説明

まつげ矯正用化粧品及びアイライナー

【課題】まつげを自分で手軽に上向きに矯正でき、しかもその状態が長時間にわたって維持される耐久性に優れた化粧手段を提供する。
【解決手段】水中に有機高分子化合物の微粒子が分散している液体からなり、該有機高分子化合物は該液体が乾燥することにより凝集して皮膚に対して親和性を有する皮膜を形成し、該皮膜は乾燥につれて収縮するものである。ここで、有機高分子化合物としては、ゴムラテックスを形成している有機高分子化合物と合成樹脂エマルジョンを形成している有機高分子化合物の混合物からなるものを使用することができる。また、ゴムラテックスの割合は40〜62wt%、合成樹脂エマルジョンの割合は33〜55wt%が好ましい。アイラインを形成するに足る濃度の色素を含有させてアイライナー兼用にしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まつげを上向きに矯正させることができるまつげ矯正用化粧品とアイライナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
まつげを上向きに矯正させると、目元がパッチリした感じになり、顔がかわいく見える。まつげを上向きに矯正させる方法としては、ビューラ(まつげ矯正器)でまつげを強く挟み、まつげに上向きの癖を強制的に付けてまつげを上向きに矯正させる方法と、まつげに上向きのパーマをかけてまつげを上向きに矯正させる方法が知られている。
【0003】
ビューラでまつげを強く挟んで上向きに矯正させる方法は、まつげを自分自身で手軽に上向きに矯正させることができるという利点がある。しかし、ビューラでまつげを上向きに矯正させる方法は、まつげをビューラで強く挟むので、まつげが途中で折れた感じのまつげ(いわゆるカックンまつげ)になり、矯正されたまつげがきれいに見えないという欠点がある。また、ビューラでまつげを上向きに矯正させる方法は、まつげに強制的に上向きの癖を付けているだけなので、まつげが時間と共に元の下向きの形状に戻りやすいという欠点がある。
【0004】
これに対し、まつげに上向きのパーマをかけてまつげを上向きに矯正させる方法は、まつげを上向きの状態で長時間維持できるという利点がある。しかし、まつげに上向きのパーマをかけてまつげを上向きに矯正させる方法は、パーマ液を眼球の近くで使用するので、専門の人にまつげのパーマをお願いしなければならず、面倒であるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−188247号公報
【特許文献2】特開2005−027788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような事情から、まつげを自分で手軽に上向きに矯正でき、しかもその状態が長時間にわたって維持される安全な手段が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本願の発明者は、自身が提案した他の特許出願(特開平2−188512号公報参照)に係る二重瞼形成用処理剤をまつげの根元に沿って筋状に塗ると、形成された皮膜が乾燥するときの収縮で、まつげの根元の皮膚が上方に引っ張られ、まつげの根元が上方を向くようになる現象を発見し、この現象をまつげ矯正手段として利用できることに気が付いた。
【0008】
すなわち、本発明に係るまつげ矯正用化粧品は、水中に有機高分子化合物の微粒子が分散している液体からなり、該有機高分子化合物は該液体が乾燥することにより皮膚に対して親和性を有する皮膜を形成し、該皮膜は乾燥につれて収縮するものであることを特徴とする。
【0009】
ここで、この皮膜の具体的な物性値は、伸び率300〜500%、JIS K 6301法に準ずる硬さとして100〜150が望ましい。また、前記有機高分子化合物としては、ゴムラテックスを形成している有機高分子化合物と合成樹脂エマルジョンを形成している有機高分子化合物の混合物を挙げることができる。
【0010】
ゴムラテックスは、天然ゴムラテックスでもよいし、合成ゴムラテックスでもよいが、人体及び環境に対する有害物質の法定限度基準を越えないものであり、例えばJIS K 6381のLAラテックス(全アルカリ分が0.8%以下)を用いることができる。
【0011】
合成樹脂エマルジョンは、上記したゴムラテックスの乾燥性の改良、及び乾燥塗膜物性として耐水性、耐汗性(耐生理食塩水性)の改良、並びに硬さの補充を目的として添加されるものである。このような合成樹脂エマルジョンとしては、上記したゴムラテックスとの相容性がよく、最低造膜温度が20℃以下のものであり、且つ、耐水性、耐汗性の良好なものを使用することができる。
【0012】
合成樹脂エマルジョンの種類は、特に限定するものではないが、例えば、平均分子量が40万〜200万、固型分が38〜55wt%程度の市販のエマルジョンタイプのアクリル系樹脂、ウレタン樹脂、または塩化ビニル、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂等のビニル系樹脂を使用することができる。
【0013】
前記液体中のゴムラテックスの割合は40〜62wt%、合成樹脂エマルジョンの割合は55〜33wt%とすることができる。ただし、人によって皮膚の張りに個人差が有るので、皮膚の張りの強い人のまつげを確実に矯正させる効果を得るという見地からすると、ゴムラテックスが45〜57wt%、合成樹脂エマルジョンが38〜50wt%とするのが好ましい。
【0014】
このまつげ矯正用化粧品はアンモニア及びアルカノールアミンを含んでおり、pHが8.0〜10.0の範囲、アルカノールアミンは0.1〜5wt%の範囲が好適である。pHが8.0〜10.0の範囲であるか、アルカノールアミンを0.1〜5wt%含有している場合、まつげ矯正用化粧品を長期にわたって保管しても凝固し難いという利点がある。
【0015】
このまつげ矯正用化粧品はアイラインを形成するに足る濃度の色素を含有し、アイライナーと兼用になっていてもよい。この色素としては黒色色素、褐色色素、赤色色素、青色色素又はこれらの混合物を使用することができる。黒色色素としては例えば親水化処理されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは1wt%以下でアイラインを形成するに足る濃度となる。
【0016】
なお、このまつげ矯正用化粧品は、上述した成分以外に、化粧品用として用いられる酸化防止剤、色素、抗菌剤、香料、充填剤、その他の添加剤を含ませてもよい。例えば、3〜5%の水、1%以下のポリカルボン酸ソーダ、1%以下のプロピレングリコール(PG)、1%以下のアンモニア水、1%以下のグリチルリチン酸アンモニウム、1%以下のメチルパラペン、1%以下のプロピルパラペン、1%以下のクオタニウム−73、1%以下のPEG−40水添ヒマシ油、1%以下のラウレス−21、0.5%以下のデヒドロ酢酸ナトリウム等を含ませてもよい。
【0017】
また、このまつげ矯正用化粧品の塗布厚は、厚ければ厚いほど使用者に違和感を生じせしめるので、使用者の瞼の柔らかさにもよるが50〜5μであることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、まつげ矯正用化粧品をまつげの根元に筋状に塗った後、まつげ矯正用化粧品が乾くに従って、形成されつつある被膜によってまぶたの縁部が上方に引き上げられ、まつげの生え際部分がまつげの根元付近の部分とともに目の前方・上方に引き上げられ、その結果、まつげが上方に向き、目元がパッチリした感じになり、顔がかわいく見えるという効果がある。
【0019】
また、本発明は、ゴムラテックスや合成樹脂エマルジョンといった化学的に安定した物質で構成されているので、皮膚や眼球に対する危険性が少なく、目の周囲に使用しても安全性が非常に高いという効果がある。
【0020】
このまつげ矯正用化粧品によって形成された皮膜は透明であるが、表面に少しテカリが出ることが有る。そのような場合はこの皮膜の表面を綿棒で軽くこすると自然な皮膚の感じに近付けることができる。本発明は、黒色の色素を入れてアイライナー兼用にした場合、形成された被膜の表面を皮膚の感じに近付ける必要が無くなるので、そのような不自然さを気にする必要が無くなるという効果がある。
【0021】
また、本発明は、黒色の色素を入れてアイライナー兼用にした場合、アイラインを形成する暗色色素が被膜内に強固に保持されているので、アイラインがまぶたの縁部でこすれ合っても、アイラインが取れたり、アイラインがぼけて汚く広がったりすることがないという効果がある。
【0022】
また、本発明は、黒色の色素を入れてアイライナー兼用にした場合、まつげの根元にまつげ矯正用化粧品(アイライナー)を線状に塗るという一つの作業で、まつげをアップさせ、かつアイラインが形成されので、目の周囲の化粧時間が短くなり、目の周囲の化粧が楽になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】目の正面図である。
【図2】矯正前のまつげ付近の断面を示す説明図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】矯正後のまつげ付近の断面を示す説明図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まつげを手軽に上向きに矯正でき、しかもその状態が長時間にわたって維持される、耐久性に優れた矯正手段を提供するという目的を、簡単な成分組成のまつげ矯正用化粧品により実現した。
【実施例1】
【0025】
天然ゴムラテックス、(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーアンモニウム、水、カーボンブラック、アンモニア水、エタノールアミン、安息香酸塩を、表1の試料番号1〜10の欄に示す割合で各々秤量し、これらをビーカーに入れ、静かに混合して各試験液(まつげ矯正用化粧品)を形成した。
【0026】
ここで、天然ゴムラテックスは、全固形分が62%、全アルカリ分が0.7%、スラッジ分が0.09%、凝固分が0.07%、機械的安定度が600secのものを使用した。また、(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーアンモニウムは、平均分子量100万、固形分45%のものを使用した。
【0027】
次に、各試験液を、まつげの根元に線状に塗布し、乾燥後30分、90分におけるまつげの角度の変化を目視で観察して評価した。評価の結果は表1に示す通りであった。ここで、まつげが完全に上方に矯正された場合を◎、まつげがある程度上方に矯正された場合を○、まつげが全く上方に矯正されなかった場合を×とした。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示された結果から、ゴムラテックスの割合は40〜62wt%、合成樹脂エマルジョンの割合は33〜55wt%の範囲にあれば、まつげをアップさせる働きがあることがわかる。そして、ゴムラテックスの割合が45〜57wt%、合成樹脂エマルジョンの割合が38〜50wt%の範囲にあれば、まつげをアップさせる効果が高いことがわかる。
【実施例2】
【0030】
合成樹脂エマルジョンとして、(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーアンモニウム以外の合成樹脂エマルジョンを使用し、実施例1の試料番号1と同様の条件でまつげ矯正用化粧品を作製し、まつげの根元に線状に塗布し、乾燥後30分、90分におけるまつげの角度の変化を目視で観察して評価した。結果は表2に示す通りであった。ここで、まつげが完全に上方に矯正された場合を◎、まつげがある程度上方に矯正された場合を○、まつげが全く上方に矯正されなかった場合を×とした。
【0031】
(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーアンモニウム以外の合成樹脂エマルジョンとして、スチレン樹脂エマルジョン(平均分子量120万;固形分55%)、酢酸ビニル樹脂エマルジョン(平均分子量80万;固形分40%)、塩化ビニル樹脂エマルジョン(平均分子量120万;固形分50%)、アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョン(平均分子量80万;固形分40%)、スチレンブタジエン樹脂エマルジョン(平均分子量150万;固形分38%)、スチレンアクリル共重合樹脂エマルジョン(平均分子量100万;固形分46%)、酢酸ビニルアクリル共重合樹脂エマルジョン(平均分子量200万;固形分54%)、塩化ビニルアクリル共重合樹脂エマルジョン(平均分子量40万;固形分45%)を使用した。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示された結果から、合成樹脂エマルジョンとして(スチレン/アクリル酸アルキル)コポリマーアンモニウム以外の合成樹脂エマルジョンを使用しても、まつげをアップさせる効果があることがわかる。
【0034】
次に、このまつげ矯正用化粧品をまつげの根元に筋状に塗った場合の皮膚及びまつげの動きについて図1〜図5を参照しながら説明する。なお、図1は目の正面図、図2は矯正前のまつげ付近の断面を示す説明図、図3は図2のA部拡大図、図4は矯正後のまつげ付近の断面を示す説明図、図5は図4のB部拡大図である。
【0035】
まず、図1に示すように、まぶた10の縁のまつげ12の外側の部位に筆で本発明に係るまつげ矯正用化粧品14を筋状に塗り、放置する。まつげ矯正用化粧品14はしばらく放置すると、含まれていた有機高分子化合物が凝集して皮膜14になる。
【0036】
この皮膜14を更に放置すると乾燥が進み、更に収縮する。この皮膜14は、ある程度の引っ張り強度を持っており、皮膚との親和性が良く、皮膚に密着しているので、まつげ12の根元付近の皮膚は、図4及び図5に示すように、皮膜14の収縮に引っ張られ、矢印Cに示すように前方ないし上方に引き上げられる。
【0037】
まつげ矯正用化粧品14を塗った直後、まつげ12の根元の皮膚は、図2及び図3に示すように、前方ないし下方を向いており、まつげ12も前方ないし下方を向いているが、上述したように、皮膜14の収縮に引っ張られて、まつげ12の根元付近の皮膚が矢印Cに示すように前方ないし上方に引き上げられると、図4及び図5に示すように、まつげ12は皮膚の移動に従って上方を向くようになる。
【0038】
次に、このまつげ矯正用化粧品からなる皮膜を取り除く場合は、化粧落し液として広く使用されているリムーバーをコットンに含ませ、皮膜をこのコットンでしばらく湿し、皮膜をコットンでやさしくこする。皮膜はリムーバーによってふやけ、皮膚との密着力が低下しているので、コットンによって皮膚から無理なくふき取れる。
【符号の説明】
【0039】
10 まぶた
12 まつげ
14 まつげ矯正用化粧品(皮膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に有機高分子化合物の微粒子が分散している液体からなり、該有機高分子化合物は該液体が乾燥することにより凝集して皮膚に対して親和性を有する皮膜を形成し、該皮膜は乾燥につれて収縮するものであることを特徴とするまつげ矯正用化粧品。
【請求項2】
前記有機高分子化合物が、ゴムラテックスを形成している有機高分子化合物と合成樹脂エマルジョンを形成している有機高分子化合物との混合物からなることを特徴とする請求項1に記載のまつげ矯正用化粧品。
【請求項3】
前記ゴムラテックスが40〜62wt%、前記合成樹脂エマルジョンが55〜33wt%の割合で含有していることを特徴とする請求項2に記載のまつげ矯正用化粧品。
【請求項4】
pHが8.0〜10.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のまつげ矯正用化粧品。
【請求項5】
アルカノールアミンを0.1〜5wt%含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のまつげ矯正用化粧品。
【請求項6】
前記ゴムラテックスが天然ゴムラテックス又は合成ゴムラテックスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のまつげ矯正用化粧品。
【請求項7】
前記合成樹脂エマルジョンに含まれる固形分の割合が38〜55wt%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のまつげ矯正用化粧品。
【請求項8】
前記合成樹脂エマルジョンがアクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、ビニル系樹脂エマルジョン又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のまつげ矯正用化粧品。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか1項に記載のまつげ矯正用化粧品にアイラインを形成するに足る濃度の色素を含有させたことを特徴とするアイライナー。
【請求項10】
前記色素が黒色色素、褐色色素、赤色色素、青色色素又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項9に記載のアイライナー。
【請求項11】
前記黒色色素が親水化処理されたカーボンブラックであることを特徴とする請求項10に記載のアイライナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168323(P2010−168323A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13811(P2009−13811)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(505213389)有限会社ローヤル化研 (2)
【Fターム(参考)】