説明

ねじ分離装置

【課題】複数のねじ同士が塗料によって固着して不良品となることを防止する。
【解決手段】ねじ分離装置は、塗料液により付着した複数のねじ40を遠心力により飛散させて分離壁60に衝突させて分離する分離部10と、分離した複数のねじ40を収容容器50に搬送する搬送部20と、搬送途中の複数のねじ40を乾燥する乾燥部30とを有し、収容容器50に分離された複数のねじ40を収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のねじが塗料によって固着して不良品になるのを避けるのに好適なねじ分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分のねじは、塗料液中に浸漬後、ねじに付着している余分な塗料を遠心力で振り落とす遠心塗装機を使って塗装が行われている。特に、六角穴付ボルトや十字穴のあるねじ等、窪みを有するねじの塗装に対しては、窪み内の塗料の振り落としが不充分で、ねじの塗装歩留が悪いという欠点があるため、ねじの窪みに塗料が残らないようにしたものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−210404
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、ねじに余分な塗料が残らないようにしているが、複数のねじを同時に処理しており、特にねじが小さい場合には複数のねじが塗料の固化によって一体になり、ねじ同士が分離できないようになって不良品ができる虞がある。
【0004】
この発明は、このような実情に鑑みなされたもので、複数のねじ同士が塗料によって固着して不良品となることを防止するねじ分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、この発明は、以下のように構成した。
【0006】
請求項1に記載の発明は、
塗料液により付着した複数のねじを遠心力により飛散させて分離壁に衝突させて分離する分離部と、
前記分離した複数のねじを収容容器に搬送する搬送部と、
前記搬送途中の前記複数のねじを乾燥する乾燥部とを有し、
前記収容容器に分離された複数のねじを収容することを特徴とするねじ分離装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
前記分離部は、
塗料液により付着した複数のねじを収容し、底部に前記ねじが落下する落下開口を有する収容部と、
前記収容部の下方に配置され、前記落下開口と連通する落下連通開口を有し、前記分離壁を備えて分離したねじを前記搬送部の上に落下させる分離箱と、
前記分離箱の内部に配置され、前記収容部の落下開口から落下する前記塗料液により付着した複数のねじを遠心力により飛散させて分離する回転羽根部とを有し、
前記回転羽根部は、
回転中心に落下する前記塗料液により付着した複数のねじを収容する受け部と、
前記受け部に連通して放射状に延びる分離通路が形成された羽根部とを有し、
前記回転羽根部の回転により前記受け部に落下した塗料液により付着した複数のねじを、前記受け部から前記分離通路に導き、遠心力により前記分離通路を通して飛散させて 前記分離壁に衝突させて分離することを特徴とする請求項1に記載のねじ分離装置である。
請求項3に記載の発明は、
前記受け部は、
前記収容部の落下開口の下方に位置する断面円形の導入開口と、
前記導入開口に連通し、前記落下した複数のねじを、回転中心側から前記分離通路に導く放射状の案内通路とを有し、
前記案内通路は、回転中心側が鋭角な隔壁で形成されていることを特徴とする請求項2に記載のねじ分離装置である。
【発明の効果】
【0008】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、塗料液により付着した複数のねじを遠心力により飛散させて分離壁に衝突させて分離し、この分離した複数のねじを搬送し、この搬送途中の複数のねじを乾燥し、収容容器に分離された複数のねじを収容することで、複数のねじ同士が塗料によって固着して不良品となることを防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、分離部の収容部に塗料液により付着した複数のねじを収容し、このねじを底部の落下開口から分離箱の落下連通開口を介して内部に配置された回転羽根部の受け部内へ落下させ、回転羽根部の回転により受け部に落下した塗料液により付着した複数のねじを、受け部から分離通路に導き、複数のねじを遠心力により分離通路を通して直線方向に飛散させて分離壁に強く衝突させて分離し、この分離した複数のねじを搬送部の上に落下させることで、簡単な構造で確実に複数のねじ同士を分離することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、回転中心側が鋭角な隔壁によって案内通路が形成されているため、落下した複数のねじを鋭角な隔壁によって確実に、目詰まりなく回転中心側から案内通路に導き、さらに案内通路から分離通路に導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明のねじ分離装置の実施の形態について説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものである。
【0013】
まず、ねじ分離装置の概略構成を、図1乃至図8に基づいて説明する。図1はねじ分離装置の側面図、図2はねじ分離装置の平面図、図3は塗料液により付着した複数のねじを示す図、図4は分離部の回転羽根部の平面図、図5は図4のV−V線に沿う断面図、図6は図4のVI−VI線に沿う断面図、図7は受け部を外した回転羽根部の平面図、図8は受け部を示す図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は側面図、図8(c)は底面図である。
【0014】
ねじ分離装置は、分離部10と、搬送部20と、乾燥部30とを有し、分離部10で塗料液により付着した複数のねじ40を遠心力により飛散させて分離壁60に衝突させて分離し、この分離した複数のねじ40を搬送部20により搬送する。この搬送途中の複数のねじを乾燥部30により乾燥し、収容容器50に分離された複数のねじ40を収容する。
【0015】
ねじ40は、図3(a)に示すように、窪み40a1を有する頭部40aと、この頭部40aと一体に形成したねじ山40b1を備えた脚部40bとからなる。このねじ40は、加工工程で塗料液中に浸漬後、ねじ40に付着している余分な塗料を遠心力で振り落とす遠心塗装機を使って塗装が行われている。このため、ねじ40に余分な塗料が残らないようにしているが、複数のねじ40を同時に処理する場合には、図3(b)に示すように、特にねじ40が小さいと、ねじ40に付着している塗料が固化して複数のねじ40が一体になり、ねじ40同士が分離できないようになって不良品ができる虞がある。
【0016】
分離部10は、収容部11と、分離箱12と、回転羽根部13とを有し、塗料液により付着した複数のねじ40を遠心力により飛散させて分離壁60に衝突させて分離する。収容部11は漏斗状に形成され、分離箱12上に固定して設けられ、多数のねじ40を収容できる大きさになっている。この収容部11の底部11aには、ねじ40が落下する落下開口11bが形成され、塗料液により付着した複数のねじ40が落下開口11bから落下し、あるいは付着しないで複数のねじ40が落下する場合もある。収容部11は、回転するようにしても良く、回転するようにする場合には内壁にリブを形成すると容易にねじ40が落下するようになる。
【0017】
分離箱12は、搬送部20の上方位置で、収容部11の下方位置に配置され、下方を開口した方形に形成され,平面状の壁を有している。この分離箱12の天井壁12aには、収容部11の落下開口11bと連通する落下連通開口12bを有し、ねじ40が落下開口11b、落下連通開口12bを通って回転羽根部13に落下するようになっている。
【0018】
分離箱12の側壁が分離壁60を形成しており、回転羽根部13は分離箱12の内部に配置され、落下する塗料液により付着した複数のねじ40を遠心力により飛散させ、離壁60に衝突させて分離し、分離したねじ40は分離箱12の下部開口12cから搬送部20の上に落下する。また、分離箱12の側壁の内側に別体で分離壁60を設けてもよく、この場合は自由に衝突で分離しやすい位置を設定でき、分離壁60は平面状であることで塗料液により付着した複数のねじ40を遠心力により強く衝突させることができる。
【0019】
回転羽根部13は、分離箱12の内部に配置され、落下する塗料液により付着した複数のねじ40を遠心力により飛散させて分離する。この回転羽根部13は、図4乃至図8に示すように、受け部13aと、羽根部13bとを有し、駆動装置73の駆動によって駆動軸72を介して回転羽根部13を回転する。
【0020】
羽根部13bは、円盤形状のベース部材70に蓋部材71を重ね合わせ、ベース部材70の中心位置に駆動軸72の先端部を貫通させ、ベース部材70の下側に支持プレート75を当てナット76によって締付固定されている。蓋部材71は、回転中心側に位置する円筒部71aと、この円筒部71aから放射状に延びる8個の放射状部71bを有している。放射状部71bは、8個の限らず、1個でも、複数でもよく、特に限定されない。円筒部71aから放射状部71bに連続して溝部71cが形成されており、ベース部材70に蓋部材71を重ね合わせることで溝部71cによって受け部13aに連通して放射状に延びる分離通路13dが形成される。
【0021】
受け部13aは、ガイド部13a1と、リング部13a2とを有し、円筒部71aに嵌合されている。ガイド部13a1は樹脂で成形され、リング部13a2は金属で成形され、ガイド部13a1の上面にリング部13a2が固定されている。リング部13a2は、上部が開口された円錐形に形成され、断面円形の導入開口13a21が形成されている。導入開口13a21は、収容部11の落下開口11bの下方に位置し、リング部13a2を金属で成形することで、落下した複数のねじ40がガイド部13a1に当たらないように保護し、耐久性を向上させている。ガイド部13a1は、案内通路13a11を有し、この案内通路13a11は、導入開口13a21に連通し、回転中心側が鋭角な隔壁13a12で落下した複数のねじ40を、回転中心側から分離通路13dに導くように形成されている。また、受け部13aの回転中心位置には、円錐部13eが設けられ、この円錐部13eを駆動軸72が貫通している。この円錐部13eは、金属で成形されている。落下した複数のねじ40は、円錐部13eに当たって案内通路13a11を介して分離通路13dに導かれるが、円錐部13eが金属で成形されていることで、落下した複数のねじ40がベース部材70に当たらないように保護し、耐久性を向上させている。
【0022】
受け部13aの大きさは、複数のねじ40が同時に入ることができ、かつ複数のねじ40が同時に回転して遠心力でそれぞれの分離通路13dに入ることができる大きさである。さらに、分離通路13dの通路断面積も複数のねじ40が同時に通過することが可能な大きさに設定される。分離通路13dによって塗料液により付着した複数のねじ40が案内され、しかも遠心力により直線方向に飛び出すことができ、強く分離壁60に衝突する。
【0023】
ベース部材70の中心位置には、駆動軸72の先端部が接続されており、駆動装置73の駆動によって駆動軸72を介して回転羽根部13を回転する。受け部13aが回転中心部に落下する塗料液により付着した複数のねじ40を収容し、回転羽根部13の回転により受け部13aに落下した塗料液により付着した複数のねじ40を、受け部13aから振り分けて分離通路13dに導き、遠心力により分離通路13dを通して飛散させて分離壁60に衝突させて分離する。
【0024】
このとき、複数のねじ40に余分に付着されている塗料液も衝突によって同時に除去される。この分離した複数のねじ40は、搬送部20のベルト上に落下し、搬送部20の駆動で収容容器50に搬送される。
【0025】
なお、駆動装置73は、分離箱12の内部に配置して駆動軸72により回転羽根部13を回転するようにしてもよい。
【0026】
乾燥部30は、例えば熱風を送る乾燥機で構成され、図1および図2に示すように、搬送部50の搬送幅方向に沿って複数個配置され、搬送途中の複数のねじ40に熱風を吹き付けて乾燥する。
【0027】
このように、塗料液により付着した複数のねじ40を遠心力により飛散させて分離壁60に衝突させて分離し、この分離した複数のねじ40を搬送し、この搬送途中の複数のねじ40を乾燥し、収容容器50に分離された複数のねじ40を収容することで、複数のねじ40同士が塗料によって固着して不良品となることを防止することができる。
【0028】
また、分離部10の収容部11に塗料液により付着した複数のねじ40を収容し、このねじ40を底部11aの落下開口11bから分離箱12の落下連通開口12bを介して内部に配置された回転羽根部13の受け部13a内へ落下させ、回転羽根部13の回転により受け部13aに落下した塗料液により付着した複数のねじ40を、受け部13aから分離通路13dに導く。
【0029】
このとき、受け部13aは、回転中心側が鋭角な隔壁13a12によって案内通路13a11が形成されているため、落下した複数のねじ40を鋭角な隔壁13a12によって確実に、目詰まりなくすべて回転中心側から案内通路13a11に導き、収容部11から落下した複数のねじ40を全て案内通路13a11から分離通路13dに導く。このようにして、落下した複数のねじ40をすべて受け部13aを通過させることができ、複数のねじ40を遠心力により分離通路13dを通して飛散させて分離壁60に衝突させ、簡単な構造で確実に複数のねじ40同士を分離し、搬送部20のベルト上に均等に落下することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、複数のねじが塗料によって固着して不良品になるのを避けるのに好適なねじ分離装置に適用可能であり、複数のねじ同士が塗料によって固着して不良品となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ねじ分離装置の側面図である。
【図2】ねじ分離装置の平面図である。
【図3】塗料液により付着した複数のねじを示す図である。
【図4】分離部の回転羽根部の平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】受け部を外した回転羽根部の平面図である。
【図8】受け部を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10 分離部
11 収容部
11a 底部
11b 落下開口
12 分離箱
12a 天井壁
12b 落下連通開口
12c 下部開口
13 回転羽根部
13a 受け部
13a1 ガイド部
13a11 案内通路
13a12 隔壁
13a2 リング部
13a21 導入開口
13b 羽根部
13d 分離通路
20 搬送部
30 乾燥部
40 ねじ
50 収容容器
60 分離壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料液により付着した複数のねじを遠心力により飛散させて分離壁に衝突させて分離する分離部と、
前記分離した複数のねじを収容容器に搬送する搬送部と、
前記搬送途中の前記複数のねじを乾燥する乾燥部とを有し、
前記収容容器に分離された複数のねじを収容することを特徴とするねじ分離装置。
【請求項2】
前記分離部は、
塗料液により付着した複数のねじを収容し、底部に前記ねじが落下する落下開口を有する収容部と、
前記収容部の下方に配置され、前記落下開口と連通する落下連通開口を有し、前記分離壁を備えて分離したねじを前記搬送部の上に落下させる分離箱と、
前記分離箱の内部に配置され、前記収容部の落下開口から落下する前記塗料液により付着した複数のねじを遠心力により飛散させて分離する回転羽根部とを有し、
前記回転羽根部は、
回転中心に落下する前記塗料液により付着した複数のねじを収容する受け部と、
前記受け部に連通して放射状に延びる分離通路が形成された羽根部とを有し、
前記回転羽根部の回転により前記受け部に落下した塗料液により付着した複数のねじを、前記受け部から前記分離通路に導き、遠心力により前記分離通路を通して飛散させて前記分離壁に衝突させて分離することを特徴とする請求項1に記載のねじ分離装置。
【請求項3】
前記受け部は、
前記収容部の落下開口の下方に位置する断面円形の導入開口と、
前記導入開口に連通し、前記落下した複数のねじを、回転中心側から前記分離通路に導く放射状の案内通路とを有し、
前記案内通路は、回転中心側が鋭角な隔壁で形成されていることを特徴とする請求項2に記載のねじ分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−241051(P2009−241051A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138359(P2008−138359)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(500465444)株式会社ユニオン精密 (30)
【出願人】(508077414)日水電気化学工業株式会社 (1)
【出願人】(508077643)株式会社放電精密加工研究所 (1)
【Fターム(参考)】