説明

がん細胞への選択的作用組成物および治療用レーザー照射装置。

【課題】 副作用の心配がなく、がん細胞に選択的に作用させることができる選択的作用組成物並びに可視レーザーによりがん細胞および病細胞を効果的に死滅させる治療用レーザー照射装置を提供する。
【解決手段】 がん細胞に特異的にあるいは過剰に発現し、かつ、細胞内に取り込まれ、細胞核に輸送される膜蛋白質に反応するリガンドあるいは抗体14を直径の大きさが4nmないし10nmの半導体結晶11に架橋させる。半導体結晶11は、リガンドあるいは抗体14ががん細胞の膜蛋白質と結合し、がん細胞の核付近に蓄積される。がん細胞の核付近に蓄積された半導体結晶は、可視光線照射により活性酸素を放出してがん細胞を選択的に死滅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん細胞に選択的に輸送され、がん細胞に作用させることができる選択的作用組成物並びにがん細胞および病細胞を死滅させる治療用レーザー照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がん化学療法は、抗がん剤の投与により、がん細胞の増殖を抑制、あるいは、死滅を図り病巣を消滅させる手法である。抗がん剤治療は、短期間に全てのがん細胞を死滅、除去することは出来ず、一定割合のがん細胞を死滅させる程度に留まっている。従って、患者は、抗がん剤の長期投与を余儀なくされる上、がん細胞を完全に消滅させることは困難である。長期間の投与は、変異により抗がん剤に感受性を示さなくなるがん細胞の出現の可能性を増大させる上、正常細胞への影響もあり副作用を引き起こす場合もある。
【0003】
抗がん剤をがん細胞選択的に導入することができれば、正常細胞が侵されることなく、効果的に抗がん剤治療を行うことが可能である。
このような観点から、がん化学療法の他に、レーザー光と光感受性物質を用いた光線力学治療が開発されている。光感受性物質は、レーザーで励起することで、エネルギーを吸収し蛍光を発するが、その際に、吸収されたエネルギーの一部は、光感受性物質付近に存在する酸素にも渡される。
【0004】
その結果、酸素は、活性酸素や1重項酸素へと変化して、生体にとって有毒性をもたらす。上記活性酸素を用いてがん細胞を選択的に死滅させる方法が特許文献1に開示されている。上記方法では、予めがん病巣に選択的に吸収され、かつ、特定波長のレーザー光照射によって励起されて活性酸素を発生する光感受性物質を患者に投与しておき、その上で、がん病巣部にレーザー光を照射することで、がん細胞は死滅する。この様な方法では、正常細胞よりがん細胞に対し強い親和性のあるヘマトポルフィリン誘導体が良く使われている。ヘマトポルフィリン誘導体は、正常細胞に比べがん細胞に多く取り込まれる上に、正常細胞では速やかに代謝されるため、がん細胞に多く蓄積されるとされている。
【0005】
ヘマトポルフィリン誘導体等の光感受性物質による光線力学療法では、蛍光が微弱であるので、がん患部を可視化し診断するために、多量の光感受性物質をがん細胞に蓄積させる必要がある。しかし、ヘマトポルフィリン誘導体の代謝や蓄積のメカニズムが解明されておらず、それをがん細胞に蓄積させる方法は見つかっていない。
【0006】
また、ヘマトポルフィリン誘導体等の光感受性物質は、レーザー光を照射すると退色し、退色した光感受性物質は、活性酸素を出す効果も蛍光を発する効果もなくなる。その為、数度の光感受性物質投与とレーザー照射を行う必要があった。加えて、皮膚下に蓄積されたルフィリン誘導体等の光感受性物質は、太陽光やハロゲン光などの強い光の下で一度に退色し、活性酸素を多量に放出し、正常細胞を破壊する。従って、光感受性物質を投与された患者は、投与後3〜5日間、直射日光や強い光への暴露を避ける必要があった。
【0007】
上記問題点を解決するために、光感受性物質として量子ドットを利用して、がん細胞を可視化する方法等が開発されつつある。量子ドットとは、半導体結晶微小粒子である。量子ドットは、レーザーを照射することにより、その半径に依存した波長で発光する性質を持つ。溶液内で安定して発光する量子ドットとして、CdSe、CdTeが、Quantum dot社より製品化されている。上記量子ドットをがん細胞に特異的に発現する膜蛋白質の抗体を架橋させることで、がん細胞のみを選択的に蛍光標識できる(非特許文献1)。
【0008】
また、最近になり、量子ドットを励起する際に放出される活性酸素を用いて、がん細胞を死滅させるという方法も開発された(非特許文献2)。量子ドットは、発光が通常の光感受性物質の20倍、退色するまでの時間は30倍以上である。この場合、量子ドットだけでは、がん細胞に対する選択性がないため、がん細胞特異的に結合するようなペプチドを量子ドットに架橋させている。しかしながら、死滅効果を有する上記量子ドットの濃度が数μMであり、生体に応用するには毒性の心配がある等、臨床応用に十分な効果が得られていない。加えて、量子ドットを励起するためのレーザーが紫外線であるため、正常細胞にまで害を及ぼす危険性が怪訝される。
【特許文献1】特開平10−216252
【非特許文献1】Jaiswal J.K. et al., Nat Biotechnol 21:47-51 (2003)
【非特許文献2】Rumiana B. et al., NANO LETTERS 4:1567-1573 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の様に、抗がん剤あるいはヘマトポルフィリン誘導体等の光感受性物質は、副作用を生じるという問題があった。本発明は、副作用の心配がなく、がん細胞に選択的に輸送され、がん細胞に選択的に作用させることができる選択的作用組成物を提供することを目的としている。
また、本発明は、有害な紫外線レーザーを使用せずに、可視レーザーによりがん細胞および病細胞を効果的に死滅させる治療用レーザー照射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、がん細胞に特異的にあるいは過剰に発現し、かつ、細胞内に取り込まれ、細胞核に輸送される膜蛋白質に反応するリガンドあるいは抗体が直径の大きさが4nmないし10nmの半導体結晶に架橋されたことを特徴とするがん細胞への選択的作用組成物が得られる。
また本発明によれば、レーザーと、該レーザーからの光を走査可能にするガルバノミラーあるいはアクチュエータを備えたレンズと、該レンズを通過した光を試料に照射するための対物レンズと、該対物レンズの直後に配置され、光照射により前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を受けるダイクロックミラーあるいはハーフミラーと、該ダイクロックミラーあるいはハーフミラーを介して前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を取得するためのフォトデテクターと、該フォトデテクターから出力される信号を取得し、該信号を参照信号とした速度で、前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動させる波形出力装置を備え、前記フォトデテクターから出力される信号に応じて、前記レーザーの走査速度を変化させるようにしたことを特徴とする治療用レーザー照射装置が得られる。
【0011】
さらに本発明によれば、レーザーと、該レーザーからの光を走査可能にするガルバノミラーあるいはアクチュエータを備えたレンズと、該レンズを通過した光を試料に照射するための対物レンズと、該対物レンズの直後に配置され、光照射により前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を受けるダイクロックミラーあるいはハーフミラーと、該ダイクロックミラーあるいはハーフミラーを介して前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を取得するためのフォトデテクターと、該フォトデテクターから出力される信号を取得し、該信号を参照信号とした速度で、前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動させる波形出力装置と、前記試料の発光あるいは反射光による顕微観察が可能な光学系と、該光学系により顕微観察像を取得できるビデオカメラと、該ビデオカメラからの画像信号を参照した制御信号により前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを制御することのできる画像処理装置を備え、前記フォトデテクターから出力される信号と前記画像処理装置から出力される信号に応じて、前記レーザーの走査速度を変化させるようにしたことを特徴とする治療用レーザー照射装置が得られる。
【0012】
また本発明は、前記レーザーの出力波長が、340nmないし1064nmであることを特徴とする治療用レーザー照射装置を提供する。
さらに本発明は、前記がん細胞への選択的作用組成物を含むがん組織に対する光照射時間が、前記がん細胞への選択的作用組成物を含まない細胞に対する光照射時間より長くなるように、前記波形出力装置が前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動するようにしたことを特徴とする治療用レーザー照射装置を提供する。
【0013】
また本発明は、患部の細胞の光吸収強度が正常細胞光の光吸収強度と異なる病組織に対し光を照射し、該病組織における各細胞の反射光の強度に応じて前記波形出力装置が前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータの駆動速度を制御して、前記病組織における細胞に対する光照射時間が、正常細胞に対するする光照射時間より長くなるようにしたことを特徴とする治療用レーザー照射装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体結晶は、がん細胞に特異的にあるいは過剰に発現し、かつ、細胞内に取り込まれ、細胞核に輸送される膜蛋白質に反応するリガンドあるいは抗体が架橋されているので、がん細胞に散布されるとリガンドあるいは抗体ががん細胞の膜蛋白質と反応して結合し、膜蛋白質とともにエンドサイトーシスによりがん細胞内へと取り込まれ、がん細胞の核付近に蓄積される。
【0015】
がん細胞の核付近に蓄積された半導体結晶は、直径の大きさが4nmないし10nmのであるので、可視光線照射により活性酸素を放出してがん細胞を選択的に死滅させることができる。しかも、死滅効果を有する半導体結晶の濃度は、10nM程度あるいはそれ以下であり、毒性の心配がなく、正常細胞の損傷あるいは副作用もない。
【0016】
乳がん細胞に過剰発現するHER2あるいは白血がん細胞に発現する変異型KIT、PDGFRなどに反応するリガンドあるいは抗体が架橋された半導体結晶であれば、乳がん細胞あるいは白血がん細胞を死滅させることができる。半導体結晶としては、CdSe、CdTe結晶が好ましい。
【0017】
また本発明によれば、レーザーからの光照射により試料から放出される蛍光あるいは反射光を取得し、その強度に応じてガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動し、レーザーの走査速度を変化させるようにしたので、試料中の光感受性物質の濃度分布を利用して、放射される蛍光が強くなる光感受性物質の濃度の高い領域に、選択的に長時間の光照射行わせることができる。従って、光感受性物質の濃度分布によらず一様に光照射する場合よりも効果的ながん治療が可能となる。
【0018】
メラニン色素を過剰に発現している細胞(あざやホクロ、皮膚がん)であれば、正常細胞より光吸収が多いので、メラニン色素の濃度の高い領域に、選択的に長時間の光照射行わせることができる。従って、メラニン色素の濃度分布によらず一様に光照射する場合よりも効果的にあざやホクロ、皮膚がん等の治療などが可能となる。
【0019】
尚、対物レンズは、観察試料によって、無限系対物レンズと結像レンズの対、あるいは有限系対物レンズのどちらかを選択すればよい。
さらに本発明によれば、レーザーからの光照射により試料から放出される蛍光あるいは反射光を取得し、その強度に応じてガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動し、レーザーの走査速度を変化させるようにするとともに、試料の発光あるいは反射光による顕微観察が可能な光学系により顕微観察像を取得できるビデオカメラを備え、ビデオカメラからの画像信号を参照した制御信号によりガルバノミラーあるいはアクチュエータを制御することができるようにしたので、ビデオカメラにて細胞の形状や位置を顕微観察しながら、多様な患部の治療を効果的に行うことが可能となる。
【0020】
また、レーザーの出力波長が、紫外線より長波長の340nmないし1064nmであると、正常細胞に害を及ぼす危険性は回避できる。特に、680nmを超える波長のレーザーであれば、細胞での透過効率が大きいので、正常細胞への影響を軽減できるとともに、光照射時に皮膚を開けるなどの処置が必要なく、臨床応用時に低侵襲での治療が可能となる。
【0021】
さらに、がん細胞への選択的作用組成物を含むがん組織に対する光照射時間が、がん細胞への選択的作用組成物を含まない細胞に対する光照射時間より長くなるように、ガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動すると、がん細胞のみを選択的に死滅させることが可能となる。
【0022】
また、患部の細胞の光吸収強度が異なる病組織に対し、病細胞に対する光照射時間が、正常細胞に対するする光照射時間より長くなるようにすると、病細胞のみを選択的に死滅させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の実施の形態のがん細胞への選択的作用組成物の製造方法について説明する。
半導体結晶 (例えば、CdSe、CdTe、PbSeの結晶)微粒子(以下、半導体結晶微粒子を量子ドットと記す)の表面は、疎水性が高く、生体に害を及ぼす可能性が高い。そこで、量子ドットは、通常、周囲がPEG等の親水性ポリマーで覆われており、反応基として、カルボキシル基、またはアミノ基などが付加されている。このような親水性ポリマーで覆われた量子ドットの中から、半導体結晶の直径の大きさが4nmないし10nmの量子ドットを選択する。
【0024】
このサイズ統一された量子ドットに、がん細胞に特異的にあるいは過剰に発現し、かつ、細胞内に取り込まれ、細胞核に輸送される膜蛋白質(例えば、乳がん細胞に過剰発現するHER2、白血がん細胞に発現する変異型KIT,PDGFRなど)に反応するリガンドあるいは抗体(例えば、HER2の抗体はHerceptinである)を架橋させる。
架橋させる方法は、量子ドットを覆っている親水性ポリマーの種類などによって異なる。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態のがん細胞への選択的作用組成物の製造方法に係わる要部反応工程図であり、図1(a)に示すカルボキシル基12を持つ量子ドット11を用いる場合、まず、EDC(1-Ethyl-3[3-dimethylamino-propyl]carbodiimide hydrochloride)13と反応させて、図1(b)に示すように、量子ドット11のカルボキシル基12にEDC13を結合させる。続いて、リガンドあるいは抗体14と反応させて、図1(c)に示すように、リガンドあるいは抗体14のアミノ基15と量子ドット11のカルボキシル基12とをペプチド結合により架橋する。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態のがん細胞への選択的作用組成物の他の製造方法に係わる要部反応工程図であり、図2(a)に示すアミノ基17を持つ量子ドット16の場合、まず、SMCC(Succinimidyl 4-[N-maleimidomethyl]-cyclohexane-1-carboxylate)18と反応させて、図2(b)に示すように、アミノ基17に代えてマレイミド基19を結合する。続いて、マレイミド基19をリガンドあるいは抗体20のチオール基21と反応させ、図2(c)に示すように、ジスルフィド結合により架橋する。この反応は、システイン残基を持つペプチドに限られる。
【0027】
リガンドあるいは抗体と量子ドットを架橋するこのような方法は、蛍光性量子ドットを販売しているQuantumdot社の製品に付属するマニュアル等に開示されているペプチドと量子ドットを架橋する方法を利用することができる。
次に、上述のがん細胞への選択的作用組成物の利用方法について説明する。
上述のリガンドあるいは抗体を架橋した量子ドットをがん細胞に散布すると、リガンドあるいは抗体が標的の膜蛋白質に結合し、細胞膜表面に結合する。
【0028】
細胞膜表面に結合したリガンドあるいは抗体は、エンドサイトーシスにより細胞膜から細胞内へと移動し、更にモーター蛋白質によって細胞核周辺まで運ばれる。このとき量子ドットもリガンドあるいは抗体と架橋された状態で細胞核周辺にまで運ばれる。
【0029】
このような量子ドットを核周辺に持つがん細胞にレーザー光を照射すると、量子ドットが励起され、活性酸素が放出され、がん細胞は損傷を受け、選択的に死滅する。10nM程度の量子ドットが細胞内部にあれば、光照射によりがん細胞は死滅する。レーザー光は、半導体結晶の直径の大きさが4nmないし10nmにサイズ統一されているので、波長が340nmないし1064nmの可視光が使われる。
【0030】
続いて、本発明の実施の形態の治療用レーザー照射装置について説明する。
図3は、本発明の第1の実施の形態の治療用レーザー照射装置の構成を示す要部ブロック線図であり、治療用レーザー照射装置は、図3に示すように、無限系対物レンズ201、照射レーザーを透過し照射位置における発光を反射するダイクロックミラー202、レーザーの照射軸に置かれた結像レンズ203、ダイクロックミラー202により反射された蛍光を集光するための結像レンズ204、結像レンズ203の後焦点面に焦点を結ぶように置かれた単レンズ205、レーザー光の照射位置を走査するためのガルバノミラー206、照射用のレーザー207、結像レンズ204により集光した蛍光の強さを電圧信号に変えるためのフォトデテクター208、フォトデテクター208から出される電圧信号Vを参照とした制御信号CSをガルバノミラー206に送り制御する波形出力装置209から構成される。照射用のレーザー207の発光波長は、560ないし850nmの可視光である。
【0031】
図3に示すような無限光学系を用いる利点は、無限系対物レンズ201の配置を選ばない点にあり、カテーテルや硬性内視鏡など、観察位置と結像位置が遠く離れた場合などに利用できる。
ガルバノミラー206の代わりに音響光学素子を用いてレーザー光の方向を変えても構わない。
【0032】
また、フォトデテクター208として、フォトダイオード、光子倍増管など、発光の強度を電圧信号に変換する装置であれば、その種類は問わない。波形出力装置209も同様であり、フォトデテクター208から発せられた電圧信号Vを参照とした制御信号CSをガルバノミラー206に送ることができれば、コンピュータを用いても良いし、アナログ電子回路でも構わない。
【0033】
このような構成のレーザー照射装置を用いてレーザー光を量子ドットが蓄積されたがん細胞を含む試料に照射すると、がん細胞を選択的に死滅させることができる。即ち、レーザー207から出た平行光は、ガルバノミラー206、単レンズ205を通して、結像レンズ203の後焦点面に焦点を結んだ後、結像レンズ203を通り再度平行光に戻り、無限系対物レンズ201に入る。
【0034】
無限系対物レンズ201の焦点面と結像レンズ203の焦点面は共役の関係にあるので、レーザー207から出た光は無限系対物レンズ201の焦点面にて集光されている。レーザー207と単レンズ205の間に配置されているガルバノミラー206によりレーザー光を走査して、無限系対物レンズ201の焦点面に置かれたがん細胞を含む試料全体を照射する。集光されたレーザー照射によってがん細胞の核周辺の量子ドットは励起され、蛍光を発する。
【0035】
量子ドットの蛍光は、ダイクロックミラー202によって反射され、結像レンズ204によって、フォトデテクター208の受光面に集光する。フォトデテクター208は、量子ドットから発せられた蛍光の強度に比例した電圧信号Vを波形出力装置209に送信する。波形出力装置209は、電圧信号Vを参照にして、レーザー照射の走査速度を制御するようにガルバノミラー206に制御信号CSを送る。
【0036】
電圧信号Vと制御信号CSの関係は、試料毎に自由に変えることができる。例えば、逆数に比例した速度でレーザーの走査を行うようにガルバノミラー206を制御すれば、レーザーの照射時間は、量子ドットの発光強度に比例する。つまり、がん細胞に対して量子ドットを多く取り込んだ量に比例して、がん細胞に損傷を与えることができる。
【0037】
電圧信号Vとガルバノミラー206の駆動速度との相関の一例を図4に記す。図4において、図4(a)の縦軸は電圧信号の相対値を、横軸は時間を(単位は秒)を示し、曲線イはフォトデテクター208から出力される電圧信号Vを示している。また、図4(b)の縦軸は走査速度(単位はnm/s)を、横軸は図4(a)と同じ時間を(単位は秒)を示し、曲線ロはガルバノミラー206が電圧信号Vに対し反比例する大きさにて走査する場合の走査速度を示し、曲線ハはガルバノミラー206が電圧信号Vの振幅、オフセットを調節した信号に対し反比例した大きさにて走査する場合の走査速度を示し、曲線ニはガルバノミラー206がオフセットを調節した信号の二乗に対し反比例した大きさにて走査する場合の走査速度を示す。
【0038】
曲線ロ、曲線ハあるいは曲線ニのように、蛍光強度が高く、フォトデテクター208から出力される電圧信号Vが大きい程、レーザーの走査速度を低下させると、蛍光強度が高い場所には、より多くの時間レーザーが照射される。電圧信号Vの振幅、オフセットを調節した信号に対し反比例した曲線ハの走査速度は、蛍光強度が高いところでは約30nm/sであり、10μmを走査するのに約3分かかることになる。
【0039】
同図において、走査速度が300nm/s以上の値を省いているが、計算の都合上1μm/s以上の走査速度を1μm/sにすると、量子ドットを取り込んだ細胞と、そうでない細胞にレーザーが照射される時間は、約30倍異なる。
このように、量子ドットを含むがん細胞のみに対し選択的に長時間のレーザー照射を行うことができるので、量子ドットが少量でもがん細胞に特異的に取り込まれているのであれば、選択的に、かつ、効率的にがん細胞のみを死滅させることができる。
【0040】
第1の実施の形態の治療用レーザー照射装置のダイクロックミラー202をハーフミラーに代えることで、フォトデテクター208は蛍光強度ではなく反射強度を取得できる。図示を省略しているが、このような本発明の第2の実施の形態の治療用レーザー照射装置は、光感受性物質を用いないレーザー治療に利用できる。例えば、メラニン色素を過剰に発現している病細胞(あざやホクロ、皮膚がん)は、光吸収が多いため、フォトデテクター208に入る光強度は小さくなる。従って、メラニン色素を過剰発現した細胞などに対して、選択的に長時間のレーザー照射をするようにすると、病細胞のみを選択的に死滅させることが可能となる。
【0041】
第1の実施の形態の治療用レーザー照射装置は、無限系対物レンズ201を用いているが、有限系対物レンズを用いることで、装置が簡素化される。図5は、このような本発明の第3の実施の形態の治療用レーザー照射装置の構成を示す要部ブロック線図であり、図5では、無限系対物レンズ201の代わりに有限系対物レンズ210を使用することにより、図3の結像レンズ203、結増レンズ204を省略している。
【0042】
この場合、フォトデテクター208の受光面は、有限系対物レンズ210の後結像面に一致するように、また、単レンズ205はその焦点位置が有限系対物レンズ210の後結像面に一致するように厳しく配置する必要がある。尚、図3に示した構成要素と同じものには同一符号を付してその説明を省略しており、以下、図6および図7にても同様である。
【0043】
第1の実施の形態の治療用レーザー照射装置おけるガルバノミラーや音響光学素子を用いず、アクチュエータにより直接レンズを動かすことで、レーザー照明を走査することもできる。図6は、このような本発明の第4の実施の形態の治療用レーザー照射装置の構成を示す要部ブロック線図である。同図では、図3のガルバノミラー206を除去し、単レンズ205をレーザーの照射軸に対して垂直な面に駆動させるためのアクチュエータ211を単レンズ205に付加し、一体化させた。この治療用レーザー照射装置は、ガルバノミラーや音響光学素子を用いる場合に比べ、簡素である上に安価である。
【0044】
第4の実施の形態の治療用レーザー照射装置に比べてさらに簡素な構成とすることも可能である。図7は、このような本発明の第5の実施の形態の治療用レーザー照射装置の構成を示す要部ブロック線図である。同図に示す治療用レーザー照射装置は、図3に示す治療用レーザー照射装置のガルバノミラー206を除去し、第4の実施の形態の治療用レーザー照射装置と同様に、単レンズ205をレーザーの照射軸に対して垂直な面に駆動させるためのアクチュエータ211を単レンズ205に付加し、一体化させたものであり、極めて簡素な構成になる。
【0045】
第1ないし第5の実施の形態の治療用レーザー照射装置は、レーザー光を量子ドットが蓄積されたがん細胞を含む試料に照射することができるが、顕微観察が不可能である。図8は、この点を改善した本発明の第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置の構成を示す要部ブロック線図である。
【0046】
図8に示す治療用レーザー照射装置は、反射光もしくは蛍光による顕微観察を可能とする光学系を付加したものであり、無限系対物レンズ701、レーザーの照射軸に置かれた結像レンズ702、照射レーザーを透過し照射位置における発光を反射するダイクロックミラー703、結像レンズ702の後焦点面に焦点を結ぶように置かれた単レンズ704、レーザー光の照射位置を走査するためのガルバノミラー705、照射用のレーザー706、結像レンズ702により集光した蛍光の強さを電圧信号に変えるためのフォトデテクター707、フォトデテクター707から出される電圧信号Vを参照とした制御信号CSをガルバノミラー705に送り制御する波形出力装置708、照射用レーザー光、および、照射位置における発光を透過するダイクロックミラー709、ハーフミラーあるいはダイクロックミラー710、照射用レーザー光の波長と照射位置における発光波長に重ならない波長の顕微観察用のレーザー712、顕微観察用のレーザー712を集光するためのコンデンサレンズ711、結像レンズ713、ビデオカメラ714、画像処理装置715から構成される。
【0047】
使用方法は、レーザー光を量子ドットが蓄積されたがん細胞を含む試料に照射することに関しては、第1の実施の形態の治療用レーザー照射装置の場合と同様である。レーザー光を量子ドットが蓄積されたがん細胞を含む試料に照射すると、レーザー706から出た平行光は、ガルバノミラー705、単レンズ704を通して、結像レンズ702の後焦点面に焦点を結んだ後、結像レンズ702を通り再度平行光に戻り、無限系対物レンズ701に入る。
【0048】
無限系対物レンズ701の焦点面と結像レンズ702の焦点面は共役の関係にあり、レーザー706から出た光は無限系対物レンズ701の焦点面にて集光されている。レーザー706と単レンズ704の間に配置したガルバノミラー705によりレーザー光を走査して、無限系対物レンズ701の焦点面に置かれたがん細胞を含む試料全体を照射する。レーザー照射によってがん細胞の核周辺の量子ドットは励起され、蛍光を発する。
【0049】
量子ドットの蛍光は、ダイクロックミラー703によって反射され、フォトデテクター707の受光面に集光する。フォトデテクター707は、量子ドットから発せられた蛍光の強度に比例した電圧信号Vを波形出力装置708に送信する。波形出力装置708は、電圧信号Vの逆数に比例するような速度でレーザーの走査を行うようにガルバノミラー705に制御信号CSを送る。その結果、がん細胞は、量子ドットを取り込んだ量に比例して、損傷を受ける。
【0050】
さらに、第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置では、画像処理装置715が、制御信号CS2を出力することが可能であり、得られた顕微鏡像を参照にしてガルバノミラー705を制御する。ダイクロックミラー703、レーザー706、ダイクロックミラー709、レーザー712等の特性は、各波長の光が適切に透過・反射するように適時選択する。
【0051】
例えば、波長800nmの発光波長を持つ量子ドットを含むがん細胞のみを選択的に死滅させたい場合は、照射用のレーザー706には細胞に吸収の少ない波長の693nm、ダイクロックミラー703には波長700nm以上を反射するミラー、顕微観察用レーザー712には波長693nm以下である532nmや488nm、ダイクロックミラー709には波長680nm以下を反射するミラーを選択すれば良い。レーザー712は、白色光源であるハロゲン光源やキセノン光源の光にフィルターを通して代替しても良い。
【0052】
このような構成により、第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置では、顕微観察用のレーザー712から出た光がコンデンサレンズ711と対物レンズ701によって、試料全体を照射し、試料によって反射された光が、ダイクロックミラー709、ハーフミラーあるいはダイクロックミラー710および結像レンズ713を通り、ビデオカメラ714に入るので、レーザー706のレーザー光を量子ドットが蓄積されたがん細胞を含む試料に照射しながら、ビデオカメラ714にてがん細胞を含む試料を同時に顕微観察することが出来る。
【0053】
第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置では、顕微観察が可能であるため、様々な用途に利用できる。第1ないし第5の実施の形態の治療用レーザー照射装置では、細胞の内部にまで量子ドットが輸送されている場合には、がん細胞の中心にレーザーが照射されるのだが、量子ドットが細胞の膜上で滞在している場合には、隣接した正常細胞にまでレーザーが照射されてしまうため、使用範囲が特定される。
【0054】
これに対し、第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置では、細胞の形状や位置を参照することが可能であり、量子ドットを結合させる標的の蛋白質が、細胞内部に取り込まれない膜蛋白質であったとすると、がん細胞の周りだけが円となって蛍光像を作るので、その円の重心位置にレーザーを照射させるように、ガルバノミラー705を制御すればよい。
【0055】
また、第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置は、量子ドット等の光感受性物質を用いないレーザー治療に利用できる。がん化によって正常細胞とは形状が異なるがん細胞(胃がん、乳がん等)に対しての選択的攻撃が可能である。
さらに、第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置のダイクロックミラー703をハーフミラーに代えることで、第2の実施の形態の治療用レーザー照射装置と同様に、メラニン色素を過剰に発現している細胞(あざやホクロ、皮膚がん)に対して選択的に長時間のレーザー照射をするようにすると、病細胞のみを選択的に死滅させることが可能となる。
【実施例1】
【0056】
(がん細胞への選択的作用組成物)
量子ドットとしてCdSe粒子を、リガンドあるいは抗体として抗HER2抗体を、がん細胞として乳がん細胞KPL4細胞を選択し、その実施例について説明する。
乳がん細胞KPL4細胞は、膜蛋白質HER2(Human Epidermal grows factor Receptor 2)を正常細胞の約20倍程度過剰に発現しており、乳がんのモデル細胞として使用されている。抗HER2抗体を架橋したCdSe粒子(以下、抗HER2抗体-CdSeと記す)は、乳がん細胞に対して選択的に結合する。
【0057】
(選択的作用組成物の乳がん細胞内部への蓄積)
KPL4細胞を培養している培養液内に10nMの抗HER2抗体-CdSeを混合させ、37℃、5%CO2条件下に15分間静置させると、抗HER2抗体-CdSeは、KPL4細胞の細胞膜に結合し、細胞膜がCdSeの蛍光により標識される。図9(a)は、上記細胞膜の共焦点蛍光顕微鏡像であり、15分間静置後に、培養液を抗HER2抗体-CdSeを含まない溶液に交換した後、波長532nmのレーザーにて励起した時の共焦点蛍光顕微鏡像である。抗HER2抗体-CdSeが結合したKPL4細胞の細胞膜は、図9(a)の801に示すように、CdSeの蛍光により径が20μmないし60μmリング状に標識される。
【0058】
上述の抗HER2抗体-CdSeにより膜表面を標識されたKPL4細胞を、同条件でさらに2時間程度培養すると、細胞膜上にあった抗HER2抗体-CdSeは、HER2と供に細胞内部へと取り込まれる。細胞には、エキソサイトーシスと言う外敵から身を守る機能が備わっており、毒性のある金属などは、細胞の外に吐き出される場合がある。しかしながら、本実施例では、12時間経っても抗HER2抗体-CdSeは、外に吐き出されることなく細胞内部に蓄積された。
【0059】
抗HER2抗体-CdSeにより膜表面を標識されたKPL4細胞を、同条件でさらに12時間程度培養した時のKPL4細胞を波長532nmのレーザーにて励起した共焦点蛍光顕微鏡像を図9(b)に記す。細胞膜上にあった抗HER2抗体-CdSeは、点線で示す細胞膜802上から殆ど消える。それと同時に、細胞内部の細胞核803付近に輝点804が増え、抗HER2抗体-CdSeが細胞内部へと取り込まれたことが分かる。また、12時間経過しても、抗HER2抗体-CdSeは細胞内部に残留している様子も分かる。
【0060】
従って、培養液内の抗HER2抗体-CdSeの濃度を下げても、反応培養時間を延長することによって、抗HER2抗体-CdSeは、同程度がん細胞に蓄積される。本実施例の場合、KPL4細胞を培養している培養液内に0.05nMの抗HER2抗体-CdSeを混合させ、37℃、5%CO2条件下に24時間静置させた場合、図9(b)と同程度の抗HER2抗体-CdSeの蓄積が確認できた。
【0061】
上記の抗HER2抗体-CdSeの細胞膜への取り込み、核への輸送は、モーター蛋白質と呼ばれる、細胞内に必ず存在する蛋白質の役割による。このように、量子ドットを結合させる標的としてがん細胞に過剰に発現し、かつ、細胞内に取り込まれ核に輸送されることが既知な膜蛋白質を選択することによって、がん細胞内部に量子ドットを蓄積させることが可能である。
【0062】
(乳がん細胞の死滅)
量子ドットを核周辺に持つがん細胞に光照射を与えると、がん細胞は死滅する。
この実施例では、10nMの抗HER2抗体-CdSeを含む培養液内で、37℃、5%CO2条件下に12時間静置させたKPL4細胞に、波長470−490nmを透過するフィルターを通した水銀ランプの光により光照射を行った。光照射の強度は、約700mW/mm2である。その様子を図10(a)に示す。同図は、上記光照射を行ったときのKPL4細胞の透過顕微鏡像であり、図10(a)の下部に示した、0、3分後、6分後の表記は光照射直後、光照射から3分後および6分後の透過顕微鏡像である。
【0063】
図中、細胞膜902により囲われた部分が細胞、904は細胞核であり、901は培養液を示している。光照射から3分後、KPL4細胞に光照射直後に比べて形態的な変化は見られなかった。しかし、細胞内にある顆粒 (透過像では黒い斑点として観察される)903の運動が止まった。これは、細胞の死を示す。続いて、光照射6分後には、細胞902の膜の一部が破壊され、培養液901が細胞の内部へと流れ込み、細胞が破裂した。
【0064】
図10(b)は、比較例である抗HER2抗体-CdSeを含まない通常の培養液内で同一条件下にて培養したKPL4細胞に、同条件の光照射を行ったときの、KPL4細胞の透過顕微鏡像を示す。比較例では、光照射から6分後でも光照射直後に比べて形態変化は一切見られなかった。図10(a)と図10(b)を比べると、10nMの抗HER2抗体-CdSeを含む培養液内で培養したKPL4細胞のみが、CdSeから放出された活性酸素により、細胞膜が破裂したことがわかる。
【0065】
上記の方法で、10nMの抗HER2抗体-CdSeを含む培養液内で12時間培養したKPL4細胞は光照射を開始してから顆粒の運動が停止するまでを死滅するまでの時間が、平均で約3分であった。一方、10nMの抗HER2抗体-CdSeを含まない培養液内で12時間培養したKPL4細胞に同様の光照射を行った場合は、9分経過しても死滅は観察されなかった。つまり、細胞内部にCdSeを蓄積したKPL4のみを選択的に死滅させることができ、細胞内部にCdSeを蓄積しない細胞に損傷を与えないようにすることができる。
【0066】
本実施例によると、10nM程度の量子ドットが細胞内部にあれば、光照射によりがん細胞を死滅させることができる。これは顕微鏡下において、数分でがん細胞を死滅させる程の濃度であり、治療時の投与濃度はさらに低くできる。また、本手法は、モーター蛋白質により量子ドットを細胞内に運ばせ蓄積させるので、人体に影響の無い数pM程度の投与でも、時間と共に細胞内の量子ドットの濃度を上昇させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によると、副作用の心配がなく、がん細胞に選択的に輸送され、がん細胞に選択的に作用させることができる選択的作用組成物が得られる。また、治療用レーザー照射装置は、有害な紫外線レーザーを使用せずに、可視レーザーによりがん細胞およびメラニン色素を過剰に発現している病細胞(あざやホクロ、皮膚がん)細胞を効果的に死滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態のがん細胞への選択的作用組成物の製造方法に係わる要部反応工程図である。
【図2】本発明の実施の形態のがん細胞への選択的作用組成物の他の製造方法に係わる要部反応工程図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の治療用レーザー照射装置の要部ブロック線図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の治療用レーザー照射装置の動作を説明するための説明図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の治療用レーザー照射装置の要部ブロック線図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態の治療用レーザー照射装置の要部ブロック線図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態の治療用レーザー照射装置の要部ブロック線図ある。
【図8】本発明の第6の実施の形態の治療用レーザー照射装置のブ要部ブロック線図である。
【図9】本発明のがん細胞への選択的作用組成物の実施例に係わるがん細胞の蛍光顕微鏡観察図である。
【図10】本発明のがん細胞への選択的作用組成物の実施例並びに比較例に係わるがん細胞に、光照射を行った後のがん細胞の透過顕微鏡観察図である
【符号の説明】
【0069】
11、16 量子ドット
12 カルボキシル基
13 1-Ethyl-3[3-dimethylamino-propyl]carbodiimide hydrochloride
14、20 リガンドあるいは抗体
15、17 アミノ基
18 Succinimidyl 4-[N-maleimidomethyl]-cyclohexane-1-carboxylate
19 マレイミド基
21 チオール基
201 無限系対物レンズ
202 ダイクロックミラー
203、204 結像レンズ
205 単レンズ
206 ガルバノミラー
207 レーザー
208 フォトデテクター
209 波形出力装置
210 有限系対物レンズ
211 レンズ駆動用アクチュエータ
701 無限系対物レンズ
702 結像レンズ
703 ダイクロックミラー
704 単レンズ
705 ガルバノミラー
706 レーザー
707 フォトデテクター
708 波形出力装置
709 ダイクロックミラー
710 ダイクロックミラー、もしくは、ハーフミラー
711 コンデンサレンズ
712 レーザー
713 単レンズ
714 ビデオカメラ
715 画像処理装置
801 細胞膜表面に結合した量子ドット
802、902 細胞膜
803、904 細胞核
804 細胞に取り込まれた量子ドット
901 培養液
903 細胞内顆粒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞に特異的にあるいは過剰に発現し、かつ、細胞内に取り込まれ、細胞核に輸送される膜蛋白質に反応するリガンドあるいは抗体が直径の大きさが4nmないし10nmの半導体結晶に架橋されたことを特徴とするがん細胞への選択的作用組成物。
【請求項2】
レーザーと、該レーザーからの光を走査可能にするガルバノミラーあるいはアクチュエータを備えたレンズと、該レンズを通過した光を試料に照射するための対物レンズと、該対物レンズの直後に配置され、光照射により前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を受けるダイクロックミラーあるいはハーフミラーと、該ダイクロックミラーあるいはハーフミラーを介して前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を取得するためのフォトデテクターと、該フォトデテクターから出力される信号を取得し、該信号を参照信号とした速度で、前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動させる波形出力装置を備え、前記フォトデテクターから出力される信号に応じて、前記レーザーの走査速度を変化させるようにしたことを特徴とする治療用レーザー照射装置。
【請求項3】
レーザーと、該レーザーからの光を走査可能にするガルバノミラーあるいはアクチュエータを備えたレンズと、該レンズを通過した光を試料に照射するための対物レンズと、該対物レンズの直後に配置され、光照射により前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を受けるダイクロックミラーあるいはハーフミラーと、該ダイクロックミラーあるいはハーフミラーを介して前記試料から放出される蛍光あるいは反射光を取得するためのフォトデテクターと、該フォトデテクターから出力される信号を取得し、該信号を参照信号とした速度で、前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動させる波形出力装置と、前記試料の発光あるいは反射光による顕微観察が可能な光学系と、該光学系により顕微観察像を取得できるビデオカメラと、該ビデオカメラからの画像信号を参照した制御信号により前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを制御することのできる画像処理装置を備え、前記フォトデテクターから出力される信号と前記画像処理装置から出力される信号に応じて、前記レーザーの走査速度を変化させるようにしたことを特徴とする治療用レーザー照射装置。
【請求項4】
前記レーザーの出力波長が、340nmないし1064nmであることを特徴とする請求項2ないし請求項3記載の治療用レーザー照射装置。
【請求項5】
請求項1に記載のがん細胞への選択的作用組成物を含むがん組織に対する光照射時間が、前記がん細胞への選択的作用組成物を含まない細胞に対する光照射時間より長くなるように、前記波形出力装置が前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータを駆動するようにしたことを特徴とする請求項2ないし請求項4に記載の治療用レーザー照射装置。
【請求項6】
患部の細胞の光吸収強度が正常細胞光の光吸収強度と異なる病組織に対し光を照射し、該病組織における各細胞の反射光の強度に応じて前記波形出力装置が前記ガルバノミラーあるいはアクチュエータの駆動速度を制御して、前記病組織における細胞に対する光照射時間が、正常細胞に対するする光照射時間より長くなるようにしたことを特徴とする請求項2ないし請求項4に記載の治療用レーザー照射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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