説明

つり革

【課題】バッテリを必要としない電気的な表示手段を備えたつり革を提供する。
【解決手段】発電部2からベルト部3を引き出して表示部4を取り付け、ベルト部3の運動を発電部2が電力に変換して表示部4を駆動し、各種情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な表示手段(ディスプレイ)を備えて電車やバスの乗客に広告などの情報を提供するつり革に関する。
【背景技術】
【0002】
つり革を車内広告媒体として利用する場合、中吊ポスターに比べつり革の数が圧倒的に多いので広告内容を変更する際、ポスターの入れ替えに多大な労力と時間を要する。そのため特許文献1には、つり革にディスプレイを取り付けて無線配信された広告を表示する情報表示システムが提案されている。この情報表示システムは、図6に示すように、つり革表示器5をつり革のベルト部51に固定し、つり革表示器5にバッテリ52を備え、バッテリ52の電力でつり革表示器5を駆動する。つり革表示器5の前面には、広告情報Daを電気的に表示するためのディスプレイ53と、外部装置と無線によるデータ通信を行うための通信部54とが配置されている。
【0003】
上記情報表示システムは、通信部54が無線によって取得した広告情報Daをつり革のディスプレイ53に電気的に表示するので、従来のようにつり革のポスターを人手で入れ替える手間がなくなる。しかしながらディスプレイ53の駆動電源をバッテリ52から得ているため、バッテリ切れが発生すると表示ができなくなる。そのためバッテリ切れにならないよう、定期的にバッテリ交換する必要が生じ、そのために多くの手間暇が掛かり、電子化の効果が半減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は以上のような点であり、本発明は、バッテリを必要としない電気的な表示手段を備えたつり革を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明は、ベルト部の運動を発電源とする発電部と、発電部の発電電力を駆動電源とする表示部とを備えて乗客への情報提供媒体としたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ベルト部の運動を発電源とする発電部と、発電部の発電電力を駆動電源とする表示部を備えるのでバッテリなしに表示部を駆動できる。そのためバッテリ交換の必要がなくなり、バッテリ交換に要する手間暇を削減し、電子化の効果を大いに発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を実施したつり革の正面図である。
【図2】表示部3の吊り下げ位置の変形例である。
【図3】発電部2の機構図の一例である。
【図4】発電部2の機構図その他の例である。
【図5】発電部2と表示部3のブロック図である。
【図6】つり革表示器の従来例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1に、本発明を実施したつり革の正面図を示す。
つり革1は、発電部2からベルト部3を引き出して表示部4を取り付け、ベルト部3の運動を発電部2が電力に変換して表示部4を駆動し、各種情報を表示する。
【0011】
表示部4は、図2に示すように、つり革1に一体に取り付けるのではなく、つり革1とつり革1の間に吊り下げてもよい。これにより、乗客の目線の先に表示部4が来るようにして表示データを見やすくする。表示部4は、例えば液晶ディスプレイのほかプラズマディスプレイ、有機ELまたは電子ペーパーなどで、種類は問わない。
【0012】
図3に、発電部2の機構図の一例を示す。この発電部2はベルト部3の運動を回転運動に変えて発電するもので、ドラムDの同軸に左右の原動ギアG1、G2を配置し、原動ギアG1に発電機Eの入力ギアUを歯合する。また、原動ギアG1には伝動ギアT1を歯合し、伝動ギアT1と軸が一体の伝動ギアT2に方向変換ギアVを間に挟んで原動ギアG2を歯合する。ドラムDにはぜんまいばねSを内蔵し、ドラムDの外周にベルト部3を巻き付ける。原動ギアG1、G2の内周には互いに逆方向のラチェット歯aを形成し、ドラムDと一体の左右のアームA1、A2の先端に互いに逆方向の左右一対の爪P1、P2を回転自在にピン結合する。
【0013】
以上のような構成で、ベルト部3を引っ張るとドラムDが回転し、一方の爪P1は遠心力で外側に倒れ、原動ギアG1のラチェット歯aに食い込んで原動ギアG1がドラムDと一体に図のA矢方向に回転する。他方の爪P2は遠心力で内側に倒れ、原動ギアG2のラチェット歯aの傾斜面を滑って歯合せず空回りする。
【0014】
ベルト部3を緩めるとぜんまいばねSの復元力でドラムDが反対方向に回転し、一方の爪P1は遠心力で内側に倒れ、原動ギアG1のラチェット歯aの傾斜面を滑って歯合せず空回りする。他方の爪P2は遠心力で外側に倒れ、原動ギアG2のラチェット歯aに食い込んで原動ギアG2がドラムDと一体に図のB矢方向に回転する。
【0015】
原動ギアG2の回転は方向変換ギアVを介して伝動ギアT2に伝わり、伝動ギアT2の回転は軸が一体の伝動ギアT1に伝わる。伝動ギアT1の回転は原動ギアG1に伝わり、原動ギアG1の回転を図のA矢方向に付勢する。これにより原動ギアG1は常時一方向に回転する構成になる。
【0016】
原動ギアG1の一方向の回転は入力ギアUを介して発電機Eに伝わり、発電機Eが発電する。この発電部2はドラムDの一方向の回転だけでなく、逆方向の回転も一方向に変換して原動ギアG1に伝達するので入力ギアUのトルクが増し、発電機Eの発電効率が向上する。なお、発電機Eの発電量を表示部4に表示することで乗客のベルト部3を引っ張る力を競うアミューズメントなどに利用してもよい。
【0017】
図4に、発電部2の機構図のその他の例を示す。この発電部2はコイルに磁石を出し入れすると誘導電流が流れる原理を応用したもので、ドラムDの同軸に原動ギアXを一体に取り付け、原動ギアXに増速ギアYを歯合する。ドラムDにはぜんまいばねSを内蔵し、ドラムDの外周にベルト部3を巻き付ける。増速ギアYの軸にはレバーLを一体に取り付け、レバーLの先端にロッドRの一端を回転自在にピン結合し、ロッドRの他端を磁石部Mの下端部に回転自在にピン結合する。磁石部Mの外周はコイルCで取り囲む。
【0018】
磁石部Mは、軸M1を中心に同心上にスペーサM2で一定の間隔を空けて近接配置した多数の環状磁石M3を串刺し状に取り付け、環状磁石M3は隣接する磁石の極性S、Nが交互に異なるように配置する。
【0019】
以上のような構成で、ベルト部3を引っ張るとドラムDが回転し、原動ギアXがドラムDと一体に図のA矢方向に回転する。原動ギアXの回転は増速ギアYに伝わり、増速ギアYが回転するとレバーLが円運動し、ロッドRに回転自在に連結した磁石部Mが上下の往復運動を繰り返す。
【0020】
ベルト部3を緩めるとぜんまいばねSの復元力でドラムDが反対方向に回転し、原動ギアXがドラムDと一体に図のB矢方向に回転する。原動ギアXの回転は増速ギアYに伝わり、増速ギアYが回転するとレバーLが逆方向に円運動し、ロッドRに回転自在に連結した磁石部Mが同様に上下の往復運動を繰り返す。磁石部MがコイルC内を往復運動するとコイルCに誘導電流が流れ、発電部2が発電する。以上は発電機構の一例であって、この他、圧電素子や絶縁材料を使って振動発電するものなどでもよく、これにより本発明の発電機構を限定するものでない。
【0021】
図5に、発電部2と表示部4のブロック図を示す。
発電部2は、発電電流を整流回路21で整流していったん2次電池22に充電し、それを表示部4に供給する。
表示部4は、CPU40がROM41に格納した制御プログラムをRAM42にロードして実行し、SDカードやCFカードなどの着脱可能な固体メモリ43から読み出した表示データをドライバ44を介してディスプレイ45に表示する。表示データは固体メモリ43自体を交換して入れ替えてもよく、固体メモリ43はそのままで中身を受信機46が無線受信して入れ替えてもよい。
【0022】
また、セレクトボタン47を接続して外縁部の上下左右ボタンでカーソル移動、真ん中の決定ボタンでメニュー選択し、乗客の好みに応じて表示データを切換えることができるようにしてもよい。
【0023】
また、ジャイロセンサ48を内蔵してベルト部3の方向角度を測定し、表示部4に表示したゲームの3次元コントローラとして使用できるようにしてもよい。
【0024】
また、本出願人が既に製造・販売している携帯電話感受装置49を内蔵して携帯電話の電波をキャッチし、携帯電話使用者の近傍に吊り下げたつり革1の表示部4に警告メッセージを表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 つり革
2 発電部
21 整流回路
22 2次電池
3 ベルト部
4 表示部
40 CPU
41 ROM
42 RAM
43 メモリカード
44 ドライバ
45 ディスプレイ
46 受信機
47 セレクトボタン
48 ジャイロセンサ
49 携帯電話感受装置
5 つり革表示器
51 ベルト部
52 バッテリ
53 ディスプレイ
54 通信部
A アーム
C コイル
D ドラム
Da 広告情報
E 発電機
G 原動ギア
L レバー
M 磁石部
M1 軸
M2 スペーサ
M3 環状磁石
P 爪
R ロッド
S ぜんまいばね
T 伝動ギア
U 入力ギア
V 方向変換ギア
X 原動ギア
Y 増速ギア
a ラチェット歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト部の運動を発電源とする発電部と、
発電部の発電電力を駆動電源とする表示部と、
を備えて乗客への情報提供媒体としたことを特徴とするつり革。
【請求項2】
前記表示部をつり革とつり革の間に吊り下げて乗客の目線の先に来るようにしたことを特徴とする請求項1記載のつり革。
【請求項3】
前記発電部の発電量を表示部に表示したことを特徴とする請求項1記載のつり革。
【請求項4】
受信回路を備えて無線配信されたデータで前記表示部に表示するデータを入れ替えることを特徴とする請求項3記載のつり革。
【請求項5】
固体メモリを交換して前記表示部に表示するデータを入れ替えることを特徴とする請求項1記載のつり革。
【請求項6】
セレクトボタンを備えて前記表示部に表示するデータを選択可能にしたことを特徴とする請求項1記載のつり革。
【請求項7】
ジャイロセンサを備えて前記ベルト部の方向角度を測定し、
これより前記表示部に表示したゲームの進行を制御可能にしたことを特徴とする請求項1記載のつり革。
【請求項8】
携帯電話感受装置を備えて携帯電話の電波をキャッチし、
これより近傍の前記表示部に警告メッセージを表示したことを特徴とする請求項1記載のつり革。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−170124(P2011−170124A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34261(P2010−34261)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(503398886)株式会社感性デバイシーズ (12)
【Fターム(参考)】