説明

すき入れ位置検査方法

【課題】 すき入れ及び紙端を鮮明に撮像し、すき入れが形成された位置をばらつきが生じることなく高い精度で測定する検査方法を提供する。
【解決手段】 あらかじめ各照明の点灯及び消灯タイミングを設定した後、ラインカメラにおいて紙端及びすき入れを個々に撮像して1つの検査画像を取得し、検査画像から紙端及びすき入れを示す座標を検出して紙端の座標からすき入れの座標までの距離を算出した後、算出した各座標間の距離が許容範囲か否かを判定してすき入れが形成された位置の合否判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すき入れが形成された用紙のすき入れ位置検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ及びカラー複写機等のデジタル機器の発展により、紙幣及び旅券等の貴重印刷物の精巧な偽造品を容易に作製することが可能となっている。その偽造防止対策の一つとして、すき入れが形成された印刷物が多数流通している。すき入れとは、反射光下では模様を視認することができず、透過光下のみで模様を視認することができるものである。すき入れが形成された印刷物は、印刷前の用紙にすき入れを形成した後、その用紙に様々な印刷を施すことで作製される。そのため、紙幣及び旅券等の印刷とすき入れの位置に関連がある印刷物を作製する場合には、用紙作製時において、用紙の紙端からすき入れまでの位置確認が極めて重要である。
【0003】
用紙のすき入れ位置を確認する方法として、本出願人は、すき入れ位置と関連するすき入れ位置の確認用マークをすき入れにより用紙の端部に形成し、用紙を積層した際に積層された用紙の側面からすき入れ位置確認マークの近傍に二本線を引き、すき入れ位置の確認用マークと二本線の位置関係を比較することで、すき入れ位置の検査を行う方法について出願している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、別の方法としては、透過ドラムやコンベアにより、すき入れが形成された用紙を搬送し、この搬送中の用紙を透過ドラムの中に設置した照明により照射し、更に、透過ドラムの外に設置したラインカメラにより透過画像を撮像し、その撮像した透過画像を元に、すき入れを検査する検査装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、用紙の紙端を検出する装置として、イメージセンサ及び黒色の移送ローラを用いた紙幣判別装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この紙幣判別装置は、紙幣通過時に、イメージセンサの出力レベルが黒となる紙幣がない状態から、紙端(下側長辺)を検出して、白となる紙幣がある状態へと立ち上がる。紙端を検出した時点で、イメージセンサの反射イメージの検出を開始し、その後、紙端(上側長辺)を検出して白から黒に立ち下がったときに、イメージセンサのデータ取得を終了するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−229177号公報
【特許文献2】特表2005−513436号公報
【特許文献3】特開平7−334724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、用紙積載時において積載ずれが生じた場合、ずれが生じた状態で二本線を引くこととなり、その状態で引いた二本線によってすき入れ位置を検査すると、すき入れ位置と相関が取れていない二本線により検査することとなる。この二本線により検査する方法については、用紙の積層を手作業で行うため、作業者によるばらつきが生じる可能性が高く、それに伴い、すき入れ位置の検査精度が低下するという課題が残されていた。さらに、用紙の積載、線引き及びすき入れ位置検査を行う人員が必要となり、その人的コストが課題となっていた。
【0008】
また、特許文献2の方法では、鮮明なすき入れを撮像するために、高い照度の可視光を用紙に照射する必要があり、その場合、紙端については、照明から強い光が回り込むことで、鮮明な紙端画像を撮像することができないという問題がある。反対に、光の回り込みを防止するために、低い照度の可視光を用紙に照射した場合においては、紙端を撮像することは可能であるが、すき入れは不鮮明な画像となり、いずれの場合においても、すき入れの位置検査を高い精度で行うことはできない。
【0009】
また、特許文献3の装置を用いてすき入れを撮像する場合には、高い照度の可視光を照射する必要がある。その場合においては、照明からの光が回り込むことで、紙幣通過時にイメージセンサの出力レベルが黒レベル(紙幣なし)から白レベル(紙幣あり)に正常に立ち上がらず、紙端を検出することができないという課題があった。
【0010】
本発明は、これらの課題を解消するものであり、すき入れ及び紙端を鮮明に撮像し、すき入れが形成された位置を、ばらつきが生じることなく、高い精度で測定する検査方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、すき入れが形成された用紙の一方の面へ可視光を照射する短辺反射照明及び長辺反射照明と、用紙の他方の面へ可視光を照射するすき入れ透過照明と、用紙を挟んですき入れ透過照明と対向する位置にラインカメラとを少なくとも備えた検査装置を用いて、用紙の紙端から用紙に形成されたすき入れまでの位置を検査するためのすき入れ位置検査方法において、用紙の紙端及びすき入れがラインカメラの撮像位置を通過するタイミングに基づき、紙端のみ及びすき入れのみへ可視光を照射するために各照明を個別に点灯及び/又は消灯することで、用紙の検査画像を取得し、検査画像から検出した用紙の紙端を示す座標のうち少なくとも一つの辺を検出し、検出した一つの辺とラインカメラの撮像位置のずれを検出し、一つの辺と撮像位置とが合致するように検査画像を回転及び/又は移動する補正を行い、補正後の検査画像とあらかじめ設定された基準画像とをパターンマッチングし、用紙内のすき入れ位置を示す座標を検出し、用紙の紙端を示す座標からすき入れ位置を示す座標までの距離を算出し、算出した用紙の紙端位置を示す座標から用紙のすき入れ位置を示す座標までの距離と、あらかじめ設定した用紙の紙端位置を示す座標から用紙内のすき入れ位置を示す座標までの距離の許容範囲とを比較し、許容範囲内か否かによってすき入れが形成された位置の合否判定を行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のすき入れ位置検査方法であって、用紙の紙端は、用紙の搬送方向と略平行の辺及び用紙の搬送方向と略直交する辺から成り、ラインカメラが、用紙の搬送方向と略直交する辺を撮像している間は、短辺反射照明及び長辺反射照明が点灯し、かつ、すき入れ透過照明が消灯し、ラインカメラが、用紙の搬送方向と略平行の辺及び用紙に形成されたすき入れとを撮像している間は、短辺反射照明及びすき入れ透過照明が点灯し、かつ、長辺反射照明が消灯することを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のすき入れ位置検査方法であって、補正前の検査画像に対してサブピクセル処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のような、本発明のすき入れ位置検査を行うことにより、すき入れ及び紙端を鮮明な画像として撮像することが可能となることから、撮像した鮮明な画像を用いて、正確なすき入れ位置を検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の被検査対象物である用紙(2)の一例を示す平面図
【図2】すき入れ検査装置(M)を示す模式図
【図3】すき入れ検査装置(M)を示すブロック図
【図4】用紙(2)に対する照明(10、11a、11b)の照射位置を示す模式図
【図5】光の回り込みを説明する模式図
【図6】検査画像(P)を撮像するための各照明の点灯タイミングを示す図
【図7】検査画像(P)を示す模式図
【図8】すき入れ位置検査方法を示すフローチャート
【図9】用紙(2)の搬送誤差発生時における検査画像(P)の模式図
【図10】パターンマッチングを示す模式図
【図11】パターンマッチング後の検査画像(P)を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
【0017】
図1は、本発明の被検査対象物である用紙(2)の一例を示す平面図であり、基材(2a)の少なくとも一部にすき入れ(1)が形成されている。すき入れ(1)とは、基材(2a)の厚みと密度を部分的に異ならせることで形成した模様である。用紙(2)を透過光下にて観察することで、基材(2a)の厚みと密度を部分的に異ならせて形成した模様であるすき入れ(1)が鮮明に視認される。以下、本発明においては、基材(2a)にすき入れ(1)が形成されていることを、用紙(2)にすき入れ(1)が形成されているという。
【0018】
図1において太線で図示しているように、本発明における紙端(L)とは、上下の長辺(3a、3b)及び左右の短辺(4a、4b)の合計4辺を合わせた総称である。長辺(3a、3b)とは、後述するすき入れ検査装置における用紙(2)の搬送方向と略直交の辺を示し、短辺(4)とは、後述するすき入れ検査装置における用紙(2)の搬送方向と略平行の辺を示す。なお、図1においては、長辺(3a、3b)が短辺(4a、4b)よりも長くなっているが、同じ長さとすることも可能であり、更には、長辺(3a、3b)と短辺(4a、4b)の長さが逆となり、長辺(3a、3b)が短辺(4a、4b)よりも短くすることも可能である。各すき入れ(1)は、用紙(2)の紙端(L)からの距離を測定することで、その位置検査を行う。なお、本実施の形態では、一例として、用紙(2)の下側の長辺(3a)から各すき入れ(1)までの距離と、左側の短辺(4b)から各すき入れ(1)までの距離を検査する位置検査方法について説明する。
【0019】
図1においては、用紙(2)上に複数の同一模様であるすき入れ(1)を、4列×5面の20面に各々形成した後、その用紙(2)を、一面ずつに断裁することで、20枚の紙葉類となる。なお、前述した20面に限らず、すき入れ(1)が形成されていれば、面数及びすき入れ(1)を形成する位置は、特に限定されない。
【0020】
次に、用紙(2)に形成されたすき入れ(1)の位置検査を行う、すき入れ検査装置について説明する。
【0021】
図2のすき入れ検査装置(M)は、上流側コンベア(6)、下流側コンベア(7)、用紙検出センサ(8a、8b)、エンコーダ(9)、長辺反射照明(10)、左右短辺反射照明(11a、11b)、すき入れ透過照明(12)、ラインカメラ(13)、照明制御部(14)、画像処理部(15)及び判定部(16)と、各部の制御を行う制御部(図示せず)を少なくとも備える。
【0022】
すき入れ検査装置(M)においては、用紙(2)をフィーダ部(図示せず)により、上流側コンベア(6)へ送り出す。次に、ラインカメラ(13)により用紙(2)のすき入れ(1)及び紙端(L)を撮像した後、画像処理部(15)により撮像画像を元にすき入れ(1)の位置検査を実施し、最後に判定部(16)において用紙(2)の合否判定を行う。
【0023】
図3は、前述したすき入れ検査装置(M)を示すブロック図である。以下、本発明のすき入れ位置検査を行うすき入れ検査装置(M)について説明する。
【0024】
上流側コンベア(6)及び下流側コンベア(7)は、用紙(2)を搬送させる手段であり、それぞれが、搬送ベルト(6a、7a)及びローラ(6b、7b)から成る。各コンベア(6、7)は、搬送方向と同一方向に直線状に配置されることで、平坦性を維持した状態で、すき入れ検査装置(M)内を一枚ずつ搬送することが可能となる。
【0025】
各コンベア(6、7)においては、ローラ(6b、7b)が回転することで搬送ベルト(6a、7a)が同期して回転する。それにより、搬送ベルト(6a、7a)上の用紙(2)が、すき入れ検査装置(M)内を搬送する。なお、用紙(2)を高速(例えば、3m/s程度の速度)で搬送する際には、搬送中の用紙(2)にばたつきが発生し、ラインカメラ(13)から、正確な検査画像を取得することができない場合がある。その際においては、搬送ベルト(6a、7a)に複数の吸引孔を設けて、搬送ベルト(6a、7a)と接触する用紙(2)の下面を吸引しながら用紙(2)を搬送してもよい。さらに、各コンベア(6、7)近傍に用紙(2)の上面を押さえる手段を取り付けてもよい。
【0026】
ラインカメラ(13)は、すき入れ(1)の位置検査を行う検査画像を撮像する手段であり、図2に示すように、搬送中の用紙(2)の一方の面へ、用紙(2)の搬送経路を介してすき入れ透過照明(12)と対向する位置へ配置される。なお、ラインカメラ(13)を搬送する用紙(2)の他方の面へ配置した場合においては、用紙(2)を各コンベア(6、7)の下面を搬送することになり、その際には、前述のとおり搬送ベルト(6a、7a)に複数の吸引孔を設け、用紙(2)を吸引しながら搬送することも可能ではある。しかしながら、コンベア(6、7)の下面において保持可能なように、用紙(2)に対して吸引力を上げることによって、用紙(2)にしわが発生する場合があるため、ラインカメラ(13)を搬送する用紙(2)の下面側に配置することは好ましくない。
【0027】
なお、ラインカメラ(13)は、一次元の画像を順次取得するカメラであり、その撮像した一次元の画像を画像処理部(15)において、ラインカメラ(13)により取得した順序で配列することにより、一つの二次元の画像を得ることで、得られた二次元画像を検査画像(P)とする。以下、本発明における検査画像(P)は、ラインカメラにより撮像した画像とし、一次元の画像から二次元の画像を生成する工程については、説明を省略する。
【0028】
ラインカメラ(13)においては、高速(例えば、3m/s程度の速度)で搬送される用紙(2)全体に形成されたすき入れ(1)を撮像する必要がある場合は、感度が高いものを用いるのが好ましい。また、本発明において、ラインカメラ(13)の代わりにエリアカメラを用いた場合は、撮像対象をカメラの前で静止させた後に撮像する必要があり、機械の不稼働時間が多く発生することから好ましくない。よって、本発明においては、ラインカメラを用いる。なお、ラインカメラ(13)は、用紙(2)の搬送方向と直交する方向における用紙(2)からの反射光及び透過光を画像として入力する、公知のCCDラインカメラを用いることができる。
【0029】
各用紙検出センサ(8a、8b)は、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の通過直前及び通過直後の用紙(2)を検出する手段であり、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の通過直前の上流側にある用紙(2)を検出する手段である第一用紙検出センサ(8a)と、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の通過直後の下流側にある用紙(2)を検出する手段である第二用紙検出センサ(8b)から成る。各用紙検出センサ(8a、8b)は、検出エリアに、光を照射するとともに、検出エリアからの反射光を受光し、受光した光量に応じて、ON、OFF信号を出力する光電式のセンサである。
【0030】
すき入れ検査装置(M)における各用紙検出センサ(8a、8b)の検出エリアは、用紙(2)を搬送する搬送ベルト(6a、7a)の上面であり、各用紙検出センサ(8a、8b)は、搬送ベルト(6a、7a)に用紙(2)がない場合は、OFF信号を照明制御部(14)へ出力するともに、搬送ベルト(6a、7a)に用紙(2)が有る場合は、ON信号を照明制御部(14)に出力する。
【0031】
ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の通過直前の上流側にある用紙(2)を検出する第一用紙検出センサ(8a)は、用紙(2)の搬送路である上流側コンベア(6)の上方に配置する。また、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の通過直後の下流側にある用紙(2)を検出する第二用紙検出センサ(8b)は、用紙(2)の搬送路である下流側コンベア(7)の上方に配置する。
【0032】
エンコーダ(9)は、用紙(2)を搬送する搬送ベルト(6a、7a)のローラ(6b、7b)の回転タイミングを検知する手段であり、各コンベア(6、7)のローラ(6b、7b)のローラ軸に設置する。エンコーダ(9)からのタイミング信号を利用することで、ラインカメラ(13)において各コンベア(6、7)の搬送速度と同期した検査画像(P)を撮像することが可能となる。
【0033】
照明(10、11a、11b、12)は、用紙(2)の一方の面及び他方の面へ可視光を照射する手段であり、長辺反射照明(10)、左右短辺反射照明(11a、11b)及びすき入れ透過照明(12)から成る。なお、図4は、用紙(2)の一方の面を上面とした場合における、用紙(2)に対する長辺反射照明(10)及び左右短辺反射照明(11a、11b)の照射位置を示す模式図である。以下、本発明のすき入れ検査装置(M)における照明(10、11a、11b、12)について説明する。
【0034】
長辺反射照明(10)は、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)における用紙(2)の短辺(4a、4b)が通過しない領域(10R)へ可視光を照射する手段であり、LED照明又はハロゲン照明等を用いる。
【0035】
左右短辺反射照明(11a、11b)は、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)における用紙(2)の短辺(4a、4b)が通過する領域(11aR、11bR)に可視光を照射する手段であり、左側短辺(4a)が通過する領域(11aR)に可視光を照射する左短辺反射照明(11a)と、右側短辺(4b)が通過する領域(11bR)に可視光を照射する右短辺反射照明(11b)から成る。左右短辺反射照明(11a、11b)は、LED照明又はハロゲン照明等を用いる。
【0036】
図2において、左右短辺反射照明(11a、11b)は、左右の短辺(4a、4b)に対してそれぞれ分離した状態で配置されているが、右短辺反射照明(11b)を配置せず、左短辺反射照明(11a)のみを配置することで、検査対象である左短辺(4a)についてのみ、可視光を照射しても構わない。
【0037】
長辺反射照明(10)及び左右短辺反射照明(11a、11b)は、いずれも下流側コンベア(7)の上方に配置される。長辺反射照明(10)及び左右短辺反射照明(11a、11b)を下流側コンベア(7)の上方に配置することで、ラインカメラ(13)側の用紙(2)表面へ可視光を照射し、その結果、ラインカメラ(13)は、用紙(2)の反射画像を撮像する。
【0038】
長辺反射照明(10)を上流側コンベア(6)の上方に配置するとともに、左右短辺反射照明(11a、11b)を下流側コンベア(7)の上方に配置することも可能であり、更には、長辺反射照明(10)を下流側コンベア(7)の上方に配置し、左右短辺反射照明(11a、11b)を上流側コンベア(6)の上方に配置することも可能である。
【0039】
なお、検査対象物である用紙(2)において、前述のとおり、用紙(2)の搬送方向(v1)と略直交の辺である長辺(3a、3b)と、用紙(2)の搬送方向(v1)と略平行の辺である及び短辺(4a、4b)の長さは適宜設定することが可能であり、長辺(3a、3b)が短辺(4a、4b)よりも短くなることも可能である。いずれの場合においても、長辺反射照明(10)においては、用紙(2)の搬送方向(v1)と略平行の辺(短辺)が通過しない領域へ可視光を照射する手段とし、左右短辺反射照明(11a、11b)においては、用紙(2)の搬送方向(v1)と略平行の辺(短辺)が通過する領域に可視光を照射する手段とする。
【0040】
すき入れ検査装置(M)における長辺反射照明(10)と、左右短辺反射照明(11a、11b)の配置は、ラインカメラ(13)が用紙(2)全面を撮像するときに、その撮像の邪魔にならない位置であれば、特に限定されず、配置箇所を適宜選択することが可能である。
【0041】
すき入れ透過照明(12)は、用紙(2)の下面へ高い照度の可視光を照射する手段であり、上流側コンベア(6)と下流側コンベア(7)間における用紙(2)搬送経路の下方に配置する。すき入れ透過照明(12)を、各コンベア(6、7)間に配置することで、用紙(2)の下方から照射された可視光は、用紙(2)を透過した後、用紙(2)を挟んで対向する位置に配置したラインカメラ(13)によって受光することで、用紙(2)の透過画像を撮像することが可能となる。
【0042】
用紙(2)に対してすき入れ透過照明(12)により可視光を均一に照射することで、用紙(2)全体に形成されたすき入れ(1)が撮像可能となる。
【0043】
なお、用紙(2)が高速(例えば、3m/s程度の速度)で搬送される場合、用紙(2)に形成されたすき入れ(1)を、ラインカメラ(13)により、0.2mm程度の高い分解能で鮮明に撮像するためには、すき入れ透過照明(12)を高輝度白色LED照明又はメタルハライド照明等の高い照度の可視光を照射することができる照明が必要である。さらに、すき入れ透過照明(12)は、近接した上流側コンベア(6)と下流側コンベア(7)間のスペースに、搬送中の用紙(2)を邪魔することなく収めることが可能なコンパクトなタイプを用いることが好ましい。
【0044】
照明制御部(14)は、用紙(2)の紙端(L)及びすき入れ(1)を個々に撮像するために、あらかじめ設定した条件及びタイミングに基づき、照明(10、11a、11b、12)を点灯及び消灯する手段である。
【0045】
画像処理部(15)は、ラインカメラ(13)により撮像した検査画像(P)を用いて紙端(L)とすき入れ(1)とを検出した後、紙端(L)とすき入れ(1)との間の寸法を算出する手段である。
【0046】
判定部(16)は、長辺(3a、3b)及び短辺(4a、4b)と、すき入れ(1)との間の寸法が、あらかじめ設定されている許容範囲内であるか否かを判定し、すき入れ位置の合否判定を行う手段である。
【0047】
なお、判定部(16)における判定結果を、制御部(図示せず)に転送した後、排紙部(図示せず)で、用紙(2)の自動選別を行う構成としてもよい。
【0048】
前述のとおり、本発明においてはラインカメラ(13)により撮像する検査画像(P)を用いて、すき入れ(1)の位置を検査する。よって、検査画像(P)は、高輝度な照明であるすき入れ透過照明(12)からの光の回り込みによる影響を受けずに、用紙(2)の紙端(L)及びすき入れ(1)を鮮明に撮像した画像である必要がある。図5は、光の回り込みを説明する模式図であり、用紙(2)の両端は、短辺(4a、4b)である。図5(a)及び図5(b)に示すように、ラインカメラ(13)は、すき入れ(1)が形成された用紙(2)の両端である短辺(4a、4b)を、θの角度で撮像する。
【0049】
図5(a)に示すように、すき入れ透過照明(12)が、すき入れ(1)及び短辺(4a、4b)を含む用紙(2)全面に、高い照度の可視光を照射する場合には、すき入れ透過照明(12)からの受光量が多くなり、ラインカメラ(13)で取得する検査画像(P´)は、すき入れ(1)を鮮明に撮像した高いコントラストの画像となるが、紙端(L)では、光の回り込みが発生して紙端(L)を鮮明に撮像することができない。
【0050】
そこで、図5(b)に示すように左右短辺反射照明(11a、11b)においては、用紙(2)の短辺(4a、4b)が通過する領域へ、可視光を用紙(2)の一方の面から照射し、すき入れ透過照明(12)においては、用紙(2)のすき入れ(1)が形成された箇所のみへ可視光を用紙(2)の他方の面から照射する。すき入れ透過照明(12)からの可視光をすき入れ(1)のみへ照射することで、ラインカメラ(13)が撮像した検査画像(P´´)は、短辺(4a、4b)において光の回り込みが発生しない。よって、すき入れ(1)と短辺(4a、4b)が鮮明に撮像された高いコントラストの画像となる。
【0051】
なお、図5(b)の検査画像(P´´)では、長辺(3)において光の回り込みが発生し、長辺(3)が鮮明に撮像されていない。しかしながら、長辺(3)がラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)を通過するときのみ、長辺反射照明(10)をON(点灯)として、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)にある長辺(3)のみに可視光を照射するとともに、すき入れ透過照明(12)をOFF(消灯)とすることで、ラインカメラ(13)は、長辺(3)を正確に撮像することが可能となる。
【0052】
以上のように、本発明においては、用紙(2)の長辺(3)、短辺(4a、4b)及びすき入れ(1)が、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)を通過するタイミングをあらかじめ測定し、その測定した通過タイミングに合わせて各照明(10、11a、11b、12)を個別にON(点灯)、OFF(消灯)とすることで、すき入れ(1)、短辺(4a、4b)及び長辺(3)を交互に撮像する。それにより、ラインカメラ(13)において、光の回り込みが起きることなく、すき入れ(1)及び紙端(L)が鮮明に撮像された検査画像(P)を取得することが可能となる。
【0053】
次に、あらかじめ測定する通過タイミングについて説明する。図6は、用紙(2)の紙端である長辺(3a、3b)とすき入れ(1)がラインカメラ(13)の撮像位置を通過するタイミング及び各照明(10、11a、11b、12)のON、OFFタイミングを示すタイミングチャートである。
【0054】
照明制御部(14)は、図6のタイミングチャートのとおり、各用紙検出センサ(8a、8b)からの信号を受け、あらかじめ設定した条件に従って、各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとする制御装置である。照明制御部(14)は、設定された条件のとおり、各照明(10、11a、11b、12)を制御することで、図7に示す、すき入れ(1)及び紙端(L)が鮮明に撮像された検査画像(P)を取得することができる。
【0055】
あらかじめ設定した条件とは、検査対象である用紙(2)の形状及び寸法と、すき入れ(1)の形成位置、形状及び寸法を測定した後、用紙(2)を検査時と同じ搬送速度で搬送した際の用紙(2)の紙端(L)及びすき入れ(1)がラインカメラ(13)の撮像位置を通過するタイミングを測定することである。この、あらかじめ測定した通過タイミングに基づき、各照明(10、11a、11b、12)を個別にON、OFFとする。
【0056】
上流側コンベア(6)の上方に配置された第一用紙検出センサ(8a)は、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の上流側を搬送される長辺(3a、3b)を検出する。また、下流側コンベア(7)の上方に配置された第二用紙検出センサ(8b)は、長辺(3a)がラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)を通過した後、用紙(2)中に、搬送方向(v1)に対して、最も下流側に形成されたすき入れ(1)が、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)に到達するまでの間に、長辺(3a)を検出する。また、第二用紙検出センサ(8b)は、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)を通過した後、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の下流側を搬送している長辺(3b)を検出する。
【0057】
なお、各用紙検出センサ(8a、8b)による長辺(3a)の検出は、各用紙検出センサ(8a、8b)がOFFからONに変わることで検出する。また、長辺(3b)の検出は、各用紙検出センサ(8a、8b)がONからOFFに変わることで検出する。
【0058】
次に、これら各用紙検出センサ(8a、8b)のON、OFF信号に従って、ON、OFFとする各照明(10、11a、11b、12)の動作を説明する。
【0059】
まず、用紙(2)の長辺(3a)が第一用紙検出センサ(8a)の検出エリアに到達し、第一用紙検出センサ(8a)がOFFからONに変化したときに、長辺反射照明(10)と左右短辺反射照明(11a、11b)をONとし、すき入れ透過照明(12)は、OFFを継続する。それにより、ラインカメラ(13)においては、鮮明な長辺(3a)を撮像することが可能となる。
【0060】
次に、用紙(2)の長辺(3a)が、第二用紙検出センサ(8b)の検出エリアに到達したことで、第二用紙検出センサ(8b)がOFFからONに変化したときに、長辺反射照明(10)をOFFとし、左右短辺反射照明(11a、11b)は、ONを継続し、すき入れ透過照明(12)をONとする。それにより、ラインカメラ(13)においては、鮮明な短辺(4a、4b)及び鮮明なすき入れ(1)を撮像することが可能となる。
【0061】
次に、用紙(2)の長辺(3b)が、第一用紙検出センサ(8a)の検出エリアを通過したことで、第一用紙検出センサ(8a)がONからOFFに変化したときに、長辺反射照明(10)をONとし、左右短辺反射照明(11a、11b)は、ONを継続し、すき入れ透過照明(12)をOFFとする。それにより、ラインカメラ(13)においては、鮮明な長辺(3b)を撮像することが可能となる。
【0062】
次に、用紙(2)の長辺(3b)が、第二用紙検出センサ(8b)の検出エリアを通過したことで、第二用紙検出センサ(8b)がONからOFFに変化したとき、長辺反射照明(10)と左右短辺反射照明(11a、11b)をOFFとし、すき入れ透過照明(12)は、OFFを継続する。
【0063】
なお、すき入れ検査装置(M)において、用紙(2)をフィーダ部(図示せず)から連続して上流コンベア(6)へ送り出す際に、すき入れ検査装置(M)内を搬送する用紙(2)の互いの間隔が狭い場合は、第二用紙検出センサ(8b)がONからOFFに変化したときから、次の用紙(2)の長辺(3a)が、第一用紙検出センサ(8a)の検出エリアに到達するまでの間、長辺反射照明(10)と左右短辺反射照明(11a、11b)は、ONを継続していても構わない。
【0064】
このように、照明制御部(14)によって各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFと切り替えることにより、ラインカメラ(13)は、高いコントラストのすき入れ(1)と正確な紙端(L)を撮像することができる。
【0065】
なお、図1に示す用紙(2)の寸法、すき入れ(1)の形成位置又は形状が異なる用紙(2)を検査する場合は、事前にラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)を通過する、すき入れ(1)、長辺(3)及び短辺(4a、4b)の位置を調査し、長辺反射照明(10)が短辺(4a、4b)及び長辺(3)を照射し、また、左右短辺反射照明(11a、11b)が左右の短辺(4a、4b)を照射し、すき入れ透過照明(12)が用紙(2)中の全てのすき入れ(1)を照射するように、適切な大きさの照明を適切な位置に配置するとともに、配置後は、各照明(10、11a、11b、12)の照度を適宜調整する必要がある。
【0066】
また、このような異なる仕様の用紙(2)を検査するときには、用紙(2)の長辺(3)、短辺(4a、4b)及びすき入れ(1)がラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)を通過するタイミングを測定し直し、各照明(10、11a、11b、12)を、図6のとおり適切にON、OFFとなるように、事前に各用紙検出センサ(8a、8b)の位置を調整するとともに、必要に応じて照明制御部(14)に各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとする条件を適宜設定する必要がある。
【0067】
なお、各用紙検出センサ(8a、8b)は、透過性の高いすき入れ(1)を検出したとき、それを用紙(2)がないものとして誤検出することがある。そのため、各用紙検出センサ(8a、8b)を配置する位置は、すき入れ(1)が通過しない位置に調整する必要がある。
【0068】
また、各用紙検出センサ(8a、8b)の配置は、用紙(2)のスキューと、用紙検出後に、実際に各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとするまでの所要時間を考慮する必要がある。なお、スキューとは、すき入れ検査装置(M)の搬送誤差により、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)に対し、用紙(2)の長辺(3a、3b)が、傾いた状態で搬送されることであり、用紙(2)が同じ寸法で同じ特性のものであっても、スキューする角度は、各用紙(2)によって異なる。
【0069】
例えば、第一用紙検出センサ(8a)の検出エリアが、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)から上流側へ1mm、遡った位置に配置する場合において、用紙(2)の長辺(3a、3b)の寸法が1m、最もスキューする角度が0.2°で、かつ、長辺(3a、3b)がラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)に対して、最大約5mm傾いて搬送した際、第一用紙検出センサ(8a)が長辺(3a)を検出したときに、長辺(3a、3b)の一部分が、既にラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)を通過する場合がある。この場合は、第一用紙検出センサ(8a)を、当初の位置より、4mm以上、上流側へ遡った位置に配置する必要がある。
【0070】
また、すき入れ位置検査装置(M)の用紙(2)の搬送速度が3m/sで、各用紙検出センサ(8a、8b)が用紙(2)の長辺(3a、3b)を検出した後に、各照明(10、11a、11b、12)が、実際に、ON、OFFとなるまでの間、1ms要する場合は、各用紙検出センサ(8a、8b)を、更に、3mm以上、上流側へ遡った位置に配置する。
【0071】
また、各用紙検出センサ(8a、8b)を、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)から上流側に、数十ミリ遡った位置に配置し、各用紙検出センサ(8a、8b)による用紙検出後、各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとするまでの時間を、各用紙検出センサ(8a、8b)及び照明制御部(14)に設定してもよい。
【0072】
また、第一用紙検出センサ(8a)のみを配置し、第一用紙検出センサ(8a)のON、OFF信号後に、各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとなるまでの時間を、照明制御部(14)等に設定してもよい。
【0073】
また、各用紙検出センサ(8a、8b)を用いて各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとする構成について説明したが、各用紙検出センサ(8a、8b)を用いなくても、あらかじめ測定した用紙(2)の短辺(4a、4b)、長辺(3a、3b)及びすき入れ(1)がラインカメラ(13)の撮像位置を通過するタイミングに基づき、各照明(10、11a、11b、12)を個別にON、OFFとすることは可能である。その場合には、各照明(10、11a、11b、12)がON、OFFとなるまでの時間の代わりに、各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとするまでのパルス数を、照明制御部(14)へ設定するとともに、照明制御部(14)は、第一用紙検出センサ(8a)のON、OFF信号後からのエンコーダ(9)のパルス信号を計数し、設定したパルス数に達したときに、各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとする構成とすることができる。
【0074】
次に、図8に示すフローチャートに準じて、前述したすき入れ検査装置(M)を用いたすき入れ位置検査方法について説明する。
【0075】
ステップ(以下「S」という。)10では、用紙(2)のすき入れ(1)及び紙端(L)が鮮明に撮像された検査画像(P)を取得するために、あらかじめ検査対象の用紙(2)のすき入れ(1)が形成された位置と用紙(2)の寸法及び形状とに合わせて、各照明(10、11a、11b、12)をすき入れ検査装置(M)に配置するとともに、必要に応じ、各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとする条件(タイミングチャート)を照明制御部(14)に設定する。なお、各照明(10、11a、11b、12)の配置箇所及びON、OFFとする条件については、前述のとおり、被検査対象物により異なるため、オペレータは、事前に検査画像(P)を鮮明に撮像することが可能な撮像条件を調査しておく必要がある。なお、これら設定を行った後に、同一の検査対象物を継続して検査するのであれば、再度S10を行う必要はない。
【0076】
なお、検査対象である用紙(2)の搬送速度が遅い場合においては、あらかじめ撮像位置を通過するタイミングを測定せずに、用紙(2)の搬送中に、用紙(2)の紙端(L)及びすき入れ(1)がラインカメラ(13)の撮像位置を通過するタイミングに合わせて、各照明(10、11a、11b、12)をON、OFFとするタイミングを照明制御部(14)に設定することも可能である。
【0077】
S11では、用紙(2)の紙端(L)及びすき入れ(1)がラインカメラ(13)の撮像位置を通過するタイミングに基づき、紙端(L)のみ及びすき入れ(1)のみへ可視光を照射するために、各照明(10、11a、11b、12)を個別にON、OFFとすることで、ラインカメラ(13)により用紙(2)の紙端(L)及びすき入れ(1)を個々に撮像し、1つの検査画像(P)を取得することができる。
【0078】
ラインカメラ(13)は、エンコーダ(9)によって下流側コンベア(7)の搬送ベルト(7a)が0.2mm移動する度に、搬送方向と直交する方向(v2)に分解能0.2mmの1次元の画像を入力することにより、搬送方向(v1)及び搬送方向と直交する方向(v2)において、分解能が0.2mm/画素の用紙(2)の画像を入力する。
【0079】
なお、搬送速度が2m/sで、すき入れ透過照明(12)の照度が比較的に低いときは、ラインカメラ(13)の露光時間を、90μsとすることで、鮮明な反射画像である、長辺(3)及び短辺(4)と、鮮明な透過画像である、すき入れ(1)とをそれぞれ撮像することが可能となる。また、用紙(2)の搬送速度が3m/sで、すき入れ透過照明(12)の照度が比較的に高いときは、ラインカメラ(13)の露光時間を60μsとすることで、鮮明な長辺(3)及び短辺(4)と、鮮明なすき入れ(1)とをそれぞれ撮像することが可能となる。
【0080】
次に、S11について詳細に説明する。用紙(2)及びすき入れ(1)を個々に撮像するために、まず、S11−1として、用紙(2)の長辺(3a)及び短辺(4a、4b)を撮像するために、第一用紙検出センサ(8a)において用紙(2)を検出したときから、第二用紙検出センサ(8b)が用紙(2)を検出するまでの間、長辺反射照明(10)と左右短辺反射照明(11a、11b)をONとし、すき入れ透過照明(12)をOFFとする。ラインカメラ(13)においては、第一用紙検出センサ(8a)が用紙(2)を検出したときから、ラインカメラ(13)にて用紙(2)の撮像を開始する。以下、本発明において、各用紙検出センサ(8a、8b)が用紙(2)を検出したときとは、用紙(2)の有りを検出したときを指し、各用紙検出センサ(8a、8b)が用紙(2)を検出しないときとは、用紙(2)のなしを検出したときを指す。以下、説明を省略する。
【0081】
次に、S11−2では、すき入れ(1)を撮像するために、第二用紙検出センサ(8b)において用紙(2)を検出したときから、第一用紙検出センサ(8a)が用紙(2)を検出しなくなるまでの間、長辺反射照明(10)をOFFとし、左右短辺反射照明(11a、11b)のONを継続し、かつ、すき入れ透過照明(12)をONとする。
【0082】
次に、S11−3では、用紙(2)の長辺(3b)及び短辺(4a、4b)を撮像するために、第一用紙検出センサ(8a)が用紙(2)を検出しなくなったときから、第二用紙検出センサ(8b)が用紙(2)を検出しなくなるまでの間、長辺反射照明(10)をONとし、左右短辺反射照明(11a、11b)のONを継続し、かつ、すき入れ透過照明(10)をOFFとする。
【0083】
次に、S11−4では、第二用紙検出センサ(8b)が用紙(2)を検出しなくなったときから、第一用紙検出センサ(8a)が次の用紙(2)を検出するまでの間、各照明(10、11a、11b、12)をOFFとし、検査画像(P)の撮像を終了する。なお、次の用紙(2)を検出した際に、再度各照明がS11−1に述べたON又はOFFの状態となるのであれば、S11−3の後に、各照明は、S11−4のように、全て消灯しなくても、S11−3のON、OFFの状態を継続したままでもよい。
【0084】
前述した図2に示すように、搬送方向を(v1)とした場合においては、S11−1において、一方の長辺(3a)を撮像し、S11−3において、他方の長辺(3b)を撮像したが、搬送方向(v1)に対して用紙(2)の上下が逆となる場合においては、他方の長辺(3b)が一方の長辺(3a)よりも先に撮像位置に到達する。よって、その場合にはS11−1において他方の長辺(3b)を撮像し、S11−3において一方の長辺(3a)を撮像する。
【0085】
このように撮像した検査画像(P)については、紙端(L)及びすき入れ(1)がより鮮明に撮像された画像とするために、後述するS13において、検査画像(P)を補正する前に、S12として検査画像(P)に対してサブピクセル処理することが好ましい。サブピクセル処理とは、境界近傍の輝度勾配を微分することによって、境界を精度高く求めることが可能となる画像処理方法である。対象物の境界や位置を求めるとき、それらの検出(若しくは計測)精度は、2値化処理後の画像では1画素となるが、対象物の境界近傍の輝度勾配を利用することにより、1画素以下と高くすることができる。例えば、対象物の寸法計測では、境界近傍の輝度勾配を微分することによって、境界を精度高く求めることができる。
【0086】
ラインカメラ(13)により撮像された用紙(2)は、すき入れ検査装置(M)の用紙(2)の搬送誤差により、ラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)に対してθ1°スキューするとともに、用紙(2)の基準座標となるDコーナーの位置が、搬送方向(v1)にX1、搬送方向と直交する方向(v2)にY1それぞれずれる等、搬送状態にばらつきが生じる。
【0087】
図9は、用紙(2)の搬送誤差が発生した検査画像(P)の模式図である。図9においては、搬送方向と直交する方向(v2)、すなわちラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)の方向をX軸とし、用紙(2)の搬送方向(v1)をY軸として、用紙(2)の四隅をそれぞれA、B、C及びDコーナーとしている。図9においては、ラインカメラ(13)において撮像する際に、Dコーナーが(X1、Y1)ずれた位置で撮像された。さらに、用紙(2)は、長辺(3a)がθ1°だけスキューして撮像された。
【0088】
S13では、検査画像(P)に対して、撮像位置のずれ及び用紙(2)の搬送誤差を修正するために補正を行う。画像処理部(15)において、検査画像(P)を、あらかじめ設定した閾値で2値化処理して紙端(L)を検出し、紙端(L)から四隅の座標を検出する。次に、公知の方法によって、検出した四隅の座標から用紙(2)の紙端(L)を示す座標のうち少なくとも一つの辺を検出する。図9においては、一例として長辺(3a)を検出し、検出した長辺(3a)のDコーナー座標(X1、Y1)と、その搬送誤差であるスキュー(θ1°)とを公知の算出方法により算出する。次に、検出した長辺(3a)とラインカメラ(13)の撮像位置のずれを検出し、長辺(3a)とラインカメラ(13)の撮像位置とが合致するように、検査画像(P)を回転及び/又は移動する補正を行う。
【0089】
図9においては、この算出したDコーナーが(0、0)となり、基準となる長辺(3a)がX軸上となるように、検査画像(P)を回転及び/又は移動する補正を行う。補正方法としては、図9において検査画像(P)を回転及び/又は移動して補正を行ったが、座標の方を回転及び/又は移動することでも同様に補正を行うことは可能である。なお、図9に示す検査画像(P)においては、前述のとおり、ラインカメラ(13)において撮像する際に、Dコーナーが(X1、Y1)ずれた位置で撮像され、さらに、用紙(2)は、長辺(3a)がθ1°だけスキューして撮像された。よって、Dコーナーが(0、0)となり、θ1°がX軸上となるように、図9に示す検査画像(P)を(−X1、−Y1)移動し、−θ1°回転させる補正を行う。この検査画像(P)を移動及び回転させる値を本発明においては補正値とする。
【0090】
なお、すき入れ位置検査装置(M)の用紙(2)の搬送精度が高く、すき入れ位置検査装置(M)により搬送された用紙(2)の長辺(3a、3b)が、常にラインカメラ(13)の入力ライン(撮像位置)と略平行となることでθ1°が常に微小な角度となる場合は、検査画像(P)を回転しなくてもよい。また、すき入れ位置検査装置(M)の用紙(2)の搬送精度が高く、Dコーナー座標(X1、Y1)が略同じ値となる場合は、検査画像(P)を移動しなくてもよい。
【0091】
図10(a)は、補正後の検査画像(P)を示す模式図である。
【0092】
S14は、補正後の検査画像(P)を、あらかじめ設定された基準画像(Q)により、パターンマッチング(相関法)を行い、用紙(2)中の全てのすき入れ(1)の座標(X´、Y´)を算出する。
【0093】
図10は、パターンマッチングを示す模式図である。基準画像(Q)とは、図10(b)に示すパターンマッチングを行う場合の検査基準となる画像のことで、すき入れ(1)の画像において特徴点となる箇所である。なお、特徴点となる箇所とは、すき入れ(1)内において、コントラストが高い部分のことを指す。例えば、すき入れ(1)が人物像である場合、目、口及び肩等である。一方、特徴点が少ない部位とは、すき入れ(1)内において、コントラストが低い部分のことであり、ひたいの中央又はほおの中央等である。
【0094】
基準画像(Q)の選定に関しては、あらかじめ検査画像(P)内のすき入れ(1)の画像を調査して、最もばらつきの少ない1面を選定し、その1面又はその1面内におけるすき入れ(1)の特徴点を少なくとも含む箇所を基準画像(Q)として設定する必要がある。
【0095】
また、基準画像(Q)においては、すき入れ基準座標(u)をあらかじめ設定しておく。すき入れ基準座標(u)とは、すき入れ(1)の位置を表す任意の1点であり、図示した基準画像(Q)の重心の他にも、隅等の任意の一点とすることができる。
【0096】
補正後の用紙(2)の検査画像(P)と基準画像(Q)をパターンマッチングするためには、探索領域(W)を、すき入れ(1)が形成されている20面の全てに対して設定し、次に、基準画像(Q)が探索領域(W)内における、どの部分と最も類似度が高いかをパターンマッチングにより求める。なお、探索領域(W)とは、図10(c)に示すように、用紙(2)中におけるすき入れ(1)が存在する位置の範囲であり、あらかじめ用紙(2)内においてすき入れ(1)が形成されている箇所(例えば、20面あるならば20面分)におけるそれぞれの探索領域(W)(L1×L2)の領域を設定する必要がある。
【0097】
図11は、パターンマッチング後の検査画像(P)を示す模式図である。すき入れ(1)は、それぞれが座標(X´、Y´)を有する。なお、パターンマッチングで算出された、すき入れ(1)の座標(X´、Y´)は、各すき入れ(1)を特定することができる座標であれば特に限定されるものではなく、すき入れ(1)の重心又は隅等の任意の一点を座標とすることができる。パターンマッチングで算出された座標とは、基準画像(Q)を用いて、検査画像(P)の探索領域(W)内をパターンマッチングした後に、もっとも類似度が高い位置の座標を検出し、その座標位置を算出することである。
【0098】
なお、すき入れ(1)が階調模様ではなく、ドット又は画線等の単純な形状である場合には、前述したパターンマッチング(相関法)に限らず公知の画像処理方法により、すき入れ(1)の座標(X´、Y´)を算出することが可能であることはいうまでもない。
【0099】
S15では、紙端(L)とすき入れ(1)の距離を算出する。紙端(L)である長辺(3a)及び短辺(4a)と、すき入れ(1)との距離は、各すき入れ(1)の座標(X´、Y´)に分解能を乗算することで算出される。なお、分解能とは、撮像した検査画像(P)における1画素あたりが、用紙(2)においてどのくらいの寸法であるかを示す値である。高い精度で検査するには、分解能は0.2mm以下が望ましい。
【0100】
また、算出された、用紙(2)の長辺(3)方向における分解能は、ラインカメラ(13)のレンズの歪みにより精度が低下しているため、レンズの歪みを適宜補正することが望ましい。
【0101】
最後に、S16では、判定部(16)において、長辺(3a)及び短辺(4a)と、全てのすき入れ(1)との間の距離が、あらかじめ設定された許容範囲である距離とを比較し、その許容範囲内であるか否かを判定する。その合否判定を基に、すき入れ検査装置(M)の制御部(図示せず)に転送され、排紙部(図示せず)において、用紙(2)の自動選別が行われる。
【0102】
損紙が発生した場合には、すき入れ検査装置(M)を停止する構成、排紙部(図示せず)にマーキング装置(図示せず)を設置して排紙前の損紙にマーキングをする構成等としてもよい。
【0103】
なお、このような一連のステップによるすき入れ位置検査を同じ仕様の用紙(2)に対して継続して行う場合は、S10に戻らず、S11から継続して再度検査を行う。
【符号の説明】
【0104】
1 すき入れ
2 用紙
2a 基材
3、3a、3b 長辺
4、4a、4b 短辺
6 上流側コンベア
7 下流側コンベア
8a 第一用紙検出センサ
8b 第二用紙検出センサ
9 エンコーダ
10 長辺反射照明
11a 左短辺反射照明
11b 右短辺反射照明
12 すき入れ透過照明
13 ラインカメラ
14 照明制御部
15 画像処理部
16 判定部
M すき入れ検査装置
P、P´、P´´ 検査画像
Q 基準画像
L 紙端
W 探索領域
u すき入れ基準座標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すき入れが形成された用紙の一方の面へ可視光を照射する短辺反射照明及び長辺反射照明と、前記用紙の他方の面へ可視光を照射するすき入れ透過照明と、前記用紙を挟んで前記すき入れ透過照明と対向する位置にラインカメラとを少なくとも備えた検査装置を用いて、前記用紙の紙端から前記用紙に形成されたすき入れまでの位置を検査するためのすき入れ位置検査方法において、
前記用紙の紙端及びすき入れが前記ラインカメラの撮像位置を通過するタイミングに基づき、前記紙端のみ及び前記すき入れのみへ可視光を照射するために前記各照明を個別に点灯及び/又は消灯することで、前記用紙の検査画像を取得し、
前記検査画像から検出した前記用紙の紙端を示す座標のうち少なくとも一つの辺を検出し、前記検出した一つの辺と前記ラインカメラの撮像位置のずれを検出し、前記一つの辺と前記撮像位置とが合致するように前記検査画像を回転及び/又は移動する補正を行い、
前記補正後の検査画像とあらかじめ設定された基準画像とをパターンマッチングし、前記用紙内のすき入れ位置を示す座標を検出し、
前記用紙の紙端を示す座標から前記すき入れ位置を示す座標までの距離を算出し、
前記算出した前記用紙の紙端位置を示す座標から前記用紙のすき入れ位置を示す座標までの距離と、あらかじめ設定した前記用紙の紙端位置を示す座標から前記用紙内のすき入れ位置を示す座標までの距離の許容範囲とを比較し、前記許容範囲内か否かによって前記すき入れが形成された位置の合否判定を行うことを特徴とするすき入れ位置検査方法。
【請求項2】
前記用紙の紙端は、前記用紙の搬送方向と略平行の辺及び前記用紙の搬送方向と略直交する辺から成り、
前記ラインカメラが、前記用紙の搬送方向と略直交する辺を撮像している間は、前記短辺反射照明及び長辺反射照明が点灯し、かつ、前記すき入れ透過照明が消灯し、
前記ラインカメラが、前記用紙の搬送方向と略平行の辺及び前記用紙に形成されたすき入れとを撮像している間は、前記短辺反射照明及び前記すき入れ透過照明が点灯し、かつ、前記長辺反射照明が消灯することを特徴とする請求項1記載のすき入れ位置検査方法。
【請求項3】
前記補正前の前記検査画像に対してサブピクセル処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のすき入れ位置検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−57607(P2013−57607A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196600(P2011−196600)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】