ねじ締結体
【課題】ねじ締結体に対する締め付け作業が1つの作業のみで締め付けることができ、振動などの緩み要因によっても緩まないねじ締結体を提供することである。
【解決手段】主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりもピッチの小さい副ねじが頭部側に螺刻されたボルトと、座金とあるいは座金及びワッシャーと、を含むねじ締結体であって、前記座金は、前記ボルトの副ねじに螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金の被締結部材に接する座面に突設された突起歯により、又は前記座金と被締結部材との間に介設されるワッシャーの両面に突設された突起歯により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されることにより実現できた。
【解決手段】主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりもピッチの小さい副ねじが頭部側に螺刻されたボルトと、座金とあるいは座金及びワッシャーと、を含むねじ締結体であって、前記座金は、前記ボルトの副ねじに螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金の被締結部材に接する座面に突設された突起歯により、又は前記座金と被締結部材との間に介設されるワッシャーの両面に突設された突起歯により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されることにより実現できた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩み止め機能を有するボルト及びナット等からなるねじ締結体に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ締結体において、ボルトナットを締めた後、被締結部材に対してボルト軸直角荷重が作用すると、ボルトナットのねじが緩むことは知られている。このねじの緩みは、工場設備の現場では極めて頻繁に生じる現象であり、いかなるねじ締結体であっても至る所でこの危険にさらされている。よって、ボルトナットのねじの緩みに対する対応としては、メンテナンス活動の一つとして定期的なボルトの増し締めが行われている。
【0003】
従来より、ボルトナットのねじ締結体は、その必要性により種々の技術が開示されており、緩み止め機能を有するねじ締結体として、ダブルナット等の、ねじピッチ差を利用して締結させる技術が開示されている。例えば、ボルト本体とボルト頭部とにそれぞれねじを刻設し、かつボルト本体とボルト頭部とのねじピッチを異ならしめた締付け用の係合部を有するスクリューボルトと、このスクリューボルトのボルト頭部のねじに螺合されるロックナットからなる緩み止めボルトの技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ボルトと、このボルトの基部に螺合されるネジ座金とよりなり、前記ボルトの基部は大径で、その外周には前記ネジ座金が螺合するおねじが形成され、ボルト基部のおねじはボルト先端側に形成されたおねじよりも大きいピッチに形成された、ボルトの緩み止め装置の技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−196420号公報
【特許文献2】特開平05−332338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2のねじ締結体の技術は、主ボルト又は主ナットを締付ける作業をした後に、ピッチの異なる副ナットを締付ける作業があり、普通ナットからなるダブルナット法による締付作業よりは煩雑ではないが、実質的にはダブルナットからなるねじ締結体と同じ作業数の2作業を必要とし、シングルボルトナットからなるねじ締結体を締付ける1作業に比較して作業数が多いので、生産現場では実用化の妨げとなっているという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1及び特許文献2のねじ締結体の技術は、ナットと被締結部材とは高い面圧力で緩み防止を図っているので、大きい振動などの緩み要因によって、締結状態にあるボルト又はナットが副ナットと一体化された状態で、副ナットの下面と被締結部材の表面との間ですべり現象が生じて、回転してしまうことがあり、一般的なシングルナットからなるねじ締結体と同じ緩み止め効果しかないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ねじ締結体に対する締め付け作業の作業数が普通ボルトナット締付作業数と同じでありながら、振動などの緩み要因によっても締結状態にあるボルトナットが一体化された状態で緩まないねじ締結体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、ピッチ差を利用した緩み止めでありながら、現在の問題点である作業の煩雑さの解消、及び被締結部材とねじ締結体間で生ずるすべり現象による回転を発生させないことを実現させようと本発明を開発するに至った。
【0010】
本発明において、「主ねじ」のピッチや外径などの大きさはJISに規定されている規格で設計されるが、「副ねじ」のピッチや外径の大きさはJISに制定されている規格に限らないで設計される。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載のねじ締結体1の発明は、主ねじ3がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ3よりもピッチの小さい副ねじ4が頭部側に螺刻されたボルト2と、座金7とあるいは座金7及びワッシャー20と、を含むねじ締結体1であって、前記座金7は、前記ボルト2の副ねじ4に螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金7の被締結部材に接する座面に突設された突起歯8により、又は前記座金7と被締結部材との間に介設されるワッシャー20の両面に突設された突起歯8により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1において、ボルト2の主ねじ3及び副ねじ4の外径が、ボルト2の副ねじ4の外径が主ねじ3の外径と同一の場合、ボルト2の副ねじ4の外径が主ねじ3の外径よりも大きい場合、又は、前記副ねじ4の外径が主ねじ3の外径より大きい場合であって副ねじ4が主ねじ3側の小さい外径部に数山ねじ溝を連通させて螺刻されている場合のいずれかであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1又は2において、ボルト2の主ねじ部と副ねじ部のねじ溝を隣接させて連続又は不連続とした形体、あるいはボルトの主ねじ部と副ねじ部を離間させて前記主ねじ部と前記副ねじ部との間にねじ溝の螺刻されていない部分を設けた形体であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、座金7の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されてない円筒形状又は円錐形状、あるいは座金7の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されている多角形柱形状としたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、突起歯8の略三角形の形状が、外周面に締結工具の掛かり部を設けた座金7の座面に突設された突起歯8については、ボルト2の締付回転による座金7の被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成され、あるいは、両面に突起歯8が突設されたワッシャー20の突起歯については、いずれか一方の面又は両面においてボルト2の締付回転による座金7又は被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、ボルト2の頭部を設定したトルクで破断させるために、前記頭部首下部の外周面に溝17を周設し、前記溝底部の軸径を前記設定したトルクで破断可能としたことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、ボルト2に被締結部材を挟んで螺合されるナットを有し、前記ナットの座面に被締結部材の押入又は嵌入される回転止め用の突起歯を突設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載のねじ締結体1の発明は、座金7の座面が被締結部材との間で回転しないので、座面との摩擦の影響を受けず、ピッチ差は小さく、入力した回転トルクをボルト2の軸力に変換する効率が高く、トルク法による締結においても従来のボルトより軸力のばらつきが少なくなり、かつ締結の回転角度が大きいので回転角法による締結においても若干の角度のずれは軸力に影響しないという効果を奏する。
【0019】
座金7の座面側に回転止め用の突起歯8を設けたことにより、前記突起歯8が被締結部材に食い込み固定化されるので、振動などの緩み要因が発生しても、座金7の座面と被締結部材の表面との間ですべりが生じない。これによって、振動などの緩み要因が発生しても、締結状態にあるボルト又はナットが被締結部材と一体化された状態で回転しないので、緩まないという効果が生じる。このことは、ピッチ差及び突起歯8とを合わせた締結技術により、緩み止め効果が格段に向上することを示唆している。
【0020】
また、本発明により、定期的なボルトナットの増締めというメンテナンス作業を廃止、又は著しく減少させることが可能で、これに関わる作業費などのコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0021】
さらに、従来のねじ締結体の場合には締付けに必要なトルク以上に締め付けすぎ、ボルトが降伏点近くまで伸びることがあったが、主ねじ3部に対して副ねじ4部のピッチを小さくしたことにより、そのピッチ差のピッチの普通ボルトを使用した状態となる。これによって、目標トルクに達するまでのボルトの回転角度が大幅に増し緩みにくくなるので、作業者は安心して締付けすぎないから作業者のストレス軽減もできる。
【0022】
緩まないという効果を有することから、ボルト締付力を高くしなくてもよいし、被締結部材に当接するのは突起歯8を設けた座金7であることから、ボルト2の座面を被締結部材に当接させて締め付けないので、ボルトナットの頭部を小さくでき、ボルトナットの省材料化ができる。
【0023】
ボルト2の主ねじ3と副ねじ4のピッチが異なるため、主ねじ3を螺刻されたねじ先側から座金7を螺入できないが、ボルト頭部にねじ溝16が螺刻されている場合やねじ溝が螺刻されていない場合にそれぞれに対応して、座金7の内径をボルト頭部側から螺入できる大きさにするので、座金7を容易にボルト2に螺入できるという効果を奏する。
【0024】
なお、ボルト2の頭部を小さくした場合は前記ボルト2の適正な締め付けトルクがわかりにくくなるので、前記頭部の上面の平面部などにボルト2の径(サイズ)を刻印するなどをすれば適正な締め付けトルクで締め付けることができる。
【0025】
また、座金7に突起歯8を設けずワッシャー20に突起歯8を設けるので、座金7の材質が従来通りの普通ナットと同じ材質でよく、被締結部材に食い込ます高硬度でなくともよいという効果を奏する。
【0026】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明と同じ効果を奏する。さらに、副ねじ4部の内径をボルト2頭部より大きくすることにより、ボルト2頭部のねじ溝16をなくすことができるという効果を奏する。
【0027】
また、頭部側の外径がねじ先側の外径より大きいボルト2であって、副ねじ4が頭部側の外径部とねじ先側の外径部の2〜3山にねじ溝を連通させて螺刻され、主ねじ3がねじ先側の外径部に螺刻されているボルトの場合であって、座金7の座面が被締結部材に接触した状態からボルト締め付け完了までのボルト2の螺入長さを前記2〜3山に設定した場合は、被締結部材のボルト通し穴の内径を、前記副ねじ部の外径部の大きさより小である前記主ねじ部の外径部が挿入できる大きさでよいという効果を奏する。
【0028】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2の発明と同じ効果を奏する。さらに、主ねじ3と副ねじ4とを隣接させて連続させた形体の場合は、座金7をボルト2に螺入する時に、座金7に螺刻されためねじのピッチと主ねじ3の大きいピッチとのピッチ差が座金7の回転への抑止力となる。この抑止力により、ボルト2螺入前に、ボルト2に座金7を螺入させていた場合に、ボルト2を被締結部材に螺入させる時にボルト2と座金7とを一体化させて螺合できるという効果を奏する。また、前記主ねじ3部と前記副ねじ4部の間に、円筒部などの螺刻されていない部分を設けても、前記螺刻されていない部分が座金7の回転への抑止力となり、ボルト2を被締結部材に螺入させる時にボルト2と座金7とを一体化させて螺合できるという効果を奏する。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、座金の外周面に締付工具の掛かり部を形成した場合には、座金をソケットレンチなどの締付工具で締付られるという効果を奏する。
【0030】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合に、ボルト2による本締めの前にボルト2に螺入させた状態で座金7ごとボルトを回転させて仮締めするが、緩やかな斜面9を形成したことによって回転時の抵抗を減じることができる。そのため、座金7に突起歯8、9を設けた場合には被締結部材の表面にがじりを生じさせないようにすることができ、又はワッシャー20に突起歯8,9を設けた場合には座金7の座面にがじりを生じさせないようにすることができるという効果を奏する。
【0031】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、ボルト頭部の首下部に環状の溝を設け、ボルト頭部を一定の締付力で破断させて分離させることにより、緩めることが極めて困難なねじ締結体1となるので、橋梁、送電線塔又は鉄骨構造物などの組立の使用に適するという効果を奏する。また、座金の外周面形状を円錐形状にすることにより締付工具が掛かりにくくなるため誤って緩めてしまうことが生じないという効果を奏する。
【0032】
請求項7に記載の発明は、ボルトとナットで被締結部材を挟んだ形態の場合にも請求項1乃至6のいずれかの発明と同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の主ねじと副ねじとを連続させたねじ締結体の概要図である。
【図2】本発明の主ねじと副ねじとの間に円筒部を設けたねじ締結体の概要図である。
【図3】突起歯を突設した座金の正面概要図である。
【図4】外周面に縦溝を設けた座金の正面概要図である。
【図5】外周面に縦溝を設けた座金の平面概要図である。
【図6】上下面に突起歯を設けたワッシャーの正面概要図である。
【図7】(イ)は普通ボルトナットからなるねじ締結体の場合の概念図で、(ロ)及び(ハ)は緩み止め効果の説明図である。
【図8】(イ)はボルトに副ねじが螺刻された場合の本発明であるねじ締結体の概念図で、(ロ)はボルトに主ねじと副ねじを螺刻された本発明であるねじ締結体の締結状況概念図である。
【図9】副ねじをボルトの頭部側の大きい外径部と、主ねじと同じ小さい外径部に2〜3山螺刻したねじ締結体の説明図である。
【図10】副ねじをボルトの頭部側の大きい外径部のみに螺刻したねじ締結体の説明図である。
【図11】一定の締付力で破断させるためボルト頭部の首下部に直径を小さくするように溝を周設したねじ締結体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明であるねじ締結体1について図1又は図2で説明する。本発明であるねじ締結体1は、主ねじ3がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ3よりもピッチの小さい副ねじ4が頭部側に螺刻されたボルト2と、座金7とあるいは座金7及びワッシャー20と、を含むねじ締結体1であって、前記座金7は、前記ボルト2の副ねじ4に螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金7の被締結部材に接する座面に突設された突起歯8により、又は前記座金7と被締結部材との間に介設されるワッシャー20の両面に突設された突起歯8により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されるねじ締結体1である。
【0035】
前記座金に突起歯8を突設する場合にはワッシャーが不要であるが、前記座金に突起歯8を突設しない場合には、突起歯を突設しない座金と、前記座金と被締結部材との間に介設される回転止め用の突起歯を両面に設けたワッシャー20とを併用する。
【0036】
また、ねじ締結体1の構成は、被締結部材5のボルト挿入穴にねじが螺刻がされている場合はナット無の形態となり、被締結部材5のボルト挿入穴にねじが螺刻がされていない場合には図11に示すように被締結部材をボルト2と、回転止め用の突起歯を設けたナット30で挟む形態となる。
【0037】
ボルト2の主ねじ3のねじ寸法はJISに規定されている規格に基づいて設計され、副ねじ4のピッチや外径などのねじ寸法はJIS規格に限らずに設計される。
【0038】
図1に示すように、ボルト2の副ねじ4の外径を主ねじ3の外径と同一、又は、図2に示すように、主ねじ3の外径よりも大きく設定する。これによりボルトの副ねじに螺合した座金の座面を被締結部材に当接させることができる。
【0039】
また、ボルト2の副ねじ4の外径を主ねじ3の外径と同一などの場合に、頭部より座金7を螺入させるようにしたことにより、ボルト2の頭部の外径部にねじ溝16が存することがあるが実用上問題はない。そして、頭部より座金7を螺入させるようにしたことにより、ボルト2のねじ部の外径よりもボルト頭部の外径が小となるため、前記頭部形状を六角形状とすればスパナなどが締め付け時に滑る懸念があるが、前記頭部形状を十二角形状にしてソケットレンチなどでしか締め付けられないようにすれば締め付け時に滑る懸念を解消できる。
【0040】
また、ボルト2の副ねじ4の外径を主ねじ3の外径よりも大きくし、ボルト2の副ねじ4の内径が、前記ボルト2頭部の外径の大きさを超えるように設計すれば、ボルト頭部にねじ溝16を形成させないことができる。
【0041】
ボルト2における、螺刻される主ねじ3の部分と副ねじ4の部分の位置関係は、図1に示すように、ボルト2の主ねじ3の部分と副ねじ4の部分とを、隣接させて主ねじ3と副ねじ4のそれぞれのねじ溝を連通させて連続させてもよいし、ねじ溝を連通させず不連続させてもよい。又は図2に示すように、離間させて主ねじ3の部分と副ねじ4の部分との間に円筒部11などの螺刻されていない部分を設けてもよい。
【0042】
主ねじと副ねじのピッチ差、又は螺刻されていない部分が座金7の回転への抑止力となり、ボルト2を被締結部材に螺入させる時にボルト2と座金7とを一体化させて螺合できる。
【0043】
ここで、座金とボルトをセットして被締結部材に螺入させて、座金の突起歯が被締結部材に接してからボルトを締付ていくと、座金が突起歯により固定されるので、座金に対してボルトが螺入方向にすすむ。この場合には、図10に示すように、ボルトの主ねじ部と被締結部材との隙mが存するように、被締結部材のボルト挿入穴の径はボルトの副ねじ部の外径より大きくしておく。
【0044】
一方、図9に示すように、ボルトの頭部側の外径がねじ先側の外径より大きい場合であって、副ねじ4を頭部側の外径部と、ねじ先側の外径部の2〜3山にねじ溝を連通させて螺刻した場合には、被締結部材のボルト挿入穴の径をボルトの主ねじの外径より大きくしておけばよいので、ボルトの主ねじ部と被締結部材との隙nは図10に示す隙mより小になり、被締結部材のボルト通し穴の内径を小さくできる。
【0045】
ボルト2の主ねじ3と副ねじ4は、ねじ部を直線的に展開すればわかるように、頭部、主ねじ部及び副ねじ部を成型した軸を、頭部形状、主ねじ及び副ねじを別々に又は一体的に刻設した転造ダイスで転造すれば製造でき、特別な製造方法は要しない。このとき、前記副ねじ4部のおねじは、任意の外径及びピッチを設定できる。
【0046】
座金7は、ボルト2の副ねじ4と同一のピッチを螺刻されためねじの副ねじ12と、被締結部材に接する座面に被締結部材に対して食い込み、座金7と被締結部材とを固定化させる回転止め用の突起歯8を含む形体からなる。
【0047】
座金7の外周面形状を、図3に示すように、座金を締結工具で回転させない場合には平面視で円形状や角形状などいずれの形状でもよいが、座金を仮締めなどのために締結工具で回転させる場合には、平面視で十二角形などの角形に、又は図4又は図5に示すように、座金の回転方向に対して直角方向の溝10を複数個所設けた、平面視で略円形状に形成した外周面形状とする。いずれの外周面形状であっても、タップ立て時に支障がない形状がよい。また、主ねじ側にナット30を使用する場合は、ナット30の形体は、図11に示すように、座金7とは螺刻されているめねじが主ねじか副ねじかの違いはあるが座金7と同じ形体とし同じ機能をもたせる。
【0048】
座金7の突起歯8の形状は、正面視で略正三角形や略二等辺三角形などの略三角形状で形成されており、前記略三角形状の中には、座金の被締結部材に接する側の座面に突設された回転止め用の突起歯8の形状を、図4に示すように、正面視で前記座面に対して、突起歯の先端部から締付け回転方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成されている形状も含まれる。なお、突起歯8は高周波焼入れにて歯部分のみ硬度を上げることができる。
【0049】
正面視で略三角形状で形成された形状の突起歯8を具備した座金7を使用した場合には、突起歯8が被締結部材に食い込み、突起歯8を突設した座金7が振動などで回転せず、これによって緩まないねじ締結体1を提供できる。
【0050】
また、正面視で突起歯8の先端部から締付け回転による被締結部材との相対的進行方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成された略三角形状の突起歯8を具備した座金7を使用した場合には、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合に、ボルト2頭部による本締めの前に座金ごと回転させて仮締めするが、そのときに被締結部材の表面にがじりを生じさせないようにすることができる。
【0051】
座金に回転止め用の突起歯8を具備させない場合には、図6に示すように、回転止め用の突起歯8を上下面に突設した平板状で環状のワッシャー20を設け、前記ワッシャー20を座金と被締結部材の間に介設する。
【0052】
ワッシャー20の突起歯8の形体には、正面視で上面及び下面側が略三角形状の形体、突起歯8の形状が正面視で下面側が略三角形状で上面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成した形体、突起歯8の形状が正面視で上面側が略三角形状で下面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の被締結部材との相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成した形体、又は、突起歯8の形状が正面視で上面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成し、かつ下面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の被締結部材との相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成した形体がある。
【0053】
正面視で上面及び下面側に略三角形状の形体の突起歯8を具備したワッシャー20を使用する場合には、座金7の材質が高硬度ではなく従来通りの普通ナットと同じ材質でよい。
【0054】
また、突起歯8の斜面を緩やかな傾斜形状の斜面9に形成したワッシャー20を使用する場合には、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合に、座金7又は被締結部材の座面側にがじりを生じさせないという効果を奏する。
【0055】
一般的にトルク法によってボルトを締め付けた場合、トルクはボルト頭部の座面の摩擦に50%、ねじ面の摩擦に40%が消費され、残りの10%しか軸力に変換されず、軸力のバラツキを生じやすいが、本願発明の突起歯を座金又はワッシャーに突設した場合は、座金の座面が被締結部材との間で回転しないので座面との摩擦の影響を受けず、ピッチ差は小さく、入力した回転トルクをボルトの軸力に変換する効率が高く、トルク法による締結においても従来のボルトより軸力のバラツキが少なくなり、かつ締結の回転角度が大きいので回転角法による締結においても若干の角度のずれは軸力に影響しない。なお、ボルトへの入力トルクは普通ボルトを70Nmで締め付けると仮定すれば、本発明の場合は同じ軸力を得るのに約18〜20%少ない58Nm前後でよい。
【0056】
また、図11に示すように、ボルト頭部首下部の外周面に直径を小さくする溝17を周設し、軸部を一定の軸径とし一定の締付力で捩じ切って溝部を破断してボルト頭部を分離させることにより、緩めることが極めて困難なねじ締結体をつくることもできる。この場合、橋梁や送電線塔などの組立の使用に適する。
【0057】
このとき、座金7の外周面形状を円錐形状にしておけば、締付後にソケットレンチなどの工具を容易に引っ掛ける部位がなくなるため誤って緩めてしまうことが生じにくい。
【0058】
本発明の実施の形態であるねじ締結体1の使用について説明する。
【0059】
本発明の実施の形態であるボルト2に副ねじ4が螺刻されたねじ締結体1には、主ねじ3と副ねじ4の外径を同一にする第一の形体、又は副ねじ4の外径を主ねじ3の外径より大きくする第二の形体、さらには第一又は第二の形体において、図2に示すように主ねじ3と副ねじ4との間に円筒部11などの非ねじ部を設ける形体、図1に示すように主ねじ3と副ねじ4とを隣接させてねじ溝を連続又はねじ溝を不連続にさせる形体、あるいは副ねじの外径を主ねじよりも大きくした形体で副ねじを主ねじ側に2〜3山螺刻した形体などがある。いずれも被締結部材への螺入前のボルト2に座金7をセットすることができる。
【0060】
まず、ボルト2の副ねじ4に座金7を完全に螺合する状態にする。このとき、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合には、正面視で座金の座面に対して、突起歯8の先端部から締付け回転による座金の相対的進行方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成されている形状を有する突起歯を具備し、締付工具の掛かり部を具備した座金7を使用する。
【0061】
また、主ねじ3と副ねじ4とを離間させた場合には、その中間部位に例えば円筒部11を設ける場合があり、この場合は円筒部11が座金を容易には螺入させにくくさせる。
【0062】
そして、座金7を螺合させたボルト2を被締結部材のねじ穴に対して螺入する。
【0063】
ボルト2が被締結部材に螺入されるにしたがって、座金7の突起歯8が被締結部材の表面に接して回転停止し、前記座面に突設された突起歯8が被締結部材の表面に食い込んで座金7の座面が被締結部材5に接した後、本締めが始まる。
【0064】
ここで、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合には、正面視で座金7の座面に対して、突起歯8の先端部から締付け回転による座金の相対的進行方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成されている形状を有する突起歯8を具備する座金7ごとボルトを仮締めした後、ボルト頭部によりボルトを回転させて、本締めを実施する。
【0065】
仮締めの時点では、座金を締め付けることにより被締結部材はピッチの大きい主ねじにより締め付けられて、遊びやスナッグトルク等が除去される。
【0066】
ここからさらに、ボルト2頭部に工具を掛け替えて締め付けていけば、主ねじ3と副ねじ4が同時進行で締まっていき、主ねじ3と副ねじ4のピッチ差で螺入しようとするので、副ねじ4と座金7のねじ接触面と、主ねじ3と被締結部材のねじ接触面とにおいて大きな摩擦抵抗が生じ、大きな圧縮力が生じてボルト2と座金7と被締結部材とは固定化される。
【0067】
したがって、ボルト2が被締結部材に螺入されていくと、座金7の突起歯8が被締結部材への回転止めの楔体となり、最初に座金7と被締結部材とが固定化され、次に副ねじ4と座金7とが、主ねじ3でボルト2と被締結部材とが固定化されて、被締結部材、ボルト2及び座金7とは極めて強固な締結状態となる。
【0068】
次に、本発明のボルトナットの組合せ概念図で緩み止め効果を説明する。まず比較のための普通ボルトナットの場合について図7で説明する。図7(イ)は普通ボルトナット22、23で締付ける概念図であり、図7(ロ)及び(ハ)は緩み止め効果の説明図である。
【0069】
図7(ロ)及び(ハ)において、横方向の下線bは被締結部材5の被締結面を示し、上線aはボルト22やナット23のピッチの大きさをリード角で示し、上下線に挟まれた楔体40はナット23の主ねじ29のねじ山を示している。そして、図7(ロ)はボルト22やナット23のリード角が小さい場合を表し、図7(ハ)はボルト22やナット23のリード角が大きい場合を表している。
【0070】
図7(ロ)及び(ハ)に、普通ナット23が被締結部材5面に当接しながらボルト22の主ねじ部に押し込まれていく形体を示しており、図7(ロ)及び(ハ)から、ボルト22やナット23のピッチが大きくなれば楔体40に戻す力が働けば抜けやすいことがわかる。
【0071】
本発明の場合を図8(イ)及び(ロ)に示している。図8(イ)はボルト2に副ねじ4が螺刻された場合の概念図を表しており、図8(ロ)は図8(イ)の締結状況概念図である。
【0072】
図8(ロ)において、上側の溝状体26は座金7の副ねじ12のねじ溝を表し、下側の溝状体27は被締結部材5の主ねじ15のねじ溝を表し、主ねじのピッチを溝状体27の傾きで表し、副ねじのピッチを溝状体26の傾きで表している。そして、略エ字状の楔体41はボルト2を表し、楔体41の上部は副ねじ4のねじ山を、下部は主ねじ3のねじ山を表している。
【0073】
図8(ロ)に示した、被締結部材5の主ねじ15と座金7の副ねじ12の異勾配の溝の中にボルト2である楔体41を押し込んだ形体は、末広がりの溝状体26と溝状体27とにボルト2を押し込むことになるので抜けにくくなり、主ねじと副ねじの傾き(ピッチ)の差の小さいほど押し込むと抜けにくくなることがわかる。
【0074】
次に、使用例を挙げて本発明を説明する。
【0075】
[使用例1]
図1に示すねじ締結体1の場合であり、ボルト2のおねじがM12のピッチが1.75mm、副ねじ4の外径12mmでピッチ1.5mmとし、ピッチ差を0.25mmとした。
【0076】
図1において、ねじ締結体1の使用例を説明する。ボルト2で被締結部材を締付ければ、副ねじ4のねじのピッチの方が主ねじ3のピッチよりも小さいので、副ねじを有する座金7は主ねじ3より軸方向の進みが小さい。したがって、ボルト2の回転に伴い座金7の突起歯8が被締結部材に当接して座金7の回転が停止されると、ボルト2の主ねじ3と副ねじ4に形成したねじのピッチ差でしか締まっていかないので、副ねじを有する座金7の突起歯8が食い込んで前記座金7が被締結部材に接した後締めて(普通ナット7は約45°前後で締結が完了)200°〜250°で締め付けが完了し、副ねじを有する座金7はボルト2を完全に緩めるまで回動できなくなる。なお、スナッグトルク等の関係により実測した締付角度にはバラツキがある。
【0077】
ここで、副ねじを有する座金7と主ねじ3のピッチ差を調整すれば、締まり始めて締め付け完了までの回転数を調整できる。
【符号の説明】
【0078】
1 ねじ締結体
2 ボルト
3 主ねじ(ボルト)
4 副ねじ(ボルト)
5 被締結部材
7 座金
8 突起歯
9 傾斜形状の斜面
10 溝
11 円筒部
12 副ねじ(座金)
15 主ねじ(被締結部材)
16 ねじ溝
17 溝
20 ワッシャー
22 ボルト(普通ボルト)
23 ナット(普通ナット)
26 溝状体
27 溝状体
29 主ねじ(ナット)
30 ナット
40 楔体
41 楔体
a 上線
b 下線
m 隙
n 隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩み止め機能を有するボルト及びナット等からなるねじ締結体に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ締結体において、ボルトナットを締めた後、被締結部材に対してボルト軸直角荷重が作用すると、ボルトナットのねじが緩むことは知られている。このねじの緩みは、工場設備の現場では極めて頻繁に生じる現象であり、いかなるねじ締結体であっても至る所でこの危険にさらされている。よって、ボルトナットのねじの緩みに対する対応としては、メンテナンス活動の一つとして定期的なボルトの増し締めが行われている。
【0003】
従来より、ボルトナットのねじ締結体は、その必要性により種々の技術が開示されており、緩み止め機能を有するねじ締結体として、ダブルナット等の、ねじピッチ差を利用して締結させる技術が開示されている。例えば、ボルト本体とボルト頭部とにそれぞれねじを刻設し、かつボルト本体とボルト頭部とのねじピッチを異ならしめた締付け用の係合部を有するスクリューボルトと、このスクリューボルトのボルト頭部のねじに螺合されるロックナットからなる緩み止めボルトの技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ボルトと、このボルトの基部に螺合されるネジ座金とよりなり、前記ボルトの基部は大径で、その外周には前記ネジ座金が螺合するおねじが形成され、ボルト基部のおねじはボルト先端側に形成されたおねじよりも大きいピッチに形成された、ボルトの緩み止め装置の技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−196420号公報
【特許文献2】特開平05−332338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2のねじ締結体の技術は、主ボルト又は主ナットを締付ける作業をした後に、ピッチの異なる副ナットを締付ける作業があり、普通ナットからなるダブルナット法による締付作業よりは煩雑ではないが、実質的にはダブルナットからなるねじ締結体と同じ作業数の2作業を必要とし、シングルボルトナットからなるねじ締結体を締付ける1作業に比較して作業数が多いので、生産現場では実用化の妨げとなっているという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1及び特許文献2のねじ締結体の技術は、ナットと被締結部材とは高い面圧力で緩み防止を図っているので、大きい振動などの緩み要因によって、締結状態にあるボルト又はナットが副ナットと一体化された状態で、副ナットの下面と被締結部材の表面との間ですべり現象が生じて、回転してしまうことがあり、一般的なシングルナットからなるねじ締結体と同じ緩み止め効果しかないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ねじ締結体に対する締め付け作業の作業数が普通ボルトナット締付作業数と同じでありながら、振動などの緩み要因によっても締結状態にあるボルトナットが一体化された状態で緩まないねじ締結体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、ピッチ差を利用した緩み止めでありながら、現在の問題点である作業の煩雑さの解消、及び被締結部材とねじ締結体間で生ずるすべり現象による回転を発生させないことを実現させようと本発明を開発するに至った。
【0010】
本発明において、「主ねじ」のピッチや外径などの大きさはJISに規定されている規格で設計されるが、「副ねじ」のピッチや外径の大きさはJISに制定されている規格に限らないで設計される。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載のねじ締結体1の発明は、主ねじ3がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ3よりもピッチの小さい副ねじ4が頭部側に螺刻されたボルト2と、座金7とあるいは座金7及びワッシャー20と、を含むねじ締結体1であって、前記座金7は、前記ボルト2の副ねじ4に螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金7の被締結部材に接する座面に突設された突起歯8により、又は前記座金7と被締結部材との間に介設されるワッシャー20の両面に突設された突起歯8により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1において、ボルト2の主ねじ3及び副ねじ4の外径が、ボルト2の副ねじ4の外径が主ねじ3の外径と同一の場合、ボルト2の副ねじ4の外径が主ねじ3の外径よりも大きい場合、又は、前記副ねじ4の外径が主ねじ3の外径より大きい場合であって副ねじ4が主ねじ3側の小さい外径部に数山ねじ溝を連通させて螺刻されている場合のいずれかであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1又は2において、ボルト2の主ねじ部と副ねじ部のねじ溝を隣接させて連続又は不連続とした形体、あるいはボルトの主ねじ部と副ねじ部を離間させて前記主ねじ部と前記副ねじ部との間にねじ溝の螺刻されていない部分を設けた形体であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、座金7の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されてない円筒形状又は円錐形状、あるいは座金7の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されている多角形柱形状としたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、突起歯8の略三角形の形状が、外周面に締結工具の掛かり部を設けた座金7の座面に突設された突起歯8については、ボルト2の締付回転による座金7の被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成され、あるいは、両面に突起歯8が突設されたワッシャー20の突起歯については、いずれか一方の面又は両面においてボルト2の締付回転による座金7又は被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、ボルト2の頭部を設定したトルクで破断させるために、前記頭部首下部の外周面に溝17を周設し、前記溝底部の軸径を前記設定したトルクで破断可能としたことを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載のねじ締結体1の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、ボルト2に被締結部材を挟んで螺合されるナットを有し、前記ナットの座面に被締結部材の押入又は嵌入される回転止め用の突起歯を突設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載のねじ締結体1の発明は、座金7の座面が被締結部材との間で回転しないので、座面との摩擦の影響を受けず、ピッチ差は小さく、入力した回転トルクをボルト2の軸力に変換する効率が高く、トルク法による締結においても従来のボルトより軸力のばらつきが少なくなり、かつ締結の回転角度が大きいので回転角法による締結においても若干の角度のずれは軸力に影響しないという効果を奏する。
【0019】
座金7の座面側に回転止め用の突起歯8を設けたことにより、前記突起歯8が被締結部材に食い込み固定化されるので、振動などの緩み要因が発生しても、座金7の座面と被締結部材の表面との間ですべりが生じない。これによって、振動などの緩み要因が発生しても、締結状態にあるボルト又はナットが被締結部材と一体化された状態で回転しないので、緩まないという効果が生じる。このことは、ピッチ差及び突起歯8とを合わせた締結技術により、緩み止め効果が格段に向上することを示唆している。
【0020】
また、本発明により、定期的なボルトナットの増締めというメンテナンス作業を廃止、又は著しく減少させることが可能で、これに関わる作業費などのコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0021】
さらに、従来のねじ締結体の場合には締付けに必要なトルク以上に締め付けすぎ、ボルトが降伏点近くまで伸びることがあったが、主ねじ3部に対して副ねじ4部のピッチを小さくしたことにより、そのピッチ差のピッチの普通ボルトを使用した状態となる。これによって、目標トルクに達するまでのボルトの回転角度が大幅に増し緩みにくくなるので、作業者は安心して締付けすぎないから作業者のストレス軽減もできる。
【0022】
緩まないという効果を有することから、ボルト締付力を高くしなくてもよいし、被締結部材に当接するのは突起歯8を設けた座金7であることから、ボルト2の座面を被締結部材に当接させて締め付けないので、ボルトナットの頭部を小さくでき、ボルトナットの省材料化ができる。
【0023】
ボルト2の主ねじ3と副ねじ4のピッチが異なるため、主ねじ3を螺刻されたねじ先側から座金7を螺入できないが、ボルト頭部にねじ溝16が螺刻されている場合やねじ溝が螺刻されていない場合にそれぞれに対応して、座金7の内径をボルト頭部側から螺入できる大きさにするので、座金7を容易にボルト2に螺入できるという効果を奏する。
【0024】
なお、ボルト2の頭部を小さくした場合は前記ボルト2の適正な締め付けトルクがわかりにくくなるので、前記頭部の上面の平面部などにボルト2の径(サイズ)を刻印するなどをすれば適正な締め付けトルクで締め付けることができる。
【0025】
また、座金7に突起歯8を設けずワッシャー20に突起歯8を設けるので、座金7の材質が従来通りの普通ナットと同じ材質でよく、被締結部材に食い込ます高硬度でなくともよいという効果を奏する。
【0026】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明と同じ効果を奏する。さらに、副ねじ4部の内径をボルト2頭部より大きくすることにより、ボルト2頭部のねじ溝16をなくすことができるという効果を奏する。
【0027】
また、頭部側の外径がねじ先側の外径より大きいボルト2であって、副ねじ4が頭部側の外径部とねじ先側の外径部の2〜3山にねじ溝を連通させて螺刻され、主ねじ3がねじ先側の外径部に螺刻されているボルトの場合であって、座金7の座面が被締結部材に接触した状態からボルト締め付け完了までのボルト2の螺入長さを前記2〜3山に設定した場合は、被締結部材のボルト通し穴の内径を、前記副ねじ部の外径部の大きさより小である前記主ねじ部の外径部が挿入できる大きさでよいという効果を奏する。
【0028】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2の発明と同じ効果を奏する。さらに、主ねじ3と副ねじ4とを隣接させて連続させた形体の場合は、座金7をボルト2に螺入する時に、座金7に螺刻されためねじのピッチと主ねじ3の大きいピッチとのピッチ差が座金7の回転への抑止力となる。この抑止力により、ボルト2螺入前に、ボルト2に座金7を螺入させていた場合に、ボルト2を被締結部材に螺入させる時にボルト2と座金7とを一体化させて螺合できるという効果を奏する。また、前記主ねじ3部と前記副ねじ4部の間に、円筒部などの螺刻されていない部分を設けても、前記螺刻されていない部分が座金7の回転への抑止力となり、ボルト2を被締結部材に螺入させる時にボルト2と座金7とを一体化させて螺合できるという効果を奏する。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、座金の外周面に締付工具の掛かり部を形成した場合には、座金をソケットレンチなどの締付工具で締付られるという効果を奏する。
【0030】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合に、ボルト2による本締めの前にボルト2に螺入させた状態で座金7ごとボルトを回転させて仮締めするが、緩やかな斜面9を形成したことによって回転時の抵抗を減じることができる。そのため、座金7に突起歯8、9を設けた場合には被締結部材の表面にがじりを生じさせないようにすることができ、又はワッシャー20に突起歯8,9を設けた場合には座金7の座面にがじりを生じさせないようにすることができるという効果を奏する。
【0031】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明と同じ効果を奏する。さらに、ボルト頭部の首下部に環状の溝を設け、ボルト頭部を一定の締付力で破断させて分離させることにより、緩めることが極めて困難なねじ締結体1となるので、橋梁、送電線塔又は鉄骨構造物などの組立の使用に適するという効果を奏する。また、座金の外周面形状を円錐形状にすることにより締付工具が掛かりにくくなるため誤って緩めてしまうことが生じないという効果を奏する。
【0032】
請求項7に記載の発明は、ボルトとナットで被締結部材を挟んだ形態の場合にも請求項1乃至6のいずれかの発明と同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の主ねじと副ねじとを連続させたねじ締結体の概要図である。
【図2】本発明の主ねじと副ねじとの間に円筒部を設けたねじ締結体の概要図である。
【図3】突起歯を突設した座金の正面概要図である。
【図4】外周面に縦溝を設けた座金の正面概要図である。
【図5】外周面に縦溝を設けた座金の平面概要図である。
【図6】上下面に突起歯を設けたワッシャーの正面概要図である。
【図7】(イ)は普通ボルトナットからなるねじ締結体の場合の概念図で、(ロ)及び(ハ)は緩み止め効果の説明図である。
【図8】(イ)はボルトに副ねじが螺刻された場合の本発明であるねじ締結体の概念図で、(ロ)はボルトに主ねじと副ねじを螺刻された本発明であるねじ締結体の締結状況概念図である。
【図9】副ねじをボルトの頭部側の大きい外径部と、主ねじと同じ小さい外径部に2〜3山螺刻したねじ締結体の説明図である。
【図10】副ねじをボルトの頭部側の大きい外径部のみに螺刻したねじ締結体の説明図である。
【図11】一定の締付力で破断させるためボルト頭部の首下部に直径を小さくするように溝を周設したねじ締結体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明であるねじ締結体1について図1又は図2で説明する。本発明であるねじ締結体1は、主ねじ3がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ3よりもピッチの小さい副ねじ4が頭部側に螺刻されたボルト2と、座金7とあるいは座金7及びワッシャー20と、を含むねじ締結体1であって、前記座金7は、前記ボルト2の副ねじ4に螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金7の被締結部材に接する座面に突設された突起歯8により、又は前記座金7と被締結部材との間に介設されるワッシャー20の両面に突設された突起歯8により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されるねじ締結体1である。
【0035】
前記座金に突起歯8を突設する場合にはワッシャーが不要であるが、前記座金に突起歯8を突設しない場合には、突起歯を突設しない座金と、前記座金と被締結部材との間に介設される回転止め用の突起歯を両面に設けたワッシャー20とを併用する。
【0036】
また、ねじ締結体1の構成は、被締結部材5のボルト挿入穴にねじが螺刻がされている場合はナット無の形態となり、被締結部材5のボルト挿入穴にねじが螺刻がされていない場合には図11に示すように被締結部材をボルト2と、回転止め用の突起歯を設けたナット30で挟む形態となる。
【0037】
ボルト2の主ねじ3のねじ寸法はJISに規定されている規格に基づいて設計され、副ねじ4のピッチや外径などのねじ寸法はJIS規格に限らずに設計される。
【0038】
図1に示すように、ボルト2の副ねじ4の外径を主ねじ3の外径と同一、又は、図2に示すように、主ねじ3の外径よりも大きく設定する。これによりボルトの副ねじに螺合した座金の座面を被締結部材に当接させることができる。
【0039】
また、ボルト2の副ねじ4の外径を主ねじ3の外径と同一などの場合に、頭部より座金7を螺入させるようにしたことにより、ボルト2の頭部の外径部にねじ溝16が存することがあるが実用上問題はない。そして、頭部より座金7を螺入させるようにしたことにより、ボルト2のねじ部の外径よりもボルト頭部の外径が小となるため、前記頭部形状を六角形状とすればスパナなどが締め付け時に滑る懸念があるが、前記頭部形状を十二角形状にしてソケットレンチなどでしか締め付けられないようにすれば締め付け時に滑る懸念を解消できる。
【0040】
また、ボルト2の副ねじ4の外径を主ねじ3の外径よりも大きくし、ボルト2の副ねじ4の内径が、前記ボルト2頭部の外径の大きさを超えるように設計すれば、ボルト頭部にねじ溝16を形成させないことができる。
【0041】
ボルト2における、螺刻される主ねじ3の部分と副ねじ4の部分の位置関係は、図1に示すように、ボルト2の主ねじ3の部分と副ねじ4の部分とを、隣接させて主ねじ3と副ねじ4のそれぞれのねじ溝を連通させて連続させてもよいし、ねじ溝を連通させず不連続させてもよい。又は図2に示すように、離間させて主ねじ3の部分と副ねじ4の部分との間に円筒部11などの螺刻されていない部分を設けてもよい。
【0042】
主ねじと副ねじのピッチ差、又は螺刻されていない部分が座金7の回転への抑止力となり、ボルト2を被締結部材に螺入させる時にボルト2と座金7とを一体化させて螺合できる。
【0043】
ここで、座金とボルトをセットして被締結部材に螺入させて、座金の突起歯が被締結部材に接してからボルトを締付ていくと、座金が突起歯により固定されるので、座金に対してボルトが螺入方向にすすむ。この場合には、図10に示すように、ボルトの主ねじ部と被締結部材との隙mが存するように、被締結部材のボルト挿入穴の径はボルトの副ねじ部の外径より大きくしておく。
【0044】
一方、図9に示すように、ボルトの頭部側の外径がねじ先側の外径より大きい場合であって、副ねじ4を頭部側の外径部と、ねじ先側の外径部の2〜3山にねじ溝を連通させて螺刻した場合には、被締結部材のボルト挿入穴の径をボルトの主ねじの外径より大きくしておけばよいので、ボルトの主ねじ部と被締結部材との隙nは図10に示す隙mより小になり、被締結部材のボルト通し穴の内径を小さくできる。
【0045】
ボルト2の主ねじ3と副ねじ4は、ねじ部を直線的に展開すればわかるように、頭部、主ねじ部及び副ねじ部を成型した軸を、頭部形状、主ねじ及び副ねじを別々に又は一体的に刻設した転造ダイスで転造すれば製造でき、特別な製造方法は要しない。このとき、前記副ねじ4部のおねじは、任意の外径及びピッチを設定できる。
【0046】
座金7は、ボルト2の副ねじ4と同一のピッチを螺刻されためねじの副ねじ12と、被締結部材に接する座面に被締結部材に対して食い込み、座金7と被締結部材とを固定化させる回転止め用の突起歯8を含む形体からなる。
【0047】
座金7の外周面形状を、図3に示すように、座金を締結工具で回転させない場合には平面視で円形状や角形状などいずれの形状でもよいが、座金を仮締めなどのために締結工具で回転させる場合には、平面視で十二角形などの角形に、又は図4又は図5に示すように、座金の回転方向に対して直角方向の溝10を複数個所設けた、平面視で略円形状に形成した外周面形状とする。いずれの外周面形状であっても、タップ立て時に支障がない形状がよい。また、主ねじ側にナット30を使用する場合は、ナット30の形体は、図11に示すように、座金7とは螺刻されているめねじが主ねじか副ねじかの違いはあるが座金7と同じ形体とし同じ機能をもたせる。
【0048】
座金7の突起歯8の形状は、正面視で略正三角形や略二等辺三角形などの略三角形状で形成されており、前記略三角形状の中には、座金の被締結部材に接する側の座面に突設された回転止め用の突起歯8の形状を、図4に示すように、正面視で前記座面に対して、突起歯の先端部から締付け回転方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成されている形状も含まれる。なお、突起歯8は高周波焼入れにて歯部分のみ硬度を上げることができる。
【0049】
正面視で略三角形状で形成された形状の突起歯8を具備した座金7を使用した場合には、突起歯8が被締結部材に食い込み、突起歯8を突設した座金7が振動などで回転せず、これによって緩まないねじ締結体1を提供できる。
【0050】
また、正面視で突起歯8の先端部から締付け回転による被締結部材との相対的進行方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成された略三角形状の突起歯8を具備した座金7を使用した場合には、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合に、ボルト2頭部による本締めの前に座金ごと回転させて仮締めするが、そのときに被締結部材の表面にがじりを生じさせないようにすることができる。
【0051】
座金に回転止め用の突起歯8を具備させない場合には、図6に示すように、回転止め用の突起歯8を上下面に突設した平板状で環状のワッシャー20を設け、前記ワッシャー20を座金と被締結部材の間に介設する。
【0052】
ワッシャー20の突起歯8の形体には、正面視で上面及び下面側が略三角形状の形体、突起歯8の形状が正面視で下面側が略三角形状で上面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成した形体、突起歯8の形状が正面視で上面側が略三角形状で下面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の被締結部材との相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成した形体、又は、突起歯8の形状が正面視で上面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成し、かつ下面側の突起歯8の、ボルトの締付回転による座金の被締結部材との相対的進行方向側の斜面を、突起歯の先端部から緩やかな傾斜の斜面9に形成した形体がある。
【0053】
正面視で上面及び下面側に略三角形状の形体の突起歯8を具備したワッシャー20を使用する場合には、座金7の材質が高硬度ではなく従来通りの普通ナットと同じ材質でよい。
【0054】
また、突起歯8の斜面を緩やかな傾斜形状の斜面9に形成したワッシャー20を使用する場合には、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合に、座金7又は被締結部材の座面側にがじりを生じさせないという効果を奏する。
【0055】
一般的にトルク法によってボルトを締め付けた場合、トルクはボルト頭部の座面の摩擦に50%、ねじ面の摩擦に40%が消費され、残りの10%しか軸力に変換されず、軸力のバラツキを生じやすいが、本願発明の突起歯を座金又はワッシャーに突設した場合は、座金の座面が被締結部材との間で回転しないので座面との摩擦の影響を受けず、ピッチ差は小さく、入力した回転トルクをボルトの軸力に変換する効率が高く、トルク法による締結においても従来のボルトより軸力のバラツキが少なくなり、かつ締結の回転角度が大きいので回転角法による締結においても若干の角度のずれは軸力に影響しない。なお、ボルトへの入力トルクは普通ボルトを70Nmで締め付けると仮定すれば、本発明の場合は同じ軸力を得るのに約18〜20%少ない58Nm前後でよい。
【0056】
また、図11に示すように、ボルト頭部首下部の外周面に直径を小さくする溝17を周設し、軸部を一定の軸径とし一定の締付力で捩じ切って溝部を破断してボルト頭部を分離させることにより、緩めることが極めて困難なねじ締結体をつくることもできる。この場合、橋梁や送電線塔などの組立の使用に適する。
【0057】
このとき、座金7の外周面形状を円錐形状にしておけば、締付後にソケットレンチなどの工具を容易に引っ掛ける部位がなくなるため誤って緩めてしまうことが生じにくい。
【0058】
本発明の実施の形態であるねじ締結体1の使用について説明する。
【0059】
本発明の実施の形態であるボルト2に副ねじ4が螺刻されたねじ締結体1には、主ねじ3と副ねじ4の外径を同一にする第一の形体、又は副ねじ4の外径を主ねじ3の外径より大きくする第二の形体、さらには第一又は第二の形体において、図2に示すように主ねじ3と副ねじ4との間に円筒部11などの非ねじ部を設ける形体、図1に示すように主ねじ3と副ねじ4とを隣接させてねじ溝を連続又はねじ溝を不連続にさせる形体、あるいは副ねじの外径を主ねじよりも大きくした形体で副ねじを主ねじ側に2〜3山螺刻した形体などがある。いずれも被締結部材への螺入前のボルト2に座金7をセットすることができる。
【0060】
まず、ボルト2の副ねじ4に座金7を完全に螺合する状態にする。このとき、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合には、正面視で座金の座面に対して、突起歯8の先端部から締付け回転による座金の相対的進行方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成されている形状を有する突起歯を具備し、締付工具の掛かり部を具備した座金7を使用する。
【0061】
また、主ねじ3と副ねじ4とを離間させた場合には、その中間部位に例えば円筒部11を設ける場合があり、この場合は円筒部11が座金を容易には螺入させにくくさせる。
【0062】
そして、座金7を螺合させたボルト2を被締結部材のねじ穴に対して螺入する。
【0063】
ボルト2が被締結部材に螺入されるにしたがって、座金7の突起歯8が被締結部材の表面に接して回転停止し、前記座面に突設された突起歯8が被締結部材の表面に食い込んで座金7の座面が被締結部材5に接した後、本締めが始まる。
【0064】
ここで、被締結部材間にOリングが介在する場合や被締結部材が歪んでいる場合など被締結部材間に遊びがある場合には、正面視で座金7の座面に対して、突起歯8の先端部から締付け回転による座金の相対的進行方向側の面が緩やかな傾斜形状の斜面9に形成されている形状を有する突起歯8を具備する座金7ごとボルトを仮締めした後、ボルト頭部によりボルトを回転させて、本締めを実施する。
【0065】
仮締めの時点では、座金を締め付けることにより被締結部材はピッチの大きい主ねじにより締め付けられて、遊びやスナッグトルク等が除去される。
【0066】
ここからさらに、ボルト2頭部に工具を掛け替えて締め付けていけば、主ねじ3と副ねじ4が同時進行で締まっていき、主ねじ3と副ねじ4のピッチ差で螺入しようとするので、副ねじ4と座金7のねじ接触面と、主ねじ3と被締結部材のねじ接触面とにおいて大きな摩擦抵抗が生じ、大きな圧縮力が生じてボルト2と座金7と被締結部材とは固定化される。
【0067】
したがって、ボルト2が被締結部材に螺入されていくと、座金7の突起歯8が被締結部材への回転止めの楔体となり、最初に座金7と被締結部材とが固定化され、次に副ねじ4と座金7とが、主ねじ3でボルト2と被締結部材とが固定化されて、被締結部材、ボルト2及び座金7とは極めて強固な締結状態となる。
【0068】
次に、本発明のボルトナットの組合せ概念図で緩み止め効果を説明する。まず比較のための普通ボルトナットの場合について図7で説明する。図7(イ)は普通ボルトナット22、23で締付ける概念図であり、図7(ロ)及び(ハ)は緩み止め効果の説明図である。
【0069】
図7(ロ)及び(ハ)において、横方向の下線bは被締結部材5の被締結面を示し、上線aはボルト22やナット23のピッチの大きさをリード角で示し、上下線に挟まれた楔体40はナット23の主ねじ29のねじ山を示している。そして、図7(ロ)はボルト22やナット23のリード角が小さい場合を表し、図7(ハ)はボルト22やナット23のリード角が大きい場合を表している。
【0070】
図7(ロ)及び(ハ)に、普通ナット23が被締結部材5面に当接しながらボルト22の主ねじ部に押し込まれていく形体を示しており、図7(ロ)及び(ハ)から、ボルト22やナット23のピッチが大きくなれば楔体40に戻す力が働けば抜けやすいことがわかる。
【0071】
本発明の場合を図8(イ)及び(ロ)に示している。図8(イ)はボルト2に副ねじ4が螺刻された場合の概念図を表しており、図8(ロ)は図8(イ)の締結状況概念図である。
【0072】
図8(ロ)において、上側の溝状体26は座金7の副ねじ12のねじ溝を表し、下側の溝状体27は被締結部材5の主ねじ15のねじ溝を表し、主ねじのピッチを溝状体27の傾きで表し、副ねじのピッチを溝状体26の傾きで表している。そして、略エ字状の楔体41はボルト2を表し、楔体41の上部は副ねじ4のねじ山を、下部は主ねじ3のねじ山を表している。
【0073】
図8(ロ)に示した、被締結部材5の主ねじ15と座金7の副ねじ12の異勾配の溝の中にボルト2である楔体41を押し込んだ形体は、末広がりの溝状体26と溝状体27とにボルト2を押し込むことになるので抜けにくくなり、主ねじと副ねじの傾き(ピッチ)の差の小さいほど押し込むと抜けにくくなることがわかる。
【0074】
次に、使用例を挙げて本発明を説明する。
【0075】
[使用例1]
図1に示すねじ締結体1の場合であり、ボルト2のおねじがM12のピッチが1.75mm、副ねじ4の外径12mmでピッチ1.5mmとし、ピッチ差を0.25mmとした。
【0076】
図1において、ねじ締結体1の使用例を説明する。ボルト2で被締結部材を締付ければ、副ねじ4のねじのピッチの方が主ねじ3のピッチよりも小さいので、副ねじを有する座金7は主ねじ3より軸方向の進みが小さい。したがって、ボルト2の回転に伴い座金7の突起歯8が被締結部材に当接して座金7の回転が停止されると、ボルト2の主ねじ3と副ねじ4に形成したねじのピッチ差でしか締まっていかないので、副ねじを有する座金7の突起歯8が食い込んで前記座金7が被締結部材に接した後締めて(普通ナット7は約45°前後で締結が完了)200°〜250°で締め付けが完了し、副ねじを有する座金7はボルト2を完全に緩めるまで回動できなくなる。なお、スナッグトルク等の関係により実測した締付角度にはバラツキがある。
【0077】
ここで、副ねじを有する座金7と主ねじ3のピッチ差を調整すれば、締まり始めて締め付け完了までの回転数を調整できる。
【符号の説明】
【0078】
1 ねじ締結体
2 ボルト
3 主ねじ(ボルト)
4 副ねじ(ボルト)
5 被締結部材
7 座金
8 突起歯
9 傾斜形状の斜面
10 溝
11 円筒部
12 副ねじ(座金)
15 主ねじ(被締結部材)
16 ねじ溝
17 溝
20 ワッシャー
22 ボルト(普通ボルト)
23 ナット(普通ナット)
26 溝状体
27 溝状体
29 主ねじ(ナット)
30 ナット
40 楔体
41 楔体
a 上線
b 下線
m 隙
n 隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりもピッチの小さい副ねじが頭部側に螺刻されたボルトと、座金とあるいは座金及びワッシャーと、を含むねじ締結体であって、前記座金は、前記ボルトの副ねじに螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金の被締結部材に接する座面に突設された突起歯により、又は前記座金と被締結部材との間に介設されるワッシャーの両面に突設された突起歯により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されることを特徴とするねじ締結体。
【請求項2】
ボルトの副ねじの外径が主ねじの外径と同一の場合、ボルトの副ねじの外径が主ねじの外径よりも大きい場合、又は、前記副ねじの外径が主ねじの外径より大きい場合であって副ねじが主ねじ側の小さい外径部に数山ねじ溝を連通させて螺刻されている場合のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のねじ締結体。
【請求項3】
ボルトの主ねじ部と副ねじ部のねじ溝を隣接させて連続又は不連続とした形体、あるいはボルトの主ねじ部と副ねじ部を離間させて前記主ねじ部と前記副ねじ部との間にねじ溝の螺刻されていない部分を設けた形体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ締結体。
【請求項4】
座金の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されてない円筒形状又は円錐形状、あるいは座金の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されている多角形柱形状としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のねじ締結体。
【請求項5】
突起歯の略三角形の形状が、外周面に締結工具の掛かり部を設けた座金の座面に突設された突起歯については、ボルトの締付回転による座金の被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成され、あるいは、両面に突起歯が突設されたワッシャーの突起歯については、いずれか一方の面又は両面においてボルトの締付回転による座金又は被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のねじ締結体。
【請求項6】
ボルトの頭部を設定したトルクで破断させるために、前記頭部首下部の外周面に溝を周設し、前記溝底部の軸径を前記設定したトルクで破断可能としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のねじ締結体。
【請求項7】
ボルトに被締結部材を挟んで螺合されるナットを有し、前記ナットの座面に被締結部材の押入又は嵌入される回転止め用の突起歯を突設したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のねじ締結体。
【請求項1】
主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりもピッチの小さい副ねじが頭部側に螺刻されたボルトと、座金とあるいは座金及びワッシャーと、を含むねじ締結体であって、前記座金は、前記ボルトの副ねじに螺合するめねじが螺刻され、かつ、前記座金の被締結部材に接する座面に突設された突起歯により、又は前記座金と被締結部材との間に介設されるワッシャーの両面に突設された突起歯により、被締結部材との相対的な回転止めがなされ、かつ前記ボルト頭部側より螺入されることを特徴とするねじ締結体。
【請求項2】
ボルトの副ねじの外径が主ねじの外径と同一の場合、ボルトの副ねじの外径が主ねじの外径よりも大きい場合、又は、前記副ねじの外径が主ねじの外径より大きい場合であって副ねじが主ねじ側の小さい外径部に数山ねじ溝を連通させて螺刻されている場合のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のねじ締結体。
【請求項3】
ボルトの主ねじ部と副ねじ部のねじ溝を隣接させて連続又は不連続とした形体、あるいはボルトの主ねじ部と副ねじ部を離間させて前記主ねじ部と前記副ねじ部との間にねじ溝の螺刻されていない部分を設けた形体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ締結体。
【請求項4】
座金の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されてない円筒形状又は円錐形状、あるいは座金の外周面形状に締付工具掛かり部が形成されている多角形柱形状としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のねじ締結体。
【請求項5】
突起歯の略三角形の形状が、外周面に締結工具の掛かり部を設けた座金の座面に突設された突起歯については、ボルトの締付回転による座金の被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成され、あるいは、両面に突起歯が突設されたワッシャーの突起歯については、いずれか一方の面又は両面においてボルトの締付回転による座金又は被締結部材との相対的進行方向側の斜面が緩やかな傾斜形状の斜面に形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のねじ締結体。
【請求項6】
ボルトの頭部を設定したトルクで破断させるために、前記頭部首下部の外周面に溝を周設し、前記溝底部の軸径を前記設定したトルクで破断可能としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のねじ締結体。
【請求項7】
ボルトに被締結部材を挟んで螺合されるナットを有し、前記ナットの座面に被締結部材の押入又は嵌入される回転止め用の突起歯を突設したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のねじ締結体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−251648(P2012−251648A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126907(P2011−126907)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(511138135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(511138135)
【Fターム(参考)】
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