説明

とこぶしの再パッケージ方法及び装置、魚貝類の再パッケージ装置及び方法、並びにとこぶし用の及び魚貝類パッケージ用の密閉容器

【課題】とこぶし等の魚貝類を、新鮮な状態、或いは食材としての価値をより高めた状態で出荷可能とする。
【解決手段】再パッケージ方法は、完全には浸漬されていない状態で輸送されて来る、活魚状態にあるとこぶし(50)を、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に、水温が摂氏17〜28度に設定されている第1塩水(101)で満たされた水槽(201)内に、8時間以上浸漬させる第1浸漬工程と、とこぶしを、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定された第2塩水(102)で満たされた水槽(202)内に、2〜8時間浸漬させる第2浸漬工程と、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高く、内部空間の温度が摂氏13度〜24度の範囲内に保持される出荷用の密閉容器(300)内に、とこぶしをパッケージするパッケージ工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば外国からの空輸等により、パッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にあるとこぶし等の魚貝類を、例えば国内の魚市場等への、出荷用にパッケージし直す再パッケージ方法及び装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のとこぶし等の魚貝類は、例えばアジア等の外国からの空輸を経て、国内の輸入業者の倉庫へ一旦搬入され、更に国内の魚市場等へ出荷されることが一般的である。ここで、とこぶしに限らず、魚貝類一般について、新鮮なもの程、商品価値が高い。このため、原産地でパッケージした後に如何に迅速にして、新鮮である、鮮魚(即ち、死んで間もない魚介類)又は活魚(即ち、生きている魚貝類)の状態で市場まで届けるかについての輸送技術が発達してきている。また、活魚の方が鮮魚よりも、商品価値が高い場合も多い。このため、いかなどの魚貝類を活魚の状態で輸送する技術についても各種提案されている(特許文献1及び特許文献2)。これらの技術によれば、いかなどの魚貝類は海水に浸漬させていないと生存不可能であることを考慮して、ビニール袋や容器内に、小型の水槽をなす環境を構築することで、いかなどの魚貝類を生きた状態で効率的に輸送することが可能になるとされている。
【0003】
【特許文献1】特開平7− 16037号公報
【特許文献2】特開平7−184511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、海水に浸漬させていなくても、ある程度の時間は生存可能であるにも拘らず、とこぶし等の魚貝類を、従来技術にある海水入りの小型水槽で運ぼうとすれば、概ね重量に応じてかかる輸送費の増大は免れない。即ち、とこぶし等の魚貝類を、海水に浸漬させないで輸送した場合との輸送コストの比較となった場合に、従来の小型水槽を用いた技術では、輸送コスト的に太刀打ちできないという技術的問題点がある。更に、重量が増大すること自体で、新鮮さを保つのに必要な輸送の際の迅速さに支障を来たしかねない。このため、輸送中に、活魚から鮮魚へと変わる(即ち死んでしまう)可能性まで考慮すると、輸送時間の増大により、却って食材としての新鮮さもが損なわれる結果になりかねない。
【0005】
加えて、とこぶし等を海水に浸漬させないで輸送すると、仮に活魚として(即ち生きたままで)出荷されることが可能であってとしても、輸送途中でとこぶし等が水を吐くや乾燥するなどによって、とこぶし等の重量が減ったり、とこぶし等の身が固く締まったりする。これらの結果、商品としての重量が減ることで、伝統的に目方或いは重量を基準に行われる市場売買上の不都合が発生してしまう。更に、食感が悪くなったり、調理し難くなったりなどで、食材としての価値が損なわれてしまうという技術的問題点もある。
【0006】
本発明は、上述の技術的問題点に鑑みなされたものであり、海水に浸漬させていなくても生存可能であるとこぶし等の魚貝類を、活魚の状態又は活魚により近い新鮮な状態での出荷を可能ならしめる、或いは食材としての価値をより高めた状態での出荷を可能ならしめる、とこぶしの再パッケージ方法及び装置、魚貝類の再パッケージ装置及び方法、並びにとこぶし用の及び魚貝類パッケージ用の密閉容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のとこぶしの再パッケージ方法は上記課題を解決するために、完全には浸漬されていない状態でパッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にあるとこぶしを、出荷用にパッケージし直す再パッケージ方法であって、前記輸送されて来たとこぶしを、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17〜28度に設定されている第1塩水で満たされた水槽内に、8時間以上浸漬させる第1浸漬工程と、該第1浸漬工程の後に、前記とこぶしを、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定された第2塩水で満たされた水槽内に、2〜8時間浸漬させる第2浸漬工程と、該第2浸漬工程の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められていると共に該内部空間における温度が摂氏13〜24度の範囲内に保持される出荷用の密閉容器内に、前記とこぶしをパッケージするパッケージ工程とを含む。
【0008】
本発明のとこぶしの再パッケージ方法によれば、前提として、とこぶしは、完全には浸漬されていない状態でパッケージされた後に輸送されて来る。具体的には、総重量が軽くなるように、とこぶしが部分的にのみ浸漬されている状態で、より好ましくは、とこぶしが全く若しくは殆ど浸漬されていない状態でパッケージされた後に、輸送されてくる。かかる輸送中の揺れや傾きによって、とこぶしは、パッケージ用の空間内で気相部分に、少なくとも部分的に入る或いは触れる。言い換えれば、とこぶしは、パッケージ用の空間内に気相部分が存在するようにパッケージされた後に、輸送されてくる。しかも、とこぶしは、鮮魚状態(言い換えれば、死んでいる状態であって、死んでから間もない状態)ではなく、活魚状態(言い換えれば、生きている状態或いは仮死状態又は休眠状態)で輸送されてくる。このようなとこぶしは、例えば数時間或いは十数時間から数十時間の空輸によって高酸素濃度であり且つ低温の雰囲気で輸送されてくるものである。ここで特に、とこぶしは、輸送されて来たときには、活魚状態とは言え、少なくとも完全には浸漬されていない状態でパッケージされているが故に、冬眠若しくは休眠状態又は仮死状態となっている場合が多い。
【0009】
そこで先ず、第1浸漬工程によって、輸送されて来たとこぶしは、第1塩水で満たされた水槽内に浸漬させられる。このような水槽内への浸漬は、典型的には、アンパッケージされた後に行われるが、輸送されて来た際のパッケージの形態によって邪魔にならない場合には、部分的に又は全く、パッケージを解くことなく行われてもよい。ここで特に第1塩水の塩分濃度は、2.8〜3.5重量%(即ち、28〜35パーミル)に設定されており、これは、とこぶし本来の生息環境である海水の塩分濃度(即ち、適正塩分濃度)に近い。また第1塩水の水温は、摂氏17〜28度に設定されており、これは、とこぶし本来の生息環境である海水の水温(即ち、適正水温)に近い。しかも、冬眠若しくは休眠状態又は仮死状態にあるとこぶしは、このような第1塩水に、8時間以上浸漬させられるので、その活度或いは活性度が、その後の第2浸漬工程における後述の浸透圧が生じる程度にまで、或いは第2浸漬工程で後述の如くに水を吸う程度にまで、回復させられることになる。ここに、とこぶし又は魚貝類に係る「活度」(或いは「活性度」)とは、とこぶし又は魚貝類における生命体としての活動の程度を意味し、生命力を定性的に示したもの或いは所定基準を用いて(例えば、カロリー消費量や酸素消費量などで)定量的に示したものである。この活度は、「活性度」或いは「生命力」と言い換えてもよい。例えば、如何に新鮮であっても死んでいる鮮魚であれば、活度は無いということになる。他方、活魚であれば、活度は大なり小なり有るということになり、輸送後における塩分濃度、水温、酸素濃度等の周辺環境が、とこぶし又は魚貝類に適したものになればなる程、その活度は、より回復させられることになる。活度が回復されれば、死ぬまでの時間、言い換えれば活魚として存続し得る時間が長くなる。この際、塩分濃度、水温、酸素濃度等の条件によっては、原産海域におけると同等付近若しくは同等以上に、とこぶし又は魚貝類の活度は、回復されることになる。
【0010】
その後、第2浸漬工程によって、とこぶしは、第2塩水で満たされた水槽内に浸漬させられる。このような水槽内への浸漬は、第1塩水で満たされた水槽と同じ水槽を用いて行われてもよいし、異なる水槽を用いて行われてもよい。また、輸送されて来た際のパッケージの形態によって邪魔にならない場合には、第1浸漬工程に続いて、部分的に又は全くパッケージを解くことなく行われてもよい。ここで特に、第2塩水は、その塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定されている。このため、第1浸漬工程によって体内或いは細胞内の水分の塩分濃度が第1塩水の塩分濃度と同程度まで高められていたとこぶしは、体内或いは細胞内の水分と第2塩水との相互間の塩分に係る浸透圧により、水を吸うことになる。しかも、とこぶしは、このような第2塩水で満たされた水槽内に、2〜8時間浸漬させられるので、とこぶしの体積は、例えば重量換算又は体積換算で十数パーセントから数十パーセント程度で、顕著に増大させられると共に水から出した際に計測される重量も顕著に増大することになる。したがって、とこぶしは、重量当たりの値段を固定した場合における経済的価値が高まる。同時に、とこぶしは、体積が増大した分だけ、その実肉が柔らかくなり、最終的な食感向上に繋がると共に調理のし易さにも繋がる。即ち、経済的価値及び食材としての価値が顕著に高められる。
【0011】
その後、パッケージ工程によって、出荷用の密閉容器内に、かかる密閉容器がその内部空間に気相部分を含むように、とこぶしは、パッケージされる。即ち、内部空間が、酸素を含む気体により部分的に若しくは完全に満たされている状態、言い換えれば、とこぶしが全く浸漬されていない若しくは完全には浸漬されていない状態(即ち、とこぶしが部分的にのみ浸漬されている状態)でパッケージされる。とこぶしが部分的に浸漬されている状態の場合、好ましくは内部空間の液相が第2塩水と同一塩分濃度の塩水で満たされている。或いは、第1塩水と同一の塩分濃度の塩水で満たされている。このような密閉容器は、典型的には当該パッケージ工程専用の容器であるが、輸送されて来た際のパッケージの形態によっては、同じ容器がそのまま又は再び用いられてもよい。言い換えれば、当初から、当該密閉容器を用いて、輸送して来てもかまわない。
【0012】
密閉容器は、その内部空間における気相部分の酸素濃度が大気中よりも高められている。例えば、空気中の酸素濃度である20体積%よりも高い21〜30体積%或いはそれ以上に高められている。好ましくは、液相部分における酸素濃度が、第2塩水における酸素濃度よりも高められている。内部空間における気相部分について言えば、ほぼ100%或いは80%以上が酸素であることが望ましい。このように気相部分の酸素濃度が空気中のそれより高められているので、完全には浸漬されていなくとも、密閉容器内におけるとこぶしの活度の低下速度は、大気中の酸素濃度で密閉した場合と比べて遥かに遅くなる。
【0013】
しかも、密閉容器は、その内部空間における温度が摂氏13〜24度の範囲内に保持されるので、とこぶしは、冬眠状態、休止状態、仮死状態等の、通常よりも有酸素活動が活発でない状態にある。このため、とこぶしは、同一酸素量で生息可能な時間が顕著に長くなる。よって、密閉容器内におけるとこぶしの活度の低下速度は、常温や大気温で密閉した場合と比べて遥かに遅くなる。同時に、活動が活発でないために、完全には浸漬されていない状態でパッケージされている場合に避けられない、特に全く又は殆ど浸漬されていない状態でパッケージされている場合に顕著である、水を吐く活動、排便活動、表面皮膚から水の蒸発に伴う乾燥などに起因した、体積減少及び重量減少の速度も低下させることが可能となる。即ち、同一時間をかけて搬送した場合における、アンパッケージした際に計測される重量は、本発明のパッケージを行った場合には、かかる酸素濃度及び温度を大気中のそれらに委ねてパッケージを行った場合と比べて、例えば重量換算又は体積換算で十数パーセントから数十パーセント程度で、顕著に増大させられる。
【0014】
これらの結果、本発明のとこぶしの再パッケージ方法を用いた場合には、市場等でアンパッケージした際に計測される重量が、当初輸送した際に計測される重量よりも軽くなってしまうという不都合を回避できる。更に、市場等でアンパッケージした際には、相対的に体積が増大しており、柔らかく調理し易いなど、食材としての価値が高められた状態とされている。
【0015】
特に、とこぶしは、例えばアジア或いは台湾等の外国からの空輸を経て、国内の輸入業者の倉庫へ一旦搬入され、更に国内の魚市場等へ出荷されることが一般的である。このため、海水に浸漬させていなくても生存可能であるとこぶし等の魚貝類の性質と、空輸等における重量に応じた運賃との兼ね合いから、特にパッケージ後について、加えて再パッケージ後について、海水に完全に浸漬させていない状態で輸送することを可能ならしめる本発明は、実践上極めて有利である。本発明によれば、迅速輸送を可能ならしめる輸送技術に支障を来たすどころか、これと協働して、安価な輸送費にして、より新鮮なとこぶしを市場に届けることが可能となる。
【0016】
本発明のとこぶしの再パッケージ方法の一態様では、前記第1浸漬工程は、前記とこぶしを、前記塩分濃度が3.3〜3.5重量%に設定された前記第1塩水で満たされた前記水槽内に、18〜36時間浸漬させ、前記第2浸漬工程は、前記とこぶしを、前記塩分濃度が1.5〜2.5重量%に設定された前記第2塩水で満たされた前記水槽内に、3〜6時間浸漬させる。
【0017】
この態様によれば、第1浸漬工程では特に、第1塩水の塩分濃度は、3.3〜3.5重量%に設定されており、これは、とこぶし本来の生息環境である海水の塩分濃度に極めて近い。例えば台湾近海におけるとこぶしの漁場環境に合わせて設定されるなど、当該再パッケージの対象となるとこぶしの原産地における海水中の塩分濃度に合わせるとよい。よって、とこぶしの活度は、顕著に回復させられる。しかも第2浸漬工程では特に、第2塩水の塩分濃度は、1.5〜2.5重量%に設定されており、第1浸漬工程を経たとこぶしの体内或いは細胞内の水分と第2塩水との間での浸透圧により、とこぶしは、水を顕著に吸う。よって、とこぶしの体積及び重量は夫々、顕著に増大させられる。従って、とこぶしは、経済的価値及び食材としての価値が顕著に高められる。
【0018】
本発明のとこぶしの再パッケージ方法の他の態様では、前記第1浸漬工程は、前記第1塩水における酸素濃度を、1.5〜2.0体積%まで高める工程を含み、前記第2浸漬工程は、前記第2塩水における酸素濃度を、1.5〜2.0体積%まで高める工程を含む。
【0019】
この態様によれば、第1浸漬工程では、第1塩水における酸素濃度が、1.5〜2.0体積%(即ち、15〜20mL/L(ミリリットル/リットル))まで高められる。このため、酸素濃度を積極的に高めることなく典型的には大気に面する水中の酸素濃度の場合と比べて、とこぶしの活度が、顕著に或いは迅速に回復させられることになる。しかも、第2浸漬工程では、第2塩水における酸素濃度が、1.5〜2.0体積%まで高められる。このため、酸素濃度を積極的に高めることなく典型的には大気に面する水中の酸素濃度の場合と比べて、体積が膨らみつつあるとこぶしの活度が低下する速度を、遅くできる。即ち、相対的には、とこぶしの活度を高い状態に維持できる。
【0020】
尚、パッケージ工程で密閉容器にパッケージする際に、とこぶしが部分的に浸漬されている状態とする場合には、内部空間の液相部分を満たす水における酸素濃度は、かかる2.0体積%以上であることが望ましい。
【0021】
本発明のとこぶしの再パッケージ方法の他の態様では、前記パッケージ工程は、前記温度が摂氏14〜20度の範囲内となるように保冷又は加温されている。
【0022】
この態様によれば、密閉容器の内部空間における温度が摂氏14〜20度の範囲内に保持されるので、とこぶしを極めて良好にして、冬眠状態、休止状態、仮死状態等の、通常よりも有酸素活動が活発でない状態にでき、とこぶしにとっての同一酸素量で生息可能な時間を顕著に長くできる。即ち、再パッケージ後に輸送する過程で、相対的には、とこぶしの活度を高い状態に維持できる。
【0023】
本発明のとこぶしの再パッケージ方法の他の態様では、前記密閉容器は、前記内部空間に、前記第2塩水と同一塩分濃度の塩水で満たされた液相部分を含み、該液相部分における酸素濃度は、前記第2塩水の酸素濃度より高い。
【0024】
この態様によれば、第2浸漬工程からパッケージ工程へ移行する際に、密閉容器内へ第2塩水を入れた後に、その塩水の酸素濃度を酸素注入により高めれば、密閉容器内に良好な液相部分を容易に構築できる。
【0025】
本発明に係るとこぶしの再パッケージ装置は上記課題を解決するために、完全には浸漬されていない状態でパッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にあるとこぶしを、出荷用にパッケージし直す再パッケージ装置であって、前記輸送されて来たとこぶしを8時間以上浸漬させることが可能に構成されており、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17〜28度に設定されている第1塩水で満たされた第1水槽装置と、該第1水槽装置への浸漬の後に、前記とこぶしを2〜8時間浸漬させることが可能に構成されており、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定された第2塩水で満たされた第2水槽装置と、該第2水槽装置への浸漬の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められると共に該内部空間における温度が摂氏13〜24度の範囲内に保持されるように出荷用の密閉容器内に、前記とこぶしをパッケージするパッケージ手段とを含む。
【0026】
本発明のとこぶしの再パッケージ装置によれば、第1水槽装置を備えるので、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ方法に係る第1浸漬工程を好適に行うことができ、第2水槽装置を備えるので、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ方法に係る第2浸漬工程を好適に行うことができる。そして更にパッケージ手段を備えるので、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ方法に係るパッケージ工程を好適に行うことができる。これらの結果、本発明のとこぶしの再パッケージ方法を好適に実施でき、市場等でアンパッケージした際におけるとこぶしの重量が軽くなる不都合を回避でき、更に、とこぶしの食材としての価値を高められる。
【0027】
本発明に係る第1のとこぶしパッケージ用の密閉容器は上記課題を解決するために、上述した本発明に係るとこぶしの再パッケージ装置で用いられる密閉容器であって、前記内部空間を規定すると共に発泡材から構成された容器本体と、該容器本体に対して密閉可能に装着されると共に発泡材料から構成された蓋と、前記容器本体及び前記蓋のうち少なくとも一方に設けられており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための貫通穴と、該貫通穴を封止する封止手段とを備える。
【0028】
本発明の第1のとこぶしパッケージ用の密閉容器によれば、容器本体により前記内部空間が規定されており、これに対して蓋が密閉可能に装着され、これらの容器本体及び蓋のうち少なくとも一方に設けられた貫通穴を介して、前記内部空間に酸素を注入することで、前記気相部分における酸素濃度を大気中よりも高められる。そして、この状態で、封止手段によって、該貫通穴を封止するので、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ装置に係るパッケージ手段によって、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ方法に係るパッケージ工程を好適に実施できる。しかも、このようにパッケージされた密閉容器は、容器本体及び蓋が、例えば発泡スチロールである発泡材から構成されている。このため、とこぶしの出荷用に極めて重要である、軽いことによる出荷のし易さと、熱伝導率の低さによる温度維持とという、二つの要請を満足させ得る。しかも、貫通穴の設け易さ及び封止のし易さという更なるに二つの要請をも満足させ得る。
【0029】
本発明に係る第2のとこぶしパッケージ用の密閉容器は上記課題を解決するために、上述した本発明に係るとこぶしの再パッケージ装置で用いられる密閉容器であって、発泡材から構成された容器本体と、該容器本体の内部に収容され、前記内部空間を規定すると共に可塑性又は柔軟性の材料から構成されており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための口を有する袋と、該口を、気密的に締め付けることで封止する封止手段とを備える。
【0030】
本発明の第2のとこぶしパッケージ用の密閉容器によれば、容器本体内に収容された、例えばビニール袋である、可塑性又は柔軟性の材料からなる袋により、前記内部空間が規定されている。そして、この袋の口を介して、前記内部空間に酸素を注入することで、気相部分における酸素濃度を大気中よりも高められる。そして、この状態で、例えばロープ、紐、ゴム若しくは輪ゴム、締め付け金具、接着剤、圧着若しくは熱圧着具、洗濯ばさみ、クリップ又はホチキスなどの、封止手段によって、該口を気密的に封止する。従って、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ装置に係るパッケージ手段によって、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ方法に係るパッケージ工程を好適に実施できる。しかも、このようにパッケージされた密閉容器は、容器本体が、例えば発泡スチロールである発泡材から構成されており、袋がビニール等から構成されている。このため、とこぶしの出荷用に極めて重要である、軽いことによる出荷のし易さと、熱伝導率の低さによる温度維持とという、二つの要請を満足させ得る。しかも、酸素注入の容易さ及び封止のし易さという更なるに二つの要請をも満足させ得る。
【0031】
本発明に係る第1又は第2のとこぶしパッケージ用の密閉容器の一態様では、前記容器本体内に、前記内部空間における温度が前記摂氏14〜20度の範囲内に保持されるように配置された保冷剤を更に備える。
【0032】
この態様によれば、容器本体内に保冷剤を配置すれば、密閉容器の内部空間における温度を、摂氏14〜20度の範囲内に保持できるので、上述した本発明のとこぶしの再パッケージ装置に係るパッケージ手段によるパッケージ工程を好適に実施できる。尚、第2のとこぶしパッケージ用の密閉容器の場合には、保冷剤を配置する場所は、容器本体の内部における、袋の中でもよいし、袋の外でもよい。
【0033】
本発明の魚貝類の再パッケージ方法は上記課題を解決するために、パッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にある魚貝類を、出荷用にパッケージし直す再パッケージ方法であって、前記輸送されて来た魚貝類を、その原産海域における海水の塩分濃度を模擬するように塩分濃度が設定されていると共に前記海水の水温を模擬するように水温が設定されている第1塩水で満たされた水槽内に浸漬させることにより、前記魚貝類の活度を回復させる第1浸漬工程と、該第1浸漬工程の後に、前記魚貝類を、前記第1塩水の塩分濃度より低く且つ前記魚貝類が生息可能な塩分濃度に設定された第2塩水で満たされた水槽内に浸漬させることにより、前記魚貝類の体積を増大させる第2浸漬工程と、該第2浸漬工程の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められていると共に、該内部空間における温度が、前記第1塩水の水温よりも低く且つ前記魚貝類が生息可能な温度に保持される出荷用の密閉容器内に、前記魚貝類をパッケージするパッケージ工程とを含む。
【0034】
本発明の魚貝類の再パッケージ方法によれば、前提として、魚貝類は、パッケージされた後に輸送されて来る。具体的には、総重量が軽くなるように、好ましくは、魚貝類が部分的にのみ浸漬されている状態で、より好ましくは、魚貝類が全く若しくは殆ど浸漬されていない状態でパッケージされた後に、輸送されてくる。しかも、魚貝類は、鮮魚状態ではなく、活魚状態で輸送されてくる。即ち、本発明の再パッケージの対象とされる魚貝類は、とこぶし等の貝を典型例とする、水がなくても、数時間或いは十数時間から数十時間は生息可能な種類の魚貝類である。このような魚貝類は、例えば、数時間或いは十数時間から数十時間の空輸によって、高酸素濃度であり且つ低温の雰囲気で、輸送されてくるものである。
【0035】
そこで先ず、第1浸漬工程によって、輸送されて来た魚貝類は、第1塩水で満たされた水槽内に浸漬させられる。ここで特に第1塩水の塩分濃度は、その原産海域における海水の塩分濃度を模擬するように(即ち、適正塩分濃度に)設定されており、第1塩水の水温は、その原産海域における海水の水温を模擬するように(即ち、適正水温に)設定されている。輸送中に冬眠若しくは休眠状態又は仮死状態にある魚貝類は、このような第1塩水に、その活度が回復させられるまで浸漬させられる。例えば、24時間程度の浸漬によって、その活度は顕著なまでに回復させられる。この際、塩分濃度、水温、酸素濃度等の条件によっては、原産海域におけると同等付近若しくは同等以上に、魚貝類の活度は、回復されることになる。
【0036】
その後、第2浸漬工程によって、魚貝類は、第2塩水で満たされた水槽内に浸漬させられる。ここで特に、第2塩水は、その塩分濃度が第1塩水の塩分濃度より低く且つ当該魚貝類が生息可能な塩分濃度に設定されている。このため、第1浸漬工程によって体内或いは細胞内の水分の塩分濃度が第1塩水の塩分濃度と同程度まで高められていた魚貝類は、体内或いは細胞内の水分と第2塩水との相互間の塩分に係る浸透圧により、水を吸うことになる。しかも、魚貝類は、このような第2塩水で満たされた水槽内に、その体積が増大させられるまで、浸漬させられる。例えば、4時間程度の浸漬によって、その体積は、例えば重量換算又は体積換算で十数パーセントから数十パーセント程度に増大させられると共に水から出した際に計測される重量も増大させられる。
【0037】
その後、パッケージ工程によって、出荷用の密閉容器内に、かかる密閉容器がその内部空間に気相部分を含むように、魚貝類は、パッケージされる。即ち、内部空間が、酸素を含む気体により部分的に若しくは完全に満たされている状態、言い換えれば、魚介類が全く浸漬されていない若しくは完全には浸漬されていない状態でパッケージされる。ここで特に、密閉容器は、その内部空間における気相部分の酸素濃度が大気中よりも高められている。好ましくは、液相部分における酸素濃度が、第2塩水における酸素濃度よりも高められている。内部空間における気相部分について言えば、ほぼ100%或いは80%以上が酸素であることが望ましい。このように気相部分の酸素濃度が空気中のそれより高められているので、完全には浸漬されていなくとも、密閉容器内における魚貝類の活度の低下速度は、大気中の酸素濃度で密閉した場合と比べて遥かに遅くなる。
【0038】
しかも、密閉容器は、その内部空間における温度が、第1塩水の水温よりも低く且つ当該魚貝類が生息可能な温度に保持されるので、魚貝類は、冬眠状態、休止状態、仮死状態等の、通常よりも有酸素活動が活発でない状態にある。このため、限られた密閉空間内(即ち、同一酸素量で満たされた空間内)にあっても、密閉容器内における魚貝類の活度の低下速度は、常温や大気温で密閉した場合と比べて遥かに遅くなる。同時に、活動が活発でないために、完全には浸漬されていない状態でパッケージされている場合に避けられない特に全く又は殆ど浸漬されていない状態でパッケージされている場合に顕著である、水を吐く活動、排便活動、表面皮膚から水の蒸発に伴う乾燥などに起因した、体積減少及び重量減少の速度も低下させることが可能となる。
【0039】
これらの結果、本発明の魚貝類の再パッケージ方法を用いた場合には、市場等でアンパッケージした際に計測される重量が、当初輸送した際に計測される重量よりも軽くなってしまうという不都合を回避できる。更に、市場等でアンパッケージした際には、体積が増大しており、柔らかく調理し易いなど、食材としての価値が高められた状態とされている。
【0040】
本発明に係る魚貝類の再パッケージ装置は上記課題を解決するために、パッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にある魚貝類を、出荷用にパッケージし直す再パッケージ装置であって、前記輸送されて来た魚貝類を所定時間以上浸漬させることが可能に構成されており、前記魚貝類の原産海域における海水の塩分濃度を模擬するように塩分濃度が設定されていると共に前記海水の水温を模擬するように水温が設定されている第1塩水で満たされた第1水槽装置と、該第1水槽装置への浸漬の後に、前記魚貝類を所定時間浸漬させることが可能に構成されており、前記第1塩水の塩分濃度より低く且つ前記魚貝類が生息可能な塩分濃度に設定された第2塩水で満たされた第2水槽装置と、該第2水槽装置への浸漬の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められると共に該内部空間における温度が前記第1塩水の水温よりも低く且つ前記魚貝類が生息可能な温度に保持されるように出荷用の密閉容器内に、前記魚貝類をパッケージするパッケージ手段とを含む。
【0041】
本発明の魚貝類の再パッケージ装置によれば、第1水槽装置を備えるので、上述した本発明の魚貝類の再パッケージ方法に係る第1浸漬工程を好適に行うことができ、第2水槽装置を備えるので、上述した本発明の魚貝類の再パッケージ方法に係る第2浸漬工程を好適に行うことができる。そして更にパッケージ手段を備えるので、上述した本発明の魚貝類の再パッケージ方法に係るパッケージ工程を好適に行うことができる。これらの結果、本発明の魚貝類の再パッケージ方法を好適に実施でき、市場等でアンパッケージした際における魚貝類の重量が軽くなる不都合を回避でき、更に、魚貝類の食材としての価値を高められる。
【0042】
本発明に係る第1の魚貝類パッケージ用の密閉容器は上記課題を解決するために、上述した本発明に係る魚貝類の再パッケージ装置で用いられる密閉容器であって、前記内部空間を規定すると共に発泡材から構成された容器本体と、該容器本体に対して密閉可能に装着されると共に発泡材料から構成された蓋と、前記容器本体及び前記蓋のうち少なくとも一方に設けられており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための貫通穴と、該貫通穴を封止する封止手段とを備える。
【0043】
本発明の第1の魚貝類パッケージ用の密閉容器によれば、容器本体により前記内部空間が規定されており、これに対して蓋が密閉可能に装着され、これらの容器本体及び蓋のうち少なくとも一方に設けられた貫通穴を介して、前記内部空間に酸素を注入することで、前記気相部分における酸素濃度を大気中よりも高められる。そして、この状態で、封止手段によって、該貫通穴を封止するので、上述した本発明の魚貝類の再パッケージ装置に係るパッケージ手段によって、上述した本発明の魚貝類の再パッケージ方法に係るパッケージ工程を好適に実施できる。しかも、このようにパッケージされた密閉容器は、容器本体及び蓋が、例えば発泡スチロールである発泡材から構成されている。このため、魚貝類の出荷用に極めて重要である、軽いことによる出荷のし易さと、熱伝導率の低さによる温度維持とという、二つの要請を満足させ得る。しかも、貫通穴の設け易さ及び封止のし易さという更なるに二つの要請をも満足させ得る。
【0044】
本発明に係る第2の魚貝類パッケージ用の密閉容器は上記課題を解決するために、発泡材から構成された容器本体と、該容器本体の内部に収容され、前記内部空間を規定すると共に可塑性又は柔軟性の材料から構成されており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための口を有する袋と、該口を、気密的に締め付けることで封止する封止手段とを備える。
【0045】
本発明の第2の魚貝類パッケージ用の密閉容器によれば、容器本体内に収容された、可塑性又は柔軟性の材料からなる袋により、前記内部空間が規定されている。そして、この袋の口を介して、前記内部空間に酸素を注入することで、気相部分における酸素濃度を大気中よりも高められる。そして、封止手段によって、該口を気密的に封止する。従って、上述した本発明の魚貝類の再パッケージ装置に係るパッケージ手段によって、上述した本発明の魚介類の再パッケージ方法に係るパッケージ工程を好適に実施できる。しかも、このようにパッケージされた密閉容器は、容器本体が、例えば発泡スチロールである発泡材から構成されており、袋がビニール等から構成されている。このため、魚介類の出荷用に極めて重要である、軽いことによる出荷のし易さと、熱伝導率の低さによる温度維持とという、二つの要請を満足させ得る。しかも、酸素注入の容易さ及び封止のし易さという更なるに二つの要請をも満足させ得る。
【0046】
本発明に係る第1又は第2の魚介類パッケージ用の密閉容器の一態様では、前記容器本体内に、前記内部空間における温度が前記生息可能な温度の範囲内に保持されるように配置された保冷剤を更に備える。
【0047】
この態様によれば、容器本体内に保冷剤を配置すれば、密閉容器の内部空間における温度を、魚貝類が生息可能な温度の範囲内に保持できるので、上述した本発明の魚貝類の再パッケージ装置に係るパッケージ手段によるパッケージ工程を好適に実施できる。尚、第2の魚貝類パッケージ用の密閉容器の場合には、保冷剤を配置する場所は、容器本体の内部における、袋の中でもよいし、袋の外でもよい。
【0048】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0050】
先ず、図1を用いて、収穫された魚貝類が市場に出回るまでの流通経路を説明する。ここに図1は、魚貝類の流通経路を示すブロック図である。尚、本実施形態では、説明の便宜上、魚貝類の一例としてとこぶしを用い、とこぶし等の魚貝類に多く見られる、海外からの輸入を例にして説明する。
【0051】
図1に示すように、海外の原産地10において収穫されたとこぶしは、空輸等によって国内へ輸入された後、一旦輸入業者の、国内にある倉庫20に搬入される。とこぶしは、倉庫20において一定期間保管された後に、製品としてパッケージされ、国内にある市場30へと出荷される。
【0052】
このように、収穫されたとこぶしが市場に出回るまでには、少なからず何らかのプロセスが存在し、数時間或いは数日間もの時間が経過する場合がある。とこぶしは、海水に浸漬させていなくてもある程度の期間生存することが可能であるが、仮に何の対策も施さないとすると、とこぶしの活度は減少し、或いは死んでしまう可能性もある。
【0053】
次に、本実施形態の再パッケージ方法について図2を用いて説明する。ここに図2は、魚貝類の再パッケージ方法の手順の一例を説明するためのフローチャートである。尚、本実施形態では、魚貝類の再パッケージが図1に示す倉庫20において行われるものとして説明する。
【0054】
図2に示すように、倉庫20に搬入されたとこぶしは、先ず第1浸漬工程において、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17度〜28度に設定されている第1塩水で満たされた水槽内に、8時間以上浸漬することで、活度を回復させられる(ステップS1)。第1塩水の塩分濃度は、とこぶし本来の生息環境である海水の適正塩分濃度に近い。また第1塩水の水温は、は、とこぶし本来の生息環境である海水の適正水温に近い。そのため、とこぶしの活度が、その後の第2浸漬工程における後述の浸透圧が生じる程度にまで、或いは第2浸漬工程で後述の如くに水を吸う程度にまで、効果的に回復させられる。
【0055】
次に、とこぶしは第2浸漬工程において、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定された第2塩水で満たされた水槽内に、2〜8時間浸漬することで、第1浸漬工程における第1塩水が多く含まれている体内或いは細胞内の水分と、第2塩水との相互間の塩分に係る浸透圧により、水を吸うことになる。これにより、とこぶしの体積は、例えば重量換算又は体積換算で十数パーセントから数十パーセント程度で、顕著に増大させられると共に、後に水から出した際に計測される重量も顕著に増大する(ステップS2)。従って、とこぶしは、重量当たりの値段を固定した場合における経済的価値が高まる。同時に、とこぶしは、体積が増大した分だけ、その実肉が柔らかくなり、最終的な食感向上に繋がると共に調理のし易さにも繋がる。即ち、経済的価値及び食材としての価値が顕著に高められる。
【0056】
更に、第1及び第2浸漬工程においては、好ましくは、とこぶし本来の生息環境である海水の塩分濃度により近くなるように、塩分濃度を3.3〜3.5重量%の範囲に限定した第1塩水に18〜36時間浸漬し、その後、塩分濃度を1.5〜2.5重量%の範囲に限定した第2塩水に3〜6時間浸漬することで、より効果を高めることができる。また、より好ましくは、第1塩水及び第2塩水の酸素濃度を夫々1.5〜2.0体積%に高めることによりとこぶしを活性化させ、その活度の回復をより迅速に行うことも可能である。これにより、第1及び第2浸漬工程の夫々における浸漬時間をある程度短縮することが可能となり、作業時間が短縮される。尚、対象がとこぶし以外の魚貝類であっても、その魚貝類の原産海域における海水の塩分濃度及び水温を模擬するように設定することで、同様に高い効果を得ることができる。
【0057】
次に、とこぶしはパッケージ工程によって、出荷用の内部空間における温度が摂氏13度〜24度の範囲内に保持されている密閉容器内に、完全には浸漬されていない状態で、即ち内部空間に気相部分が存在する状態で、パッケージされ(ステップS3)、市場へと出荷される。密閉容器内には、例えば第2塩水と同一塩分濃度の塩水を入れて、内部空間に液相部分を構築してもよいし、市場が近い場合など、出荷後から取引までの間の時間が短い場合などには、とこぶしが全く又は殆ど浸漬されていない状態とし、このような液相部分を構築しなくてもよい。液相部分が小さい程、密閉容器を含めた総重量は小さくて済むので、運搬上有利である。
【0058】
ここで特に、密閉容器は、その内部空間における気相部分の酸素濃度が大気中よりも高められているので、とこぶしの活度の低下速度は、浸漬されていなくとも、大気中の酸素濃度で密閉した場合と比べて遥かに遅くなる。しかも、密閉容器内の温度は、摂氏13度〜24度の範囲内に保持されているので、とこぶしは、冬眠状態、休止状態、仮死状態等の、通常よりも有酸素活動が活発でない状態となる。また、密閉容器内の温度を摂氏14度〜20度の範囲に限定することにより、とこぶしをより良好な状態に保ちつつ、通常よりも有酸素活動が活発でない状態とすることができる。
【0059】
尚、対象がとこぶし以外の魚貝類であっても、密閉容器内の温度を、第1塩水の水温よりも低く且つその魚貝類が生息可能な温度に保持すれば、同様或いは類似の効果を得ることができる。通常よりも有酸素活動が活発でない状態であるとこぶしは、同一酸素量で生息可能な時間が顕著に長くなる。よって、とこぶしの活度の低下速度は、常温や大気温で密閉した場合と比べて遥かに遅くなる。同時に、活動が活発でないために、完全には浸漬されていない状態でパッケージされている場合に避けられない、特に全く又は殆ど浸漬されていない状態でパッケージされている場合に顕著である、水を吐く活動、排便活動、表面皮膚から水の蒸発に伴う乾燥などに起因した、体積減少及び重量減少の速度も低下させることが可能となる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態におけるとこぶしの再パッケージ方法を用いた場合には、市場等でアンパッケージした際に計測される重量が、当初輸送した際に計測される重量よりも軽くなってしまうという不都合を回避できる。更に、市場等でアンパッケージした際には、体積が増大しており、柔らかく調理し易いなど、食材としての価値が高められた状態とされている。
【0061】
次に、上述した再パッケージ方法に用いられる再パッケージ装置について図3から図7を用いて詳細に説明する。
【0062】
先ず、図3を用いて、第1水槽装置について説明する。ここに図3は、第1水槽装置の構成を示す平面図である。尚、説明の便宜上、とこぶしは1匹のみを図示してある。通常は、第1水槽装置には同時に、例えば数十匹或いは数百匹といった単位で、水槽に収容される。
【0063】
図3に示すように、第1水槽装置は、第1水槽201と、それに満たされた第1塩水101と、エアポンプ210と、水温調節器220と、酸素濃度計230と、水温計240と、塩分濃度計250とを含んで構成されている。更に、第1水槽装置には、コントローラ1000、酸素供給器1002、塩分供給器1004、及び加熱又は冷却用電源装置1006が接続されている。
【0064】
第1水槽201は、樹脂或いは金属やガラス等からなる。第1水槽201の大きさは、大量のとこぶし50を浸漬することができるように、容量が数百リットル以上のものであってもよいし、水槽自体を比較的扱い易くするため、容量が数十リットル程度の小型のものであってもよい。
【0065】
第1塩水101は、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17度〜28度に設定されている。第1塩水の塩分濃度は、所定の濃度より高いときには真水等を、また所定の濃度より低いときには調整用の塩等を第1塩水に対し追加する等して適宜調整される。
【0066】
塩分濃度計250は、第1塩水101の塩分濃度を測定し、それを接続されたメーターやディスプレイ等によって表示する。
【0067】
本実施形態では特に、塩分濃度計250は、コントローラ1000を介して塩分供給器1004と接続されることにより、第1塩水101の塩分濃度を自動的に調節するように構成されている。具体的には、コントローラ1000は、塩分濃度計250の濃度信号Sdにより示される塩分濃度が、2.8〜3.5重量%になるだけ塩分を供給するように塩分供給器1004を、制御する。
【0068】
但し、このような塩分濃度の第1塩水101は、コントローラ1000や塩分濃度計250を用いて自動制御により生成するのではなく、経験的に或いは理論的に、第1塩水101の体積に対して必要な塩分を半自動手又は手動で加えてもよい。塩分濃度計250の塩分濃度ディスプレイを見ながらこれを行えば、比較的容易に行える。
【0069】
この際、加える塩分は、NaCl(塩化ナトリウム)を加えれば足りるが、実験的或いは経験的に、とこぶしの回復に資するミネラル成分を加えるのでもよい。更に、いずれの場合においても、塩分を加えた際には、攪拌装置を用いて、塩分を完全に溶解させることが好ましい。
【0070】
尚、本実施形態では、別途設けられた不図示のタンクから水栓200を介して真水が供給され、これに塩分供給器1004によって塩分が加えられることで、所定塩分濃度の第1塩水101が構築されるが、水栓200から所定塩分濃度の塩水が直接供給されるように構成されてもよい。因みに、殺菌用に塩素が加えられた水道水を、そのまま用いることは、とこぶしを回復させる上では好ましくない。
【0071】
エアポンプ210は、第1塩水101中に、空気或いは酸素等を小さな気泡215として送り込み、第1塩水101に酸素を溶かし込むことで、とこぶし50が活度を回復できる程度に第1塩水101の酸素濃度を高めて維持している。尚、エアポンプ210に換えて又は加えて、第1水槽201内における第1塩水101の水面上に、閉じられた気相部分を構築して、かかる気相部分に酸素を供給することで、第1塩水101中の酸素濃度を高めることも可能である。
【0072】
酸素濃度計230は、第1塩水101の酸素濃度を測定し、それを接続されたメーターやディスプレイ等によって表示する。
【0073】
本実施形態では特に、酸素濃度計230は、コントローラ1000を介して酸素供給器1002と接続されることにより、第1塩水101の酸素濃度を自動的に調節するように構成されている。具体的には、コントローラ1000は、酸素濃度計230の濃度信号Soにより示される酸素濃度が、1.5〜2.0体積%になるだけ酸素を供給するように酸素供給器1002を、制御する。
【0074】
但し、このような酸素濃度の第1塩水101は、コントローラ1000や酸素濃度計230を用いて自動制御により生成するのではなく、経験的に或いは理論的に、第1塩水101の体積に対して必要な酸素を半自動で又は手動で加えるのでもよい。酸素濃度計230の酸素濃度ディスプレイを見ながらこれを行えば、比較的容易に行える。
【0075】
この際、O2(酸素)のみを送り込めば十分であるが、実験的或いは経験的に、とこぶしの回復に資する他の活性ガス或いは不活性ガスを加えてもよい。或いは、高酸素濃度の空気を送り込むようにしてもよい。
【0076】
温度調節器220は、電力を熱エネルギーに変換し、熱を発することで第1塩水101を加熱又は冷却し、水温を摂氏17度〜28度に保っている。尚、気温が28度より高温である等の理由から第1塩水101を冷却する必要がる場合には、温度調節器220に代えて、図示していない海水冷却装置が備えられたり、或いは第1塩水101の循環や冷水又は氷等の追加を行うことで水温が適切な温度に維持される。
【0077】
水温計240は、第1塩水101の水温を測定し、それを接続されたメーターやディスプレイ等によって表示する。
【0078】
本実施形態では特に、水温計240は、コントローラ1000を介して、加熱又は冷却用電源装置1006と接続されることにより、第1塩水101の水温を自動的に調節するように構成されている。具体的には、コントローラ1000は、水温計240の温度信号Stにより示される水温が、摂氏17度〜28度になるだけ電力を供給するように加熱又は冷却用電源装置1006を、制御する。
【0079】
但し、このような加熱又は冷却は、コントローラ1000や水温計240を用いて自動制御により行うのではなく、経験的に或いは理論的に、第1塩水101に対して必要な熱を半自動で又は手動で加えることで行うのでもよい。水温計240の水温ディスプレイを見ながらこれを行えば、比較的容易に行える。
【0080】
第1水槽装置に浸漬されたとこぶし50は、本来の生息環境に近い第1塩水101に8時間以上浸漬されることによって、空輸等の長時間の輸送により減少した活度を回復させられる。尚、とこぶし以外の魚貝類であっても、第1塩水101の塩分濃度及び水温を、その魚貝類の原産海域における海水を模擬するように設定することで、同様に魚貝類の活度を回復させることができる。
【0081】
次に図3に加えて、図4を用いて、図2におけるステップS1(即ち、とこぶしの活度回復方法)について詳細に説明する。ここに図4はステップS1の詳細を示すフローチャートである。
【0082】
ステップS1は、先ず、第1水槽201に真水が注入された状態で開始され、塩分濃度、酸素濃度及び水温に関する制御が夫々並列して行われる。
【0083】
塩分濃度の制御では、先ず塩分濃度計250によって塩分濃度の測定が行われる(ステップS111)。測定された塩分濃度信号Sdは、コントローラ1000に送られ、塩分濃度が設定値以下(例えば、3.3重量%以下)であるか否かの判断が行われる(ステップS112)。塩分濃度が設定値以下でない場合(ステップS112:NO)、再び塩分濃度測定が繰り返して行われる。これは、他の並列に行われる酸素濃度等に係る処理により塩分濃度が変化した場合に対応するためである。他方、塩分濃度が設定値以下である場合(ステップS112:YES)は、塩分供給器1004により所定量の塩分が注入され、同時に攪拌装置等を用いた攪拌も行われる(ステップS113)。塩分注入及び攪拌が終わると、再び最初から処理が行われ、以降この処理を繰り返すことにより、塩分濃度を適切な値に保つ。
【0084】
酸素濃度の制御では、先ず酸素濃度計230によって酸素濃度の測定が行われる(ステップS121)。測定された酸素濃度信号Soは、コントローラ1000に送られ、酸素濃度が設定値以下(例えば、1.5体積%以下)であるか否かの判断が行われる(ステップS122)。酸素濃度が設定値以下でない場合(ステップS122:NO)、再び酸素濃度測定が繰り返して行われる。これは、他の並列に行われる塩分濃度等に係る処理により酸素濃度が変化した場合に対応するためである。他方、酸素濃度が設定値以下である場合(ステップS112:YES)は、酸素供給器1002により所定量の酸素が注入される(ステップS123)。酸素の注入が終わると、再び最初から処理が行われ、以降この処理を繰り返すことにより、酸素濃度を適切な値に保つ。
【0085】
水温の制御では、先ず水温計240によって水温の測定が行われる(ステップS131)。測定された水温信号Stは、コントローラ1000に送られ、水温が設定範囲内(例えば、摂氏14〜20度の範囲内)であるか否かの判断が行われる(ステップS132)。水温が設定範囲内である場合(ステップS132:YES)、再び水温測定が繰り返して行われる。これは、他の並列に行われる酸素濃度等に係る処理により或いは気温の変化等により、水温が変化した場合に対応するためである。他方、水温が設定範囲外である場合(ステップS132:NO)は、温度調節器220により加熱又は冷却が行われる(ステップS123)。加熱又は冷却が終わると、再び最初から処理が行われ、以降この処理を繰り返すことにより、水温を適切な値に保つ。
【0086】
尚、図4に示した、塩分濃度、酸素濃度及び水温に係る三つの並列処理では、ステップS113、S123及びS133のうちのいずれかの処理が行われた後には、全てリターンされて、再びステップS1を構成するこれら三つの並列処理を繰り返して(ステップS1の処理を行うべき時間の間中、繰り返して)実施するように制御してもよい。或いは、ステップS1を構成するこれら三つの並列処理を、ステップS1の処理を行うべき時間の間中、直列に繰り返して実施するように制御することも可能である。いずれにせよ、定期又は不定期の比較的短時間のサイクルで、塩分濃度、酸素濃度及び水温の測定が行われ、必要に応じて、ステップS113、S123又はS133の処理が、実施されるように制御すればよい。これらにより、塩分濃度、酸素濃度及び水温は、ステップS1の工程の間中、所定値又は所定範囲内に維持されることとなる。
【0087】
以上説明したように、ステップS1では、塩分濃度、酸素濃度及び水温を適切に保つことにより、とこぶし50の活度の回復を促している。
【0088】
次に、図5を用いて、第2水槽装置について説明する。ここに図5は、第2水槽装置の構成を示す平面図である。尚、説明の便宜上、とこぶしは1匹のみを図示してある。通常は、第2水槽装置には同時に、例えば数十匹或いは数百匹といった単位で、水槽に収容される。また、第2水槽装置は、第1水槽装置と比べて使用される塩水の塩分濃度が異なり、他の構成はほぼ同一であるため、ここでは主に第1水槽装置との塩分濃度の違い及びその効果について説明し、その他の説明については適宜省略する。
【0089】
図5に示すように、第2水槽装置は、第2水槽202と、それに満たされた第2塩水102と、エアポンプ210と、水温調節器220と、酸素濃度計230と、水温計240と、塩分濃度計250とを含んで構成されている。更に、第2水槽装置には、コントローラ1000、酸素供給器1002、塩分供給器1004、及び加熱又は冷却用電源装置1006が接続されている。
【0090】
第2水槽202は、樹脂或いは金属やガラス等からなる。第2水槽202の大きさは、大量のとこぶし50を浸漬することができるように、容量が数百リットル以上のものであってもよいし、水槽自体を比較的扱い易くするため、容量が数十リットル程度の小型のものであってもよい。尚、第2水槽202は、第1水槽装置における第1水槽201と同じ水槽でもよく、例えば第1水槽装置の第1水槽201に満たされている第1塩水101を、第2塩水102に入れ替える、又は第1塩水101に真水等を追加して塩分濃度を低下させることにより第2塩水102として使用し、第2水槽装置として機能させてもよい。
【0091】
第2塩水102は、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定されている。第2塩水の塩分濃度は、所定の濃度より高いときには真水等を、また所定の濃度より低いときには調整用の塩等を第1塩水に対し追加する等して適宜調整される。
【0092】
とこぶし50は第1水槽装置において第1塩水101に浸漬されていたため、体内或いは細胞内の水分の塩分濃度が第1塩水101の塩分濃度と同程度まで高められている。そのため、第2水槽装置に浸漬されたとこぶし50は、第1塩水101と比べて塩分濃度の低い第2塩水102に浸漬されることによって、体内或いは細胞内の水分と第2塩水102との相互間の塩分にかかる浸透圧により、水を吸う。しかも、とこぶし50は、第2塩水102で満たされた第2水槽202内に、2〜8時間浸漬させられるため、体積が例えば重量換算又は体積換算で十数パーセントから数十パーセント程度で、顕著に増大させられると共に水から出した際に計測される重量も顕著に増大する。従って、とこぶし50は、重量当たりの値段を固定した場合における経済的価値が高まる。同時に、とこぶし50は、体積が増大した分だけ、その実肉が柔らかくなり、最終的な食感向上に繋がると共に調理のし易さにも繋がる。即ち、経済的価値及び食材としての価値が顕著に高められる。尚、とこぶし以外の魚貝類であっても、第2塩水102の塩分濃度を、第1塩水101の塩分濃度より低く、且つその魚貝類が生息可能な濃度に設定することで、同様の効果を得ることができる。
【0093】
次に、本実施形態のパッケージ手段と、それに用いられる密閉容器とについて図6から図9を用いて詳細に説明する。ここに図6は、パッケージ手段における密閉容器の構成を示す斜視図であり、図7はパッケージ手段におけるカゴの構成を示す斜視図である。
【0094】
図6に示すように、パッケージ手段における密閉容器300は、容器本体310と、蓋320と、貫通穴330と、封止手段340と、粘着テープ350とを含んで構成されている。
【0095】
容器本体310は、例えば発砲スチロール等の発泡材から構成されており、密閉容器300の内部空間を規定している。
【0096】
蓋320は、例えば発砲スチロール等の発泡材から構成されており、容器本体310に対して密閉可能に装着される。容器本体310及び蓋320が発泡材から構成されているため、密閉容器300の重量は軽くなり、出荷の際等に持ち運びがし易く、また熱伝導率が低いため、内部空間の温度維持が容易である。尚、蓋320は容器本体310と完全に別体であってもよいし、密閉容器を開けた状態であっても部分的に連結しているように構成されていてもよい。
【0097】
貫通穴330は、密閉容器300の内部空間に酸素を注入するために設けられており、貫通穴330に酸素ボンベと接続されたチューブ等を通し、内部空間に酸素を注入することができる。酸素を注入することで、密閉容器300の内部空間の酸素濃度は、大気中よりも高められ、とこぶし50の活度の低下は、大気中の酸素濃度で密閉した場合と比べて遥かに遅くなる。従って、より活度の高い状態で、市場まで輸送することが可能である。尚、貫通穴330は図6のように密閉容器300の天面(即ち、図6の上側の面)に設けられていてもよいし、側面(即ち、天面に交わる4面)或いは、底面(即ち、図6の下側の面)のいずれに設けられてもよい。また、複数の貫通穴330が複数の面に設けられていてもよい。
【0098】
封止手段340は、貫通穴330から酸素を注入した後、そこから酸素が漏れないように貫通穴330を封止するために設けられる。尚、封止手段340は、密閉容器300と同じく発泡材から構成されてもよいし、金属や樹脂等の他の材料から構成されてもよい。また、図6に示すように、貫通穴330の入り口を塞ぐ蓋状のものであってもよいし、貫通穴330に埋め込まれるような栓状のものであってもよい。
【0099】
粘着テープ350は、容器本体310と蓋320との接合部に沿って貼り付けられ、容器本体310と蓋320とを固定し密閉容器330の内部空間の密閉状態を保つ。尚、容器本体と310に対し、蓋320を装着するだけで、酸素注入や輸送等の際に分離せず、内部空間の密閉状態を保てるならば、粘着テープ350は設けられなくともよい。
【0100】
とこぶし50は、密閉容器300に直接入れられることでパッケージされてもよいし、図7に示すような、密閉容器300の内部空間にフィットする或いは内部空間よりも体積の小さいカゴ400に入れられた後に、カゴ400ごと密閉容器300に入れられパッケージされてもよい。カゴ400には、とこぶし50を入れる際に余分な水気を除くため、また酸素注入の際に貫通穴300を完全に塞がないように多数のカゴ穴410が開いている。カゴ400を用いることで、密閉容器300へのとこぶし50の出し入れが簡単化され、更には、後に詳述する保冷剤にとこぶし50が直接触れ、過冷却されることを防止することができる。
【0101】
尚、カゴ400を、不図示のビニール袋などの柔軟性又は可塑性のある容器に収容した上で、かかる可塑性容器ごと密閉容器300に入れることも可能である。更に、カゴ400の代わりに、このようなビニール袋などにとこぶしを収容した上で、密閉容器300に入れることも可能である。
【0102】
次に図8及び図9を用いて、密閉容器300の内部の構成について説明する。ここに図8及び図9は夫々、図6のA−A´線断面図である。尚、説明の便宜上、とこぶし50は1匹のみを図示しており、カゴ穴410は貫通穴近辺に位置する1箇所のみを図示し、他のカゴ穴410は省略してある。
【0103】
図8に示すように、本実施形態では特に、とこぶし50はカゴ400に入れられ、カゴ400ごと密閉容器300にパッケージされる。ここでは、図7に図示していないカゴ蓋420が配置されている。カゴ蓋420にはカゴ穴410が開いているため、貫通穴330を塞ぐことなく密閉容器300の内部空間への酸素注入が行える。更に、カゴ400の上(即ち、図8の上側)には、保冷剤500が配置されている。保冷剤500を配置することにより、密閉容器300の内部空間の温度を摂氏13度〜24度に、好ましくは14〜20度の範囲内に、保持することができる。よって、とこぶしを、冬眠状態、休止状態、仮死状態等の、通常よりも有酸素活動が活発でない状態で輸送することができる。従って、より活度の高い状態で、市場まで輸送することが可能である。
【0104】
尚、保冷剤500は、カゴ400の上、即ち、カゴ蓋420と密閉容器300との間に配置されるのではなく、カゴ400の下に配置されてもよいし、カゴ400の側面、即ち、カゴの側面と密閉容器300との間に配置されてもよい。或いは、とこぶし50に直接触れないようにして、カゴ400の内部に配置されていてもよい。また、密閉容器300の内部空間の温度を摂氏13度〜24度に保持するため、複数個の保冷剤500が複数の面に配置されていてもよい。
【0105】
密閉容器300への酸素の注入は、例えば酸素注入機2001によって行われる。具体的には、封止手段340を外した状態で、貫通穴330に酸素注入機2001の酸素排出口の先端部を接続或いは挿入し、酸素を注入する。これにより、密閉容器300内部空間の酸素濃度は、大気中よりも高められ、とこぶし50の活度の低下は遅くなる。
【0106】
また、上述した酸素注入を開始する前に、例えば掃除機等の吸引機を用いて、密閉容器300の内部空間が真空に近い状態(但し、とこぶし50が生存可能、且つ気圧低下による深刻なダメージを受けないような状態)になるように、貫通穴330から空気を吸い出しておいてもよい。これにより、密閉容器300の内部空間には、吸引を行わない場合と比較して、より多くの酸素を注入することができる。更に、吸引を行うことで、酸素注入前における密閉容器300の内部空間の気圧が低下しているため、酸素注入によって密閉容器300の内部空間の気圧が異常に高まってしまうのを防止することができる。よって、例えば密閉容器300の内部空間の気圧上昇により、とこぶし50がダメージを受けてしまう、或いは密閉容器300が破裂してしまう等の被害を防止することができる。
【0107】
図9に示すように、とこぶし50はカゴ400に入れられた後に、更にカゴ400ごとビニール袋600に入れられ、密閉容器300にパッケージされてもよい。この場合、酸素の注入は、貫通穴330を通して密閉容器300の外に露出させたビニール袋600の口から行う。そして、酸素注入後はビニール袋600の口を、例えばロープ、紐、ゴム若しくは輪ゴム、締め付け金具、接着剤、圧着若しくは熱圧着具、洗濯ばさみ、クリップ又はホチキスなどの封止手段345によって気密的に締め付けることで封止する。このため、上述したカゴ400のみを用いる場合と比べて、酸素注入及び封止が容易である。尚、ここでは説明の便宜上、カゴ400を図8の場合と比較して小さく図示しているが、出荷途中の揺れ等で、カゴ400が密閉容器300の内部空間内で動かないように、図8のように密閉容器300の内部空間にフィットするような大きさであることが望ましい。或いは、保冷剤500等を空いている空間に敷き詰めてカゴ400を固定するようにしてもよい。
【0108】
また、ビニール袋600を用いる場合、蓋320に貫通穴330が設けられなくてもよい。この場合、酸素注入及び封止後におけるビニール袋600が、容器本体310に収容されるようにし、その後に、蓋320が閉じられるようにパッケージすればよい。
【0109】
尚、図8及び図9に示した密閉容器300の密閉空間内には、少なくとも一部に気相部分を残しつつも、塩水を入れることで部分的に液相部分を構築してもよい。例えば、第2塩水と同一塩分濃度の塩水を、とこぶし50が重力下で部分的に又は完全に浸水する程度に入れておいてもよく、或いは出荷途中の密閉容器300の揺れで塩水がとこぶし50にかかる程度に入れておいてもよい。これらにより、とこぶし50の体積及び重量が出荷途中に小さくなるのを抑制できる。或いは、例えば、第1塩水と同一塩分濃度の塩水を、とこぶし50が重力下で部分的に又は完全に浸水する程度に入れておいてもよく、或いは出荷途中の密閉容器300の揺れで塩水がとこぶし50にかかる程度に入れておいてもよい。これらにより、とこぶし50の活性が出荷途中に小さくなるのを抑制できる。このように密閉容器300の密閉空間内に液相部分を構築する場合には、気相部分における酸素濃度を、なるべく高く、例えばほぼ100%にまで向上させた上で密閉してもよい。これにより、液相部分における酸素濃度を、気相部分から液相部分への酸素の混入により、とこぶし50の活度を維持するのに適した値に、比較的長期間に亘って維持できる。
【0110】
最後に図10を参照して、本実施形態に係る再パッケージ方法を用いて搬入した市場において、アンパッケージした際における、とこぶしの活度、売買上の規格重量をクリアしているか否か、及び調理後の食感について、比較例と比較しながら検討を加える。ここに図10は、再パッケージの際の条件と、その条件下で市場に搬入されたとこぶしの状態との関係を示すマトリクス図である。
【0111】
先ず、条件No.1は、本実施形態に係る再パッケージ方法を用いない比較例であり、何ら対策を施さずに市場30に搬入する場合である。この条件では、アンパッケージ時におけるとこぶし50の活度は極めて悪く、半分以上が死滅している状態である。また、とこぶし50の体内の水分が減少しているため、規格重量をクリアしておらず、食感もかたい。
【0112】
次に、条件No.2は、本実施形態に係る再パッケージ方法を用いない比較例であり、倉庫20においてとこぶし50を一旦海水に浸漬する等の対策を行う場合である。とこぶし50を、単純に、海水入りの生簀や水槽に入れてから、出荷するような場合と考えてもよい。この条件では、市場30に搬入する前に海水に浸漬するため、とこぶし50の活度はある程度回復するものの、海水の塩分濃度や酸素濃度等が適切に設定されていないため、十分な回復はなされない。また、とこぶし50は活度が十分に回復しておらず、塩分濃度の違う水槽へ浸漬させられることもないため、水分を十分に吸収することができない。よって、規格重量をクリアすることはできず、食感もかたい。
【0113】
条件No.3は、輸送されて来たとこぶし50を、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17〜28度に設定されている第1塩水101で満たされる水槽内に8時間以上浸漬させ、その後に、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定された第2塩水102で満たされる水槽内に2〜8時間浸漬させ、市場30への搬入の際に、内部空間における気相部分の酸素濃度が大気中よりも高められていると共に該内部空間における温度が摂氏13〜24度の範囲内に保持される出荷用の密閉容器300内に、完全には浸漬されていない状態でパッケージする場合である。この条件では、第1塩水101への浸漬により、とこぶしの活度が十分に回復する。また、そのため、第2塩水102への浸漬の際に十分に水を吸うことができる。更に、パッケージされる密閉容器300の内部空間の温度が低く、酸素濃度が高いため、とこぶし50は有酸素活動が活発でない状態となり、活度の低下が遅くなる。よってとこぶしは、市場30アンパッケージ時においても、十分な活度を保っている。また、第2塩水102への浸漬により水を吸っているため規格重量もクリアしており、食感も柔らかい。
【0114】
条件No.4は、輸送されて来たとこぶし50を、塩分濃度が3.3〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17〜28度に設定されている第1塩水101で満たされる水槽内に18〜36時間浸漬させ、その後に、塩分濃度が1.5〜2.5重量%に設定された第2塩水102で満たされる水槽内に3〜6時間浸漬させ、市場30への搬入の際に、条件No.3と同様のパッケージを行う場合である。この条件では、条件No4.と比較して、塩分濃度と浸漬時間の範囲が若干狭く設定してあるため、条件No.3の場合と同様又はそれ以上の効果を得ることができる。よって、活度も十分保たれ、規格重量もクリアしており、食感も柔らかい。
【0115】
条件No.5は、上述した条件No.4の条件に、第1塩水101及び第2塩水102の酸素濃度を1.5〜2.0体積%に高めるという条件を更に加える場合である。
この条件では、第1塩水101、及び第2塩水102の酸素濃度が高められているため、浸漬した際のとこぶし50の活度の回復度及び吸水率が向上する。よって、条件3及び4と比べて効果は更に高められる。よって、市場30アンパッケージ時におけるとこぶし50の活度は極めて良く、規格重量もクリアしており、食感は柔らかく極めて良い。
【0116】
条件No.6は、上述した条件No.5の条件に、パッケージの際の密閉容器300の内部空間の温度を摂氏14〜20度の範囲内で保持するという条件を更に加える場合である。この条件では、条件No5.と比較して、パッケージ時における密閉容器300の内部空間の温度の範囲が若干狭く設定してあるため、条件No.5の場合と同様又はそれ以上の効果を得ることができる。よって、とこぶし50の活度は極めて良く、規格重量もクリアしており、食感は柔らかく極めて良い。
【0117】
条件No.7は、上述した本実施形態に係る条件No.3〜6のように塩分濃度、酸素濃度、及び水温に関して細かな数値設定を行わず、例えば倉庫20に輸送されてきたとこぶし50を第1塩水に浸漬させ、その後に第1塩水より塩分濃度の低い第2塩水に浸漬させ、市場30に搬入する際に、第1塩水より低い温度で、且つ酸素濃度が大気中よりも高められている密閉容器内に、完全には浸漬されていない状態でパッケージする場合である。この条件では、細かな数値設定がされていない分、高い効果は得られないが、とこぶし50は活度の回復及び塩水の吸収を行うことができ、更に活度の低下が抑制された状態で市場30に搬入されるため、活度は普通の状態を保っている。規格重量は、クリアしているものとしていないものが混在している状態であり、食感はかたくなく普通である。
【0118】
以上説明したように、本実施形態におけるとこぶしの再パッケージ装置を用いた場合には、市場等でアンパッケージした際における、とこぶしの活度を極めて高く維持できる。しかも、市場等でアンパッケージした際に計測される重量が、当初輸送した際に計測される重量よりも軽くなってしまうという不都合を回避できる。更に、市場等でアンパッケージした際には、体積が増大しており、柔らかく調理し易いなど、食材としての価値が高められた状態とされている。
【0119】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うとこぶしの再パッケージ方法及び装置、魚貝類の再パッケージ装置及び方法、並びに、とこぶし用の及び魚貝類パッケージ用の密閉容器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】実施形態に係る魚貝類の流通経路を示すブロック図である。
【図2】魚貝類の再パッケージ方法の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】第1水槽装置の構成を示す平面図である。
【図4】活度を回復させる工程における制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2水槽装置の構成を示す平面図である。
【図6】パッケージ手段における密閉容器の構成を示す斜視図である。
【図7】パッケージ手段におけるカゴの構成を示す斜視図である。
【図8】図6のA−A´線断面図(その1)である。
【図9】図6のA−A´線断面図(その2)である。
【図10】再パッケージの際の条件と、その条件下で市場に搬入されたとこぶしの状態との関係を示すマトリクス図である。
【符号の説明】
【0121】
50…とこぶし、101…第1塩水、102…第2塩水、200…水栓、201…第1水槽、202…第2水槽、210…エアポンプ、220…水温調節器、230…酸素濃度計、240…水温計、250…塩分濃度計、300…密閉容器、310…容器本体、320…蓋、330…貫通穴、340、345…封止手段、350…粘着テープ、400…カゴ、500…保冷剤、600…ビニール袋、1000…コントローラ、1002…酸素供給器、1004…塩分供給器、1006…加熱又は冷却用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全には浸漬されていない状態でパッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にあるとこぶしを、出荷用にパッケージし直す再パッケージ方法であって、
前記輸送されて来たとこぶしを、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17〜28度に設定されている第1塩水で満たされた水槽内に、8時間以上浸漬させる第1浸漬工程と、
該第1浸漬工程の後に、前記とこぶしを、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定された第2塩水で満たされた水槽内に、2〜8時間浸漬させる第2浸漬工程と、
該第2浸漬工程の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められていると共に該内部空間における温度が摂氏13〜24度の範囲内に保持される出荷用の密閉容器内に、前記とこぶしをパッケージするパッケージ工程と
を含むことを特徴とするとこぶしの再パッケージ方法。
【請求項2】
前記第1浸漬工程は、前記とこぶしを、前記塩分濃度が3.3〜3.5重量%に設定された前記第1塩水で満たされた前記水槽内に、18〜36時間浸漬させ、
前記第2浸漬工程は、前記とこぶしを、前記塩分濃度が1.5〜2.5重量%に設定された前記第2塩水で満たされた前記水槽内に、3〜6時間浸漬させる
ことを特徴とする請求項1に記載のとこぶしの再パッケージ方法。
【請求項3】
前記第1浸漬工程は、前記第1塩水における酸素濃度を、1.5〜2.0体積%まで高める工程を含み、
前記第2浸漬工程は、前記第2塩水における酸素濃度を、1.5〜2.0体積%まで高める工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のとこぶしの再パッケージ方法。
【請求項4】
前記パッケージ工程は、前記温度が摂氏14〜20度の範囲内となるように保冷又は加温されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のとこぶしの再パッケージ方法。
【請求項5】
前記密閉容器は、前記内部空間に、前記第2塩水と同一塩分濃度の塩水で満たされた液相部分を含み、
該液相部分における酸素濃度は、前記第2塩水の酸素濃度より高いことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のとこぶしの再パッケージ方法。
【請求項6】
完全には浸漬されていない状態でパッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にあるとこぶしを、出荷用にパッケージし直す再パッケージ装置であって、
前記輸送されて来たとこぶしを8時間以上浸漬させることが可能に構成されており、塩分濃度が2.8〜3.5重量%に設定されていると共に水温が摂氏17〜28度に設定されている第1塩水で満たされた第1水槽装置と、
該第1水槽装置への浸漬の後に、前記とこぶしを2〜8時間浸漬させることが可能に構成されており、塩分濃度が1.2〜2.7重量%に設定された第2塩水で満たされた第2水槽装置と、
該第2水槽装置への浸漬の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められると共に該内部空間における温度が摂氏13〜24度の範囲内に保持されるように出荷用の密閉容器内に、前記とこぶしをパッケージするパッケージ手段と
を含むことを特徴とするとこぶしの再パッケージ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のとこぶしの再パッケージ装置で用いられる密閉容器であって、
前記内部空間を規定すると共に発泡材から構成された容器本体と、
該容器本体に対して密閉可能に装着されると共に発泡材料から構成された蓋と、
前記容器本体及び前記蓋のうち少なくとも一方に設けられており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための貫通穴と、
該貫通穴を封止する封止手段と
を備えたことを特徴とするとこぶしパッケージ用の密閉容器。
【請求項8】
請求項6に記載のとこぶしの再パッケージ装置で用いられる密閉容器であって、
発泡材から構成された容器本体と、
該容器本体の内部に収容され、前記内部空間を規定すると共に可塑性又は柔軟性の材料から構成されており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための口を有する袋と、
該口を、気密的に締め付けることで封止する封止手段と
を備えたことを特徴とするとこぶしパッケージ用の密閉容器。
【請求項9】
前記容器本体内に、前記内部空間における温度が前記摂氏14〜20度の範囲内に保持されるように配置された保冷剤を更に備えることを特徴とする請求項7又は8に記載のとこぶしパッケージ用の密閉容器。
【請求項10】
パッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にある魚貝類を、出荷用にパッケージし直す再パッケージ方法であって、
前記輸送されて来た魚貝類を、その原産海域における海水の塩分濃度を模擬するように塩分濃度が設定されていると共に前記海水の水温を模擬するように水温が設定されている第1塩水で満たされた水槽内に浸漬させることにより、前記魚貝類の活度を回復させる第1浸漬工程と、
該第1浸漬工程の後に、前記魚貝類を、前記第1塩水の塩分濃度より低く且つ前記魚貝類が生息可能な塩分濃度に設定された第2塩水で満たされた水槽内に浸漬させることにより、前記魚貝類の体積を増大させる第2浸漬工程と、
該第2浸漬工程の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められていると共に、該内部空間における温度が、前記第1塩水の水温よりも低く且つ前記魚貝類が生息可能な温度に保持される出荷用の密閉容器内に、前記魚貝類をパッケージするパッケージ工程と
を含むことを特徴とする魚貝類の再パッケージ方法。
【請求項11】
パッケージされた後に輸送されて来る、活魚状態にある魚貝類を、出荷用にパッケージし直す再パッケージ装置であって、
前記輸送されて来た魚貝類を所定時間以上浸漬させることが可能に構成されており、前記魚貝類の原産海域における海水の塩分濃度を模擬するように塩分濃度が設定されていると共に前記海水の水温を模擬するように水温が設定されている第1塩水で満たされた第1水槽装置と、
該第1水槽装置への浸漬の後に、前記魚貝類を所定時間浸漬させることが可能に構成されており、前記第1塩水の塩分濃度より低く且つ前記魚貝類が生息可能な塩分濃度に設定された第2塩水で満たされた第2水槽装置と、
該第2水槽装置への浸漬の後に、内部空間に気相部分を含み該気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められると共に該内部空間における温度が前記第1塩水の水温よりも低く且つ前記魚貝類が生息可能な温度に保持されるように出荷用の密閉容器内に、前記魚貝類をパッケージするパッケージ手段と
を含むことを特徴とする魚貝類の再パッケージ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の魚貝類の再パッケージ装置で用いられる密閉容器であって、
前記内部空間を規定すると共に発泡材から構成された容器本体と、
該容器本体に対して密閉可能に装着されると共に発泡材料から構成された蓋と、
前記容器本体及び前記蓋のうち少なくとも一方に設けられており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための貫通穴と、
該貫通穴を封止する封止手段と
を備えたことを特徴とする魚貝類パッケージ用の密閉容器。
【請求項13】
請求項11に記載の魚貝類の再パッケージ装置で用いられる密閉容器であって、
発泡材から構成された容器本体と、
該容器本体の内部に収容され、前記内部空間を規定すると共に可塑性又は柔軟性の材料から構成されており、前記気相部分における酸素濃度が大気中よりも高められるように、前記内部空間に酸素を注入するための口を有する袋と、
該口を、気密的に締め付けることで封止する封止手段と
を備えたことを特徴とする魚貝類パッケージ用の密閉容器。
【請求項14】
前記容器本体内に、前記内部空間における温度が前記生息可能な温度の範囲内に保持されるように配置された保冷剤を更に備えることを特徴とする請求項12又は13に記載の魚貝類パッケージ用の密閉容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−125462(P2008−125462A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315510(P2006−315510)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【特許番号】特許第3909340号(P3909340)
【特許公報発行日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(506390317)エイカク株式会社 (2)
【Fターム(参考)】