説明

ねじ山検査装置

【課題】ゲージを検査対象物に螺合する際の推力を制御することにより、正確な検査を実現するねじ山検査装置である。
【解決手段】
本発明は、ねじに螺合可能なゲージを回転駆動するように構成されたゲージツール10と、このゲージツール10を往復移動させる往復移動手段20と、前記ゲージツール10の移動位置を検出可能な位置検出手段と、前記ゲージツール10に推力を作用させる推力付与手段とを備えたねじ山検査装置1であって、ゲージ13のサイズに応じた推力パラメータを選択し、ゲージ13とねじとの摩擦を低減可能に前記推力付与手段を制御する制御手段30を有していることを特徴とするねじ山検査装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌ねじあるいは雄ねじにおいて、これらのねじ山の精度を検査するためのねじ山検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじ山の精度検査は、雌ねじ検査の場合、棒状のプラグゲージを用いて検査をしていた。このプラグゲージ検査には、通りねじプラグゲージ(以下、通りゲージという)を用いた検査と、止まりねじプラグゲージ(以下、止まりゲージという)を用いた検査とがあり、これら両方の検査に合格した検査対象物(雌ねじ)のみが良品と判断される。これより、通りゲージを用いた検査(以下、通りゲージ検査という)および止まりゲージを用いた検査(以下、止まりゲージ検査という)について説明する。まず、通りゲージ検査は、雌ねじの総合有効径が規定された許容限界内にあるかどうかを検査するもので、検査対象物である雌ねじに通りゲージが所定の深さまで螺合するか否かを検査する。次に、止まりゲージ検査は、雌ねじの実際の有効径が規定された最大寸法より小さいかどうかを検査するもので、検査対象物である雌ねじに止まりゲージが所定の深さ(例えば2リード分)を超えてねじ込まれなければ、雌ねじは止まりゲージ検査に合格したことになる。また、雄ねじ検査の場合は、プラグゲージに換えて、止まりリングゲージと通りリングゲージを用いて、プラグゲージを用いた検査と同様の手順で検査していた。
【0003】
しかしながら、上記検査は手作業で行われているので、多数の雌ねじを検査する場合、多くの時間を必要とする問題を有していた。この検査を自動化することを目的として、特許文献1に示されるナット検査装置が創成された。このナット検査装置は、プラグゲージを回転駆動するゲージ回転用モータと、プラグゲージの回転トルクを検出するトルク検出手段と、プラグゲージを軸方向に往復移動可能な往復移動手段と、プラグゲージの往復移動位置を検出する位置検出手段とから構成されている。
【0004】
前記ナット検査装置を用いて通りゲージ検査を行う場合、予めトルクの上限値と下限値とが設定されており、検査時において通りゲージにかかる回転負荷トルク値が前記設定トルクの範囲を外れた場合、ゲージ回転用モータの回転駆動が停止して通りゲージの螺入を中止する。この時の通りゲージの螺入位置をセンサで感知し、この停止位置が予め設定された螺合完了位置に合致すれば、当該ナットは良品と判断され、また合致しなければ不良品と判断される。ここで良品と判断されたナットのみが、止まりゲージを使用した検査に移る。止まりゲージ検査では、予め最大トルクが設定されており、止まりゲージかかる回転負荷トルクが最大トルクに達したときにゲージ回転用モータの回転駆動が停止して止まりゲージの螺入を中止する。この時の止まりゲージの螺入位置が予め設定された止まりゲージ停止位置の範囲内であれば、当該ナットは良品と判断され、また停止位置の範囲を外れている場合、当該ナットは不良品と判断される。
【0005】
【特許文献1】特許第3491843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記ナット検査装置においては、検査時にプラグゲージを移動させる往復移動手段の力でプラグゲージがナットに押圧されることにより、プラグゲージのねじ山とナットのねじ山との摩擦抵抗が大きくなり、回転負荷トルクの判定に影響を及ぼす等、正確なねじ山検査ができない問題を有していた。また、測定器具として精度を保つ必要のあるプラグゲージの早期摩耗を生じ、多量のナット等の自動検査においては頻繁にプラグゲージの検定・交換が必要になって検査効率が低下するとともに、プラグゲージにかかる費用が増大する等の問題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、被検査部品のねじ部に螺合してこれの検査を行うゲージを回転駆動するように構成されたゲージツールと、前記ゲージを往復移動操作する往復移動手段とを備えたねじ山検査装置であって、ゲージとねじ部との摩擦を低減可能に前記往復移動手段を制御する制御手段を有していることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、被検査部品のねじ部に螺合してこれの検査を行うゲージを回転駆動するように構成されたゲージツールと、前記ゲージを往復移動操作する往復移動手段と、前記ゲージに作用する回転負荷トルクを検出するトルク検出手段とを備えたねじ山検査装置であって、ゲージがねじ部に所定量螺合する過程でトルク検出手段によりゲージに作用する回転負荷トルクが予め定められた限界トルクに達するか否かを確認するとともに、被検査部品のねじ部にゲージを螺合させる時およびこれらの螺合を解く時のそれぞれの段階においてゲージがねじ部を押圧する力をゲージツールの自重程度に軽減するよう往復移動手段を制御する制御手段を備えていることを特徴とするものでもある。
【0009】
なお、前記ゲージツールには、ゲージをその往復移動方向に直交する方向に所定量移動可能に支持するフローティング機構を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のねじ山検査装置では、ゲージがねじ部を押圧する力を軽減することができるため、ゲージをねじ部に螺合する時あるいはこれらの螺合を解く時にゲージのねじ山と検査対象物であるねじ部のねじ山との摩擦を低減することができる。よって、手作業でのゲージ検査に近い精度で雌ねじあるいは雄ねじのねじ山を自動検査することができる。また、従来に比べてゲージの長寿命化を図ることができるため、ゲージの検定・交換による検査効率低下を抑制するとともに、ゲージにかかる費用を低減できる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はねじ山検査装置であり、プラグゲージ回転駆動用モータ11(以下、回転用モータ11という)の出力軸11aにフローティング機構12を連結し、さらにこのフローティング機構12にプラグゲージ13(以下、ゲージ13という)を連結して成るゲージツール10と、このゲージツール10を前記ゲージ13の軸方向に往復移動させるとともに、これによりゲージ13が被検査部品のねじ部に螺合した時には当該ねじ部にゲージ13から所定の押圧力(以下、これを推力と称する)を作用させ得る往復移動手段20と、これらの制御手段30とを備えている。
【0012】
前記ゲージツール10においては、回転用モータ11の出力軸11aと前記フローティング機構12とが直結されているため、フローティング機構12は、回転用モータ11に対して軸方向に移動できない。また、フローティング機構12の連結軸12aには、前記ゲージ13が直結されている。よって、ゲージ13も回転用モータ11やフローティング機構12に対して軸方向には移動できない。また、このフローティング機構12は、エアの吸排によってゲージ13の保持具合を調整可能に構成されており、フローティング機構12内にエアが吸引された場合(ロック時)にはゲージ13が拘持され、エアが排出された場合(ロック解除時)には、ゲージ13が往復移動方向に直交する方向に所定量移動自在になるように構成されている。このフローティング機構12は早送り時および早戻り時にはゲージ13を拘持し、ゲージ13を所定の位置に保つ。また、検査時および検査穴抜け時にはゲージ13のロックを解除し、万一、芯がずれた状態でゲージ13の先端が検査対象物の雌ねじ入口まで下降した場合でも、ゲージ13を雌ねじに位置合わせし、正確に螺合させることができる。
【0013】
本ねじ山検査装置1で使用する前記ゲージ13には、背景技術で説明したのと同様に通りゲージと止まりゲージの2種類のゲージがあり、必要に応じてこれらのゲージを付け替えて使用する。これにより、通りゲージを用いた通りゲージ検査と止まりゲージを用いた止まりゲージ検査とを選択できるようになっている。なお、本発明のねじ山検査装置1は、前記ゲージ13(プラグゲージ)に換えて、雄ねじ検査用のリングゲージ(図示せず)を用いた雄ねじの検査を行うことも可能である。
【0014】
前記往復移動手段20は、サーボモータである移動用モータ21と、この移動用モータ21の出力軸21aの回転量を検出可能なロータリエンコーダ22(以下、エンコーダ22という)と、前記移動用モータ21の駆動を受けて作動するボールねじ機構23と、このボールねじ機構23の軸受け部23bに連結されたテーブル24とを有して成る。この往復移動手段20におけるボールねじ機構23は、ボールねじ軸23aに軸受け部23bを螺合させて成る一般的なものであり、移動用モータ212の駆動を受けてボールねじ軸23aが回転することにより、軸受け部23bと前記テーブル24とをボールねじ軸23aの延びる方向に一体に移動させるように構成されている。
【0015】
前記制御手段30は、前記回転用モータ11の駆動を制御するツールコントローラ40と、前記移動用モータ21の駆動を制御するサーボコントローラ50と、これらコントローラ40,50からの信号に基づいて演算処理を行う制御部60とを備えている。
【0016】
前記ツールコントローラ40は、回転用モータ11と接続されており、この回転用モータ11の負荷電流値に応じて回転用モータ11の正転駆動/逆転駆動/停止を切り換えるように構成されている。つまり、検査対象部品の雌ねじにゲージ13を螺入する段階においては、予め限界トルク値が設定されており、この限界トルクを超えるトルクに相当する負荷電流が流れた場合には、回転用モータ11の駆動が停止するように構成されている。このように本実施形態では、ツールコントローラ40が特許請求の範囲に記載したトルク検出手段を構成している。
【0017】
前記サーボコントローラ50は、往復移動手段20における移動用モータ21およびエンコーダ22と接続されており、エンコーダ22の出力するパルス信号(移動用モータの回転角度)とボールねじ軸23aのリードとから軸受け部23bの移動量、すなわち、ゲージツール10の移動位置を判別するようになっている。そして、各移動位置に応じて移動用モータ21の駆動を制御するように構成されている。
【0018】
前記ねじ山検査装置1を用いて雌ねじ検査する場合には、図2に示す推力切換ポイントがある。この推力切換ポイントには、
A点:ゲージツール10が被検査部材から離れて待機する位置
B点:ゲージ13先端が雌ねじに当接する手前の位置
C点:ゲージ13が正しく螺入されるべき位置
D点:雌ねじに螺合しているゲージ13をねじ戻し、該ゲージ13の先端が雌ねじに当接する手前の位置まで復帰した位置。前記B点と同位置。
E点:雌ねじに当接する手前の位置にあるゲージ13が最終的に待機位置に復帰した位置。前記A点と同位置。
がある。これら推力切換ポイントおよびゲージ13のサイズに応じて必要な制御パラメータを設定して雌ねじ検査を行う。なお、以下の説明では、A点(待機位置)にあるゲージ13がB点まで下降する段階を「早送り時」、ゲージ13を雌ねじに螺入する段階を「検査時」、雌ねじに螺合しているゲージ13をD点までねじ戻して復帰させる段階を「検査穴抜け時」、ゲージ13をD点からE点まで復帰(上昇)させる段階を「早戻り時」として、本ねじ山検査装置による雌ねじ検査の説明を行う。
【0019】
前記制御パラメータは、制御部60における例えばハードディスク装置、メモリ装置等の記憶部(図示せず)に備えられたゲージ13のサイズ毎の設定テーブルに設定される。この設定テーブルには、限界トルク、NG検出距離、推力パラメータ、速度パラメータの各制御パラメータを設定可能に構成される(図3参照)。
【0020】
前記限界トルクは、通りゲージ検査と止まりゲージ検査のそれぞれに対応して設定され、各検査においてゲージ13螺入時のトルクアップを判断する指標として用いられる。また、前記NG検出距離は、通りゲージ検査および止まりゲージ検査に用いる各々の不良検出距離を示す。通りゲージ検査における不良検出距離は、雌ねじに螺入される通りゲージの回転負荷トルクが予め設定された設定トルクの上下限範囲から外れた時に通りゲージが達していなければならない螺入位置を示すものである。また、止まりゲージ検査における不良検出位置は、雌ねじに螺入される止まりゲージの回転負荷トルクが予め設定された最大トルク値に達した時に止まりゲージが超えていてはならない螺入位置を示すものである。このNG検出距離は前記B点からC点までの距離を示し、後述のC点到達の判定基準値として用いられる。なお、A点からB点の間の距離(=D点からE点の間の距離)は、別途制御部60に設定される。
【0021】
前記推力パラメータは、早送り時、検査時、検査穴抜け時、早戻り時における移動用モータ21の駆動トルクを示す。これらの推力パラメータ(駆動トルク)を切り換えて移動用モータ21が駆動制御されることにより、ゲージツール10に付与される推力が変更されることになる。また、前記速度パラメータは、早送り時、検査時、検査穴抜け時、早戻り時における移動用モータ21の回転駆動速度を表すものである。この速度パラメータで移動用モータ21の回転速度が制御されることにより、ゲージツール10の移動速度が変更される。
【0022】
前記制御部60は、図4に示すように、
S001:通りゲージ検査スタート信号又は止まりゲージ検査スタート信号を待つ。
S002:スタート信号に応じた制御パラメータを読み込み、その内の限界トルクをツールコントローラ40に出力するとともに、他のパラメータをサーボコントローラ50に出力する。
S003:ツールコントローラ40、サーボコントローラ50へそれぞれスタート信号を出力する。
S004:サーボコントローラ50からC点到達信号が入力されたか否か確認する。入力されていない場合は、S020へジャンプする。
S005:ツールコントローラ40へ割込停止信号を出力する。(これにより回転用モータ11が停止)
S006:スタート信号の種別から通りゲージ検査か止まりゲージ検査かを判断し、通りゲージ検査でない場合は、S008にジャンプする。
S007:表示部に検査合格表示指令信号を出力しS009へジャンプする。
S008:表示部に検査不合格表示指令信号を出力する。
S009:ツールコントローラ40とサーボコントローラ50に復帰信号を出力する。
S010:サーボコントローラ50から復帰完了信号が入力されるのを待つ。
S011:エンド。
S020:ツールコントローラ40からトルクアップ信号が入力されたか否か確認する。入力されていない場合はS004にジャンプする。
S021:サーボコントローラ50へ割込停止信号を出力する。(これにより移動用モータ21が停止)
S022:スタート信号の種別から通りゲージ検査か止まりゲージ検査かを判断し、通りゲージ検査の場合はS008へ、通りゲージ検査でない場合はS007にジャンプする。の各ステップで成るメイン制御処理を実行する。
【0023】
また、ツールコントローラ40は、図5に示すように、
S101:制御部60からスタート信号が入力されるのを待つ。
S102:制御部60から送られた限界トルクを読み込む。
S103:回転用モータ11に駆動信号を出力する。(回転用モータ11がゲージ13を螺入する方向に回転駆動)
S104:回転用モータ11の負荷電流値を取得し、これが限界トルクに相当する電流値に達したか(トルクアップしたか)否かを確認する。トルクアップしていない場合は、S112へジャンプする。
S105:制御部60にトルクアップ信号を出力する。
S106:回転用モータ11に停止信号を出力する。(回転用モータ11が駆動停止)
S107:制御部60から復帰信号が入力されるのを待つ。
S108:回転用モータ11に逆転駆動信号を出力する。(回転用モータ11がゲージ13を雌ねじから抜き取る方向に回転駆動)
S109:サーボコントローラ50からD点復帰信号が入力されるのを待つ。
S110:回転用モータ11に停止信号を出力する。
S111:エンド
S112:制御部60から割込停止信号が入力されたか否かを確認し、入力された場合はS106にジャンプし、入力されていない場合はS104にジャンプする。
の各ステップで成るツールコントローラ制御処理を実行する。
【0024】
また、サーボコントローラ50は、図6に示すように、
S201:制御部60からスタート信号が入力されるのを待つ。
S202:制御部60から送られた制御パラメータを読み込む。
S203:「早送り」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S204:エンコーダ22からのパルス信号を監視してB点に到達するのを待つ。
S205:「検査」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S206:エンコーダ22からのパルス信号によりC点に到達したか否かを確認する。到達していない場合はS217にジャンプする。
S207:制御部60にC点到達信号を出力する。
S208:移動用モータ21に停止信号を出力する。
S209:制御部60から復帰信号が入力されるのを待つ。
S210:「検査穴抜け」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S211:エンコーダ22からのパルス信号を監視してD点に到達するのを待つ。
S212:ツールコントローラ40にD点到達信号を出力する。(回転用モータ11の逆転駆動が停止する)
S213:「早戻り」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S214:エンコーダ22からのパルス信号を監視してE点に到達するのを待つ。
S215:制御部60に復帰完了信号を出力する。
S216:エンド
S217:制御部60から割込停止信号が入力されたか否かを確認し、入力された場合はS208へジャンプし、入力されていない場合はS206へジャンプする。
の各ステップで成るサーボコントローラ制御処理を実行する。
【0025】
次に、本ねじ山検査装置1による雌ねじ検査作業を説明する。本ねじ山検査装置1により被検査部品に形成された雌ねじの検査を行う場合、予め制御部60の設定テーブルに必要な制御パラメータを設定する。この制御パラメータの入力設定は、制御手段30に備えられたテンキー等の操作部(図示せず)から行う。
【0026】
締め付けるゲージ13のサイズに対応した制御パラメータを設定した後、制御手段30の通りゲージ検査スタートスイッチ又は止まりゲージ検査スタートスイッチ(何れも図示せず)が押され、これにより制御部60に検査スタート信号が入力されると、これに応じてツールコントローラ40には設定トルク、サーボコントローラ50には制御パラメータの設定値がそれぞれ指定されるとともに、ツールコントローラ40、サーボコントローラ50にそれぞれスタート信号が出力される。
【0027】
前述のように各コントローラ40,50にスタート信号が入力されると、まず移動用モータ21が早送り時における推力パラメータと速度パラメータで回転駆動される。これによりボールねじ機構23が作動し、ゲージ13の先端前方方向へテーブル24およびゲージツール10を高速で前進移動させる。この時、前記フローティング機構12はロックされているので、前記ゲージ13を安定して下降させることができる。また、移動用モータ21の駆動開始と同時に回転用モータ11も駆動を開始し、これによりゲージ13が雌ねじに螺入する方向に回転を始める。
【0028】
ゲージツール10が前進してゲージ13の先端がB点に到達すると、これを受けて移動用モータ21が検査時の推力パラメータと速度パラメータで駆動するよう駆動制御が切換えられる。これにより、ゲージツール10の下降速度は所定の低速度に切換えられるとともに、ゲージ13に付与される推力が所定の推力に維持される。また、この時フローティング機構12のロックは解除されている。これらにより、ゲージ13を雌ねじに緩やかに到達させつつ正確に螺合させ、しかも雌ねじと過剰な摩擦を生じない適度な推力でもって雌ねじに螺入していくことができる。
【0029】
検査時の推力パラメータはゲージ13のサイズによって設定値が異なる。例えば、呼び径が3mm(M3)のゲージ13を用いる検査であれば、前記検査パラメータの推力制限値を0%に設定する。これにより、ゲージツール10および往復移動手段20の自重のみを推力として付与することになる。一方、呼び径が10mm(M10)のゲージ13を用いる検査では、推力パラメータが10%(ボールねじのリードが12mm、伝達効率が0.9、移動用モータの定格トルクが0.318N・mの場合は17.982N・m)に設定され、ゲージツール10および往復移動手段20の自重プラス17.982N・mが推力として付与される。
【0030】
なお、前記検査時の推力パラメータは、ゲージ13のサイズに応じたものとしているが、これを雌ねじの材質を基準としたものとしてもよい。例えば、前述のようなM3のゲージ13を用いる検査であっても、ねじ山部分の摩擦抵抗が大きい部材で成る雌ねじを検査する場合は、ゲージツール10および往復移動手段20の自重による推力から所定の推力を差し引いた推力を付与するよう、推力パラメータを設定するとよい。
【0031】
検査が通りゲージ検査の場合は、雌ねじに螺入するゲージ13に作用する回転負荷トルクが限界トルクを超えることなく、ゲージ13の先端がC点に到達すれば、その雌ねじは検査合格となる。万一、雌ねじがJIS規格の公差範囲より小さい場合は、ゲージ13先端がC点に到達するまでにゲージ13に作用する回転負荷トルクが限界トルクを超える。このことは、回転用モータ11の負荷電流値が限界トルクに相当する負荷電流値に達したかどうかを見ることで判定できる。ゲージ13に作用する回転負荷トルクと回転用モータ11を駆動するための負荷電流値とは比例関係にあるためである。ゲージ13の回転負荷トルクが限界トルクを超えた場合、その雌ねじは検査不合格となる。
【0032】
通りゲージ検査を具体的に説明すると、M10サイズの通りゲージ検査において有効深さが10mmの雌ねじを検査する場合、通りゲージ検査用のNG検出距離を図3のように12mmに設定する。これは、B点から雌ねじの入口までの距離を2mm程度確保しておくためである。このように設定すると、通りゲージがB点から12mmの深さ(C点)に達するまでに、回転用モータ11に限界トルクを超えるトルクに相当する負荷電流値が流れた場合、当該雌ねじは検査不合格と判断され、流れなかった場合には検査合格と判断される。そして、回転用モータ11および移動用モータ21が停止し、これらは復帰動作を開始する。
【0033】
検査が止まりゲージ検査の場合は、通りゲージ検査とは逆にゲージ13の先端がC点に到達する前に回転負荷トルクが限界トルクに達すれば、その雌ねじは検査合格となる。万一、雌ねじがJIS規格の公差範囲より大きい場合には、ゲージ13がC点を超えるまで螺入されてしまう。この場合、その雌ねじは検査不合格となる。
【0034】
止まりゲージ検査を具体的に説明すると、M10サイズの止まりゲージ検査においては、止まりゲージ検査用のNG検出距離を図3のように10mmに設定する。このように設定しておくことで、止まりゲージがB点から10mmの深さ(C点)を超える位置まで螺入した場合には、検査不合格と判断され、止まりゲージが10mmの深さを超える前に回転用モータ11に限界トルクを超えるトルクに相当する負荷電流値が流れた場合(トルクアップした場合)は、検査合格と判断される。そして、回転用モータ11および移動用モータ21が停止し、これらは復帰動作を開始する。
【0035】
検査穴抜け時においては、回転用モータ11および移動用モータ21がそれぞれ逆転駆動する。これにより、ゲージ13と雌ねじとの螺合を解きながら、ゲージツール10が上昇復帰する。このときの推力パラメータは、検査時の推力パラメータよりも高い推力が発生するように設定されている。これは、ゲージツール10および往復移動手段20の自重が鉛直下方向にかかっているため、この分を相殺する必要があるためである。
【0036】
前記検査穴抜けが完了してゲージ13がD点まで上昇復帰すると、回転用モータ11の逆転駆動は停止される。また、移動用モータ21は早戻り時における推力パラメータと速度パラメータで待機位置まで高速で上昇復帰する。
【0037】
本発明のねじ山検査装置1によれば、雌ねじのサイズおよび雌ねじのねじ山部分の摩擦係数に応じて検査時および検査穴抜け時における推力を変更することができる。そのため、雌ねじのサイズおよびねじ山部分の摩擦係数に応じた適正な推力を付与することができ、手作業での検査と同等の精度で検査することができる。すなわち、本発明のねじ山検査装置は、推力を制御可能な構成であるので、手作業での検査の感覚である「良好に回転するか否か」という判断を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るねじ山検査装置の概略構成図である。
【図2】移動用モータの駆動切換の関係を示す説明図である。
【図3】制御パラメータの設定テーブルの一例を示す説明図である。
【図4】制御部のメイン制御処理を示すフローチャートである。
【図5】ツールコントローラの制御処理を示すフローチャートである。
【図6】サーボコントローラの制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 ねじ山検査装置
10 ゲージツール
11 ゲージ回転用モータ
11a ゲージ回転用モータ出力軸
12 フローティング機構
13 ゲージ
20 往復移動手段
21 移動用モータ
22 エンコーダ
23 ボールねじ機構
23a ボールねじ軸
23b 軸受け部
24 テーブル
30 制御手段
40 ツールコントローラ
50 サーボコントローラ
60 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査部品のねじ部に螺合してこれの検査を行うゲージを回転駆動するように構成されたゲージツールと、前記ゲージを往復移動操作する往復移動手段とを備えたねじ山検査装置であって、
ゲージとねじ部との摩擦を低減可能に前記往復移動手段を制御する制御手段を有していることを特徴とするねじ山検査装置。
【請求項2】
被検査部品のねじ部に螺合してこれの検査を行うゲージを回転駆動するように構成されたゲージツールと、前記ゲージを往復移動操作する往復移動手段と、前記ゲージに作用する回転負荷トルクを検出するトルク検出手段とを備えたねじ山検査装置であって、
ゲージがねじ部に所定量螺合する過程でトルク検出手段によりゲージに作用する回転負荷トルクが予め定められた限界トルクに達するか否かを確認するとともに、
被検査部品のねじ部にゲージを螺合させる時およびこれらの螺合を解く時のそれぞれの段階においてゲージがねじ部を押圧する力をゲージツールの自重程度に軽減するよう往復移動手段を制御する制御手段を備えていることを特徴とするねじ山検査装置。
【請求項3】
ゲージツールには、ゲージをその往復移動方向に直交する方向に所定量移動可能に支持するフローティング機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ山検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−164349(P2008−164349A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351989(P2006−351989)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】