説明

まな板

【課題】製造時の加工性に優れ、かつ耐熱性に優れるまな板を提供する。
【解決手段】以下の成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%として、成分(A)含有量が80〜50重量%であり、成分(B)の含有量が20〜50%であるエチレン系樹脂組成物からなるまな板。
成分(A):JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜5g/10分であり、密度が910〜935kg/m3であり、分子量分布(Mw/Mn)が5〜25であり、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):高密度ポリエチレン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はまな板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直鎖状低密度ポリエチレンや高圧法低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂からなるまな板は、家庭、外食産業、給食所、学校、保育所等で使用されている。食肉、野菜、魚類などあらゆる食材の調理に使用されるが、臭いや雑菌の付着があるため、殺菌・滅菌処理が必要である。
従来は薬液殺菌が主流であったが、最近は殺菌性能が高い高温殺菌に移行している。熱風や熱湯による高温殺菌に耐えるまな板が必要となってきた。
このようなまな板としては、直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法ポリエチレンとのエチレン系樹脂組成物からなるまな板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特公平8−22260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、直鎖状低密度ポリエチレン等の従来のエチレン系樹脂を用いて製造されたまな板は、耐熱性において必ずしも満足のいくものではなかった。また、まな板は通常溶融樹脂をシート状に加工して得られるが、従来のまな板は、加工性においても必ずしも満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、製造時の加工性に優れ、かつ耐熱性に優れるまな板を提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、製造時の加工性に優れ、かつ耐熱性に優れるまな板を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下の成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%として、成分(A)含有量が80〜50重量%であり、成分(B)の含有量が20〜50%であるエチレン系樹脂組成物からなるまな板である。
成分(A):JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜5g/10分であり、密度が910〜935kg/m3であり、分子量分布(Mw/Mn)が5〜25であり、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):高密度ポリエチレン
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があげられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0008】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体である。
【0009】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50〜99重量%である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常1〜50重量%である。
【0010】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は長鎖分岐を有するものであり、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は、従来のエチレン−α−オレフィン共重合体に比して、流動の活性化エネルギー(Ea)が高く、通常40kJ/mol以上である。従来から知られているエチレン−α−オレフィン共重合体のEaは、通常40kJ/molよりも低い値である。
【0011】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)は、加工性の観点から、好ましくは45kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、強度を高める観点から、該Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0012】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)は、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位:Pa・sec)の角周波数(単位:rad/sec)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値であって、以下に示す方法で求められる値である。すなわち、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃の温度の中から、190℃を含む4つの温度について、夫々の温度(T、単位:℃)におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度−角周波数曲線毎に、190℃でのエチレン系共重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求め、夫々の温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小自乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記(I)式)を算出する。次に、該一次式の傾きmと下記式(II)とからEaを求める。
ln(aT) = m(1/(T+273.16))+n (I)
Ea = |0.008314×m| (II)
T :シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
上記計算は、市販の計算ソフトウェアを用いてもよく、該計算ソフトウェアとしては、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4などがあげられる。
なお、シフトファクター(aT)は、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線を、log(Y)=−log(X)軸方向に移動させて(但し、Y軸を溶融複素粘度、X軸を角周波数とする。)、190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際の移動量であり、該重ね合わせでは、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線は、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。
また、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃の中から190℃を含む4つの温度でのシフトファクターと温度から得られる一次近似式(I)式を最小自乗法で求めるときの相関係数は、通常、0.99以上である。
【0013】
上記の溶融複素粘度−角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5〜2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1〜100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm)を配合することが好ましい。
【0014】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜5g/10分である。該メルトフローレートは、加工性を高める観点から、好ましくは0.2g/10分以上である。また、強度を高める観点から、好ましくは4g/10分以下である。
【0015】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、まな板の耐熱性をよくする観点から910kg/m3以上であり、刃当たり性をよくする観点から935kg/m3以下であり、より好ましくは、930kg/m3以下である。
【0016】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、5〜25である。該分子量分布は、加工性を高める観点から、好ましくは6以上であり、より好ましくは7以上である。また、該分子量分布は、まな板の強度を高める観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは17以下である。
【0017】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、低温加工特性を高める観点から、温度190℃、角周波数100rad/secでの溶融複素粘度をη*(単位:Pa・sec)とし、JIS K7210−1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートをMFR(単位:g/10分)として、下記式(1)を充足するものが好ましく、
η* < 1550×MFR-0.25−420 式(1)
下記式(1−2)を充足することがより好ましく、
η* < 1500×MFR-0.25−420 式(1−2)
下記式(1−3)を充足することが更に好ましく、
η* < 1450×MFR-0.25−420 式(1−3)
下記式(1−4)を充足することが特に好ましい。
η* < 1350×MFR-0.25−420 式(1−4)
【0018】
溶融複素粘度η*は、エチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)を求めるために行われる測定のうち、190℃の溶融複素粘度−角周波数の測定において得られた、角周波数100rad/secにおける溶融複素粘度である。
【0019】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分(以下、成分(イ)と称する。)と、アルキレン基やシリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体(以下、成分(ロ)と称する。)とを触媒成分として用いてなる重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0020】
上記固体粒子状の助触媒成分としては、メチルアルモキサンを多孔質シリカと混合させた成分、ジエチル亜鉛と水とフッ化フェノールを多孔質シリカと混合させた成分等をあげることができる。
【0021】
上記固体粒子状の助触媒成分のより具体例として、成分(a)ジエチル亜鉛、成分(b)フッ素化フェノール、成分(c)水、成分(d)多孔質シリカおよび成分(e)トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させてなる助触媒担体成分(イ)をあげることができる。
【0022】
成分(b)のフッ素化フェノールとしては、ペンタフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、3,4,5−トリフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール等をあげることができる。成分(A)の流動活性化エネルギー(Ea)、分子量分布(Mw/Mn)を高める観点から、フッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いることが好ましく、この場合、フッ素数が多いフェノールとフッ素数が少ないフェノールとのモル比としては、通常、20/80〜80/20であり、フッ素数が少ないフェノールの割合が高い方が好ましい。
【0023】
上記成分(a)、成分(b)および成分(c)の使用量としては、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとすると、yおよびzが下記の式を満足することが好ましい。
|2−y−2z|≦1
上記の式におけるyとして、好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
【0024】
成分(a)に対して使用する成分(d)の量としては、成分(a)と成分(d)との接触により得られる粒子に含まれる亜鉛原子のモル数が、該粒子1gあたり0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。成分(d)に対して使用する成分(e)の量としては、成分(d)1gあたり成分(e)0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
【0025】
上記メタロセン錯体としては、2つのインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのジメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体等をあげることができる。また、成分(ロ)の金属原子としては、ジルコニウムとハフニウムが好ましく、さらに金属原子が有する残りの置換基としては、ジフェノキシ基やジアルコキシ基が好ましい。成分(ロ)として、好ましくは、エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドがあげられる。
【0026】
上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、有機アルミニウム化合物を触媒成分として併用してもよく、該有機アルミニウム化合物としては、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等をあげることができる。
【0027】
上記メタロセン錯体の使用量は、上記固体粒子状の助触媒成分1gあたり、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物の使用量として、好ましくは、上記メタロセン錯体の金属原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子が1〜2000モルとなる量である。
【0028】
また、上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、電子供与性化合物を触媒成分として併用してもよく、該電子供与性化合物としては、トリエチルアミン、トリノルマルオクチルアミン等をあげることができる。
【0029】
上記成分(b)のフッ素化フェノールとしてフッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いる場合は、電子供与性化合物を用いることが好ましい。
【0030】
電子供与性化合物の使用量としては、上記の触媒成分として用いられる有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、通常0.1〜10mol%であり、成分(A)の分子量分布(Mw/Mn)を高める観点から、該使用量は高い方が好ましい。
【0031】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、より具体的には、上記助触媒担体(イ)、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体および有機アルミニウム化合物を接触させてなる触媒の存在下、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0032】
重合方法として、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の成形を伴う連続重合方法であり、例えば、連続気相重合、連続スラリー重合、連続バルク重合であり、好ましくは、連続気相重合である。気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
【0033】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造に用いられる重合触媒の各成分を反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。重合触媒の各成分は個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
【0034】
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施し、予備重合された予備重合触媒成分を本重合の触媒成分または触媒として使用することが好ましい。本重合と予備重合では異なるα−オレフィンを用いてもよく、炭素原子数が4〜12のα−オレフィンとエチレンとを予備重合することが好ましく、炭素原子数が6〜8のα−オレフィンとエチレンとを予備重合することがより好ましい。
【0035】
重合温度としては、通常、エチレン−α−オレフィン共重合体が溶融する温度よりも低く、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃であり、さらに好ましくは50〜90℃である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合温度は高い方が好ましい。
【0036】
重合時間としては(連続重合反応である場合は平均滞留時間として)、通常1〜20時間である。エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合時間(平均滞留時間)は長い方が好ましい。
【0037】
また、共重合体のMFRを調節する目的で、重合反応ガスに水素を分子量調節剤として添加してもよく、重合反応ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。重合反応ガス中のエチレンのモル濃度に対する重合反応ガス中の水素のモル濃度は、重合反応ガス中のエチレンのモル濃度100モル%として、通常、0.1〜3mol%である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、該重合反応ガス中の水素のモル濃度は、高い方が好ましい。
【0038】
本発明における成分(B)は高密度ポリエチレンである。高密度ポリエチレンの密度は通常945〜970kg/m3である。該高密度ポリエチレンのMFRは、0.01〜2g/10minであることが好ましい。
【0039】
本発明のまな板は、前記成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%として、成分(A)含有量が80〜50重量%であり、成分(B)の含有量が20〜50%であるエチレン系樹脂組成物からなるまな板である。前記エチレン系樹脂組成物における成分(B)の含有量が20重量%未満の場合には高温での殺菌・滅菌処理において変形を起こす恐れがあり、50重量%を超える場合には包丁の反発が強く刃当たりが悪くなる。
【0040】
成分(A)および成分(B)を含有するエチレン系樹脂組成物は、必要に応じ、抗菌剤や着色剤を含有していてもよい。
【0041】
成分(A)および成分(B)を含有するエチレン系樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)と必要に応じ配合される他の成分とを公知の方法、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合した後、更に単軸押出機や多軸押出機などにより溶融混練する、またはニーダーやバンバリーミキサーなどで溶融混練することにより得られる。
【0042】
成分(A)および成分(B)を含有するエチレン系樹脂組成物を、シートに成形する方法としては、カレンダーロールでシート状に成形する方法、プレス成形機でシート状に成形する方法、Tダイから溶融押出ししてシート状に成形する方法などがあげられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
【0044】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定した。
【0045】
(2)密度(単位:kg/m3)
密度は、JIS K7112−1999に規定された方法のA方法に従って測定した。
【0046】
(3)DSCによる融点の測定
熱プレス成形した厚み0.1mmのフィルムから約8mgの試料を精秤し、DSCにセットする。150℃に昇温し、5分間保持した後、5℃/minの速度で20℃まで降温する。2分間保持した後、5℃/minの速度で150℃まで昇温する。20℃から150℃までに現れたピークのうち最大ピークの温度をもって融点とした。
【0047】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(7)により測定を行った。予め分子量分布が単分散とみなせる分子量分布の狭い標準ポリスチレン(東ソー製TSK STANDARD POLYSTYRNE)を用いて作成しておいた検量線を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)をもとめ、それらより分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(1)装置:Water製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
(3)測定温度:145℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折
【0048】
(5)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800)を用いて、下記測定条件で130℃、150℃、170℃および190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線を測定し、次に、得られた溶融複素粘度−角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、活性化エネルギー(Ea)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.2〜2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1〜100rad/秒
測定雰囲気 :窒素下
【0049】
(6)溶融複素粘度(η*、単位:Pa・sec)
上記の(4)流動の活性化エネルギーを測定した際に得られた190℃での溶融複素粘度−角周波数の測定結果から、角周波数が100rad/secにおける190℃の溶融複素粘度を求めた。
【0050】
(7)曲げ剛性
厚さ150×150×1mmのプレスシートから巾25.4mmの試験片を打ち抜き、JIS K7106に従い曲げ剛性を測定した。
曲げ剛性が小さすぎると、まな板を使用する際に変形が生じる恐れがあり好ましくない。
【0051】
(8)トルク
ブラベンダープラスチコーダーを用いて、ペレット試料40gにIrganox1076を1500ppm添加し、ジャケット温度160℃、ローラーミキサー回転数60rpmの条件下で連続混練し30分後のトルク値を求める。この値は低い方が加工性はよい。
【0052】
(9)耐熱性
サイズ150×150×2mmのプレスシートから巾25mm、長さ125mmに打ち抜いた試験片を用い、JIS K7195に従い、温度80℃のオーブンで1Hr加熱し、取り出して室温で30分間冷却した後、ヒートサグS値を求めた。この値が小さいほど、耐熱性がよい。
【0053】
(9)硬度
厚さ5mmのプレスシートを用い、JIS K7215に従い、タイプDのデュロメーターの圧子にて硬さを測定した。
【0054】
[実施例1]
[1]エチレン−α−オレフィン共重合体の製造
(1)シリカの処理
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、溶媒としてトルエン24kg、微粒子担体(a)として窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.81kgを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.91kgとトルエン1.43kgの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら32分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、95℃で3.3時間攪拌した。その後、得られた固体生成物をトルエン21kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエンを7.1kg加え、一晩静置した。
(2)固体触媒成分(A)の調製
上記実施例1(1)で得られたトルエンスラリーへ、化合物(b)として50wt%のジエチル亜鉛のヘキサン溶液1.75kgと溶媒としてヘキサン1.0kgを投入し、攪拌した。その後、5℃に冷却した後、化合物(c)としてトリフルオロフェノール0.78kgと溶媒としてトルエン1.41kgの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら61分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、22℃に降温した後に、化合物(d)として水0.11kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、22℃で1.5時間、40℃で2時間、更に、80℃で2時間攪拌した。攪拌を停止し残量が16リットルとなるまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、攪拌した。95℃に昇温し、4時間攪拌した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することで固体触媒成分(A)を得た。元素分析の結果、Zn=11wt%、Si=30wt%、F=5.9wt%、N=2.3wt%であった。
(2)予備重合触媒成分(1)の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン80リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド101mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次にオートクレーブを30℃まで降温して系内が安定した後、エチレンをオートクレーブ内のガス相圧力で0.03MPa分仕込み、上記固体触媒成分(A)0.7kgを投入し、続いてトリイソブチルアルミニウム158mmolを投入して重合を開始した。エチレンを0.7kg/Hrで連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ3.5kg/Hrと5.5リットル(常温常圧体積)/Hrで連続供給することによって合計4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記固体触媒成分(A)1g当り15gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒成分(1)を得た。
【0055】
(3)エチレン−α−オレフィン共重合体の製造
上記で得た予備重合触媒成分(1)を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ブテン、1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を87℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を1.04%、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ブテンモル比を1.83%、1−ヘキセンモル比をそれぞれ0.69%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間4hrであった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン−1−ブテン共重合体(以下PE−1と称する)のペレットを得た。PE−1のペレットの物性を表1に示す。
【0056】
PE−1のペレット80重量%に、DOW製 HDPE 35060E(以下HD−1と称する)のペレットを20重量%混合したのち、30mmφ押し出し機を用いて200℃で溶融混合しペレットを得た。得られたペレットを150℃で予熱5分間、2MPaの加圧下で5分間プレス成形した後冷却し、厚さ1または2mmのシートを得た。該シートを用いて種々の評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
実施例2
PE−1のペレット75重量%、HD−1を25重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表2に示す。
【0058】
実施例3
PE−1のペレット70重量%、HD−1を30重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表2に示す。
【0059】
実施例4
PE−1のペレット65重量%、HD−1を35重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表2に示す。
【0060】
実施例5
PE−1のペレット60重量%、HD−1を40重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表2に示す。
【0061】
実施例6
PE−1のペレット70重量%、三井化学製 ハイゼックス 3300F(以下HD−2と称する)を30重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表2に示す。
【0062】
実施例7
PE−1のペレット70重量%、三井化学製 ハイゼックス 7000F(以下HD−3と称する)を30重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表2に示す。
【0063】
比較例1
PE−1のペレットのみを用いて実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表3に示す。
【0064】
比較例2
PE−1のペレット40重量%、HD−1を60重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表3に示す。
【0065】
比較例3
住友化学製、 FS150(以下PE−2と称する)のペレット70重量%、HD−1を30重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表3に示す。
【0066】
比較例4
住友化学製、VL100(以下PE−3と称する)のペレット70重量%、HD−1を30重量%とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様にプレス成形し、シートを得た。該シートを用いた評価結果を表3に示す。
【0067】
【表1】

PE−2:エチレン−1−ブテン共重合体
PE−3:エチレン−1−ブテン共重合体
【0068】
【表2】

HD−1:Dow Plastics製、HDPE 35060E(MFR:0.29g/10min、密度:960kg/m3
HD−2:三井化学、ハイゼックス 3300F(MFR:1.1 g/10min、密度:950kg/m3
HD−3:三井化学、ハイゼックス 7000F(MFR:0.04 g/10min、密度:952kg/m3
【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%として、成分(A)含有量が80〜50重量%であり、成分(B)の含有量が20〜50%であるエチレン系樹脂組成物からなるまな板。
成分(A):JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜5g/10分であり、密度が910〜935kg/m3であり、分子量分布(Mw/Mn)が5〜25であり、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):高密度ポリエチレン

【公開番号】特開2009−142533(P2009−142533A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324473(P2007−324473)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】