説明

たて抗掘削機用方位検出装置及びそれを用いたたて抗掘削時の方位検出方法

【課題】本発明は、地球の自転角速度・重力を利用し、前記ドリルの旋回により生じる方位角誤差を除去し、抗掘削の方位精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明によるたて抗掘削機用方位検出装置及びそれを用いたたて抗掘削時の方位検出方法は、方位検出部(20)が検出する地球の自転角速度・重力を利用し、ドリル(2)の旋回により生じる方位角誤差を除去する構成と方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たて抗掘削機用方位検出装置及びそれを用いたたて抗掘削時の方位検出方法に関し、特に、方位検出部が検出する地球の自転角速度・重力を用いて、ドリルの旋回により生じる方位角誤差を除去し、たて抗掘削時に方位角を正しく検出するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のたて抗掘削機用方位検出機として、その構成を示す特許文献等を開示していないが、一般に、たて抗掘削機のドリルに装着された3軸角速度計を用い、この3軸角速度計から得られた角速度を積分してドリルの方位角を検出していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のたて抗掘削機用方位検出機は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、角速度を積分して方位角を検出する場合には、掘削時に印加される角速度のスケールファクタ誤差が蓄積されることにより、正しい方位角を検出することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によるたて抗掘削機用方位検出装置は、たて抗掘削機のドリルに設けられた筺体と、前記筺体内に設けられた3軸角速度計及び3軸加速度計とからなる方位検出部と、前記方位検出部からの出力信号を外部に送信するため前記筺体内又は筺体外に設けられた出力信号送信部と、からなり、前記筺体内には、演算部及び記憶部が設けられ、前記3軸加速度計により検出される加速度から前記演算部を用いて前記ドリルの初期姿勢角を算出し、前記3軸角速度計で検出される角速度が前記演算部によって水平成分と垂直成分に分解され、前記ドリルが静止時に地球の自転角速度からなる角速度を用いて前記演算部により真方位角を検出するようにしたたて抗掘削機用方位検出装置において、前記方位検出部が検出する地球の自転角速度・重力を利用し、前記ドリルの旋回により生じる方位角誤差を除去する構成であり、また、本発明によるたて抗掘削時の方位検出方法は、たて抗掘削機のドリルに設けられた筺体と、前記筺体内に設けられた3軸角速度計及び3軸加速度計とからなる方位検出部と、前記方位検出部からの出力信号を外部に送信するため前記筺体内又は筺体外に設けられた出力信号送信部と、からなり、前記筺体内には、演算部及び記憶部が設けられ、前記3軸加速度計により検出される加速度から前記演算部を用いて前記ドリルの初期姿勢角を算出し、前記3軸角速度計で検出される角速度が前記演算部によって水平成分と垂直成分に分解され、前記ドリルが静止時に地球の自転角速度からなる角速度を用いて前記演算部により真方位角を検出するようにしたたて抗掘削機用方位検出方法において、前記方位検出部が検出する地球の自転角速度・重力を利用し、前記ドリルの旋回により生じる方位角誤差を除去する方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によるたて抗掘削機用方位検出装置及びそれを用いたたて抗掘削時の方位検出方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、方位検出部が検出する地球の自転角速度・重力を用いて、ドリルの旋回により生じる方位角誤差を除去し、たて抗掘削時に方位角を正しく検出することができるため、ドリルによるたて抗の正しい掘削を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、方位検出部が検出する地球の自転角速度・重力を用いて、ドリルの旋回により生じる方位角誤差を除去し、たて抗掘削時に方位角を正しく検出するようにしたたて抗掘削機用方位検出装置及びそれを用いたたて抗掘削時の方位検出方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0007】
以下、図面と共に本発明によるたて抗掘削機用方位検出装置及びそれを用いたたて抗掘削時の方位検出方法の好適な実施の形態について説明する。
図2において符号1で示されるものはドリル2を有するたて抗掘削機であり、このドリル2には、先端掘削部3と上部掘削スクリュ4とが設けられている。
前記ドリル2の先端掘削部3と上部掘削スクリュ4との間の位置には、方位検出装置5が取付けられ、ドリル2と共に一体回転及び上下動可能に構成されている。
【0008】
前記方位検出装置5は、図1で示されるように構成されている。すなわち、前記方位検出装置5の筺体10内には、電源11が供給された3軸角速度計12、3軸加速度計13、演算部14及び記憶部15が内設されており、少なくとも、この筺体10、3軸角速度計12及び3軸加速度計13によって方位検出部20が構成されている。
【0009】
前記筺体10は、図1では正方形の箱型に形成されているが、これは模式的に示しているもので、ドリル2の外周に取付けやすくするために、輪状に構成する場合もある。
前記方位検出部20からの方位角及び姿勢角等を示す出力信号20aは、出力信号送信部21を介して外部の前記たて抗掘削機1の制御装置23(図3に示す)に入力するように構成され、前記出力信号送信部21は、スリップリングを用いた機械式、又は、無線式等が採用されると共に前記筺体10内又は筺体10の外部へ設けられている。
【0010】
前記方位検出装置5は、図3のブロック図にて示されるように、方位検出部20及び出力信号送信部21とからなり、前記方位検出部20からの出力信号20aは信号処理部22にて、波形処理又はA/D変換等の処理を受けた後、たて抗掘削機1の制御装置23に送信されるように構成されている。
【0011】
次に、前述の構成において本発明による方位検出装置を用いて、たて抗掘削時の方位検出を行う方法について説明する。
まず、図2のように、たて抗掘削機1のドリル2の先端掘削部3と上部掘削スクリュ4との間に方位検出装置5を取付ける。
【0012】
(初期姿勢角・方位角算出)
前記方位検出装置5の3軸加速度計13により検出される加速度によりドリル2の初期姿勢角が算出され、この姿勢角より3軸角速度計12で検出される角速度が水平成分及び垂直成分に分解される。
前述のように、たて抗掘削機1の非駆動状態においては、静止状態であるため、この静止状態で検出される角速度は地球の自転角速度であるため、この時に印加された角速度より前記ドリル2の真方位角が検出される(通常は、10分程度を要する)。
【0013】
(掘削開始及び方位角の計測)
次に、前述の状態において、前記ドリル2を回転し、掘削方向Aにドリル2を降下させると、ドリル2は旋回方向Bへ旋回しつつ地中へ降下する。
この時、印加される角速度を3軸角速度計12で検出し、検出された角速度信号を積分することにより、ドリル2の姿勢角及び方位角を計測する。
【0014】
前述の場合、検出される角速度には誤差が含まれ、この誤差は積分により蓄積され、この誤差の内、スケールファクタ成分についてはドリル2が旋回を続けることから大きくなる。そのため、前記ドリル2の旋回中も、地球の自転角速度・重力を利用して、旋回により生じる方位角誤差を除去し、たて抗掘削時に方位角を正しく検出する必要がある。
【0015】
(地球の自転角速度)
ここで、地球は、周知のように、15.04(゜/h)の角速度で自転しているが、この自転角速度はドリル2の各軸に対して次のように印加されている。
・N軸:15.04×cos(緯度)(゜/h)
・E軸:0(゜/h)
・V軸:1504×sin(緯度)(゜/h)
(N軸:水平北向き、E:水平東向き、V:鉛直方向)
【0016】
前記方位検出部20が検出する角速度の積分により、前述のように、装置すなわち前記ドリル2の姿勢・方位角を算出する場合、本発明においては、前記地球の自転成分を前記ドリル2のボディー軸に変換し、減算する必要があるが、そのためには、ドリル2の姿勢・方位が正しく算出されている必要がある。
【0017】
(ドリル2の旋回中の方位角の算出)
逆に、装置のドリル2の方位角の演算結果に誤差があると、地球の自転角速度を正しく変換できないために、姿勢角誤差となり、その結果、速度誤差が増大する。旋回中もドリル2は移動していないため、演算の結果出力される速度は、全て速度誤差と考えて良く、この誤差を観測することにより、算出結果の方位角に含まれる誤差を推定することが可能である。
算出される速度誤差には、加速度計のバイアス誤差、SF誤差、ジャイロのバイアス誤差、SF誤差に起因するものも含まれるため、この速度誤差から方位角誤差を推定する方式の一つとしては、カルマンフィルタを用いることができる。
【0018】
(方位検出部20(ジャイロ)のSF誤差及びバイアス誤差の推定)
また、ドリル2が水平の場合、旋回中ドリル2のX軸、Y軸に印加される角速度は振幅15.04×cos(緯度)(゜/h)のsin波となるため、ジャイロのSF誤差、バイアス誤差を推定し、補正する。その補正式の例を以下に示す。
SF誤差=(検出角速度最大値−検出角速度最小値)/(2×15.04×cos(緯度))
バイアス誤差=(検出角速度最大値+検出角速度最小値)/2
従って、前述の段落[0017]及び[0018]の処理を用いて旋回中のドリル2の姿勢・方位角を検出することにより、その再現性が地球の自転に伴う誤差以上の誤差を持つ方法検出部20でも、正確な方位の算出ができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、たて抗掘削だけでなく、横穴の掘削にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による方位検出装置を示す構成図である。
【図2】図1の方位検出装置を取付けたたて抗掘削機のドリルを示す構成図である。
【図3】本発明における検出信号の処理を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0021】
1 たて抗掘削機
2 ドリル
5 方位検出装置
10 筺体
12 3軸角速度計
13 3軸加速度計
14 演算部
15 記憶部
20 方位検出部
20a 出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて抗掘削機(1)のドリル(2)に設けられた筺体(10)と、前記筺体(10)内に設けられた3軸角速度計(12)及び3軸加速度計(13)とからなる方位検出部(20)と、前記方位検出部(20)からの出力信号(20a)を外部に送信するため前記筺体(10)内又は筺体(10)外に設けられた出力信号送信部(21)と、からなり、
前記筺体(10)内には、演算部(14)及び記憶部(15)が設けられ、前記3軸加速度計(13)により検出される加速度から前記演算部(14)を用いて前記ドリル(2)の初期姿勢角を算出し、前記3軸角速度計(12)で検出される角速度が前記演算部(14)によって水平成分と垂直成分に分解され、前記ドリル(2)が静止時に地球の自転角速度からなる角速度を用いて前記演算部(14)により真方位角を検出するようにしたたて抗掘削機用方位検出装置において、
前記方位検出部(20)が検出する地球の自転角速度・重力を利用し、前記ドリル(2)の旋回により生じる方位角誤差を除去することを特徴とするたて抗掘削機用方位検出装置。
【請求項2】
たて抗掘削機(1)のドリル(2)に設けられた筺体(10)と、前記筺体(10)内に設けられた3軸角速度計(12)及び3軸加速度計(13)とからなる方位検出部(20)と、前記方位検出部(20)からの出力信号(20a)を外部に送信するため前記筺体(10)内又は筺体(10)外に設けられた出力信号送信部(21)と、からなり、
前記筺体(10)内には、演算部(14)及び記憶部(15)が設けられ、前記3軸加速度計(13)により検出される加速度から前記演算部(14)を用いて前記ドリル(2)の初期姿勢角を算出し、前記3軸角速度計(12)で検出される角速度が前記演算部(14)によって水平成分と垂直成分に分解され、前記ドリル(2)が静止時に地球の自転角速度からなる角速度を用いて前記演算部(14)により真方位角を検出するようにしたたて抗掘削機用方位検出方法において、
前記方位検出部(20)が検出する地球の自転角速度・重力を利用し、前記ドリル(2)の旋回により生じる方位角誤差を除去することを特徴とするたて抗掘削時の方位検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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