説明

がいし装置への塗料等飛散防止具及びその飛散防止方法

【課題】塗装している刷毛の近くで落下する塗料を受け止めることで、耐張型がいし装置、懸垂型がいし装置の何れでもその塗料等の付着を防止する。
【解決手段】可撓性を有する受止めシート材9を、展開すると中央が窪んだ略皿形状になるように、折り畳み可能な骨材7で張設した受止め本体部2と、受止めシート材9の一部を切り欠いたがいし挟み部3と、懸垂がいし装置の上部を覆える補助シート材4と、前記受止めシート材9の平面積と同程度の平面積を有し、受止めシート材9の上面側に交換自在に張り付けて、塗料、掻き落とした錆を受け止める保護シート材6と、受止め本体部2を鉄塔アームに吊下げる懸吊具5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線鉄塔に塗装処理を行う際に、送電線を架設するがいし装置への塗料等の付着防止技術に係り、特に鉄塔アームの先端で塗装する際にがいし装置に塗料等の付着を防止するがいし装置への塗料等飛散防止具及びその飛散防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧電流の送電線を架設する鉄塔には防錆処理として塗装を施している。この鉄塔については、定期的に錆落しや塗装処理を行う。この塗装処理を行う際に、がいし装置の絶縁性を低下させないために、がいし装置に塗料が付着しないように細心の注意を払いながら塗装する必要がある。そこで、鉄塔の防錆処理などの処理作業を行う際には、がいし装置を覆ってから錆を落とし、塗装処理を行っている。
【0003】
従来は、送電線鉄塔に塗装処理を行う際に、送電線に塗布する塗料が飛散し、がいし装置に付着しないように、がいし装置にカバーを付けていた。例えば、高所において、がいし装置へ容易に装着できるように、はめ込み式のカバーを使用していた。
【0004】
がいし装置に塗料の飛散を防止する技術に関しては、種々提案されている。例えば特許文献1の特開平7−155656号公報「送電鉄塔塗装における塗料飛散防止装置」に示すように、送電線に対して接近してはいけない距離よりも長い絶縁操作棒と、この絶縁操作棒の先端部に支持され、碍子連の上部に係脱されて、碍子連への塗装材の落下を防止する保護板と、碍子連上部に係合された保護板から塔体にわたってアームの下方に張設される絶縁ネットと、塔体に回転可能に取付けられ、絶縁ネットを巻き取るドラムと、ドラムを回転操作するハンドルとを備えた送電鉄塔塗装における塗装飛散防止装置が提案されている。
【特許文献1】特開平7−155656号公報
【0005】
また、特許文献2の特開2001−347203号公報「鉄塔塗装時の塗料飛散防止方法及びその装置」に示すように、既設の鉄塔を塗装する際に、鉄塔の最大外形部の外側を囲繞し得る大きさの筒状で所定小高さ幅の単一の防護ネットを使用し、該防護ネットで鉄塔の外側を囲繞した状態で該防護ネットを塗装すべき高さに対応して上下動させながら順次塗装を行う鉄塔塗装時の塗料飛散防止方法が提案されている。
【特許文献2】特開2001−347203号公報
【0006】
更に、特許文献3の特開2006−142135号公報「送電鉄塔塗装時の塗料飛散防止装置及び送電鉄塔の塗装工法」に示すように、塔体と、高さ方向に離間して該塔体から左右の横方向に突設した複数のアームとからなり、該アームの先端側に設けた碍子を介して送電線を支持する送電鉄塔を塗装するための送電鉄塔の塗料飛散防止具であって、前記アームの位置に対応して前記塔体に取着するフレーム支持金具と、作業空間を形成すべく前記アームの先端側に設置するネットフレームと、該ネットフレームとフレーム支持金具との間に張設する支持索と、前記アームを囲繞して作業空間を形成すべく該アームからネットフレームにかけて該支持索に展開可能に掛装する飛散防止ネットとから構成してなる送電鉄塔塗装時の塗料飛散防止装置が提案されている。
【特許文献3】特開2006−142135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のがいし装置にカバーを取り付ける方法は、がいし装置に直接乗り出してのカバーの取り付けと取り外しに作業時間が長引きやすいという問題を有していた。特に、がいし装置への取り付け、取り外しの際には、がいし装置の先へ作業員が乗り出す必要があり、これは鉄塔という高所における作業で大変危険であった。
【0008】
また、上述した各特許文献の塗料飛散防止装置は、塗料の飛散防止効果は期待できるが、構造が複雑であるために、その取り付けが煩雑であるという問題を有していた。更に、その装置の運搬にも手間取りやすく、塗装の作業性が悪いという問題を有していた。
【0009】
本発明の発明者は、大掛かりな装置、用具を使用しなくても、塗装している刷毛の近くで落下する塗料、又は掻き落として錆や埃を受け止めることにより、塗料等の飛散を容易に防止できることに着目した。
【0010】
また、がいし装置へ塗料等が飛散することを防止する用具を用いれば、塗装作業をする際に停電は必要であるが、直接がいし装置への乗出し作業が必要なくなるため、従来のような作業用アースが不要となることに着目した。
【0011】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、塗装している刷毛の近くで落下する塗料を受け止めることで、簡単な用具で耐張型がいし装置、懸垂型がいし装置の何れでもその塗料等の付着を防止できるがいし装置への塗料等飛散防止具及びその飛散防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の塗料等飛散防止具によれば、鉄塔に架設する電線を絶縁しながら支持するがいし装置へ塗料、錆等が付着することを防止するがいし装置への塗料等飛散防止具(1)であって、可撓性を有する受止めシート材(9)を、展開すると中央が窪んだ略皿形状になるように、折り畳み可能な骨材(7)で張設した受止め本体部(2)と、がいし装置を挟むために、前記受止めシート材(9)の一部を切り欠いたがいし挟み部(3)と、前記がいし挟み部(3)の両端縁それぞれに取り付けた、懸垂がいし装置(SuI)の上部を覆う補助シート材(4)と、前記受止めシート材(9)の平面積と同程度の平面積を有し、該受止めシート材(9)の上面側に交換自在に張り付けて、塗料、掻き落とした錆を受け止める保護シート材(6)と、前記受止め本体部(2)を前記鉄塔アーム(TA)に吊下げるために、該受止め本体部(2)の略中央に設けた懸吊具(5)と、を備えた、ことを特徴とするがいし装置への塗料等飛散防止具が提供される。
【0013】
例えば、前記懸吊具(5)は、前記受止め本体部(2)の各骨材(7)の一端を集束する集束部(8)から立ち上げた棒状の部材から成り、その一部にアーム(TA)に掛け止める部材を備えたものである。
前記受止めシート材(9)には、風を通すが、塗料や錆は落下しない程度の目の細かいネット材を用いることができる。
【0014】
本発明の塗料等飛散防止方法によれば、鉄塔に架設する電線を絶縁しながら支持するがいし装置に、塗料、掻き落とした錆を受け止める受止めシート材(9)と、該受止めシート材(9)に形成した、がいし装置を挟むがいし挟み部(3)とから成る塗料等飛散防止具(1)を用いて、がいし装置に塗料等の付着を防止する塗料等付着防止方法であって、耐張がいし装置(StI)を支持している鉄塔アーム(TA)を塗装する際に、前記塗料等飛散防止具(1)の受止めシート材(9)を、中央が窪んだ略皿形状になるように展開し、前記塗料等飛散防止具(1)を吊下げる懸吊具(5)を、鉄塔アーム(TA)の先端、かつ耐張がいし装置(StI)の間に掛け止める、ことを特徴とするがいし装置への塗料等付着防止方法が提供される。
【0015】
または、懸垂がいし装置(SuI)を支持している鉄塔アーム(TA)を塗装する際に、前記塗料等飛散防止具(1)の受止めシート材(9)を、中央が窪んだ略皿形状になるように展開し、前記懸垂がいし装置(SuI)の上部自体を、該塗料等飛散防止具(1)のがいし挟み部(3)に挟み、かつがいし挟み部(3)の端縁に取り付けた補助シート材(4)で該がいし装置の上部を覆うと共に、前記塗料等飛散防止具(1)を吊下げる懸吊具(5)を、鉄塔アーム(TA)の先端に掛け止める。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗料等飛散防止具(1)では、受止め本体部(2)の受止めシート材(9)を展開し、これに保護シート材(6)を張り付けた後、この受止め本体部(2)を吊下げる懸吊具(5)を、鉄塔アーム(TA)の先端に掛け止めることで装着が短時間で完了する。従来のようにがいし装置へ大きく乗り出して装着作業をする必要がなく、安全かつ容易に装着を実施することができる。この状態で鉄塔アーム(TA)の先端において塗装処理したときに、塗料の飛沫、又は掻き落とした錆は、その真下の受止めシート材(9)(保護シート材(6))で受け止め、がいし装置への飛散を防止できる。
【0017】
特に、この塗料等飛散防止具(1)は、鉄塔アーム(TA)の先端において塗装している刷毛の近くで落下する塗料、又は掻き落として錆や埃を受け止めることにより、従来のようにがいし装置全体を覆わなくても、その飛散を防止することができる。
また、受止め本体部(2)の受止めシート材(9)にがいし挟み部(3)が設けられているために、耐張がいし装置(StI)と懸垂がいし装置(SuI)の何れの形態にも使用することができ、その汎用性が高い。
【0018】
この塗料等飛散防止具(1)は、一箇所の鉄塔アーム(TA)の塗装処理が終了したら、他の鉄塔アーム(TA)に容易に着け替えることができ、迅速に装着作業を終了させる。塗装作業全体が完了したら、この塗料等飛散防止具(1)は、骨材(7)を折り畳み、コンパクトにまとめて収納することができる。また、この装置は軽量なため容易に運搬することができる。
【0019】
また、受止め本体部(2)の各骨材(7)の一端を集束する集束部(8)から立ち上げた棒状部材の懸吊具(5)では、鉄塔アーム(TA)を構成する鉄骨材に強固に掛け止めることができるため、強い横風が吹いても、この塗料等飛散防止具(1)の揺れを抑えることができる。
【0020】
この塗料等飛散防止具(1)を使用することで、従来のような作業用アースを取り付ける手間やがいし装置(StI,SuI)への乗出し作業、カバーを取り付ける手間等が省かれる。そこで、塗装作業の安全性や作業性のスピード化が図れ、塗装作業の効率化にも繋がる。
【0021】
本発明の塗料等飛散防止方法では、耐張がいし装置(StI)を支持している鉄塔アーム(TA)を塗装する際には、塗料等飛散防止具(1)を鉄塔アーム(TA)の先端かつ2個の耐張がいし装置(StI)の間に掛け止めることにより、塗装中の刷毛の近くで落下する塗料等を受け止めことができる。特に、1個の塗料等飛散防止具(1)でも、その両側方向に支持された耐張がいし装置(StI)への塗料等の飛散を防止する。
【0022】
また、懸垂がいし装置(SuI)を支持している鉄塔アーム(TA)を塗装する際には、塗料等飛散防止具(1)のがいし挟み部(3)に、懸垂がいし装置(SuI)の上部自体を挟み、かつこのがいし挟み部(3)に取り付けた補助シート材(4)でその上部を覆うことにより、塗料等の飛散を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のがいし装置への塗料等飛散防止具を示し、(a)は防止具を展開した状態の平面図、(b)は保護シート材の平面図、(c)は防止具を展開した状態の正面図、(d)は防止具を展開した状態の側面図、(e)は防止具を畳んだ状態の正面図である。
【図2】塗料等飛散防止具を耐張がいし装置の間に配置した状態を示し、(a)は鉄塔アームの正面図、(b)は鉄塔アームの平面図である。
【図3】は塗料等飛散防止具を懸垂がいし装置に装着する状態を示す斜視図で、(a)は装着する前の状態、(b)はがいし挟み部を拡げた状態、(c)は装着した後の状態である。
【図4】塗料等飛散防止具を懸垂がいし装置に装着した状態を示し、(a)は鉄塔アームの側面図、(b)は鉄塔アームの平面図である。
【図5】塗料等飛散防止具の懸吊具の掛け止め状態を示し、(a)は好ましい装着状態の説明図、(b)は好ましくない装着状態の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のがいし装置への塗料等飛散防止具及びその飛散防止方法は、送電線鉄塔に塗装処理を行う際に、鉄塔アームの先端で塗装を実施する際にがいし装置に塗料等の付着を防止するものである。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明のがいし装置への塗料等飛散防止具を示し、(a)は防止具を展開した状態の平面図、(b)は保護シート材の平面図、(c)は防止具を展開した状態の正面図、(d)は防止具を展開した状態の側面図、(e)は防止具を畳んだ状態の正面図である。
本発明の塗料等飛散防止具1は、鉄塔における塗料又は掻き落とした錆を受け止める受止め本体部2と、懸垂がいし装置SuIを挟むがいし挟み部3と、この懸垂がいし装置SuIの上部を保護する補助シート材4と、鉄塔の鉄骨材に掛け止める懸吊具5とを備えた。受止め本体部2には、塗料、掻き落とした錆を、実際に受け止める布又はビニールシート材から成る保護シート材6を張り付ける。この保護シート材6は交換自在に張り付けて使用する。
【0026】
受止め本体部2は、4本の骨材7の一端を集束部8で集束し、各骨材7の他端は四方へ展開し得る構造になり、これらの骨材7で可撓性を有する受止めシート材9を張設した。受止め本体部2は基本的に傘と同様な構造になっている。展開した受止めシート材9は、塗料、掻き落とした錆を受け止めやすいように、中央が窪んだ略皿形状になる(図1(c)と(d)参照)。図示例では略長方形状に展開するものを示している。但し、受止め本体部2はこのような略長方形状に限定されず、長円形状、楕円形状でもかまわない。但し、後述するように耐張がいし装置StIに使用するときは、鉄塔アームTAの先端に掛け止め、その左右の耐張がいし装置StIへの塗料等の飛散を防止する際に使用するために、平面視で横長の形状が望ましい。また、骨材7は4本に限定されず、6本又は8本とその受止め本体部2の大きさに応じて選択し得る。
【0027】
受止めシート材9には、例えば合成樹脂製のネット材を使用する。ネット材であれば風を通すことができ、鉄塔上部のような風力の強い場所でも、塗料等飛散防止具1の揺れを緩和できるからである。後述するように、この受止めシート材9は、その上面に保護シート材6を交換自在に張り付けて使用するので、受止めシート材9自体は目の粗いネット材を用いることも可能である。なお、受止めシート材9に目の細かいネット材を用いることにより、塗料、掻き落とした錆を直接受け止めることも可能である。
【0028】
この受止めシート材9には、図1(b)に示すように、その平面積と同程度の平面積を有する保護シート材6を張り付ける。例えば、布シート又はビニールシート材を張り付ける。保護シート材6は、その一部にスリット10を有し、この部分に集束部8、懸吊具5を通して展開して張り付ける。受止めシート材9の周囲に粘着テープ(養生テープ)を用いて着脱自在に張り付ける。塗料、錆が付着した保護シート材6は、別の新たなものに交換する。このようにして保護シート材6に塗料、錆を付着させて、受止めシート材9には付着させないようになっている。
【0029】
この受止めシート材9には、その一部を切り欠いた、がいし挟み部3を形成している。図1(a)の平面図に示すように、受止めシート材9の一辺の中間から、その中心部(集束部8)までを分割するように切込みを入れたものである。受止めシート材9は可撓性を有する素材からなるので、このがいし挟み部3に懸垂がいし装置SuIの上部を挟み、受止めシート材9の周縁を係止具11で連結できるようになっている。
【0030】
なお、がいし挟み部3で懸垂がいし装置SuIの上部を挟むことにより、懸垂がいし装置SuIの下部に塗料、錆を付着させない。しかし、この状態では、懸垂がいし装置SuIの上部には、塗料、錆が付着する。そこで、がいし挟み部3の両端縁それぞれに、補助シート材4を取り付けた。この補助シート材4は、例えば懸垂がいし装置SuI上部を覆えるように略袋形状に形成した。この補助シート材4により、懸垂がいし装置SuI全体を塗料等の飛散から防止することができる。
【0031】
補助シート材4には、端縁を筒状に形成し、そこに紐を通して、その紐を結ぶことにより懸垂がいし装置SuIの上部に強固に固定することもできる(図示していない)。
【0032】
懸吊具5は、受止め本体部2の各骨材7の一端を集束する集束部8から立ち上げた棒状の部材であり、受止め本体部2を鉄塔アームTAの鉄骨材に掛け止めるものである。この懸吊具5の先端には鉄塔アームTAに掛け止めるゴムベルト、ロープのようなベルト状部材12を備えた。このベルト状部材12は、例えば懸吊具5の棒状部材の2箇所と、鉄塔アームTAに掛け止めることが望ましい。懸吊具5が安定しやすいからである。
但し、懸吊具5の鉄塔アームTAへの掛け止め手段は、図示例のようなベルト状部材12に限定されず、フック或はクランプ等の鉄塔の鋼材を挟む治具を用いて取り付けることも可能である。
【0033】
この塗料等飛散防止具1は、図1(e)に示すように、骨材7を折り畳み、コンパクトにまとめることができる。このように折り畳んで、鉄塔上部まで携帯して運搬する。その鉄塔上部において展開して鉄塔アームTAに装着する。
【0034】
図2は塗料等飛散防止具を耐張がいし装置の間に配置した状態を示し、(a)は鉄塔アームの正面図、(b)は鉄塔アームの平面図である。
塗料等飛散防止具1を耐張がいし装置StIの間に配置して使用する塗料等付着防止方法について説明する。耐張がいし装置StIを支持している鉄塔アームTAを塗装する際に、先ず、塗料等飛散防止具1の受止めシート材9を、中央が窪んだ略皿形状になるように展開する。この受止めシート材9に保護シート材6を、粘着テープ(養生テープ)で張り付ける。その状態でこの塗料等飛散防止具1を畳む。昇塔する際に塗料等飛散防止具1が展開していると携帯しづらいからである。鉄塔の上部において、この塗料等飛散防止具1を展開する
【0035】
次に、塗料等飛散防止具1の懸吊具5を、鉄塔アームTAの先端、かつ耐張がいし装置StI間にベルト状部材12で掛け止め、装着が完了する。この状態で錆落し、塗料の塗布といった塗装処理を施す。この展開した受止めシート材9(保護シート材6)で受け止める。塗装処理が終了したら、別の箇所に着け替える。
【0036】
このように、図2(a)に示すように、耐張がいし装置StIを支持している鉄塔アームTAを塗装する際には、塗料等飛散防止具1を鉄塔アームTAの先端、かつ耐張がいし装置StI間に掛け止めることにより、塗装中の刷毛の近くで落下する塗料等を受け止めことができる。即ち、1個の塗料等飛散防止具1でも、その両側方向に支持された耐張がいし装置StIへの塗料等の飛散を防止することができる。更に、その下方のジャンパー線Jへの飛散も防止することができる。
【0037】
この塗料等飛散防止具1は、一箇所の鉄塔アームTAの塗装処理が終了したら、他の鉄塔アームTAに容易に着け替えることができ、迅速に装着作業を終了させることができる。
【0038】
図3は塗料等飛散防止具を懸垂がいし装置に装着する状態を示す斜視図で、(a)は装着する前の状態、(b)はがいし挟み部を拡げた状態、(c)は装着した後の状態である。図4は塗料等飛散防止具を懸垂がいし装置に装着した状態を示し、(a)は鉄塔アームの側面図、(b)は鉄塔アームの平面図である。
本発明の塗料等飛散防止具1を用いて、懸垂がいし装置SuIを支持している鉄塔アームTAを塗装する際に、先ず昇塔前に、この塗料等飛散防止具1の受止めシート材9を、中央が窪んだ略皿形状になるように展開する。この受止めシート材9に保護シート材6を、粘着テープ(養生テープ)で張り付ける。上述したように、この保護シート材6を張り付けた状態で塗料等飛散防止具1を畳む。昇塔して鉄塔の上部において、この塗料等飛散防止具1を展開する
【0039】
次に、懸垂がいし装置SuIの上部自体を、この塗料等飛散防止具1のがいし挟み部3に挟み、かつがいし挟み部3に取り付けた補助シート材4で懸垂がいし装置SuIの上部を覆う。最後に、塗料等飛散防止具1を吊下げる懸吊具5を、鉄塔アームTAの先端に掛け止め、装着が完了する。このように塗料等飛散防止具1を装着した状態で、錆落し、塗料の塗布といった塗装処理を施す。一箇所の鉄塔アームTAの塗装処理が終了したら、塗料等飛散防止具1を鉄塔アームTAと懸垂がいし装置SuIから外し、他の懸垂がいし装置SuIに着け替える。
【0040】
この懸垂がいし装置SuIには、本発明の塗料等飛散防止具1を装着し、その上部を補助シート材4で更に覆うことにより、塗料等の飛散を確実に防止することができる。
【0041】
図5は塗料等飛散防止具の懸吊具の掛け止め状態を示し、(a)は好ましい装着状態の説明図、(b)は好ましくない装着状態の説明図である。
本発明の塗料等飛散防止具1は、鉄塔アームTAという風の強い箇所に設置するものであるから、揺れないように掛け止める必要がある。そこで、懸吊具5は鉄塔アームTAの横断面がL字状の面部分に当ててベルト状部材12で巻き付けるように掛け止めることが好ましい(図5(a)参照)。鉄塔アームTAを構成する鉄骨材に強固に掛け止めることができるため、強い横風が吹いても、この塗料等飛散防止具1の揺れを抑えることができる。逆に、取付条件によっては鉄骨材の細い部分に掛け止めることもある(図5(b)参照)。このようなときは、クランプ等を用いて揺れを防止するように工夫するとよい。
【0042】
なお、本発明は、塗装している刷毛の近くで落下する塗料を受け止めることで、耐張型がいし装置StI、懸垂型がいし装置SuIの何れでもその塗料等の付着を防止できれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のがいし装置への塗料等飛散防止具及びその飛散防止方法は、送電線鉄塔の塗装に利用することができるが、高所のような危険な場所で特定部位に塗料が付着しないように塗装処理するときに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 塗料等飛散防止具
2 受止め本体部
3 がいし挟み部
4 補助シート材
5 懸吊具
6 保護シート材
7 骨材
8 集束部
9 受止めシート材
12 ベルト状部材
SuI 懸垂がいし装置
StI 耐張がいし装置
TA 鉄塔アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔に架設する電線を絶縁しながら支持するがいし装置へ塗料、錆等が付着することを防止するがいし装置への塗料等飛散防止具(1)であって、
可撓性を有する受止めシート材(9)を、展開すると中央が窪んだ略皿形状になるように、折り畳み可能な骨材(7)で張設した受止め本体部(2)と、
がいし装置を挟むために、前記受止めシート材(9)の一部を切り欠いたがいし挟み部(3)と、
前記がいし挟み部(3)の両端縁それぞれに取り付けた、懸垂がいし装置(SuI)の上部を覆う補助シート材(4)と、
前記受止めシート材(9)の平面積と同程度の平面積を有し、該受止めシート材(9)の上面側に交換自在に張り付けて、塗料、掻き落とした錆を受け止める保護シート材(6)と、
前記受止め本体部(2)を前記鉄塔アーム(TA)に吊下げるために、該受止め本体部(2)の略中央に設けた懸吊具(5)と、を備えた、ことを特徴とするがいし装置への塗料等飛散防止具。
【請求項2】
前記懸吊具(5)は、前記受止め本体部(2)の各骨材(7)の一端を集束する集束部(8)から立ち上げた棒状の部材から成り、その一部にアーム(TA)に掛け止める部材を備えたものである、ことを特徴とする請求項1のがいし装置への塗料等飛散防止具。
【請求項3】
前記受止めシート材(9)は風を通しやすいネット材である、ことを特徴とする請求項1のがいし装置への塗料等飛散防止具。
【請求項4】
鉄塔に架設する電線を絶縁しながら支持するがいし装置に、塗料、掻き落とした錆を受け止める受止めシート材(9)と、該受止めシート材(9)に形成した、がいし装置を挟むがいし挟み部(3)とから成る塗料等飛散防止具(1)を用いて、がいし装置に塗料等の付着を防止する塗料等付着防止方法であって、
耐張がいし装置(StI)を支持している鉄塔アーム(TA)を塗装する際に、
前記塗料等飛散防止具(1)の受止めシート材(9)を、中央が窪んだ略皿形状になるように展開し、
前記塗料等飛散防止具(1)を吊下げる懸吊具(5)を、鉄塔アーム(TA)の先端、かつ耐張がいし装置(StI)の間に掛け止める、ことを特徴とするがいし装置への塗料等付着防止方法。
【請求項5】
鉄塔に架設する電線を絶縁しながら支持するがいし装置に、塗料、掻き落とした錆を受け止める受止めシート材(9)と、該受止めシート材(9)に形成した、がいし装置を挟むがいし挟み部(3)とから成る塗料等飛散防止具(1)を用いて、がいし装置に塗料等の付着を防止する塗料等付着防止方法であって、
懸垂がいし装置(SuI)を支持している鉄塔アーム(TA)を塗装する際に、
前記塗料等飛散防止具(1)の受止めシート材(9)を、中央が窪んだ略皿形状になるように展開し、
前記懸垂がいし装置(SuI)の上部自体を、該塗料等飛散防止具(1)のがいし挟み部(3)に挟み、かつがいし挟み部(3)の端縁に取り付けた補助シート材(4)で該がいし装置の上部を覆うと共に、
前記塗料等飛散防止具(1)を吊下げる懸吊具(5)を、鉄塔アーム(TA)の先端に掛け止める、ことを特徴とするがいし装置への塗料等付着防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−11160(P2011−11160A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158469(P2009−158469)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】