説明

つば出し管用管継手

【課題】管端部にフレア加工等で成形したつば部の間にガスケット等のシール材を挟み込み、つば部を両側から挟み込みボルト締結できるつば出し管用管継手の提供を目的とし、本管の運搬と管継手の運搬を別々に取り扱うことができるので作業負荷の軽減が可能である。
【解決手段】管の端部がつば出し形状になっているつば出し管の管継手であって、第1の半円形状フランジと第2の半円形状フランジとを一端にて回動自在に連結してあり、第1の半円形状フランジと第2半円形状フランジとは他端側にて相互にボルト締結できるものであり、第1及び第2の半円形状フランジはそれぞれ対向するプレートを有し、当該プレートの内周側に管端つば部を呑み込むためのつば呑み込み部と、呑み込んだ管端つば部の外周側に設けた締結孔で両側からボルト締結できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管端部にフレア加工等で成形したつば部の間にガスケット等のシール材を挟み込み、つば部を両側から挟み込みボルト締結するつば出し管用管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
給水、給湯、排水、冷温水の配管及びその他の配管において、図11に示すように金属パイプの端部にフレア加工にてつば部1a、1bを形成し、このつば部の間にガスケット2を配設し、いわゆるルーズフランジ100a、100bにて連結配管することが行われている。
パイプ径は20mm程度のものから500mmと非常に大きなものまであり、管の長さも3m程度のものから10mと非常に長いものや曲げ加工してあるものもある。
このような金属パイプにつば出し加工をすると、その後でルーズフランジを管に通すことができなくなることから金属パイプにルーズフランジを通し、その後でつば出し加工をすることになるが、フレア加工の前段取りが必要となるのみならずパイプだけでも重量が重いのに、ルーズフランジを取り付けるとさらに重くなり配管作業が大変であった。
【0003】
特開2005−83437号公開公報には分割フランジを開示するが、可撓性を有する管本体に分割フランジを取り付け、この分割フランジと他の管本体のフランジとをボルト締結するものであり、つば出し管のつばの間にガスケットを挟み込み、一対のつばを両側からボルト締結できるものではない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−83437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一方の管端つば部と他方の管端つば部とをシール材と挟み込むように突き合せた後に本管に取り付け締結することができる管継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るつば出し管用管継手は、管の端部がつば出し形状になっているつば出し管の管継手であって、第1の半円形状フランジと第2の半円形状フランジとを一端にて回動自在に連結してあり、第1の半円形状フランジと第2半円形状フランジとは他端側にて相互にボルト締結できるものであり、第1及び第2の半円形状フランジはそれぞれ対向するプレートを有し、当該プレートの内周側に管端つば部を呑み込むためのつば呑み込み部と、呑み込んだ管端つば部の外周側に設けた締結孔で両側からボルト締結できることを特徴とする。
【0007】
ここで、第1の半円形状フランジと第2の半円形状フランジとは配管連結する本管と本管とのつば部をガスケットを挟み突き合せた状態で配管の外側から挟み込むように装着するものである。
従って本発明においては、半円形状フランジとは内周側が半円状になっていて、第1の半円形状フランジと第2の半円形状フランジとの両方の一端をボルト・ナット等で回動自在に連絡してあり、第1の半円形状フランジと第2の半円形状の他端側を開いて本管のつば部の突き合せ部に臨ませ、この他端側を閉じて相互にボルト締結することで2本の本管を配管連結できるようにした。
よって、第1及び第2の半円形状フランジは内周側に本管のつばを呑み込ませるためにボルト孔を有するプレートを対向させ、その内周側につば呑み込み部を形成したものである。
【0008】
本発明においては、本管のつばを内周側に呑み込ませやすくするためには、第1及び第2の半円形状フランジのそれぞれ対向するプレートは少なくとも2枚の半円形状プレートを対向させるとともにプレートの間であって、少なくともボルト締結部に弾性部材又は過締め付け防止具を配設し、内周側につば呑み込み部を形成するのが好ましい。
ここで、弾性部材はフランジ内周側につば呑み込み部を形成し、ボルト締結により弾性部材が弾性圧縮するものをいう。
過締め付け防止具は、フランジ内周側につば呑み込み部を形成し、つば呑み込み部に本管のつば部をガスケットとともに挟み込み、ボルトで締結する際にボルトを締め付け過ぎて、ガスケットが必要以上につぶれるのを防止するために半円形状プレートの間に設けた金属製のスペーサをいう。
対向する半円形状プレートはプレス成形にて製作することもできる、板厚によっては2枚の半円形状プレートを対向させる場合のみならず4枚の半円形状プレートを重ね対向させてもよい。
また、フランジを軽量化するには、第1及び第2半円形状フランジを樹脂材料で成形し、対向するプレートのみが金属製であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
従来のルーズフランジは、本管の端部につば出し加工を施す前にそれぞれ本管に片方ずつフランジを通さなければならないので、フランジにボルトを予めセットしておくことは出来なかったのに対して、本発明に係る管継手は予めボルトをフランジにセットしておくことも可能であり、第1の半円形状フランジと第2の半円形状フランジの開放側のボルト1本を取り外すだけで、本管の突き合せつば部の外周側から取り付けることができる。
【0010】
また、従来のルーズフランジは、つば加工の前に管に通すために本管をルーズフランジと一所に運搬しなければならなかったために比較的大きい径の配管では1人で運搬が出来ない程に重くなったのに対して、本発明においては、本管の運搬とフランジの運搬を別々に取り扱うことができるので作業負荷の軽減が可能である。
さらには、本管と本管との間にガスケットを挟んで後からフランジを取り付けるので、ガスケットや本管のつばの状態の確認作業も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るつば出し管用管継手(以下管継手という)10の実施例を図1に示す。
図は管継手10の斜視図で、紙面奥から手前に見たA−A線断面図を図2(a)に、B−B線断面図を図2(b)にそれぞれ示す。
管継手10は第1の半円形状フランジ11と第2の半円形状フランジ12との両方の一端に設けた回動連結孔15を用いてボルト21とナット22にて回動自在に連結してある。
なお、管継手10を用いて本管と本管とを配管連結する際には、この回動連結孔15にセットしたボルト・ナットも強く締め付けることになるが、第1の半円形状フランジ11と第2の半円形状フランジ12とをセットした段階ではボルト21とナット22とは緩めてあり、第1と第2の半円形状フランジが相互に回動自在になっている。
第1と第2の半円形状フランジの開放端部には連結孔16a、16bをそれぞれ有し、この連結孔16aと16bとを重ねるように後述する本管のつば部に装着し、ボルト・ナットで締結できるようになっている。
【0012】
従って、第1の半円形状フランジ11と第2の半円形状フランジ12とはそれぞれ内周側に本管のつば部を呑み込むためのつば呑み込み部20を形成してある。
第1及び第2の半円形状フランジにおいて、単に2枚の半円形状の板材を重ね合せただけではこのつば呑み込み部を形成することができないために、本発明においては、図3に第1の半円形状フランジ11の分解図を示すように、上側プレート11aと下側プレート11bの2枚のプレートを対向させ、その間にスペーサーとしての弾性部材13を挟み込んである。
なお、上側プレート11aと下側プレート11bと区別して表現したのは説明の便宜上であり、上側と下側とに区分する必要はない。
弾性部材13は、本管のつば部を配管結合する前にはボルト・ナットを緩めてあることで上側プレート11aと下側プレート11bとの間であって内周側に隙間を形成して、本管のつば部を呑み込みやすくなっていて、管継手10を本管の配管連結するつば部に装着し、締結孔17a、17bにセットしてあったボルト・ナットを締め付ける場合あるいは連結孔16a、16bに挿通したボルト・ナットを締め付ける場合に、この弾性部材13は、締め付け力に大きな反発力が生じないスポンジ状の圧縮しやすい弾性部材となっている。
なお、この弾性部材13は、管継手10に予めボルト・ナットをセットして置く際につば呑み込み部20を形成するのが目的であり、ボルト・ナットの締め付けにより圧縮するものであれば材質や形状を問わない。
本実施例では、ボルト・ナットを予めセットして置く状態でスペーサーとしての弾性部材が外れないように上側プレート11aと下側プレート11bとに設けてある締結孔17a、17bや連結孔16a、16bの位置に合せて、ボルト挿入孔18a、18b、18cを設けた例となっている。
【0013】
第1の半円形状フランジ11と第2の半円形状フランジ12との回動連結孔15側と連結孔16a、16b側とは相互に重ね合せ代が必要であることから、図3に示した例では、上側プレート11aにプレス加工等により曲げ部19bを形成し、重ね代19aを設けてある。
なお、第2の半円形状フランジにも同様の構成になっているが、製造しやすいように半円形状プレート12a、12bが第1の半円形状フランジ11と対称に配置してある。
【0014】
管継手10の運搬時には、図1で説明すると、回動連結孔15に緩くボルト・ナットをセットし、各締結孔17a、17bにもボルト・ナットをセットし、開閉側の連結孔16a、16bを重ね合せてボルト・ナットを挿入仮止めしておく。
一方、端部にフレア加工等でつば出しを終えた本管は管継手10を別に搬送する。
現地で、配管する本管と本管とのつば同志を突き合せ、つばの間にシール材としてガスケットを挟み込み、その状態で、別に搬送した管継手10の連結孔16a、16bにセットしてあってボルト・ナット(21,22)を一旦、取り外して連結孔側を半割状に広げる。
次に、突き合せたつばの外周側から管継手10のつば呑み込み部に本管のつばを呑み込ませるように装着する。
本管のつばに管継手10を装着した状態で、一旦、取り外した連結孔16a、16bにボルト21を通し、ナット22で締め付ける。
他のボルト・ナットも締め付け、全周に配設したボルト・ナットを均等に締め付ける。
その時の、連結孔16a、16bの部分を図4に示し、締結孔17a、17bの部分を図5に示す。
一方の本管1のつば1aと他方の本管1のつば1bとの間にガスケット2を挟み込み、つばの両側から対向する半円形状プレート(11a,11b)、(12a,12b)をボルト・ナット(21,22)にて締め付けた状態になっている。
この時スペーサーとして用いた弾性部材13は圧縮されている。
また、ボルトとナットの締結作用において、ナットの廻り止めの突起や段差等を半円形状フランジに設けておくと、ボルト側の締め付け作用が簡単になる。
配管にステンレスパイプ等を使用する場合に、配管連結部に電気的絶縁処理が必要な場合がある。
そのような場合には、半円形状プレートに絶縁性塗装を施したり、ボルトの挿入部に絶縁パイプを取り付けるとよい。
【0015】
第2の実施例を図6にて説明する。
この実施例では、第1の半円形状フランジ11と第2の半円形状フランジ12の本体部を樹脂材料で製作し、つば部を締め付ける上側プレート11a、12aと上側プレート11b、12bを強度の強い金属製で製作した例である。
この場合には図6(b)に示すように樹脂製のフランジ本体部分につば呑み込む部20を形成し、上側プレート11aと下側プレート11bとは図6(c)に示すように上下分離していて、ボルト・ナットによる締め代を設けてある。
【0016】
図7に第3の実施例を示す。
第1の実施例では、第1の半円形状フランジと第2の半円形状フランジとの重ね代部をプレス加工等にて曲げ加工を施したタイプであるのに対して、この第3の実施例は、対向配置した上側プレート11aと下側プレート11bとを1孔分だけずらしてあり、これに対応して第2の半円形状フランジの上側プレート12aと下側プレート12bとを1孔分だけずらして対向配置したものである。
このタイプは、プレートに曲げ加工が不要になり、図7(c)を見ると分かりやすいように、ずらして配置した第1の半円形状フランジ11の上側プレート11aの連結孔16aと、第2の半円形状フランジ12の下側プレート12bの連結孔16bを重ね合せてボルト連結する。
なお、第1及び第2の半円形状フランジは均等に半分にする必要はなく、本実施例では第2の方が大きい。
【0017】
図8に第4の実施例を示す。
このタイプは、対向配置するプレートの枚数を4枚にした例で第1の半円形状フランジ11をプレート11a、11b、11c、11dを交互に1孔分ずらして配置し、これに対応させて第2の半円形状フランジ12のプレート12a、12b、12c、12dを配置した例である。
このタイプは1枚のプレートの厚みを薄くすることができ、プレス等で打ち抜き加工しやすい。
図8に示したタイプは1枚のプレートの厚みを薄くできる点に特徴があるが、内周側に本管のつば部を挟み込み、外周側でボルト締結する際に締め付け力が強過ぎると半円形状プレートの外周側に変形が生じる恐れがある。
また、対向する2本の本管のつば部とつば部との間に挟み込んだガスケットの種類によっては過剰に圧縮され、つぶれてしまう恐れが生じる。
このような場合には、先の実施例でつば呑み込み部形成のために用いた弾性部材の替りに剛性のある例えば金属製の過締め付け防止具(スペーサー)を設けたのが図9に示すタイプである。
左右の各半円形状フランジを(11a,11b,11c,11d)と(12a,12b,12c,12d)との1孔ずつ交互にずらした4枚重ねにし、内側の対向する2枚のプレートの間であってボルト締結する外周側に過締め付け防止具13aを設けてある。
本実施例では、半円形状プレート11cと12bとに過締め付け防止具13aを位置決めするためのガイド孔13bを設けた例になっている。
過締め付け防止具13aを半円形状プレートに溶接付けしてもよいが、本実施例はプレス加工にて締結孔と同時に打ち抜くことができる。
図9に示した管継手のB視図を図10に示す。
過締め付け防止具13aによりつば呑み込み部20が形成されるが、図10に示した状態での隙間は本管のつば部とつば部との間にガスケットを挟み込んだ状態よりも小さく設定してあり、本管同士を連結する際にはつば呑み込み部20の隙間を広げるようにしてつば部を呑み込みボルト締結し、所定の締め付け力に達するとプレート間に過締め付け防止具が挟持接触し、それ以上にガスケットが締め付けられるのを防止する。
なお、弾性部材とこの過締め付け防止具の両方を用いると弾性部材でつば呑み込み部を大きく設定して、過締め付け防止具にて過剰の締め付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による管継手の斜視図を示す。
【図2】管継手のA−A線断面図及びB−B線断面を示す。
【図3】管継手を構成する半円形状フランジの分解図を示す。
【図4】本管のつば部を配管連結したときの連結部を示す。
【図5】本管のつば部を配管連結したときの締結部を示す。
【図6】管継手の他の実施例を示す。
【図7】第3の実施例を示す。
【図8】第4の実施例を示す。
【図9】半円形状を4枚のプレートにて製作し、過締め付け防止具を設けた例を示す。
【図10】B視図を示す。
【図11】従来の継手構造例を示す。
【符号の説明】
【0019】
1a,1b つば部
2 ガスケット
10 管継手
11 第1の半円形状フランジ
12 第2の半円形状フランジ
13 弾性部材(スペーサー)
14 弾性材(スペーサー)
15 回動連結孔
16a,16b 連結孔
20 つば呑み込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の端部がつば出し形状になっているつば出し管の管継手であって、
第1の半円形状フランジと第2の半円形状フランジとを一端にて回動自在に連結してあり、第1の半円形状フランジと第2半円形状フランジとは他端側にて相互にボルト締結できるものであり、
第1及び第2の半円形状フランジはそれぞれ対向するプレートを有し、当該プレートの内周側に管端つば部を呑み込むためのつば呑み込み部と、呑み込んだ管端つば部の外周側に設けた締結孔で両側からボルト締結できることを特徴とするつば出し管用管継手。
【請求項2】
第1及び第2の半円形状フランジのそれぞれ対向するプレートは少なくとも2枚の半円形状プレートを対向させるとともにプレートの間であって、少なくともボルト締結部に弾性部材又は過締め付け防止具を配設し、内周側につば呑み込み部を形成したものであることを特徴とする請求項1記載のつば出し管用管継手。
【請求項3】
第1及び第2半円形状フランジを樹脂材料で成形し、対向するプレートのみが金属製であることを特徴とする請求項1記載のつば出し管用管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−228892(P2009−228892A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126520(P2008−126520)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【特許番号】特許第4198189号(P4198189)
【特許公報発行日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(391033724)シーケー金属株式会社 (32)
【Fターム(参考)】