説明

ねじ状砥石の位相合わせ方法及びその装置

【課題】ねじ状砥石の接触及び非接触を高精度に検出し、ねじ状砥石の位相合わせを精密に行うことができるねじ状砥石の位相合わせ方法及びその装置を提供する。
【解決手段】ドレス時におけるねじ状砥石14とディスクドレッサ32との噛み合いに先立って、ディスクドレッサ32に対するねじ状砥石14の位相合わせを行うに際し、ディスクドレッサ32に接触したときのねじ状砥石14の弾性波に応じた電圧Vに基づいて、ねじ状砥石14がディスクドレッサ32に接触したか否かを判定し、ねじ状砥石14がディスクドレッサ32に接触しても電圧Vが閾値Voを超えない場合には、ディスクドレッサ32の回転数を上げて強制的に接触判定させ、このときのねじ状砥石14の位相に基づいて、当該ねじ状砥石14を噛み合い可能な中間位相に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレス時におけるねじ状砥石とドレッサとの噛み合いに先立って、ドレッサに対するねじ状砥石の位相合わせを行うねじ状砥石の位相合わせ方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱処理後の被加工歯車であるワークに対し、研削工具である砥石を用いて研削し、ワークの歯面を効率良く仕上げ加工するものとして、歯車研削盤が提供されている。このような歯車研削盤では、砥石とワークとを噛み合わせた状態で、これらを同期回転させてワークの研削を行うため、噛み合い精度が不十分になると、ワークの歯面に研削むらが生じたり、砥石に過大な負荷がかかり、砥石寿命が短くなったりするおそれがあった。
【0003】
そこで、この種の歯車研削盤においては、砥石とワークとの噛み合いを高精度に行うために、研削時の噛み合いに先立って、砥石の切れ刃(山谷)とワークの歯溝(山谷)とが適切な位相関係になるように、両者の位相を位置決めする位相合わせを行っている。このような、砥石とワークとの位相合わせを行う位相合わせ方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−138438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の位相合わせ方法では、砥石をワーク上でその軸方向に滑らせて、砥石がワークのねじ溝を越えたときの接触した瞬間及び非接触となった瞬間を、AEセンサにより検出し、この検出結果に基づいて求めたねじ溝の中間位置に、砥石が対向するようにワークをその軸方向に移動させることにより、砥石とワークとの位相合わせを行うようにしている。しかしながら、このような従来の方法では、ワークに対する砥石の接触及び非接触の検出が一瞬であるため、精度良く検出することは困難である。
【0006】
また、歯車研削盤においては、ドレッサによりドレッシングした砥石を用いてワークを研削するため、研削時の位相合わせ時だけでなく、ドレス時における砥石とドレッサとの位相合わせ時においても、同様の問題が発生すると考えられる。
【0007】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、ねじ状砥石の接触及び非接触を高精度に検出し、ねじ状砥石の位相合わせを精密に行うことができるねじ状砥石の位相合わせ方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の発明に係るねじ状砥石の位相合わせ方法は、
ドレス時におけるねじ状砥石とドレッサとの噛み合いに先立って、前記ドレッサに対する前記ねじ状砥石の位相合わせを行うねじ状砥石の位相合わせ方法であって、
前記ねじ状砥石を一方向に回転させ、
前記ねじ状砥石の一方の刃面が前記ドレッサの一方の刃面に接触したときに発生する弾性波を検出し、
前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触しても、その弾性波に応じた一方向側測定値が所定値を超えないときには、前記一方向側測定値が前記所定値を超えるまで前記ドレッサの回転数を上げ、
前記一方向側測定値が前記所定値を超えたときの前記ねじ状砥石の一方向側位相を記憶し、
前記ねじ状砥石を他方向に回転させ、
前記ねじ状砥石の他方の刃面が前記ドレッサの他方の刃面に接触したときに発生する弾性波を検出し、
前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触しても、その弾性波に応じた他方向側測定値が前記所定値を超えないときには、前記他方向側測定値が前記所定値を超えるまで前記ドレッサの回転数を上げ、
前記他方向側測定値が前記所定値を超えたときの前記ねじ状砥石の他方向側位相を記憶し、
前記ねじ状砥石の前記一方向側位相及び前記他方向側位相に基づいて、前記ねじ状砥石を噛み合い可能な位相に位置決めする
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明に係るねじ状砥石の位相合わせ装置は、
ドレス時におけるねじ状砥石とドレッサとの噛み合いに先立って、前記ドレッサに対する前記ねじ状砥石の位相合わせを行うねじ状砥石の位相合わせ装置であって、
前記ねじ状砥石が回転して前記ドレッサに接触したときに発生する弾性波を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した弾性波に応じた測定値が所定値を超えたときに、前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触したと判定する判定手段と、
前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触し、且つ、前記測定値が前記所定値を超えないときに、前記測定値が前記所定値を超えるように前記ドレッサの回転数を設定するドレッサ回転数設定手段と、
前記判定手段が接触判定したときの前記ねじ状砥石の位相に基づいて、前記ねじ状砥石を噛み合い可能な位相に位置決めする砥石位相制御手段とを備える
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第3の発明に係るねじ状砥石の位相合わせ装置は、
第2の発明に係るねじ状砥石の位相合わせ装置において、
前記ドレッサ回転数設定手段は、前記ドレッサの回転数を段階的に上げる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るねじ状砥石の位相合わせ方法及びその装置によれば、ドレッサに接触したときのねじ状砥石の弾性波に応じた測定値に基づいて、ねじ状砥石がドレッサに接触したか否かを判定し、ねじ状砥石がドレッサに接触しても測定値が所定値を超えない場合には、ドレッサの回転数を上げることにより、ねじ状砥石の接触及び非接触を高精度に検出することができ、ドレッサに対するねじ状砥石の位相合わせを精密に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るねじ状砥石の位相合わせ方法及びその装置について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係るねじ状砥石の位相合わせ装置の概略構成図であって、ねじ状砥石をディスクドレッサによりドレッシングするときの様子を示した図、図2はワークをねじ状砥石により研削するときの様子を示した図、図3はAEフルイッドセンサの取付構造を示した図、図4はAEフルイッドセンサがねじ状砥石の弾性波を検出したときの電圧の変化を示した図、図5はディスクドレッサの回転数の変化を示した図、図6はディスクドレッサに対するねじ状砥石の位相合わせを行うときのフローチャートである。
【0013】
本発明に係るねじ状砥石の位相合わせ装置が適用される歯車研削盤1は、図2に示すように、内歯車素材のワーク(被加工歯車)Wを樽形のねじ状砥石14により研削するものであって、更に、図1に示すように、そのねじ状砥石14をディスクドレッサ32によりドレッシングするドレッシング機能を有している。
【0014】
図1乃至図3に示すように、歯車研削盤1には、砥石ヘッド11が移動可能で、且つ、旋回可能に支持されている。この砥石ヘッド11には、スピンドル12が回転可能に支持されており、このスピンドル12の先端には、砥石アーバ13が形成されている。そして、砥石アーバ13の先端には、ねじ状砥石14が着脱可能に取り付けられている。即ち、砥石ヘッド11を駆動させることにより、スピンドル12の砥石アーバ13を介して、ねじ状砥石14が回転駆動することになる。
【0015】
砥石ヘッド11の正面には、回転テーブル21が回転可能に支持されており、この回転テーブル21の上面には、図示しない取付治具を介して、ワークWが着脱可能に取り付けられている。即ち、回転テーブル21を駆動させることにより、ワークWが回転駆動することになる。
【0016】
回転テーブル21の側方には、ドレッサ駆動部31が移動可能に支持されており、このドレッサ駆動部31には、ディスクドレッサ32が着脱可能に取り付けられている。即ち、ドレッサ駆動部31を駆動させることにより、ディスクドレッサ32が回転駆動することになる。
【0017】
砥石ヘッド11の先端面には、アコースティックエミッション方式のAE(Acoustic Emission、検出手段)フルイッドセンサ42がブラケット41を介して支持されている。このAEフルイッドセンサ42は、材料中に発生した振動や摩擦等に起因する弾性波を、噴射した流体を介して検出し、これをAE信号として処理するものであって、流体としてのクーラントCを砥石アーバ13の所定の測定位置に噴射する噴射孔42aと、その測定位置からクーラントCを介して伝播された弾性波を検出する検出部42bとを有している。更に、AEフルイッドセンサ42の噴射孔42aには、クーラントタンク43が接続される一方、その検出部42bには、AEセンサアンプ44が接続されている。
【0018】
なお、クーラントタンク43からAEフルイッドセンサ42に供給されるクーラントCは、例えば、切削油であって、そのクーラント圧及び噴射流量は、AEフルイッドセンサ42と測定位置との間の距離に応じて調整可能となっている。
【0019】
即ち、AEフルイッドセンサ42においては、クーラントタンク43から供給されたクーラントCを、噴射孔42aから砥石アーバ13の測定位置に噴射することにより、発生したねじ状砥石14の弾性波を、クーラントCを介して検出部42bにより検出した後、この検出した弾性波をAE信号としてAEセンサアンプ44に入力するようになっている。そして、図4に示すように、AEセンサアンプ44においては、入力されたAE信号を電圧(測定値)Vに変換し、これを随時表示するようになっている。
【0020】
また、歯車研削盤1には、NC装置(判定手段、ドレッサ回転数設定手段、砥石位相制御手段)50が設けられている。このNC装置50は、例えば、砥石ヘッド11、回転テーブル21、ドレッサ駆動部31、AEセンサアンプ44等に接続されており、入力されたワーク諸元や加工条件に基づいて、ねじ状砥石14によるワークWの研削や、ディスクドレッサ32によるねじ状砥石14のドレッシングの制御を行うと共に、これらの研削時やドレス時における噛み合い(歯合わせ)に先立って、AEフルイッドセンサ44により検出された弾性波の大きさに基づいて、ねじ状砥石14とワークWまたはディスクドレッサ32との接触及び非接触を判定し、ねじ状砥石14の位相調整を行うようになっている。
【0021】
従って、ワークWをねじ状砥石14により研削する場合には、先ず、図2に示すように、回転テーブル21に取り付けられたワークW内に、ねじ状砥石14を移動させる。次いで、ねじ状砥石14をワークW側に移動させた後、これらを噛み合わせる前に、ねじ状砥石14の刃先とワークWの歯先とが干渉しないように、これらの位相合わせを大まかに行う(粗位相合わせ)。そして、このような粗位相合わせ状態で、ねじ状砥石14とワークWとを同期回転させると共に、AEフルイッドセンサ42の噴射孔42aから砥石アーバ13の測定位置に向けてクーラントCを噴射し、その検出部42bによりねじ状砥石14の弾性波の検出を開始する。
【0022】
このように、AEフルイッドセンサ42による弾性波の検出が開始されると、図4に示すように、AEセンサアンプ44においては、入力されたそのAE信号を電圧Vに変換し、時間の経過と共にその変化を表示することになる。なお、AEフルイッドセンサ42による弾性波の検出が開始されると同時に、電圧Vはねじ状砥石14の非接触時における最大電圧Vfと測定されると共に、この電圧Vfよりも大きな値の閾値Voが自動設定されるようになっている。この閾値Voは、後述するねじ状砥石14の接触判定を行うときに使用されるものである。
【0023】
次いで、ワークWの回転速度(回転数)だけを上げることにより、ねじ状砥石14とワークWとの同期回転をずらし、ワークWの一方の歯面をねじ状砥石14の一方の刃面に接触させる。これにより、接触により発生したねじ状砥石14の弾性波が砥石アーバ13に伝達されることになり、この砥石アーバ13に伝達された弾性波は、クーラントCを介してAEフルイッドセンサ42により検出される。このとき、図4に示すように、AEセンサアンプ44においては、入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、この電圧Vが予め設定された閾値Voを超えると、NC装置50によりワークWがねじ状砥石14に接触したと判定され、このときのねじ状砥石14の位相が記憶される。
【0024】
また逆に、ワークWの回転速度(回転数)だけを下げることにより、ねじ状砥石14とワークWとの同期回転をずらし、ワークWの他方の歯面をねじ状砥石14の他方の刃面に接触させる。これにより、接触により発生したねじ状砥石14の弾性波が砥石アーバ13に伝達されることになり、この砥石アーバ13に伝達された弾性波は、クーラントCを介してAEフルイッドセンサ42により検出される。このとき、図4に示すように、AEセンサアンプ44においては、入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、この電圧Vが予め設定された閾値Voを超えると、NC装置50によりワークWがねじ状砥石14に接触したと判定され、このときのねじ状砥石14の位相が記憶される。
【0025】
そして、NC装置50によって、記憶された2つのねじ状砥石14の位相から、その中間の位相である中間位相が求められた後、ねじ状砥石14をその中間位相に回転させることにより、位相合わせが精密に行われる(精密位相合わせ)。次いで、このような精密位相合わせ状態で、ねじ状砥石14をワークWに噛み合わせ、これらを同期回転させることにより、ねじ状砥石14の刃面によりワークWの歯面が研削されることになる。
【0026】
ここで、ねじ状砥石14を用いて所定数量のワークWを研削すると、その刃面が磨耗して切れ味が低下するため、定期的にディスクドレッサ32によりねじ状砥石14のドレッシングを行う。
【0027】
そこで、ねじ状砥石14をディスクドレッサ32によりドレッシングする場合には、先ず、図1に示すように、ねじ状砥石14をディスクドレッサ32側に移動させた後、これらを噛み合わせる前に、ねじ状砥石14の刃先とディスクドレッサ32の刃先とが干渉しないように、これらの位相合わせを大まかに行う(粗位相合わせ)。次いで、このような粗位相合わせ状態で、ねじ状砥石14の回転を停止したまま、ディスクドレッサ32を回転させると共に、AEフルイッドセンサ42の噴射孔42aから砥石アーバ13の測定位置に向けてクーラントCを噴射し、その検出部42bによりねじ状砥石14の弾性波の検出を開始する。
【0028】
なお、このときのディスクドレッサ32の回転数Nは、ねじ状砥石14が接触したときに作業者がその接触音を確認できる程度の最低回転数と、ねじ状砥石14が接触したときに当該ねじ状砥石14やディスクドレッサ32が破損しない程度の最大回転数と、の間の中間値に設定されている。
【0029】
このように、AEフルイッドセンサ42による弾性波の検出が開始されると、図4に示すように、AEセンサアンプ44においては、入力されたそのAE信号を電圧Vに変換し、時間の経過と共にその変化を表示することになる。なお、AEフルイッドセンサ42による弾性波の検出が開始されると同時に、電圧Vはねじ状砥石14の非接触時における最大電圧Vfと測定されると共に、この電圧Vfよりも大きな値の閾値(所定値)Voが自動設定されるようになっている。この閾値Voは、後述するねじ状砥石14の接触判定を行うときに使用されるものである。
【0030】
そして、ねじ状砥石14を正転させて、その一方の刃面をディスクドレッサ32の一方の刃面に接触させる。これにより、接触により発生したねじ状砥石14の弾性波が砥石アーバ13に伝達されることになり、この砥石アーバ13に伝達された弾性波は、クーラントCを介してAEフルイッドセンサ42により検出される。このとき、図4に示すように、AEセンサアンプ44においては、入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、この電圧(一方向側測定値)Vが予め設定された閾値Voを超えると、NC装置50によりねじ状砥石14がディスクドレッサ32に接触したと判定され、このときのねじ状砥石14の位相(一方向側位相)が記憶される。
【0031】
次いで、ねじ状砥石14を逆転させて、その他方の刃面をディスクドレッサ32の他方の刃面に接触させる。これにより、接触により発生したねじ状砥石14の弾性波が砥石アーバ13に伝達されることになり、この砥石アーバ13に伝達された弾性波は、クーラントCを介してAEフルイッドセンサ42により検出される。このとき、図4に示すように、AEセンサアンプ44においては、入力されたAE信号に応じて電圧Vの波形が変化することになり、この電圧(他方向側測定値)Vが予め設定された閾値Voを超えると、NC装置50によりねじ状砥石14がディスクドレッサ32に接触したと判定され、このときのねじ状砥石14の位相(他方向側位相)が記憶される。
【0032】
そして、NC装置50によって、記憶された2つのねじ状砥石14の位相から、その中間の位相である中間位相が求められた後、ねじ状砥石14をその中間位相に回転させることにより、位相合わせが精密に行われる(精密位相合わせ)。次いで、このような精密位相合わせ状態で、ねじ状砥石14をディスクドレッサ32に噛み合わせ、ディスクドレッサ32を回転させることにより、ディスクドレッサ32の刃面によりねじ状砥石14の刃面がドレッシングされることになる。
【0033】
なお、本実施例においては、内歯車素材のワークWを採用したが、外歯車素材のワークを採用しても構わない。また、ねじ状砥石14とワークWまたはディスクドレッサ32との接触判定に用いられる電圧の閾値を、共通の閾値Voとしたが、それぞれ異なった値の閾値を用いても良く、これら閾値は各材質や加工条件等に応じて設定することも可能である。
【0034】
ここで、上述したねじ状砥石14の正転及び逆転によるディスクドレッサ32との接触時において、ねじ状砥石14がディスクドレッサ32に接触しているにも関わらず、所定時間経過しても電圧Vが閾値Voを超えなかった場合には、NC装置50によりディスクドレッサ32の回転数Nが上がるように制御される。即ち、図4の点線で示すように、測定される電圧Vが、非接触時における最大電圧Vfを超え、且つ、閾値Vo以下である場合には、この電圧Vが閾値Voを超えるまで、ディスクドレッサ32の回転数Nを段階的に一定の割合で上げて(図5参照)、ねじ状砥石14の弾性波を強制的に大きくする。これにより、AEフルイッドセンサ42の検出感度が向上され、確実にねじ状砥石14の接触判定が行われることになる。
【0035】
そして、このときのディスクドレッサ32の回転数Nの段階的設定方法は、図5の実線に示すように、その増加割合を一定にしても良いが、その増加割合を変えても良く、例えば、同図の点線に示すように、その増加割合を徐々に小さくしても構わない。
【0036】
次に、このようなNC装置50によるディスクドレッサ32の回転数設定処理を、図6を用いて説明する。
【0037】
先ず、ステップS1で、ねじ状砥石14の非接触時における最大電圧Vfを測定し、次いで、ステップS2で、NC装置50が接触したと判定するための閾値Voを、ステップS1で測定したねじ状砥石14の非接触時における最大電圧Vfよりも大きな値で設定する。
【0038】
そして、ステップS3で、ねじ状砥石14が接触したときに作業者がその接触音を確認できる程度の最低回転数と、ねじ状砥石14が接触したときに当該ねじ状砥石14が破損しない程度の最大回転数と、の間の中間値を、ディスクドレッサ32の回転数Nと設定し、次いで、ステップS4で、ディスクドレッサ32に対するねじ状砥石14の位相合わせを開始する。
【0039】
そして、ステップS5で、ねじ状砥石14がディスクドレッサ32と接触したか否かが判定される。ここで、可であれば、ステップS6で、ねじ状砥石14の位相合わせが続けられ、ステップS7で、その位相合わせが終了する。また、否であれば、ステップS8で、ディスクドレッサ32の回転数Nが上げられ、次いで、ステップS5に戻る。
【0040】
従って、本発明に係るねじ状砥石の位相合わせ方法及び装置によれば、ドレス時におけるねじ状砥石14とディスクドレッサ32との噛み合いに先立って、ディスクドレッサ32に対するねじ状砥石14の位相合わせを行うに際し、ディスクドレッサ32に接触したときのねじ状砥石14の弾性波に応じた電圧Vに基づいて、ねじ状砥石14がディスクドレッサ32に接触したか否かを判定し、ねじ状砥石14がディスクドレッサ32に接触しても電圧Vが閾値Voを超えない場合には、ディスクドレッサ32の回転数を上げて強制的に接触判定させ、このときのねじ状砥石14の位相に基づいて、当該ねじ状砥石14を噛み合い可能な中間位相に位置決めするようにした。これにより、ねじ状砥石の接触及び非接触を高精度に検出することができ、ディスクドレッサ32に対するねじ状砥石14の位相合わせを精密に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、非加工時間の短縮化を図る歯車研削盤に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例に係るねじ状砥石の位相合わせ装置の概略構成図であって、ねじ状砥石をディスクドレッサによりドレッシングするときの様子を示した図である。
【図2】ワークをねじ状砥石により研削するときの様子を示した図である。
【図3】AEフルイッドセンサの取付構造を示した図である。
【図4】AEフルイッドセンサがねじ状砥石の弾性波を検出したときの電圧の変化を示した図である。
【図5】ディスクドレッサの回転数の変化を示した図である。
【図6】ディスクドレッサに対するねじ状砥石の位相合わせを行うときのフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 歯車研削盤
11 砥石ヘッド
12 スピンドル
13 砥石アーバ
14 ねじ状砥石
21 回転テーブル
31 ドレッサ駆動部
32 ディスクドレッサ
41 ブラケット
42 AEフルイッドセンサ
42a 噴射孔
42b 検出部
43 クーラントタンク
44 AEセンサアンプ
50 NC装置
W ワーク
C クーラント
V 測定電圧
Vo 電圧閾値
Vf 非接触時における最大電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレス時におけるねじ状砥石とドレッサとの噛み合いに先立って、前記ドレッサに対する前記ねじ状砥石の位相合わせを行うねじ状砥石の位相合わせ方法であって、
前記ねじ状砥石を一方向に回転させ、
前記ねじ状砥石の一方の刃面が前記ドレッサの一方の刃面に接触したときに発生する弾性波を検出し、
前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触しても、その弾性波に応じた一方向側測定値が所定値を超えないときには、前記一方向側測定値が前記所定値を超えるまで前記ドレッサの回転数を上げ、
前記一方向側測定値が前記所定値を超えたときの前記ねじ状砥石の一方向側位相を記憶し、
前記ねじ状砥石を他方向に回転させ、
前記ねじ状砥石の他方の刃面が前記ドレッサの他方の刃面に接触したときに発生する弾性波を検出し、
前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触しても、その弾性波に応じた他方向側測定値が前記所定値を超えないときには、前記他方向側測定値が前記所定値を超えるまで前記ドレッサの回転数を上げ、
前記他方向側測定値が前記所定値を超えたときの前記ねじ状砥石の他方向側位相を記憶し、
前記ねじ状砥石の前記一方向側位相及び前記他方向側位相に基づいて、前記ねじ状砥石を噛み合い可能な位相に位置決めする
ことを特徴とするねじ状砥石の位相合わせ方法。
【請求項2】
ドレス時におけるねじ状砥石とドレッサとの噛み合いに先立って、前記ドレッサに対する前記ねじ状砥石の位相合わせを行うねじ状砥石の位相合わせ装置であって、
前記ねじ状砥石が回転して前記ドレッサに接触したときに発生する弾性波を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した弾性波に応じた測定値が所定値を超えたときに、前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触したと判定する判定手段と、
前記ねじ状砥石が前記ドレッサに接触し、且つ、前記測定値が前記所定値を超えないときに、前記測定値が前記所定値を超えるように前記ドレッサの回転数を設定するドレッサ回転数設定手段と、
前記判定手段が接触判定したときの前記ねじ状砥石の位相に基づいて、前記ねじ状砥石を噛み合い可能な位相に位置決めする砥石位相制御手段とを備える
ことを特徴とするねじ状砥石の位相合わせ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のねじ状砥石の位相合わせ装置において、
前記ドレッサ回転数設定手段は、前記ドレッサの回転数を段階的に上げる
ことを特徴とするねじ状砥石の位相合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−30022(P2010−30022A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197520(P2008−197520)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】