雄型にストッキングを掛けて、その上にオーガンジー生地15を掛けて雄型に固定した。
次に、有機溶剤であるメチルエチルケトンで希釈した濃度が約6%の熱硬化性ウレタン溶液を、オーガンジー生地を固定した頭部雄型の上に塗布した。
そして、熱硬化性ウレタン溶液を塗布した頭部雄型を120℃の乾燥機に入れて8時間熱処理を行った。
最後に、熱処理の終了した頭部雄型を乾燥機から取り出し、オーガンジー生地15を頭部雄型から外し、第1のベース部材11を作製した。この熱硬化性ウレタン溶液の乾燥後に形成されるオーガンジー生地15を被覆するウレタン樹脂薄膜18の膜厚さは、平均で1.2μmであった。
【0040】
次に、かつら装着者の頭部形状の雄型(石膏型)にストッキングを掛けて、さらにその上にネットを被覆し、熱硬化性のウレタン樹脂を有機溶剤で希釈した溶液を塗布した後、100℃前後で加熱して、頭部形状に湾曲した形態付けを行い、第2のベース部材となるネット部材12を成形した。
【0041】
上記製造方法によれば、オーガンジー生地15への頭部形状の形成には、ポリエステルの軟化温度である180℃以上に加熱する必要がなくなり、低温の120℃で、オーガンジー生地15へのウレタン樹脂溶液の塗布と、その乾燥を行い、第1のベース部材11を成形することができた。このため、樹脂溶液を生地に塗布することで、低温の加熱で確実に頭部形状をつけることができる。したがって、生地に付着させた親水性物質及び抗菌剤16やマイクロカプセル17に内包させた芳香剤が変性したり、あるいは生地に着色した色が変色したり、退色することを防止できた。
これにより、セリシン及び脱アセチル化キチン16が付着し、さらに、マイクロカプセル17が付着したオーガンジー生地15を、ウレタン樹脂薄膜18により被覆することができた。
【0042】
次に、上記工程で作製したかつらベースの第2のベース部材12のネットに、所定本数の人毛又は人工毛髪14を植設し、かつら10を製作した。
【0043】
次に、比較例について説明する。
(比較例1)
7.5cm×7.5cm角サイズの未加工のオーガンジー生地5枚を比較例1とした。
【0044】
(比較例2)
セリシン及び脱アセチル化キチン16と、芳香剤を内包したマイクロカプセル17を付着した加工済みのオーガンジー生地15を、比較例1と同じ寸法、同じ枚数作製し、比較例2とした。
【0045】
次に、実施例及び比較例のかつらの諸特性について説明する。
図5は、実施例のかつらの第1のベース部材11の電子顕微鏡像を示す図である。電子の加速電圧は15kVで、倍率は120倍である。
このかつら10の第1のベース部材11は、製作後に洗濯を25回行なったものである。後述するが、洗濯25回後でも、オーガンジー生地15に付着したセリシン及び脱アセチル化キチン16と、マイクロカプセル17とが脱落したりせずに樹脂薄膜18で被覆されていることが分かった。
【0046】
図6は、図5の第1のベース部材11の繊維を拡大した表面電子顕微鏡像を示す図である。電子の加速電圧は15kVで、倍率は1000倍である。図から明らかなように、オーガンジー生地15の表面にマイクロカプセル17が付着していることが分かる。
【0047】
図7は、図6の繊維の断面の電子顕微鏡像を示す図である。電子の加速電圧は15kVで、倍率は1000倍である。この繊維の断面は、元来直径が約55μmの円形であるが、図示する断面は変形し多角形状を呈している。
図から明らかなように、オーガンジー生地15にはセリシン及び脱アセチル化キチン16が付着し、さらに、マイクロカプセル17が付着し、樹脂薄膜18で被覆されている。樹脂薄膜18の膜厚さは平均で1.2μmであった。
【0048】
図8は、図6のマイクロカプセル17を拡大した電子顕微鏡像を示す図である。電子の加速電圧は15kVで、倍率は4500倍である。このマイクロカプセル17の直径は約5μmである。図から明らかなように、洗濯25回の後でも、オーガンジー生地15の表面にマイクロカプセル17が付着していることが分かる。
【0049】
次に、実施例及び比較例の吸湿性及び抗菌作用を測定した結果を説明する。
吸湿性は、試験片を105℃の乾燥機に2時間入れた後、湿度0%のデシケー夕ーに移し、試験片の重量を測定し、平衡になった重量を絶乾重量(W)とした。
次に、試験片を温度22℃、湿度60%の恒温恒湿槽に入れて、試験片の重量を測定し、平衡になった重量を湿度60%での重量(W1)とした。この絶乾重量及び湿度60%での重量からオーガンジー生地15の吸湿率を、下式(1)で求めた。
吸湿率=(Wl−W/W)×100 (1)
同様にして、温度22℃、湿度80%の吸湿率を算出した。
【0050】
表3は、実施例及び比較例の吸湿率を示す表である。
温度22℃、湿度60%における実施例、比較例1及び2の吸湿率は、それぞれ、0.06%,0.30%,0.23%であった。
実施例においては、0.23%の吸湿性が付与されていることが分かった。実施例及び比較例1は、何れもオーガンジー生地15の材質はポリエステルである。比較例1の吸水率はほぼゼロであり吸湿効果はないことが分かった。
一方、実施例においては、大幅な吸湿率の増加が見られた。また、樹脂薄膜18を被覆していない比較例2と比較すると、吸湿率は約80%を維持している。これは、樹脂薄膜18を被覆してもその厚さが1μm程度と薄いので、セリシンの吸湿性が阻害されないためである。さらに、湿度80%での吸湿率が、湿度60%と差が殆ど見られないのは、ある一定量の吸湿量以上になると、吸湿した水分を放湿していることが推察できる。
【表3】

【0051】
抗菌作用は、実施例及び比較例のオーガンジー生地15を、多糖類のキサンガムの1%水溶液を満たしたシャーレに入れて、室温で15日間放置して、カビの生え具合により測定評価した。その結果、シャーレ中にはカビは発生したが、実施例及び比較例2のオーガンジー生地15にはカビの発生は見られなかった。
図9は、実施例及び比較例2の抗菌測定後のオーガンジー生地15表面の光学写真像を示す図であり、(A)は実施例、(B)が比較例2である。図における模様は、オーガンジー生地15にプリントされた図柄であり、カビの発生によるものではない。
図から明らかなように、実施例においては、第1のベース部材11とするためにオーガンジー生地15に樹脂加工を施しても抗菌性が失われないことが判明した。
【0052】
次に、実施例のかつら10の装着検査を行った。
実施例のかつら10の場合は、第1のベース部材11には、親水性物質及び抗菌剤16を付着させているので、親水性物質による吸湿効果と、抗菌剤による抗菌効果とが得られた。吸湿効果及びそれに伴う放湿効果により、かつら装着時にかいた汗は、第1のベース部材11で吸収、放湿され、かつら10及び頭部がベトつくことなくドライ感が得られた。さらに、かつら装着者の汗や皮脂の付着による第1のベース部材11の変退色も見られなかった。
また、抗菌剤による抗菌防臭の効果により、かつら10の装着時あるいはかつら10自体に不快臭が漂うことがなく、かつら10使用後の簡単なシャンプーで十分に清潔な状態を保つことができた。また、かつら10の使用により徐々にマイクロカプセル17が潰れることで芳香が持続するので、装着者の満足度が高いことが判明した。
【0053】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は実施形態にのみ限定されるものでなく、本発明の範囲内で適宜変更等が可能である。さらに、上記実施形態で説明した具体的数値等は、必要に応じて適宜変更可能である。
例えば、かつらベースは、上記実施態様では第1のベース部材と第2のベース部材との二重に組み合わせたもので説明したが、例えばオーガンジー生地のような合成繊維一枚で構成してもよいことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のかつらの構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図2】かつらベースの毛髪側から見た模式的な平面図である。
【図3】本発明のかつらで使用される第1のベース部材の拡大平面図である。
【図4】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図5】実施例のかつらの第1のベース部材の電子顕微鏡像を示す図である。
【図6】図5の第1のベース部材の繊維を拡大した表面電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】図6の繊維の断面の電子顕微鏡像を示す図である。
【図8】図6のマイクロカプセルを拡大した電子顕微鏡像を示す図である。
【図9】実施例及び比較例2の抗菌測定後のオーガンジー生地の表面の光学写真像を示す図であり、(A)は実施例、(B)は比較例2である。
【符号の説明】
【0055】
10:かつら
11:第1のベース部材
12:第2のベース部材
13:かつらベース
14:毛髪
15:合成繊維(オーガンジー生地)
16:親水性物質及び抗菌剤
17:マイクロカプセル
18:樹脂薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらベースと該かつらベースに植設した毛髪とでなるかつらであって、
上記かつらベースの少なくとも頭部に接する側に、親水性物質及び抗菌剤が付着され、該かつらベースの少なくとも頭部に接する側に該親水性物質及び抗菌剤を被覆する樹脂薄膜が形成されてなることを特徴とする、かつら。
【請求項2】
頭部に接する内側に配置した第1のベース部材及びその外側に配置した第2のベース部材で構成したかつらベースと、該第2のベース部材に植設した毛髪とでなるかつらであって、
上記第1のベース部材が、親水性物質及び抗菌剤を表面に付着させた合成繊維と該合成繊維を被覆する樹脂薄膜とからなることを特徴とする、かつら。
【請求項3】
前記樹脂薄膜の厚さがμmオーダーのウレタン樹脂でなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
【請求項4】
前記かつらベースには、さらに、芳香剤を内包したマイクロカプセルが付着されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
【請求項5】
前記マイクロカプセルはメラミン樹脂からなることを特徴とする、請求項4に記載のかつら。
【請求項6】
前記親水性物質がセリシンでなり、抗菌剤が脱アセチル化キチンでなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のかつら。
【請求項7】
前記第1のベース部材と前記第2のベース部材との周縁部同士が、接着、縫着、樹脂塗布等にて接続されていることを特徴とする、請求項2に記載のかつら。
【請求項8】
請求項1記載のかつらベース又は請求項2記載の第1のベース部材が、オーガンジー生地でなり、該生地の繊維の直径が27〜500μmで、メッシュ数が10〜420本/インチであることを特徴とする、かつら。
【請求項9】
前記オーガンジー生地の少なくとも一面側に、図柄がプリントされていることを特徴とする、請求項8に記載のかつら。
【請求項10】
前記オーガンジー生地に、セリシンと脱アセチル化キチンとが1:0.1〜10の割合で付着していることを特徴とする、請求項8に記載のかつら。
【請求項11】
前記オーガンジー生地には、芳香剤を内包した直径0.1〜20μmの球状のマイクロカプセルが、該オーガンジー生地の単位面積(1平方インチ)当り10万から500億個付着していることを特徴とする、請求項8に記載のかつら。
【請求項12】
前記オーガンジー生地はポリエステル繊維からなることを特徴とする、請求項8に記載のかつら。
【請求項13】
頭部に接する第1のベース部材とその外側に配置した第2のベース部材とで構成したかつらベースと、該かつらベースに植設した毛髪とでなるかつらの製造方法において、
親水性物質及び抗菌剤を付着させた合成繊維に熱硬化性樹脂溶液を塗布し頭部形状に保持して乾燥することにより、第1のベース部材を成形し、
上記第1のベース部材と同様の頭部形状に保持して人工皮膚材又はネット材の第2のベース部材を成形し、
上記第1のベース部材に上記第2のベース部材を重合して、上記第2のベース部材に毛髪を植設することを特徴とする、かつらの製造方法。
【請求項14】
頭部に接する第1のベース部材とその外側に配置した第2のベース部材とで構成したかつらベースと、該かつらベースに植設した毛髪とでなるかつらの製造方法において、
親水性物質及び抗菌剤を付着させた合成繊維生地を頭部形状の雄型に固定し、該生地に熱硬化性樹脂溶液を塗布して乾燥することにより、頭部形状の上記第1のベース部材を成形する工程と、
人工皮膚材にて又は上記雄型にネット材を固定して熱硬化性樹脂溶液を塗布した後に乾燥することにより、頭部形状の第2のベース部材を成形する工程と、
上記第1のベース部材上に上記第2のベース部材を重合し、該重合した周縁部を接着、縫着、樹脂塗布等にて接続することでかつらベースを作製する工程と、
上記第2のベース部材に毛髪を植設する工程と、を含むことを特徴とするかつらの製造方法。
【請求項15】
前記第1のベース部材の成形工程において、さらに、芳香剤を内包したマイクロカプセルを前記合成繊維生地に付着させることを特徴とする、請求項14に記載のかつらの製造方法。
【請求項16】
前記第1のベース部材の成形工程において、前記親水性物質としてセリシンと、抗菌剤として脱アセチル化キチンと、無機酸又は有機酸と、水とを含む処理溶液に合成繊維生地を浸漬後、乾燥及び加熱処理して、上記セリシン及び脱アセチル化キチンを上記生地に付着させる工程と、さらに、芳香剤を内包したマイクロカプセルとバインダーと水とを含む処理液に浸漬後、乾燥及び加熱処理して、上記芳香剤を内包したマイクロカプセルを上記生地に付着させる工程と、を含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載のかつらの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−265801(P2006−265801A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90112(P2005−90112)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】