説明

へそ凹部清浄方法

【課題】へそのゴマ等の汚れを、へそ凹部の内面に傷を付けることなく、容易に除去することができるへそ凹部清浄方法を提供すること。
【解決手段】皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物をへそ凹部に供給した後、液保持性の支持体をへそ凹部に挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法である。水溶性ポリマーはポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンであることが好ましい。支持体は繊維材料又は多孔質体からなることが好ましい。支持体は、繊維材料からなる塊状体であるか、又は繊維材料からなりかつへそ凹部の拡開が可能な形状を有する成形体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、へそ凹部の汚れ(へそのゴマ等)を除去するへそ凹部清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂へそ出しルックやへそピアスが一般化し、また水着を外出着として着用する流行もあり、へそを露出する機会が増えている。へそ凹部に所謂へそのゴマが溜っていると見栄えが悪く、またへそ凹部に細菌が繁殖して臭いを発するため、見栄え向上や防臭上、へそのゴマの除去(へそ掃除)が行われている。
【0003】
へそのゴマの除去は、一般的には、指の爪で引っ掻いたり、オイルを付けた綿棒で掻き出したりすることにより行われている。しかし、指の爪で引っ掻いたり、綿棒で掻き出したりすると、へそ凹部の内表面を傷付け易い。また、へそ凹部のすぐ下に位置する腹膜が刺激を受け、腹部に痛みが発生し易い。
【0004】
特許文献1には、へその垢掃除の際に生じる痛みや不快感を伴わず、手間をかけずにきれいに掃除するためのへその垢掃除用具として、軟膏を付けた絆創膏状のパッチからなるへその垢掃除用具が記載されている。この垢掃除用具は、これでへそを覆うことによって、へその垢をふやかすものである。しかし、結局はふやけた垢を綿棒等で除去する必要があるので、上述した不都合が生じやすい。
【0005】
本出願人は先に、2液混合硬化型シリコーンゴム組成物からなる、へそのゴマや耳垢等の汚れを除去するための身体凹部清浄剤を提案した(特許文献2参照)。この身体凹部清浄剤によれば、へそのゴマや耳垢等の汚れを、へそ凹部や耳腔の内表面を傷付けることなく容易に除去することができる。しかし、この組成物は、特殊な薬剤を用いるので高価である。反応性に影響を与える可能性があるので、他の成分の配合に制限がある
【0006】
【特許文献1】特開2006−314750号公報
【特許文献2】特開2004−339201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記の特許文献2において提案された材料以外の有効なへそ凹部清浄システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物をへそ凹部に供給した後、液保持性の支持体をへそ凹部に挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は、液保持性の支持体をへそ凹部に挿入した後、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物をへそ凹部に供給し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体を含水揮発性媒体で湿潤させ、湿潤状態の該支持体をへそ凹部に挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物が担持された液保持性の支持体をへそ凹部に挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法を提供するものである。
【0012】
また本発明は、皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体をへそ凹部に挿入し、へそ凹部に挿入された状態の該支持体を含水揮発性媒体で湿潤させ、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法を提供するものである。
【0013】
更に本発明は、含水揮発性媒体をへそ凹部に供給した後、皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体をへそ凹部に挿入して、該支持体を該含水揮発性媒体で湿潤させ、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のへそ凹部清浄方法によれば、へそのゴマ等のへそ凹部の汚れを、へそ凹部の内表面を傷付けることなく、作業性よくかつ簡便に除去することができる。特に、液保持性の支持体を併用することで、水溶性ポリマーの皮膜を欠損なくきれいに取り出すことが可能となる。また、汎用性の原材料の組み合わせであることから、安価であるうえ、性能の向上を始めとして高付加価値化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。先ず、本発明の清浄方法に用いられる薬剤について説明する。本発明においては、皮膜形成性の水溶性ポリマーを用いて、へそ凹部内の汚れを除去する。皮膜形成性の水溶性ポリマーは、これを含水揮発性媒体に溶解させてなる溶液をキャストし、該含水揮発性媒体を揮発除去させることで皮膜の形成が可能なポリマーである。このようなポリマーをへそ凹部に供給して該ポリマーの皮膜を形成することで、へそ凹部内の汚れを該皮膜に付着させることが可能となる。かかる皮膜形成性水溶性ポリマーとしては、天然、半合成又は合成の高分子化合物で、非イオン性、アニオン性、カチオン性、両イオン性のいずれでも良い。具体的には、天然あるいは半合成のものとしては、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸Na、コンドロイチン硫酸Na、アルギン酸、アルギン酸Na、アルギン酸アンモニウム、カルボキシメチルアミロース、コーンスターチ、小麦デンプン、寒天、ふのり、カゼイン、にかわ、プルラン、デキストラン、トラガントゴム、アラビアゴム、ノニオン変性グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、可溶性デンプン、カルボキシデンプン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられるが、合成系のものがより好ましい。合成系のものとしては下記のモノマー(1)〜(4)の1種又は2種以上を重合させたもの又はこれらのモノマーと酢酸ビニル等の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、アルキルビニルエーテル等の他のモノマーとの共重合体、更にこれらの重合体の混合物が挙げられる。
【0016】
(1)非イオン性:ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルメタクリレート等。ビニルアルコールユニットは酢酸ビニルを共重合後、加水分解によってアセチル基を除去することで導入できる。
【0017】
(2)アニオン性:アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MA)、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸モノマー又はそれらの無水物又はそれらの塩;スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)等の不飽和スルホン酸モノマー又はこれらの塩;ビニルホスホン酸、アシッド・ホスホキシエチル(メタ)アクリレート等の不飽和リン酸モノマー。
【0018】
(3)カチオン性:ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAAm)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAAm)等のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド類;ジメチルアミノスチレン(DMASt)、ジメチルアミノメチルスチレン(DMAMSt)等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類;4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;又はこれらをハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、硫酸ジアルキル等の公知の四級化剤を用いて四級化したもの。
【0019】
(4)両イオン性:N−(3−スルホプロピル)−N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−カルボキシメチル)−N−メタクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−カルボキシメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン。
【0020】
さらに、ラジカル重合以外の方法から得られるポリマーとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリオキサゾリン等が挙げられる。
【0021】
これらの皮膜形成性水溶性ポリマーのうち、特にポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。
【0022】
これらのポリマーの重量平均分子量は1万〜150万、特に10万〜100万であることが好ましい。
【0023】
皮膜形成性の水溶性ポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
皮膜形成性の水溶性ポリマーとして、固形粉末化粧料に用いられるシリコーン系のポリマーを用いることもできる。例えばポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(特開平5−112423号公報第10頁10行〜第10頁20行、特開平7−133352号公報第11頁25行〜第11頁40行及び特開平10−95705号公報第17頁11行〜第17頁26行)、ビニル・シリコーンブロックポリマー(特開平11−100307号公報第6頁27行〜第6頁41行)などが挙げられる。
【0025】
皮膜形成性の水溶性ポリマーと混合される含水揮発性媒体としては、例えば水やアルコール水溶液などが挙げられる。アルコール水溶液を用いる場合、特にエタノール、イソプロピルアルコールなどの低沸点アルコールの水溶液が好ましい。そのアルコール濃度は0.01〜15重量%、特に0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0026】
含水揮発性媒体は、皮膜形成性の水溶性ポリマー1重量部に対して3〜30重量部、特に5〜10重量部配合されることが、適用時に適度な流動性を示しつつ、該ポリマーの皮膜を短時間で形成し得る点から好ましい。
【0027】
皮膜形成性の水溶性ポリマーは、必要に応じ、少量の添加剤と併用されてもよい。添加剤としては、例えばグリセリン、殺菌剤、潤滑剤、香料、界面活性剤、等が挙げられる。グリセリンは、保湿剤及び皮膜形成性の水溶性ポリマーの可塑剤として用いられるものである。殺菌剤としては、トリクロサン、銀ゼオライト(シナネン)等が挙げられる。潤滑剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。香料としては、ティートリー、グレープフルーツ等の精油が挙げられる。
【0028】
図1には、へそ凹部清浄方法の第1の実施形態が示されている。本実施形態においては、先ず、皮膜形成性の水溶性ポリマーと、含水揮発性媒体とを混合し、該媒体中へ該ポリマーが溶解した混合物を得る。図1(a)に示すように、この混合物10を、へそ凹部N内に供給する。なお図1(a)中、符号Dはへそ凹部N内の汚れ(へそのゴマ)を示す。混合物10のへそ凹部N内への供給には、同図に示すように、例えばスポイト状の注入容器11を用いることができる。また、混合物10をへそ凹部N内へ供給するに先立ち、へそ凹部Nの開口部を拡開する拡開具を用い、へそ凹部Nの開口部を拡開して、混合物10の供給を容易にしてもよい。そのような拡開具としては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2004−339201号公報の図2及び図5ないし図8に示すもの、あるいは特開2005−304593号公報の図1に示すものが挙げられる。
【0029】
皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物10をへそ凹部N内に供給することで、へそ凹部Nの内面には該混合物10からなる湿潤膜12が形成される。この湿潤膜12は、へそ凹部N内の汚れDを取り込む。ここで、へそ凹部から気泡を除去して、剤と汚れとのなじみを良くするために、軽く揉みこんでも良い。次に図1(b)に示すように、へそ凹部N内に液保持性の支持体13を挿入する。液保持性の支持体は、皮膜形成性の水溶性ポリマー及び吸水剤を担持するために用いられるものであり、好ましくは前記した含水揮発性媒体によって完全に濡れて、例えば繊維の表面や毛管に液を蓄える性質を有するものである。また液保持性の支持体は、該ポリマーから形成された皮膜を保持し、へそ凹部内の汚れを該皮膜とともにへそ凹部から取り出すために用いられる。
【0030】
液保持性の支持体としては、繊維材料やスポンジ等の可撓性多孔質体などが用いられる。繊維材料としては、例えば、パルプ、コットン等の天然セルロース繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル等の合成繊維などが挙げられる。特に吸水性の高い繊維であるパルプ、コットン等の天然セルロース繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維、アクリル繊維などが好ましく用いられる。
【0031】
液保持性の支持体として繊維材料を用いる場合には、該繊維材料は塊状体や、成形体の形態であり得る。塊状体としては、例えば綿球や綿栓等が挙げられる。成形体としては、例えば湿式法又は乾式法で製造された不織布や紙、該不織布や紙の三次元成形物、湿式法又は乾式法で製造されたパルプモールド成形物、織物、該織物の三次元成形物、二次元又は三次元に編成された編成物などが挙げられる。成形体が三次元の形状のものである場合、該成形体は、へそ凹部の拡開が可能な形状を有することが、へそ凹部清浄剤を簡便かつ確実にへそ凹部内に供給し得る点から好ましい。本実施形態においては、液保持性の支持体13として、繊維材料からなる塊状体が用いられている。
【0032】
液保持性の支持体と皮膜形成性の水溶性ポリマーとの使用量は10:1〜1:10、特に5:1〜1:2の割合で用いられることが好ましい。
【0033】
繊維材料からなる塊状体13のへそ凹部N内への挿入によって、図1(c)に示すように、へそ凹部N内は塊状体13で満たされる。塊状体13は液保持性のものなので、へそ凹部N内に充填された該塊状体13は、へそ凹部N内に供給された混合物10の一部を吸液して保持する。
【0034】
図1(c)に示す状態下に所定時間放置することで、へそ凹部N内に供給された混合物10中の含水揮発性媒体が揮発除去され、水溶性ポリマーからなる皮膜が形成される。水溶性ポリマーの種類や、含水揮発性媒体の量にもよるが、皮膜の形成は例えば約5〜60分で完了する。皮膜の形成を促進させるために、例えばドライヤ等でへそ凹部Nに温風を当ててもよい。
【0035】
形成された皮膜は、へそ凹部Nの内面と塊状体13との間に存在している。皮膜は、へそ凹部Nの内面に密着して、へそ凹部N内の汚れDを取り込んだ状態になっている。また皮膜は、塊状体13を構成する繊維と結合し、該塊状体13に支持された状態になっている。
【0036】
水溶性ポリマーが乾燥固化して、該ポリマーの固化体からなる皮膜が形成されたら、図1(d)に示すように、塊状体13とともに該皮膜をへそ凹部Nから取り出す。このとき、皮膜に付着しているへそ凹部の汚れDが皮膜に同伴された状態でへそ凹部Nから取り出される。水溶性ポリマーの皮膜は、その形成のされ方によってはその強度が十分でない場合があるが、該皮膜を塊状体13に支持させることで、該皮膜の全体を首尾よくへそ凹部Nから取り出すことができる。したがって、該皮膜の破断片がへそ凹部N内に残存することが防止される。
【0037】
このように、本実施形態に従いへそ掃除を行うと、へそ凹部Nから汚れDを容易に除去することができる。この操作は、爪で引っ掻いたり、綿棒で掻き出したりする操作に比して、へそ凹部Nの内面に傷を付けたり、腹膜に刺激を与えたりすることがない。また、汎用性の原材料の組み合わせであることから、安価であるうえ、性能の向上を始めとして高付加価値化も可能となる。
【0038】
なお本実施形態においては、へそ凹部の清浄に先立ち、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体とを混合したが、これに代えて、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体とが既に混合状態になっている液剤を用いてもよい。
【0039】
また、本実施形態の変形例として、皮膜形成性の水溶性ポリマー及び含水揮発媒体の混合物10のへそ凹部N内への供給と、塊状体13のへそ凹部内への挿入の順序を逆にすることができる。つまり、液保持性の支持体である塊状体13をへそ凹部Nに挿入した後、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物10をへそ凹部Nに供給し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部N内の汚れを同伴させた状態で、塊状体13ごとへそ凹部から取り出すことができる。
【0040】
次に、へそ凹部清浄方法の第2ないし第6の実施形態を、図2ないし図7を参照しながら説明する。なお、これらの実施形態に関し特に説明しない点については、先に説明した第1の実施形態に関する説明が適宜適用される。また図2ないし図7において、図1と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0041】
図2に示す第2の実施形態は、液保持性の支持体として用いられる部材が第1の実施形態と相違する。詳細には、液保持性の支持体として、繊維材料の三次元成形体14が用いられる。この三次元成形体14は、へそ凹部Nの拡開が可能な形状を有するものである。拡開可能な形状としては、例えば略回転楕円体状のものが挙げられる。この三次元成形体14を用いたへそ凹部清浄方法は次のとおりである。
【0042】
図2(a)に示すへそ凹部Nへの、水溶性ポリマーを含む混合物10の供給方法は、図1(a)と同様である。次に図2(b)に示すように、へそ凹部N内に繊維材料からなる三次元成形体14を挿入する。この挿入によって、図2(c)に示すように、へそ凹部N内は三次元成形体14で満たされる。三次元成形体14は液保持性のものなので、へそ凹部N内に充填された該三次元成形体14は、へそ凹部N内に供給された混合物10の一部を吸液して保持する。
【0043】
図2(c)に示す状態下に所定時間放置することで、へそ凹部N内に供給された混合物10中の含水揮発性媒体が揮発除去され、水溶性ポリマーからなる皮膜が形成される。水溶性ポリマーの固化体からなる皮膜が形成されたら、図2(d)に示すように、三次元成形体14とともに該皮膜をへそ凹部Nから取り出す。このとき、皮膜に付着しているへそ凹部の汚れDが皮膜に同伴された状態でへそ凹部Nから取り出される。皮膜を三次元成形体14に支持させることで、該皮膜の全体を首尾よくへそ凹部Nから取り出すことができ、該皮膜の破断片がへそ凹部N内に残存することが防止される。
【0044】
図3(a)及び(b)には、三次元成形体14の例が示されている。図3(a)に示す三次元成形体14は、上に凸の放物線状の断面形状を有する山形の挿入部14aと、挿入部14aの底部から水平方向外方へ延出したフランジ部14bとを有する形状のものである。挿入部14aは、三次元成形体14のうち、へそ凹部N内に挿入される部位である。フランジ部14bは、挿入部14aのへそ凹部Nへの過度の挿入を規制する部位である。
【0045】
図3(b)に示す三次元成形体14も、挿入部14aとフランジ部14bとを有する。図3(b)に示す三次元成形体14は、さらに、挿入部14aの頂部に透孔14cを有する。透孔14cは、後述する図7に示す実施形態において、含水揮発性媒体を、へそ凹部Nの内面に円滑に供給するためのものである。透孔14cに加え、図3(b)に示す三次元成形体14は、挿入部14aの側面に、該挿入部14aの高さ方向へ延びる凹面部14dを有する。挿入部14aをその高さ方向に沿ってみたとき、凹面部14dは、互いに90度ずつ離間した位置に合計4カ所形成されている。凹面部14dは、三次元成形体14のへそ凹部Nへの挿入を容易にするためのものである、また、剤をへそ凹部に満遍なく供給するためのものである。
【0046】
図4には、へそ凹部清浄方法の第3の実施形態が示されている。本実施形態においては、皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体を用いる点が、これまでの実施形態と異なる。
【0047】
詳細には、図4(a)に示す繊維材料の塊状体13’からなる支持体には、予め皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持されている。しかし、含水揮発性媒体は塊状体13’には予め含浸されていない。該水溶性ポリマーを繊維材料に担持させるためには、例えば繊維材料をポリマー溶液に浸漬、引き上げ後、乾燥させる方法、あるいは、繊維材料にポリマー溶液を噴霧後乾燥する方法等によって得られる。この塊状体13’に含水揮発性媒体15を吸収させて、該塊状体13’を湿潤状態にする。それによって、皮膜形成性の水溶性ポリマーが含水揮発性媒体中に溶解する。
【0048】
含水揮発性媒体15によって湿潤状態になった塊状体13’は、図4(b)に示すように、へそ凹部N内に挿入される。へそ凹部N内に挿入された塊状体13’からは、水溶性ポリマーを含む含水揮発性媒体がにじみ出て、へそ凹部Nの内面を湿潤させる。それによって、へそ凹部Nの内面には、水溶性ポリマーを含む含水揮発性媒体からなる湿潤膜が形成される。
【0049】
図4(c)に示す状態下に所定時間放置することで、前記の湿潤膜から含水揮発性媒体が揮発除去され、水溶性ポリマーからなる皮膜が形成される。形成された皮膜は、へそ凹部Nの内面に密着して、へそ凹部N内の汚れDを取り込んだ状態になっている。また皮膜は、塊状体13’を構成する繊維と結合し、該塊状体13’に支持された状態になっている。水溶性ポリマーの固化体からなる皮膜が形成されたら、図4(d)に示すように、塊状体13’とともに該皮膜をへそ凹部Nから取り出す。このとき、皮膜に付着しているへそ凹部の汚れDが皮膜に同伴された状態でへそ凹部Nから取り出される。
【0050】
本実施形態の変形例として、塊状体13からなる支持体に、皮膜形成性の水溶性ポリマーに加えて、含水揮発性媒体を予め担持しておく実施形態が挙げられる。詳細には、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物が担持された液保持性の支持体をへそ凹部Nに挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部N内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出す。
【0051】
図5に示す第4の実施形態は、液保持性の支持体として用いられる部材が第3の実施形態と相違する。それ以外は、第3の実施形態と同様である。本実施形態においては、液保持性の支持体として、第2の実施形態で用いられた支持体と同様の形状を有する繊維材料の三次元成形体が用いられる。この三次元成形体には、予め皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持されている。しかし、含水揮発性媒体は三次元成形体には予め含浸されていない。該水溶性ポリマーの担持方法は、第3の実施形態と同様である。図5(a)に示すように、へそ凹部清浄剤が担持された状態の三次元成形体14’に含水揮発性媒体15を吸収させて、該三次元成形体14’を湿潤状態にする。
【0052】
含水揮発性媒体15によって湿潤状態になった三次元成形体14’は、図5(b)に示すように、へそ凹部N内に挿入される。この挿入によって、三次元成形体14’から、水溶性ポリマーを含む含水揮発性媒体がにじみ出て、へそ凹部Nの内面を湿潤させる。それによって、へそ凹部Nの内面には、水溶性ポリマーを含む含水揮発性媒体からなる湿潤膜が形成される。
【0053】
図5(c)に示す状態下に所定時間放置することで、前記の湿潤膜から含水揮発性媒体が揮発除去され、水溶性ポリマーからなる皮膜が形成される。皮膜が形成されたら、図5(d)に示すように、三次元成形体14’とともに該皮膜をへそ凹部Nから取り出す。このとき、皮膜に付着しているへそ凹部の汚れDが皮膜に同伴された状態でへそ凹部Nから取り出される。
【0054】
図4及び図5に示す実施形態の別変形例として、図6及び図7に示す第5及び第6の実施形態が挙げられる。図4及び図5に示す実施形態においては、水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体を、含水揮発性媒体で湿潤させたが、図6及び図7に示す実施形態においては、水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体を、へそ凹部N内に挿入した後に、含水揮発性媒体で湿潤させる。
【0055】
具体的には、水溶性ポリマーが担持された繊維材料の塊状体13’をへそ凹部N内に挿入するか(図6(a))、又は水溶性ポリマーが担持された繊維材料の三次元成形体14’をへそ凹部N内に挿入する(図7(a))。この状態下に、塊状体13’に含水揮発性媒体15を吸収させて該塊状体13’を湿潤させるか(図6(b))、又は三次元成形体14’に含水揮発性媒体15を吸収させて該三次元成形体14’を湿潤させる(図7(b))。なお、図7(b)の場合には、三次元成形体として、図3(b)に示す、頂部に透孔を有するものを用いると、含水揮発性媒体15による湿潤が円滑に行われるので好ましい。その後は、図4(c)及び(d)に示す操作と同様の操作を行うか(第5の実施形態の場合)、又は図5(c)及び(d)に示す操作と同様の操作を行う(第6の実施形態の場合)。
【0056】
図6及び図7に示す実施形態においては、水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体のへそ凹部N内に挿入と、含水揮発性媒体のへそ凹部内への供給の順序を入れ替えることができる。すなわち、含水揮発性媒体をへそ凹部Nに供給した後、皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体をへそ凹部Nに挿入して、該支持体を該含水揮発性媒体で湿潤させ、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すことができる。
【0057】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図1ないし図7に示す実施形態においては、液保持性の支持体として繊維材料からなるものを用いたが、これに代えて、スポンジ等の可撓性多孔質体を用いてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0059】
〔実施例1〕
重量平均分子量10万のポリビニルアルコール(ケン化度86.5−89%、日本合成化学社製)15gをイオン交換水77gに溶解した後、エタノール5g及びグリセリン3gを加えて水溶性ポリマー(PVA)の水性媒体溶液を調製した。これとは別に、アクリル繊維(4.4dTex)を原料として製造した不織布(坪量50g/m3、密度0.1g/cm3)を成型し、て山型の支持体を得た。この支持体は0.1gであった。スポイトを使って前記の水性媒体溶液をへそ凹部に0.05g流し込み、軽くなじませた。その後、支持体をへそにのせて指で押さえてへそに密着させた。20分後に支持体を剥がしたところ、へその汚れは支持体とともにきれいに取れた。
【0060】
〔実施例2〕
重量平均分子量36万のポリビニルピロリドン(K値92.1、GAF社製)を水に溶解し、最終濃度が20%になるように調整し、水溶性ポリマーの水水性媒体溶液を調製した。この水性媒体溶液を、液保持性のウレタンスポンジ支持体(3M社製のM型を、直径1センチ、高さ1センチの円柱状に切り出し加工したもの)0.02gに含浸させたのち、40℃で一昼夜かけて陰圧にて乾燥し、水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体を得た。この水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体を、へそ凹部に差し込んだ。次いで、へそ凹部に水を0.05g流し込んだ。そのままの状態で放置15分後、支持体を取り出すと、へその汚れがきれいに取れた。
【0061】
〔比較例1〕
実施例1において、支持体を用いずに、水溶性ポリマー(PVA)の水性媒体溶液のみをへそ凹部に滴下後、周囲を軽く揉んでなじませた。そのまま20分放置後ポリマー皮膜の剥離を試みたが、ちぎれてしまい、きれいに剥がすことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のへそ凹部清浄方法の第1の実施形態の手順を示す模式図である。
【図2】本発明のへそ凹部清浄方法の第2の実施形態の手順を示す模式図である。
【図3】繊維材料の三次元成形体からなる支持体を示す斜視図である。
【図4】本発明のへそ凹部清浄方法の第3の実施形態の手順を示す模式図である。
【図5】本発明のへそ凹部清浄方法の第4の実施形態の手順を示す模式図である。
【図6】本発明のへそ凹部清浄方法の第5の実施形態の手順を示す模式図である。
【図7】本発明のへそ凹部清浄方法の第6の実施形態の手順を示す模式図である。
【符号の説明】
【0063】
10 皮膜形成性の水溶性ポリマー吸水剤及び含水揮発性媒体を含む混合物
11 注入容器
12 湿潤膜
13 繊維材料の塊状体
14 繊維材料の三次元成形体
15 含水揮発性媒体
N へそ凹部
D へそ凹部内の汚れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物をへそ凹部に供給した後、液保持性の支持体をへそ凹部に挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法。
【請求項2】
液保持性の支持体をへそ凹部に挿入した後、皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物をへそ凹部に供給し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法。
【請求項3】
皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体を含水揮発性媒体で湿潤させ、湿潤状態の該支持体をへそ凹部に挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法。
【請求項4】
皮膜形成性の水溶性ポリマーと含水揮発性媒体との混合物が担持された液保持性の支持体をへそ凹部に挿入し、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法。
【請求項5】
皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体をへそ凹部に挿入し、へそ凹部に挿入された状態の該支持体を含水揮発性媒体で湿潤させ、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法。
【請求項6】
含水揮発性媒体をへそ凹部に供給した後、皮膜形成性の水溶性ポリマーが担持された液保持性の支持体をへそ凹部に挿入して、該支持体を該含水揮発性媒体で湿潤させ、該水溶性ポリマーが乾燥固化した後、その固化体からなる皮膜をへそ凹部内の汚れを同伴させた状態で、該支持体ごとへそ凹部から取り出すへそ凹部清浄方法。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンである請求項1ないし6のいずれかに記載のへそ凹部清浄方法。
【請求項8】
前記支持体が繊維材料又は多孔質体からなる請求項1ないし7のいずれかに記載のへそ凹部清浄方法。
【請求項9】
前記支持体が、繊維材料からなる塊状体であるか、又は繊維材料からなりかつへそ凹部の拡開が可能な形状を有する成形体である請求項8記載のへそ凹部清浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−149581(P2009−149581A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330063(P2007−330063)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】